◆〝あいさつ〟と〝笑顔〟が人間関係の基本 ◆価値観を受け入れることから、本当のつき合いは始まる ◆ぬるま湯の関係よりは、厳しくても、実りのある関係を作ること ◆調和を大事にする人は、どこにいっても欠かせない ◆「共通点の多い人とは、なぜかうまくいく」法則 ◆名前はハッキリと二度言え! ◆後輩と一緒に成長するノウハウとは? ◆人間関係は、何度失敗しても、やり直せる! ◆無理に好かれようと思うから、相手は離れていく編集協力/菊池俊彦
〝あいさつ〟と〝笑顔〟が人間関係の基本「今さら何を言うのか」と思わないでほしい。
確かにこの二つはありふれているし、昔から言い尽くされてきた言葉でもある。
いくら科学が発達し、日常生活も IT化されたとはいえ、人と人とのつき合いがなくならない以上、やはりこの二つの基本は外せない。
ここでもう一度、再確認の意味でもこの二つの持つ重要性を示しておきたい。
まずは〝あいさつ〟だ。
これはすべての人間関係で必要不可欠である。
近所づき合いから始まり、友だちや知り合い、仕事関係まできちんとした〝あいさつ〟をしてほしい。
相手との関係が親しいから省いてもいい、逆にそうではないからきちんとするといった区別はしないこと。
相手がどのような人であっても、欠かしてはいけないし、もちろん家族に対しても疎かにしてはいけない。
人間関係が希薄になってきた現在では、とくにその重要性は高い。
それができている人はトラブルが少ないだろう。
例えば、こんなデータがある。
ある大学の教授が近所の騒音について調べたのだ。
その調べ方とは、相手と面識がある場合とない場合を比較したのである。
すると面識がある場合よりない場合のほうが、騒音を感じる割合が断然高くなり、六〇%の人が近所の騒音を迷惑だと感じていた。
ところが同じ近所でも〝あいさつ〟を交わす間柄ではその数値は下がり、先ほどの半分近くの三五%になった。
驚くのは、それが話をときどき交わす間柄にまでなると、その数値がさらに下がって二〇%にまでなったのである。
これはどういうことだろうか。
あなたも想像がつくと思うが、聞こえる音は相手によって変わるわけではない。
では何が変わったのか。
それは、騒音を聞いている人の心である。
面識のない他人の場合は、聞こえる音を騒音と感じ、親密度が深くなればなるほど、聞こえる音を騒音とは感じなくなるのである。
そしてその基ともなっているのが〝あいさつ〟なのだ。
同じ〝あいさつ〟でも、ただの会釈の場合と、言葉を添える場合では、印象が違ってくることも覚えておこう。
会釈だけをするのは、しないよりはいいが、どちらかといえば冷たい印象を与える。
しかしそれに言葉を添えると、まったく違った印象になり、好感度が格段に増すのである。
言葉はひと言でいい。
「おはようございます」でも「行ってらっしゃい」でも構わない。
そのひと言がトラブルを防ぎ、いい人であると相手に思わせるのだ。
◉いつも笑顔の人は心が温かく、やさしい人 同じことは〝笑顔〟にもいえる。
人と接する仕事をしている人は、誰もが〝笑顔〟で接客することを義務づけられている。
これはそうすることで、お客様への印象を良くするためだ。
お客様はそれがマニュアルにあるからとわかっていても、やはりうれしいものである。
もしその〝笑顔〟に心がこもっていれば、威力はさらにアップするだろう。
あなたも実感したことがあるかもしれないが、職場やボランティアなどのグループの中に一人でも〝笑顔〟の素敵な人がいるとその場が明るくなり、やる気が出てくるものである。
そして、つらい仕事も頑張れる。
それほど〝笑顔〟には素晴らしい効果がある。
あまりにも当たり前になってしまった〝あいさつ〟と〝笑顔〟。
しかしまわりを見渡してみると意外にそれをきちんと実践している人が、少なくなってしまったことに気づくだろう。
ぜひとも、人間関係の基本ともいえるこの二つを、大事にしてほしい。
その効果にきっと驚くはずだ。
価値観を受け入れることから、本当のつき合いは始まる「私は男運がない」「女運がない」などと言う人がいるが、本当にそれは〝運が悪い〟からだろうか。
〝運が悪い〟のではなく、自分の価値観に執着して相手の価値観に合わせたり、受け入れたりすることをしないから、同じ結果を積み重ねているのだと私は言いたい。
おそらく本人はまったく、そのようなことは思っていないに違いない。
出会って最初の頃は、お互いの好みも一緒だから、絶対うまくつき合えると喜んでいたろうし、別れるなどとは考えてもいないだろう。
最近では、世間の風潮もあるのだろうが、つき合ったかと思うとすぐに別れるケースが後を絶たない。
しかしよく考えてみると、本当に好きになったのならば、なぜ長くつき合えないのか。
それもおかしなことである。
理由がわからないから、本人は自分に原因があるとは思わず、私は男運が悪い、女運が悪いと〝出会いの不運〟をいつまで経っても言い続けているのだ。
そのような人たちとは違い、上手につき合いを続けているカップルがいるのも事実である。
ではその違いはどこにあるのか。
ひと言でいえば、相手の価値観、考え方をどれだけ受け入れているか、あるいは、それにつき合っていけるのかということに尽きる。
人はそれぞれ考え方が違う。
それは当たり前である。
ところがその違いを、どこまで理解し、どこまで受け入れるのか。
受け入れられるかどうかで、二人の関係は決まるといってもいい。
心理学では相手の動作に合わせることで好意を示すのを〈同調行動〉と説明するが、それと同じと考えていい。
自分の価値観を相手に押しつけるのではなく、〝相手の望むあなたになる〟のである。
誤解してほしくないのは、相手の価値観を受け入れるといっても、相手のわがままにすべてつき合うという意味ではない。
相手の価値観を理解して、その考え方に自分の価値観を合わせるのである。
この頃の若い人は、これが苦手なようだ。
自分と相手の価値観が違うと、それに合わせるよりは自分の願望のほうを優先させてしまう。
その結果、何度も何度も出会いと別れを繰り返すのだ。
これは男女間だけのことではなく、同性の場合でも、つき合い方として考えれば同じであろう。
お互いの違いを理解しつつ、できるところは協調していく。
自分の価値観を何が何でも主張するだけでは人はついてこない。
合わせられるところは、合わせていくことができる人こそ、長いつき合いができる人といえる。
ぬるま湯の関係よりは、厳しくても、実りのある関係を作ること 人間、誰でも好んでケンカをする人はいない。
自分の思う通りにいかなかったり、相手が邪魔をしたり、あるいは言いがかりをつけられたりしたときに、仕方がなくするものだ。
この章のテーマでもある〝誰からも好かれる人〟でありたいのは、人間としての本能かもしれない。
またそうなるように努力しなければいけないのも事実だ。
そのための心構えをお教えしている。
でもだからといって、いくら争いがない、平和な関係であっても、ぬるま湯につかっているようなつき合いだけはしてほしくない。
それではただ単に穏やかなだけで、お互いを磨き合い、成長させ高めあうことがないからだ。
例えば、ビジネスの世界でいえば、第一線から離れて、安全に平和に過ごすことだけをモットーに仕事をしている人たちがいる。
彼らは言われたことだけをやり、決して率先して新しいビジネスの最前線には近づかない。
人間関係も、波風なく生きていくことを最優先させるので、ぬるま湯だし、つかず離れずの距離でしかつき合わない。
趣味の話や今、話題になっていること、面白いことの話には夢中になるが、「どうすれば仕事の効率が上がるか」「新しいビジネスチャンスをどう作るか」「人間力を高めるにはどうするか」などといった話はしない。
ただ会社での時間が過ぎるのを待ち、プライベートの時間を充実させることに全力を注ぐのである。
あなたの職場にも昼間はどこにいるのかわからないのに、アフターファイブになると突然、その姿を現す人がいないだろうか。
「今夜はどこに飲みに行こうか」「どこか面白いところはないか」 と途端に張り切り始める。
まさに彼らは、そのためだけに働いているといってもいいだろう。
◉ときどきはぶつかって切磋琢磨するのが本当の信頼関係 人間、「苦」を選ぶよりは「楽」を選ぶのは、人情だ。
彼らのような一見、和気藹々とやっている連中を見ると、仲がいい人たちだと思うのもわからないではない。
しかしこうした人たちのグループの一員になったとしても、そのときは楽しくても何の向上もないし、自分を磨くこともできない。
彼らのモットーは穏やかな、当たり障りのない人間関係にあるのだから、誰かが溺れそうになっていても助けてはくれない。
もし助けてくれるときがあるなら、それは自分に火の粉が及んでこないときだけ、力を貸してくれるのである。
世間の荒波はそのようなことでは渡れないのは、あなたもご存知の通りだ。
だからこそ本当の人間関係、信頼関係を作っておかなければいけない。
そのためにはときには耳の痛いことも言ってくれる、厳しいことも言ってくれる仲間や先輩が不可欠だ。
当然、ケンカをすることもあるだろう。
気まずい雰囲気になることもあるかもしれない。
しかしそれは相手のことを思っているから言うのであり、自分のことだけを考えたならば逆にそっぽを向いているかもしれない。
そこを勘違いしないことである。
日常生活での親友、ビジネスでのライバル、そして固い絆で結ばれた家族や夫婦は簡単にできたわけではない。
必ず数々の修羅場をくぐり抜けてきたと思う。
そうして少しずつ、ゆるぎない間柄になっていったのである。
誰からも好かれる努力をすることはもちろん大事だが、だからといって楽な相手ばかりとつき合っていてはいけない。
本当に自分にとって必要な人と、長い時間をかけて絆を深めること。
それが人生の財産になる。
調和を大事にする人は、どこにいっても欠かせない 職場ではとくにそうだが、一つのことをみんなで成し遂げていく場合には、一人だけが突出していてもうまくいくとは限らない。
逆に調和を乱してマイナスになる場合も少なくない。
当然、何かをやるときには、上から指示が来る。
個人で仕事をしない限り、組織の中では上から指示を受けて動くのが通常だからだ。
その場合、いちばんのポイントになるのが、仕事がうまく動くための潤滑油になれる人である。
言い換えれば、仕事の流れをきちんと把握し、どこで誰がどのように動けばムダがないかをアドバイスできる人がいるかどうかで、その仕事の出来が決まってしまうのだ。
その役割を担うのは、普通、その部署のトップにいる上司である。
部下は上からの指示で動くのだから、それがいちばん都合がいい。
部下は上司から指示されれば、素直に従うはずだ。
ところが、そういう上司が、なかなかいない。
もしいれば、その部署は最高の成績を挙げているはずである。
ではそのような場合には、どのようにして仕事は動いていくのだろうか。
職種や配属されている人間によって違いはある。
いちばん多いのはそのような人たちの中に必ず調和を取ろうとする人、いわゆる中心人物となって仕切る人がいるのである。
そのような人は、仕事がズバ抜けてできる人とは限らない。
もちろん平均以上の仕事ができなければ誰もついてこないので、ある程度はできるのが前提だが、それ以上に気遣いというか、気配りに長けているのが条件といえよう。
そのような人が仕事をやるうえでの潤滑油になる。
仲間から人望があり、その人に任せておけば大丈夫だと思われている。
だから彼らの言うことは誰もが従う。
そのため不協和音がなく、仕事もスムーズに運んでいく。
それは、オーケストラでタクトを振る指揮者のようでもある。
チーム編成を組んで仕事をしているリーダーがいるが、彼らなどはまさにそういう人物といえるだろう。
全体を常に見渡し、適材適所に人を配置して、何かありそうであれば、事前に手を打つ。
ポジションは、ナンバー2、あるいはナンバー 3ぐらいの人が多いかもしれない。
彼らがいなければ、仕事がうまく運ばないのは確かである。
こういう人物は、ビジネスの現場はもちろんプライベートのつき合いでもいるだろう。
常にいろいろな人に目を配り、どうすればうまく調和が取れるのかを考えて立ち回る。
そのような人はどこにいても欠かせない人であり、みんなから慕われている。
「共通点の多い人とは、なぜかうまくいく」法則 世の中には「類は友を呼ぶ」という言葉がある。
同じような性格や環境、あるいは家族構成などでもいいが、似た者同士は自然に集まってくるといった意味に使われることが多いようだ。
しかしそれは、本人同士がそのように心がけているからそうなるわけではなく、なぜかどこかで引き合うものがあって、いつの間にかそうなってしまうというのが真理のようである。
一時期、女性の理想の結婚相手として、〝三高〟などと言われた時代があったのをご存知だろうか。
これは高学歴、高収入、高身長の三つの条件のことだ。
いわゆる理想の男としてそういうイメージを持っていたのだろうが、以前ほどではないにせよ、今でも女性の結婚願望を表わす言葉として、まったくなくなったわけではない。
女性の心理として、男は大学は出ていてほしいし、収入も少ないよりは多いほうがいいに決まっている。
そして身長は自分よりは高く、できれば一七〇 cm以上はあってほしいというのも、特別な要求ではない。
ごく普通の女性の願望としてよくあることだ。
しかし現実を見てみると、どうもそうはいかないのが常らしい。
そこでつぎのようなデータがあるので見てほしい。
それは結婚相談所に登録した男女のデータを分析したものだ。
そして、どのようなカップルがいちばん多く結婚しているかを調べたものである。
すると先ほどの願望とは違う結果が出ているのがわかったのだ。
つまり学歴や収入、そして身長までもあまり差がない男女が、いちばん多く結婚しているのである。
逆に差があり過ぎるとうまくいかないデータも出ていたそうだ。
これはどういうことだろうか。
もちろん彼らは初対面だから、最初はコンピュータに登録してあるデータを見て、そのなかから会ってみたいと思った人とお見合いをしたはずだ。
女性の場合ならば、自分の理想とするデータに近い男性と初めは会っただろう。
それなのにデータとは関係なく、自分と似通った者同士が結婚して、理想の男性が多く選ばれている様子はなかったのだ。
◉人は自分と似た人に愛情を覚えるもの まさにこれこそが先ほどお話した「類は友を呼ぶ」法則なのだ。
人の心理として、自分と似た人に親しみを覚え、愛情が湧くらしい。
これはいろいろな場合にいえる。
結婚相談所の例だけではなく、趣味が同じだと仲が良くなるのが早いし、考え方が似ているのはもちろんのこと、育った環境や出身地などが一緒でも打ち解けるのが早くなる。
一方で、相手との〝バランス感覚〟も無意識に働いたといえる。
一応、自分の理想は掲げるものの、実際につき合っている間に少しずつ親しみを覚えてくると、それは働くようだ。
同様に理想と現実が一致しない例として、「美人はモテない」というのもある。
これはよく考えてみるとわかるのだが、男の理想として美人とつき合いたいというのはあるが、現実には自分には荷が重い、つり合いが取れないという意識が強く働くため、意外にアタックする人がいないのだ。
まわりから見て、美人だと思われる人が、なかなかつき合う人が現れないというのも、まんざら謙遜ではないのかもしれない。
例えば、美人が逆に損をする例として、アメリカでの実験が報告されている。
これは「男性を騙して詐欺を働いた女性の量刑」を較べたものである。
詐欺を働いた手口や騙した金額は同じにして、一方は美人の女性、もう一方はそうではない女性にして模擬裁判を開いた。
その結果、美人には厳しい量刑が言い渡され、そうではない人は、それに較べて軽かったという。
これは美人の場合、「自分の美貌を武器にして男を騙した」という心理が陪審員に働いたからだといえるだろう。
日本の場合でも、美人が出世したときなどは必ず陰で、「身体を武器にして上司に取り入ったから……」と中傷されるのと中身は同じである。
名前はハッキリと二度言え! 人のつき合いというのは、まず名前から始まるといってもいい。
初対面でよほど相手の印象に残るような出来事がない限り、名前を覚えることで、人とのつき合いはスタートする。
そこでいかにして名前を覚えてもらうか、それもできるだけ印象深く覚えてもらうかを考えてみよう。
人の名前というのは、不思議な力がある。
それは親近感を演出する力といっていいかもしれない。
例えば、選挙のときの候補者の名前の連呼だ。
選挙期間中になるとそれこそ朝から晩まで自分の名前を呼び続けている。
政策を話すのならばいざ知らず、ただ自分の名前を連呼し、「どうぞよろしくお願いします」と言っている。
そのように呼びかけ続けても「効果などない」と、あなたは思うかもしれないが、これがそうではないから彼らもやっているのである。
確かに、投票する人をきちんと決めている人には、効果はない。
ただうるさく感じるだけだろう。
しかし、誰に入れるか迷っている人、まだ決めていない人にはこれが有効なのだ。
これには科学的なデータもある。
誰に投票するか決めていない人が候補者の政策や人間性がわからなくても、名前を知っている人に投票する傾向があるのだ。
その理由が、名前を聞いたことで生まれる親近感だ。
それもたった一度だけ聞いた名前よりは、何回も聞いた名前により親近感を覚えるのだ。
だから彼らは何回も名前を呼び続けているのである。
あなたも、自分の名前を覚えてもらい、相手に親近感を覚えてもらうといいだろう。
その方法の第一は、最初に名前を言うときだ。
さすがに選挙ではないので、自分の名前を連呼することはできない。
初めて相手に名前を伝えるときは、大きな声でハッキリ二度言うといい。
「私の名前は渋谷です。
心理学が専門の渋谷です」 そして続けて名前を印象づける工夫をする。
例えば、「姓の渋谷は渋谷駅の渋谷で、名前の昌三は日が二つの昌と、数字の三で昌三です」 と言えば、相手にもわかりやすく伝わるだろう。
自分と同じ名前の有名人がいれば、それを引き合いに出してもいいし、他にインパクトを与えるものがあれば、それでもいい。
◉自分の名前をアピールしたら、相手の名前もすぐに覚えること 第二に、自分の名前をアピールしたら、同様に相手の名前もすぐに覚えること。
覚えたら、それを相手に伝えることを忘れないでほしい。
方法としては、話の途中で相手の名前を挟むようにする。
決して、「あなたの意見はどうですか」 などと言うのではなく、「渋谷さんは、どう思われますか」 と言うようにする。
それも相手の名前を覚えたらすぐに使うようにして、何回も繰り返すといいだろう。
〝名前は親近感を演出する〟と最初にお話した。
それは自分の名前を相手に覚えてもらうことでも達成できるが、同時に、相手の名前を覚えることで、さらにそれは強くなるに違いない。
名前はたくさんいる人たちのなかから、あなたを際立たせる大きな武器と考えること。
それをいつも心がければ、誰もあなたを忘れることはないだろう。
後輩と一緒に成長するノウハウとは? 例えば、四月になると新入社員がたくさん入ってくる。
研修が終わり、それぞれの部署に配置が決まると、そこからがスタートだ。
そのとき、たいていはすぐ上の先輩が彼らの面倒をみるように言われるはずだ。
問題はその指導の仕方にある。
最初はできないのが当たり前だから、人によってはすぐに口を挟んだり、仕事が遅くなると自分の責任になるので、途中から自分でやってしまう人もいる。
新人も初めは「ありがとうございます」と感謝するが、そのうちにそれが普通になり、感謝の気持ちも薄れてしまうだろう。
そこでいちばんいい方法は、代わりにやってあげるのではなく、一緒にやろうと声をかけてつき合うのである。
わからないところはコツを教え、後輩に考えさせつつ指導する。
そうやって最後までやらせるのだ。
手取り足取りではなく、アドバイスをしながらポイントだけ押さえていく。
そうして達成感を味わってもらうのだ。
このように仕事を一緒にすることで、相手は最後まで自分でできた喜びと、先輩と一緒にやって成功したという二つの体験を手にすることになる。
それが同じ釜の飯を食べながら苦楽を共にしたことに通じるのだ。
これは仕事の場面だけでなく、あらゆるところで共通するノウハウである。
状況は変わっても使える方法なので、自分が何かを指導する立場になったならば、ぜひとも試してほしい。
人間関係は、何度失敗しても、やり直せる! 一度、人間関係に失敗すると、二度と元に戻らないと考えている人がいるが、これはとんでもない思い違いである。
人とのつき合いに限らず、人生に失敗はつきものだ。
なかには「自分は失敗だらけの人生だ」と嘆いている人すらいる。
そこまでいくと本人にはわからない大きな原因がどこかにひそんでいそうだが、そうでなくても一度の失敗ぐらいで人生をあきらめていたらとても生きてはいけない。
しかし人間関係の場合は、どうも一度、失敗すると元に戻らないと決めつけてしまう人が多いようだ。
そこで失敗したときの原因を考えてみると、つぎの二つになるだろう。
一つは失敗の原因を相手に求める考え方だ。
これは何かの理由で相手がトラブルを起こしたとか、約束を間違って覚えていた、あるいは急に用事ができてあなたとの約束を果たせなかったなどである。
この場合は、原因をつきとめればいい。
もう一つの考え方は、原因を自分のなかに求めてしまう場合だ。
これがなかなか始末に終えない。
実際には、相手の都合があった場合でも、自分のせいにしてしまうので、結局は解決に結びつかない。
「いつの間にか自分が相手を怒らしてしまった」 ので約束を守ってくれなかった。
または、「相手が自分のことを嫌いになってしまった」 ので、連絡がないのだと一人で思い込んでしまう。
いちばん良くないのが、解決しようと思わないで、あきらめてしまうことである。
運よく相手から連絡があって、本当の理由がわかれば解決することもあるが、そうでなければそのままになってしまう。
こういうケースの場合、一度、失敗すると人間関係が壊れてしまうのである。
そしてだんだんに、「人間関係は難しいものだ」「面倒くさいものだ」 と思い込み、ついには誰もまわりにいなくなってしまうのだ。
◉原因がわかれば、何度でもやり直せる ここで言いたいことは、人間関係につまずいたとき、決して一人で悩まないこと。
そして一人で、原因を背負い込まないことである。
率直に相手にその理由を聞いたり、あるいはまわりの人の意見を聞いたりして修復を図ること。
そうして少しずつでもいいから、以前のような関係を取り戻す努力をしてほしいのだ。
自分一人で悩んでいても、まず解決することはない。
それどころか、どんどん深みにはまってしまうだけだ。
もちろんそれで、全部が必ず修復できるわけではない。
ときには努力はしたけれどもダメな場合もあるだろう。
しかしそれはそれで構わない。
世の中には無数の人がいるのだから、一方の努力だけでは元に戻らない場合があるのは仕方がないことだ。
そのときはそう思えばいい。
現在の人間関係に疑問を持っている人は、自分の態度を少し変えてみることをお勧めする。
人は心の中で相手が変わってほしいと思うことがあるが、まず相手は変わらない。
そう思ったほうがいい。
それよりも自分が変わると意外に相手も変わることに驚かされる。
これこそ人間の心の不思議というべきものである。
とくに男女間では関係が一方的になっていることがある。
男がわがまま放題でも女性のほうが原因は自分にあると思っていると、余計に男は頭に乗ってしまう。
そうならないためにも自分の態度を変えることが必要だ。
例えば、ときどきは相手の要求を拒否してみる。
今までのつき合いから態度を変えるには勇気がいるが、お互いのためにも頑張ってほしい。
第一印象の失敗も、くよくよする必要などない。
次回に会ったときに改めて誠意を尽くせばいい。
それでダメなら、所詮はそのような相手なのだと思えばいいことだ。
これにはタイミングがあるので、焦らないでチャンスを待つ姿勢も欠かせない。
無理に好かれようと思うから、相手は離れていく これは一見、矛盾しているように見えて、実は人間の心理を突いている言葉だと思う。
確かにこれまで、さまざまなテクニックやノウハウをみなさんにお教えしてきた。
それを駆使することで人との関係もうまくいくし、好感度をアップさせることもできる。
それは間違いない。
ただそこで勘違いしてほしくないのは、それが一〇〇パーセントではないこと。
すべての人と上手につき合うことは無理だということだ。
なぜ私がそういうことをこの本の最後で申し上げるかと言えば、もしテクニックだけで全部がうまくいくと思ったならば、そのテクニックを使って、うまくいかない相手と強引に人間関係を作ろうとするからだ。
結果は、あなたも想像できるだろう。
頑張れば頑張るほど、相手はあなたが嫌いになり、二人の関係はさらに悪くなっていくのである。
理由は、明らかに二人の価値観が違うからだ。
これだけ人間がたくさんいるのだから、いくらこちらが歩み寄っても、あるいは環境を整えても、うまくいかない人がいるのは仕方がない。
そういう場合はどうするか。
それは近づけるところまでは近づき、それ以上は近づかなければいい。
その距離を保ち、深い関係になれなくても、それで良しとするのである。
無理に近づけばせっかくの関係が台無しになってしまう。
それを避けるためにもその距離感を大切にしよう。
逆に親しくなれる人は、どんどん仲良くなればいい。
その使い分けをするのがコツともいえる。
あなたのまわりにも、そのどちらかに入る人たちがいるに違いない。
プライベートでは無理につき合うケースはあまりないが、ビジネスでは逆に無理に近づかないほうがいい人が多いかもしれない。
人間の本能として、誰からも好かれたい、みんなの人気者になりたい気持ちはわかるが、理想と現実は必ずしもイコールではない。
となれば、現実に即して人間関係は築かなければいけない。
そのために、相手の本音を見抜く方法や勘違いをしない方法を、お知らせしてきた。
これまでお話してきたさまざまな考え方やチェック項目を、存分に使って人間関係を作ってほしい。
そしてどうにもならない相手にぶつかったときは、一歩下がってつき合えばいい。
きっとあなたのまわりには、たくさんの信頼できる温かな人たちが集まっているに違いない。
渋谷昌三(しぶや・しょうぞう)目白大学名誉教授。
社会心理学者。
1946年、神奈川県生まれ。
学習院大学文学部を経て東京都立大学大学院博士課程修了。
心理学専攻。
文学博士。
山梨医科大学(現山梨大学)教授、目白大学教授を経て、現職。
著書に、ベストセラーになった「人を見抜く」シリーズ(経済界)など、多数がある。
この作品は株式会社コスミック出版「人を見抜く 人は必ず、嘘をつく」( 2019年3月 1日初版発行)に基づいて制作されました。
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