「自己効力感」を高める四つのポイント
「できないかもしれない」「失敗するかもしれない」 こうした思いは、高い確率でそのまま現実のものとなります。自分の中でつくり上げたマイナスの感情に引きずられて、パフォーマンスを低下させるからです。
そして、「やっぱり自分はダメなんだ」と思い込み、さらに自信喪失するという悪循環に陥ります。一方で、「できそうだ」と感じることもあり、このときはほとんどうまくいきます。
私自身、多くの締め切りを抱えているような状況でも、「何とかなる」という根拠のない自信を持てることがあり、そういうときは本当にできてしまうのです。
おそらく、あなたも同様の経験をしたことがあるでしょう。この「できそうだ」という思いを、心理学の専門用語で「自己効力感」と呼びます。
自己効力感は、いい行動を習慣化して人生を変えていく過程で、とても重要な役割を果たします。自己効力感は、おもに次の四つのきっかけによって生まれます。
- 「自己の成功経験」………これまでに同じ行動か似た行動をうまくできた経験があること。
- 「代理的経験」……………自分には経験はないが、他人がその行動をうまくこなすのを見て、自分もできそうだと思うこと。
- 「言語的説得」……………自分にはその行動をうまくできる自信がさほどなくても、他人から「あなたならできる」と言われること。
- 「生理的・情動的状態」…達成感や喜びによって、生理的状態や感情面で変化が起きること。
何かをしようと考えたら、あなたは、これらの要素を意識して自己抗力感を高めてあげればいいことになります。なかでも、「自己の成功体験」は最も力を発揮します。
かつて英語の勉強をものにした経験があれば、ほかの語学も習得できるという気になるでしょう。ここで大事なのは、小さなステップでも確実な成功体験を積むということです。
大きなことに挑戦して「できなかった」という経験はマイナスにしかなりません。小さなことでも回数多く「できた」と感じることで、自己効力感は増大していきます。
その繰り返しが、大きなことを成し遂げるのです。「代理的経験」によって自己効力感を発現させるには、物事や出来事のとらえ方がポイントになります。
たとえば、同僚が難しい仕事をうまく進めたとき。「何だよ、アイツはできたのか。面白くないな」と考えてしまっては自己効力感がダウン。なぜなら「面白くない」ということは、その時点で「自分はできない」ことが前提になっているからです。
「そうか、アイツにできたんだからオレにもできそうだ」と思える人は、ほかの人たちの成功をちゃっかり自分の成長材料にできます。「言語的説得」にもこれと似た側面があります。
「あなたならできる」と言ってもらうことで素直に自信をつける人もいれば、ゆがんだ認知で悲観的かつ自虐的に解釈する人もいます。「そう? そうか、私できるかもね!」「おだてられてもダメ。自分の実力は自分が一番よくわかってるから」 どちらの考え方が得かは、説明するまでもありません。
達成感や喜びによって「生理的・情動的状態」を生じさせるには、何かを成し得ることが必要になります。
これもまた「自己の成功体験」と同様、大きなことにばかりチャレンジしようとすると、ハードルの高さゆえ、なかなか得られません。小さなことを確実に成功させて「いい気分」になれることが求められます。
こうして見ていくと、自己効力感を高く保つには、「すぐその気になる」人が有利だということがわかります。あなたは、もっとおっちょこちょいでいいのです。
「感覚」に頼るのをやめる
「どうせ、ダメに決まっている」「また失敗したらどうしよう」「できなくて恥をかきたくないな」 こうしたさまざまな心の葛藤から抜け出し、具体的に自分がとりたい行動を起こしたあなたは、その後どう変わっていくでしょうか。
一口に「行動を変える」と言っても、一足飛びに成果は出せません。長年染みついた悪い行動をいい行動に変えるには、認知のゆがみを正し、目の前のことに集中し、焦らずに少しずつできることを積み重ねるというステップが必要です。
これまで何度も述べてきたように、あなたが目標を達成できなかったり、変わりたくても変われなかったのは、やる気や根性などという実体のないものを拠り所にしていたからです。
根拠のない感覚的なものに頼ろうとすると、いい行動を妨げている根本的な問題から目をそらしがちになります。
解決しなければならないことを先送りにし、「自分は頑張っているんだからこれでいいはずだ」と間違った方向に突き進むことになります。
ところが根本的問題はいぜん残っているので、また同じ問題にぶち当たり、八方塞がりになります。
根本的な問題から目をそらし、がむしゃらに進もうとするのはなぜなのでしょうか? 道を急いで、いっぺんに何かを成し遂げようとするのはなぜなのでしょうか? いたずらにゴールを急いで走り出せば、道選びを間違えて途中で引き返すことになるということを、あなたも経験的にわかっているはずです。
急いだ結果、振り出しに戻るのは終わりにしましょう。もうそろそろ、それをやればやるほど時間をムダにするということを正しく認識しなくてはならない時期に来ています。
小さな行動を積み上げることこそが、遠くの目的地に到達するただ一つの方法です。小さな行動をとっていると、不安が頭をもたげることもあるでしょう。
「こんなスローペースで本当に目標を達成できるのだろうか」と。そんなときは、不安を曖昧にせずに具体的に分解し、向き合いましょう。
スローペースと感じるのはなぜか? 何月までにいくつのことをやらなければ間に合わないのか? 慣れてきて、ペースがアップしていく可能性はないか? 今はこのペースで続け、 3か月後に見直してはどうか? ペースをアップするために、手助けツールを使う方法はないか?
こうして具体的に見ていけば、必ず解決策が見つかります。不安は漠然と抱いているから何かとても大きなことのように感じるのです。思うように行動し、なりたい自分に変わり、満足できる人生を構築していくために、もっと自分と相談しましょう。
「人間関係」も行動でできている
人間関係は、常に私たちを悩ませる大きな要因となっています。会社で感じるストレスも、仕事そのものに起因しているものは少なく、ほとんどは人間関係によるということがわかっています。
思うに、みんな人間関係を難しく考えすぎているのです。人間関係とは、そこにいる人たちの行動の集積にほかなりません。
たとえば、あなたの職場がギスギスした雰囲気だとしたら、そこにいる人たちがギスギスした「行動」をとっているからそうなるのです。
仏頂面で挨拶したり、不親切なメモを残したり、陰で悪口を言うような行動をとっているからそうなるのです。ところが、多くの人は「相性が悪いからだ」と考えます。性格的に合わないからギスギスするのだと。でも、それは逆なのです。
あえて相性が悪くなるような行動をとっておきながら人間関係に悩んでいるというのが本当のところです。
このことに気づけば、人間関係は一つも難しいものではなくなります。あなたの行動いかんで、いかようにも変えられるということです。思い起こしてみてください。
あなたが、これまで悩んできた人間関係は、ほとんどが受け身のものではなかったでしょうか?「部長が何かにつけ文句を言ってくる」「近所の奥さんが私を悪く言っている」「若い部下がオレを煙たがっているようだ」 つまり、あなたは、自分と合わない人たちに対して、自分と合うように変わってほしいと思っていたのではありませんか? それは無理な話です。
人を変えることはできません。あなたが変えることができるのは、あなただけなのです。
かつて第一生命では、職場の人間関係に関するアンケート調査を行っています。
そこでは、「上司や部下と飲みに行きたい」と積極的に考える人たちの理由は「人間関係を築くため」というのが主であるのに対し、「行きたくない」と考える人たちの理由は、「話がつまらない」「お金や時間がもったいない」などというものであることがわかりました。
この結果を見て私が注目したのは、「いい人間関係を構築したい」と考えている人たちは、文句を言うより先に自分から積極的に相手と関わろうとしているということです。いつでも主導権はあなたにあります。
好転したい人間関係があるなら、相手に期待するのではなく、そこにおける自分の行動を好ましいものに変えることが一番です。
そしてもちろん、その行動は小さなことでいいのです。笑顔で挨拶する。時間を守る。悪口を言わない。自分ばかりしゃべらないで人の話を聞く。つまり、あなた自身が人からされて嬉しく思うことをするだけでいいのです。
それを「なんで私からしなくてはいけないの? 感じが悪いのは向こうなのに」と思っていたら、その関係は未来永劫、改善しません。
「いい人間関係を構築するために、あなたの行動を変える」ということは、他人軸になるということではありません。あなたが決定権を持つということです。
自分は何ら行動を起こそうとはせずに、「あの人嫌だな」と思っていることこそ、他人軸で生きているということです。そこを間違えないようにしてください。
あなたは、人間関係の舵取りを自分でしたくありませんか? 受け身で「嫌だな」と思っていたことを、自分の舵取りでいい方向に向けたくはありませんか? 人間関係とは、そこにいる人たちの行動の集積。
いい行動を集積したかったら、まずはあなたがそうした行動をとれば、必ず周囲の人たちの行動も変わっていきます。
感情は本質と関係ない
企業において、ある一定の部下とうまくいかない上司について調べてみると、顕著な傾向が見てとれます。その上司は、ほかの部下たちと比べて、うまくいかない部下との接触回数が明らかに少ないのです。
しかしそれを指摘すると、上司は「そんなことはない」と反論します。上司なりに、苦手な部下ともコミュニケーションをとっているつもりなのでしょう。そこで私がアドバイスをしている企業では、実際に計測してもらいます。
「 Aさんと挨拶した」「 B君とエレベーターの中で会話を交わした」など小さな接触について、計測し記録をつけてもらいます。すると接触回数にはっきりとした違いが出ます。
ここまでやってはじめて、上司は自分の行動に偏りがあったことに気づくというわけです。それを認識してもらったうえで、うまくいかなかった部下との接触回数を意識的に増やしてもらうと、関係は改善していきます。
これが人間関係の本質です。何も複雑なことはありません。あなたに誰か苦手な人がいるなら、その人との接触回数を増やしさえすればいいのです。
小さな接触でいいので、こちらから話しかけたり挨拶をする機会を増やせば、その関係は簡単に好転します。上司が飲みに誘ってくれたら、たまにはつき合ってみましょう。
嫌だと決めつけずに行ってみたら、案外、楽しい時間が過ごせるかもしれません。お互いの誤解も解けるかもしれません。思い込みから脱却して小さな行動をとってみる。これが、あなた主導で人間関係を変えていくポイントです。
「優先順位」よりも「劣後順位」を大切に
自分軸で人間関係を構築できるようになれば、周囲に間違った気を遣うこともなくなります。「断るべきは断る」という作業もできるようになります。私たちに与えられた時間には限りがあります。
あなたが自分の生きたいように生きられなかったり、自分を変えようと思っても変えられなかったりしたのは、限られた時間の中に本来やらなくてもいい行動が多く入っていたからかもしれません。
本当にあなたにとって望ましい行動を増やして、やりたいことに積極的に向かっていける環境を整えましょう。環境を整えるにあたっては、「優先順位」よりも「劣後順位」を念頭に置いてください。
劣後順位とは、捨てるものを先に決めるやり方です。
私たちは何事も優先順位で決めようとしがちですが、「何を取るか」より「何を捨てるか」を先に決めたほうが効率的に行動できます。
たとえば、あなたに 10個の仕事があったとき、優先順位で考えると順番は振ったにしろ最終的に 10個のことをやろうとします。でも、実際には 10個をやる時間はないから、「やり残してしまった」という思いが募ります。
だから達成感も得られにくいし、いつももやもやした気分が晴れません。劣後順位なら、できない分は先に捨ててしまいます。
どう考えたって 6個やる時間しかないなら、まず 4個を捨て、残った 6個に順番をつけます。だから、非常に明確で動きやすくなります。そもそも、私たちはやる必要がないことを抱え込みすぎるのです。
責任感が強いのはいいことですが、「自分がやらねばうまくいかない」というのは思い込みであることがほとんどです。
たとえば、あなたの仕事の中に、後輩や部下に任せられることはないでしょうか。あるいは、人の噂話ばかりで得るところの少ない会合に大切な時間を使っていないでしょうか。劣後順位で物事を判断できるようになれば、そういうよけいなものを簡単に手放していけます。
これからは、「おそらく、やったほうがいいんだろうな」という曖昧さから脱却し、断ることも覚えましょう。劣後順位で「捨てていい」に入った項目に未練を残す必要はありません。
自分の持ち時間を最大限有効に使わなければ、目標を達成することも、自分を変えることもできません。ごちゃごちゃになっているタスクを整理してシンプルにし、必要な行動に集中しましょう。
「時間の支配」から抜け出す考え方
時間は人生そのものです。あなたにも私にも、 1日 24時間という時間が平等に与えられています。あなたは、自分の目標を達成しようと、自分をよりよく変えようと努力し、大切な時間をそのために使おうとしています。
しかし、「 1分 1秒もムダにしない」などと意気込むのはやめておきましょう。自分の時間は自分の幸福のために使うのであり、時間に支配されてはいけません。
私もたくさんの仕事を抱えてはいますが、夕刻になればお酒を飲みます。友人と一緒にわいわい飲むこともあれば、自宅で一人のんびり飲む日もあります。
そのために使う時間が 2時間だとしたら、 1年で 700時間以上飲んでいることになります。でも、その時間をムダだなどとはまったく思いません。
1日の終わりに飲むお酒は、私にとってとても価値のあるものなのです。もちろん、これは私個人のケースです。
お酒が嫌いな人が、酒飲みにつき合って毎晩 2時間を消費したら、それはムダもいいところでしょう。基準はあくまで自分にあります。
あなたは何が好きなのでしょう? 旅行好きなら、旅行に費やす時間をムダだと思ってはいけません。その時間を我慢して勉強しても、それは何のための勉強でしょう? 私たちは必ず人生を終えます。
突き詰めるところ、致死率 100パーセントです。だから投げやりでいいというのではありません。だからこそ、限られた人生を一人ひとりが輝かせる必要があるということです。
そのためには目標を達成しよう、よりよく変わろうという前向きな姿勢と、今を最大限楽しむことのバランスが重要です。このバランスがとれない人は、早晩行き詰まり、結局思うような人生を送れなくなります。
タイムマネジメントはアプリで
自分軸で生きる。本当に自分の望む人生を送る。その重要性は漠然とは理解できても、実際の行動となると、まるで逆をやってしまう人がいます。
人生そのものである時間を、どう配分していいかわからないのです。とくに今の若い世代は、幼い頃から親の敷いたレールに乗って大切に育てられたために、なかなか自分の価値観を明確にできないようです。
その時間が、自分にとって本当に必要なものなのか、あるいはそうでないのかを見極めるために、ツールを用いるのもいいでしょう。
たとえば、スマートフォンの「 Timenote」というアプリケーションを使えば、自分の時間の使い道を記録し、客観的に把握することができます。
何か行動をとるときに「仕事」「食事」「睡眠」「移動」「情報収集」「娯楽」などのアイコンをタップするだけという簡単な操作ですが、しばらく続けていくと、どの行動にどれだけ時間を使っているかを円グラフ化して見ることができます。
月はじめに各行動の時間配分の目標を記録しておき、月末にその達成度を数値で見るといったことも可能です。このようなツールを使うと、価値のないムダな時間の洗い出しが容易にできます。
「リラックスの時間として、お酒を飲むことは自分に必要だけれど、ネットを見る時間は少なくしたほうがいいな」といったように、一つひとつ納得したうえで行動を取捨選択できるのです。ムダな時間を見極めるためにできることは、ほかにもいろいろあります。
たとえば、いつも見ているテレビ番組を録画するというのも一つの方法です。
放映時間になったからと習慣的にテレビの前に座れば、まとまった時間を消費してしまいます。ところが、録画してみると案外あとから見ることはなかったりします。
あとで見なかった番組は、実はもともと見る必要がなかったものということになりますが、リアルタイムだとつい最後まで見てしまうばかりか、見るつもりのなかった次の番組までぼんやり眺めてしまうことになりかねません。
録画なら倍速で見ることもでき、間違いなく時間の節約になります。これからは、よほど緊急性の高い番組以外は録画する習慣をつけてみてはいかがでしょう。
時間の節約法を、あなたなりにいろいろ考えてみましょう。
繰り返し確認しておきますが、それは「 1分 1秒ムダにしない」というスタンスで行うのではありません。「本当にやりたいことのために、いらないことに費やしている時間を回す」ということです。
※「 Timenote」 時間版の家計簿アプリ。自分が何にどれだけの時間を割いていたかをグラフで理解できます。履歴も残るので時間の使い方を見直すために有効です。有料版のみです。
「お金以外の報酬」をどうやって自分に与えるか
いい行動を継続させるためには、その行動をとることでいい結果が与えられることが重要だということはすでに述べてきました。そして、そのいい結果が「すぐに」「確実に」与えられないと、どうしても継続が難しくなるということも。
あなたが小さな行動をとりながら自分を変革していくにあたっては、「すぐに与えられるいい結果」や「確実に与えられるいい結果」として、自分への報酬を用意する必要があります。
報酬と言われてすぐに思い浮かぶのはお金です。しかし、私たち人間を動かすのは金銭的報酬よりも、むしろ金銭を伴わないものです。その典型は感謝と称賛です。
「キミのおかげだよ。ありがとう」「よく頑張ったね。さすがだね」 こんなことを誰かから言われたら、あなたはノリノリでいい行動を続けるはずです。
あなたの目標達成について、あなたの自己変革について、誰か応援してくれる人がいるなら、ちょっとしたことを大いに褒めてもらいましょう。
自分に与える報酬は、あらかじめ用意しておくこともできます。私がよくやるのは、スケジュールに楽しい予定から入れることです。年間スケジュールを立てるときに、私はまず旅行など遊びの計画を書き入れます。
そして、空いているところに仕事を入れていくのです。楽しい予定を先に入れれば、それを実現させるために効率よく仕事を片づけようとするし、モチベーションも高く保つことができます。
置かれている立場によってなかなか自由がきかないという人もいるかもしれませんが、楽しみを優先することは、望ましい行動を継続させるためにとても効果的です。
「時間ができたら ◯◯しよう」と思っていても仕事はいくらでも発生するので、結局、楽しい時間を持てないまま走り続けることになります。
すると、だんだん不幸感や被害者意識が強まり、燃料切れを起こして立ち行かなくなってしまいます。
多くの人が、これまでこうして厳しい状況に自らを置いていたにもかかわらず、目標を達成できずにいたし、変われなかったし、ずっとつらい思いをしてきたのです。もっと自分を楽しませてあげましょう。
いい習慣をものにする「 5分行動」
私は走ることが趣味で、 100キロマラソンや世界一過酷と言われるサハラマラソンを完走した経験を持っています。しかし、もともと運動習慣があったわけではありません。
以前は体に余分な贅肉がついていたし、駅の階段を上っただけで息切れすることもありました。
こんな私がある日、「マラソンを走ってみたい」と思いました。そう、変わろうとしたわけです。
でも、そのときすでに 40歳を過ぎていましたから、本当にできるかどうかまったく自信はありませんでした。
周囲の人たちも、多くが「やめておけば」と言います。そこで専門家に相談すると、「できる」という答えでした。そしてそのときにアドバイスされたのが、まさに「小さなことから始める」というものでした。
「まずは週に 2回、 30分ずつ歩いてみましょう」 かなり頑張らなければいけないのではと身構えていた私は、正直「そんなんでいいの?」と感じました。
でも、言われたとおり週に 2回 30分歩くことを続けていたら、追加の指示が出ました。
「では、 30分のうち、 5分だけ走ってみましょう」 それができるようになると、走る時間を 10分、 15分と延ばしていき、最後には 30分間すべて走り通せるようになりました。
「30分、ずっと走ることができた!」 運動習慣がなかった私にとって、そのときの達成感はすごいものがありました。
達成感に背中を押された私は、やがて、 10キロマラソンを走れるようになり、ハーフマラソンを経て、とうとうフルマラソンも完走できるようになりました。その成功体験が 100キロマラソン、サハラマラソンまでも完走させてくれたのです。
当たり前のことですが、私が最初からサハラマラソンを走ろうとしていたら絶対に無理でした。途中で挫折して、悪い思い出しか残らなかったでしょう。小さなことを積み重ねたからこそ、私は変わることができたのです。
何度も述べてきたように、行動科学セルフマネジメントでは、無理をすることは禁物です。1日 5分でもいいのです。5分でいいから行動に移しましょう。
ダイエットをしたい人が 1日 3時間「やせたい」と考えても体重計の数値は変わりませんが、 5分歩けたら結果が変わります。
「5分歩いたくらいでやせるはずないでしょ」と思うのは間違いで、小さな行動に成功し、それを積み重ねていくことは確実にいい結果をもたらします。まずは 5分、何かできることはありませんか? その 5分を 1か月続けられたら、あなたは確実に変わります。
人生は必然
私たちの感情、感覚というものは常に揺れ動いており、確たる自分の軸を持っていると思っていても、ちょっとしたきっかけでブレてしまいます。
そして、そうした感情の乱れによって、自分でも気づかないうちに世間や他人を基準にして物事をとらえたり、事実と異なる思い込みの妄想世界を繰り広げたりするのはよくあることです。
こうしたブレを放っておくと、せっかくのあなたのいい行動が集積されず、人生がどんどん間違った方向に動いてしまうので注意が必要です。
これからは、定期的に自分の人生をチェックする習慣を持ちましょう。その方法はあなたならではのもので結構です。
前述したライフログの手法を使って日々の行動を目に見える形で記録しておくと、この作業にも非常に役立つでしょう。
あるいは、行動科学マネジメントの重要ツールであるチェックリストを用いてもいいでしょう。曖昧に振り返るのではなく、チェックを入れながら具体的に自分を見直してみましょう。
私は、「人生は必然」だと思っています。いい結果が出たならいい行動が集積されていたのだし、そうならなかったら、何か原因があるはずです。
1日 5個の英単語を覚える習慣を持っている人は、 1年後には 1825個の英単語を覚え、 5年後には 9125個の英単語を覚えます。
もし、そうなっていないとしたら、どこかにミスが起きているのです。それを探しましょう。ミスが見つかったら、それに対する後悔や落ち込みは厳禁です。
「ここにミスがあった」という事実だけに着目し、それを正せば OKです。物事をあえて複雑にするのはやめて、いつもシンプルにいきましょう。
ページを閉じた瞬間からはじめてください
さて、そろそろ本書を閉じていただく時間が迫ってきました。本書をとおして私は、人間には認知のゆがみが生じやすいということを述べてきました。
それによって、あなたが目標を達成したり、自分自身を変えていくことに自らストップをかけているのだということも。
あなたがやりたいことをやり遂げて、なりたい自分に変わっていくために必要なのは、意志の強さではなく、小さな行動だと説明してきました。
しつこいくらいに繰り返してきたので、あなたも理解してくださったはず。もう同じことで苦しまないですむという自信も芽生えているのではないかと思います。そんなあなたに、最後にお願いしておきたいことがあります。
「明日から」を禁句にしてください。
本書を閉じて、あなたは何をしようと考えていましたか?「今度こそ、英語の勉強に本格的に取り組もう」「誰にでも自分から挨拶できるようになろう」「絶対に禁煙してみせる」 いろいろあることでしょう。
それをいつから始めますか?「明日からやろうと決心した」なんて言わないでください。「明日からやろう」と言う人の「明日」は、おそらく一生やって来ません。
明日から三つのことをやろうとするぐらいなら、ハードルを下げて今すぐ一つのことをやりましょう。そして「できた!」と喜んでください。達成感を感じ、自分自身を認めてあげてください。その瞬間、あなたは変わり出すのです。
目標を達成したり、自分が変わるための行動を、世間の価値観ではなく自分軸で決めることができた。その行動が、やたらと立派なものでなく、すごく小さなものであることを受け入れることができた。
そして、あれこれ理由をつけずに、今やることができた。そんな自分を嬉しく感じ、褒めてあげることができた。
ここまできたら、あなたは何だってできるし、いかようにも自分を変えていけるでしょう。
[著者]石田淳(いしだ・じゅん)ウィル PMインターナショナル社長兼 CEO、社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事、日本行動分析学会会員、米国行動分析学会会員。
「行動科学マネジメント」の専門家として、ビジネスパーソンが成長し、成果を上げる科学的手法を説く。
日経BP「課長塾」をはじめ、多くの研修・セミナーで講師を務め、人気を博す。
『教える技術』(かんき出版)、『「続ける」技術』(フォレスト出版)など著書多数。
行動科学マネジメントの理論をマラソンのトレーニングにも自ら応用し、 2012年サハラ砂漠マラソンを完走。
2013年は南極アイスマラソンに挑む。
人生を変える行動科学セルフマネジメント自分を変化させるたったひとつの方法著 者 石田淳 © 2015 Jun Ishida編集協力 中村富美枝 2015年 12月 18日発行この電子書籍は、 2013年 8月 1日発行の第 1刷を底本としています。
発行者 佐藤 靖発行所 大和書房東京都文京区関口 1‐ 33‐ 4制作所 歩プロセス本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
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