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第10章 プロジェクトを管理する

第4章から第9章までは、頭をすっきりさせて、いつ何をすべきかを自信をもって判断するための方法を具体的に見てきた。

これは、自分の人生を広く見渡して、何に目を向けるべきかを判断するための「水平的な視点」だ。

そしてGTDの完成度を高めるためにもう一つ必要なのは「垂直的な視点」―脳の創造性を活性化させ、より深い思考を促すための視点である。

これまでのステップで、自分が関わっているさまざまなプロジェクトや状況について望んでいる結果と次にとるべき行動を明確にしてきたことだろう。

だがときには、あるプロジェクトについてより創造的に、突き詰めて思考したくもなるはずだ。そうなるとやはり、プロジェクトプランニングをいかに適切に行なっていくかが重要となってくる。

目次

必要なのは「一つ上の視点」

私はこれまで数多くのプロフェッショナルを指導してきた。そこではっきりと言えることが一つある。

それは、「プロジェクト」のレベルで、私たちはもっと日常的にプランニングを行なうべき、ということだ。

第3章で説明したように、日々の作業をこなしつつも垂直的な視点から「プロジェクト」のプランニングを行なうことで、心理的なストレスは大きく軽減され、最小限の努力で最大限の成果を発揮していくことが可能になる。

こうした日常的なプランニングに必要なのは、高度で複雑な管理ツールやソフトウェアではない(ガントチャートは必要ない)。

必要なのは我々の頭の中にある創造的な思考を活用していくための手法である。

この種の思考が有効に活用されていない最大の理由は、無限に湧いてくるさまざまなアイデアを集めて管理するためのシステムがないことにある。

私が基本的にボトムアップのアプローチを採用しているのもそのためだ。

現在やるべきことを管理できていないと感じている人は、真剣にプランニングに取り込む気になれず、無意識のうちにそれを避けてしまう。

しかし、GTDを実践して整理システムを確立することができれば、生産性も上がり、創造的で前向きな思考がどんどんあふれてくるはずだ。

第3章では、アイデアから実際の行動にいたるまでの5つのステップについて説明した。

ここからは、カジュアルでナチュラルなプランニングを実践するときに役立つ、より具体的なヒントやテクニックを紹介していこう。

いずれもごく常識的な考えに基づくものだが、実践している人は意外に少ない。次の会議のときに試してみようなどとは思わず、普段からどんどん活用していってほしい。

どのプロジェクトのプランニングを行なうか

「プロジェクトリスト」で明らかにした「望んでいる結果」のほとんどについては、綿密なプランニングは不要である。

次にとるべき行動を頭で考えただけで、すぐに結論が出るはずだ。

たとえば「車を点検する」というプロジェクトで必要になるのは、最寄りの修理工場をインターネットで探して予約することだけだろう。しかし、何らかのプランニングが必要なプロジェクトもある。

プランニングに関する「次にとるべき行動」が必要なプロジェクト

あなたが現在抱えているプロジェクトの中には、もっと具体化して詳細を詰め、きちんと進めていきたいものもいくつかあるはずだ。

議題やデータを整理しておかないといけない大事な会議が追っているという人もいるだろう。グループ会社の会議の運営を任され、やることを至急詰めて割り振っていかなければならない場合もあるかもしれない。新人の詳しい仕事内容を人事部に報告しないといけないケースもある。

この種のことがまだ完了していなければ、プランニングを前進させるために必要な次の行動を見極め、適切なリストに入れていこう。

そのうえで、次のステップに進んでいけばいい。

プランニングの典型的なステップ

この種のプランニングに関する典型的な行動には、ブレインストーミング、整理、会議、情報収集などがある。

ブレインストーミング

あなたが今関心をもっているプロジェクトの中には、もっとアイデアを出す必要があるものもあるだろう。

「次にとるべき行動」を決めようとしてもすぐに思い浮かんでこないようなプロジェクトは、このタイプであることが多い。

そのようなプロジェクトでは「何々に関するアイデアを考える」が次にとるべき行動となる。

この行動をリストに入れるには、どこで、どのように行なうかも見極めないといけない。パソコンがあつたほうがブレインストーミングをやりやすいという人もいれば、手書きのほうがあっているという人もいるだろう。

私はそのつど直感で決めているので、「@パソコン」と「@場所を問わず」のいずれかに入れることにしている。

整理すでにメモや参考情報を集めていて、あとは整理するだけという人もいるかもしれない。その場合、次にとるべき行動は「プロジェクトAのメモを整理する」といったものになる。

メモを会社でファイリングしていて、そこから持ち出したくないときは、この行動を「@会社」のリストに入れよう。

持ち運べるファイルにまとめていたり、モバイル機器に情報が入っていたりするときは「@場所を問わず」などのリストに入れる。

ワープロやアウトラインプロセツサ、マインドマップツール、プロジェクト管理ツールなどを使うなら、「@パソコン」に入れておこう。

〈〓豊喘プロジェクトを進めるために、ほかの人も交えたブレインストーミングが必要なときもある。

そうした場合は、必要なメンバーを集めて会議を開こう。

次の具体的な行動としては、全員にメールを送ったり、アシスタントに予定を組むように伝えたり、時間を決めるために主要メンバーに電話をかけたりといったものが思い浮かぶはずだ。

情報収集プロジェクトを進めるために必要な次の行動が、より多くの情報を集めることである場合も多い。

誰かに相談することでよいアイデアがもらえることもあるだろう。その場合は、「会議について電話でビルの意見をきく」などの行動が考えられる。

昨年の会議のファイルに目を通しておく必要があるなら、「グループ会社の議事録を確認」などが具体的な行動になる。

インターネットで調べておきたいことがあれば、「大学の奨学金について調べる」のように行動を決めて整理しておこう。

プロジェクトに役立ちそうなアイデア

プロジェクトに役立ちそうなアイデアは、どんなものでも集めておいたほうがいい。プロジェクトに関係のない場所でそうしたアイデアが浮かんでくることもよくある。

買い物に出かけているときに、次の会議で最初の議題にしたいことがひらめく場合もあるだろう。キッチンでミートソースをかき混ぜているときに、次の会議の参加者にトートバッグを配りたいと思いつくかもしれない。夜のニュースを見ているときに、審議会に加えたい人物が思い浮かぶ人もいるだろう。

これらすべてを漏らさず集めておくうえで何より必要となるのは、言うまでもなく「把握する」ためのツールー書類受け、ペンと紙、スマートフォンなどである。

アイデアはとりあえず集めておいて、あとで使い道を考えるといい。

プロジェクトに関する思考を助けるツールやシステム

プロジェクトに関して浮かんできたあらゆるレベルのアイデアを、さっと記録しておけるツールがいつでも手元にあると便利だ。

そのように記録したあとは、見たいときにすぐに参照できるシステムに整理しておこう。

思考ツール

アイデアを集めて生産性を高める秘訣の1つは、「形から入る」ことである。

ツールがよければ、思考も活性化してくる(私自身、新しいソフトウェアをいじるのが好きで、いろいろな機能を試していく過程で優れたアイデアを思いついたり、役立つデータを得られたことが何度もある)。

思考を書きとめるためのツールや電子機器がなければ、集中力を持続できるのはせいぜい数分である。とくに1人でいるときはそうだ。

けれども優れたツールがあれば、何時間でも生産的な思考を続けることができる。

筆記用具・記録ツール

自分の好きな筆記用具または記録するためのツールをいつでも持ち歩いていれば、自由な思考ができるようになる。

書くものか文字を入力できるものを何も持っていなければ、プロジェクトや現状について真剣に考える気にはならないだろう。

持ちやすく書き味のよい万年筆やボールペンが1本あるだけで、プランニングをするのが楽しくなるものだ。

道具には別にこだわらないという人もいるかもしれないが、あなたが私と同じタイプなら、多少奮発してもいい道具をそろえるといいだろう。

デスクやキッチン、ブリーフケース、鞄、ハンドバツグ、リュックなど、メモをするかもしれない場所にもお気に入りのボールバンを置いておくことをお勧めしておきたい。

紙・メモ帳

筆記用具だけでなく、手軽に書ける紙も手元に置いておく必要がある。ノートよりもページが切り離せるものがよいだろう。

そのほうがページを破らてインボックスに入れ、そのまま「見極め」に回すことができるからだ。思いついたときにささっとマインドマップを描いたりして、そのままファイリングできるというメリットもある。

また、手書きの記録だと、見直したときに自分が思考した過程を思い出せたりもするので便利だろう。

ホワイトボード、立てかけ式ノートパッド

置くスペースがあるなら、これらを用意してもいい。いずれも優れた思考ツールになる。

面積が大きいのでたくさんアイデアが書けるし、考えたいことがあるときは目の前に置いておくとアイデアが浮かんできやすいはずだ。

ホワイトボードはオフィスや会議室の壁にかけてあると便利だ。大きければ大きいほど使いやすい。

壁一面がホワイボードになっていて、ブレインストーミングやその場で思いついたことを自由に書けるようにしている会社もある。

子どもがいる人は、子ども部屋にも置いてあげるといいだろう(今でも自分が子どものときにあればよかったと思う。きっといろいろなアイデアが書けたはずだ)。

マーカーもたくさん用意しておくこと。

ホワイトボードに書きたいと思ったときにマーカーのインクが切れていたら創造的な思考が途絶えてしまう。

複数のメンバーで会議をするときは、出てきた意見を書いておくとみんなで見ることができて便利だ。すぐあとで消すことになったとしても、いったん書き出すことで建設的な思考が促進される。

デジタルツールの活用

私はノートパソコン(タブレツトの場合もあるが)のワープロソフトやマインドマップツール、アウトラインプロセツサ、スプレツドシートなどに考えを書き出すことが多い。

やりたいことのアイデアはたくさん湧いてくるが、デジタルデータであれば編集も簡単にできるし、ほかのアプリケーションにコピーするのも簡単だ。

立ち上げて画面が表示されるだけで、自然と思考モードに入ることもできる。

パソコンに苦手意識があるとこうはいかないので、そういう意味でもタイビングやキーボードのショートカットには精通しておいたほうがいい。

大きなホワイトボードを使ったほうがアイデアがたくさん出るのと同様に、パソコンの画面も大きいものを使ったり、複数のディスプレイを利用したりするといいだろう。

モバイル化が急速に進む中、デバイスも当然ながら小型化し、手軽に扱いやすくなった。

しかし、スマートフォンなどの小さなデバイスは、思考ツールとしてではなく、思考の「結果」を実行するときに利用するほうがいいだろう。

思考を支えるシステム

書くための優れた道具を手元に置いておくことに加え、プロジェクトに関するアイデアを手軽に保管できるシステムを作っておくことも重要だ。

紙とペンがブレインストーミングに役立つ一方で、次に紹介するようなツールとシステムは、多くのプロジェクトでやらなければならないゴールまでの道のりを整理するのを助けてくれる。

ファイルやバインダーで整理する

一般資料用の優れたファイリングシステムを手軽に使えるよう手元に置いておくことは、ワークフロー全般の管理に不可欠なだけでなく、プロジェクトについて考えるときにも大変有用だ。

プロジェクトの多くは、関連情報やメモ、そのほかのさまざまなデータがきっかけとなって、やるべきことがよりはっきりとしてくる。

何かやりたいことを見つけたら、プロジェクトとして保存しておけるように、さっと新しいファイルを作れるようにしておこう。

ファイリングシステムがなかったり、使うのが面倒だったりすると、プロジェクトとして実行する機会を逃してしまう。

会議から帰つてきてプロジェクトの候補になりそうなトピックが書かれていたら、さつそくファイルを作ってメモを入れておこう(もちろん、「次にとるべき行動」も明らかにしておくべきだ)。

クライアントを指導していると、特定のプロジェクトに関するファイルを作ってさまざまなメモや参考になりそうなものを入れるだけで、頭がかなりすっきりするというケースが多い。

物理的にも心理的にも、「やるべきことが把握できている」状態になるからだ。

ルーズリーフ形式のバインダーやシステム手帳を使ちている人は、プロジェクトが明らかになったときにいつでも追加できるように常に新しいページを用意しておくこと。

プロジェクトによっては、のちにファイル内に専用の仕切りを設けたり、別のノートを必要としたりするが、最初はこのやり方でかまわない。

ほとんどのプロジェクトは、1ページか2ページにアイデアを書き込んでいくだけでいいはずだ。

アナログかデジタルか

すでにデジタル派の人にとっては、もう紙でなくてもいいのでは、と思っている人も多いだろう。デジタルツールを使えばメモするのも簡単だし、スキャンした文字を認識してくれるソフトウェアもある。ただ、実際には紙のほうが便利な場面もまだまだ多い。

手書きでメモすることの利点は、いつでもどこでもできること、文字だけでなく図も自由に描けること、といったものがあるだろう。表現のために使うツールが違うと、そこから生まれる思考もまた違ってくる。手書きをしたほうが発想が広がるという人も多いのだ。

また紙に書いたほうが、パソコンの画面で見るよりも、情報の関連性を見渡すことが容易になる。デジタルツールに詳しい人でも、結局は紙やノートでメモをとるようになった人を、私は数多く知っている。

アイデアをまとめたり、リマインダーとして使うには紙のほうが扱いやすいからだ。

私自身も、デジタル文書を資料や参考情報として使うときには印刷して物理的なフォルダに保管していたりする。

そうした紙はさまざまな処理が終わればリサイクルに回すし、処理の結果はデジタル文書で保管することになるのだが、それまでの作業についてはパソコンよりも紙のほうが都合がいいのだ。

デジタルテクノロジーは今後も間違いなく進化しつづけ、アナログでは実現しえない画期的な方法でプラニングをサポートしてくれるだろう。

ただ、ペンやメモ帳、付箋紙、紙のファイルや文書がまだまだ残っている限り、整理システムをうまく機能させるために何らかのかたちで役立てていくべきだろう。

プロジェクト管理のためのソフトウェア

プロジェクトを管理するために使える、完璧なツールというものにはまだお目にかかったことがない。評判のいいツールであっても、たいていは高機能すぎるか、シンプルすぎるかのどちらかだ。

すでに述べたようにプロジェクトの内容は多岐に渡るため、それ一つで万人のニーズを満たすようなアプリケーションを望むのは難しいだろう。

ただ、そうは言っても、便利なツールはいくつも存在する。大部分の人はワープロソフトやスプレツドシート、プレゼンテーションのソフトウェアを扱うことができるだろう。

これらを使えば、プロジェクトプランニングやその一部の作業で大いに成果を上げることができるはずだ。

カジュアルなプロジェクトプランニングに役立つソフトウェアを二つ挙げるとすれば、マインドマップを作るツールとアウトラインプロセツサだろう。

私自身は、ほぼすべてのプロジェクトでマインドマップを活用し、集中的にブレインストーミングを行なったり、思いついたことを記録したりしている。

マインドマップができ上がっただけで、プロジェクトを管理できているという安心感が得られることも多い。

ブレインストーミングにはアウトラインプロセツサも便利だ。

見出しや小見出しを使ってさまざまなレベルで詳細を書き出していくことができるからだ。一般的なワープロソフトには、たいていこの機能がついている。

こうしたソフトウェアの利点は、パーティの企画のようなごくシンプルなものから執筆中の書籍の文章構成のような複雑なものまで、さまざまな内容に対応できるということだ。

また、テキストのコピーペーストや削除、組み替えなどが容易にできるため、思考の整理だけでなく、創造的な思考をも促してくれるというメリットもある。

もっとも高機能なソフトウェアは、いわゆるプロジェクト管理ツールになるだろう。厳密かつ詳細に物事を管理しなくてはならない人や組織で導入されていることが多い。たいていは企業固有のニーズにあわせてカスタマイズされている。

たとえば、火星探査機の打ち上げやビルの建設といった、複雑で大規模なプロジェクトに利用されているだろう。

パソコンが得意な人ならば、こういつたアプリケーションをいくつも使いながらプロジェクトの計画や資料を作成し、管理していくことになるだろう。

アプリケーションそのものに気を取られることがないように、ある程度使いこなせるようにしておこう。

また、情報はどこに保存しようとも定期的に見直して更新し、常に最新の状態に保っておくべきだ。パソコンは「ブラックホール」でもあることを忘れないでほしい。

きちんとした管理をしていないと、膨大な情報からさっと目的のデータを取り出すことが難しくなるので注意しておこう。

さぁ、実践してみよう

「次にとるべき行動」のリストと同様に、「プロジェクトリスト」も最新の状態にしておく必要がある。

それができたら、1時間から3時間くらいかけて、それぞれのプロジェクトをさらに上の視点から見渡してみよう。

できる人は今すぐ、そうでなくてもなるべく早く、今いちばん関心のあるプロジェクトをいくつか選び、情報やアイデアを収集して整理してみよう。

使うツールはなんでもいい。

それぞれについて、一つ上の視点から、この「プロジェクト」について知りたいことや保管しておきたい情報、覚えておきたいことはあるだろうか、と考えてみよう。

必要ならマインドマップを書いてもかまわない。そのマップはプロジェクト用のファイルに収めておこう。

デジタルの管理ツールを使ちてメモしてもいいだろうし、ワープロソフトでアウトラインを書いていくのもよい方法だ。大事なのは、ごく自然にアイデアを考えたり活用できるようになることだ。

そうすれば望んでいる結果に対して、必要なときに必要なだけ集中することができるようになる。ストレスフリーで物事をこなしていくには、こうしたスキルが不可欠だと理解しておこう。

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