MENU

第2章「いい人材」に来てもらう[採用ステージ]

目次

TOPIC03募集広告を出しても、なぜ応募者が来ない?アルバイト求職者は「どこ」を見ているのか?

DIALOGUE

「店長、来週の火曜日、シフト入れなくなっちゃったんですが…」「おいおい、困るよそれは」「え〜、そもそも火曜日は『新しい人が来るまでの期間限定』っていう約束だったじゃないですか〜!先週の求人広告、どれくらい応募来てるんですか?」「…ま、まずまずだよ(ゼロだなんて…絶対言えない!)」人手不足解消のためには「離職防止」が重要だとしても、やはり採用は避けて通れない課題だ。

どうすれば優秀なアルバイト人材を確保できるのだろうか?募集広告を出す前に知っておきたい「応募者の職場選びのポイント」について見ていこう。

「結局、ブランド・広告予算次第」は本当か?

「人手不足が続いていて、アルバイト求人広告を出しているが、応募者が一向に集まらない!」という悲鳴にも似た声があちこちで聞かれます。

第1章でも触れたとおり、日本では急激に労働力人口が減少しつつあり、アルバイトの確保は多くの職場にとって切実な課題となっています。

なぜ応募者が集まらないのでしょうか?よくある答えは「ウチの会社はブランド力がないから」「大手のように多額の広告費をかけていないから」といったものです。たしかに、求職者に有利な売り手市場では、応募者は比較的自由に職場を〝選り好み〟する余地があります。

そうなると当然のことながら、テレビCMなどを通じて知名度を高めている企業や、ポジティブなイメージが定着している人気チェーン店などに人材が殺到することになります。では結局、こうした求人ブランド力は、すべて人気や知名度で決まるのかというと、じつはそんなことはありません。

たとえば、図表12のデータをご覧ください。見てのとおり、アルバイト求職者はマスメディアなどから得たイメージだけを手がかりに職場選びをしているわけではありません。

むしろ、職場イメージの形成に最も影響を与えているのは来店時の印象であり、これがマスメディア経由で形成されるイメージよりも強い影響力を持っていることが見て取れます。

「リクルーティング・メディア研究」の見地から考える

私が専門としている人材マネジメント研究のなかには、どのような採用活動を行えば「いい人材」を採ることができるかを主題にしたリクルーティング研究(採用研究)という分野があります。

これは正社員に関する調査を中心に、1970年代から発展してきた研究知見ですが、アルバイト採用にも関連が深そうなものの1つにリクルーティング・メディア研究(または、リクルーティング・ソース研究)というものがあります(図表13)。

これは、企業が用いる採用メディア(媒体)によって、どのように採用効果が現れるかについての研究です。伝統的なリクルーティング・メディアには新聞・広告・ラジオなどがありますが、近年はインターネットやSNSもそこに含める必要があります。店舗型の職場であれば、店内に貼られるポスターなどもその一種です。

採用担当者である店長は、こうしたメディアの特性を知っておく必要がありますが、先ほど見た図表12のデータで興味深いのは「来店時の印象」が「マスメディア」よりも強い影響力を持っているという点でしょう。

これは正社員の採用活動には見られない、アルバイト採用に固有の特性でしょう。アルバイト採用においては、職場そのものが最も重要なリクルーティング・メディアであり、求職者に最も多くを語るものであること——これは特筆すべきポイントだと思います。

たとえブランドイメージや知名度において競争力を欠く職場であっても、「職場の印象」を改善する取り組みによって、〝一発逆転〟できる可能性が示唆されているからです。

あなたの職場そのものが最大のリクルーティング・メディア(採用に最も影響を与える情報を伝える存在)なのです。あなたの職場は、求職者にどのようなメッセージを届けているでしょうか?

応募者が警戒する「ブラックバイト」

多くのアルバイト応募者が、マスメディアなどによって形成されたブランドイメージ以上に、「来店時の印象」を重視しています。

こうした傾向は近年ますます強まっている感がありますが、その背景の1つとして考えられるのは、ブラックバイトへの警戒感でしょう。

ブラックバイトとは一般に、本人の希望を無視してシフトを組む、長時間労働を強いる、重すぎる責任・ノルマを課す、ひどい場合は、残業代や割増賃金の不払いがあるなど、労働条件が悪質なアルバイトのことを指します。

こうしたアルバイト雇用の問題に関しては、私も共同研究メンバーも以前から心を痛めており、その根絶に対する意識を高めていきたいと考えています。

「働きやすい職場、長く勤めたい職場をつくることこそが、人手不足の解消につながるのだ」という本書に通底するメッセージは、このことの証左です。

ブラックバイトが社会問題として多くのメディアに取り上げられたこともあり、「マスメディアに喧伝されているブランドイメージだけでは〝本当にいい職場〟かどうかは判断できない」という心理が求職者のあいだに生まれています。

図表12の第3位が「ネット上の口コミ」だったことも、「表向きではない〝生の情報〟を得て判断したい」という意識の表れだと言えるでしょう。

アルバイト応募者の「2人に1人」は下見に来ている!

では実際のところ、アルバイトに応募してくる人たちのうち、どれくらいの割合が職場の〝下見〟に来ているのでしょうか?今回の調査では、図表14のようなデータが得られました。

外食・小売では、約5割(49.8%)が下見に来ていることが見て取れます。アルバイト応募のための下見としてではなく、「過去にお店を使ったことがある」といった例も含めれば、その割合はさらに増えるかもしれません。

つまり、どれほど全国的に名前の知られた〝ブランド力の高い〟職場であっても、応募者の2人に1人があらかじめ実際に現場を訪れ、応募の判断材料にしているのです。これは私たちの事前の想定を大きく上回った「驚くべき数値」でした。

現場で活躍されている店長のみなさんの実感としてはいかがでしょうか?

職場こそが最大の求人メディアである

では、求職者は「下見」の際にどんなポイントをチェックしているのでしょうか?これを探る手がかりとして、「アルバイトの決め手要因」の調査を見てみましょう(図表15)。

応募理由の上位には、勤務時間・勤務地の利便性、時給の高さなどの雇用条件がランクインしています。これらが上位に来ているのは当然といえば当然でしょう。

注目すべきはそれに続く項目たちです。

  • 安定して長く働けそう(5位)
  • 同世代の人たちと働けそう(8位)
  • 働いている人たちの雰囲気がよさそう(9位)

このようにアルバイト求職者が職場を決めるときには、そこのスタッフたちが「どういう働き方をしているか」にも注意を払っていることが伺えます。

「同世代の人たちと働けそう」「働いている人たちの雰囲気がよさそう」といった答えからは、彼らがアルバイトの職場に「時給以外のもの」を求めていることが見て取れます。

業種によっては半数近くのアルバイト求職者が事前に下見に訪れ、スタッフの様子や店の雰囲気などをチェックしている——この事実を考えると、やはり「職場こそが最大の求人メディアである」と言わざるを得ません。

あのお客様も「将来のアルバイト候補」かもしれない…

アルバイトが店長に怒鳴りつけられているお店を訪れて、「ここで働いてみようかな…」などと思う人はいません。いくら店長が面接のときに優しそうな顔をしても、ひょっとしたら仕事中の追い詰められた表情を見られているかもしれません。

表面上のサービスがよくても、トイレがひどく汚れているだけで、応募する気をなくす人もいるでしょう。くどいようですが、あなたの職場そのものが、採用の成否を左右する情報を最も多く伝えているのです。

もしあなたの職場への応募者が極端に少ないのだとすれば、まずこのようなレベルでの「取りこぼし」がないか、もう一度考え直してみる必要があります。これは店舗型の職場に限りません。

店長は日頃から職場の雰囲気やスタッフの働きぶりが〝見られている〟という意識を持ち、「応募したくなる職場」をつくることが欠かせないのです。

POINT

□応募者はマスメディアよりも自分の目を信頼している

□外食・小売では、応募者の2人に1人が下見している

□職場こそが最高の求人ブランドをつくる「最高の求人メディア」

TOPIC04なぜ「来てほしい人材」が集まらないのか?学生・主婦・フリーター…属性別に「ニーズ」を把握する

DIALOGUE「最近、よく面接してるみたいですね。

「『いい人』いましたか?」「けっこう応募はあったんだけどね…」「じゃあ、いつも足りない夜間のシフト、ようやくなんとかなりそうですね!」「いや〜それが…日中勤務希望の主婦からの応募ばかりでね…」募集をかけてみたものの、こちらが思ったとおりの応募者が集まってくれるとは限らない。応募者は何を求めて働くのか?働く側の「ニーズ」を知ることで、来てほしい人材を集めるヒントを見つけよう。

来てほしい人材の「ニーズ」を考えて募集していますか?

「求人広告を出してみたものの、応募がまったくない」という悩みをよく耳にしますが、それだけではなく、「じっくり長期間働いてくれそうなフリーター層が集まらない」「ランチタイムに働いてくれる主婦層からの応募がない」など、〝いままさにお店に必要なタイプの人材〟からの応募が集まらないという悩みも多いようです。

みなさんの職場はいかがでしょうか?業種・業態や地域・立地・時期などにより、応募者の属性にある程度の偏りやばらつきが出るのは仕方のないことです。

しかし「すぐ近くにある競合店には学生バイトが多く集まっているのに、なぜかウチの店は学生からの応募が来ない…」などということはないでしょうか?もしそうだとすれば、勤務条件などが学生たちのニーズに合致していないのかもしれません。求職者たちがアルバイトに求めるニーズはそれぞれですし、日々変化しています。

応募してきてほしい人材像が明確なのであれば、彼らが求めているものをつかんだうえで、それを意識した採用アプローチをとることが大切です。

たとえば、主婦を採用したいのであれば、ウェブメディアに広告を掲載するよりは、地域密着の雑誌などを選んだほうが、「近場で働きたい」という希望を持った主婦層の応募率は高まるのではないでしょうか。

そこでここからは、アルバイト求職者が希望する勤務時間帯や時給、重視するポイントなどを、各属性別に見ていくことにしましょう。なお、本書では、アルバイトの属性を図表16のとおり3つに分けて分析しています。

どの時間帯に、どれくらい長く働きたいか?

まず、勤務時間の長さや時間帯には、どんな違いがあるでしょうか?属性別に見ると、求職者に対する調査では、図表17・18のような結果が出ています。

学生

学業優先で「空いた時間」に働きたい学生は授業が終わったあとの18〜21時の時間帯を希望する人が多いようですが、曜日によっては日中の時間も働きたいといったところでしょうか。

希望する勤務時間の長さは、3〜5時間に集中しており、学業優先で「空いた時間」に働きたいというニーズが読み取れます。

主婦

午前中から夕方までのあいだに働きたい主婦は、午前中から働きたい人が多く、午後は15時までの時間に希望が集中しています。逆に、夕方18時以降の時間帯になると、極端に希望者が減るのは、子育てや家事を抱えている人が多いからでしょう。

希望する勤務時間の長さは4〜5時間が最も多くなっていますから、あまり長い時間でシフトを組むことは避け、仕事を細かく分けていく工夫が、主婦活用のカギとなりそうです。

フリーター

多様なニーズがあるフリーターは、9〜18時の時間帯を希望する人も多いですが、人によっては深夜や早朝などの時間帯を希望しています。

この点についてはそれぞれの人材ごとにまちまちなようです。一方、7〜8時間の勤務を希望する人が圧倒的に多いことからは、それなりに長めのシフトに入って、しっかりと稼ぎたいというニーズが見て取れます。

どの程度の時給を望んでいるのか?

次に気になるのが、お金の問題です。当然のことながら、アルバイトの求職者たちは、収入を得るためにアルバイトの職を探しています。ですので、時給が上がることは、求職者にとっては大変重要です。

今後の人手不足時代において、アルバイトの労働環境を改善し、離職を防ぐためにも、業界として賃金を高めていく経営努力は必要でしょう。

しかし一方で、求職者たちは必ずしも「時給の高さ」だけで仕事を選んでいるわけではないようです。自分の生活スタイルに合った働き方ができることを優先する人もいれば、職場の人間関係に重きを置く人もいます。

ひとまず参考までに属性別の希望する最低時給の平均データを見てみましょう(図表19)。ここであえて50歳以上のデータも別途掲載したのは、彼らの希望時給が圧倒的に高くなっているためです。

この要因としては、正社員時代の給与水準が高かったことで希望額がつり上がっていることなどが考えられます。シニア人材についてはまたのちほど検討しますが、彼らの希望時給の高さは、これからシニア活用を検討している職場にとって大きなポイントになるかもしれません。

属性別に「重要ポイント」を見てみる

図表19の時給データについては、なぜ主婦の希望額が学生よりも低いのかなど、金額を見ただけではよく判断できない部分もありますので、もう少し別のデータを見てみましょう。

図表20はすでにアルバイトをしている人に「職場探しで何を重視したか?」を尋ねた調査の結果です。さまざまなことが読み取れますが、これをベースにしながら、今度はアルバイト求職者が「アルバイト探しで何を重視したのか?」を属性別のランキング形式で見てみましょう。

学生

とくに強いこだわりはないが、「つながり」も重視「時給の高さ」が1位となっているのは学生だけです(図表21)。ただ、1位と2位との差は2.2ポイントしかありませんし、全体的にも項目間に大きな差は見られません。

その意味で、学生がアルバイトを探すときの特徴は、「比較的これといったこだわりを持っていない」という点にあると言えるでしょう。

また、職場決定要因の調査(図表15・再掲)では、「友人・知人にすすめられた」「自分と同世代の人が働いていそうだった」など、同僚との「関係性」を重視していることが読み取れます。お金だけでなく、同世代の仲間とのつながりに対するニーズもあるようです。

もう1つ面白いのは、「時給の高さ」(6位)よりも「通勤交通費の支給」(5位)が重視されている点でしょう。

章末「コラム」参照この背景には主婦ならではの節約意識、そして夫の配偶者控除の問題があると推測されます。

また、まとまって働ける時間が短いため、1回の通勤ごとの交通費支給がないと実質的な給与を押し下げる要因となるからだとも考えられます。

職場決定要因の調査(図表15)でも「職場が自宅などから近い」という項目が高くなっており、できる限り近いエリアで、家庭生活の時間に合わせた働き方をしたい、というニーズがあるようです。

フリーター

「」「」フリーターは主婦ほどに項目間の差は大きくありません(図表23)。

ランキングの順位自体は、主婦と大きな違いはありませんが、「時給が高いこと」が4位に入っており、主婦よりも「稼ぐこと」を意識しているのが読み取れます。

また、応募理由で「安定して長く働けそう」(5位)が高い数値を示しているのは、彼らがある程度は長期的な雇用を前提に職探しをしているからでしょう。

フリーターでも「通勤交通費」(6位)のウエイトが42.6%と高くなっていますが、これは主婦の場合とは違って、職場が多少遠くても条件がいい職場を選ぼうとする考えを反映したものだと言えるでしょう。

「職場の雰囲気」へのニーズは全体的に高まっている

以上のように、それぞれの属性によってアルバイト求職者が重視するポイントには違いがありますが、一方で共通点もあります。

わかりやすいのは「生活時間に合わせて働けること」のような利便性の面ですが、もう1つ見落とせないのが「働いている人の雰囲気がよいこと」という項目でしょう。

図表24はパーソルグループのアルバイト求人メディアである「an」が行った調査の結果ですが、これを見ると「職場の雰囲気のよさ」を重視する流れは年々強まっていることがわかります。

しかもこのような傾向は、とくに若年層に強く見られます。

仕事を選ぶ基準として給与などの条件面だけでなく、「職場の雰囲気」といったソフト面にも目が向けられるようになってきたのは、人手不足が慢性化するなかで、アルバイトの選択肢が増えたり、時給が上がってきたりしたからでしょう。

今後もこの〝売り手市場〟が続くとすれば、働く人や職場の雰囲気を重視して応募先を選ぶ傾向は強まっていくはずです。

これはすでに確認した「下見率の高さ」とも見事に符合します。

「職場づくり」は、ほしいアルバイト人材の属性に関係なく、つねに店長が向き合うべき課題なのだと言えるでしょう。

POINT

□来てほしい人材のニーズを知り、それに合わせた募集方法を考える

□「職場の雰囲気のよさ」を重視する傾向は高まっている

 

TOPIC05「友人紹介」を増やすには?「人にすすめたくなる職場」をつくる

DIALOGUE

「店長、どう考えても人が足りませんよ。どうにかしてください!」「うん…そうだ!君の友達でいい人を誰か紹介してよ」「ええ、はい…(ちょっとウチの店は友達にはオススメできないな)」「…あれ、どうかしたの?」アルバイト1人あたりの採用コストが上がるなか、友人紹介などによる「人づて採用」は願ってもない機会だ。

実際、人手に困っていない職場では、優秀なアルバイトが優秀な人材を連れてくるという好循環が生まれている。「人にすすめたくなる職場」はどうすればつくれるのだろうか?

優秀な店長ほど「人づて採用」をベースにしている

アルバイトの確保が難しくなっているいま、有効な採用方法として注目すべきなのが人づて採用です。要するに、アルバイトのスタッフを介して、その友人・知人を紹介してもらい、新たな人材として雇用するというやり方です。

近年、正社員の領域でも、リファラル・リクルーティングを促進しようとする動きが見られます。これは、従来型のいわゆる縁故採用をよりブラッシュアップした制度で、人材間のネットワークを戦略的に活用しながら人材を獲得することを目的にしています。

「それならウチもやっているよ」という方も多くいらっしゃることと思いますし、紹介してくれたスタッフにインセンティブ報酬を支払うようにしている企業もあります。

今回の調査でも、うまく回っている職場ではやはり「人づて採用」を取り入れていることが再確認できました。インセンティブ制度のような企業レベルの取り組みまでいかないにしても、一店長としてやれることはたくさんあります。

たとえばある飲食店の店長Eさんは、アルバイトでシフトに入っている学生の友人たちが来店した際、特別サービスとして一品多く提供するようにしているそうです。

また、その友人たちの前で、そのアルバイト学生を「彼は優秀だから、本当に助かっている」と褒めたりするといいます。これを続けていたところ、その友人たちが次々とEさんの店に応募してくれるようになり、人手不足が解消されたといいます。これもまた人づて採用を促進するうえで効果的な取り組みだと言えるでしょう。

コスト削減・安定供給・定着率アップ…メリットはさまざま

人づて採用には数々のメリットがあります。まず、何よりもお金がかからないということ。募集広告を出す必要がありません。また、人材を安定的に確保できるということも魅力です。

某ファストフードのある店舗では、近隣にある大学の特定のサークルメンバーが代々アルバイトとして働いています。そのサークルに新入生として加入すると、先輩から「君もあの店で働かないか?」と誘われるので、学生が卒業してしまっても人手不足に困ることはないといいます。

これは人づて採用の理想的なかたちではないでしょうか。また、見落としがちなのは、紹介される側の視点です。すでに働いている知人を通じて、あらかじめ職場の状況をいろいろとつかめますし、信頼する人が紹介してくれた職場とあれば、安心して応募することができます。

図表15の「職場の決め手要因」のデータでも、「友人・知人にすすめられたから」(7位)は「社会的な評判がよいから」(13位)よりも上位に来ていました。

つまり、応募者はブランドイメージ以上に、直接的な口コミ情報を重視しているということです。こうして事前に職場のイメージがつかめていることは、その人材を採用した〝あと〟にも響いてきます。

海外のリクルーティング研究の知見でも、「その組織で自分が働くイメージ」を事前に持っているスタッフのほうが、入社後にその会社に定着する率が高くなることがわかっています。

また人づて採用のほうがより定着率が高くなることも指摘されており、近年は、SNSなどを用いた求人などが注目されています。アカデミックな成果としても、「人づて採用」はかなり確度の高い採用手法だということがわかってきているのです。

最大のメリットは「信頼関係」の築きやすさ

このように、さまざまな利点がある人づて採用ですが、その最大のメリットは、紹介というステップを踏むことで、いい人材を採れる可能性が高くなることでしょう。

まず紹介する側のスタッフは、いい加減な人を引っ張ってくれば、自分に対する信頼が落ちますから、それなりにしっかりした人に声をかけようとします。

つまり、スタッフに紹介されてやってくる求職者は、まず紹介者の〝フィルター〟をくぐり抜けた人材であるということが言えます。

店長としても、まずは優秀な人の知人・友人を採用したいと思うでしょうし、そういう人が連れてきた人材なら安心して受け入れられるのではないでしょうか?巻末の店長座談会でも、ある店長さんはこう語っていました。

「やっぱり友人紹介での採用のほうが離職率も低いですし、有効だと思いますね。

やたらめったら人を紹介してもらうというわけではなく、店長目線で『この人の紹介なら大丈夫だろう』と、ある程度信頼の置ける子に紹介してもらうのがいいですね。

ですが、『できれば早く辞めてほしいな』と思っているアルバイトさんに限って、『友人を紹介したいんですが』なんて言ってきたりして、正直困ることもあります(笑)」人の成長に関するアカデミックな研究の世界では、こうした信頼関係(専門用語でラポールといいます)を構築するステップが、非常に重要だと考えられています。

お互いのラポールがなければ、採用も育成もうまくいきづらいというわけです。

その意味で、人づて採用は、ラポール形成という課題をクリアするすばらしい方法だと言えるでしょう。

「芋づる式離職」のリスクにも要注意

このように、一見いいことずくめの人づて採用ですが、もちろんメリットばかりではありません。

この採用手法は友人・知人のネットワークをベースに成り立っているため、ひとたび職場や店長に対する評価が下落し不満が蓄積すれば、複数のスタッフがまとめて離職してしまうケースがあるのです。

人的ネットワークの中心となっていたAさんが辞めたことで、Bさん、Cさん、Dさんも連れ立って辞めてしまい、いきなり店長が窮地に立たされる——そんな芋づる式離職のリスクは念頭に置いておく必要があるでしょう。

また、「スタッフの紹介だから…」といって、あまり深く考えずやみくもに人を採りすぎた結果、店長の言うことを聞かないスタッフが増えてしまい、職場が回らなくなったという例もあるようです。

人のネットワークはあくまでもきっかけで、やはり最終的な採用の可否は、店長が自らの目で判断していくべきでしょう。

その際には、やはり「誰から紹介された人なのか」が大きな判断基準になると思います。

「人づて採用」にも「職場づくり」が効く

以上の内容を読んで、「よし、明日もう一度、バイトの○○君に『いい人』がいないか聞いてみよう!」と思った方もいるかもしれません。

アクションを起こすことはすばらしいですが、そこで何より注意しないといけないのは、「そもそも『友人・知人にすすめたい』と思ってもらえるような職場をつくれているか」でしょう。

さもないと、冒頭のダイアローグのようなことになりかねません。

あるいは、「以前からみんなに『いい人を紹介して』と言っているのに、一向に誰も連れてこない…」と嘆いている店長は、もう一度考えてみてください。

あなたがスタッフだったら、友人・知人にその職場を紹介したいと思いますか?つまり、人づて採用の基本もやはり「職場づくり」なのです。

スタッフが他人に紹介したくなるような職場がつくれていて初めて、芋づる式に採用の輪が広がる好循環が生まれます。

先ほど紹介した「歴代の大学サークルメンバーが働く飲食店」も、実際に伺ってお話を聞いてみると、店長さんが学生アルバイトたちから厚い信頼を得ている雰囲気がひしひしと伝わってきました。

「この店長がいる店なら、かわいい後輩たちにも自信を持ってすすめられる」——そんな実感があるからこそ、先輩から後輩へとバトンが渡り続けているのでしょう。

「人にすすめたくなる職場」の特徴は?

では、人手に困らない「人にすすめたくなる職場」には、どんな特徴があるのでしょうか?これについての調査では、図表25のような結果が得られました。

ここから浮かび上がってくるのは、時に厳しく叱ったりしながらも、スタッフをしっかりと育てようとしている店長がいて、研修・教育も整っていて、長期にわたって安心して働ける職場の姿です。

つまり、個人としての成長の機会がしっかりと用意されており、自分自身が「これからもここで働き続けたい」と思える職場ほど、人にすすめたくなるということです。

これは当たり前といえば当たり前ですが、意外といえば意外な結果です。

求人広告などでは「アットホームな職場です。

楽しい仲間たちと一緒に働きませんか?」などといった謳い文句が多用される傾向がありますが、職場を友人・知人にすすめるかどうかを判断するときには、こうした「仲良しグループ」的なノリはさほど考慮されていないことが見て取れます。

「職場の人間関係への満足度」よりも「仕事内容への満足度」が、友人紹介のモチベーションを左右するというのは、意識しておいたほうがいいポイントでしょう。

POINT□「紹介採用」のほうが採用効率は高い□「職場づくり」が最大の「人づて採用」対策になる□「ここで働き続けたい」と思える職場ほど、人にすすめたくなる

TOPIC06アルバイトの「内定辞退」を防ぐには?面接は「店長の対応」が9割

DIALOGUE

「店長、こないだ内定を出した新人さんからお電話ですよ」「はい、もしもし…えっ、そうなの?うん、それでは…(ガチャ)」「あれ?何の話だったんですか?」「隣のファミレスから内定が出たから、ウチのバイトを辞退したいって…」最近では「アルバイトの内定辞退」という事態さえ起こるようになってきた。

面接をして、後日内定の連絡をすると、「別のところに決まったので…」と、辞退されてしまうケースもあるようだ。

アルバイトの内定辞退はなぜ起こるのか?

4人に1人?増えるアルバイトの内定辞退

面接をしたところ、「ぜひ働いてほしい!」と思える人だったので、電話して採用を伝えたのに、後日「ほかの店に決まってしまった」と断られてしまう——。

昨今ではこんなアルバイトの内定辞退も珍しくないようです。

内定辞退といえば、正社員の新卒採用などで起こるものというイメージが一般的でしたが、人手不足が深刻化してきたいま、とうとうアルバイト領域でもかなり普通に見られるようになってきています。

これは調査データにも明確に表れています。

面接担当者に聞いたところ、アルバイトの内定辞退率は24%にも上りました(図表26)。

つまり、忙しい時間を割いて面接をして、「これは!」と思う人に内定を出しても、なんと4人に1人は辞退されてしまうという計算になります。

なぜここまでアルバイトの内定辞退が増えているのでしょうか?一因として考えられるのは、複数同時応募の増加です。

図表26の調査データにあるとおり、なんと求職者の4割以上が2企業以上に同時応募していました。

昨今は求人の数・種類も豊富なうえ、スマホなどで簡単にエントリーできる求人サイトも増えていることもあり、以前よりも応募のハードルが低くなっています。

その結果、求職者は、複数の職場に応募したうえで、職場の値打ち・魅力を〝比較検討〟するという行動をとるようになっています。

では、内定辞退はどうすれば防ぐことができるのでしょうか?効果的な方法を考えていく前に、次のチェックリストをやってみてください。

「誤解を生む求人」を出さない

では、実際に面接も受け、採用の連絡をもらった人は、いったいどんな理由で辞退しているのでしょうか?「an」の調査にはこんなデータがあります(図表27)。

見てのとおり、上位に来ているのは、仕事の条件や内容に関わるものです。

1位の「もっと条件のいい別の仕事があった」といった理由については、現場レベルではいかんともしがたい部分もあるかもしれません。

ですから、何かアクションを起こすとすれば、店長として改善の余地があるその他の部分にフォーカスすべきでしょう。

たとえば、「仕事内容が事前の情報やイメージと食い違っていたこと」が、2・3位の理由に上がっています。

これは「面接をする前」と「面接をしたあと」でのギャップが、求職者に不信感を生むからでしょう。

応募者の数を少しでも増やすために、不都合な条件を書かないようにしたり、あいまいな表現にしたりするのは、かえって逆効果です。

いずれ面接時や雇用後にわかってしまうことは、最初からはっきりさせておくべきでしょう。

そうした〝ギャップ〟は求職者やスタッフの信頼を損ない、内定辞退や早期離職といった事態につなます。

それによって、最も不利益を被るのは店長自身なのだということを忘れてはなりません。

面接時に「ここ、ヤバいかも…」と思われるポイント

さらに注目したいのは、その次に多い辞退理由「職場・店長・社員・面接者の雰囲気が悪かった」(4位)、「別の仕事のほうが、雰囲気がよかった」(5位)です。

ほとんどの内定辞退は、後日の電話連絡やドタキャンで明らかになるケースがほとんどです。

しかし、じつは多くの求職者はその場で口に出すことはないにしても、面接で職場を訪れている最中に「(ここで働くのはやめておこう…)」と判断しているのかもしれません。

先ほど、外食・小売では約半数の応募者が事前に下見に来ているというデータを確認しました。

→TOPIC03これは裏を返せば、残りの半数にとっては「面接こそが初めての下見の機会である」ということです。

容易に下見がしづらい非店舗型の職場であれば、面接時の印象はなおさら大きなウエイトを占めることになるでしょう。

実際、応募者は職場の雰囲気やスタッフ間のコミュニケーションの様子、清掃が行き届いているかなどを細かくチェックしています。

「an」の調査の「面接のとき、『この職場大丈夫かな?』と気になってしまうのは?」という質問では、次の図表28のような結果が出ています。

これらの点は、店長の努力次第でどれだけでも改善できるポイントです。

「面接中に怒号が聞こえる」というのは論外ですが、清掃などは明日からでも実践できるはずです。

店内だけでなく、バックヤードやトイレが汚いのも、心象としてはかなりのマイナスポイントです。

また、標語やノルマが壁にたくさん貼ってあると、「いかにも厳しそうな職場」という印象を与え、応募者を尻込みさせてしまうようです。

「ふだん見えないところ」を整える

応募者はちょっとしたコミュニケーションや掲示物・置物など、ふだん顧客としては見えてこない情報から、少しでも多くのことを読み取ろうとしています。

すでに働いている人からすれば〝当たり前の風景〟になっていても、それが応募者にとっては〝強烈なメッセージ〟になりかねないのです。

あるファミレスのアルバイト応募者は、面接のときに目にした光景にひどくショックを受けたと語っていました。

顧客として抱いていたオシャレできれいな店舗のイメージと、面接のときに見たバックヤードやキッチンのあまりの乱雑ぶりとのあいだに、大きなギャップを感じたからです。

このようにして内定辞退者を出してしまうことを、店長は深刻に受け止めるべきです。

なぜなら、これはアルバイト人材を1人採り損ねただけでなく、1人の顧客の信頼を失ったことをも意味しているかもしれないからです。

場合によっては、そこから職場の悪評が広がる可能性すらあります。

面接とは、日頃お客様には見られない〝内幕〟を外部の人にさらす機会でもあります。

そのようなリスクも踏まえ、面接時の環境整備を心がけるべきでしょう。

採用活動に「リクルーター」が占める役割は大きい

そして、やはり重要なのが「面接者」の印象です。

アルバイトを本部で一括採用している企業もあるでしょうが、そうでない職場では店長が面接者を務めているケースがほとんどでしょう。

採用の段階において、面接者の存在が大きなウエイトを占めていることは、過去のリクルーティング研究でもわかっています。

リクルーティング研究における重要分野の1つとしてリクルーター研究というものがあります。

これは、リクルーター、つまり採用担当者の仕事の仕方・態度・情報の伝え方などが、企業の採用活動にどのような影響を与えるかを解明する研究です。

正社員・アルバイトにかかわらず、求職者にとってリクルーターは〝最初に出会う社員〟です。

求職者はこの人を通じてその企業の全貌をイメージしようとしますから、リクルーターの印象が入社するかどうかの意思決定を大きく左右することになります。

求職者がいちばん最初に出会う人というのは、どうしても、その組織のシグナルとなります。

実際はそこで出会った人が必ずしも組織の構成員を象徴するような多数派であるとは限りませんし、共通の要素を持っているわけでもないのですが、どうしても求職者はその人物の人柄を通じて組織を見ようとするものなのです。

しかも正社員であれば、入社後にリクルーターと一緒の部署で働くことになるかどうかはわかりませんが、アルバイトの場合は確実にそのリクルーター(=店長)の下で働くことがわかっています。

となると、店長が面接時にどのような印象を持たれるかというのは、やはり圧倒的に重要なのです。

店長は求職者に「見られている」

店長は面接を「する側」であると同時に、「される側」でもあります。

つまり、「選ぶ側」でもあり「選ばれる側」でもあるということです。

複数の職場に応募している求職者が多い時代ですから、「この店長はあの店長よりも面接の応対が雑だな」「あの店長のほうが説明がわかりやすかったな」などという具合に〝比較〟される可能性すらあるのです。

では、面接のときにどのような応対をすれば、好印象を持ってもらえるのでしょうか?「面接のとき『こんな面接者だったらうれしい』と思うのは?」という質問に対する回答データをまとめました(図表29)。

アルバイトとして働いてみたくなる面接のポイントは3つ。

「リラックスできる雰囲気」「説明の丁寧さ」「人柄を見ようとする態度」です。

雰囲気づくりについて言えば、面接の場所を工夫するなども1つでしょう。

ある店長さんは、アルバイトの面接をするときに、慌ただしい店舗内の控え室ではなく、近くの落ち着いたカフェに移動するようにしているそうです。

説明の丁寧さについてはあとで詳しく見ますが、仕事の全体像をなるべく現実に沿ったかたちで伝えるということが、その後の離職を防止するという観点からも、非常に重要です。

また、経歴や条件ばかり尋ねるのではなく、その人がどんな人なのかに興味を持つことも大切です。

履歴書を見てとおりいっぺんの質問をするだけではなく、相手の顔を見ながら、趣味や関心事などの価値観にも目を向けるようにしましょう。

一見必要のない情報であっても、「あなたに興味を持っています」という態度を示すことは、相手への印象を大きく左右します。

POINT□4人に1人が内定辞退している□面接は最大の下見。

職場は隅々まできれいにする□店長は見られている。

「選ばれる」ような応対をこころがける

興味深いのは、なんと半数近く(47.3%)が「応募後、先方から連絡が来るまで」に「面接に行かない」と決めている点です。

つまり、電話やウェブでエントリーしたあと、職場や企業からの折り返し連絡を待っているときに「面接に行くのをやめよう!」と決めているわけです。

最初はとにかくスピードが肝心

そこにはどんな理由があるのか?それを聞いた結果が、次の図表31です。

ここからわかるとおり、「その会社・お店からの応募後の対応が悪かった」「すぐに面接の連絡が来なかった」など、職場側の「対応」が面接に行かなかった理由にあがっています。

若い世代には電話に苦手意識を持つ人も増えており、ウェブで応募するケースも増えています。

ウェブ経由でのエントリーを受け付けるようにすれば、応募者側も気軽に応募できますし、仕事中の忙しい時間帯に電話応対する手間も省けます。

ただし、その分、求職者からはリアルタイムに近いレスポンスが要求されるようになることも忘れないようにしましょう。

せっかく応募したのにすぐに折り返し連絡が入らないと、「この職場は大丈夫だろうか…」と不安に感じる人も増えているようです。

さらに、かなりの割合の人が複数のアルバイト先を同時に検討していることを考えると、いち早く「感じのいい返答」があったところに決めてしまう可能性は十分にあります。

応募連絡への対応は遅くとも「翌日中」に

では、応募後どれくらいのタイミングで「折り返し連絡」を入れることが期待されているのでしょうか?図表32を見てください。

で、かなりの割合の人が素早い折り返し連絡を求めていることがわかります。

月曜日にエントリーの連絡をしたのに、水曜日まで何も返事がなければ、求職者の7割程度は「対応が遅い」という印象を持つということです。

まずは「善は急げ!」です。

面接の前までに店長にできる最善の方策は、一刻も早く応募者に折り返し連絡を入れること。

大手企業では、専用のコールセンターを設置し、面接までのタイムスパンをできる限り短くする施策を取っているところもあります。

あなたの職場では、どのくらいのスピードで対応できているでしょうか?

「今日、新人さんの面接がある」と現場に伝えていますか?

すでに指摘したように、面接を受けに来た応募者の意思決定には、〝職場の環境〟が大きな影響を与えます。

→TOPIC06ここで言う環境というのは、整理整頓や清掃といったものだけではありません。

職場のスタッフに対する意識づけも環境整備の1つのポイントだと言えます。

先ほど「面接では、求職者から店長は〝見られている〟」と書きました。

同様に、求職者は職場のスタッフたちのこともよく見ているのです。

店長としては、スタッフに「自分たちも見られているのだ」という認識を持たせることが重要です。

アルバイトの面接に行ったSさんという方から聞いた話です。

Sさんがお店にいたスタッフの方に「店長さんに面接のアポイントがあるのですが…」と伝えたところ、そのスタッフがこう言って店長を呼び出しました。

「店長、なんか『バイトの面接だ』っていう人が来ていますよ〜」Sさんは、この「なんか」というひと言を聞いたとき、思わず脱力してしまったそうです。

そして、決してこれだけが原因ではないものの、最終的にはこの職場で働くことを自分から断ってしまったといいます。

これ以外にも、求人広告を出しているのを現場のスタッフが知らなかったために、応募の電話が突然かかってきても、きちんとした電話応対ができないというケースもよくあります。

これも応募した側からすれば、大幅なイメージダウンでしょう。

「いちいちアルバイトの面接について、現場に情報共有している暇なんかないよ」とお思いでしょうか?しかし、たったこれだけのことで、アルバイトを1人採用できるかどうかが変わってしまう時代なのだとも言えるのではないでしょうか?こうしたこまやかな点にまで気を配れるかどうかが、店長としての今後の生き残りを左右していくように思います。

「受け入れ」のスタートダッシュは面接次第

これは正社員・アルバイトに限らない話ですが、新しい人材が入社したときには必ず受け入れのステップというものが存在します。

新人がその職場になじんでいくプロセスと言ってもいいでしょう。職場の管理者としては、なるべく早く新人に溶け込んでもらい、パフォーマンスを上げてもらいたいものです。

この新人受け入れのステップは、次の第3章で詳しく扱うテーマではありますが、見方によっては面接段階ですでに受け入れがはじまっているとも言えます。

都内の外食チェーンで活躍する店長Kさんは、アルバイトの採用面接をあえてスタッフたちが休憩しているバックヤードで行うようにしているといいます。

つまり、面接をしている最中も、Kさんの真横でほかのアルバイトが楽しげに雑談をしていたりするわけです。

言葉で「楽しい職場ですよ」とアピールするよりも、この「環境に語らせる手法」のほうがよっぽど説得力がありますよね。

面接中に「(この人は採用しよう。

でも人見知りしそうなタイプだな)」と感じたら、Kさんはその場でほかのスタッフにも紹介してしまい、働きはじめてもすぐに溶け込めるような空気をつくっているとも言っていました。

冒頭のダイアローグのように、店長が忙しすぎるせいで、指定時刻になっても面接がなかなかはじめられないというケースも絶対に避けるべきです。

時間どおりに面接に来たのに、長時間待たされた応募者は、「この職場は自分を受け入れる態勢が整っていない」という印象を受けるでしょう。

あとで見るとおり、「店長が面接に遅れてやってきた」というのは、かなりマイナスの印象を与え、入社後の早期離職にも影響することがわかっています。

いい人材が来てくれたときのためにも、採用プロセスのあらゆる面で「受け入れ態勢」を整えておくようにしましょう。

新人の受け入れは、勤務初日の時点ではなく、すでに面接の時点で(あるいはもっと言えば「応募への折り返し連絡」の時点で)はじまっているのです。

POINT

□求人への応募にはなるべく早く(遅くとも翌日中に)レスポンスする

□求人を出していることを現場にも情報共有しておく

□面接の時刻を守るなど、受け入れ態勢が整っていることを示す

TOPIC08「ここで働きたい!」と思わせる面接とは?「給料以外の価値」を明示する

DIALOGUE

「さあ、そろそろ忙しくなるよ。金曜夜のシフトは大変だからね〜」「え、そうなんですか?聞いてないんですけど…」「おいおい、採用面接でも『金曜は忙しい』って説明したよ!」「知りません!店長が〝伝えたつもり〟になってるだけじゃないですか?」アルバイト応募者の適性を見たり、条件をすり合わせたりするだけで、面接を終わらせていないだろうか?店長とスタッフがじっくり一対一で向き合える採用面接の場は、店長が大切にしている価値観を確実に伝え、最高のモチベーションを持って働きはじめてもらうための「育成のステップ」でもある。

面接も「アルバイト育成」の重要ステップ

前項の最後で「採用プロセスは『新人受け入れ』としての意味も持つ」という話をしました。これは「面接・内定の辞退を防ぐ」ためだけではありません。

優秀な店長は、面接が「採用後の育成」にも大きな影響を与えることを自覚し、面接の段階でその人材のモチベーションを引き出そうとしています。

そのときのポイントが以前に確認した応募者のニーズです。

→TOPIC04面接で重要なのは、時給や勤務時間などの条件面のすり合わせだけではありません。

それ以外の面で、その人がどんなことを求めているかを探り、「この職場なら希望が叶えられそうだ」という期待感を持ってもらえれば言うことはありません。

応募者それぞれにさまざまなニーズがあるのはたしかだとしても、属性ごとにどんな傾向があるのでしょうか?図表33が調査結果です。

「収入」以外の上位を並べてあります。

属性別に見ると、仕事を通じた自己成長を期待しつつ、交友関係を広げたいという希望を持っている学生、家庭を大切にしつつ、社会との接点をほしがっている主婦、新しい仕事にチャレンジするなど、仕事におけるスキルアップ・能力向上を意識しているフリーターといったところでしょうか。

こちらも参考にしながら、「応募者がこの職場に何を期待しているのか」を考えてみましょう。

「お金以外に得られるものがありそう」と感じてもらう

では、逆にこちらからはどんなことを伝えれば、応募者のやる気を引き出すことができるでしょうか?これについては興味深いデータが出ています(図表34)。

見てのとおり、「仕事のやりがいや魅力」(1位)や「会社や職場の目標・理念」(4位)の伝達が、モチベーション向上に効果を発揮しています。

つまり面接者(店長)自身が、自分たちの仕事にはどんな意味があるのか、どんなところにやりがいを感じているのか、職場全体として何を目指しているのかといったことを、しっかり説明するということです。

ある居酒屋チェーンでは、面接時に条件を伝える際に、「時給はなるべく上げていきたいが、最高でもこの金額までしか上げられません」とはっきり伝えているそうです。

そのうえで「だからこそ、あなたには『給料以外のもの』を持って帰っていただけるように、店長として最大限に努力する」と約束するといいます。

このひと言があると、新人ははじめから「『給料以外の何か』もこの店で得たい」というマインドで仕事に向き合えるようになります。

もちろん、アルバイトは時給が上がることを望んでいるでしょうし、企業としてもその実現のために最善を尽くすべきです。

ただ、スタッフに時給以外の価値にも目を向けてもらい、やりがいを感じながら働いてもらうためには、この居酒屋の伝え方はとても効果的ではないかと思います。

これを機にぜひ店長としても、「この職場が給料以外に何を提供できるのか」を整理してみてください。

「ここでの経験を就活でアピールして、内定を勝ち取った先輩学生バイトがいる」とか「主婦仲間の輪が広がって、サークル活動もはじまった」とか、どんなことでもいいと思います。

「伝えたつもり」になっていないか?

「仕事のやりがいや理念も伝えているが、それに意味があるとは思えない」という店長もいるかもしれません。たしかに面接の段階で、こうしたことを言葉で伝えるのは難しいと思います。ここで注意したいことが2つあります。

  1. 〝伝えたつもり〟になっていないか
  2. 「やりがいを伝える」の意味を履き違えていないか

1つめの「伝えたつもりになっていないか」とは、まさに文字どおりの意味です。「やりがい」や「理念」に限らず、そもそも応募者にこちらのメッセージが届いていないという可能性がないか、もう一度考えていただきたいのです。

図表35のデータをご覧ください。

見てのとおり、面接で伝える側(店長)と伝えられる側(応募者)とのあいだには認識ギャップが存在します。仕事内容、シフト、時給や交通費など勤務条件から、試用期間や研修、職場の雰囲気やほかのスタッフのことなど、ただでさえ伝えることが多い採用面接です。

抜けもれが出ないよう、マニュアルが用意されている企業もあると思いますが、そのあたりがしっかり整備されていない場合は、「面接で伝えるべきことリスト」を店長自ら作成するようにしましょう。

また、スタッフがあとから復習できるように、大切なこと・どうしても伝えたいことは紙の文書にして手渡すのもオススメです。

「やりがいを伝える」=「熱い想いをぶつける」ではない

2つめの注意点は、「やりがい」を伝えることと、店長が仕事に対して抱いている「情熱」や「思いの丈」をぶつけることは、似て非なるものであるということです。

某ファミレスの面接を受けた学生のFさんは、店長さんにいたく気に入られ、「この職場で君を一人前のアルバイトに育ててみせる!」と熱く語られたといいます。

日頃から誇りを持って働いている店長さんとしては、よかれと思ってのことだったのでしょう。

しかし、Fさんは逆に、「自分はこの仕事に対してそこまで熱くはなれない…」という気持ちになり、後日、内定を辞退してしまったそうです。

こうした例からもわかるとおり、ここで言う「やりがい」とは、「店長が感じているやりがい」ではありません。

一方的に店長の価値観を押しつけるのは、むしろ逆効果だと思ったほうがいいでしょう。

では、「面接で伝えるべきやりがい」とは何なのでしょうか?どんな伝え方をすれば、「魅力的な職場だな」と思ってもらえるのでしょうか?最も大切なことは、これには「決まった答え」がないということです。

つまり、それぞれの求職者は「それぞれのニーズ」を持って、採用に応募し面接に出向いています。

「何か貴重な経験をしたい」と思っているフリーターには、この仕事がいかに特別なのかを伝えるのが効果的ですし、「友人や仲間がほしい」という思いを持っている主婦の方であれば、仕事を通じて横のつながりも生まれているといった話をすべきでしょう。

学生であれば「ここでのキャリアをアピールして就活に成功した先輩がいる」といったエピソードが喜ばれるかもしれません。

求職者のニーズと職場が提供できる価値とのマッチングがうまくいったときに初めて、求職者は「(ここで仕事をする意味がありそうだな)」とまさにやりがいを感じるわけです。

職場のアピールポイントの「引き出し」を整理しておく

「そうは言っても…求職者のニーズを知る方法なんて見当もつかない」とお思いでしょうか?じつはとても単純なことです。面接中にこちらから「聞く」、ただそれだけです。優秀な店長はこの点を意識してヒアリングをしています。

図表34のデータを見ても、「やりたい仕事内容をしっかり聞いてもらえた」という実感が、モチベーションに大きく影響しています。

つまり、「面接でやりがいを伝える」とは、①求職者の求めるもの(興味・関心)を聞いたうえで、②職場がそれにどう応えていけるかをアピールすることにほかなりません。

これを踏まえるなら、店長としては、聞き出した多様なニーズに応えられるだけの、多様なアピールポイントの〝引き出し〟を用意しておくことが望ましいでしょう。

図表36にその例をあげておきましたので、ぜひこれも参考にしながら、あなたの職場がスタッフに提供できる価値(できればお金以外にも)をリストアップしてみてください。

POINT

□面接では「給与以外のニーズ」を探ることを意識する

□面接で仕事のやりがい・魅力を伝え、働きたい気持ちを高める

□「面接で伝えたことは半分しか伝わらない」つもりで丁寧に伝える

第2章のまとめ

Q.募集広告を出しても、なぜ応募者が来ない?

▼「イメージがよくないから」「大々的な求人広告は出せないから」と諦めていませんか?求職者に最も影響を与える採用メディアは「職場を実際に見たときの印象」です。広告の効果を最大化するためには、「下見」を意識した「職場の整備」が欠かせません。

Q.なぜ「来てほしい人材」が集まらないのか?

▼ほしいスタッフのイメージがある程度はっきりしている場合は、そうした人材の「ニーズ」に応えられるような求人を打っていく必要があります。スタッフの属性ごとに特徴は見られますが、近年は総じて「職場の雰囲気」を重視する傾向が高まっています。

Q.「友人紹介」を増やすには?

▼コスト面や定着率、人材のクオリティ確保を考えると、「人づて採用」がベストです。スタッフ自身が今後も働きたいと思えて、人にもすすめたくなるような職場をつくる試みが欠かせません。

Q.アルバイトの「内定辞退」を防ぐには?

▼内定辞退とは、求職者が店長ないし応募先を「不採用」と判断した結果です。面接は絶好の「下見」の機会。採用面接は「選ばれるための場」であると発想を切り替えましょう。

Q.アルバイトの「面接辞退」を防ぐには?

面接辞退の原因は「職場からのレスポンス」にあります。応募連絡に対するすばやい返答はもちろんのことですが、スタッフたちにも求人を出していることを伝え、職場全体での受け入れ態勢を整えていく必要があります。

Q.「ここで働きたい!」と思わせる面接とは?

▼ポイントは「お金以外の価値」を伝えることです。とはいえ、店長の一方的な想いをぶつけるのではありません。その人の「ニーズ」を面接中に探り、この職場がそれに応えられると思ってもらう必要があります。

[COLUMN]意外な盲点!?交通費

問題

アルバイトに交通費を支給するかどうかは、法的にはとくに規定がなく、業種や地域によっても異なり、基本的にはその職場ごとの決まりとなっています。

とはいえ、仕事を探すうえで「交通費が出るかどうか」を重視する求職者が多いのも事実です。とくに、アルバイト先が自宅や学校から離れた遠隔地になる場合には、この点がネックになる場合も…。

そこで、交通費支給の有無を気にするのは、とくにどんな求職者なのか、調査してみました。まず性別で見ると、女性は年齢にかかわらず総じて高いのが見てとれ、男性は高齢になるほど傾向が高くなっています。

地域別には、都市部に住んでいる人のほうがやや高く、いろいろなアルバイトを経験している人ほど、交通費への意識が高くなるという結果が出ました。

都市部でアルバイト人材の確保が難しいエリアにあり、アルバイト経験のある女性やシニアを採用したいと考えている場合は、交通費の支給は積極的に検討するべきでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次