〈ソリューション・システム〉のプロセスを再現する 1 課題を設定する 1 主要課題の設定——何かと比較する 2 個別課題の設定——背後のメカニズムを考察する 2 解決策の仮説を立てる 1 個別解決策はコントロール可能なものになっているか 2 総合解決策は全体の資源配分を考えているか 3 解決策を検証・評価する 1 個別解決策の検証——ファクト・ベースでチェックする 2 総合解決策の評価——ハードとソフトの両面から判断する 4 〈ソリューション・システム〉シートを使う事例 7「体重が増えた」という現象に対する解決策を立案する主要課題の設定個別課題の設定個別課題に対する個別解決策づくり主要課題に対する総合解決策づくり個別解決策の検証総合解決策の評価事例 8 OEM事業の今後の方向性を決める
ソリューション・システム のプロセスを再現する
図 3 1は、 X軸に WILL(やる気)、 Y軸に SKILL(能力)をとり、それぞれを高い/低いに分けた 2 2のマトリックスである。
非常に単純な枠組みだが、ビジネスマンの価値を評価するポジショニング・マップである。
ビジネスマンとしての価値が最も高いのは右上の「やる気も能力も高い」人。
次は、右下の「能力が低くてもやる気の高い」人。
3番目は、左上の「能力は高いがやる気の低い」人。
そしてビジネスマンとしての価値が最も低いのが左下の「やる気も能力も低い」人ということになる。
「能力が低くてもやる気の高い」人を「能力が高くてもやる気の低い」人よりも高く評価しているのは、頭が良く能力が高くても、やる気 =エネルギー・レベルが低くては何も実行できないからだ。
第 1章の冒頭でも述べたように、ビジネスで重要なことは「わかること」を「できること」に移行させることであり、そのためには「やる気」がキーポイントになる。
能力というのはやる気さえあれば訓練次第で高めることが可能だが、本人のやる気を高めることは、どんなに優れた動機づけや評価システムを取り入れてもなかなか難しい。
だから「能力が低くてもやる気の高い」人を 2番目に置いたのである。
十数年前の日本では、ちょうど終身雇用による年功序列制から年俸制をベースとした成果主義を導入する企業が増えた時期があった。
これはビジネスマンの価値をパフォーマンスに応じて評価し、右上の象限に属する、常に能力もやる気も高い人間をできるだけキープしたかったからだ。
しかしその結果、部門を越えた事業の推進にブレーキがかかったり、中長期的に重要性の高い事業にいつまで経っても着手しない、また他社とのコラボレーション力が落ちたりといった弊害も生じてきた。
構造不況の長期化で経営が近視眼的になり、すぐに成果の出ることばかりに目がいくようになってしまったのだ。
そのため長期的に人材が育たないという悪しき事態がさまざまな企業で起きてしまった。
企業が求める「やる気」も「能力」も高い良い人材とはどういう人材なのか。
ひと言で言えば、「プロフェッショナル型の人材」である。
プロフェッショナルというのは、自分に与えられたミッションに対しては、いかなる状況にあっても常に最高のパフォーマンスを発揮するものであり、たとえミッションが曖昧であっても、あるいはミッションが見えない状況下でも、将来を見据えて自分で独自のフレームを作り、それに向かって邁進する人だと考える。
企業は、そういうプロフェッショナルを的確に評価するシステムを作らなければならない。
最高のパフォーマンスを発揮するためには、自分ひとりだけで何かをやるのではない。
周りの人を巻き込み、プロセスを明確にし、目標に向かって進むべき行動や道筋を明らかにできる、そのことを含めた評価である。
そういう視点から企業がフォーカスする、さらに伸びてほしい「 UP型人材」と、今後は必要としない「 OUT型人材」を切り分ける線引きを考えてみよう(図 3 2)。
ここで言う「 SKILL」の軸のとらえ方は、上記のような考え方を含めたものである。
そして、これからのビジネス環境では、自分の価値を明確に把握し、主体的にその価値を常に高める努力をすることがますます重要となる。
さて、 Aさんはある大企業の中堅サラリーマンである。
以前はお酒を飲みながら職場や上司への愚痴をある程度言えばその場限りで解消していた現状への不満が、このところは得体の知れない不安に変わってきて、転職も考えているという。
Aさんは入社以来、営業畑を渡り歩き、現在はある営業所の営業課長である。
同期入社の中でも出世面では上位組に入っており、仕事もスピーディかつ的確にこなすタイプで、これまでは不安や陰りは見られなかった人だ。
この企業でも最近、給与体系に成果主義的要素が取り入れられた。
Aさんの悩みは、突き詰めると、自分の描いているキャリア・ビジョンと現状との乖離から生じている。
Aさんは、もともと商品開発やマーケティングに関心が高く、入社当初もその関連部門への配属を希望していた。
しかし商品開発やマーケティングに配属される人間も、最低 3年は営業現場を経験する必要があるという会社の方針により、まず営業現場に配属され、そのまま営業一筋になってしまった。
本社の営業部門では、新しい顧客管理システムを提案し、プロジェクトを遂行して成功させた実績もあり、評価は高い。
その後 Aさんは支店配属になり、このまま営業の経験を積み上げてさらに高いマネジメント・レベルを目指すべきか、あるいは新たに商品開発やマーケティング職にチャレンジしてみるべきか悩んでいた。
いまであればまだやり直しがきくギリギリの年齢とも言えるし、逆に言えば、この年齢だからこそこれまで積み重ねてきた実績を捨ててはいけないという思いもあり、なかなか結論が出せずにいた。
この Aさんの状況を「 WILL SKILL」マップに落とすと、2つの問題が浮き彫りになる。
1つ目は、本社でプロジェクトを任されてバリバリと仕事をこなしていたときは不満すら言う余裕もなかったのが、支店営業に配属されてからはどうも力を持て余し、自分の実力と求められている能力とのギャップから現状に対する不満が生じていること。
2つ目は、営業には自信があるが、商品開発やマーケティングのスキルに関しては多少知識はあっても経験がまったくなく、本当にいまからでも大丈夫だろうかという不安が生じていることである。
この2つの不満と不安が交錯する中、 Aさんは漠然と転職を考えていたのだ(図 3 3)。
Aさんは「転職すべきか?」を悩んでいるが、このままでは結論は出しにくい。
なぜなら、「転職」というのは解決のための実行策の1つにすぎないからだ。
つまり解決すべき問題は「転職すべきか?」ではなく、この状況下では「今後、商品開発・マーケティング関連の仕事で自分のキャリアを開発・発展させることは可能か?」なのだ。
もし、この課題に関していろいろ解決策を考えたうえで、答えがすべてノーであれば、 Aさんは現在の会社の営業部門で力を発揮し続けるしかない。
このように、まず何が問題で、何を解決すべき課題として設定するかが、問題解決においては最初の重要なポイントになる。
次のステップは、今後のキャリア開発の解決策を考えることだ。
しかし図に示したように、 Aさんのやる気がいくら高くても、商品開発・マーケティングに関する能力が低くては、いまと同じ課長的ポジションでは、自社であっても他社であってもまったく通用しない。
この明らかなギャップをどう埋めるかが解決策につながる。
このギャップを解決するには、それほど多くのオプションはない。
とにかく商品開発・マーケティングのスキルを高めるために、ビジネススクール等の活用による基礎能力トレーニングが必要である。
また、現場での実績や実践的スキルという意味では、自社だろうと他社だろうと、どこかで実務の経験を積まなければならない。
こうした現状を考えると、 Aさんの第 1の選択肢は、自社での商品開発・マーケティング部門への配置替えを申請しながら、ビジネススクールやビジネス書で商品開発・マーケティングの基礎知識やスキルを高めることだ。
そして、第 2の選択肢は、 Aさんのこれまでの営業実績ややる気を高く評価したうえで、商品開発・マーケティングの担当として採用してくれる企業を探すことだ。
この第 2の選択肢は、さまざまな求人企業に応募したり、ヘッドハンター等を介して実行することになる。
その過程では、当然、自分にどの程度の市場価値があるのかが検証・評価されることになり、自分が一般人材市場で「 WILL SKILL」マップのどこに位置づけられるのかが明確になる。
そして、それぞれの企業が持つ固有の線引きによる「 OUT型人材」ゾーンに属せば新たなキャリア開発の可能性はゼロであり、「 UP型人材」ゾーンに属せば可能性がある。
結局 Aさんは、いくつかのヘッドハンターを通して数社を紹介してもらい、採用通知をもらった企業もあったが、自社内での配属替えの希望が通り、新しい部門で毎日、大変ながらもエネルギッシュに頑張っている。
採用通知をもらった企業に関しては、 Aさんなりに自分のキャリア目標の実現可能性とリスク、収入を含めた待遇面、企業の安定性や企業風土への適合性を吟味したうえで判断した。
外部の企業への応募を解決策のオプションの1つとして検討する中で、 Aさん自身が自分の市場価値を認識し、自社内で問題を解決し最適化できたのは、 Aさんにとってよいことであった。
実生活やビジネスの現場では、問題は刻々と変化している。
それを解決しようとするならば、第 1章や第 2章で述べた問題解決のための思考と技術を応用し、その時点での解決策に結び付く結論を出して、ベター・ソリューションを実行しなければならない。
それにはまず、解決すべき課題の適切な設定が重要となる。
Aさんのキャリア開発の例で言えば、問題認識が狭く曖昧なまま、単に他企業への転職という解決策の枠内で検討したとすると、商品開発・マーケティングの担当者として採用してくれる企業があればキャリア上はよいかもしれないが、自分の実力に不安を抱えたままで、それ以外の重要な要素である収入を含めた待遇面、企業の安定性や企業風土への適合性といった面を検討せずに転職してしまい、いずれ後悔することにもなりかねない。
次には、課題の設定に基づき、いろいろな解決策のオプションを考えることである。
Aさんの例では、当初、自社内での解決策が欠落していた。
そして最後は、現状との比較において、解決策を検証・評価することである。
Aさんは他社の評価にあたって、キャリア目標に付随するいくつかの評価項目を立てて客観的に評価している。
以上のように、問題となる現象に対して課題を設定し、背後の状況を考察し、解決策(仮説)を練り、実行するというプロセスは、ごく当たり前のことである。
しかし、ビジネスの現場ではこれから説明する ソリューション・システム のプロセスを活用すると、大きく的を外さないようにしながら、効率的に課題を解決することができる。
そして課題は常に変化する。
それを解決するために常に全体観を持って課題を掌握し、柔軟に軌道修正しながらベター・ソリューションを見つけ実行するために、 ソリューション・システム は非常に効果的なのだ。
前述したように ソリューション・システム とはビジネス上の課題を分析し、具体的解決策を立案するための問題解決法である。
これを大きく3つのプロセス、「課題の設定」「解決策の仮説」「解決策の検証・評価」に分けて考えていこう(図 3 4)。
1課題を設定する問題だと考えられる現象に直面したとき、その問題を今後解決すべき課題としてとらえ直すことが「課題の設定」である。
「課題の設定」のプロセスは2つの要素からなる。
それは「主要課題」の設定と、それを具体化・細分化した「個別課題」の設定である。
1主要課題の設定——何かと比較する 「A商品の販売利益額が下がっている」という現象があるとする。
これをまず課題としてとらえる必要がある。
利益額が下がっている、さてどうしよう。
「 A商品の販売利益額を改善することは可能か」。
これがまず「主要課題」の設定になる。
したがって、現象を問題として認識しなければ、課題は設定されない。
課題とは「解決すべきだと意識された問題」だ。
そのためには、とにかく何かと比較し、 SO WHAT?(だから何なの)を考える必要がある。
ビジネス上の比較の対象は、 3 Cの枠で考えるといい(図 3 5)。
自社:達成目標とのギャップはないか?競合:競合の優れた点とのギャップはないか?顧客:自社の商品・サービスに満足しているか?たとえば自社内で考えると、今年度の売上達成目標に対する達成率のギャップをチェックしたり、あるいは A商品の過去 5年間の利益額の変遷でとらえたりすることができる。
また営業員 1人当たりの利益額を業界平均と比較したり(比較するために分母をそろえることを標準化という)、あるいはマーケット・リーダーを1つのベンチマーク*としてとらえ、自社と比較してどこが違うのか考えることもできる(図 3 6)。
A商品の利益額をただ見るだけでは、利益額が下がったことを解決しようとはしないことだってありえるのだ。
だから課題として設定するには、これらの比較が必要になる。
*ベンチマークとは、元来構造物を建てる際に、水準点から建物現場まで測量によって引いてきた仮の高さの基準点を指す測量用語。
傾きのない水平な建物の基礎を造るために、常にベンチマークを起点に高さをチェックする。
また、課題の設定が現状からの短期的解決課題なのか、将来の目標や企業のビジョンを達成するための中長期的解決課題なのかは、比較するときの視点を時間軸のどの地点に置くかによって変わる。
2個別課題の設定——背後のメカニズムを考察する次に「個別課題」を設定する。
ここでは利益額が減少していることが問題なので、利益額の構成要素を考えると、利益額 =(価格 コスト) 販売量となる。
つまり利益額を改善するためには、価格、コスト、販売量の 3要素が関係する。
したがって第 1段目の「個別課題」としては、 価格を上げることは可能か コストを下げることは可能か 販売量を増やすことは可能かの3つにブレークダウンされる(図 3 7)。
さらにブレークダウンするならば、第 2段目として、価格に関しては、「単純に価格だけを上げることは可能なのか」あるいは「新たな機能やサービスを付加することにより価格を上げることは可能なのか」、コストに関しては「固定費を下げることは可能なのか」「変動費を下げることは可能なのか」、販売量に関しては、販売量 =市場規模 マーケットシェアであるから、「市場を拡大させることは可能なのか」「シェアを上げることは可能なのか」というようにブレークダウンできる。
「シェアを上げることは可能なのか」といった背後の構造が見えない個別課題はさらに、「販売量を増やすために価格を下げることは可能か」「商品のパフォーマンスの向上は可能か」「チャネルへの営業力の強化は可能か」「広告・販促の強化は可能か」とブレークダウンする必要がある。
この「個別課題」の設定に関しては、2つ重要なポイントがある。
1つは、できるだけ MECE や ロジックツリー を駆使して独自のフレームワークを作り上げて考えるということ。
なぜなら、環境変化が激しい現在、既存のフレームワークなど古くて役に立たず、無理に当てはめればかえって、初めに見えていた問題点が見えなくなる可能性があるからだ。
2つ目は、「主要課題」から「個別課題」にブレークダウンする目的は、本来、問題が生じた背景や、問題を引き起こすメカニズムを明らかにすることにあるということだ。
たとえば、単純に価格だけを上げれば売上げが減ってしまうという一般的な価格と売上げの因果関係では、価格を上げて売上げを上げることと、価格を下げて販売量を増やして売上げを上げることの同時解決には無理がある。
しかし、これは価格と需要の関係が価格弾性値分析等の価格分析により明らかになれば解決できる。
つまり、こうした背後のメカニズムが的確にとらえられなければ、解決すべきポイントがずれてしまったり、同時解決が成立しない場合もあるのだ。
いずれにしても、ここが知恵の絞りどころで、後の解決策のクオリティをかなり支配する。
第 2章で例示したコーザリティ分析をここで利用すると、構造的理解が深まる。
2解決策の仮説を立てる解決策の仮説とは、「主要課題」に対するその時点でのアクションに結び付く具体的解決策をいう。
解決策の仮説は2つの要素からなる。
それは、「個別課題」に対する「個別解決策」づくりと「主要課題」に対する「総合解決策」づくりである。
1個別解決策はコントロール可能なものになっているかまず、それぞれの「個別課題」に対する「個別解決策」づくりを、 ゼロベース思考 仮説思考 をもとに考え抜く。
そして、自社/自部門/自分でコントロール可能かどうかについて、 YES/ NOの結論 =仮説を出す(図 3 8)。
YESの場合はどうすればできるのか、その具体的解決策( HOW)を明らかにし、 NOの場合はなぜできないのか、理由( WHY)を明らかにする。
たとえば、「単純に価格だけを上げることは可能か」という「個別課題」に関しては「 NO.価格の上昇率以上に売上げが下がるため利益額がいまより減る」。
また、「新たな機能を付加することにより価格を上げることは可能か」という「個別課題」に関しては、「 YES.商品特性がコモディティ型の大衆商品ではあるが、環境保護の視点で新たな付加価値の創出の余地がある」。
また、 A商品にかかる「固定費を下げることは可能か」という「個別課題」に対しては、「 YES. A商品にかかる間接費の低減は、本社間接部門と設計を除く工場間接部門の人員削減により、間接費 20%の低減が可能である」というように仮説を設定する。
あるいは、「変動費を下げることは可能か」という「個別課題」に対しては、「 YES.共通部品の仕入先の集中化と仕入先との徹底交渉により、材料の仕入コストの 10%削減が可能」というように具体的な仮説を立てる。
とにかく、少しでも可能性が残っている場合は YESとして、なぜ可能なのかを ゼロベース思考 により、自分の頭脳も他人の頭脳も総動員して、ギリギリと考えることだ。
アイデアが出ないということはない。
ブレーンストーミングを行えば、解決策は必ず出てくる。
どうしても解決策が具体的に収束しなければ、それは「個別課題」の分析が曖昧でフォーカスされていないためか、アイデアがどう解決に結び付くのかの課題と解決策の間のロジックの詰めが甘いからだ。
それを解決するには、解決策具体化の ロジックツリー ( SO HOW?)を徹底的に活用して、あらゆる広がりの可能性を考え、チェックすることが重要となる。
2総合解決策は全体の資源配分を考えているかこうして出てきた具体的解決策(仮説)は、あくまでも「個別課題」に対する「個別解決策」である。
したがって次のステップは、これらの「個別解決策」を組み合わせて、「主要課題」に対する「総合解決策」を作ることになる。
もちろん、「個別課題」に対する「個別解決策」の仮説がすべて NOであれば、自動的に「総合解決策」は NO、つまり解決不可能という結果になる。
また、それぞれの「個別課題」に対する「個別解決策」を考える過程で、一要素ではあるが全体の問題解決を完全否定するノックアウト・ファクターが存在する場合は、その段階で「総合解決策」は NOになる。
しかし、自社/自部門/自分でコントロールできる何らかの具体的解決策( YES)が存在すれば、「総合解決策」は「 YES. A商品の利益額を上げることは可能である」となるはずだ。
「総合解決策」の方向性(図 3 9)は、たとえば経営資源にまったく余力がない場合は、消極策「 A商品にかかる間接費の低減を、本社間接部門と設計を除く工場間接部門の人員削減で行い、共通部品の仕入先集中化と仕入先との徹底交渉により仕入コストを削減し、利益額の向上を達成する」という、コスト削減にフォーカスしたものになる。
しかし、経営資源に余力があれば、積極策「環境保護を考えた新たな商品開発と、広告・販促を大幅に強化することにより、価格および販売量の増加を図り、利益額を改善することができる」といった打ち手がとれることになる。
もちろんこの積極策に、コスト削減の消極策を加えることも可能である。
「総合解決策」とはこのように、「個別課題」に対する YES/ NOの具体的解決策を組み合わせ、経営資源の観点から「個別解決策」の整合性をチェックしたうえで作られる。
したがって、通常は何通りかの「総合解決策」 =代替案が考えられる。
それらの代替案は場合によっては、こちらを立てればあちらが立たずというように、利害が相反することもある。
しかし、いずれにしてもすべての「総合解決策」を同時に実行することは、資源の分散・重複につながりかねない。
資源とスキルと時間に制約がある中では、常に選択が迫られる。
そして、選択した「総合解決策」には徹底的に集中することが肝要となる。
また、「総合解決策」は企業の理念や方針、戦略的方向性や組織との相性を考えたうえで統合化され、個別の打ち手間の整合性も吟味されたものでなければならない。
そして、戦略的解決策の場合は、競合に対して継続的に優位性を保てる差別化要因が埋め込まれているかが特に重要なポイントである。
それには次のステップで、それぞれの「総合解決策」を検証して、優先順位をつけることが重要となる。
3解決策を検証・評価する解決策の検証・評価とは、「総合解決策」と「個別解決策」に対する文字どおりの検証・評価である。
1つ目は、「個別解決策」の「 YES」が成立するのかを事実ベースで分析・証明すること。
2つ目は、「総合解決策」を経営資源や企業の方針の観点から評価することである。
1個別解決策の検証——ファクト・ベースでチェックするこの検証作業は、検索情報であろうと、インタビューであろうと、あるいは新たなリサーチを行うにせよ、必ずファクト(事実)・ベースであることが重要だ。
分析の精度は定量化するにこしたことはないが、基本的には右に行くのか左に行くのかの判断がビジネスでは重要なのであり、分析そのものが目的ではない。
したがって、精度のレベルは解決策の内容による(図 3 10)。
たとえば、固定費の低減に対しては「間接費削減プログラムによる業務の棚卸し、評価」を緻密に行う必要がある。
仕入コストの削減に対しては、「競合メーカーの部品のコスト分析や部品の共通化により、 1社からの仕入量を増やした場合のコスト低減分析」を、まず初めは仕入メーカーのヒアリング等を通して推定する。
しかし、これは相手にとっては非常にセンシティブな事柄であり、解決策を実行に移す前から高い精度で把握するにはおのずと限界があるし、リスクもある。
また、価格と需要の分析は、理論的には「価格弾性値分析」を行えばよいのだが、同類商品の弾性値の各種係数が簡単に手に入るとは限らないし、また消費者に値頃感を想像レベルで聞いてもその精度にはおのずと限界があり、ある幅を持って推定せざるをえない。
この場合は精度よりも、 YESなのか NOなのか、その方向性がわかれば十分だ。
この検証の分析段階では、既存の各種分析のフレームワークやツール類を大いに利用して、スピードと効率性をとにかく重視すべきだ。
精度よりも押さえが重要である。
ただし、新たにリサーチが必要な場合は、証明すべき仮説に対しては質問項目はできる限り MECE になるよう心がけ、仮説のポイントを外さないように心がけることが肝要である。
2総合解決策の評価——ハードとソフトの両面から判断するこうしてすべての「個別解決策」が検証された後、その組み合わせによる「総合解決策」を、解決策そのもののハードな面と、それを実行する側のソフトな面の両方から評価する必要がある。
まず、解決策そのもののハードな面は、大きく4つの基準から評価される。
期待成果:解決策のもたらす効果を売上げ、利益、成長性の視点から評価 投入資源:ヒト・モノ・カネの投入資源の量とそれぞれに関する企業の制約条件から評価 リスク:市場や競合関係(対競合の差別化要因)の急変による変動や失敗のリスクをダウンサイドとアップサイドの両面から評価 展開スピード:上記の 3要素すべてに関係するが、いずれにしても成功の結果を早く出すための、早期立ち上げのスピードの評価こうしたハードな側面は評価が比較的容易であるが、それ以上に重要なのは、企業理念や企業のスタイルへの整合性と、推進をバックアップするトップのコミットメント(責任感の継続)といった組織上のソフトな側面である。
このソフト面の評価基準は3つ。
企業スタイル、理念との整合性 トップのコミットメント(責任/決意)の確認 リーダーシップのある実務レベルの推進者の有無要するに、解決策がどんなに立派でも、それを強力に推進する旗振り役と実行責任者が万難を排して実行しなければ、何の結果も生まれない。
人材不足でできなかったという話をよく聞くが、そのほとんどは責任回避のエクスキューズにすぎない。
こうしたハード、ソフトの基準に照らして、消極策のコスト削減と積極策のマーケティング強化が評価され、積極策が採用された場合は、実行責任リーダーの下に、マーケティング強化のための個別解決策がさらに現場レベルで深掘りされて、実行フェーズに入ることになる(図 3 11)。
そして採用された積極策を成功に導くためには、現場でのオペレーションの徹底力が肝要となる。
要するに、何事も成功したければ、いかに資源やスキルや時間に制約があろうが、成功するまで徹底し尽くすことなのだ。
4 ソリューション・システム シートを使う以上が ソリューション・システム の基本的プロセスである。
このプロセスを効率的に行うためには、 ソリューション・システム シート(図 3 12)を用いるのがよい。
その構造は図 3 13のようになる。
まず最初は、とにかく書き出してみることだ。
それぞれのパートを別紙に記入していったとしても、必ず 1枚のシートに言いたいことを簡潔にまとめるべきだ。
そうすると、自分が取り組んでいる課題を常に全体観を持って見渡せ、いま自分が問題解決のどの段階にいるのかが一目でわかる。
そのことによって、刻々と動いているビジネスの現場での軌道修正が容易にでき、解決策が大きく的を外れるようなことが事前に防げる。
そしてもちろん、ベター・ソリューションを必ず発見できるという利点がある。
仮説思考 で述べたように、ベストを考えるのに時間を費やすよりも、ベターを実行すれば自然に考えが深まるはずだ。
また、このすべてのプロセスを1つ1つ忠実に追う必要はない。
「個別解決策」が1つしか考えられなければ、それが「総合解決策」そのものであるし、あらかじめ課題が明確であれば、わざわざ課題設定のための比較分析をしなくてもよい。
さらに、分析を進めていくうちに当然、仮説も変化する。
したがって、考えを深めながら解決策を練っていくには、何度も各ステップを行ったり来たりしながら試行錯誤することが必要となる(図 3 14)。
事例 7——「体重が増えた」という現象に対する解決策を立案する ソリューション・システム を使って、第 2章 ロジックツリー で解説した太り過ぎの問題「私は痩せることができるのか?」を再考し、一般的課題に対する適用性を検証してみよう。
——主要課題の設定「私は痩せることができるのか?」という主要課題が設定されるには、まず、太り過ぎの現状を問題があると認識し、改善しようと自らが意識しなければならない。
年に 1回の健康診断で体脂肪率が高く、 BMI値【体重( kg) (身長( m) 身長( m))】を計算したら 25を大幅にオーバーしており減量すべきと注意される(標準化分析)。
あるいは、毎日風呂上がりにチェックしている体重がここ 1年間で 7キロも増えて、動きが鈍く足腰への負担も増えて困っている(トレンド分析)。
あるいは、自分があこがれていつもファッションや仕種を真似しているスタータレントと比べて、最近お腹のあたりの脂肪が気になってきた(ベンチマーク化分析)。
こういった現状認識を経て、主要課題「私は痩せることができるのか?」が設定される。
——個別課題の設定次に、主要課題「私は痩せることができるのか?」を個別課題にブレークダウンする。
ここが最初の知恵の使いどころで、独自のフレームワークを仕立てる必要がある。
ここでは第 2章の ロジックツリー で開発した「痩せるロジックツリー」のフレームワークを利用し、個別課題を作成する(図 3 15)。
第 1段の個別課題は3つ。
「カロリー摂取量を減らせるのか」「体内の不要蓄積物を除去できるのか」「カロリー消費量を増やせるのか」。
このどれかが解決できれば体重は減量できる。
そして各々に対する 2段目の個別課題は、「口からのカロリー摂取量を減らせるのか」「体内へのカロリー吸収率を下げられるのか」「体内の脂肪を除去できるのか」「体内の脂肪以外の老廃物を除去できるのか」「体外へのカロリー放出量を増やせるのか」「基礎代謝率を上げられるのか」の6つにブレークダウンされる。
——個別課題に対する個別解決策づくり次に、個別課題に対する個別解決策を考える。
まずは自分で思いつくだけの解決策を書き出して、どの個別課題に対応するのかをチェックする。
初めは虫食い状態でもかまわない。
さらには、雑誌記事や本を参考にしたり、減量を実施した友人に話を聞いて解決策の完成度を高める。
何人か集めて 20〜 30分ブレーンストーミングをしてもいい。
自分の頭脳と人の頭脳を徹底して活用する。
そうすると、「口からのカロリー摂取量を減らせるのか」の個別課題に関しては、「 YES.食事量の制限を行う、あるいはダイエット健康食のような低カロリーの食事に切り替える」。
「体内へのカロリー吸収率を下げることはできるのか」の個別課題に関しては、「 YES.漢方薬や鍼・灸により体質改善を図る」。
「体内の脂肪を除去できるのか」の個別課題に関しては、「 YES.美容整形で脂肪吸引手術を行う」。
「体内の脂肪以外の老廃物を除去できるのか」の個別課題に関しては、現時点では思い当たらなければ「 NO.解決策なし」ととりあえず置いておく。
「体外へのカロリー放出量を増やせるのか」に関しては「 YES.平常時の歩行量を増やす、あるいは、有酸素運動を毎日行う」。
そして「基礎代謝率を上げられるのか」に関しては、「 YES.筋力トレーニングで筋肉質の体にする、あるいは薬を服用して代謝率の高い体へと体質改善する」。
これではまだ個別解決策にモレがあるかもしれないが、この程度広がりが出てくれば総合解決策は十分作れる。
——主要課題に対する総合解決策づくりそれぞれの個別解決策が考えられたら、次は総合解決策づくりだ。
3つの総合解決策に絞り込んでみよ
う。
総合解決策 1:自力穏便策朝、昼、晩の食事量を制限したり、間食をしないようにしてカロリーのインフローをコントロールすると同時に、万歩計を使って歩行量を管理し、日常のカロリー放出量を増やす。
総合解決策 2:自力積極策スポーツクラブに入会し、水泳やエアロバイクなどの有酸素運動を行ってカロリーを消費すると同時に、筋力トレーニングにより代謝率の高い筋肉質の体づくりを行う。
総合解決策 3:他力活用策緊急には美容整形により脂肪吸引手術を行う。
さらには太りにくい体質にするため鍼・灸を試みる。
気がついたかと思うが、3つの解決策はそれぞれのオプションを考える段階で、すでにある基準によって個別解決策の中から取捨選択している。
つまり、総合解決策の評価がある程度この段階で始まっている。
たとえば、総合解決策 1は時間やお金といった資源を極力かけない解決策であり、資源投入量の観点で選んでいるわけだ。
また、総合解決策 2は時間とお金が十分に確保できなければならない。
そして、総合解決策 3は資金力が潤沢でなければ実行できない。
——個別解決策の検証総合解決策で選択されたそれぞれの解決策が本当に効果があるのかを事前に検証する必要がある。
かなりの時間と、場合によってはお金もかかるし、何よりも意志とエネルギーを持続させなければならない。
自分に合った無理のないプログラムがベターなのだ。
検証方法はいろいろあるが、雑誌や本でそれぞれの効果について当たりをつけたうえで、すでに実行した人や健康カウンセラーなどの専門家に、それぞれの効果を聞いて相談するとよい。
たとえば、スポーツクラブのインストラクターに相談すれば、水泳 30分とエアロビクス 30分を週 3回行った場合のカロリー消費量を推定し、 1ヵ月でどの程度脂肪を燃焼させることができるのか、具体的に提示してくれるだろう。
また、美容整形手術を行うのであれば、美容整形外科に問い合わせれば、費用と効果と回復時間を教えてくれるだろう。
こうしたチェックに基づいて個別解決策と総合解決策を検証し、効果のない解決策は削除し、検証過程で新たに出現した解決策は追加する。
——総合解決策の評価こうして3つの総合解決策は多少修正があったものの、それぞれの効果が検証されたとしよう。
まずはハードの4つの基準からの評価である。
(1)期待成果:体重と、体内に蓄積された脂肪の減量効果で評価する (2)投入資源:自分が投資しなければならないお金と時間で評価する (3)リスク:短期的に効果は上がってもすぐにリバウンドして元に戻ってしまったり、あるいは実行そのものが体に対して悪影響がないのかを評価する (4)展開スピード:緊急課題であれば、少なくとも半年後には十分に減量効果が表れているか、結果に到達するスピードを評価するしかし最も重要なのは、ソフトなファクターである本人のやる気(継続へのコミットメント)である。
3日坊主、 3週間坊主で終わっては、それまでに費やしたお金と時間はまったくの無駄になる。
さらに、実行できなかった無力感が残るので、実行しないほうが精神的にはよい。
このハードとソフトの両面から総合解決策を選択する。
仕事の忙しいビジネスマンであれば総合解決策 1を選択するであろうし、食事制限はご免だが時間とお金にゆとりのある人は総合解決策 2を選択するかもしれない。
あるいは、緊急性が高くお金に余裕のある人は総合解決策 3を選択するかもしれない。
そしてどれかを選択した後は、実際にこれらの解決策を実施しながら定期的に体重と体脂肪率をグラフ化してチェック、モニターすることとなる。
このプロセスを ソリューション・システム シートに整理すると図 3 16のようになる。
以上のように、 ソリューション・システム は、一般的問題の解決にもパワーを発揮することが理解されたと思う。
それは、そもそも普段の自然な問題解決の思考プロセスをビジネス用に体系化したものが ソリューション・システム だからである。
事例 8——OEM事業の今後の方向性を決める ソリューション・システム シートを経営上の課題に適用してみよう。
技術革新が激しく、グローバルな商品競争・価格競争が激しいハイテクがらみのオフィス用電子機器 A商品は、ここにきて収益性が極度に悪化している。
取引先も次々に競合に取って代わられ、 A商品を中心とした A事業自体の存続が危ぶまれている。
こうした状況下、トップは「当社は A商品の OEM事業を今後も継続することが可能か?」という主要課題を設定した。
これに基づいて、 ソリューション・システム による問題解決を行ってみる(図 3 17)。
まず、原因を追求するため 3 C(競合、顧客、自社)の枠でブレークダウンし個別課題を立てる。
たとえば、競合であれば「価格競争に勝てるのか」あるいは「特許戦争に対応できるのか」。
また、市場/顧客であれば、「変化の激しいユーザーニーズに対応できるのか」、あるいは「現状の OEM先の顧客との関係を維持できるのか」。
さらに、自社であれば、「当社の技術力で、半年サイクルの新商品開発は可能なのか(ヒト)」「技術開発と生産設備への投資余力はあるのか(カネ)」「海外生産設備の活用は可能なのか(モノ)」。
そして、それぞれに対する仮説を立てる。
たとえば価格競争に対する仮説は、「 YES.生産拠点を日本から中国に移管すれば、製造原価が低減できコスト競争力を高められる」。
特許戦争に対する仮説は、「 NO.競合の特許なしでは自社の新商品は開発できない」。
また、ユーザーニーズに関する仮説は、「 NO. OEMビジネスのためエンドユーザーとの距離が遠く、ユーザーニーズのハイピッチな変化への対応には限界がある」。
OEM先との関係についての仮説は、「 YES.取引条件によるが 7割は継続可能」。
さらに、当社の技術力に関する仮説は、「 NO.今後必要となる重要な要素技術および技術者数が圧倒的に不足している」。
財源に関する仮説は、「 NO.余剰資金が枯渇しているうえ、借入金を含む外部からの資金調達は困難」。
そして、生産設備に関する仮説は、「 YES.マレーシア、中国の生産ラインを活用できる」。
この中で特許戦争の仮説がもし本当であれば、それだけでノックアウト・ファクターとなる可能性もある。
この状況は非常に厳しい経営環境で、あちこちの個別課題をもぐらにたとえるなら、いくらたたいても、もぐらを退治できそうにない。
この場合の総合解決策の仮説は2つ。
「 YES. OEM事業は継続できる」の楽観ケースと、「 NO. OEM事業から撤収する」の悲観ケースで、中間はなさそうだ。
そして、特許戦争がノックアウト・ファクターになるかどうかが鍵となる。
このように、 ソリューション・システム シートを使うと、常に全体観を持てる。
分析した結果、もし仮説が外れればその時点で個別解決策の仮説を修正し、総合解決策を作り替えればいい。
そしてこのシートがあれば、それぞれの分析を個別課題のスコープに応じて各管轄部署に依頼できる。
たとえば、価格競争に関する付加価値分析、また特許戦争や要素技術力に関しては技術開発・研究部門へ情報提供や分析を依頼する。
また、海外工場の活用は生産管理部門、投資余力は財務・経理部門を巻き込んで分析する。
ユーザーや商品開発サイクルについては、商品開発やマーケティング部門が関係してくる。
これらの仮説が検証され、すべて正しいとすると、「主要課題」に対する結論は「 OEM事業の継続は不可能。
早期に撤収を図る」となる。
撤収となると大変な決断であり、それだけに十分な検証が求められる。
一流と言われる経営コンサルタントは、この ソリューション・システム のプロセスを、トップとの話し合いや部門長へのインタビューを通して初期の段階で頭の中で行い、同時に解決策の仮説を立てている。
売上高が 1000億円以上の大企業のトップを対象とした経営コンサルティングでは、ステップ 3の解決策の検証・評価には相当なエネルギーを使う。
それでもトップの意思決定スタイルによっては、なかなか説得が難しい場合もある。
反対に、数百億円以下の中堅企業や上場前のベンチャー企業のオーナー経営者は、ステップ 2の解決策の仮説を出した段階で自ら判断し、即実行することが多い。
ビジネスの現場に精通し、自分の判断なりセンスに自信を持ち、経営のスピードを差別化上最重要視するオーナー経営者であればこそ、仮説レベルでも大胆に戦略に取り入れるというリスクを伴う判断ができるのであろう。
以上、 ソリューション・システム とは、 ゼロベース思考 仮説思考 の2つの思考と、 MECE
ロジックツリー の2つの技術を駆使した問題解決のプロセスであることが理解できたことだろう。
次の第 4章では、実際にこれらの思考と技術を経営の現場で実践して結果を出した、ある大手家庭用品メーカーで私が手がけた経営改革のプロセスを紹介しよう。
第 1章では、 ゼロベース思考 仮説思考 というビジネス上で最も基本的、かつ重要な2つの思考態度について述べた。
そして第 2章では、実際に問題解決を行う際の基本的な2つの技術 MECE ロジックツリー について、そして第 3章ではこれらを総合的に駆使した効率的な問題解決の実践的プロセス ソリューション・システム について説明した。
それぞれを説明するにあたっては、いくつかの具体的事例を紹介してきたが、第 4章では問題に直面したときいったいどのように思考し、仮説を立て、分析を行い、そして実行過程に落とし込んでいくのかということを、実例を通して紹介する。
それは私がある大手家庭用品メーカー(以下 S社と呼ぶ)で行った新規ビジネス立ち上げの、一連のストーリーである。
企業情報を扱うため、文中で挙げた数字やデータについてはいくらか手を加えてあるが、第 1章、第 2章、第 3章の内容の理解を深め、ビジネスの現場で使えるようになるために必要な分析・実行のプロセスはすべて再現してある。
そして導かれる結論や具体的にとったアクション自体は事実であり、十分に主旨は伝わると思う。
さらに、この章では、限られた情報や事実から意味合いを導くためのアナリシス・ツールをいくつか紹介する。
これらはチャートやグラフを多用し(ワンポイントレッスン 1)、さまざまな戦略上の課題分析にあたってしばしば有効に用いられるツールだ。
私もこれらのツールを活用して分析を行い、問題解決を行った。
どのような場合にどのようなツールを用いて分析するのか、そしてその使い方のコツも、ワンポイントレッスン形式ではあるが紹介する。
なお、分析手法に関しては、姉妹編の『問題発見プロフェッショナル構想力と分析力』(ダイヤモンド社)に詳述している。
コメント