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第 7章  コンサルテーション機能がある会計事務所を財務顧問にすべし

目次

決算書を作成するだけで、新しい情報の提供がない会計事務所は不要になる:経営者は常に有益な情報を求めている

会計事務所・税理士は言うまでもなく税の専門家です。

同時に、日々の会計処理を通じて顧問先企業の状況をよく知っていますし、何より現在の経済状況において、さまざまな企業がどのような行動をとっているか?どんな融資制度があるか?中小企業への助成金はどういうものがあるか?その立場上よく知っています。

これらの情報を活用しない手はありません。

しかし、多くの会計事務所・税理士がそういった知識や経験を持っているにもかかわらず、会社側からアクションを起こさなければ情報提供をしてくれないのです。

その理由はさまざま考えられますが、多くの場合は、安価な顧問料にあります。

もともとの顧問契約が、記帳代行、もしくは税務申告代理についてなので、情報提供を行っても手間が増えるだけで、収入の増加にならないため、積極的に情報提供をしてくれません。

それが会社にとって本当に有益なことであれば、経営者は顧問料の増額に OKを出すはずです。

それぐらい会計事務所の知識と経験は有益なのです。

逆に、「税務申告しか行いません!」という会計事務所であれば、最終的には価格競争になるので、複数の会計事務所から顧問報酬の見積をとって、どの会計事務所に顧問になってもらうか決定すべきです。

私が相談を受けた会社でよく言われるのが、「会計事務所はいろいろとアドバイスをしてくれるが、自分が欲しているアドバイスとは異なる」ということです。

会社経営は、業種の特殊性、規模の大小など個々に異なりますが、会社の課題、問題点は多くの部分で共通しています。

言うまでもなく、会計事務所は多くの顧問先を持っているので、それまでの経験から課題解決の方法や知識を有しているのですが、経営者の欲する情報提供ができていない場合が多いのです。

それはなぜか?会計事務所が会社の状況を正確に把握していないことが原因です。

例えば、創業間もない経営者が資金繰りについて不安がある場合、資金繰りに関して会計事務所に相談しても、「それは金融機関に相談すればよいのではないですか?決算書が赤字だと借入が実行されにくいので、黒字決算にしておきますね」と返答する場合がほとんどで、「知り合いの金融機関担当者を紹介させて頂きますよ」とまで言ってくれれば上出来です。

ただし、経営者はそれらのアドバイスに加えて「そもそも弊社はなぜ資金繰りに窮しているのか?原因はどこにあるのか?このビジネスモデルでやって行く以上、常にこの問題が付きまとうのか?」などの点についての根本的なアドバイスを求めたいのです。

要は、会社が何を欲しているか?どんな情報が会社の成長、継続に必要か?会計事務所がこれらのことに注視していないということです。

本来であれば、それを検知して適宜情報提供を行うのが会計事務所のあるべき姿なのですが、そのような会計事務所が現実には少ないのが残念です。

Check!

  • □会計事務所は経営者にとって有益な情報を知っている
  • □会計事務所は中小企業の課題解決の方法を知っている
  • □会社の状況をよく知っていれば、会計事務所は適切な情報提供ができる

企業も会計事務所も峻別されていく:進化しなければ A Iに取って代わられる

会計事務所の主たる業務は、仕訳作業を中心にして、納税のための申告書を作成します。

年一決算の場合はこれだけですが、それに加えて、月々あるいは四半期ごとの試算表を作成するというのがほとんどでしょう。

しかし、会計事務所がこのような仕事を中心にしている限り、明日はないと断言できます。

仕訳をし、納税申告書の作成支援をしながら経営の相談ができるためには、業務内容の中心を会計ではなく、経理 =経営管理に切り替えなければなりません。

そのときには試算表は当然として、資金繰り表の作成支援をする必要があるし、経営管理を担っていく中で、経営計画を策定することも視野に入れるべきでしょう。

要は、これからの会計事務所は、単に仕訳して、会計ソフトに入力して、税務申告書を作成するだけでは、早晩 A Iに取って代わられていくのです。

これからは企業の数が減っていきます。

会計事務所も売上が 2割ほど減るでしょう。

コロナの影響で売上が下がったら、企業は会計事務所の顧問料にメスを入れていくでしょうから、個人事業主ぐらいの零細企業は「これからは自分でやります」と言ってくるかもしれません。

会計事務所を使わなければならないという法律はないのですから。

逆に、会計事務所が顧問先を選ぶ時代が来るかもしれません。

なかなか言うことを聞かない、料金据え置きのままで要求する業務が多くなる、値上げの要望を無視する顧問先とは縁を切ってもいいと考えるのです。

要求される業務の煩雑さに比べて顧問料が低額であれば、収益率の低い顧客になりますから、収益率を上げるためには顧問料の値上げを要望するのは当然のことです。

今はすべてのことが複雑多岐にわたっている時代です。

経営者が 1人で何でもできる時代ではありません。

会計事務所が経営や助成金などについてのアドバイスをできなければ、存在理由が希薄になっていくでしょう。

Check!

  • □会計事務所を使わなければならないという法律はない
  • □安い顧問料しか払わない企業は会計事務所から切られていく

税務署サイドの意見に同調する会計事務所は、存在する意味がない:顧問先ファーストの主張をしているか

企業が顧問会計事務所・顧問税理士に期待する大きな役割の1つは、税務調査時の税務署対応でしょう。

税理士からすれば、日々の顧問先への会計指導の適正性が問われるとともに、自らの存在感を存分に顧問先に示すことができるイベントとも言えます。

税務調査とは、税務署、国税庁職員が企業に訪問し、原始証憑、帳簿をチェックし、税務申告に間違いがないかを確認する調査のことです。

日数として通常 2日ほどが予定され、原則として過去 3年分の経理データを確認します。

その結果、不適切な処理が行われている場合、さらに過年度にさかのぼって確認され、申告漏れがあれば、追徴課税などの処分がなされることになります。

もちろん、適切な経理処理をしていれば何も指摘されません(これを「是認」という)。

新聞などで、税務調査を受けた企業が「国税当局と見解の相違があったが、当局の指導にしたがって修正申告を行った」という記事を見ることがあります。

この税務調査の際に、申告処理について税務署と見解の相違を埋めるのが税理士の仕事ですが、顧問先の立場に立って交渉すべきところ、税務署の意見に同調することも少なくありません。

例えば、何らかの経費の支出が事業のためではなく、経営者の私的なものと認定(損金否認)された場合、その事後処理として税務署は「その支出を役員賞与で処理しますね」と言ってくることがあります。

役員賞与で処理されると、もともとの経費の損金算入が否認されるだけでなく、役員に対する源泉所得税も課税することができます。

一方、この指摘があった場合に「この支出については、社長に返金させますので、社長貸付金での処理でお願いします」と税理士が主張し、これが認められれば、役員に対する源泉所得税の課税は発生しません。

この一言を調査官に伝えれば回避できる税金もあるのですが、あなたの会社の税理士は、適切に主張してくれているでしょうか?

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  • □税務署との見解が違えば、税理士は会社側に立って主張すべきである
  • □税務署の言いなりの仕訳処理をすれば、税金にも影響していく

無借金経営を勧める会計事務所は、企業経営というものを理解していない:資金を借りない会社は絶対に成長しない

会計事務所の中には無借金経営を勧める人もいます。

しかし、企業というのは常に投資して事業を行っているものです。

そのためには借金は不可欠です。

利益を少しずつ預金して、自己資金のキャッシュフローが十分になったら新規事業を始めようとするのは、それは堅実なことかもしれません。

しかし、十分な自己資金を準備するまでにビジネスチャンスを逃してしまうでしょう。

企業というのは、常に銀行から融資を受けて事業に着手し、予想収益はその利息までを計算に入れて、最終的に経常利益まで落とし込んでいきます。

今回のコロナ関係の融資では、本当に厳しい経営を余儀なくされている企業もありますが、そうでない企業もたくさんあります。

これらの企業では、ダブついていてもお金を借り、機を見て新たな戦略に着手し、一気に浮揚していくための大きなチャンスです。

資金を借りられれば、新しい設備投資もできるでしょうし、人材への投資もでき、広告宣伝費もかけられるでしょう。

売上を大きく上げる投資のチャンスです。

もちろん、その事業の収益性の分析は必要です。

会社が大きく伸びるにはそれなりの資金が必要ですから、コロナの無担保・無利子・保証料無しは、上昇志向のある経営者にとっては大きなチャンス到来、令和の徳政令ともいうべきものでしょう。

このような企業経営の本質を理解せず、ただ「借金をせず、安定した経営をしたほうがいい」というのは、無知以外の何ものでもありません。

こういう会計事務所にアドバイスを求めますか?

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  • □企業経営に借金は付きものである
  • □自己資金のみではチャンスを逸してしまう
  • □無借金経営を勧める会計事務所には退場してもらったほうがいい

保険で節税を勧める会計事務所は、本来の保険の意義を理解していない:生保の手数料を副収入にしている!?

保険は儲かります。

だから、会計事務所の中には保険を収入の手段として、自分たちで代理店をやっているところが結構あります。

税理士も節税のために保険を勧める人もいます。

保険と財務のことを本当に理解していて、掛け捨てタイプの死亡保障をカバーし、そのうえで利益の繰延も有効打が打てるのであればいいでしょう。

しかし多くの場合、法人税が 35%まで下がって以降は、実効税率から考えれば納税するほうが利口です。

悪銭身に付かず、税金を払っていればお咎めはないのですから、堂々と納税すればいいのです。

税理士は本業で収益を上げればいいし、企業も普通に法人税を払えばいい。

私が経営者や会計事務所に言うのは、「銀行融資は連帯保証債務ですから、民法の検索の抗弁権(※ 1)、催告の抗弁権(※ 2)、分別と利益(※ 3)、これらを頭に入れていって、戦艦の艦長と同じで、社会的責任があるから失敗したら沈むしかないんですよ。

沈めるわけにはいかないでしょう」と。

こういう情操教育をします。

だから、借りられるときに借りるだけ借りてもいいけれど、その資金管理がしっかりできなければ必ず痛い目に遭うと言います。

しかし経営者は「連帯保証債務って何?」と訊くので、私は「逃れられないものだ」ということを教えていくわけです。

そして、「社長のように一生懸命頑張っている人に万が一のことがあったりしたら、会社はどうなるの?」と続いて、保険の話をすればいい。

「優秀な社員はいても、社長の代わりはいません。

ということは社長が付加価値の何割を占めているか。

例えば粗利が 5000万円あったとして、そのうちの 8割の 4000万円は社長が作っているんだということを忘れないでくれ。

あなたが仕事ができなくなったとき、決算書にどれだけの影響が出るか」ここまで論理的に保険の重要性を話せば、おおよその経営者はわかってくれます。

保険の加入は、節税云々ではないのです。

企業防衛のためのリスクヘッジなのです。

それを安易に節税利用して、自身も手数料という利益を得ようとする会計事務所は即刻退場してもらったほうがいいでしょう。

※1検索の抗弁権とは、例えば、債務者に返済資力があるにもかかわらず、債務者が返済を拒んだことで保証人に請求が来てしまった場合は、「債務者は返済能力があるのだから、主債務者から返済してもらうか、それが叶わないなら、債務者の財産を差し押さえてください」と主張できる権利。

※2催告の抗弁権とは、業者がいきなり保証人に請求をしてきた場合に、債務者が破産していたり行方不明であったりしなければ、「まずは債務者に請求してください」と主張することができる権利。

※3分別の利益とは、例えば保証人が複数いた場合、実際に債務者に代わって返済を行なわなければならなくなっても、借金全額を保証するのではなく、保証人の人数で按分した金額だけを負担すること。

保証人にはこれらの権利が認められているが、連帯保証人(銀行融資は連帯保証人になる)にはこれらの権利が認められていないので、債権者(業者など)が債務者に請求せずにいきなり連帯保証人に請求してきても、文句を言うことができない。

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  • □生命保険の加入は、企業防衛のためのリスクヘッジとして考える
  • □保険を安易に節税利用して手数料を稼ごうとする会計事務所は即刻退場

粉飾で黒字決算にしようとする会計事務所は、顧問先が経営破綻を招きやすい:無理な黒字決算で得するのは税務署のみ

粉飾への加担は犯罪です。

けれども税理士にその自覚は薄いようです。

企業の約 3割は粉飾をやっていますから、税理士は必ずそれに加担しています。

加担しても国税庁・税務署からのからお咎めはないからです。

お咎めがあるのは、黒字を赤字にする脱税です。

粉飾というのは、基本、赤字を黒字にするので、税金を支払うことになります。

税務署としては何も文句はありませんし、税理士法第一条に定められているように、「………租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」のが税理士ですから、粉飾しても納税しようとするベクトルが働くのです。

どのような方法で粉飾するかというと、例えば減価償却。

減価償却費を計上しない、あるいは極端に低くするのはケースによっては粉飾とみなされますし、財政状況が著しく下落している場合は、減価償却をしなくてもいいという税務上の取り決めもあります。

また、在庫や有価証券、不動産の評価でも粉飾は行われます。

上場企業は時価会計主義ですから、資産の実態を表しています。

しかし中小企業は取得原価主義のままでいいのです。

中小企業はなぜ取得原価でいいのか?2つあります。

1つは会計事務所のエゴです。

もう1つは、すべての企業を時価会計主義に切り替えていったら、日本の中小企業の 3割ほどは、(債務超過で)吹っ飛んでしまいます。

20年前に 1000万円で購入した土地、現在の実勢価格が 500万円しかなくても、中小企業の会計では 1000万円と計上しても違反ではありません。

投資有価証券とか保険積立金、土地・建物などを時価会計にし、減価償却費のところを加算・減算して、実質の純資産額を計算すべきなのですが、それをやってしまうと多くの会社は債務超過になってしまうのは事実です。

また、人件費はいじりませんが、販売費及び一般管理費の経費を適当にピックアップして、消費税のかかる一部の勘定科目を寄せ集めて、「社長仮払金」に切り替えて粉飾するというのはよくあることです。

経費の過少計上をして、資産(仮払金)を増やすという粉飾をするのです。

このように、実際に粉飾はかなり行われています。

「銀行にお金を借りるときは黒字になっているほうがいい」というのですが、銀行も粉飾をわかっているのではないでしょうか。

わかったまま、その部分はスルーして融資案件を上げているのです。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」ということなのでしょう。

けれども、粉飾はやはりやってはいけないことなのです。

第一に、余分な税金を払うことになります。

資産評価が実質よりも高く、減価償却もなされておらず、経費の一部を仮払金にすれば、相当な利益が出て、その分法人税を納税することになります。

経費分については仮払い消費税が減額されて、売上からの仮受消費税-仮払消費税 =納付消費税ですから、余分な消費税も納税しなくてはなりません。

これらは決算後すぐに納税する必要があり、会社のキャッシフローは大きく減るのです。

第二には、経営の実態を示すものでなくなり、経営分析をすると、実際の収益性が低くなり、事業再生計画にも支障が出てきます。

Check!

  • □粉飾の黒字決算、喜ぶのは税務署だけである
  • □税務署も銀行も粉飾を見て見ぬふりをする

「税金を払ってお金を残しなさい!」と進言する会計事務所を顧問にすべし:経営の真価はキャッシュフローである

「たくさん儲けて、たくさん税金を払いましょう」と進言するのは素晴らしい会計事務所です。

しかしながら、そもそも経営者にとって、税金を払うのは嫌なものです。

だから利益の出ている会社は、決算前にいろいろな節税(というよりも利益の繰延)を行うわけですが、これが本末転倒になっている場合が多い。

節税の目的は、納税額を低く抑え、社外に資金流出しないようにするためです。

法人税の実効税率は約 33%です。

100万円の利益には 33万円の税金が発生するのですが、これを避けるために経費を 100万円使うと、つまり 67万円キャッシュアウトします。

これでは本末転倒です。

先述したように、利益 800万円までは実効税率は 25%です。

節税のために 100万円経費を使うと 75万円もキャッシュアウトします。

税金を払わないですみますが、手元には何も残りません。

税の大原則に、費用処理したものを受け入れる場合は「益金処理する」というものがあります。

そう言うと税理士は「いや、いったん費用化しておいて、将来赤字になった際に戻入をして課税を回避する」と主張したりするのですが、これは論理が破綻しています。

というのは、そもそも赤字経営を目指して会社を経営する人はいません。

また、仮に赤字になったとしてもそれは偶然であって、いつ赤字が発生するかわからない時に備えて資金流出させるのは、経済的合理性に欠けます。

利益が出たら、きちんと納税して、手元には「税引き後利益」がしっかり残る会社が最良なのです。

それを進言しない会計事務所は顧問にしてはいけません。

Check!

  • □節税を目的とした経費の資金流出は経済的合理性に欠ける
  • □正しく税金を払って資金を残すのが経営の王道である

心ある会計事務所は、顧問先企業を事業再生のフェーズにさせない:責任をもって経営者にきちんと進言する

知人の医師と話をしているとき、「患者にとっていちばんよい医師とはどのような医師だと思いますか」と聞かれたことがあります。

私は「病気を治すことができる医師です」と答えたのですが、彼は「そうではなく、そもそも病気にならないようにふだんから潜在化しているリスクを患者に説明し、それに対処している医師です」と言いました。

会計事務所も同じです。

損益計算や資金繰りの観点から企業が抱える潜在的なリスクをいち早く発見し、これが顕在化した場合の損害と、予防するためのコストと改善策を経営者に提示し、リスクを回避する。

これこそが、会計事務所に求められるコンサルテーション機能です。

そういう会計事務所を財務をメインに企業参謀にすれば、会社が事業再生に陥るようなことにはならないでしょう。

私が規定している事業再生のフェーズは、次のいずれかの要件に該当する場合を指します。

●手元現金が平均月商の 1か月を切っている ●実態債務超過 ÷(直近決算時の税引後利益 +減価償却) < 5 ● 2期連続経常赤字が発生しているこの状態になっている会社は通常、資金繰りが非常に悪く、改善ではなく、改革が必要なぐらいです。

毎月、月次関与している会計事務所であれば、このような状態になる前に経営者に対して警鐘を鳴らし、改善策を進言できたはずです。

毎月関与する意味は、本来はここにあります。

顧問がいるにもかかわらず事業再生に陥ることは、医療で言えば、毎月健康診断を受けているにもかかわらず、病気について警鐘を鳴らさず、いきなり発病し、生命の危機に立たされている状態です。

こんな医師に自分の命を預けられますか?

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  • □心ある会計事務所は常に潜在リスクを意識して経営者に進言する
  • □心ある会計事務所は事業再生フェーズになる前に対処法を進言する

毎月 15日までに前月の試算表を必ず完成させるべし:早く試算表を作成できるかどうかを見る

試算表はナマモノです。

あなたの会社の顧問会計事務所・顧問税理士は、当月の試算表を翌月のいつまでに提出していますか?試算表を早めに、できれば翌月の 15日までに完成させるためには、社内の経理体制の構築と、会計事務所の協力が必要です。

社内の経理体制の構築は、自社に経理業務に長けている職員が在籍すればできますが、通常は会計事務所の指導を仰いで経理体制を構築することになります。

会計事務所が会社の経理体制の構築を手伝ってくれないのであれば、そもそも顧問契約の締結を見直す必要があります。

前述しましたが、月次試算表を早く作成するためには、会計事務所に記帳を依頼するよりも、できるだけ自計化する必要があります。

自社で会計ソフトを使用して入力するのであれば、 15日でなく 10日までに試算表を作成することも十分可能です。

自社で経理処理を行わず会計事務所に入力代行を依頼するのであれば、会計事務所にはせめて 10日までに資料を送付する必要があります。

試算表を早く作成するためには、例えば、従業員の領収書は月末に締め切り翌月 5日までに経理部に提出する、仕入業者、外注業者に対しても月末 〆の翌月 5日到着分までを当月末に支払う、期日を過ぎた請求書の支払いは翌々月末の支払とする、というふうにすれば、業務の効率化を図ることが可能になります。

試算表を早く作成する社内体制が構築できるということは、経理部のみならず、すべての業務について内容を見直し、無駄を省く体制を構築することにつながるものです。

その結果、利益率が 3 ~ 5%向上すると言われています。

このように経理体制の構築は利益に直接影響を及ぼすので、これに積極的に関与してくれる会計事務所が望ましいのです。

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  • □自計化は会社のムダを省き利益率を向上させる
  • □会社の自計化に協力してくれる会計事務所を顧問にすべし

6か月先の資金繰り表を作成して、資金状況を予測する会計事務所を顧問にすべし:経営者の頭の中の半分は資金繰りである

業務の一環として試算表の作成を請け負う会計事務所は多い。

ところが、さらに一歩進んで資金繰り表の作成まで請け負っているところは、非常に少ないものです。

また、請け負っていても、会計ソフトから連動されて作成されるもので、正確性に欠けるものが多いのが実態です。

正確な資金繰り表を作成するには、まず、過去の資金繰りについては、すべての現預金の動きを紐解き、これを売掛金の回収、買掛金の支払等の項目ごとに集計することで可能になります。

これは意外と手間がかかるので、多くの会計事務所は請け負いたがりません。

また、将来の資金繰りについては、売上計画、経費計画、人員計画、設備計画、資金計画のすべてを反映したものなので、非常に複雑な仕事になり、そもそも会社の業務知識がないと難しいことから、会計事務所はできるだけ関与したがらないものです。

しかし、中小零細企業の経営者にとって、最重要の経営目的は、事業の継続であり、それを実現するために資金を確保することであり、そこがいちばん知りたい情報なのです。

ですから、会計事務所が今後 6か月の資金繰りを示した表を作成してくれるのであれば、その会計事務所を決して離してはいけません。

企業参謀として長く付き合うべきです。

6か月先の資金繰りが見えていれば、夜中に不安で起きることもなく、枕を高くして眠れるというものです。

健康にも寄与することは間違いありません。

多くの経営者の頭の片隅には、常に「会社の資金は大丈夫か?」という不安があるものなのです。

Check!

  • □会計事務所の多くは、資金繰り表の作成に関与したがらない
  • □資金繰り表を作成してくれる会計事務所は企業参謀として付き合うべし
  • □ 6か月先のお金の流れが見えていれば、経営者は枕を高くして眠れる

仮説を立てられる会計事務所が求められている:経営者とのミュニケーション能力を養いコーチングでコンサルティングする

会計事務所がコンサルティング機能を担い、経営者とともに経営の振り返りができることがこれからの会計事務所に求められます。

経営計画・損益計画、そして資金繰り表はその最強のツールです。

この経営の振り返りのときに必要なのは、会計事務所・税理士のコミュニケーション能力とコーチング能力です。

経営を振り返り、どのように改善していくかを考えさせるのがコンサルティングの面白いところです。

ところが、会計事務所がいちばん弱いのは、経営者とのコミュニケーション能力やコーチング能力です。

記帳代行、税務代行という専門分野でしか仕事をしていませんから、経営者との会話とか議論などは、かえって仕事を増やす要因にもなるので、あえて避けてきたという側面もあります。

コンサルテーション機能を担おうとすれば、経営者とのコミュニケーションはとても重要になります。

その場合、ファクトファインディングといって、会計事務所が実状調査をする態勢で経営者と向き合ったとき、事前に質問事項を考えておいて、仮説を立てながら質問しているのならばうまくいきます。

経営計画を作成する場合、 KPI( Key Performance Indicator)ということを考慮します。

事業活動でどうすれば売上が上がるのか、その重要な要因を、ある指標を見ながら判断していくのです。

例えば、その企業はどうやって顧客をつかみながら売上と利益を上げているのか、販売費のうち、重点的に見ていく費用は何か、といった質問をしていくと、経営計画・損益計画のキモが見えてきます。

そして、事業の特徴やポイントをつかんだ上でのコンサルをすればいいのです。

KPIなどを引き出すのは会計事務所の役割ですが、的を射た質問になるとは限りません。

事業の特性やポイントになる指標などについては、経営者のほうから会計事務所に教えていくことも必要です。

こういった重要な指標やポイントがわかってくると、仮説を立てることができます。

仮説を立てない計画や予測はありません。

過去の事業特性や指標から将来の事業展開を想像します。

仮説を立てて予想するのは、企業という生き物です。

経営者の話や態度、何を考えているんだろうとか、そうした属人的なことも考慮していかない限り仮説というものは立てられません。

仮説そのものが何かも考えられない。

これからの会計事務所・税理士に必要なのは、コミュニケーションやコーチングによって仮説を立てられるかどうかです。

仮説を立てながら「タラ・レバ」で対症療法や改善策を編み出すことができれば、まさに企業参謀です。

これからの経営者はこうしたことを会計事務所に求めてほしいと思います。

単なる税務代行にしておくのはモッタイナイのです。

Check!

  • □仮説を立てるには経営者とのコミュニケーションが必須
  • □仮説を立てるには KPIを理解していなくてはならない
  • □税理士が経営者と一緒に仮説を立てられれば企業参謀になれる

これからの会計事務所はコンサルテーション機能を担うべし:存在理由がなければ淘汰される

経営者は会計事務所とはコミュニケーションを密にとったほうがいいでしょう。

一緒に経営の振り返りをするのです。

具体的には損益と資金の振り返り、つまり損益計算書と資金繰り表を作成し、それをもとに、予定されている「経営計画・損益計画」を照合して、経営がどのようになっているか、資金は円滑に回っているか、是正すべき点などはないか、を検討するのです。

現在は会計事務所の社会的地位が低いので、規模によって差はあるものの会計事務所の毎月の顧問料はおおむね 3万円程度です。

これではせいぜい試算表を作成するのが精いっぱいでしょう。

資金繰り表や経営計画・損益計画までは関与してくれないのは当然です。

毎月、決められたときに振り返りをして、自社の経営がどのようになっているのか、会社のお金がどんなふうに動いているのか、経営者が理解するまでやります。

そのときのお手伝いは身近な会計事務所がいちばんなのです。

経営計画・損益計画を作成し、月次で 12か月分を予測します。

そして、現実に出てきた試算表と比較して振り返りをやっているのであれば、その会社は絶対に潰れません。

経営が厳しい状況になったとしても、月次でプラスマイナスがわかれば傷が浅いうちに修正できます。

経営計画・損益計画は大雑把でもいいので、直近 1年間の予定を 12か月分に細分化します。

それと同時に、過去 36か月 ~ 60か月の経営の振り返りをして、その傾向を見ながら、 12か月分の予定の資金繰り表を作ります。

そのときに、売上やそれ以外の収入になるものは回収条件、手形比率、現金比率、締め日がいつなのか、あとは支払いについての支払条件などを反映させます。

税金や保険料もすべて予定に入れておきます。

また、 A事業、 B事業、 C事業と、各事業によっても入出金のサイトは異なります。

翌月に入金されるものや 3か月後、 6か月後などがあり、支払いも仕入も異なるので、それぞれの要素を入れていくしかありません。

これらは最初は完璧なものにはなりません。

ヒアリングして修正していって、徐々に精度の高いものになっていきます。

こうした自社独自のものができれば、経営者はお金を払います。

これほど便利で有用な資料はないからです。

すべての企業に汎用的に使える資金繰り表なんてものはできるわけがありません。

また、会計ソフトでは資金繰りにリンクしないので、各企業の特性を考慮した個別の資金繰り表を作ることはできません。

前述のように、中小企業の経営者自らがこうした資料を作成できるのは稀ですし、作成できたとしても、仕事の優先順位はまた別のところにあります。

だからこそ、会計事務所が関与する意味があるのです。

Check!

  • □経営計画・損益計画は、会計事務所のサポートで作成するのがベター
  • □毎月の経営の振り返りも、会計事務所と一緒に行うとよい
  • □税務顧問から経営顧問へと会計事務所にレベルアップしてもらう

何だかんだ言っても、本当の意味での相談相手は税理士しかいない:お金や経営の相談は家族よりも税理士

クライアントの事業再生のお手伝いをして、何がしかの提案をすると、最初の頃は「顧問税理士に確認します」と言われることがあります。

悔しいですが、経営者はやはり税理士に信頼を置いています。

中小企業白書によれば、中小企業の経営者のうち他者に定期的な経営相談をしている人は 35・ 7%で、その相談の相手としていちばん多いのが顧問である税理士の 68・ 1%、次が経営幹部の 34・ 9%、続いて家族の 27・ 4%でした(複数回答)。

考えれば当然のことで、家族経営をしている会社であっても、経営者はお金のことを家族にも相談しづらいし、また、全くの外部の第三者には相談できないものです。

そこで、お金のことも含めて相談相手としては、税理士が適任となります。

税理士は月次関与を通じて会社の財政状態を適時適切に把握しているので、相談相手としてはうってつけなのです。

また、日々の業務だけではなく、事業の承継、相続など、税金の相談には切っても切れない関係なので、顧問税理士とは一生付き合っていきたいと考えています。

ところが、その税理士が年に一度ぐらいしか顔を見せず、また、月次の処理は事務所の職員に任せっぱなしであればどうでしょうか?経営者はそのような税理士に相談したいでしょうか?相談しても、適切な解が提示されるとは考えられないので、経営者が税理士に期待する役割はどんどんレベルが低下していきます。

税理士は、税金の計算だけではなく、その会社を注意深く見守り、経営者からのいちばんの相談相手になっていただきたいものです。

Check!

  • □税理士は、会社の内実、資金状況、経営者の資産状況を知っている
  • □家族に相談できないことでも、口の固い税理士には相談できる
  • □経営者は、信頼できる税理士とは一生付き合いたいと思っている

あとがき

コンサルテーション機能を持っている会計事務所は、どんなに ITが発展しようがすぐれた A Iが開発されようが、通常の業務以外に、しっかりした管理会計に基づくコンサルティングをしていれば、絶対に捨てられることはありません。

なぜかというと、数字の元となっているのは人間だからです。

最後は人間が判断することです。

仕訳や経理代行などは経理ソフトや A Iなどに任せられるかもしれませんが、コンサルテーションはできません。

会社の強みや弱みもわからないし、経営分析もできません。

このような機能を有している会計事務所は、一定額以下では顧問を引き受けないでしょう。

それは十分な付加価値を提供できる能力があるからです。

付加価値とは、他の人が真似できないことです。

会計事務所も生き残りをかけているのです。

付加価値を編み出すのは、進化論でいう「環境の変化に対応する」ためです。

これからの時代、特にウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代に、融資の返済ができない会社がどんどん増えてきます。

借りたお金というのは、きちんと使わないと消化不良を起こします。

今回、コロナ対策で、企業にとっては「借りなきゃ損」という状況になり、多くの中小企業はどんどん借りました。

なぜ借りるかというと、まず既存の融資の借り換えです。

これが保証料免除、金利も 3年間はゼロなら、仮り替えたほうがいいに決まっています。

さらに、現在借りている融資額以上の資金を借りようとします。

なぜそうしようとするかといえば、不安だからです。

そうしておいて、特に心配なことがなければ、どんどん返済していけばいい。

経営者の多くはそういう意識です。

ところが、計画性なく借りた人は、その資金を使ってしまうのです。

だからこそ、銀行と会計事務所が情報を共有してこれに対処すべきなのです。

経営計画・損益計画と資金繰り表は、財務会計でなく、むしろ管理会計に属する分野です。

本来ならば、銀行は会計事務所と連携して、経営計画に沿って、実際の経営がどうなっているか試算表を吟味します。

さらに、資金繰りが予定どおりになっているかどうか、そうしたことを企業と一緒になって検証していきながら融資を検討し決めていく、というスキームでなければなりません。

しかしながら、今までの銀行は、こうしたスキームではあまりやってこなかったのが実態でしょう。

ところが令和の時代になると、本当に社会経済環境は厳しくなっていきます。

日本の人口はずっと減っていくでしょう。

コロナで経済活動はシュリンクしたまま、以前のようには戻りません。

コロナ対策のカンフル剤を打ってその効き目があるうちはなんとか生き延びられますが、日銀は、コロナが終息したあとの経済の回復は 7割程度だろうと予測しています。

つまり、どうしてもある一定割合で倒産する企業が出てくるということです。

すると、そこにお金を貸している銀行の経営もゆらぎます。

他行との吸収合併がどんどん進んできますし、銀行員もリストラされていきます。

こんな不透明な時代に生き残っていくためには、今までのやり方は通用しませんから、企業はより密接に会計事務所や銀行と情報共有し、経営を「見える化」して、三者で協力し合いながら乗り切っていくしか方法はないのです。

企業が倒産すれば、それをサポートしている銀行や会計事務所も損失を被ります。

三者の中で生産活動を行っている(利益を生み出している)のは企業だけです。

その企業の経営がうまくいくようにしていかなければ、銀行も会計事務所も、捨てられるか、消えていく運命にあるのです。

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