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第 2章技術編〈 MECE(ミッシー)〉

〈ロジックツリー〉 〈MECE〉〈ロジックツリー〉を応用する市場/競合/自社のとらえ方に大きなモレはないか計画は緻密に具体化し、実践は徹底する 1〈 MECE〉モレはないかダブリはないかをチェックする 1 〈 MECE〉をビジネスで使いこなすモレによって的を外していないか?ダブリによって効率を阻害していないか? 〈MECE〉でとらえ、最後に優先順位をつけているか? 2 フレームワークで〈 MECE〉を学ぶ 3 C + 1 Cビジネス・システムマーケティングの 4 P事業ポートフォリオ演習 1商品の売り場配置に問題はないか演習 2ビジネス・システムで顧客への提供価値をチェックする演習 33 C + 1 Cで自社の課題を把握する 2 〈ロジックツリー〉限られた時間の中で広がりと深さを押さえる 1 〈ロジックツリー〉で原因を追求する事例 3営業マンの生産性低下の原因を追求する 2 〈ロジックツリー〉で解決策を具体化する事例 4営業マンの生産性低下に対する解決策を具体化する 3 〈ロジックツリー〉を作るオリジナル・フレームワークの作成〈ロジックツリー〉の作り方とコツ事例 5企業が太るケース 1「営業利益を増やす」事例 6企業が太るケース 2「企業価値を高める」 4 フレームワークで〈ロジックツリー〉を学ぶ財務分析の ROAツリー間接費削減プログラムコーザリティ分析演習 4ボーナスの使い方を考える演習 5活動時間を分析する演習 6ユーザーにとっての商品価値を高める

MECE ロジックツリー を応用する

——市場/競合/自社のとらえ方に大きなモレはないかビールは、製法によって2つのカテゴリーに大別される。

熱処理を施したビール(以前のキリンラガービールがその代表例)と非加熱処理の生ビールである。

スーパードライの出現前は、製造後も品質の安定を図るために熱処理により酵母の動きを止める製法が主流であった。

しかし、三十数年前には 10%にも満たなかった生ビールが、ラガー党にとっては大事件となる 1996年のキリン・ラガービールの生ビール化により現在はほぼ 100%となった。

このビール市場の変化を決定的に方向づけたのが、アサヒのスーパードライであった。

戦略を考えるうえで、市場(顧客)、競合、自社の3つの動きを「モレ」なくカバーし、深くとらえることがいかに大切か、さらに戦略を実行するうえで「広がり」を押さえ「具体化」することがいかに重要か、スーパードライの誕生と躍進の背景を追いながら考えてみる。

市場(顧客)まず市場(顧客)に関しては、 1975年頃にはビール需要は飽和点に達し、その後も酒税の増税に伴う値上げや、嗜好の多様化によるワインや焼酎ブームの影響で、ビール市場はすっかり成熟してしまったというのが一般的な見方であった。

しかしながら、もう一歩消費者レベルで掘り下げてみると、実態はかなり地殻変動が起きていたことがわかる。

というのは、消費者の嗜好や行動様式の変化によって、「生化」や「缶化」といった構造的変化はすでに進行していた。

1980年代の半ばには、生化率は 50%近くになっていたし、缶化率も年々高まっていたのだ。

このような消費者の構造変化が進む中で、従来のラガーや当時の生ビールでは十分に満足できない「ドライな生」を求める消費者ニーズが、まさに水面に浮上しようとしていた。

競合一方、スーパードライの出現前の競合状況は、業界全体が「成熟市場」という、何をしても大きな変化はないだろうという「既成の枠」にはまり込んでいたために、飲料・食品の本質である「味」からはかけ離れたところで競争が終始繰り広げられていた。

面白いネーミングや奇抜なデザインのパッケージからピヨピヨと音が出る容器に至るまで、容器戦争と呼ばれたこれらの競争は、きわめて表面的なものだった。

また、およそビールのイメージからはかけ離れた奇抜な広告表現はたしかに面白いが完全に SO WHAT?で、ビールを飲んでみよう、あるいは試してみようという、人間の素直な意識への働きかけとはまったく別のものであった。

どのメーカーも、他社が新たに仕掛ければとりあえずは受動的に対応するため、すべてがあっというまに 1色に同化してしまい、消費者にとってはただ騒々しいだけで、競争があってもないような状況に映っていた。

そして、当時のアサヒビールも、そうした業界の慣習に黙々と追随していただけであった。

自社そうした中で、アサヒビールの自社の状況はというと、じりじりとシェアを落とし続け、 1985年には 9. 6%の一桁台にまで落ち込み、「夕日ビール」とまで呼ばれていた。

それでも、抜本的な打ち手の見えない手詰まり状態のまま、製造コストを下げるために二流の原材料でビールを造っては、無理に販売チャネルに押し込んでいた。

そのため、流通在庫がダブついて店頭には日付けの古い、おいしくないビールが並んでいたのである。

要するに、スーパードライ誕生前のアサヒビールは、市場(顧客)/競合/自社のとらえ方という面では、まず、市場(顧客)の見方は他のメーカーの「右にならえ」式のきわめて表層的なものでしかなく、消費者の「生化」や「缶化」といった構造変化の兆しを見落としていた。

さらに、表面的な競合の動きに振り回されながら、自社の経営資源に余裕がない状況下では、高品質な原材料の使用もままならず、本当においしいビールを消費者に提供できないという悪循環にはまり込んでいたといえる。

この悪循環を完全に断ち切るために、アサヒビールが真っ向からチャレンジしたのが、消費者に「最高の味」のビールを提供することであった。

それが、スーパードライの「フレッシュ・ローテーション」革命である(図 2 1)。

口廣太郎会長(当時)の「前例がない。

だからやる!」という発想のもとに誕生したドライビールは、既存のビール市場を ゼロベース思考 でとらえ直し、同時に若い商品開発担当者の 仮説思考 を尊重し、取り入れたのが起点となっている。

「コクがあってキレがあるドライな」生ビールという新たなコンセプトは、成熟したと一般的に思われていたビール市場の中にありながら、地殻変動によって生じていた大きな消費者の「モレ」をクリアにとらえたのだ。

言い換えれば、従来のラガーや生ビールでは満足できない消費者ニーズに、正面からダイレクトに応えたのが、アサヒのスーパードライであった。

そして、アサヒビールは日本のビールを、「保存」飲料から「生鮮」飲料に完全に変えてしまった。

アサヒのスーパードライ旋風にあわてたビール各社は、まずスーパードライの完全コピー商品、 ドライを出した。

しかし、各社が二番煎じの ドライのプロモーションに拍車をかければかけるほど、勢いづくのは消費者の「味」を本質的にとらえたスーパードライ

基準ではなくなっていた。

第 2に、「いいものを伝える」ために酒販店と消費者とのコミュニケーションでアサヒビールが実行したことは何か。

まず、消費者に対しては商品を伝えるために全国規模で 100万人の試飲会を実施したり、営業利益をすべてつぎ込むほどの大々的な TVコマーシャルや熱気球を使った広告キャンペーンを展開した。

また、酒販店に対しては、スーパードライのフレッシュ・ローテーションによって、今後は古いビールを扱わないことを徹底して伝えるインナー・キャンペーンを展開した。

第 3に、「いいものを維持する」ためにアサヒビールが徹底したことは何か。

これは、商品戦略そのものの中核をなすものであるが、「フレッシュ・ローテーション」の徹底である。

ビールの鮮度は、直射日光と振動と時間によって劣化が進む。

以前は、店頭に並ぶまでに 2週間も 3週間もかかったうえ、 3ヵ月経っても古いビールが店頭に置かれていた。

それを、工場から店頭まで 8日以内に商品を届け、 3ヵ月経ったビールは店頭に置かないようにした。

それが「フレッシュ・ローテーション」の要だ。

これは、生産、物流、卸、酒販店そして社員すべてを巻き込む大変な作業であり、それを徹底するのは並大抵の努力ではなかった。

社長を筆頭に社員全員が古いビールを店頭から買い上げ、当初 4億 8000万円の回収予算が、軽く 10億円を超えた。

さらに、酒販店レベルでの鮮度をチェックしながら商品のクレーム情報や売上げ推移を本社にフィードバックするために、業界初の「マーケットレディー」を採用し、きめ細かく現場に対応した。

このように、アサヒビールは「おいしい生ビールを消費者に提供する」ことを実現するために、アサヒビール独自の戦略展開の中で、緻密に実行案を練り、それを徹底したのだ(図 2 2)。

その後、「スーパーイースト」や「 Z」で試行錯誤を繰り返しながらも着実に実力をつけ、 1996年にはドライとは異なるカテゴリーの「黒生」もヒットし、 1985年に 9. 6%だったアサヒビールのシェアは、 10年間で約 3倍になった。

成熟市場と呼ばれていたビール業界は、アサヒビールによって競合の構図が大幅に書き換えられたが、その後も発泡酒、第 3のビールなど地殻変動は続いている(図 2 3)。

このアサヒビールのスーパードライ戦略から読み取れることは、市場(顧客)/競合/自社の広がりの中で大きな「モレ」をなくしながら状況を深くとらえることがいかに重要か、また、戦略を実行するにあたっては「広がり」を押さえながら「具体性」のある実行策を徹底することがいかに重要か、ということである。

それでは、解決策や戦略を練り上げるうえで重要な考え方である MECE と ロジックツリー について詳細に説明しよう。

注)『前例がない。

だからやる!』( 口廣太郎著:実業之日本社刊、 1996年)を一部参照 1 MECE モレはないかダブリはないかをチェックする MECE とは、 Mutually Exclusive Collectively Exhaustiveの略である。

日本語に直訳すると、「それぞれが重複することなく、全体集合としてはモレがない」という意味である。

これを、経営コンサルティング会社マッキンゼーでは「ミッシー」と呼んでいる。

実はこの MECE という概念は、全体として「モレなしかつダブリなし」というきわめて単純な集合に関する概念だが、ビジネスにおいては非常に重要な考え方である(図 2 4)。

まずは、簡単な例をもとに MECE の考え方を理解するためのウォーミングアップから始めよう(図 2 5)。

ダブリはないがモレ たとえば、企業の資金調達方法としては、株式増資や長・短期銀行借入がある。

それ以外にも普通社債、転換社債やワラント債等のさまざまな社債も考えられる。

もし、企業の財務戦略の中でそれらすべてについて検討されないまま、ほんの一部の資金調達方法についてのみ検討がなされ、偏った結論が出されたとする。

そのために失敗に終わったり、あるいは表面上は失敗とは見なされなくても、検討されなかった方法で、実はもっと良い結果が出せた可能性があったとしよう。

これでは財務担当役員も財務部長も失格ということになる。

モレはないがダブリ 医薬品メーカーの営業本部長が、自社の営業部隊のエリア配置を計画したとする。

その配置にあたって、個人医院、一般病院と大学病院に営業部隊を分けたうえに、さらに公立病院の営業部隊も別にしたとする。

しかし、一般病院や大学病院にも公立病院があるわけで、これでは別々の営業マンが同じ病院に営業することになる。

したがって市場のカバーに大幅な重複を起こしており、きわめて非効率的なエリア分けということになる。

これもまた、営業本部長としては失格である。

モレもダブリもある 車の販売チャネルで考えてみよう。

もし自社が軽自動車、大・中・小型乗用車から RV仕様の四駆やスポーツカーも含めたフルラインの商品を揃えていたとする。

まさか、販売チャネルをセダンと四駆と 3ナンバー車に分けるようなマーケターはいないと思う。

これでは大モレ、大ダブリのチャネル分けになってしまい、軽自動車やスポーツカーの販売チャネルがないうえに、 3ナンバー車がセダンと四駆チャネルと重なってしまい、効率が悪い。

モレなしかつダブリなし 食品・飲料の流通形態は、保温レベルによって異なる。

それは、常温、チルド、冷凍ルートと、モレもダブリもなく分かれる。

たとえば、全国に外食レストランを展開する企業が、あらゆる食材・飲料を自社の直営店に供給するためには、これらの異なる流通形態をうまく組み合わせて全国へ配送することになる。

したがって、物流担当責任者はこれらの地域ごとの組み合わせを最も効率よく設計しなければならない。

これらはきわめて単純な例ではあるが、ビジネス上はこのように、モレがあると的外れになったり、ダブリがあると非効率的になるようなケースがゴマンとある。

読者の周りでも日常茶飯事ではないだろうか。

会議の席で、 Aさんは的を外したモレのある考えをとうとうと述べ、 Bさんは反論として Aさんの瑣末な部分をとらえてダブリのある意見を延々と述べる。

切り口のレベルが異なるため、同じことを言っているようで意見がまったくかみ合わないが、それがなぜなのか当人たちも、聞いている人たちにもわからない。

よく整理してみると、モレとダブリのせいで、肝心な話に触れずに、瑣末な論点で話し合いがずれたまま長引き、無駄に時間を使ってしまったというようなことがある。

1  MECE をビジネスで使いこなす「モレなしかつダブリなし」という集合の単純な考え方である  MECE が、なぜそれほど重要なのか。

それは、企業のトップであろうと生産や販売の最前線で頑張っている新人であろうと、立場に関係なく、それぞれの目標を達成するために必要なヒト・モノ・カネの経営資源や時間に制限があるからだ。

そして、商品・サービスの受け手となる顧客が存在する限りは、競合相手に比べより効果的に、かつ効率的に自社の商品・サービスを顧客に提供することが競争力の源泉になるからだ。

つまり、経営資源に制限がある限り、大きなモレや大きなダブリはビジネスの効果・効率を著しく阻害するということだ。

 MECE を活用するうえでのポイントを整理すると、次の3つになる。

モレによって的を外していないか? ダブリによって効率を阻害していないか?   MECE でとらえ、最後に優先順位をつけているか? ——モレによって的を外していないか?まず、モレの問題を考える。

前述の資金調達の例からもわかるように、さまざまなビジネス上の課題を考える際には、できるだけモレを出さないように、 ゼロベース思考 で物事を大きくとらえることから始めるべきだ。

解決策や問題の原因を究明するときに重要な要素を見落としていては、どんなに緻密な分析やアクションプランを立ててもしょせん的外れでは意味がない(図 2  6)。

資源の無駄はなんとか回復できたとしても、使った時間は戻らないからだ。

ビール業界から「モレ」の例を1つ。

アサヒのスーパードライの出現にあわてたビール各社は、「ドライな生」を求める消費者の大きなセグメント(かたまり)を見落とす一方で、容器戦争の延長で表面的な新商品開発ラッシュに走った。

当時、キリンだけでも一時は 20以上のブランドを擁し、ビール市場は新商品で百花繚乱、新ブランドが乱立していた。

そこでは  MECE の観点から2つの大きな問題が生じていた。

1つは、もちろん「ドライな生」を求める消費者の構造変化を根本的に見落としていたという市場のとらえ方の問題。

もう1つは、乱立する新商品開発に経営資源を分散させてしまい、本来の主力商品であるキリンの「ラガー」、サッポロの「黒ラベル」、そしてサントリーの「モルツ」への資源投入量が相対的に低下してしまったと推定される、資源配分の問題だ。

つまり、消費者のとらえ方に大きなモレがあったうえ、一方では主力商品への資源配分上のモレも同時に起こしてしまい、その結果各社とも大幅にシェアを落としていったのである。

——ダブリによって効率を阻害していないか?次に、ダブリの問題を考える。

前述の医薬品メーカーの、ダブリを起こしている営業マンの配置例はもちろん問題外である。

しかし、ダブリによって起こる資源配分の非効率は、ビジネスの現場をよく観察すればおそらくどの企業でも何かしら生じているはずだ。

野球でいえば、ライト・センター間のヒットを恐れるあまり、 3人で守るべき外野にいつのまにか 5人の選手がいるという状態にあたる。

野球の場合は、これで鉄壁の守備ができれば OKかもしれないが、ビジネスではそうはいかない。

というのは、資源配分上単に効率が悪くなるだけでなく、ダブリが生じていると受け手に対して混乱を与える場合があるからだ(図 2  7)。

ビール業界の例を続けよう。

ビールが製法によって2つのカテゴリーに分かれることは、先ほど述べた。

しかし、キリンビールは 1996年にキリンラガービールの生ビール化に踏み切った。

そのため、従来は熱処理の「キリンラガービール」と非加熱処理の「一番搾り」にターゲットもポジショニングも明確に分かれていたものが、生ビールに一本化されてしまった。

ここには、明らかにダブリの問題とモレの問題がある。

まずダブリに関しては、どちらも生になったことにより、それぞれが少なくとも生カテゴリーで競合(カニバライゼーション)し、トータルの売上げを下げていないかどうかがポイントになる。

生ビールというカテゴリーの中で、「一番搾り」的生ビールと「ラガービール」的生ビールを求める消費者層や飲用シーンがそれぞれ大きく異なれば問題は小さいが、もしも大きく重なる場合は、資源の非効率と消費者の混乱を起こしていることになる。

また、モレの問題としては、「ラガービール」の生化により、独特なコクのあるラガービールを好む頑固なラガー党には、もはやキリンのラガービールが飲めなくなってしまったことだ。

ビール全体の生化が進行するなかで、「一番搾り」ではアサヒの「スーパードライ」に十分に対抗できず、こうした打ち手を生の強化策として放ったと推察できる。

しかし、その根本的原因は、「一番搾り」を大型定番商品にまで育てながらも、結局はラガーに代わるナンバーワンのスター商品にまで育てられなかったキリンビールの、過去の強み(ラガー神話)の限界にあるともいえる。

キリンビールのこの一見対症療法にも見える意図的ダブリが、緻密な計算の上での生ビールの全面的な強化として機能すればよかったが、うまく機能しなかったために、資源の非効率とキリンビール・ファンにとっての商品・コミュニケーションの混乱という、ダブルパンチを受けることになった。

—— MECE でとらえ、最後に優先順位をつけているか?最後に重要なのは、物事を大きく  MECE でとらえられるようになったら、必ずメリハリ =優先順位をつけることだ。

どんなに  MECE になっていても、すべてをカバーした網羅的な解決策やメッセージは、何も言っていないのと同じことである。

特に  MECE が重要性を増すのは、戦略を立案するときだ。

なぜなら戦略の目的は「企業としての目指すべき方向に対して、いかに効率的かつ効果的な経営資源(ヒト・モノ・カネ)の配分を行い、競合との差別化を図りながら自社にとって優位な状況を継続するか」に尽きるからだ。

つまり、貴重な経営資源の配分にあたっては、できるだけモレやダブリを最小限に抑えながら優先順位をつけることが、企業の意思決定者にとって肝要となる(図 2  8)。

この資源配分そのものが、戦略といってもいいくらいだ。

ビジネス書に戦争の例が多いのは、各前線への戦力配分が、要するに戦略だからである。

戦略の方向性や資源配分にモレやダブリがあると、経営会議の場で必ず、あれはどうしたという指摘がトップから飛んでくるはずだ。

なぜなら、 CEO(最高経営責任者)の頭の中は常に  MECE だからだ。

よく「うちの社長は突然、突拍子もないことを言って困る」という社員の発言を聞くことがあるが、突然のアイデアのように見えても、それは  MECE のプロセスの中から最終的に資源配分を考えて優先順位をつけ、結論づけたものなのだ。

戦略を  MECE でとらえたつもりが、資源配分の視点による優先順位づけが完全に欠如していたために失敗した例を紹介しよう。

マツダがバブル経済の真っただ中の 1991年に達成した、フルライン・フルカバレッジ体制である。

従来のマツダ車中心の「マツダ」「アンフィニ」とフォード車の「オートラマ」に加え、欧州車チャネルの「ユーノス」、軽自動車を中心とした「オートザム」の 5チャネル体制ができあがったのとほぼ同時にバブルがはじけ、 1992年に自動車市場全体が 7. 2%減と落ち込む中で、マツダは 12. 9%減と惨憺たる結果になってしまった。

たとえば、「センティア」と「 MS 9」は兄弟車であるが、チャネルごとにブランドを変え、各チャネル専売を保ち、車種もチャネルも市場に対して見事なまでに  MECE にしたが失敗した。

それはなぜか? 原因はただ1つ。

商品とチャネルと市場に対して  MECE のつもりでも、業界 5位のマツダの限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)が完全に分散してしまい、セグメント化された各市場での資源投入量が競合よりも小さくなり、競争力を失ってしまったからだ。

当時、車好きを自認する人でも、いったい何台の車をマツダ車として認知していただろうか。

このように、軽自動車を含め 9車種しかなかったラインナップを、 5つのチャネルに振り分けるという無理な販売多チャネル化の失敗は、マツダのブランドを大きく傷つけ、経営を危機に陥れることとなった。

その結果、マツダは 1993年度から 3年間連続して大幅な赤字決算となった。

1990年には 142万台を記録した年間生産台数も、 1995年度には 77万台とほぼ半減してしまったのだ。

こうして深刻な経営不振に陥ったマツダは 1996年、アメリカのフォード・モーターの傘下に入り、フォードから送り込まれる経営陣によって経営再建が図られることとなった。

彼らがまず取り組んだことは、増えすぎた車種の整理と販売チャネルの簡素化であった。

同時に、堕ちたブランドを再構築することが最大かつ緊急の課題であった。

1996年6月に社長に就任したフォード出身のヘンリー・ウォレス氏も、マツダのアイデンティティを確立することが自分の使命であるとメディアに語っている。

社内では「マツダらしさとは何か」「マツダの DNAとは何か」という議論が延々と繰り返されたという。

そこから見いだされたのは、マツダの強みはやはり、高性能のロータリーエンジンを開発する技術力であり、スポーツカーづくりへの現場の情熱であるという、マツダの持つ潜在価値へのフォーカスであった。

スポーツカーとは、走る楽しさをどこまでも追求し体現する車である。

スポーツカーづくりに長けているマツダには、この走る楽しさを実現するエンジンと足まわりに関する優れた技術があった。

そこで、ブランド名、商品名ともに一新し、全面的に刷新したモデルを開発するという方針を決定・断行した。

そうして生まれたのが、新中型セダン「アテンザ」、新小型車「アクセラ」、新コンパクトカー「デミオ」であった。

この 3モデルの成功に加え、新しいロータリーエンジンを搭載した 4ドア・ 4シーターカー「 RX  8」の登場が、マツダのブランド再生を決定づけた。

2003年度は連結売上高 2兆 9161億円、営業利益は 702億円と過去 10年で最高の営業利益を上げ、負債も大幅に圧縮している。

80年代後半のバブル期に無理な拡大路線をとり、総花的なイメージの拡散によって固定ファンを失いブランドに傷を負ったマツダだったが、自分たちの原点である高い技術力と「走り」へのこだわりに立ち戻り、そこにマツダらしさを見いだすとともに商品ラインナップを大胆に絞り、このコンセプトをすべての車に背負わせることで見事に巻き返しに成功したのである。

このように  MECE は網羅性を追求するための分解ツールとしては強力だが、その先の経営資源配分の優先順位づけに失敗すれば意味がない。

 MECE で熟考した後は、その意味合いをとらえ、最後に優先順位づけを行うことを決して忘れてはならない。

2フレームワークで  MECE を学ぶ世の中でフレームワークと呼ばれているものは、多くがこの  MECE の応用である。

なぜなら、フレームワークとは問題を解決するために原因を追求したり、解決策を考えるときの骨格や構造そのものであり、構成する軸にモレやダブリがあっては役に立たないからだ。

これから紹介するフレームワークも、すべてこの  MECE の考え方に基づくものだ。

——3 C  1 C戦略策定にあたり、分析の基本となるのが、「 3 C  1 C」のフレームワークである(図 2  9)。

それぞれの Cは、顧客( Customer)、競合( Competitor)、自社( Company)、および流通チャネル( Channel)を指す。

1 Cを加えているのは、メーカーであれば必ず流通チャネルも考えなければならないからだが、自社が流通チャネルそのものの販売会社であれば 3 Cでカバーされる。

だいたいの企業が、とにかく気になってよく観察しているのは、競合の動きだ。

そして、灯台下暗しなのが自社の強みである。

人間もそうだが、自分の弱みはだれもが認知し、評論家になるが、強みはなかなか自分では見えない場合が多い。

また、企業によって状況把握の格差が大きく、概してあまりよく見えていないのが顧客である。

流通チャネルに関しては、直接の顧客であり、またその変化が激しい現状では、否が応でも敏感にならざるをえない。

理論的に考えれば、競合相手を見なくても、顧客をしっかりととらえた戦略を常にとっていれば、競合に負けるはずはない。

戦略を難しく考える必要はない。

顧客にとっての価値を考え抜き、自社の強みを徹底して活かしながら、最後に資源配分にメリハリを利かせることだ。

戦略は単純明快なほどいい。

なぜなら、しょせんは人間が行うことであり、あまり複雑で難しいと実行が困難になるからだ。

——ビジネス・システム製品・サービスが開発されてから市場に出るまでの付加価値の流れを時間軸で  MECE に整理したフレームワークを、マッキンゼー社では、ビジネス・システムとかバリュー・デリバリー・システムと呼んでいる(図 2  10)。

業種・業態によって項目や並ぶ順序が異なるが、自社の強み・弱みや競合の強み・弱みを全体観を持って把握し、自社の課題を抽出するときに使うと重宝である。

また、 ゼロベース思考 で「顧客にとっての最大の価値を提供する」視点で自社のビジネスの流れを見直すと、現状とのギャップが明確になる。

どのようなビジネスであっても、付加価値を生み出している限りはこのビジネス・システムを定義することができる。

自社のビジネス・システムはどうなっているか、顧客の視点から付加価値の流れを整理してみるとよい。

——マーケティングの 4 Pどのマーケティングの教科書にも出てくるのがマーケティングの 4 Pだ(図 2  11)。

これはマーケティングの要素を4つの P( Product、 Price、 Place、 Promotion)で  MECE に整理したもの。

それぞれは、製品、価格、販売チャネル、プロモーションといったマーケティングを考えるうえでの重要な要素である。

1960年代に整理されたものであるが、今日のビジネス環境にあってもこの考え方は踏襲されている。

 MECE はこのように普遍的であるものもあれば、時代や環境によって変化していくものもある。

新たな切り口はないかと常に考えていく必要がある。

——事業ポートフォリオ図 2  12は、事業の位置づけを考えるときに使う BCG( Boston Consulting Group)の事業ポートフォリオである。

X軸に相対マーケットシェア、 Y軸に市場成長率をとって各事業をプロットし、資源配分を考えるときに使う。

たとえば、相対マーケットシェアが高く、市場成長率が高い事業 Aはスターになり、資源投入を惜しむなということになる。

また、相対マーケットシェアは高いが、市場成長率が低い事業 Bは金のなる木であり、効率化を徹底するということになる。

マトリックス型のフレームワークは、このように X軸、 Y軸を選択し、それぞれの象限が  MECE になるようにすればいくらでも考えられる。

ただし、 X軸、 Y軸は、それぞれが独立した相互に影響の受けない軸(切り口)を選ぶことが重要である。

この BCGの事業ポートフォリオも、軸のとり方を市場規模、売上成長率や収益率に変化させると意味合いが変わってくる。

たとえば、自社のデータだけでも、 X軸に各事業ごとの利益率をとり、 Y軸に売上成長率をとれば、同様の位置づけを試みることが可能だ。

これで  MECE とは、ビジネスの基本ロジックであり、ビジネスマンの基本スキルであることが理解できたであろう。

要するに、考えるプロセスにおいてはできるだけ物事を  MECE にとらえる。

しかし実行に移す段階では、優先順位 =メリハリをつけるということだ。

1つ付け加えると、  MECE のプロセスは、優秀な人であれば頭の中で瞬時にできてしまうかもしれないが、できれば最初は紙に書いて訓練をしたほうがよい。

演習 1商品の売り場配置に問題はないかまず身近な例として、小売店頭での商品の売り場配置と  MECE の問題を考えよう。

食品スーパーの売り場は  MECE の事例の宝庫だ。

野菜売り場、精肉売り場、魚介売り場、乾物類売り場、調味料売り場、飲料売り場……。

スーパーの経営者は、限られたスペースをいかに有効的に使い、たくさんの商品を陳列・販売するかということを第一義に考えてきた。

しかし、歴史的には各食品のコーナーは、卸業者に陳列を丸投げされてきたという。

ところが、昨今の売り場は少し様相が違ってきている。

キャベツが旬の時期にはキャベツのかたわらに回鍋肉(豚肉とキャベツの辛味噌炒め)の素が置かれたり、精肉売り場の冷蔵ケースのわきに焼肉のタレが陳列されたり、鍋のシーズンには、鍋のスープの種類に合わせて野菜を組み合わせて並べたり……、といった陳列をよく見かける。

もちろん、回鍋肉の素や焼肉のタレ、鍋のスープは調味料コーナーにも置いてあるし、特売対象商品であれば、棚のエンドや特売コーナーにも置かれている。

 MECE でいえば、店舗内での完全なダブリである。

どちらにも必ず置いてあれば消費者にとっては便利だし、店の立場から見ても、大量に需要が見込まれるのであれば販売機会の最大化を図るうえで重要である。

しかし、陳列スペースを重複させることになり限られたスペースに無駄が生じるうえ、ほかにそのスペースを使ってより売れる商品があれば、販売上の機会損失が発生することになる。

このような関連販売(クロス・マーチャンダイジング)には、2つの意味合いがある。

たとえば鮮魚売り場の刺身コーナーにチューブ入りわさびが置かれているのは、消費者の買い忘れを喚起することであるから、販売ロスを防ぐという意味が大きいが、陳列スペースの無駄という側面も否定できない。

しかし、りんごの販売コーナーにアップルパイのシートとシナモンが置かれていたらどうだろう。

りんごを買いに来た客は、自分が食べるだけのりんごを 3個しか買わないかもしれない。

ところが、アップルパイのシートとシナモンを見たことで、それまではまったく考えてもみなかった「アップルパイを作ろう」という発想がわき、そのまま食べる 3個と、アップルパイ用の 3個の、計 6個のりんご、加えてアップルパイのシート、シナモンを購入することもありうる。

つまり、新たなニーズを喚起するわけだ。

この場合は、消費者のニーズが高まるような陳列スペースの効果的ダブリであったということだ。

このような現象は他の商品でも数多く見受けられる。

この商品配置に関するモレやダブリは、スペースの無駄からくる販売の機会損失や消費者の混乱も招く。

しかし一方では、意図的にダブリを起こすことで、消費者にとっての利便性を強化し、販売機会の増加につながる場合もある。

アルコール 0. 00%の「キリンフリー」が、従来のビールコーナーに置いていないスーパーがある。

さて、あなたならどのような、陳列、棚取りをするだろうか?限られたスペースで販売効率の最大化を図っている CVS(コンビニエンス・ストア)は、 CVSのメインユーザーのニーズの高い商品をモレがないように選択し、陳列スペースにはまったく商品のダブリがないように配慮し、 POS情報により取扱商品の売上貢献度による徹底した優先順位づけを行っている。

つまり、 CVSは限られた売り場面積における商品の取り扱い方としては、きわめて  MECE の考え方に準拠しているといえる。

そこで、小売店頭における商品の売り場配置に関する事例を考えてみてほしい。

前述したように、モレもダブリもない状態を良しとするか、あるいは、販売上意図的なダブリがあえて必要なのか、その理由はなぜなのか、思いついた事例を自分ならばどのように変更すべきと考えるのか、じっくり考えてほしい。

図  1は、ある CDショップの商品配置の例である。

このようにダブリを生じさせることがユーザーにとって便利なことなのか、あるいはかえって不便なのか。

販売側から見ると販売強化につながっているのか、あるいは単なる陳列スペースの無駄に終わってしまうのか、さらにはネットからのダウンロードに年々市場を奪われている現在、ネットをも含めたまったく新しい関連販売の方法はないのかを考えるのだ。

まずはこのようなダブリが生じている売り場配置に関する  MECE の図を作ることから始めてほしい。

演習 2ビジネス・システムで顧客への提供価値をチェックする付加価値を生み出す流れを時間軸で  MECE にとらえたものがビジネス・システムである。

これを送り手である企業側からではなく、商品・サービスの受け手である顧客の視点からとらえることが、ますます重要になる。

図  2は都内にある付加価値の高い歯科医の患者に対するサービスの流れを、患者の視点から整理したものである。

普通の歯科医と比べると格段にサービス内容が優れていることがわかる。

このように、どのようなビジネスでもその商品・サービスによって付加価値が生じている限りは、顧客にとってのサービス提供の流れを整理することが可能である。

まず最初に自社、自部門、あるいは自分が提供しているサービスの流れを、歯科医のサービスの流れを参考に、いくつかの項目に分解する。

このとき、サービスの項目が  MECE になっているかどうか注意すること。

そして現状について書き出していってほしい。

次に、競合の状況と比較しながら、ベストと考えられるビジネス・システムを考える。

そして現状とベストな場合とのギャップを明らかにし、今後の取り組み課題を抽出してほしい。

総務・経理やシステム部門であっても顧客は存在するし、複数の異なる種類の顧客がいる場合は何通りかのビジネス・システムを作成できる。

それにより今後の課題が抽出できるだけでなく、サービスの流れをどういう項目に分解するかを考えることは、ビジネスを考えるうえで非常に重要な訓練になる。

ビジネス・システムに沿ったギャップ分析を実行プランに反映させるうえで重要なポイントを1つ挙げておく。

それは、分析した結果それぞれのギャップを埋めるように手を打つべきか、あるいはギャップよりも自社の相対的強みをさらに徹底・強化するように手を打つべきかという点だ。

トップ企業であれば、ギャップを1つ1つ丹念につぶしていくことが競争優位の持続につながるかもしれないが、経営資源で劣る下位企業が黙々とギャップを埋め続けても勝算の見込みはない。

市場・競合の中での自社の位置づけが異なれば、 A社と B社に同様のギャップがあったとしても打ち手はまったく異なる。

演習 33 C 1 Cで自社の課題を把握する戦略策定の基本である 3 C 1 C(顧客、競合、自社、流通チャネル)は、 MECE の1つのフレームワークである。

戦略策定にあたっては、この 3 C 1 Cの分析から始まる。

図 3は、ある中堅消費財メーカーの現状を 3 Cのフレームワークで分析したものだ。

このメーカーは直販ルートで販売しているため、 1 Cの流通は自社に含まれる。

この 3 Cで分析しながら SO WHAT?(だから何なの)を考え仮説を立てると、このメーカーの今後の課題が「新技術導入に経営資源をシフトし新商品を開発すれば、新たな成長を図ることは可能か?」にあることが浮き彫りになる。

このようにビジネスを取り巻く環境変化が激しい中では、常にこの 3 C 1 Cの枠で問題をとらえ、アクションに結び付くように今後の課題を抽出していかなければならない。

そこで、自社の経営/事業課題を 3 C 1 Cの枠組みでとらえ、今後の取り組み課題に関する仮説を作ってみよう。

2 ロジックツリー 限られた時間の中で広がりと深さを押さえる ロジックツリー* とは、問題の原因を深掘りしたり、解決策を具体化するときに、限られた時間の中で広がりと深さを追求するのに役立つ技術である(図 2 13)。

*マッキンゼー社では ロジックツリー と呼んでいる。

文字どおり、「ロジック」とは論理であり、「ツリー」とは葉の生い繁った木という意味だ。

主要課題の原因や解決策を MECE の考え方に基づいて、ツリー状に論理的に分解・整理する方法である。

単なる根拠のないアイデア出しとは違って、具体的な解決策 =「ツリー」の葉が「ロジック」という因果関係で結ばれているから、問題を必ず解決に導くことができる。

箇条書きは ロジックツリー の初歩であるが、 ロジックツリー は次の3つの点で優れている(図 2 14)。

モレやダブリを未然にチェックできる 原因・解決策を具体的に落とし込める 各内容の因果関係を明らかにできる特に世の中にある既存のフレームワークが適用できないときや、独自の問題解決には威力を発揮する。

シンプルだが、きわめて汎用的かつ実践的な問題解決の技術だ。

人は問題に直面して解決策を考えようとするとき、まずその原因を追求する。

しかし、いろいろな原因が考えられるのに、その広がりや深さを押さえずに、単なる思いつきだけで手を打つとどうなるか。

どんなに立派で緻密な解決策を練り上げても、的が外れれば無駄に終わる。

そして、間違って実行するとさらに余分な時間と資源(ヒト・モノ・カネ)を使う羽目に陥る。

ビジネスの現場では、このタイムラグが致命傷になる。

ロジックツリー はこのような問題の原因を追求したり、解決策を具体化するプロセスにおいて、的を外さないようにするための技術なのだ。

1 ロジックツリー で原因を追求する問題を解決するときに、根っこにある具体的原因を突き止めれば、半分は解決策の目処が立ってきたといってもいい。

実際、この具体的原因が解明されないまま、表面的な現象を追いかけて対症療法をいくら施しても、その場の一時しのぎにしかならない。

しかし、そうした提案書や事業計画書をよく見かける。

ロジックツリー を使って、この根っこの原因を突き止めるには、とにかく WHY?(どうして)を自問自答し続けることだ(図 2 15)。

「主力商品 Aのシェアが下がっている」という問題があったとしよう。

原因を追求して解決策を出さなければならない。

このとき、思い込みで「営業力が問題だ。

営業を強化しろ」という解決策を出したらどうなるか。

本当に営業力に問題があったならば、結果オーライになるかもしれない。

しかし、本当は商品自体に問題があるとしたら、これはまったく的外れな解決策になる(図 2 16)。

これでは、 1年経ってもシェアは回復しない。

なぜシェアが下がっているのか、真の原因を突き止めるためには、まず WHY?を考え続けなければならない。

たとえば、 市場が完全に成熟し、市場自体が縮小している 消費者ニーズがシフトし、当初想定したターゲット市場が消えつつある 競合商品 Xの商品力が商品 Aよりも高く、商品 Xの売上げが大幅に伸びている 他メーカーの新規市場参入が激しい 当社の広告・販促費シェアが売上シェアよりもかなり少ない 商品 Aへのマーケティング・コストを前年比より大幅に下げた 自社の新商品 Bと商品 Aがカニバライゼーション(社内競合)を起こしている等々。

ほかにも原因はさまざまに考えられる。

一方、「主力商品 Aのシェアが下がっている」のが、たとえ営業力の問題であるとしても、原因を深掘りしないままに「営業力を強化しろ」と号令をかけても、具体性がなければ現場では実行できない(図 2 17)。

そこでシェア低下の原因を深掘りし、全国各地域を比較した結果「主力商品 Aの首都圏でのシェアの下落が著しい」ことがわかったとする。

さらに WHY?により、「新規顧客がカバーされず営業マンも開拓に積極的でない」こともわかったとする。

それでもさらに、 WHY?を続けて「新規顧客の営業評価がリピート顧客の営業評価と同じで、苦労しても割が合わない」という具合に真相を究明する。

このレベルまで深掘りができてくれば、解決策の方向性も見えてくる。

そしてここまでくれば、この真相の裏返しの解「新規顧客開拓時の売上評価率の重みをリピート顧客の 2倍にする」でも、とりあえず解決策として通用するかもしれない。

しかし、原因追求のレベルが浅ければ、問題の裏返しの解は単なるスローガンにしかならず、とても解決策とは呼べない。

こうして真相が解明されてきたら次は、解決策具体化の ロジックツリー によりいろいろな解決策のオプションを考えなければならない。

たとえばこのケースでは、「新規顧客営業部隊とリピート顧客営業部隊を分離する」や「新規顧客開拓の具体的達成目標数値を与える」など、前記の原因の裏返しの解である「新規顧客開拓時の売上評価率の重みをリピート顧客の 2倍にする」以外にも、解決策がいろいろと考えられるはずだ。

このように、原因の広がりが押さえきれなかったり(モレやダブリ)、原因追求の深さが足りないまま、背後の構造を論理的に詰めきれずに思いつきで手を打つと、打ち手が的外れになってしまうのである。

事例 3——営業マンの生産性低下の原因を追求するある医薬品メーカーで「営業マン 1人当たりの主力商品 Aの売上生産性が下がっている」という問題がある。

早速、原因追求の ロジックツリー を用いて原因を解明する(図 2 18)。

営業マン 1人当たりの売上生産性とは、売上高を営業マンの数で割ったものである。

営業マンの数が変化していなければ、主力商品 Aの売上げ低下が問題だ。

まず初めに売上げ低下の WHY?を考えて、3つの関連要素に分解する。

医薬品の営業ルートは、個人医院を担当する医薬品卸営業ルートと、病院、大学病院を担当するメーカーの営業ルートに、大きく二分される。

メーカーの営業は MR( Medical Representative)と呼ばれ、主に病院、大学病院を担当する。

また、医薬品卸が個人医院を主に担当する、という具合にテリトリー分けがなされているのが通常だ。

営業以外の要素としては、商品力そのものがある。

したがって、考えられる原因は、「個人医院を担当する医薬品卸の営業力の低下」「病院、大学病院を担当するメーカーの営業力の低下」と「主力商品 Aの商品力そのものの低下」の3つに分けられる。

さらに、商品力の要因は、対象市場の成長性と競合商品との商品力(薬効)の差に分解されるから、「商品力そのものの低下」の原因追求では「対象市場が縮小していないか」と「競合品に薬効差で負けていないか」を解明する必要がある。

また、メーカーの営業マン( MR)の営業力は、病院への訪問回数と 1回の訪問当たりの薬の購買決定権を持つ医者や薬局への営業インパクトに分解されるから、「病院、大学病院を担当するメーカーの営業力の低下」の問題では、「病院への訪問回数が低下していないか」と「医師や薬局への営業インパクトが低下していないか」を解明する必要がある。

医薬品業界の場合は、分析のためのデータベースが充実しているため、こうした分析は比較的容易である。

この医薬品メーカーの場合、原因追求の ロジックツリー により分析を始める前は、「主力商品 Aはもう古くなってきて、競合商品の B、 C、 Dには勝てない」というインタビュー・コメントを社内の責任者からかなり聞かされた。

しかし、考えられる原因について精緻に分析したところ、対象市場は成長していた。

商品の薬効も ロジックツリー でさらに分解し、各要素を専門の研究者に比較してもらった結果、競合品との差はなかった。

つまり、商品 Aには依然として競争力はあったのだ。

医薬品卸ルートを通しての営業力は多少問題はあるものの、最大の原因はメーカー営業マンの訪問回数や営業インパクトの低下で、そのため優れた商品にもかかわらず、かなりの機会損失を起こしていることが明らかになった。

この「メーカー営業マンの営業力低下」の問題解決は、次項の解決策具体化の ロジックツリー で行う。

このように、原因追求の ロジックツリー とは、表面化している問題を、 WHY?という因果のロジックで、広がりと深さを押さえながらツリー状に具体化することである。

2 ロジックツリー で解決策を具体化する解決策の要件は次の2つである。

的を外さないこと すぐにアクションに結び付くような具体性があることところが、具体性に欠け、提言されたほうも何をしていいかわからず実行できそうにない、まったく解決策とは呼べない解決策をよく見かける。

本社の 年度事業計画書の「 X商品の首都圏でのシェアの奪回」が、西東京営業所の営業マン・レベルでも「 X商品の首都圏でのシェアの奪回のため西東京営業所は一丸となって戦う」としか理解されていないとすると、たいしたシェアの向上は望めない。

ロジックツリー を使って解決策を具体化するには、 SO HOW?(だからどうする)を何度も何度も繰り返して深めていくことが必要になる(図 2 19)。

そして、深められた具体策がロジックの糸でつながれている限り、実行すれば必ず問題解決に結び付く。

この SO HOW?の過程では、現在どの企業も実施していない画期的アイデアが出てくる可能性があり、そのアイデアがこのロジックの糸で説明がつけば効果が期待できる。

そこが、単なる原因の裏返しの解との違いだ。

WHY?で追求された単なる原因の裏返しの解だけでは、こうした解に結び付くアイデアは見落とされてしまう。

時間には制限があり、すべての幅とすべての深さを網羅していたらきりがないが、 ロジックツリー により広がりと深さをチェックしながら具体的解決策を追求すると、的を外さずにアクションに結び付く解決策を効率的に導くことができる。

事例 4——営業マンの生産性低下に対する解決策を具体化する前述の医薬品メーカーの「営業マン 1人当たりの主力商品 Aの売上生産性が下がっている」という問題に関して、原因追求の ロジックツリー で分析した結果、解決すべき課題(根本的原因)は、「営業マン( MR)の営業力低下をどのように改善するか」であることが明確になった。

そこで、具体的解決策を ロジックツリー で考える(図 2 20)。

まず、営業マンの営業力を上げるために、 SO HOW?により、「効率的な担当のエリア分けを行う」「営業のプロセスを改善する」、そして、「メリハリのある営業マンの評価を行う」の3つの解の方向性を出す。

さらに、「担当のエリア分け」は、「病院密度の高い大都市」と「病院密度の低い地方都市」ではカバー体制を変える必要がある(実際は、病院ほどではないが、個人医院もある程度メーカーの営業マンがカバーしており、それも加味する)。

また、「営業のプロセス」は、自分のテリトリー内の「病院の訪問頻度や営業・情報提供内容の管理」「 1週間のスケジュール管理」と「マネジャーとのミーティングによる営業プロセス自体の見直し」を実施する。

そして、「営業マンの評価」は、営業マンの「プロセス管理に対する評価」と「目標達成に対する評価」を行い、さらに、営業マンのキャリアによってその重みを変える。

たとえば、新人営業マンの場合は、営業プロセスに対する評価を 100%とし、 10年選手は目標達成に対する評価を 100%にする。

こうして解決策を具体化しながら最終的に課題解決への効果を評価したうえで集中的に手直しをしたのは、「営業マンの 1週間のタイム・マネジメントを徹底管理する」「マネジャーとのミーティングによる営業プロセス自体の見直しを週 1回行う」と「新人への営業プロセスの評価を高める」であった。

これらを、さらに SO HOW?を繰り返しながら、解決策具体化の ロジックツリー により、すべての営業マンがアクションがとれるレベルにまで具体化した。

こうして整理すると、解決策の広がりと深さが打ち出の小槌を振ったかのように現われ、本当にそんなに簡単に ロジックツリー ができるのかと思われるだろう。

たしかに実際は、簡単というわけにはいかない。

しかし、優秀な営業マンを数人集めてブレーンストーミングを行えば、材料となるアイデアはいろいろ出てくる。

そして、何回か試行錯誤を経て精緻なツリーができあがる。

あとはじっくりと、具体的解決策が主要課題を解決するために太いロジックの糸でつながれているかをチェックすればいい。

むしろ重要なのは、それぞれの解決策の優先順位づけとアクションへの反映度だ。

これは、 ゼロベース思考 で述べた、顧客の立場になって考えるしかない。

この医薬品メーカーの営業体制を立て直すために、私は現場の優秀な営業マン数人とプロジェクトチームをつくり、 1ヵ月缶詰になって基本構想を作り上げた。

そのとき面白いと思ったのは、彼らが解決策を作り上げていく過程で、彼ら自身が次第に営業マンとしての立場を忘れ、解決策をより複雑化していったことだ。

はまってしまったのだ。

たとえば、営業マンの評価項目に関しては、練りに練って 10項目以上を、細かい営業キャリアの階層別に出してきた。

そのときの私の質問は、「みなさんは、このプロジェクトが終われば営業の現場にまた戻りますが、この 10項目すべてを常に念頭に置きながら営業活動ができますか?」であった。

営業現場の行動に反映されない評価基準はまったく意味がない。

結局は売上達成目標とプロセス評価の 2項目に絞ったが、解決策を作る際の顧客は病院だけではなく、それを実行する営業マン自身であることをいつのまにか忘れてしまったのだ。

常に、顧客にとっての価値を貫くというのは、 ゼロベース思考 を意識しなければ難しい。

それでは、どのように ロジックツリー を作ればよいのかを、次に考えてみよう。

3 ロジックツリー を作る ——オリジナル・フレームワークの作成「痩せる(減量する)ための、具体的解決策(たとえば、ジョギングをするという具体策)を考えよ」と言われたら、解決策の ロジックツリー をどう作るのか(図 2 21)。

もちろん、このケースでは、 SO HOW?を繰り返していき、それぞれのレベルをできるだけ MECE になるようにレベルダウンしながら、解決策を具体化する必要がある。

そして、それぞれの具体的解決策がロジックの糸でつながっているかをチェックする。

図 2 22は、私が行っている問題解決ワークショップでのある生徒の解決策だ。

1段目は、「カロリー摂取量を減らす」と「カロリー消費量を増やす」となっている。

太る原因から逆に解決策を考えると、一応 MECE 風には見える。

2段目ではさらに、「カロリー摂取量を減らす」を、「食事からのカロリー摂取量を減らす」と「飲み物からのカロリー摂取量を減らす」と MECE に分解している。

「カロリー消費量を増やす」に関しては、「運動によるカロリー消費量を増やす」と、ほかにありそうだがどうもそれだけでは MECE には見えそうもないのか「???」をつけている。

さらに、 3段目、 4段目では解決策がより具体化されて、たしかに「ジョギングをする」や「間食をやめる」などの具体策を実行すれば、「痩せる」ことはできそうだ。

この解決策をたたき台に、他の生徒とブレーンストーミングすると、さらにいろいろな解決策が出てきた。

たとえば、「美容整形で脂肪吸引手術を行う」あるいは「筋力トレーニングを行う」といった具合だ。

論理的には、たしかにこれらの解決策も効果はありそうだ。

まず、「美容整形で脂肪吸引手術を行う」のは、どのカテゴリーにも含まれない。

しかし、単純に考えれば余分な脂肪や老廃物を直接体から取り除く作業だ。

したがって、「カロリー摂取量を減らす」や「カロリー消費量を増やす」と同じレベルで「体内の不要蓄積物を除去する」として 1段目に新たに項目を立てた。

そして「脂肪を除去する」と「脂肪以外の老廃物を除去する」を、 MECE に分解し、「脂肪を除去する」の1つの具体策として「美容整形で脂肪吸引手術を行う」を位置づけた。

また、「筋力トレーニングを行う」は、それ自体もたしかにカロリーを消費するので「運動量を増やす」に含まれそうだが、よく議論すると、目的は筋肉を増やして普段や寝ているときの基礎代謝率を上げることにある。

したがって、「カロリー消費量を増やす」の次のレベルの 2段目を「運動によるカロリー消費量を増やす」と「基礎代謝率の高い体質にする」として「???」を置き換え、「基礎代謝率の高い体質にする」の1つの解決策として「筋力トレーニングで筋肉質にする」を位置づける。

こうして各段の抽象度、具体度のレベルを考えながら、 MECE を心がけた ロジックツリー (図 2 23)には新たな「???」がいくつか誕生した。

このくらいできあがってくると、もう一息で「痩せる」フレームワークが完成する。

「カロリー消費量を増やす」の次レベルが「運動によるカロリー消費量を増やす」と「基礎代謝率の高い体質にする」の2つあったのに対比して、ある受講生が「カロリー摂取量を減らす」も同様に、「口からの摂取量を減らす」と「カロリー吸収率の低い体質にする」に分解できないかと言う。

私が、 SO HOW?を質問すると、他の生徒が「漢方薬等の薬で吸収率を低下させる体質にする」という記事を読んだことがあるという。

こうして、 MECE と SO HOW?を繰り返しながら、新たなくくりや解決策を盛り込み完成した解決策具体化の ロジックツリー が、図 2 24である。

整理すると「痩せる」課題を解決するための基本となるオリジナルのフレームワークは図 2 25であり、これは問題を解決するためのメカニズムを示している。

このように「フレームワーク」とは問題を発見したり解決するために役立つ構造を示すものであり、単に箱を並べただけの枠とは本質的に異なる。

そして、解決策の具体性とは、図 2 26のように具体的に実行できるレベルを指し、実行すれば効果が期待できるものでなければならない。

アプローチの切り口には、自力/他力や、即時/短期/中・長期という時間軸、お金をかける/かけないの資金の軸を取り入れることもできる(図 2 27)。

たとえば、自分の嗜好や資金・時間の自由度から〔カロリー消費量を増やすために運動量を増やす〕 〔自力〕 〔短期間で解決する〕 〔お金をかける〕方法を選択したとする。

そうすると具体的解決策は、「エクササイズを行う」 =「フィットネスクラブで有酸素運動を行う」ということになり、たとえばジョギングをする、エアロバイクをする、エアロビクスをする、アクアビクスをする、水泳をするというようなことになる。

実際に資源配分を考えた解決策の立案と評価については、第 3章プロセス編の ソリューション・システム で説明する。

——ロジックツリー の作り方とコツ ロジックツリー を作る基本は次の3つである。

各レベルができるだけ MECE か ツリーの右側が具体的な原因や解決策になっているか 具体的な原因や解決策がロジックの因果関係で主要課題にリンクしているか以上を念頭に置いて何度もトライアル・アンド・エラーを繰り返してみることが重要である。

うまく PCのアプリケーションを使うと、この ロジックツリー の思考がもっととらえやすくなるであろう。

追加・修正の簡単にできるソフトもあり、わざわざ書き直さなくても楽にできる。

そのときのコツを「痩せる」解決策のロジックツリーの作成プロセスから抽出すると、以下のようになる。

(1)とにかくまずツリーを紙に書き出す( PCを使用してもよい) (2)左から右に行くにしたがって、概念的なものからより具体的内容にする (3)それぞれの段をできるだけ MECE にするが、もしモレがありそうならとりあえず「その他???」と置いて後で考える(図 2 28) (4)既存の枠に入らなければ、とりあえず新しい枠を作る (5)それぞれの因果のロジックをチェックする(図 2 29) (6)自分以外の何人かの人にチェックしてもらうこの作成プロセスは、中学理科の教科書にも出てくる H(水素)や、 O(酸素)といった元素の発見プロセスに似ている。

メンデレーエフという化学者は、いくつかの元素から周期表( =とりあえずの ロジックツリー )を作り、空白になったまだ発見されていない欄( =とりあえずの「その他???」)に新しい元素を予言し、後にそれらが発見された。

そして、次々に新しい元素が発見されると、さらに新たな周期の枠組み( =修正した ロジックツリー )に書き換えられては、新たな空白にまた新しい元素が発見され、今日の周期表が完成した。

ところで、この「痩せる」ための ロジックツリー は、企業の「痩せる/太る」と類似性がある。

同様に、企業が健全に太るための ロジックツリー を考えてみよう。

事例 5——企業が太るケース 1「営業利益を増やす」損益計算書上の「営業利益を増やす」ことを企業が太ると定義し、 ロジックツリー で分解するとどうなるか(図 2 30)。

「営業利益を増やす」には、売上高のインフローを増やし、売上原価や販売費、一般管理費のアウトフローを減らす必要がある。

そして、それぞれの項目は図に示すように細分化される。

製造原価に関しては、材料費、労務費、その他経費という具合に 4段目まで具体化されることになる。

したがって、この ロジックツリー では、売上げを単純に上げながらコストを下げれば、「企業が太る」ことになる。

しかし、この ロジックツリー は、前述の「痩せる」との対比で考えると2つ問題がある。

1つは、「痩せる」のフレームワークの中の「体内への蓄積物」つまりストック(資産)が抜けていることだ。

これは、損益計算書自体がもともとインとアウトのフローベースのものであるから当然のことである。

2つ目は、「売上げ」 =「口からの摂取量」は損益計算書上の見掛けの収入であり、「実収入」という意味では「債権回収率や回収サイト」等を考慮する必要がある。

つまり、売上げが立っても売掛金を回収できなかったり、回収サイトが長すぎたりすると、損益計算書上は利益が出ていても運転資金がないという状態も起こりうる。

それは、中小企業にとっては、即、死活問題になる。

そういった意味では「営業利益を増やす」というのは、企業が健全に太ることの定義づけとしては、不十分といえる。

事例 6——企業が太るケース 2「企業価値を高める」そこで、「企業価値を高める」ことを企業が太ると定義し直してみる(図 2 31)。

まず、企業価値は事業価値と事業以外の価値に分解される。

事業以外の価値とは、土地や建物などの有形資産や、特許権や借地権のような無形資産などからなる。

したがって、これらの実資産価値が高まれば、事業以外の価値が高まることになる。

しかし、バブルがはじけて不動産等の価値が急激に低下すると、簿価は変わらなくても、実際の価値が半減するうえに支払い金利に苦しむことになる。

次に、事業価値であるが、ここでは「痩せる」との対比で「事業の生み出すネット・キャッシュフローを増やす」ことを、事業価値を高めることととらえることにする。

そうすると、先ほどの「営業利益を増やす」は、単なる 1項目にすぎず、ネット・キャッシュフローにプラスに働く要素としてはほかに、減価償却、買掛金の増加といったものが挙げられる。

一方、マイナスに働く要素としては、純金利支払、法人税、固定資産投資、売掛金の増加、在庫の増加等が挙げられる。

この考え方によれば、回収率が低下したため回収サイトが長引いて売掛金が増加したり、また在庫が増加すれば事業価値は低くなるため、きわめて本音ベースでの企業の評価が可能になる。

実際、このようなキャッシュフローをベースとした企業運営は、今日ますます重要度を増している。

中小企業にとっては、損益計算書上は利益が出ていても、キャッシュ不足で資金繰りが困難になることもある。

また大企業にとっても、株式投資や M& Aの判断の指標として、このネット・キャッシュフローに基づく評価は重要な考え方の1つである。

4フレームワークで ロジックツリー を学ぶ ロジックツリー は既成のフレームワークがなくても問題解決を可能にする、独自のフレームワークを作る技術であるが、この ロジックツリー 自体がすでにフレームワーク化している例を3つ紹介しよう。

——財務分析の ROAツリー ROAとは、総資産経常利益率を示し、 Return On Total Assetsの略である。

図 2 32は日本のある大手自動車会社の 1988年から 92年の財務諸表( B/ S:バランスシートと P/ L:損益計算書)と、マーケットデータ(市場規模とマーケットシェア)をもとに作成したものである。

ROAを MECE の考え方により、 ロジックツリー で 7段目までばらしたものだ。

いわゆる、財務諸表を中心にした 200ページ以上におよぶ経営分析の本の内容を、 1枚の図にまとめたものだ。

ROA(総資産経常利益率) =経常利益 総資産経常利益 =経常利益率 売上経常利益率 =営業利益率 営業外利益率という具合にそれぞれの構成要素を 、 、 、 で分解して MECE に細分化していったものである。

この分析によれば、少なくとも次のことがわかる。

売上げの低迷する中、 販売経費の削減に努力しているが、 製造原価は上昇し、 在庫の回転も悪く、 営業利益は大幅ダウン、ということになる。

興味のある人はワークシート(図 2 33)を使って自社の状況を P/ L、 B/ S、マーケットデータの数字に基づきグラフ化してみるとよい。

簡単にでき、財務分析の格好の基本演習になるはずだ。

——間接費削減プログラム2つ目は、マッキンゼー社で OVA( Overhead Value Analysis)と呼ばれる手法で、間接部門の 40%コスト削減を目標に業務分析を行い、ホワイトカラーの大幅人員削減を行う間接費削減プログラムである(図 2 34)。

基本的な考え方は、部門リーダーを中心に各部門の主要業務を棚卸しし、 ロジックツリー で業務を細分化する。

次に、細分化した具体的業務内容ごとに発生コストを人件費(人・日)と経費(万円)単位ではじき出す。

最後に、それぞれの具体的業務内容の受益者に提供業務を評価させ、優先順位をつけて大幅なコスト削減を図る。

日本生産性本部の「 OECD加盟 30ヵ国の労働生産性」( 2004年)比較によると、日本は 19位となる。

この数字にはホワイトカラーとブルーカラーが混在しているが、製造業に絞ると日本は第 3位だそうだ。

つまり、そこから推察すると日本のホワイトカラーの生産性は先進国の中で著しく低いということになる。

もちろん、さまざまな形でのリストラが断行されている昨今、安易な単純化は危険であるが、日本企業のホワイトカラーの生産性は企業によってバラツキはあるが欧米に比べまだまだ低い。

官僚的組織の企業では、いまだに入社 3年目でも十分なくらいの仕事を、管理職が淡々と行っている光景が見受けられる。

自らの思考による付加価値、状況を判断する力、具体的に方向性を示す力、管理職としての価値が見えないのだ。

OVAを実施すると、部門ごとのバラツキは意外に小さい。

したがって 30%の一律カットと結果としては同じだが、 OVAの進行プロセス自体が説得のための合理的プロセスとなるため、欧米ではかなり用いられる手法である。

バブル崩壊後、第 1次リストラが行われ、 2008年のリーマン・ショック後はさらに厳しいリストラが進行した。

企業がクラッシュする寸前には、まさに不退転のリストラが必然的に生じる。

自部門の生産性に疑問を持つ方、筋肉質の組織を目指す方は、危機的状況に陥る前に、単純なフレームワークなので、ぜひ一度自部門の業務を ロジックツリー で棚卸しし、業務自体を価値とコストの両面から厳しく精査することをお勧めする。

——コーザリティ分析コーザリティ分析とは、表面化している問題(現象)の背景にある根本的原因を追求するために、現象と原因を因果関係で整理する分析手法の1つである。

文字どおりコーザリティ( Causality)とは因果関係のことであり、 ロジックツリー の2つの重要な点である具体性と因果関係にフォーカスした応用技術といえる。

ビジネスの現場では、表面化している問題にさまざまな原因が複雑に絡み合っており、どれが一番の根本的原因か把握しないまま手を打つと、いっこうに改善効果が出ない場合がある。

しかし、問題が起きている場合というのは往々にして悪循環にはまり込んでいることが多い。

その場合、問題を解決するにはその根本的原因の解決が最重要課題であり、現象に対する対症療法では何も解決しないどころか、さらに深みにはまり込んでしまうこともある。

コーザリティ分析を行うには、まず ロジックツリー で問題となっている現象を引き起こしている具体的原因を突き止める。

次に、いくつかの具体的原因と現在問題になっている現象の因果関係を結んでみる。

といっても、最初からはなかなかうまくいかないだろう。

それでもとりあえず因果の矢印を引いてみる。

因果がつながらずおかしい場合は、何かつなぎの項目が抜けていたり、矢印が逆のこともある。

しかし、こうして何回か繰り返すうちに因果関係が明らかになる。

そうしたら最後に、表面化している問題と解決すべき真の原因に整理し、真の原因に関して解決の優先順位をつける(図 2 35)。

これは基本的ロジックの練習にもなるので、ぜひトライしてみるといい。

コーザリティ分析の例を挙げる(図 2 36)。

スーパーや CVS(コンビニエンス・ストア)の棚でよく見かけるフレッシュ・ローテーション型の生鮮飲料や生鮮食品は、品数も少なく競争も緩やかな昔は、作れば売れる良循環ができていた。

しかし、消費者の変化や競争ルールが変わると、小売店頭でなかなか売れないという問題が生じてきた。

この「売れない」という表面化している問題(現象)の原因を、まず ロジックツリー で具体的に考える。

ビジネス・システムやマーケティングの 4 Pで大きくとらえると、どうも商品に問題がありそうなことがわかった。

ある商品は、ターゲットが定まらずほとんど売れていない。

またある商品は、そこそこ売れているにもかかわらず消費者の評判がよくない。

さらに原因をさかのぼると、もともと消費者をセグメント(細分化)してきめ細かく訴求しようとした多品種化が裏目に出ているようでもある。

また、流通在庫がだぶついて、店頭に古い商品が並ぶ。

さらに原因を追求すると、需要予測がいいかげんで需給調整ができていないことも一因のようだ。

こうしていろいろ考えられる原因を ロジックツリー で追求した後で、それぞれ関係のありそうな原因や表面化している現象を因果関係で結んで、最も根本的と考えられる原因の優先順位づけを行うと、一番の原因は無計画な多品種化と精度の低い需要予測にあった。

このとき、売れない結果生じる流通の在庫増を指摘して、「流通在庫を減らすために在庫管理を強化する」という解決策を導き出しては、まったくの的外れになってしまう。

表面的な在庫調整では、たとえ流通レベルの在庫は一時的に減っても、今度は工場の在庫が増えてしまうからだ。

このケースでは問題を解決するために、売上貢献度と商品ラインナップ上、本当に必要な商品に品種をまず絞り込んだ。

また、売上げに影響を与える重要影響因子を売上予測モデルに織り込むことにより、需要予測システムの精度を上げた。

図 2 37は、海外のある自動車関連部品メーカーの例である。

自動車用部品(たとえばタイヤやバッテリー等)は、同じ商品でも対象顧客が大きく2つに分かれる。

あらかじめ自動車に部品として装備する OEM先である自動車メーカーと、新車購入後販売店や修理工場から補修用に買い替える一般ユーザー、である。

この対象顧客のセグメントによってビジネスの構造が大きく異なるため、通常は OEM事業と補修用事業に社内の取り組み体制も分かれている。

自動車メーカーを対象顧客とする OEM事業は、自動車メーカーの技術およびコストに対する要求水準が非常に高いうえ、よほどの技術革新がなければ簡単にはメーカー内での売上げシェアを伸ばすことも難しく、売上げの安定性はあるものの収益性は非常に厳しい。

一方、一般ユーザーを対象とする補修用事業は、自動車メーカーほど技術の要求水準も厳しくなく、ある程度は収益性を確保することも可能であり、マーケティングのアプローチ方法によっては売上げ拡大の自由度も大きい。

こうした状況下、年々収益性の悪化に苦しんでいた A社は、その根本原因を OEM事業にかかる開発の手間やコスト構造にあると判断し、 OEM事業からの撤退を決断し、完全に補修用事業に特化することにした。

この一見もっともらしい分析に基づく決断の結果、 A社はどうなったか。

補修用ビジネスにおいて、うまくいくどころか、惨憺たる結果の末、倒産してしまったのだ。

一番の大きな原因は、 OEM事業と補修用事業を切り離して考えたことにある。

図に示すように、たしかに収益性悪化の根本的原因は OEM先の技術的要求やコスト要求が厳しいことにあるが、実はそれによって A社の基礎技術力が磨かれていたうえ、なんとかコスト競争力も維持でき、その結果補修用事業で収益を出すことができた。

したがって、補修用事業で収益を上げるためには、 OEM事業は歯を食いしばってでも継続しなければならなかったのだ。

このように、重要な基礎技術を共有する場合は、事業間の関係を吟味したうえで事業の位置づけを行わないと、最悪の結果を招く場合もある。

また、技術やコスト競争力は常に磨いておかないと、すぐに陳腐化してしまう。

このケースでは、 OEM対応のための技術開発コストがいかに高くても、そこには収益性を改善するための解決策の自由度がないことになる。

コーザリティ分析の目的は、このように解決可能な原因かどうかを明らかにすることにもある。

いずれにしても大事なことは、ビジネスのロジック =因果関係を考え抜くことに尽きる。

私はこれを〝ビジネスの因果律〟と呼んで、最重要視している。

演習 4ボーナスの使い方を考えるお金は最も重要な経営資源である。

企業の生み出す利益を借金の返済に充てるのか、新たな投資に向けるのか、土地や株を購入して資金運用を行うのか、企業によってその使途はさまざまである。

一部門で考えても、与えられた予算をどう使うのかは重要な問題だ。

有り余るほど予算をもらえる場合はこのような検討は必要ないが、昨今そんな部門はおそらく皆無であろう。

おのずと使途に関して、重要性や緊急性を加味して優先順位をつけ、配分を行わざるをえない。

一方、世帯にとってのボーナスは、企業の利益に匹敵するものであり、どのように使うかは項目や金額の差こそあれ、かなり類似性がある。

このようにある限られたお金をどう配分するかという資源配分に関して、 ロジックツリー は非常に役に立つ技術である。

独身 OLのボーナスの配分例(図 4)を参考に、何度かトライアル・アンド・エラーを繰り返して、みなさんの世帯のボーナスの使い方を検証・吟味してみよう。

まず、思いつく項目をすべてリストアップする。

次に、それらをいくつかのグループにくくる。

そして、とりあえずの ロジックツリー を作る。

そうすると、モレがあったりレベルがまちまちだったり、具体的でない項目もあると思うが、そのときは友人や家族にチェックしてもらえばいい。

そして何度も作り替えてみる。

独身 OLのボーナス配分例では、貯蓄の項目に入っている住宅購入資金は、現在購入済みであれば、消費の項目になる。

また子供の学習塾への月々の支払いは、必需品の項目に移動することになる。

次のステップは、世帯のトータルのボーナス額を考慮のうえ、配分の優先順位を重要度や緊急度により 3段階に分け、その使いみちを考える。

典型的 4人家族であれば、それぞれの家族構成員への配分を考える必要があるし、独身であっても現在の消費に加え、将来への貯蓄などさまざまな使いみちがあり、優先順位は異なるはずだ。

演習 5活動時間を分析する普段あまり時間の使い方を意識しない人も、あるいはスケジュール管理をしっかりしていると思っている人も、日常的ビジネス活動における時間の配分を定量化し、その活用実態を分析すると、重要活動に使っている時間が意外と少ないことがよくある。

時間も重要な経営資源の1つ。

普段の活動時間の使い方を一度 ロジックツリー で棚卸しして、効率的なのか非効率的なのか、そして非効率的な場合はその原因をチェックしてみるとよい。

図 5は、パソコン関連業界のある流通営業マンの 1週間の活動を洗い出したものである。

時間的にはきわめてハードで、毎日ヘトヘトになっているのが実態である。

しかし活動時間の分析を行ってみると、得意先への訪問営業時間も含め、営業マンとして本当に重要な活動に使っているのは、 40%に満たない。

他は移動時間や内勤でも事務方で処理可能な内容ばかり。

この営業マンの場合は、女性の内勤サポートスタッフがいるにもかかわらずこの状態で、自分とスタッフのタイム・マネジメントがまったくなされていないことがわかる。

もちろん移動時間は営業のために必要なことだと思うかもしれない。

しかし、この移動時間もさらに細かく見ていくと、半分は非効率的なスケジュール管理のために取られていて、効率化を図ると半分で済むことがわかった。

つまり、重要活動への時間配分にメリハリのついた時間管理ができない限り、この営業マンの悪循環は解決しないわけだ。

そこでまず、自分の平均的 1週間の活動を ロジックツリー で具体的な活動レベルにまでブレークダウンする。

次に、それぞれの項目を重要度により、大変重要/重要/重要でない、の3つのレベルにざっくり分類する。

そして、3つのレベルごとにそれぞれの時間を円グラフ化(%)してみる。

毎日大変忙しいと思っていても、この定量化により重要活動に対する投入時間が少ない場合は要チェック。

生産性を上げるための自分で改善できる解決策や、部門として対応すべき解決策をよく考える必要がある。

タイム・マネジメントの第一歩は、もちろん自分からだ。

演習 6ユーザーにとっての商品価値を高める商品価値を高めるためにはどのような顧客ニーズを具体的に強化すべきか、 ロジックツリー を応用して考えてみよう。

その際は、顧客にとっての価値と自社の投入資源のバランスをよく考えることが大事である。

消費者が商品を選択・購入する際は、自分で使ってみた経験、商品パンフレット、雑誌記事や友人の使用評価等を参考に、デザインや機能を比較・検討する。

あらかじめ求める機能がはっきりしている場合もあれば、本当に使いたい機能が自分自身でも漠然としていて明確でない場合もある。

また、技術の進歩が速いとどんな機能でも比較的簡単に付加できるため、どんどん周辺機能が膨らんでいく場合も見受けられる。

しかし、機能が増えればそれに伴ってコストは必ず上昇し、それが価格に転嫁されるわけで、何でも多機能化すればよいとは限らない。

最終的には、ターゲットとなる顧客のトータルな満足度が最も高くなるように商品化することが重要になる。

全自動洗濯機のユーザーにとって関心があると思われる主要項目を ロジックツリー で分解すると、図 6のようになる。

これを見ると、糸くず除去、洗い上がり具合、黒カビ付着防止や節水・省洗剤に関心が高いようで、商品パンフレットを見ても、そうした項目にフォーカスしているのがわかる。

そこで、全自動洗濯機のケースを参考に、電子レンジに関して ロジックツリー を用いてユーザーの関心項目をブレークダウンし、どういう機能を付加し、どういう使い勝手にすればユーザーが買い替えるのか、どの機能にフォーカスすればユーザーの満足度が最も高くなるかを考えてみてほしい。

店頭でパンフレットを集めたり、インターネットで商品を検索すれば主要機能はほとんど把握できるはずだ。

参考までに機能を列記すると、あたため/解凍/オーブン/発酵/オートメニュー/トースター/スチーム機能/音声ガイド/お手入れ/除菌/……。

どういうユーザーにとって何がいちばん重要か、 MECE となる切り口をよく考えて仮説を作ってみよう。

ソリューション・システム( Solution System) とは、ビジネス上の問題を分析し、具体的解決策を立案するための問題解決法である。

ゼロベース思考 仮説思考 MECE ロジックツリー を駆使した、効率的な問題解決の実践的プロセスといえる。

これは何か特別な方法論というわけではなく、問題に直面したときに普段だれもが行っている自然な問題解決のプロセスを、解決策の精度と解決するスピードを高めるために、ビジネスの現場で使えるように体系化したものだ。

たとえば「頭が痛い」という現象があったとする。

これを特に問題だととらえず、頭が痛いことを放置することもできる。

しかし、これを問題だととらえた場合は「頭が痛いのを治すことができるのだろうか?」という課題がまず設定される。

課題とは「解決すべきだと意識された問題」と定義する。

そしてその課題に対して具体的解決策を考える。

「寝て治す」「薬局に薬を買いに行く」「病院に行く」というように、いくつかの解決策が考えられ、それぞれの案は懐具合や時間の自由度、痛さの緊急性といったもので多面的に評価される。

そして最後にその中から1つ、たとえば「薬局に薬を買いに行く」といったオプションが選択されるわけだ。

通常はこの思考プロセスが無意識のうちに、瞬時に行われている。

ただしビジネスの場合は、この自然なプロセスを限られた経営資源と限られた時間の中で、最も効率よく行う必要がある。

天才的経営者でない限りは、ときにはモレが生じたり、具体性に欠けたり、最悪の場合は的を完全に外してしまうことさえある。

それを未然に防ぎながら、単純化したステップを踏み、システマティックに問題解決を図るのが ソリューション・システム の考え方である。

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