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第16章良い習慣を毎日続ける方法

第16章良い習慣を毎日続ける方法HowtoStickwithGoodHabitsEveryDay一九九三年、カナダのアボッツフォードにある銀行が、トレント・ディアズミッドという二三歳の株式仲買人を雇った。アボッツフォードは郊外のほうにあり、大きな取引のほとんどを扱う近くの都市、バンクーバーの陰に隠れた小さな町だ。そういう場所でもあり、ディアズミッドが新米ということもあって、誰も大して期待していなかった。ところが、シンプルな毎日の習慣のおかげで、彼はどんどん業績を伸ばした。ディアズミッドは毎朝、まず机の上にふたつのビンを置いた。ひとつのビンには一二〇個のペーパークリップが入っている。もうひとつは空だ。彼は毎日席に着くなり、セールス電話をかけた。そのあとすぐ、ひとつのクリップを満杯のビンから空のビンへ移し、これを繰りかえしていった。「毎朝、ビンに入った一二〇個のクリップを、もうひとつのビンへ全部移すまで電話をかけつづけたんだ」と、彼はわたしに語った。一八カ月間に、ディアズミッドは五〇〇万ドルの利益を銀行にもたらした。そして二四歳までに、年収は七万五〇〇〇ドル、今日の一二万五〇〇〇ドルに相当する額になった。その後まもなく、他の会社で年収数十万ドルの仕事に就いた。わたしはこのテクニックを、ペーパークリップ戦略と好んで呼んでいる。そして数年間のうちに、読者からさまざまな形の体験談を聞いた。ある女性は本の原稿を一ページ書くごとに、ヘアピンを箱からもうひとつの箱へ移していった。別の男性は腕立て伏せを一セットするごとに、ビー玉をビンからもうひとつのビンへ移していったという。進歩すると満足感を得られるし、クリップやヘアピンやビー玉を移していくように、目に見えるものでその量を測ると、進歩した証拠がはっきりと表れる。すると行動が強化され、どんな行動でもわずかな達成感がすぐに得られる。目に見える測定法には、さまざまな形がある。食事日記、運動記録、ポイントカード、プログレスバーのソフトウエア、本のページでもいい。だが、進歩のようすを測る最善の方法は、「習慣トラッカー」を使うことだろう。習慣の記録をつけるには〝習慣トラッカー〟とは、習慣を行ったかどうかを測るシンプルな方法である。もっとも基本的なやり方は、カレンダーを買い、ルーティンを守った日を線で消すことだ。たとえば、月曜日、水曜日、金曜日に瞑想したなら、それぞれの日付に×印をつける。やがて、カレンダーは習慣の連続を記録したものとなる。無数の人たちが習慣を記録してきたが、もっとも有名な人はベンジャミン・フランクリンだろう。二〇歳から、フランクリンはどこへ行くにも小さなノートを持っていき、自分が目指す一三個の徳目について記録した。徳目のリストには、「時間を無駄にするなかれ。つねに有益なことに使うべし」、「無用な話をするなかれ」などがある。毎日の終わりに、フランクリンはノートを開き、自分の進歩のようすを記録した。コメディアンのジェリー・サインフェルドは、ジョークを書きつづけるために、習慣トラッカーを使っているそうだ。ドキュメンタリー作品『コメディアン』で、自分の目標は、毎日ジョークを書くという「鎖を断ち切らないこと」だけだと語っている。いいかえれば、そのジョークがいいか悪いか、どれほどインスピレーションを受けたか、などはあまり気にしない。ただ机に向かって、ジョークを書き加えることだけに力を注いでいる。「鎖を断ち切ってはいけない」というのは、力強いモットーだ。セールス電話の鎖を断ち切ってはいけない、そうすれば業績を上げられるだろう。運動の鎖を断ち切ってはいけない、そうすれば思ったより早く身体が鍛えられるだろう。毎日の創作の鎖を断ち切ってはいけない、そうすればすばらしい作品集ができるだろう。習慣トラッカーが強力なのは、行動変化の法則を活用しているからだ。同時に、行動をはっきりさせ、魅力的にし、満足できるものにしている。では、ひとつひとつ見ていこう。メリットその一――習慣トラッカーは、はっきり目に見えるあなたの最後の行動を記録することは、次の行動を始めるきっかけとなる。習慣を記録することで、カレンダーに並んだ×印や、食事記録の食事リストのように、目に見えるきっかけが自然にできあがる。カレンダーを見て×印が目に入るたびに、また行動しようという気になる。研究によれば、減量や、禁煙、血圧を下げることを目標にして、その進捗状況を記録する人は、記録しない人よりも改善しやすいという。一六〇〇人以上を対象に行った調査では、毎日食事の記録をつけた人は、つけなかった人より二倍の体重を減量したそうだ。ただ行動を記録するという作業によって、行動を変えたいという気持ちを起こすことができる。また、習慣トラッカーはあなたを正直にしてくれる。多くの人は、自分の行動に対してゆがんだ見方をする。実際より良い行動をしていると思いがちだ。習慣を記録すると、自分の行動に目をつぶるのをやめ、本当は毎日何が起きているか気づくことができる。ビンのなかのクリップを一目見たら、どれだけ努力したか(または、していないか)すぐにわかる。証拠が目の前にあれば、自分に嘘はつけないだろう。メリットその二――習慣トラッカーは魅力的であるもっとも効果的なモチベーションは進歩である。前へ進んでいるという印があれば、このままもっと続けようと、ますますやる気が出てくる。このように習慣トラッカーは、病みつきになるほどモチベーションを上げることができる。ひとつひとつの小さな勝利によって、やる気が育まれていく。これはとくに、調子の悪い日に効果的である。気分が落ちこんでいると、これまでに達成した進歩のことも忘れてしまいやすい。習慣トラッカーは、目に見える努力の証拠だ。どんなにがんばってきたか、思い出させてくれる。さらに毎朝目にする空欄が、さあ、始めようという気にさせる。これまで続いてきたものを途切れさせて、せっかくの進歩を失いたくないからだ。メリットその三――習慣トラッカーは満足できるこれがもっとも大きなメリットだ。記録すること自体が報酬になり得る。やることリストの項目を線で消したり、運動記録のメニューを完了したり、カレンダーに×印をつけたりすることで、達成感が得られる。投資ポートフォリオの厚みや、本の原稿の長さなど、成果が上がっていくのを見るのは気分がいいものだ。そして気分がよければ、長く続けやすい。また習慣トラッカーは、大切なことから目をそらさないように助けてくれる。おかげで、あなたは結果よりプロセスに集中できる。六つに割れた腹筋に執着するのでは

なく、これまで続いてきたものを途切れないようにし、運動を欠かさないタイプの人になる。まとめれば、習慣トラッカーは、(一)行動を思い出させるような、目に見えるきっかけを作る。(二)自分の進歩のようすが見えると、それを失いたくないので、自然とやる気が出る。(三)習慣の成功をひとつ記録するたびに、達成感を得られる。さらに習慣トラッカーは、なりたいタイプの人に票を投じているという証拠になる。これはうれしいもので、すぐに得られる本質的な喜びだといえる。

*興味のある方は、以下のサイトで習慣トラッカーのテンプレートをご覧いただきたい。https://jamesclear.com/atomichabits/trackerさて、あなたは不思議に思うかもしれない。習慣トラッカーがそんなに役立つなら、なぜこれまで話さなかったのか?これほどメリットがあるのに、今まで述べなかった理由はごく簡単だ。記録や測定と聞くと、拒絶する人が多いからである。それはふたつの習慣を強いることになるので重荷になってしまう。身につけようとしている習慣と、それを記録するという習慣だ。ダイエットですでに苦労しているのに、カロリー計算なんて面倒くさい。仕事がいっぱいあるのに、セールス電話をいちいち記録するなんて、うんざりする。こう言うほうが楽だろう。「食べる量を減らせばいいさ」とか、「もっとがんばるから」とか、「忘れずにやるよ」とか。みんなが必ず言うのが、「決断日記を持ってるけど、ほとんど使ってないなあ」や「運動記録を一週間つけたけど、やめちゃった」という言葉だ。わたしもそうだった。食事日記を作ってカロリーを記録したことがあるが、なんとか一食分つけて、あとは投げ出してしまった。必ず記録しなければいけないわけではないし、生活すべてを測る必要もない。でも、ほとんどの人にとっては、たとえ一時的であっても、なんらかの形でメリットがあるだろう。記録を簡単にするにはどうしたらいいのだろう。第一に、できるだけ自動化することだ。あなたは自分で気づかないうちに、すでにどんなにたくさん記録しているか知ったら驚くだろう。クレジットカードの請求書には、外食した回数が記録されている。フィットビット〔身につけるだけで、歩数や健康状態を記録する歩数計〕は歩数や睡眠時間を記録する。カレンダーには、毎年どれくらい新しい場所へ旅行したか記録されている。どこでデータを集めればいいかわかったら、週ごとか月ごとにチェックするよう、カレンダーにメモしておこう。このほうが毎日記録するより実用的だ。第二に、手で記録するのは、いちばん大事な習慣だけにしよう。一〇個の習慣をときどき記録するより、ひとつの習慣を一貫して記録するほうがいい。最後に、習慣を行ったらすぐに記録しよう。行動の完了が、書きこむきっかけである。この方法で、第5章で述べた習慣の積み上げと、習慣の記録を組み合わせることができる。習慣の積み上げ+習慣の記録、の公式は、〈現在の習慣〉をしたら、〈習慣を記録〉する。・セールス電話をかけたら、クリップを移動する・ジムで一セット終えたら、運動日記に記録する・食器洗浄機に皿を入れたら、食べたものを書きとめるこの方法を使えば、習慣を記録しやすくなる。あなたが行動の記録を楽しむタイプではなくても、数週間の記録を見れば考えさせられるだろう。自分が実際に時間をどう使っているか見るのは興味深いものだ。とはいえ、どんな習慣の連続でも、どこかで途切れることがある。そしてどんな測定より大事なのは、習慣がコースアウトしたときのための良い計画を持っていることだ。習慣が途切れたとき、すぐ元に戻す方法どんなに堅く習慣を守っていても、どこかで人生に邪魔されるのは避けられない。完璧は不可能だ。やがて緊急事態が発生するだろう。病気になったり、出張に行かなければならなかったり、または家族があなたの助けを必要としたり。このようなとき、わたしはいつも自分にシンプルなルールを言いきかせる――二回はさぼらないこと。一日さぼったら、できるだけ早く元に戻すようにしている。一回運動を休んだら、二回続けて休まないようにする。ピザを丸ごと一枚食べてしまったら、その次は健康的な食事にする。完璧にはなれないが、二回目の失敗は避けられる。ひとつの連続が途切れたら、すぐに次の連続を始める。最初の過ちは、あなたを駄目にしない。駄目にするのは、そのあとスパイラル状に続く過ちの繰りかえしである。一回の失敗はアクシデントだ。二回の失敗は、新しい習慣の始まりになる。これは、勝者と敗者の性格の違いを表すものだ。誰でも成果が出なかったり、トレーニングができなかったり、仕事がうまくいかない日があったりする。でも成功する人は、失敗してもすぐに立ち直る。習慣が途切れても、早く再開できたら問題ない。わたしはこの原則がとても大事だと思っているので、望んでいるほど完璧にできなくても、習慣を続けていける。わたしたちは習慣について、オール・オア・ナッシングという融通のきかない考え方に陥ることがとても多い。問題は失敗することより、完璧にできないならやらないほうがいいという考え方のほうである。調子の悪い日(または忙しい日)に、やろうとするだけでも、どれほど貴重か気づいてほしい。成功した日の利益よりも、失敗した日の損失のほうが大きい。もし一〇〇ドルを投資して、五〇パーセントの利益があれば、一五〇ドル手に入る。でも、そのあと三三パーセント損失を出すだけで、一〇〇ドルに戻ってしまう。いいかえれば、三三パーセントの損失を避けることは、五〇パーセントの利益を得ることと同じ価値がある。投資家のチャーリー・マンガーはこう語っている。「利殖の第一原則は、不必要に中断しないことだ」だからこそ、「出来の悪い」運動が大切であることが多い。調子の悪い日や出来の悪い運動は、それまでの調子のいい日に積み上げてきた成果を維持してくれる。一〇回のスクワット、五回のダッシュ、一回の腕立て伏せなど、本当になんでもいいから、何かするだけで大きな意味がある。ゼロにしてはいけない。損失があなたの成果をむしばむことのないようにしよう。さらに、これは運動中の話だけではない。運動を欠かさないタイプの人になることにも関係する。調子のいいときは楽にトレーニングができる。でも大事なのは、調子の悪いときでも、やろうとすることだ。たとえ理想より少ない量でもいい。ジムへ五分間行っても、身体は鍛えられないかもしれないが、アイデンティティーを再確認することにはなる。行動変化でオール・オア・ナッシングの考え方をすることは、習慣を駄目にする落とし穴のひとつにすぎない。もうひとつの潜在的な危険、とくに習慣トラッカーを使っているときにありがちな危険は、間違ったものを測ることである。いつ習慣を記録するべきか(また、してはいけないか)を知る仮に、あなたがレストランを経営していて、シェフの仕事ぶりを知りたいとしよう。それを測る方法のひとつは、客が毎日支払う金額を調べることだ。客がたくさん来店すれば、料理はおいしいにちがいない。少なければ、何かが良くないにちがいない。でも、毎日の収益というひとつの測定値だけでは、実際に起き

ていることの全体はわからない。食事代を払っても、おいしいと思ったかどうかはわからないからだ。たとえ不満のある客でも、食い逃げはしないだろう。それどころか、収益しか見ていなかったら、だんだん料理がまずくなっていき、それをカバーするた

めにマーケティングや割引などをするようになるかもしれない。かわりに、料理を完食した客の人数や、チップをたくさん置いていく客の割合を調べるほうが、ずっと効果的だろう。行動の記録をつける負の側面は、背後にある目的よりも、数字に動かされるようになってしまうことだ。四半期所得で自分の達成度を測っていると、売り上げや、収益、四半期所得の会計処理を優先するようになるだろう。減った体重で達成度を測っていると、たとえそれが無謀なダイエットや、ジュースクレンズ〔数日間ジュースだけを飲んで断食する美容法〕、脂肪燃焼サプリメントのせいであっても、体重計で減った数字だけを優先するようになる。人の心は、どんなゲームでも「勝ちたい」と思うからだ。この落とし穴は、生活上のさまざまな分野でしょっちゅう表れる。有意義な仕事をすることより、長時間働くことが大事に思える。健康より、一万歩歩くことを気にかける。学習や、好奇心、批判的思考法を重視するより、標準テストでいい点が取れるように教育する。要するに、測ったものを優先する。間違った測り方を選ぶと、間違った行動をとるようになってしまう。これは時に「グッドハートの法則」と呼ばれる。経済学者チャールズ・グッドハートにちなんで名付けられたもので、その原理はこうである。「測定が目標になれば、それはもう良い測定ではなくなる」。測定値は、ガイドとして大きな目標へ向かわせるときに役立つのであり、あなたを消耗させるなら、なんの役にも立たない。それぞれの数値は、仕組み全体におけるひとつの評価にすぎない。わたしたちが住むデータ駆動型の世界では、数字を過大評価し、一時的で微妙で測りにくいものを過小評価しがちだ。測れる要素だけが存在する要素だと誤解してしまう。でも、測れるからといって、重要なものとはかぎらない。また、測れないからといって、重要でないとはかぎらない。このように、習慣トラッカーは正しい場所でつけることが肝要だ。習慣を記録し、進歩のようすを見れば達成感を得られるが、大切なのは測定値だけではない。さらにいえば、進歩を測る方法はたくさんあるので、まったくちがうものに焦点を移すほうがいいときもある。「ノンスケール・ビクトリー〔体重計を使わないフィットネス法〕」が減量に効果があるのも、そのためだ。体重計の数値はなかなか変わらないので、もし数字だけに注目していたら、モチベーションが下がってしまう。でも、肌がきれいになったり、早く目が覚めるようになったり、性欲が高まったりするかもしれない。これらすべてが、改善しているかどうかを測るのに有効な手段だ。体重計の数値にやる気をなくしているなら、おそらく他の測り方に焦点を合わせる時期だろう。進捗状況をもっとよく示してくれる測り方に変えよう。どんな測り方であっても、習慣トラッカーは、習慣を満足できるものにするシンプルな方法だ。それぞれの測定値は、あなたが正しい方向へ進んでいるという小さな証拠であり、うまくできた、という一瞬の喜びをすぐに与えてくれる。本章のまとめ・もっとも満足を感じるのは、進歩していると感じるときである。・習慣トラッカーは、カレンダーに×印をつけるように、習慣を行ったかどうかを測るシンプルな方法である。・習慣トラッカーや、その他の目に見える測定法は、進歩のはっきりした証拠となるため、習慣を満足できるものにする。・鎖を断ち切ってはいけない。習慣の連続が途切れないようにしよう。・二回さぼってはいけない。一日さぼったら、できるだけ早く元に戻そう。・測れるからといって、それがもっとも重要なものとはかぎらない。

 

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