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第1章データで見る「人手不足」のリアル[「職場づくり」への発想転換]

目次

TOPIC01「アルバイトが足りない」は〝本当〟なのか?データで概観する「人手不足」

データで概観する「人手不足」DIALOGUE「急で悪いんだけど、来週の月曜、シフト入ってくれないかな?」「えっ…またですか?早く新しい人を採用してくださいよ〜」「求人は出してるけど、ニュースでも言われているとおり、日本は人手不足なんだよ!」「でも店長、ウチに人気がないだけなんじゃないですか?」いま、アルバイトの人材不足が深刻だと言われている。

日本の人材市場では何が起きているのか?人手不足に陥っている原因は何なのか?今後、人材市場はどうなっていくのか?アルバイト不足の実態をデータで明らかにしていこう。

深刻化するアルバイト不足

このところ「アルバイト不足が慢性的に続いている」「求人を出してもまったく応募が来ない」といった悲痛な声がいたるところで聞かれるようになってきました。

みなさんも「最近、どうもアルバイトの採用が難しくなってきた」という感覚をお持ちなのではないでしょうか?実際、日本はいま、かつてないほどの「人手不足」に直面しています。

人手不足は、企業の大小や雇用の正規・非正規を問わず、あらゆる業種・職種で起きていますが、顕著なのが「アルバイト人材の不足」です。なかでも飲食店、飲食料品小売、娯楽サービス業などは深刻な状況に陥っています。

たとえば首都圏では、コンビニエンスストアと外食チェーンとのあいだで、人材の奪い合いがはじまっています。その結果、出店戦略の見直しを迫られるケースや、営業時間を短縮せざるを得ないケースも出てきており、深刻さが増しています。

対策はさまざまありそうだが…

これを打開するアクションとしては、どんなことが考えられるでしょうか?いちばん手っ取り早いのは、採用のための予算を上げることでしょう。

求人広告により多くのお金をかければ、応募者数の増加が見込めます。また、時給を上げれば、より多くの人が集まるようにはなるでしょう。

しかし、これらの対策は企業のコスト増につながりますし、そもそも店長に裁量がないケースもありますから、限界があります。

それ以外には、募集する人材の幅を広げるという道もあるでしょう。近年では、首都圏や都市部を中心に外国人のアルバイト雇用はかなり増えてきています。

また、従来はあまり雇用されてこなかったシニア人材を積極活用する企業も見られるようになりました。さらには、雇用条件を工夫する職場も出てきています。家庭の事情で短い時間しか働けない主婦の都合を考えて、数時間だけのシフトにも対応するといった方策です。

データで見るアルバイト不足

それぞれの店長がすでにいろいろな試みをされていることと思いますが、日本全体の状況としては、人手不足の急速な進行にまったく追いつけていないというのが実情です。

ではいま、どれくらいのアルバイト人材が不足しているのでしょうか?データでその実態を見てみましょう。図表03は過去40年以上のパートの有効求人数の推移を示したグラフです。

ここでいう有効求人数とは公共職業安定所(ハローワーク)における年間求人数の合計ですから、「企業がどれくらいたくさんの人を必要としているか」の目安と考えることができます。

ご覧のとおり、パート求人数は調査開始の1972年から22倍にまで急増しています。正社員も含めた全体の求人数はわずか1.7倍程度の伸びしか見せていませんから、アルバイト人材へのニーズがいかに急成長しているかがよくわかります。

では、アルバイト不足はいつごろから起こっているのでしょうか?同グラフをよく見ると、リーマンショックのあった2008年に一時的に低下していますが、東日本大震災後の復興需要やいわゆるアベノミクスなどの後押しもあってか、ここ数年で求人数は過去最大規模にまで膨れ上がっています。

「3人足りなくても2人しか採れない」が現実

また、求職者数に対して有効求人数がどれくらいあるかを表した有効求人倍率(図表04)は、1980年代後半からほとんどずっと1.0倍を上回っており、「職を探している人よりも求人の数のほうが多い状況」が続いています。

つまり、このアルバイト不足は20年以上前から続く慢性的な現象だとも言えるわけですが、やはり足元での人手不足が深刻なのはたしかです。

2015年平均の有効求人倍率は1.52倍。

アルバイト求職者2人に対して3件の求人があるわけですから、これは店長から見れば、「アルバイトが3人不足していても2人しか採用できない」ということです。

アルバイト1人が「1.5人分の仕事」をしたり、店長自身が時間外勤務をしたりすることで、なんとか企業が回っている状況だと言ってもいいでしょう。

ただし、これはあくまでも〝平均値〟での話ですから、業種・地域によっては「こんなものじゃない」「もっとひどい」という実感をお持ちの店長もたくさんいらっしゃるでしょう。

たとえば、東京労働局の発表している「求人・求職バランスシート」(平成28年7月現在)を見ると、「8.07倍(接客・給仕)」「3.86倍(商品販売)」という数値が出ています。

都市部・都市近郊部では本当にひどい人手不足が起きていることが見て取れます。

これだけ求人が多ければ、求職者はより条件のいい仕事へ流れていきますし、すぐに別の仕事が見つかりますから、簡単に仕事を辞めてしまいます。

時給・立地・ブランドイメージなど、より条件面で不利な職場であれば、もっと深刻に人が足りない状況になってもまったく不思議ではありません。

2025年には「583万人の人手不足」が起きる!?

この人手不足は今後も変わらないどころか、むしろ、より深刻になっていくと予想されています。それは、少子高齢化が加速度的に進んでいるからです。

出生率が劇的に回復する見込みのない現状では、海外からの労働力を受け入れたり、女性やシニアを活用したりしない限り、日本の労働力人口(15歳以上の働く意思と能力を持つ人の数)がこの先も減り続けることはほぼ確実な未来です。

パーソル総合研究所が出している2025年の未来推計(図表05)によると、現在の248万人の倍以上、なんと約583万人の働き手が不足することになります。

なかでも、情報通信・サービス業は約482万人、卸売・小売業は約188万人と、業種によってはとんでもない数字が出ています。

「1人の店長としてできること」を考える

これ以外にもさまざまな推計データがありますが、今後もアルバイトが足りない状況が続くことは、ほぼ否定しようがないと言っていいでしょう。国の政策レベルでも「女性・シニア・外国人の活用」を打ち出し、これに対処しようという動きが加速しています。

また、たとえばIT化や人工知能(AI)などの技術革新が進んで、効率性・生産性が上昇すれば、現在ほど人手が要らなくなる分野も出てくることでしょう。

会社によっては、「店舗の無人化」「サービスの機械化」を戦略的に推し進めるところも出てくると思います。この大きなトレンドに対して、店長としてできることは決して多くありません。

人口の問題や、それに伴う産業構造の変化などは、1人の店長の思考と行動を超えるものだからです。しかし、ここで悲観していても仕方ありません。

地に足をつけて、目の前の職場をいかに回すかを考えていく必要があります。そこでまず大切なのは次の2つです。

①いま起こっているあなたの職場の人手不足が、日本のアルバイト人材マーケットの構造のなかで「起こるべくして起こっている事態」だと認識する

②この人手不足が決して一過性の現象などではなく、今後ますます激化していくという現実を引き受ける

これらを踏まえたうえで、いまこそ店長にはその場しのぎの対応策ではなく、根本的な発想の転換が求められています。その核心は何なのか?それを次のトピックで一緒に考えていきたいと思います。

POINT

□この人手不足は今後ますます深刻になる可能性が高い

□とくにアルバイトの分野では、さらに人が足りなくなると予想される

□悲観するのでなく「店長として何ができるか?」の発想が必要である

TOPIC02あなたの職場に人が足りない「本当の理由」は?「職場づくり」こそが最強のアルバイト人材戦略

DIALOGUE

「あ、今日も採用面接ですか?けっこう応募が来てるんですね」「そうなんだよ!うまくいけば今月は3人採用できそうだ」「でも、この半年で5人辞めてますよね?」「それは言わないでよ……(涙)」深刻化する人手不足、もう打つ手はないのか?アルバイト不足対策には3通りの解決策が考えられるが、慢性的にスタッフが足りない職場では、そのうちの1つが完全に抜け落ちている可能性がある。それが、アルバイトの離職を減らす「出口対策」だ。

お金さえあれば、人手不足はなんとかなる?

「来月のシフトをいかに回すか」「目下のスタッフ不足にどう手当てするか」といった現実的な課題に追われている店長・企業は、どうしても「いかにいい人材をたくさん採用するか」に目を奪われがちです。

そこでまず誰もが考えるのは、アルバイト募集への「応募者数」を増やすことでしょう。「応募者の数を増やすこと」を考えた場合、店長・企業が取るアクションは、だいたい限られています。

誰でもすぐに思いつくのは「採用のための予算を増やして、募集広告を多く出す」という方法でしょう。これ以外にも、時給を上げたり、交通費支給を謳ったり、働く側のニーズに合わせて雇用条件を調整するような方法もあります。大きな会社であれば、テレビCMを打ったりしてブランドイメージを高めることもあるかもしれません。

人手が足りない店長ほど、「出口対策」が足りない

とはいえ、これらの手段はすでにやり尽くされていますし、やればやるほどコストが膨らむため限度があります。

また、一店長には裁量が与えられていないことも多いので、「ウチにももっと予算があれば募集広告を出せるのに…本部が現場の苦労をわかっていない!」と不満を抱いている人も多いかもしれません。

この点については個別の事情もあるので、これ以上は踏み込まないことにしましょう。それ以前に考えていただきたいのが、「本当にこれだけしか人手不足対策はないのか?」ということです。

私はそうは考えていません。アルバイト人材の獲得競争が激しい時代にあって、人手不足を解消する施策は3通りあります。1つは応募数・採用数を増やす入口対策。これについてはすでに見たとおりです。

2つめが、生産性の向上です。できる限り1人あたりの生産性を高めて、必要な人員数を減らすという努力は、会社レベルでも現場レベルでも、相当に進められていることでしょう。また、サービスの自動化・機械化などによる効率アップも、店長の守備範囲を大きく超えている部分でしょうから、本書では触れません。

そして3つめの最重要オプションが、アルバイトの離職をできる限り防ごうとする出口対策です(図表06)。この出口対策こそが、今回の調査を通じて見えてきた〝最も大切〟なことの1つです。

頭のどこかに「アルバイトはどうせ辞める。辞めたらまた補充するだけだ」という発想はありませんか?「入口」ばかりに目が向きがちで、「出口」を十分に意識できていない店長ほど、人手不足に困っているように思います。

冒頭のダイアローグのように、5人辞めたことから目をそむけて、3人採ることに躍起になっていませんか?これは言ってみれば、蛇口をひねって水量を増やすことばかりに目を奪われ、肝心のバケツに「穴」が開いていることに気づいていないような状態です。

今回の調査によれば、直近3年以内にアルバイトを辞めた人のうち、なんと50%以上は入社から半年までのあいだに離職しています(図表07)。

また、総務省統計局のデータで正社員と比較してみても、離職率の高さは一目瞭然です(図表08)。どんなにコストをかけて「入口対策」をしても、ごく短期間のうちに辞められてしまっては、まったく意味がありません。じつはこの早期離職を防ぐことこそが、最も重要な対策になってくると私は考えています。

人材確保のカギは「辞めさせない仕組み」

この先、人手不足が深刻化していくとすれば、採用コストは上がる一方でしょう。アルバイトの定着率を上げることで、削減が期待できる採用コスト(求人広告費など)を試算してみました(図表09)。

たとえば、1,000店展開規模の飲食店で必要なスタッフ人数が20人だとします。年間定着率が5ポイント上がれば(年間離職率が5ポイント下がれば)1店舗あたり3〜5万円、全体では年間3,000〜5,000万円の削減が可能となります。

店舗数1万店展開のコンビニ(必要スタッフを12人として)であれば、年間にして5億4,000万〜9億円のコストダウンです。ただ、企業や職場にとって重荷となるのは、このような目に見えるコストだけではありません。

当然ながら、スタッフが一人前になるまではなかなか時給分の働きは期待できないでしょうし、その人を教育するために、店長や周囲のパフォーマンスがある程度は犠牲になります。

つまり、人を採用することによって、必ずそこには隠れた育成コストも発生しているわけです。

ちょっと厳しい言い方ですが、新人アルバイトが数カ月足らずで離職する状態が慢性化している職場は、「採用コスト・育成コスト」をまるまるドブに捨てているにも等しいのです。

アルバイト人材を安定的に確保するためには、人の育成をしっかりと行い、離職(とくに短期間での)を防止する「出口対策」が必要です。

これにより、長期間にわたって働く人材が増えれば、自ずと職場のパフォーマンスも高まります。

アルバイト歴の浅い10人よりも、高いスキルを身につけた5人で職場がスムーズに回るのであれば、店長としても願ったり叶ったりなのではないでしょうか?

「長く働き続けたい職場」をつくれていますか?

では、アルバイトに辞められないために、どんな「出口対策」が考えられるでしょうか?たとえば「時給アップ」はどうでしょうか?今回の調査では、じつは時給がアルバイトの離職防止に与える影響は、それほど高くないという結果が出ています。

→TOPIC15また、時給が同じでも、アルバイトが長続きする職場とそうでない職場があります。だとすると、「ウチは時給が安いから『出口対策』なんて無理だよ!」などとは言っていられないかもしれません。

では、アルバイトが長続きする職場には、どんな特徴があるのか?調査の結果として見えてきたのは、アルバイトの成長段階それぞれに応じて、やはりそれなりの〝正解〟がありそうだということです。

アルバイトの成長には、次の4つのステージが考えられます。

①採用ステージ(募集・面接の段階)

②新人ステージ(入社1カ月未満の受け入れ段階)

③中堅ステージ(入社1カ月以上の成長段階)

④ベテランステージ(リーダー・教育係の段階)

詳細はこのあと1つずつ見ていきますが、長続きする職場(=定着率の高い職場)では図表10のような共通点が見られます。さらに大切なのは、このそれぞれがお互いに結びつき合っているということです。

どれか1つに注力すればいいというものではなく、それぞれの局面での取り組みがほかのスタッフにも影響を与えるような構造になっています(図表11)。

したがって、本当の出口対策は、4つのステージを見据えた職場づくりにほかなりません。これは裏を返せば、どれか1つでも欠けている部分があれば、たちまちに悪循環が生まれ、アルバイトが長続きしない職場になりかねないということです。

その意味で、「人手不足が〝原因〟になって職場がダメになっている」のではなく、「職場づくりができていないから、人手不足という〝結果〟になっている」という発想の転換が必要なのです。

***以上、この章では「世の中で言われているアルバイト不足の本質」を見てきました。

最後にお伝えしておきたいのは、アルバイトをする人たちも、よっぽどのことがない限りは「安定して長く働き続けたい」と考えているということです。

当然ですが、最初から「すぐに辞めてやろう」と思って、面接を受けに来る人はまずいないのです。

→TOPIC09だからこそ、店長としては「彼らが仕事に何を求めているのか」をしっかりと把握し、それに応えていくことが重要になります。

そこを押さえた「職場づくり」ができれば、自ずと優秀な人材が残り、人手不足を解消する好ましいスパイラルを呼び込めるはずです。しかし、「職場づくりが大事」と言われても、まだまだ漠然としていますよね。

「ウチはアルバイトは本部一括採用だし、マニュアルを厳しく決められている。店長にはほとんど裁量がないからどうしようもないんだよ!」と言いたい人もいるかもしれません。

では、どうすれば「採用→新人→中堅→ベテラン」の好循環が生まれる職場をつくっていけるのでしょうか?次章からはステージごとに、その方法を探っていくことにしましょう。

POINT

□人手不足に悩む店長ほど、採用ばかりに目が行きがちである

□アルバイトの離職を防ぐ「出口対策」が盲点になっている

□スタッフを採用する以前に、定着を促す「職場づくり」が重要である

第1章のまとめ

Q.「アルバイトが足りない」は〝本当〟なのか?

▼本当です。しかも、これは一時的なものではなく、今後も深刻になる可能性が高いと考えられます。とくにアルバイト人材の確保はますます厳しくなるでしょう。まずは「現場でできること」にフォーカスする必要があります。

Q.あなたの職場に人が足りない「本当の理由」は?

▼「人が採れないせい」だけではないかもしれません。人材の「入口」ばかりでなく、「出口」にも注目していますか?「人が足りない」と悩む店長ほど、離職を防ぐ発想が欠けています。辞められないためのカギは「職場づくり」にあります。

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