敬語は人間関係の潤滑油 社会へ出ると、年齢や立場、価値観の違う人々と接する機会が多くなります。
それらの人々と円滑な人間関係を築いていくために、身につけたいマナーが敬語です。
商談の際はもちろん、上司や先輩などに対しても、敬語を使うのが基本です。
「敬語」と聞くと、苦手意識を感じたり、堅苦しく思う人も少なくないかもしれませんが、敬語はできなくても許されるというものではありません。
敬語が使えないと、相手に対して失礼になるだけでなく、社会人として失格です。
反対に、敬語を使いこなせるようになると、年齢や立場が上の人とでも、スムーズに会話を進めることができるようになります。
いわば、年齢や立場の違いをつなぐ役割を果たしてくれるのが敬語なのです。
敬語は、「習うよりも慣れろ」の精神で、使い慣れてしまえば、それほどむずかしいものではありません。
敬語は日本古来の美しい表現様式です。
基本からしっかりマスターして、品格ある言葉づかいを身につけましょう。
3つの敬語と使い分けのコツ 敬語には、大きく分けて3つの種類があります。
迷ったときには、主語が誰なのかを考えるとわかりやすくなります。
◎尊敬語 相手の立場を高める言葉づかい。
目上の人の動作や状態を示すときに、相手を敬う気持ちを表現できます。
主語 =相手 「 ~れる」「 ~られる」 →お客さまが「話される」 「お(ご) ~になる」 →お客さまが「お話になる」 いいかえる →お客さまが「おっしゃる」 ◎謙譲語 フラットな状態から自分を一段下げることによって、相手を高める言葉づかい。
謙虚な姿勢を表現することができます。
主語 =自分・身内 「お(ご) ~する」 →私が「お聞きする」 「お(ご) ~いたす」 →私が「お聞きいたす」 「 ~させていただく」 →私が「聞かせていただく」 いいかえる →私が「拝聴する」「伺う」 ◎ていねい語・美化語 相手と自分の立場が同じフラットな状態のときに使う言葉づかい。
美化語は、日常的なものを美しく上品に表現するときに使います。
主語 =相手、自分 「です」「ます」「ございます」 →私は ○ ○と申し「ます」 →こちらが最新の企画書で「ございます」 「お(ご)名詞」(相手のものを指す場合) →お名刺、ご意見、ご出席 「お(ご)形容詞」(相手に対して使う場合) →お若い、お美しい、ご立派 いいかえる →今日…「本日」、さっき…「先ほど」、すぐ…「さっそく」 美化語を使う「お(ご)名詞」 →お茶、お手洗い、ご飯 ※ → → → → の順にていねいになっていきます。
◎会話はビジネス応対言葉が基本 ビジネスシーンでは普段づかいの言葉を、よりビジネスの状況に合わせた表現や言葉に言い換えて使います。
これをビジネス応対言葉といいます。
日々の業務の中で意識して活用しましょう。
「そうですか」「どうしますか」などの表現は相手を受け入れる姿勢から発せられる言葉ですが、どことなくそっけなくて馴れ馴れしい印象です。
上司や取引先のお客さまに対しては「さようですか」「いかがいたしましょうか」にすると気持ちよく仕事をすすめることができます。
正しくていねいな言葉づかいで受け答えができると、相手からの信頼が深まります。
基本の応対言葉をおさえて、一目置かれる存在を目指しましょう。
間違いやすい表現一覧 相手を敬う気持ちから、つい難しく考えてしまい不自然な敬語になってしまうケースは珍しくありません。
間違いやすいパターンを理解し、相手に不快感を与えない言葉をマスターしましょう。
◎目上の方への敬語 ・目上の人が目下に向かって用いる言葉。
上司や社外の人には使いません。
× お世話様です。
○ お世話になっております。
・目上の人から目下に使用するねぎらいの言葉。
間違って上司に使うととても失礼なので要注意。
× ご苦労さまです。
○ お疲れ様です。
◎尊敬語と謙譲語の混乱ミス 尊敬語と謙譲語を使い間違えるパターン。
社外の人やお客さまには尊敬語を用います。
謙譲語を使うのは間違い。
お客さまのお名前を確認するときにおきやすいミスです。
× △ △ △様でございますね。
○ △ △ △様でいらっしゃいますね。
◎バイト敬語 コンビニエンスストアやファミリーレストランなどで働くアルバイトスタッフが発祥といわれる不自然な敬語表現です。
幼く未熟な印象を与えるのでビジネスの場での使用を控えましょう。
「お名前をいただく」 ×お名前さまを頂戴できますか。
×お名前をいただけますか。
○お名前をお教えいただけますか。
○お名前をお聞かせいただけますか。
名前はあげたり貰ったりするものではありません。
失礼な表現なので注意しましょう。
「~のほう」 ×会議室のほうはこちらです。
○こちらが会議室です。
「~ほう」は比較するものがあるときに使う言葉です。
比べるものがないときにつける必要はありません。
「よろしかった」 ×以上でよろしかったでしょうか。
○以上でよろしいでしょうか。
「~よろしかった」は過去形の表現。
現在進行中の会話では「 ~よろしいでしょうか」が正解です。
「~なります」 ×こちら、コーヒーになります。
○こちら、コーヒーでございます。
×ご注文の商品になります。
○ご注文の商品です。
「~になります」は「さなぎが蝶になる」など、変化を表すときに使う言葉です。
「~から」 × 1万円からお預かりします。
○ 1万円お預かります。
「~から」は必要のない言葉です。
頻繁に耳にする間違い言葉です。
◎二重敬語 敬語がふたつ以上重なるのが二重敬語。
ひとつの言葉にはひとつの敬語が原則です。
×拝見させていただきます。
○拝見します。
×部長がおっしゃられていました。
○部長がおっしゃっていました。
ワンランクアップアドバイス慎みたい学生言葉&バイト敬語「わたし的には……」「超」「マジ」「一応……」などの若い世代特有の言葉や、「てゆうかァ、この色って今、流行ってるじゃないですかァー」など、語尾をはねるいい方は、ビジネスシーンにはふさわしくありません。
また、「 ~円からお預かりします」「お会計のほう失礼します」「 ~するかたちになります」などのいいまわしは、間違った日本語の使い方です。
聞き苦しい言葉だといえるでしょう。
正しい言葉づかいは、品格を感じさせます。
言葉の間違いに気づき、普段から美しい言葉づかいを心がけることが大切です。
いいにくいことを伝えるテクニック ◎ソフトな印象を与えるクッション言葉 何かをお願いするときや、相手の要望にそえず、断らなければならないときなどには、本題の前にクッション言葉をはさみましょう。
クッション言葉とは、依頼や質問、拒絶を示す言葉に添えるもので、とげとげしさをやわらげ、相手に対する誠意を表す“言葉の座布団”です。
[お願いするとき] ◆恐れ入りますが ◆申し訳ございませんが ◆お手数をおかけいたしますが ◆さしつかえなければ など[尋ねるとき] ◆失礼ではございますが ◆恐れ入りますが など[相手の意に反するとき] ◆あいにくではございますが ◆せっかくではございますが ◆ご迷惑をおかけいたしますが ◆申し訳ございませんが など
◎決定は相手にゆだねる依頼法
相手に対して要望がある場合は、依頼をするというスタンスで声をかけるのがポイントです。
「お越しください」「お試しください」など、語尾が「 ~ください」という命令口調では相手に不快感を与えかねません。
「 ~くださいませ」という表現もていねいですが、相手に判断をゆだねる「 ~いただけますでしょうか」にすると、謙虚な姿勢で要望を伝えることができ、なごやかな雰囲気のままコミュニケーションを続けられます。
◎肯定法で前向きな会話 否定的な言い回しだとコミュニケーションが行き止まりになってしまいます。
できるだけ肯定的な表現を使って前向きな会話を心がけると相手にも納得してもらいやすくなります。
たとえば「できません」「わかりません」「知りません」などの否定的な表現は「いたしかねます」「わかりかねます」「存じかねます」などの肯定的な表現にいいかえることができます。
さらに代案をプラスして提案したり、その後の対応をお伝えすることで相手に安心していただけます。
[肯定的な表現の例] ◆申し訳ございませんが、いたしかねます。
○○○○○○○○(可能な範囲での提案)なら可能なのですが、いかがいたしましょうか? ◆申し訳ございませんが、私ではわかりかねます。
すぐにお調べしてまいりますので、少々お待ちいただけますでしょうか。
◎あとよし言葉でコミュニケーション 人はあとに聞いた言葉のほうが記憶に残るため、短所は先に、長所は後で伝える、「あとよし言葉」を上手に活用しましょう。
「こちらのプランですと効果は期待できますが、値段が高いです」 →「こちらのプランですと値段はお高いですが、効果は期待できます」ワンランクアップアドバイス言葉づかいにもミラーリング ビジネスシーンでは、敬語を使ったていねいな言葉づかいをすることは基本です。
しかし、気さくな相手に対して、かしこまった口調ばかりで接していては、距離感を感じさせてしまうこともあります。
相手に自社の商品やサービスを身近に感じていただくことが、商談を成功に導く鍵です。
表情のミラーリングと同様に、言葉づかいも、基本の敬語をふまえたうえで、相手の雰囲気にあわせて、フランクな方には、少しくだけた雰囲気を演出するのもテクニックです。
敬語のマナーのまとめ ●敬語は「習うより慣れろ」が基本。
定型の使い方を、マスターすれば怖くない ●相手が主語の場合は、尊敬語。
自分や身内が主語の場合は謙譲語 ●ビジネスシーンの応対言葉は多くない。
多用することで、自然に身につく ●クッション言葉や肯定的な表現で、印象をコントロール
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