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第 5章 慢性上咽頭炎を予防するにはどうすればいいか

目次

上咽頭は健康を測るリトマス試験紙

これまでお話ししてきましたように、上咽頭は免疫システムや自律神経と深い関係をもち、アレルギー疾患の発症をも左右する、私たちの健康を測るリトマス試験紙のような役割を担っている部位です。

これまでほとんど注目されなかった部位ですが、私たちが健康でいるために、たいへん重要な場所である、ということをおわかりいただけたと思います。

上咽頭はつねに炎症を起こしている部位ですが、それは呼吸をしなければ生きていけない私たちの身体の構造上、避けて通れないことです。

ただ、この炎症が生理的な炎症状態であれば何も問題はないのですから、いかにしてこの炎症を病的な炎症にしないようにするか、そこが重要です。

つまり、上咽頭を生理的な炎症の状態に保ち続けることが、免疫力の高い、ストレスに強い、健康な体をつくることにつながるのです。

病的炎症になる原因としては、 ①上咽頭にウイルスや細菌が侵入し炎症を起こす、 ②寒さやストレスなどが原因で炎症を起こす、の二つがあります。

これらを予防できれば、健康な生活を送ることができるのです。

逆に言えば、慢性上咽頭炎の兆候が見えたときにすぐ対処をすれば、病状は大事に至らずに済むということで、上咽頭はまさに健康を測るリトマス試験紙なのです。

これから慢性上咽頭炎を予防するための、さまざまな方法を紹介していきます。

新しい生活習慣として取り入れていただければ、きっと健康で、快適な生活を送ることができるようになると思います。

何はなくとも禁煙する

喫煙の害については、いまさら繰り返す必要がないと思いますが、私の印象では、喫煙者のほとんどの方がひどい慢性上咽頭炎を患っています。

喫煙が有害であることには異論がないと思いますが、タバコの煙には 4000種類以上の化学物質が含まれていて、タバコを吸うことで、その煙が口腔内に充満し、上咽頭粘膜に刺激を与えるのです。

その結果、刺激を受けた繊毛上皮細胞が反応し、リンパ球を刺激し、慢性上咽頭炎の病的炎症が悪化します。実際に患者さんを治療した経験からも、愛煙家の慢性上咽頭炎は治りにくいことがわかっています。

とくに病巣感染と深い関係があることで知られる掌蹠膿疱症の患者さんの 8割が喫煙者といわれています。

IgA腎症の患者さんでも、扁摘パルスを行っても血尿が消えない人には喫煙者が多いですし、タバコがやめられない人は慢性上咽頭炎も治りません。

このほか、喫煙が発症率を上げることが確認されている病気には、下肢の血管がつまるバージャー病、歯周病、原因不明の特発性間質性肺炎、肺気腫、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病性腎症、慢性腎炎、肺がんなどがあります。

タバコを吸うとなぜ、血管の病気など、タバコの煙が直接的に悪さをするとは考えられない呼吸器系以外の病気も生じやすくなるのか、いろいろ原因はいわれていますが、本当のところはまだはっきりとは解明されていません。

こうした疾患の中には、慢性上咽頭炎が関与しているものが少なからずあると私は考えています。

以上のことからも、健康になりたいなら、まずは禁煙を心がけてみてください。

きれいな空気を吸う

上咽頭に炎症を起こさせないためには、できるだけきれいな空気を吸うようにすることが大切です。

かつての高度成長時代には「川崎ぜんそく」、「四日市ぜんそく」など、大気汚染による公害が喘息の原因になった時代もありましたが、汚染された空気を吸っていると上咽頭の炎症は悪化します。

実際、 2001年9月にアメリカで起きた同時多発テロ事件のあと、ニューヨーク・マンハッタン島南部では喘息の患者が急増しました。

過去にも、 1991年の湾岸戦争ではクウェートで 600カ所以上の油井が炎上、 1カ月後その地域では喘息などの呼吸器疾患の患者が急増しました。

また 1995年1月の阪神淡路大地震のあとには、一時的に同地域で、全身の血管が炎症を起こす全身性血管炎の患者が増加しました。

空気中に大量のほこりが舞ったり燃焼排ガスが発生したりといった大気汚染がアレルギー疾患に深く関係することは、すでによくわかっています。

であるならば、大気汚染が上咽頭炎を悪化させることも容易に想定できると思います。

また、大気汚染ばかりでなく、室内のほこり、ダニ、花粉などもアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患をひきおこします。先述のとおり、慢性上咽頭炎が悪化するとアレルギーを生じる反応が過敏になります。

したがって慢性上咽頭炎を悪化させないためには、空気の悪い場所には近寄らない、掃除の回数を増やしてほこりやダニなど、室内からアレルゲンを減らす、ダニの巣といわれるぬいぐるみを増やさない、布団の掃除も欠かさないなどをふだんから心がけることが大切です。

こうした毎日の小さな積み重ねが慢性上咽頭炎の悪化を防ぎ、結果として健康な生活を手に入れることができるのです。

鼻うがいを習慣づける

昔から風邪などの流行病の予防には、「鼻飲法」つまり「鼻うがい」が励行されていました。ふだんから冷たい水で鼻うがいをすると、上咽頭の鍛錬になって風邪がひきにくくなるといわれています。鼻から水を入れて口から出す、あるいはそのまま飲み込む。たったそれだけですが、確かに理論上は口からうがいするよりも、はるかに効果的なはずです。

なぜならつねに空気にさらされ、ほこりやウイルスや細菌などが付着する可能性の高い上咽頭を直接水で洗い流すのですから、口腔だけを洗ううがいより効果が高いことはおわかりいただけると思います。

しかし、鼻うがいの難点はその難しさです。

水道水を鼻から入れると頭にツンときて痛みすら感じますが、生理食塩水を使ってのうがいなら、さほど違和感はありませんから、それほど時間がかからずに慣れることができるでしょう。

スポイトを使って鼻から入れた生理食塩水がのどの奥にたれてくるぐらいの量の生理食塩水を鼻に入れる方法が、簡単で違和感もなく、おすすめできる方法です。

その際、頭を 60度くらい後ろに下げてやることがポイントです(「鼻うがい」のイラスト参照* 6)。

朝の洗顔や、夜の入浴のときなど、決まった時間に行い、毎日の習慣にするように心がけると良いでしょう。ただし鼻洗浄直後は鼻をかまないように。

首を冷やさない、首のこりをとる

風邪のひき始めに首を温めるとよいことはよく知られています。

長ネギを細かく刻み、手ぬぐいで包んで熱湯をかけ、人肌に冷めたら首に巻くというネギの温シップは、昔から行われている民間療法です。

上咽頭炎があると耳下部の筋肉が緊張することは先ほどお話ししましたが、首を温めるとこの筋肉の緊張、つまり〝こり〟がほぐれます。

そして、首を温めることで、慢性上咽頭炎のさまざまな症状が軽減します。

首を温めることの効果については、『首を温めると体調がよくなる』(松井孝嘉著/ 2010年アスコム刊)でも詳しく紹介されています。

松井氏によれば首の上半分を冷やすとすぐに風邪の症状が出て、さらに首全体を冷やすと首のこりが生じて、「首こり病」になるとしています。

松井氏の言う「首こり病」とは、 ①筋緊張性頭痛と一部の片頭痛、 ②めまい、 ③自律神経失調症、 ④パニック発作、 ⑤新型うつ、 ⑥頸椎捻挫、 ⑦更年期障害、 ⑧慢性疲労症候群、 ⑨ドライアイ、 ⑩多汗症、 ⑪機能性胃腸障害、 ⑫血圧不安定症などで、首を温めるとこうした症状が消えるといいます。

本書をここまで読んでくださった読者の方には、ピンと来るものがあると思います。

50年以上前と現在では病気の呼び名は変わっていますが、松井氏が指摘している首を冷やしたときに起こる症状は、かつて山崎氏、堀口氏らが報告した鼻咽腔炎(慢性上咽頭炎)により生じる症状そのものといえます。

松井氏は上咽頭炎については調べていないようですが、「首こり病」の根本的な原因に慢性上咽頭炎があることが少なくないのではないかと私は考えています。

また松井氏は、「首こり病」は天候が悪くなる前に症状が悪化し、気圧と密接な関係があると推察していますが、これも 50年も前に山崎氏が鼻咽頭症候が起こる誘因の一つとして、気象変化前を挙げていたことを思い出してください。

つまり松井氏が提唱する「首こり病」は、まさに慢性上咽頭炎そのものであり、首を温めるとさまざまな不快症状が治るという松井氏の主張は、首を温めれば慢性上咽頭炎が軽快して、その結果、さまざまな自覚症状が改善するという見方もできると思います。

首を温める方法としては、ドライヤーで温める、温湿布、ホットタオルなどさまざまな方法がありますので、ご自分に合った方法を利用されるといいでしょう。

さらに、襟の大きく合いた洋服は着ないようにする、首にスカーフを巻くなど、ふだんから首を冷やさない工夫をする必要があります。

冬場だけでなく、夏場はかえって冷房で冷えを増幅させやすくなりますので、ガーゼマフラーやタオルマフラーなどを常備するようにしましょう。

一方、首のこりが原因で起こるさまざまな疾患については、『「首の後ろを押す」と病気が治る』(松久正著/ 2010年マキノ出版刊)でも紹介されておりますが、この本を見ると松久氏が指導する首を押す場所は、慢性上咽頭炎の診断に首の触診を取り入れている杉田先生が押す場所と、ほぼ同じであることがわかります。

つまり慢性上咽頭炎があると首の筋肉が緊張し、こりが生じるので、この場所のこりを取れば上咽頭の炎症も軽減することが想像されます。

ならば首のこりがひどいときには、軽く首のマッサージをしてもいいでしょう。

ただし強くもみすぎると、かえって首を傷めることになりますので注意してください。

口呼吸をやめる(* 3)

慢性上咽頭炎を悪化させる大きな要因として、口呼吸があることも忘れてはなりません。

口呼吸とは、口を閉じて鼻で呼吸をする鼻呼吸ではなく、口を開けて口で呼吸をすることです。

口で呼吸することがなぜ問題なのかというと、口から入る吸気は鼻から入る吸気と異なって、加温と加湿がされないばかりでなく、鼻毛や繊毛による浄化作用も受けずに直接、中咽頭 →下咽頭 →気管へと向かうからです。

そしてその空気の一部はそのまま上咽頭にも入ります。

ミント系の飴をなめるとミントの爽気が鼻に抜けていきますが、これがまさに口腔から入った吸気の一部が上咽頭に抜けているということです。

ふつうに鼻から呼吸をしていても上咽頭はほこりやウイルスなどの影響を受けて炎症を悪化させやすい部位であるのに、口呼吸によって加温も加湿も浄化

も受けていない吸気が上咽頭に入ってくれば、より炎症を悪化させやすい環境をつくり出してしまうことになります。

口呼吸が健康によくないということは、最近では一般の人たちにもかなり知られるようになってきましたが、残念ながら医学界では現在でもまったくと言っていいほど重要視されておらず、一部の歯科医師によってのみ、その重要性が議論されています。

そのため、現状では医学系の学会が認定するような、しっかりとした診断基準はありません。

ここで一般に指摘されている口呼吸をする人の特徴を紹介します。

①ふだん気がつくと口が半開き状態である。

②下唇が厚くて(たらこ唇)、かさかさ乾燥している。

③下あごが小さく後退していて、歯並びが悪い。

④口を閉じたときに、舌の先が歯の裏についている(正常では舌の先は上あごにつく)。

⑤口の両側が下がっている(たるみのある表情)。

⑥口を閉じると下あごに梅干しのようなシワができる。

⑦朝起きるとのどがひりひりする。

⑧クチャクチャと音を立てて食事をする。

国際的に見ても日本人は口呼吸をする人の割合が多く、最近さらに増えているといわれています。

その原因として、戦後、急速に普及した食の欧米化、とくにファストフードに代表される軟らかいものを好む食習慣が挙げられます。

この食習慣の変化により、日本人の咀嚼回数は急激に減少し、その結果、あごや歯列弓が小さく脆弱化してしまいました。

また一部の育児書により、おしゃぶりを悪とする考え方が広がり、まったくおしゃぶりをしゃぶらせなかったり、早くやめさせたりするようになったことなども、口呼吸をする人が増えた原因ではないかと指摘されています。

加えて、私は日本語のもつ言葉の特徴も関連していると考えていますが、その理由については後述します。

また、 IgA腎症の患者さんは口呼吸の習慣をもっている方が圧倒的に多く、誤解を恐れずに言うと、私は「 IgA腎症は口呼吸病である」と考えています。

この考えを裏づける一つのエピソードをご紹介しましょう。

以前、長野県で太田歯科医院を開業されている口呼吸に詳しい太田宅哉先生(日本大学松戸歯学部・松本歯科大学講師)が東京・大久保病院の私の IgA腎症外来に見学に来られました。

せっかくの機会なので太田先生には専門的立場から口呼吸という視点で約 20人の IgA腎症患者さんを一緒に診ていただきました。

すると驚くべきことに一人を除いて、すべての患者が口呼吸の習慣であることが判明しました。

しっかりと鼻呼吸をしていると判断された唯一の患者さんは実は I g A腎症ではなく、 ANC A関連血管炎という別の疾患でした。

それまでも IgA腎症の患者さんには口呼吸の方が多いなと、日ごろ診療をしながら感じてはおりましたが、太田先生の診断結果は驚きでした。

IgA腎症の発症頻度は国により差異があり、日本を筆頭にアジアで多く、欧米ではフランス、イタリアに多く、概して英語圏には少ないという傾向が見られます。

この原因はどこにあるのでしょうか? 外国を旅するとわかりますが確かに英語圏、ドイツ語圏、ロシア語圏の人々は口呼吸の習慣の人が少ないと感じます。

では、口呼吸になりやすい日本人の言葉とはどのような特徴があるのでしょうか? 日本語と比較すると英語には p、 m、 v、 fといった口唇に力が入る言葉と、〝 θ〟( thing, thanksなど)、 〝ð〟( the, thenなど)といった舌先を歯に挟むような舌先が緊張する言葉が存在します。

日本語にも「ぱぴぷぺぽ」や「まみむめも」など少しは口唇に力が入る言葉がありますが、英語の p、 mの発音時に入れる力加減には比べようもありません。

舌の位置や口輪筋の運動は口呼吸と密接に関係しますが、発音時にそのような運動の少ない日本語は、口呼吸に陥りやすい言語ということができそうです。

口呼吸を直す体操

このようにさまざまな原因が重なって、現在の日本では口呼吸をする人が増えていると考えられますが、訓練をすれば口呼吸は克服できます。

この項では自分で簡単にできる、口呼吸矯正法を紹介しましょう。

まずは食事の際、よく嚙むことを習慣づけましょう。

回数としては一口 30回以上、嚙むことを歯科医師は推奨しています。

早食いをしないで、よく嚙んで食事をするコツは、「一口の塊を、念を入れて十分に嚙んで砕いて、口の中で撹拌して、唾液とよく混ぜ、ドロドロになるまで嚙んで、嚙んで、嚙みぬく」ことです。

そして、意識的に飲み込もうとはせず、喉が自然に開いて咀嚼された食物が自然に流れ込むのを待ちましょう。

決して水などで食物を流し込むようなことをしてはいけません。

次に口呼吸を直すための体操を三つ紹介します。

口呼吸の習慣のある人は、口輪筋の閉鎖力(口の周りの筋肉の口唇を閉じる力)の低下と、舌の先の位置が低く、舌根が下後方にあるという特徴があります。

最初に紹介する体操は、こうした問題を治すのに効果のある「かっ、い〜う〜べ〜」体操(次ページイラスト参照)です。

これは今井一彰先生(福岡市みらいクリニック院長)が考案した「あいうべ」体操をベースに、元開富士雄先生(横浜市青葉区げんかい歯科医院長、横浜市保育歯科医)が改良した体操です。

この体操を一日 30回行うようにしましょう。

すると口輪筋が柔らかくなり、舌の先の定位置が歯の後ろではなく上あごにつくようになり、舌位置が正常化し、自然に鼻で呼吸するようになります。

また下あごや頰のたるみも改善されるため、美容的にも喜ばれているようです。

二つ目の体操は、やはり元開先生が考案した運動で、舌を軽く上あごに吸い付け、舌を面として吸い付けたまま、口を開けて鼻で大きく息を吸い、口を閉じて鼻から息を吐きます(次ページイラスト参照)。

これを 30回繰り返します。

この方法なら、鼻呼吸で深呼吸をすることができます。

三つ目の体操は、前述した太田先生が考案した「ぶくぶく」体操で、口に少し水を含み、鼻の下を膨らませるようにして首を上にそらし、口の中で水をグチュグチュして、最後に口をしっかりと閉じた状態のままごっくんと飲み込みます(前ページイラスト参照)。

この運動により、口輪筋を柔らかくすると同時に、舌を下後方に引っ張っている筋肉(舌骨舌筋)を緩めます。

これは 1日 5回程度行います。

これらの運動を続けていると知らず知らずのうちに鼻の通りが良くなり、口を閉じたときに無意識の状態でも舌の先が歯の裏ではなく、ちゃんと上あごについているようになります。

ふだんから舌の先が上あごについているかを確認し、上あごに舌の先がつくように意識することが口呼吸を是正する第一歩です。

もし読者のみなさんが先ほど紹介した口呼吸をしている人の特徴に当てはまらなくても、朝起きたときにのどがひりひりする場合は、寝ているときに口呼吸をしている可能性が高いといえます。

そのような人は、口にテープを貼って寝てみてください。

朝起きたときにテープがはがれていれば、それは口呼吸をしている証拠となります。

口に貼るテープとしては、皮膚への刺激が少ない市販の紙絆創膏(優肌絆、サージカルテープなど)がおすすめです。

紹介した口呼吸を治す体操を続けながら、口テープをして寝ていれば、次第に「鼻の通りがよくなった」「喉の調子がよくなった」「風邪をひきにくくなった」といった実感をもつようになるはずです。

ストレスのたまらない生き方をする

上咽頭はストレスに弱い部位です。

その証拠に、強いストレスを受けると、とたんに炎症が悪化します。

また反対に、上咽頭炎があると自律神経のバランスが崩れて、さらにストレスに対して弱くなるという悪循環を起こします。

これは上咽頭が空気の通り道としてはストレスの中枢である脳の視床下部にもっとも近い場所に位置していることに関係しているかもしれません。

実際、強いストレスを受けて上咽頭炎が急激に悪化したために、体に不調をきたすということはよく起こっています。

私の周りで実際に起こった、ストレスが原因で上咽頭炎が悪化した事例を紹介しましょう。

私の友人 Hさんは会社からの帰宅途中、車が大破するほどの事故を起こしてしまいました。

エアバッグが作動して幸い Hさんは軽症で済んだのですが、事故から数日後、突然体に湿疹が出始めました。

抗アレルギー剤を服用すると多少症状は軽くなるのですが、完全に消えることはなく、慢性化していきました。

また、事故後、私は、 Hさんが以前より咳き込むようになったことに気がつきました。

そこで Hさんを説得して上咽頭に塩化亜鉛を塗布してみると、綿棒にはべったりと血液が付着し、 Hさんは悲鳴をあげるほどの痛みを感じました。

つまり上咽頭にひどい炎症があったのです。

そこで Hさんは、週 2回の塩化亜鉛塗布治療と 1日 2回、朝晩の塩化亜鉛点鼻治療を続けることにしました。

治療を続けるうちに、 Hさんの塗布時の痛みはどんどんなくなり、綿棒にも血液がつかなくなったのです。

およそ 3週間治療を継続しましたが、湿疹は完全に消え、抗アレルギー剤の服用も中止することができました。

これは、 Hさんを突然襲ったストレスが上咽頭炎を悪化させ、その結果、上咽頭炎が病巣炎症の原病巣となり二次疾患である慢性湿疹を発症させた典型的な事例です。

ここまでひどくはなくても、読者のみなさんの中にも強いストレスが加わったときに、咳が出やすくなったという経験をおもちの方は少なくないと思います。

咳が出やすくなるのも、上咽頭炎の悪化のサインの一つです。

現代社会を生きている私たちは、ストレスを避けて生きていくことはたいへん難しいことですが、ストレスが強すぎるな、と感じたときにはクヨクヨ悩まず、とにかく寝ることです。

そして、寝る前には必ず鼻うがいをし、首を温めましょう。

そうすればストレスによる上咽頭炎の悪化を食い止めることができるはずです。

ちなみに、上咽頭炎は精神的ストレスだけでなく、肉体疲労でも悪化します。

2010年の夏は全国で熱中症による死亡者が相次ぐほどの記録的猛暑となりましたが、ある猛暑日、友人のクリニックを手伝いに行ったところ、暑さによると見られる食欲不振、上腹部不快感、吐き気、下痢、頭痛を訴える患者さんが 5人来院しました。

そのうち 2人の患者さんは軽い発熱もあり、患者さんはみなさん、「暑さにやられた……」とげっそりとした表情で私の前に座っていました。

ふつうは急性胃腸炎と診断して胃腸薬の投与で済ませてしまうところでしたが、頭痛を訴える患者さんもいたので、もしやと思い、上咽頭の塩化亜鉛塗布を行いました。

すると、すべての患者さんに激しい上咽頭炎を認めたのです。

脱水症状のある患者さんには補液(輸液)も行い、体調が元に戻るのには数日を要しましたが、すべての患者さんの消化器症状が 1回の塩化亜鉛塗布治療のあとに明らかに改善しました。

まさに上咽頭は健康度を測るリトマス試験紙なのです。

免疫力を高める食事が上咽頭炎の悪化を予防する

慢性上咽頭炎を悪化させないためには、免疫力を落とさないようにすることが不可欠です。

食事と免疫力には深い関係がありますが、前述の山崎氏は 1960年代初頭に、すでに動物性タンパク質、脂肪の過剰摂取と野菜不足が慢性上咽頭炎を悪化させる原因であると言及しています。

こうした偏った食事は免疫力を低下させるというのです。

山崎氏は論文の中で、食パンやケーキなど、西洋食を常食とする人は鼻咽頭症候(慢性上咽頭炎)になりやすく、食事が肉類、油っぽいものに偏ってはいけないと警告しています。

つまり、身体を酸性化させずにアルカリ性化させる食品を摂取することが、免疫力を高めるためには重要であるということです。

以下に積極的に摂取したほうがいい食品、控えたほうがいい食品を列記します。

積極的に摂取したほうがいい食品・昆布、ワカメなどの海藻類・ニンニク、大豆、長ねぎ、玉ねぎ、にら、しょうが、白菜、にんじん、ブロッコリー、大根、キャベツ、トマトなどの野菜・イチゴ、柿、バナナ、みかん、グレープフルーツ、リンゴ(ただし、皮をむいたらすぐに食べる)などの果実・アジ、サバ、イワシなどの青背魚控えたほうがいい食品・肉類、乳製品の摂取は控えめにする・加工食品、砂糖、甘いお菓子 大切なことは、偏食をせず、野菜を中心に、いろいろな食品をまんべんなく食べることです。

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