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第 3章 争点別 再出発を見据える男の「離婚協議」裏テクニック

公正証書のサンプル

項 目・離婚届の提出について・養育費の支払い日について・養育費の期間について・養育費の振込口座について・養育費の増額について・生命保険の継続について・母と子の面会について・報告義務について・清算条項についてあとがき※本書の事例に出てくる人物名はすべて仮名ですデザイン

目次

親権と養育費父子家庭の養育費は毎月 3万円

まずは、この数字をご覧ください。

あなたはどんなふうに思われますか?「夫婦が離婚する場合、父子家庭のうち 16%は夫(父親)が子どもの親権を持ち、 17%は元妻との間で養育費の約束を交わしており 4%は今でも養育費を受け取っていて、養育費の平均は毎月 3万円」(平成 10年および平成 23年度、厚生労働省・全国母子世帯等調査結果報告より) まず、父親が親権を持つ場合( 16%)というのは、妻に次のような問題点があるケースです。

子どもを置いたまま実家に戻る女、「子か男(不倫相手)か、どっちかにしろ!」と言われて男を選ぶ女、子どもに手を上げて児童相談所に通報される女など。

このような妻は、子の母親として不適格者の烙印を押されたようなもの。

都合が悪くなると現実逃避をしたり、母性より女性のほうが勝っていたり、キレると何をしでかすかわからないような手強い相手です。

それでも、全体の 17%の男性が養育費の約束を取りつけることができたのだから、少し希望が持てますよね。

しかし、これらの統計の数字はしょせんトゲも毒もない中央値にすぎません。

平均というのは当事者ひとりひとりの積み重ねだからこそ、数字の裏に隠された個別の具体的な事情も知っておいたほうが理解はぐっと深まるはず。

そこで本章では、父子家庭の生の声を紹介しましょう。

離婚するまでの間に、どのような工夫をしたら、親権を勝ち取り、かつ養育費を確保できるのでしょうか?

事例 M不倫相手に「養育費」を交渉

「嫁に養育費を払わせることはできないものでしょうか? どうしても養育費が無理なら慰謝料でも……なんとかお力をいただきたいです」 そんなふうに必死の形相で私のところへ相談しに来たのは坂本陽太郎さん(熊谷市在住、 38歳)。

陽太郎さんは親権を勝ち取り、自分の手元で子どもを育てていくのだから正々堂々、妻へ養育費の話をすればよさそうですが、何か問題でもあるのでしょうか?「あんたより私の所得が低いんだから、養育費は支払わなくてもいいでしょ!」「子どもはいらないし、会わせてくれないのもしかたないから!」 妻はそんなふうに暴言の数々を吐き散らかしたようで、陽太郎さんも耳を疑わざるをえなかったようです。

なぜ、陽太郎さん夫婦が離婚するに至ったのか……過去の経緯を振り返ると、妻の言葉と態度はむしろ一致しており、さもありなんという感じです。

陽太郎さんの話の続きを聞いてみましょう。

「僕が『もう離婚するしかない』とあきらめたのは、何回注意しても嫁が不倫をやめようとしなかったからです。

最初、嫁はすべてを認めたので、僕は嫁に誓約書を書かせたのですが、結局、男とは別れていなかったのです」 陽太郎さんは苦虫を噛みつぶすように過去の屈辱を振り返ってくれました。

陽太郎さんが「男と続いていたんじゃないか?」と妻を問い詰めると、妻は意味不明な奇声をあげて何のためらいもなく、家を出て行ったそうです。

自分のお腹を痛めて産んだ子ども 3人を置いたままで。

「嫁は今までパートタイマーで働いていましたが、後日、正社員になったようです。

だから、どんなに少なくとも年収 240万円は稼いでいるはずです」 と陽太郎さんは言います。

これなら多少なりとも養育費を払えそうなものですが、妻は前述の暴言を連呼するばかり。

話し合いは難航を極めました。

結局、いくら妻と話をしても埒があかないので怒りの矛先を変えざるをえませんでした。

陽太郎さんは妻に対して「男と会わせてほしい」と頼み、妻の不倫相手と 2人きりで会う場を設定しました。

「養育費や慰謝料はこっちで払ってやるから、さっさと別れてもらえないか?」 直談判の場で男はそんなふうに切り出してきたそうです。

妻は最後の最後まで納得のいかない顔をしていたようですが、「子 1人あたり毎月 1万円を 20歳まで」という条件で合意に至ったのです。

坂本陽太郎さんのケース 1.夫の年収 340万円 2.夫の年齢 37歳 3.妻の年収 240万円 4.妻の年齢 37歳 5.子どもの年齢 5歳、 9歳、 13歳 6.離婚後の父子家庭の住まい 持ち家(年 87万円の住宅ローン。

築 2年) 7.子どもの想定進路 小学校(公立)、中学校(公立)、高校(公立または私立)、高校卒業後(専門学校)※決定した養育費 子 1人あたり毎月 1万円を 20歳までまとめ ◎離婚原因が「妻の不倫」の場合、離婚合意を先延ばしにして、再婚予定の相手側男性に交渉するのもひとつの手。

不倫男に「養育費や慰謝料はこっちで払うから別れてほしい」と言わせるよう交渉する。

事例 N 1度目の過ちを許すとき、「離婚誓約書」を作ろう

「先月、妻が実家に戻ってしまい、今は仕事と家事を両立するだけで精いっぱいなのですが、それだけではないんです。

妻が残していった借金の返済にも追われていて財布はカツカツ。

それでも話を聞いてもらえますか? 僕のほうで子どもを引き取りましたので、妻から養育費をもらいたいと考えているのですが、ご指導いただけますか?」 そんなふうに物腰の低い感じで内情を話してくれたのは江越優一さん(横浜市在住、 33歳)。

なぜ、優一さんは子どもだけでなく、借金まで妻に押しつけられてしまったのでしょうか?「最初の 8年間、妻は専業主婦でしたが、平日には友達と遊ぶことも多かったんです。

とにかく見栄っ張りなので友達に合わせるために家からお金を持ち出すのですが、遊びに行く回数はどんどん増えていって……。

日々の生活もあるので、僕の給料ではギリギリで全く余裕はなかったんです」 さかのぼること結婚 4年目以降、妻はお金が足りなくなると、借金までしていたといいます。

家族カードを使い、カードローンを利用していたようで、優一さんが気づいたときにはローン残高は 150万円に達していました。

こうして思わぬ形で妻の借金が発覚し、夫婦は離婚の危機を迎えたのですが、優一さんはどのように対処したのでしょうか? 「1度は別れようと思ったのですが、妻が『反省しているわ。

やり直したいの』と謝ってくれたので、そのときは誓約書を書かせたうえで許すことにしたんです」 このように条件つき(誓約書の署名)ながら、妻の過ちを許し、結婚生活を続けることにしたのですが、大事なのは誓約書の中身です。

具体的には〝再度、借金をしたら妻は離婚に応じる。

その際、子どもの親権者は夫に定める。

妻は夫に対して毎月 4万円の養育費、 1万円の慰謝料を支払う〟という内容です。

そして結婚から 8年目。

ようやく妻は悠々自適な専業主婦の身分を捨て、借金返済のため、働きに出ることになったそうですが、完全に自業自得でしょう。

誓約書の内容は妻にとって極めて厳しいもので、万が一、約束を破ったら、夫には縁を切られ、子どもからも引き離され、さらに毎月 5万円という妻の年収( 220万円)に照らすと決して安くはない金額を毎月、払い続けなければならないのですが、実際のところ、妻は本当に改心したのでしょうか? 残念ながら、舌の根も乾かないうちに元に戻ってしまい、 2年後には消費者金融で 100万円の借金をしていたことが明らかになったのです。

さすがの優一さんも堪忍袋の緒が切れました。

2度目の過ちを看過することはできず、とうとう離婚を決断。

口約束ではなく、わざわざ誓約書を書かせたにもかかわらず、平気で破るような相手を信用するのはとうてい無理なことです。

もちろん、妻は「仏の顔も三度まで」という感じで、平謝りで泣きつき、許しを乞うてきたのですが、優一さんは躊躇せずに一蹴したそうです。

離婚の条件ですが、優一さんの場合、途中で作成した誓約書が功を奏しました。

正直なところ、白紙の状態から条件を詰めようとしても、妻は親権を握ろうとするでしょうし、百歩譲って親権を優一さんに渡したとしても養育費を払おうとしないでしょう。

自分の借金で離婚せざるをえなくなったとしても、慰謝料すら渡そうとしないはずです。

このように離婚条件を一から改めて話し合うのは相当に骨が折れますが、実際には過去の誓約書があり、妻も自ら署名してしまった手前、「あのときとは気が変わったから」などと翻意することは難しく、最終的には誓約書に書いたのと同じ条件で離婚することとなったのです。

江越優一さんのケース 1.夫の年収 400万円 2.夫の年齢 33歳 3.妻の年収 220万円 4.妻の年齢 35歳 5.子どもの年齢 7歳 6.離婚後の父子家庭の住まい家賃 8万 2000円のアパート 7.子どもの想定進路 小学校(公立)、中学校(公立)、高校(公立)、高校卒業後(就職)※決定した養育費(慰謝料含む) 毎月 5万円を 18歳までまとめ ◎妻がトラブルを起こしたとき、すぐには離婚しないなら誓約書を作成し、「親権は夫、養育費は〇万円」と盛り込んでおくことが大事 ◎妻が離婚したくないうちは、誓約書の内容が妻にとって不利でも署名するしかない。

その心理状態のうちに条件を交渉しておく ◎再度トラブルが起こったとき、「あのときとは気が変わったから」と白紙撤回するのは難しい。

子どもとの面会事例 O別居中、毎月 18万円支援しても面会拒否!?

登場人物辻本卓也( 42歳・会社員・年収 750万円)辻本りょう( 40歳・専業主婦)辻本陸(長男・ 9歳)辻本梨花(長女・ 6歳)「もう限界です。

実家に帰らせてもらいます。

さようなら」 たった 1枚の置き手紙を残し、ある日突然、妻子が自宅から姿を消してしまった……そんな信じがたい事実を目の当たりにすれば激しく落ち込むのも無理はありませんが、本当の地獄はこれからです。

なぜなら、何の前触れもなく別居に踏み切るような妻が「誠実」に対応してくれるわけもなく、「子どもに会わせてほしい」と頼んでも無視されるに決まっているのだから。

このように別居から現在まで子どもの顔を 1度も見たことのない父親は決して珍しくありませんが、今回紹介する辻本卓也さんもそんな父親のひとりです。

別居後、妻への対応を誤ったせいで、子どもと直接会うことはもちろん、電話やメール、スカイプ、そしてプレゼントの郵送まで禁止されてしまい、途方に暮れていたところ、私のところへ相談しに来たのですが、一体、何があったのでしょうか?「これじゃ、まるで生き地獄ですよ!」 卓也さんは現在 42歳、建設会社の課長職で年収は 750万円くらい。

言ってみれば、どこにでもいる普通のサラリーマンです。

卓也さんの顔はまさに「鬼の形相」で、烈火のごとく私に迫ってきました。

顔の表面には脂汗がにじみ出ており、また両目の下には大きなクマができており、少し尋常ではない顔つきでした。

妻が出て行ったのは 7か月前。

卓也さんは「子どものために」という思いで妻に言われるがまま、毎月 18万円を妻の口座へ送金し続けてきたのですが、毎月の手取りが 32万円の卓也さんにとって半分以上を占めており、財布がスッカラカンなのも無理はありません。

「だいたい金をちゃんと払ったって、もう半年近く、息子や娘に会えていないんです! 働いても働いても妻に仕送りするばかりで、貯金なんてろくにできやしない。

何のために働いているのか……馬鹿馬鹿しいですよ! もう払うのをやめようかなと思っています!」 身銭を削って毎月、援助を続けているのだから、何かしら見返りがなければやっていられないでしょう。

せめて子どもの顔を見て安心したり、手をにぎって成長のあとを感じたり、相談に乗って励ましてあげたりすることができれば、お金以外の面で「自分が息子、娘の父親であること」を実感することができ、ここまで妻に対して敵意をむき出しにすることもなかったかもしれません。

「たった 8万で子どもが育つと思っているの! だったら、 1人はいらんわ! どっちか好きなほうを 1人、お前が引き取って! いらない子どもは月 1回、生存確認をさせろ!」 妻はメールの返事のなかで、そんなふうに暴言を吐いたようです。

すでに別居から 7か月が経過しており、妻のところで生活の基盤(住居、学校、地域など)を築いているのに、親の都合で振り回すようなまねをするのは、子どもたちのためにならないでしょう。

そもそも卓也さんは平日、朝から晩まで働いているので、子どもたちの面倒を見るのは時間的に不可能ですし、年収 750万円では家政婦を雇うことも金銭的に厳しい。

それなのに……。

「どうせ引き取れっこないのだからガタガタ言わず、言われたとおりに金を出せばいいのよ!」

卓也さんの目には妻が自分の足元を見ているように思えたので、完全に頭に血がのぼってしまい、思わず売り言葉に買い言葉で応戦してしまったのです。

残念ながら、卓也さんの失態は火に油を注いでしまったようで、それ以降、妻が子どもたちに取り次いでくれることは全くなくなりました。

「息子には電話もするな、メールもするな、手紙も送るな。

そして誕生日やクリスマスにプレゼントを郵送してくるな」そんなふうに妻は言いたい放題で、卓也さんは子どもたちに直接会うことがかなわないのはもちろん、電話やメール、スカイプ、そしてプレゼントの郵送まで禁止されてしまい……楽しみにしていた運動会や保護者参観への参加、そしてゴールデンウイークや夏休みの旅行も実現せず、途方に暮れていたのです。

このような場合、妻をどう説得し、いったん途切れてしまった子どもとの接点を取り戻し、関係を修復し、もう 1度「子の父親」として復活することができるでしょうか?

子どもとの面会を実現する6つの方法

1.洗脳される前に釘を刺すことが最優先 よほどの事情がない限り、別居したばかりの段階で子どもは父親(夫)のことを恨んでいません。

しかし、妻が子どもに対して夫の悪口や不満、愚痴などを吹き込むと、父親と母親のどちらが正しいのかを判断することができず、精神的に混乱することが多いです。

妻のせいで子どもが熱を出して寝込んだり、食事がのどを通らずにやせ細ったり、夜も眠れないから朝起きられず学校に通えなくなったり……。

人格形成や情緒不安定、そして学業に悪影響を及ぼすような事態を防がなければなりません。

そのため、突然、妻子に出て行かれても落ち込んでいる暇はなく、できるだけ早く、妻に対して「両親がいがみ合い、傷つけあい、罵り合うことを子どもは望んではいないのだから、お互いに子どもの前で誹謗中傷するのをやめよう」と一報を入れておくことが大事です。

子どもが妻から何回、何十回と父親(夫)への罵詈雑言を聞かされ、本当に毛嫌いされてからでは手遅れです。

なぜなら、いくら「子どもに会わせてほしい」と頼んでも、子どもは自分の意思で断るようになるからです。

2.養育費以外の貢献を買って出る 本来、父親の子どもに対する責任というのは、お金だけでなく、育児や躾、遊び相手など多岐にわたります。

別居先で妻は「父親不在の子育て」に苦戦しているので、夫のほうから「養育費以外の責任も果たさせてほしい。

そのためには直接、子どもと会うことが必要」と投げかけることで妻の心を開きましょう。

3.面会は「子どものため」だと発想を転換させる 法律上、面接交渉権(面会する権利)が認められているのですが、これは父から子だけでなく、子から父への面会も含まれています。

だから夫のほうから「子どもたちとの面会を求めても、頑なに拒もうとするのは、子どもの権利をないがしろにするのと同じではないか?」と問いただしましょう。

4.夫ではなく「子の父親」として考えるように伝える 別居した夫婦が「もう顔も見たくない」のはしかたがありませんが、一方で親子はどうでしょうか? 子どもたちの唯一の父親であり、血がつながった肉親であり、代えのきかない存在ですが、そのことは出産からずっと、そして別居後も何ら変わることはなく、親子関係は永遠に続いていくのです。

だからこそ、父親が子どもたちに対してどんなふうに接して、どのように関わって、どんな影響を与えていくのか、子どもたちの人生において極めて大事だということを踏まえたうえで「自分目線ではなく『子ども目線』で、そして相手が夫ではなく『子の父親』と思って考えてほしい」と伝えましょう。

5.裁判所で発行した書面をもとに妻に面会を求める 妻が子どもを連れていくという形で夫婦が別居状態に発展した場合、別居する前のタイミングで具体的な面会の条件……例えば、具体的な回数、時間、場所、面会方法(食事、買い物、映画を見るなど)送迎方法などを決め、書面化することは難しいでしょう。

そして別居後、夫婦間の話し合いで面会の可否について折り合いがつかなかったら、家庭裁判所へ面接交渉の調停を申し立てるという手もあります。

示談ではなく調停に発展した場合、面会の条件を決めるだけでなく、合意内容を裁判所が書面化してくれるので、裁判所が発行した書面(調停調書)をもとに妻に対して面会を取り次ぐよう、強く言うことができるようになります。

6.裁判所で決定した面会条件に協力しない場合は、罰金の対象なので「面会させる +罰金なし」「面会させない +罰金あり」という二択を提示 平成 25年3月より制度が変わり(平成 25年3月 28日最高裁判決)裁判所の決定に違反すると間接強制(裁判所からの罰金命令)の対象になったので、裁判所の決定に反して妻が面会を断るたびに毎回、罰金を支払わなければならない可能性もあるのです。

「子どもたちに会わせないと罰金を払わせるぞ!」という切り口は少し過激すぎるかもしれませんが、ここまで言わないと、まともに話を聞こうとしない妻にも相応の非はあるはずです。

特に妻が金に汚いタイプで興味関心はお金だけという場合は効果的でしょう。

子どものことを「金づる」と思っている節があり、夫と子どもの面会を取り次ぐことで養育費

の増額が期待できるのならともかく、面会させてもさせなくても養育費が変わらないのなら「面会させないほう」を選ぶのは至極当然です。

逆にいえば、「面会させる +罰金なし」「面会させない +罰金あり」という二択を提示すれば、妻は「罰金あり、なし」の部分しか目に入らないので、お金の損得勘定だけで「面会させる方」を選びます。

「持ち家」の財産分与事例 P住宅ローン付きの不動産は離婚の足かせ

登場人物夫:浜口健夫( 36歳・会社員・年収 650万円)妻:浜口紀子( 34歳・契約社員・年収 300万円)子:浜口峻弥(長男 4歳)子:浜口紀香(長女 2歳) カップルが同棲の末に結婚し、子どもを授かり、第 2子、第 3子と家族が増えたり、子どもたちが成長して大きくなり、自分の部屋を欲したりするタイミングでマイホームを購入し、賃貸アパートから持ち家へ移り住む……一見すると心温まる微笑ましい光景ですが、「住宅ローン付きの不動産」は夫婦が離婚するうえで重荷にしかなりません。

例えば、浜口健夫さんのケース。

妻が育児育児で精神的に参ってしまい、夫婦ゲンカが絶えず、「しばらく、あんたの顔は見たくない」と言い出したため、夫は一時的に実家へ避難したのですが……。

ほとぼりが冷めたころに自宅へ戻ろうとすると、すでに鍵を交換されており、妻からは「もう関わらないでほしい!」と一蹴され、最終的に健夫さんは離婚を決断せざるをえませんでした。

そこで悩みの種となったのが 8年前に 3800万円で購入したマイホーム。

不動産屋さんの無料査定では 3000万円しか値がつかず、 800万円も住宅ローンが残るのですが、健夫さんは 800万円もの大金を持ち合わせておらず、また 800万円も融資してくれる金融機関は見当たりません。

自宅を賃貸に出そうにも、賃料は 10万円しか期待できず、住宅ローンの返済額は毎月 12万円なので、毎月 2万円の赤字を垂れ流すことになります。

とはいえ妻が家族カードを使って毎月 10万円を健夫さんの口座から引き出しており、さらに住宅ローンも引き落とされるので、手取り 25万円の健夫さんの手元に残るのはわずかに 3万円。

もし悪妻と離婚できたとしても養育費 +住宅ローンという二重の負担を強いられるようでは今と変わらない。

景気よくマイホームを購入し、一国一城の主になったせいで、離婚を切り出すことができないという堂々巡りに陥ってしまったのです。

持ち家を売却するのは賢い選択ではない!?

婚姻期間中に夫婦が築いた財産を離婚時にそれぞれ分け合うことを「財産分与」と言います。

1章、 2章でご説明してきたとおり、ただでさえ複雑なのに「住宅ローン」が残っている場合は余計に厄介です。

事例 Pのように、売却しようにも住宅ローン >売却代金になる場合は大変です。

次に紹介するのは、持ち家には夫も妻も住まず、第三者に売却し、お金を手に入れるパターンです。

例えば、持ち家の評価額は 2000万円、住宅ローンの残高は 3000万円とします。

仮に評価額どおりの金額で買い手がついたとしても、 1000万円のマイナスが出ます。

持ち家を売却したとしても、夫婦が 2000万円をもらえるわけではありません。

売却代金は優先的に住宅ローンに充てられるため、夫婦の手元にお金は残りません。

なぜなら、抵当権を抹消しないと売却できないからです。

実際には、売却するにあたり、住宅ローン以外にも諸費用(不動産業者への仲介料、抵当権抹消費用、引っ越し費用など)がかかります。

そのため、マイナスの金額は「売却代金-住宅ローンの残額」ではすまないのです。

そもそもマイナス分をどうにかしないと、売却すらできません。

売却損が出るけれど、それでも売却したいのなら選択肢は2つ。

1.マイナス分と同額の現金を用意する 2.マイナス分と同額の借り入れをする 1.マイナス分と同額の現金を用意する →そもそも不可能

まず 1ですが、夫婦が 1000万円を現金で持っていれば話は早いです。

しかし、今は夫婦がこれから離婚しようとする場面です。

仮に 1000万円の貯金があったとしても、「財産分与」として夫婦で折半することになります。

また夫に原因があって離婚するのなら、「慰謝料」としてまとまった金額(例えば 500万円)を支払うことも考えられます。

そこに養育費の支払いなども重なれば、夫の財布はスッカラカンです。

そもそも離婚しないのなら話は別ですが、今回は「離婚するから、持ち家を売却」するのです。

ただでさえ、離婚するにはお金がかかるのに、さらに 1000万円以上の現金を用意できるでしょうか? 離婚と同じタイミングで持ち家を売却する場合、よほどの事情がない限り、マイナスを補塡するのは、無理な話です。

2.マイナス分と同額の借り入れをする →すぐに破綻 次に 2ですが、これは夫が 1000万円の借金をしてマイナスを穴埋めし、売却する方法です。

借り入れ先は住宅ローンを組んでいる銀行や、それ以外の銀行。

どちらにしても高い金利を強いられます。

なぜでしょうか? それは担保がないからです。

担保とは、万が一、住宅ローンが返済されない場合、持ち家を売却し、その代金を融資額に充てる制度のこと。

銀行側は担保があれば「とりっぱぐれる」リスクが低い。

だから住宅ローンの場合、持ち家を担保とすることで、 1 ~ 2%という低金利で融資をしてくれるというわけ。

一方、このケースではどうでしょう? 持ち家を売却してしまえば、手元にはもう担保はない。

担保がなければ、夫がローンを返済できない場合、そのまま不良債権化する可能性が高いです。

基本的に信用と金利は反比例します。

夫は銀行に信用されていないから、高い金利を設定され、「元本 +高い金利」を毎月返済しなければなりません。

住宅ローンの金利は 1%、返済期間は最長 35年ですが、フリーローン(無担保で使途も自由)の金利は 7%、返済期間は 10年という商品が多いです。

自宅の売却損(売却代金-住宅ローンおよび諸費用) 1000万円をフリーローンで工面した場合、毎月の返済額は約 12万円です。

合計の返済額は約 1400万円、金利だけでも 400万円に達するので、いかにフリーローンの金利が高いかわかるでしょう。

さらに夫には、「売却損の借金」以外にも養育費の支払いが残っています。

まずは「借り入れの返済 +養育費」の合計がいくらになるのか、計算してみること。

そのうえで本当に支払うことができるのかどうか、よく考えてみてください。

夫の収入が自宅購入時と比べ、大幅に増えていない限り、この「二重支払い」を続けることは難しいでしょう。

では、売却損が発生する物件の場合、どうしたらいいのでしょうか? 離婚後、妻が親権を持ち、夫が妻に対して養育費を支払うパターンを紹介します。

夫が持ち家に住むと「ローン +養育費 +維持費」の三重苦

離婚した夫婦が一緒に暮らすことはありえません。

だから、夫が持ち家に住めば、妻と子どもは自然と持ち家から出て行くことになります。

2人の転居先は例えば、実家やアパートなどが考えられますが、離れて暮らす以上、夫が子どもに対して養育費を現金で支払うのはしかたがありません。

一方で、夫の生活環境はどうでしょうか? 夫は離婚しても引き続き、住宅ローンの債務者なのでローンの返済義務を負っています。

しかも持ち家を維持するために、住宅ローンだけでなく固定資産税、リフォーム費用(マンションの場合は修繕積立金、管理費、駐車場代)といった諸費用もかかります。

このように考えると夫の毎月の負担は「住宅ローン +養育費 +維持費」。

夫は離婚後、この三重苦を乗り越えることができるでしょうか? その可否は自宅を購入したときまで遡って考えるとわかりやすいです。

夫は住宅ローンを組むとき、銀行で審査を受けますが、「返済比率」という審査基準があります。

返済比率とは「夫婦の年収 ÷住宅ローンの年間返済額 × 100」という計算式から出てきた数字。

返済比率が 20 ~ 30%の範囲におさまると基準をクリアでき、審査に通る可能性が高まります。

ここで問題なのは、銀行や不動産業者は、返済比率が 5 ~ 10%でおさまるような物件をすすめてこないということ。

銀行の思惑は「できるだけ融資額を増やしたい」、業者の思惑は「できるだけ高い物件を売りつけて、手数料を稼ぎたい」。

両者の思惑が一致すると、夫婦は返済比率ギリギリ( 20 ~ 30%)になるような大きな物件を買わされることになります。

このように住宅ローンだけで、すでに収入の 3割を占めている状態なのに、残りの 7割で「養育費 +維持費」を負担できるでしょうか? もし、夫の収入が自宅購入時に比べ、大幅に増えていれば、それも可能かもしれません。

例えば、自宅購入時の年収が 500万円、現在の年収が 1000万円、住宅ローンの年間返済額が 200万円だとすれば、夫にはまだ 800万円の余裕があります。

800万円あれば、子どもの養育費を支払いながら、持ち家を維持することは難しくはないでしょう。

しかし、今の経済情勢で会社員の収入が増えることはあまり期待できません。

夫の収入が自宅購入時とさほど変わらないのに、夫が持ち家に住み続けた場合どうなるでしょうか? 残り 300万円で、子どもの養育費を支払いながら、持ち家を維持することは相当に難しく、すぐに住宅ローンや養育費、税金の支払いに窮するでしょう。

妻子を持ち家に住まわせて「住宅ローンと養育費」を相殺すべし

妻が子どもの親権を持ち、離婚後、母子が自宅に住む場合のシミュレーションをしましょう。

養育費 =住宅ローン、養育費 <住宅ローン、養育費 >住宅ローンのどれに当てはまるでしょうか? まず住宅ローンは基本的には固定ですが、養育費はケースバイケースなので、妻が親権を持ち、夫が妻へ養育費を支払う場合、いくら必要なのかを前もって算出する必要があります。

家庭裁判所が公表している養育費算定表を参考にしてください。

なお、ここで出てきた金額はあくまで「仮の養育費」であり、この金額を夫が本当に支払うわけではありません。

養育費と住宅ローンを比べ、どちらが多いのか、どちらが少ないのか、を知るための目安です。

今回の設定では養育費を月 8万円とします。

そのうえで住宅ローンが月 8万円( ①養育費 =住宅ローン)、月 9万円( ②養育費 <住宅ローン)、月 6万円( ③養育費 >住宅ローン)のケースを見ていきましょう。

① 養育費 =住宅ローン これがいちばんシンプルなケースです。

夫は今後も住宅ローンの全額を返済していきます。

そのかわりに子どもの養育費を現金で振り込む必要はありません。

ここで大事なのは、妻の収入です。

確かに妻には家賃の負担はゼロだが、日々、暮らしていくにはそれ以外にも食費や電気代、交通費などの生活費もかかります。

妻は家賃以外の支出を自分の収入だけでまかなわなければなりません。

もし、妻の経済力が極端に低い場合は、話し合いが必要になるでしょう。

② 養育費 <住宅ローン このパターンでも夫が住宅ローンを返済するのは ①と同じですが、 ①との違いは全額ではないということです。

夫が負担するのは、先ほどの計算で出てきた養育費に相当する金額だけ(今回の場合は月 8万円)です。

しかし、住宅ローンの返済額( 9万円)に満たないので、「住宅ローン-養育費」(月 1万円)を妻に負担してもらいます。

具体的には住宅ローンの引き落とし口座は夫の名義なので、妻が毎月、その口座に不足分を入金するという形です。

なお、ここでも ①と同じ問題は発生します。

それは妻の収入で「生活費のすべて +住宅ローンの一部」を支払えるかどうかです。

もし、「住宅ローン-養育費」の金額があまりにも大きな数字になってしまったら失礼な言い方ですが、今住んでいる家は夫にとって「身分不相応」だと言わざるをえません。

このような計算になるのは、おそらく自宅購入時と比べ、夫の収入が大幅に減っていることが原因と考えられます。

そもそも今現在でさえ、住宅ローンの返済に苦しんでいるはず。

それなのに今、無理に離婚したら、どうなるでしょうか?夫婦どちらもすぐにお金で行き詰まるのは目に見えています。

③ 養育費 >住宅ローン 夫が住宅ローンの全額を返済するというのは ①と変わりません。

ただ、それだけでは上記で計算した養育費には足りません。

そのため、「養育費-住宅ローン」の差額(月 2万円)を夫が負担するのはしかたがありません。

具体的には夫が毎月、妻か子どもの口座に現金でその不足分を振り込むという形です。

頭金(夫の親からの贈与)も忘れず回収しよう

財産分与の原則は、婚姻期間中に築いた財産を合計し、それを夫婦で折半すること。

どちらの名義であるかは関係ありません。

しかし、独身時代の財産(貯金)、親からの贈与、相続分は対象外。

例えば、婚姻期間中、夫の親が夫婦に 200万円を贈与し、夫婦が離婚する場合、夫は共有財産のなかから優先的に 200万円をもらうことができますが、それは不動産の場合も例外ではありません。

もし頭金を入れずに不動産を購入した場合、基本的に返済による住宅ローンの残債減少分より、劣化に伴う不動産の価値減少分のほうが大きいので、早々にマイナス(売却代金-住宅ローン残債)の状態に陥ります。

逆にいえばプラスの状態を維持することができるのは頭金を入れているから……つまり、夫の親が贈与してくれた 200万円のおかげなのです。

だから、離婚するにあたり不動産を売却する場合、夫は売却益のなかから優先的に 200万円を受け取るのは当然ですし、妻が売却を嫌がり離婚後も不動産に住み続けることを望むのなら、自力で 200万円を工面し、夫に渡す必要があります。

ただし、夫が不動産の持ち分(今回の場合は全体の 95%)を所有していますが、夫が自宅に住み続けないのなら、持ち分を持っていても意味がないので、頭金の回収を引き換えに持ち分を妻に譲渡することが条件になるでしょう。

もちろん、夫の持ち分を妻に買い取らせる、例えば土地 +建物の評価額が 3000万円なら、夫の持ち分は全体の 95%なので 2850万円を妻に払わせるかわりに、土地 +建物の持ち分を妻へ譲渡(夫 95:妻 5 夫 0:妻 100)するという手もありますが、あまり現実的な数字ではありません。

自宅の持ち分については、結婚以降で妻の貢献がゼロではありませんが、一方で頭金(独身時代の貯金や両親からの贈与)については、妻は何も貢献していない

ので持ち分の買い取りより頭金の返還のほうが妻の理解を得られやすいです。

「生命保険」を活用しよう事例 Q自分の死後もわが子を支えるために

「どうせ嫁と離婚するんだし、保険は解約してもいいですよね? 入ったままじゃ、なんだか怖くて……。

嫁に毒を盛られて殺されたらどうしようって!」 そんなふうに恐る恐る話すのは安井裕也さん( 31歳)。

3か月にわたって離婚の話し合いを続けた結果、ようやく妻と離婚し、 3歳の息子さんを裕也さんが引き取ることに決まったのですが、独身時代から加入している生命保険のことが気になるといいます。

妻との結婚をきっかけに死亡保障の受取人を実家の父から妻へ変更したそうですが、妻の反対を押し切って離婚に踏み切ったため、逆恨みで「保険金殺人」を犯されそうで怖いと、本気で恐れていたのです。

結婚期間中、保険をかけ続けたのは一家の大黒柱として、万が一のときに家族が路頭に迷わないようにするため。

夫婦が離婚すれば、もはや妻は他人なので、これからどうなっても知ったことではない。

少なくとも「妻のため」に保険に入り続ける必要はなさそうです。

相談を受け、私はまず裕也さんに実家の家族構成を尋ねました。

父と母はすでに 70歳目前。

姉は結婚して夫との間に 2人の子どもを授かり、子育てに奮闘中とのこと。

では、仮に息子さんが成人する前に裕也さんが亡くなった場合、どなたが引き取ることになるのでしょうか。

息子さんを監護養育する人のことを法律上「後見人」といい、裁判所が決定します。

実家の両親は高齢なので体力的に難しく、また姉は自分の家庭で精いっぱいで、経済的に難しそう。

とすれば、元妻が息子さんにとって実の母なので、後見人に指定される可能性が高いでしょう。

裕也さんが他の財産(例えば、死亡退職金や遺族年金、そして預金など)を残せば息子さんが相続するので、これらの遺産を息子さんの生活費、養育費、そして学費などに充てることができるかもしれません。

しかし、 31歳の裕也さんの遺産はたかが知れています。

もちろん、故人が養育費を払うことは不可能。

妻が女手ひとつで息子さんを育てていくのが金銭的に難しくなれば、習い事や塾をやめさせられる、合格した志望校に進学できないなど、金銭的な理由で息子さんに不憫な思いを強いることにもなりかねません。

しかし、息子さんにかかる費用と同じくらいの保険金があれば、このような事態は避けられるでしょう。

これらのことを踏まえたうえで、私は裕也さんにこのようなアドバイスをしたのです。

「もしもに備え、受取人を息子さんに変更し、そのまま継続するという手もあるのではないでしょうか? もちろん、妻ではなく、息子さんのためにです」

保険の財産分与をあえてしない

財産分与とは、その名のとおり、「財産」を「分与」することで婚姻期間中に加入した保険も例外ではありません。

ただし、保険という財産を「分与」するには、いったん解約して現金化する必要があります( =解約返戻金) 財産分与の原則は「夫婦で折半」なので、夫が妻に対して返戻金の 2分の 1を渡せば単純明快ですがそもそも保険とは何でしょうか?「万が一の場合の保障」です。

夫婦が離婚したら赤の他人ですが、子どもにとって父親、母親であることに変わりはないのでどちらかに万が一のことがあった場合、やはり「保障」は必要です。

このように目先のお金より先々の保障のほうが大事だと考えるのなら、あえて財産分与(解約)せず、そのまま継続するという手もあるでしょう。

受取人の変更を忘れるな

子どもが独立する前に亡くなる可能性があるのは夫だけでなく妻も同じです。

夫が妻から子どもの養育費を受け取っている場合、妻の死亡リスク(養育費の停止)を未然に回避するために、生命保険を活用しましょう。

いくら離婚時に養育費の約束をしても妻が亡くなると、以後、養育費はゼロとなり、困ります。

すでに生命保険に加入している場合は、非課税枠を適用するため、離婚する際に受取人を夫から子どもに変更しましょう。

「契約者 →夫、被保険者 →妻、受取人 →夫」というのが一般的な保険内容です。

離婚しなければ、受取人が夫でも非課税枠が適用されますが、離婚後は対象外に。

具体的にいうと生命保険の非課税枠は「 500万円 ×法定相続人」です。

非課税枠なしの場合、相続財産に保険金が組み込まれますが、「基礎控除 3000万円 +法定相続人 × 600万円」を超えると相続税が発生します。

しかし、受取人を夫から子どもに変更すれば、非課税枠が復活するのです。

なお、「契約者 →非親権者の妻、被保険者 →非親権者の妻、受取人 →別居している子ども」でも大丈夫です。

ただし「共済」の場合は、変更すらできないことが多いので注意が必要です。

例えば、全労済、 JA共済、生協共済などですが、受取人は「法定相続人の順」と決まっており、変更できません。

しかも、ただの「法定相続人の順」ではなく、「別居中の子は除く」と書かれているので、どうやっても保険金が子どもの口座に入金されることはありません。

そのため、離婚時に新規加入を検討しているのなら「共済」はやめたほうが賢明でしょう。

逓減型の保険に見直しを

次に死亡保障額と、養育費の合計を同額にするために、保険内容を見直し、保険料を軽減しましょう。

具体的には死亡保障額を「養育費の合計-死亡退職金 +遺族年金 +相続財産」に設定します。

「養育費の合計」とはまだ受け取っていない将来、発生する養育費のことです。

しかし、離婚から期間が経過すればするほど、「これから発生する養育費の合計」は減っていきます。

例えば、「毎月 5万円 × 18年 = 1080万」という約束を交わした場合、離婚時、養育費の合計は 1080万円ですが、離婚から 5年後は 780万円、 10年後は 480万円と減っていき、養育費残額の減少に伴って必要な死亡保障額も減っていきます。

年々、死亡保障が減っていく保険を「逓減型」といい、どこの保険会社でも取り扱っています。

逓減型は保険料も年々減っていくので「全期間、同額」の場合に比べ、費用面でも安くすみます。

なお、契約者が夫ではなく妻になっている場合、妻に無断で解約される、保険料を滞納される、保険料を担保に借金をされるというリスクに加え「受取人を変更される」というリスクも内在するので、これらのことを禁止する一文を公正証書に盛り込んだほうがいいでしょう( 257ページ参照)。

「年金」「退職金」の財産分与事例 R離婚後の嫁の「生活不安」をどう払拭するか

「正直、どうしようか迷っています。

このまま我慢して最後まで妻と一緒にいるか……」 そう苦しい胸の内を打ち明けてくれたのは高井良介さん( 57歳)。

3年後、会社の定年退職を控えており、「定年後」の人生に迷っていました。

良介さんは、妻( 58歳、パート)の悪口や不満、愚痴などをこぼし、「性格の不一致」で離婚したいと言います。

子どもたちが巣立つまでは……と我慢をして、離婚を先延ばしにしてきたけれど、もう若くはない。

すでに人生も折り返しを過ぎており、残りの人生はせいぜい 20 ~ 30年。

限られた時間だからこそ「誰と」過ごすのかを慎重に検討しなければなりません。

長年連れ添った妻と熟年離婚する場合、どのように説得すればよいのでしょうか? 30年近い結婚生活のなかで、常に妻は夫の扶養に入っていたので、離婚したからといって妻が夫の協力なく自力で生活していくことは難しいでしょう。

良介さんが 60歳時に受け取ることができる退職金や企業年金、 65歳時の厚生年金、慰謝料や(退職金、年金以外の)財産分与、そして生活費の援助などを財源に妻の抱える「生活の不安」を払拭しなければ、離婚の同意を得るのは難しいと言えます。

良介さんは定年まであと 3年。

「今のうちにいろいろ考えておきたい」と言います。

このように第二の人生を機に「離婚」を検討する男性には特に、年金と退職金について知っておいてほしいことがあります。

年金分与の条件と引き換えに「なる早離婚」

まず年金の話をしましょう。

年金分与で勘違いしやすいポイントは4つあります。

1つ目はすべての年金が分割の対象だという誤解です。

年金分割とは婚姻期間中に納めた厚生年金、共済年金の最大 2分の 1を分割する制度。

按分割合は自由に決めることができます。

ほとんどの場合、年金は夫 >妻なので夫が納めた年金を妻に分割するという流れです。

しかし、年金分割の対象は厚生年金と共済年金のみ。

国民年金、企業年金、年金保険は対象外なので注意が必要です。

なお、独身時代の年金は分割の対象外ですが、一方で別居期間中に納めた年金は対象に含まれます。

年金分割は熟年離婚の場合しか利用できないというわけではなく、婚姻期間の長短に関係なく利用可能です。

もちろん、年金の納付期間や夫婦の婚姻期間が短ければ、妻にとってメリットは少ないですが、夫婦の財産がほとんど残っていない場合は「年金を分割しないよりマシ」。

だから、妻が「財産をもらえないなら離婚しない」と言い張っているケースでは、夫のほうから年金分与のことを切り出したほうが、話が早くまとまることもあります。

年金分割手続きの方法

2つ目の誤解は、「年金を分割することで 65歳からもらう年金が夫 <妻になってはいけない」というルールがあることです。

夫婦が共働きの場合に起こる現象で、このルールに抵触していないことを証明する必要があります。

具体的には厚生年金の場合は年金事務所で、共済年金の場合は共済組合で「年金分割のための情報提供通知書」という書類を発行してもらえば、この書類におおよその試算が書かれています。

年金事務所(共済組合)に申請書と戸籍謄本を提出すれば、 2〜 3週間程度で無料発行してくれます。

さらに夫婦のどちらかが 50歳以上の場合、「仮に今すぐに離婚し、年金を受給した場合、夫の年金がいくら減り、妻の年金がいくら増えるのか」という数字を算出してくれます。

もちろん、今後も年金保険料を納めていけば、年金額は変動していくので、あくまで仮の数字です。

【年金分割手続きの流れ(協議離婚の場合)】 1.年金分割のための情報提供通知書を発行してもらう 2.老後の生活設計を試算する、夫婦間で話し合いをする 3.合意内容を公正証書もしくは私署証書に残す 4.離婚届を提出 5.年金事務所(共済組合)に分割請求書と、公正証書(私署証書)、離婚後の戸籍謄本を提出する 3つ目の誤解は、年金を分割すれば妻の生活が成り立つという楽観です。

例えば、離婚しない場合、夫の収入 +夫の年金 +妻の収入 +妻の年金があり、今までの生活水準を維持することができます。

一方、離婚する場合、生活費や家賃の負担額は離婚しない場合に比べて割高になりますが、夫は自分の収入 +自分の年金 ÷ 2で、妻は妻の収入 +妻の年金 +夫の年金の 2分の 1だけで何とかしなければなりません。

どちらも離婚前に比べ生活水準が落ちるのは避けられません。

しかし、熟年離婚の場合、すでに夫婦が別居していることが多く、別居 10年、 20年というケースは珍しくありません。

別居中、生活が成り立っているのなら離婚後もそこまで心配する必要はないでしょう。

また同居している場合で妻に対して離婚前の生活水準を離婚後も提供できなくても、ダメもとで離婚を切り出してみるという手もあります。

なぜなら、離婚の可否はお金の問題だけではなく、「気持ちの問題」も大きいからです。

妻がすでに我慢の限界でこれ以上、同居を続けることが難しい場合、例えば、妻が夫と同じ空気を吸いたくない、妻が夫の面倒をみたくない、尻ぬぐいをしたくない、介護をしたくない、など。

妻は離婚したらお金に困る、生活水準が落ちる、貧乏になることを承知のうえで離婚に同意することもあるのです。

「夫との死別を待てばいい」と嫁が気づく前に

4つ目の誤解は、「離婚する場合」「離婚しない場合」の比較だけはないということです。

以下のとおり、妻にとって最も有利なのは「離婚する場合」でも「離婚しない場合」でもなく「離婚せず夫が先立った場合」です。

離婚しない場合の収入は前述のとおり、「夫の収入 +夫の年金 +妻の収入 +妻の年金」ですが、離婚せず夫が先立った場合、「夫の財産 +生命保険金 +遺族年金」が加算されます。

これが「夫の収入 +年金」を上回れば、むしろ夫の生前より死後のほうが経済的に恵まれているくらいです。

しかも、夫という存在から解放されるのですが、離婚でも死別でも同じことです。

もちろん、離婚する場合はさらに悲惨で「夫の財産 +生命保険金 +遺族年金」を手に入れることはできません。

基本的に年金の話をすれば、老後の介護、遺産の相続、そして健康や寿命のことに話は及ぶので、「離婚せず夫が先立つまで待てばいい」と妻が気づく前に話をまとめることが大事です。

A.離婚せず、夫が先に亡くなった場合、妻が手に入れる財産・保険金(受取人が妻になっている場合)・死亡退職金(まだ夫が退職金を受け取っていない場合)・遺族厚生(共済)年金・その他、相続財産の 2分の 1 B.離婚し、夫が先に亡くなった場合、妻が手に入れられない財産・受取人を変更されると、保険金は受け取れない・戸籍上の妻ではないので、死亡退職金は受け取れない(すでに退職金が支給されていれば分与してもらう)・戸籍上の妻ではないので、遺族年金は受け取れない(離婚年金分割で婚姻期間中に納めた年金の最大 2分の 1を受け取れる)・戸籍上の妻ではないので、相続権はない

(離婚時に婚姻期間に築いた財産の 2分の 1を分与してもらう)

退職金分与の計算方法

退職金も他の財産と同じく、婚姻期間中に相当する退職金を夫婦で折半するのが原則です。

財産分与の根拠は「内助の功」。

妻が家事や育児を引き受けたから夫が安心して働くことができたので、その貢献分を離婚時に清算するという意味です。

ただし、退職金の全額は財産分与の対象というわけではなく、婚姻期間と勤務期間が重複している部分だけです。

独身期間と勤務期間が重複している部分は対象外です。

つまり、「退職金 ×(婚姻期間 ÷勤務期間)」という計算方法になりますが、例えば、婚姻期間 30年、勤務期間 38年、退職金 2000万円の場合、分与の対象は約 1578万円。

これを夫婦で折半するので退職金を一括で受け取った場合、夫が妻に対して 789万円を支払うことになります。

定年前の離婚でも「退職金」は分割になる?

次に離婚が定年退職の前なのか後なのかで分与の方法が変わってきます。

まず離婚時にすでに夫が定年退職している場合はシンプルです。

例えば、退職金を一括で受け取った場合、妻に対して離婚時に一括で支払えばいいですし、退職金を毎月分割で受け取る場合は、妻に対して毎月定額を支払うという形です。

問題は離婚時、夫がまだ定年退職していない場合。

退職金は原則、前借りすることができない、定年前には金額が定まっていない(離婚から定年まで増え続ける)ということを踏まえたうえで以下の2つのいずれかを選択することになります。

1.離婚時にまだ退職金の金額を正確に特定することはできませんが、おおよその試算をもとに「定年時、夫が妻に〇〇〇万円支払う」という形で約束する。

2.離婚時には何も決めず、「定年時に再度、話し合う」という約束だけ交わす。

なお、リストラや転職などの理由で過去に退職金を受け取っていれば、現在、勤務している会社で定年を迎えていなくても過去の退職金は分与の対象です。

妻に必要な「生活費」を計算して離婚交渉する

ここまでお話ししてきた年金と退職金の知識を踏まえたうえで「妻の収入 +妻の年金 +夫の年金の 2分の 1」では妻の生活が成り立たず、そのことを理由に妻が離婚に二の足を踏んでいる場合、どうすればいいのかを考えていきます。

例えば、妻が 60歳のときに離婚して、 86歳まで生きる場合、必要な生活費は年 180万円 × 26年 = 4680万円。

一方、妻の収入は月 10万円、 70歳まで働けるとして、年 120万円 × 10年 = 1200万円、妻の年金 +夫の年金の 2分の 1は年 100万円 × 26年 = 2600万円とします。

そうすると 4680万円-( 1200万円 + 2600万円) = 880万円の不足が発生します。

880万円を工面する方法は例えば、以下の5つが挙げられますが、妻が抱えている経済的な不安を払拭することが離婚への近道です。

1.退職金の 2分の 1を分与する 2.夫のほうがお金に余裕があるはずなので、毎月、生活費を渡す 3.預金や貯蓄型の保険、株式などがあれば、現金化して 2分の 1を妻に渡す 4.非居住の不動産があれば、売却して利益の 2分の 1を妻に渡す 5.離婚原因が夫にあるのなら、妻へ慰謝料を支払う

離婚後に備えて公正証書を作成しよう

「養育費」は公正証書が頼みの綱

公正証書とは公証人役場に出向き、夫婦 2人が署名し、受け取るという流れで完成する書類ですが、離婚の場合、わざわざ手間暇かけて公正証書を作成するメリットは「お金の支払いが止まった場合、相手の給与を差し押さえて未払い分を回収できること」です。

特に夫が子どもの親権を持つ場合、妻に慰謝料や財産分与、解決金等の支払いを約束させることは難しいので、「養育費」だけで収束するケースが圧倒的に多く、そんなときに頼みの綱となるのが公正証書です。

作本健人さん( 36歳)もそんなケースに当てはまるひとり。

妻( 34歳)は息子さん( 7歳)を置いたまま実家に戻ったそうで、実家近くの会社へ契約社員として就職。

結局、そのまま離婚が成立し、息子さんは健人さんの手元で育てることに決まったのですが、いかんせん、妻は就職したばかりで、まだ試用期間というありさま。

慰謝料などを断念したのだから、せめて養育費だけはきちんと満額回収したいのですが、どのような公正証書を作成すればいいのでしょうか? 本章では健人さんのケースで私が作成した実際の文面を紹介しつつ、どのような意図で今回の文面を残すに至ったのかを説明していきます。

■ 離婚届の提出について(第 1条) 第 1条に「離婚届を提出する」と書きましたが、公正証書に署名する =離婚の成立ではなく、署名ずみの離婚届を役所に提出することで正式に離婚が成立します。

離婚直前で険悪な夫婦が 2人そろって役所に出向くことは難しいので、どちらか 1人が行うことになりますが、妻に任せた場合、いつまでも離婚届を提出しないと困るので、文中には「夫が提出する」と書きました。

■ 養育費の支払い日について(第 3条) 養育費の支払い日 =妻の給料日で問題ありません。

公正証書の効力は過去に遡ることができないので、もし、養育費の支払い日を「 15日」に設定するのなら、養育費の支払い開始は次に迎える 15日です。

例えば、8月 16日に公正証書の署名 +離婚届の提出をすませた場合、養育費の 1回目は9月 15日です。

そして「銀行非営業日」というのは土曜、日曜、祝日です。

非営業日に養育費を振り込んでも、夫の口座に届くのは休み明けです。

これでは困るので、支払い日が非営業日の場合は、休前日に養育費が届くよう養育費を振り込んでもらいます。

■ 養育費の期間について(第 3条) 妻は自分が両親から受けたのと同じ教育水準を子どもにも受けさせなければなりません。

今回の場合、妻は四年制の大学を卒業しているので、養育費の支払い期間もそれに合わせて大学を卒業する月( 22歳の年の3月)に設定しました。

もちろん、現時点で子どもの進路はわからず、大学に進学しない可能性もありますが、わざわざ「どのような場合、途中で打ち切ることができるのか」(例えば、高校を卒業して就職したら 18歳まで、専門学校や短大の場合は 20歳まで)を明記する必要はないでしょう。

■ 養育費の振込口座について(第 3条) 離婚のタイミングで、養育費の振込口座を指定することが可能です。

離婚後に伝えてもいいのですが、なるべく連絡をとりたくないでしょうし、公正証書に記載すれば証拠として残るので、離婚のタイミングで決めてしまうのが賢明です。

具体的には妻名義、上の子名義、下の子名義などが考えられますが、上の子の養育費、下の子の養育費を別々に振り込んでもらうと振込手数料が 2倍かかるので、1つの口座に 2人分の養育費をまとめて振り込んでもらうのが自然でしょう。

例えば、上の子の口座に 2人分の養育費を振り込んでもらったとして今回の場合、毎月 5万円は必要最小限の金額なので、毎月使い果たしてしまい、ほとんど余らないはずです。

現金で引き出すのなら、 1か月に 1回は ATMに行かなければいけないので、どの口座でも大差ありません。

一方で口座引き落とし(小学校の給食代、電気やガス、水道などの公共料金、そして携帯代など)は子どもではなく、夫の口座です。

もし、子どもの口座に養育費が振り込まれると、引き落としのために子どもの口座から夫の口座へ毎月、お金を移動させる必要があります。

このように考えると、夫の口座に養育費を振り込んでもらい、夫の口座から各種の料金が引き落とされたほうがスムーズなので、特別な事情(妻が夫の口座へ振り込むと、夫のこづかいになると勘違いし、子どもの口座にこだわっている、など)がなければ、夫の口座にしておいたほうが離婚後、口座から口座へお金を移し変える手間が省けます。

■ 養育費の増額について(第 4条) 妻の昇給に合わせて養育費を増額できるように工夫しました。

具体的な方法ですが、毎年 12月末日までに源泉徴収票の写しを夫あてに送ってもらい、届き次第、話し合うという形を採用します。

離婚に伴って妻は自立すべく収入を増やすことが多く、例えば、今現在が試用期間のようなもので給料が低く、試用期間が終わった段階で、ある程度、給料が増える見込みがあるのなら、 1回目の見直しはそのタイミングになるでしょう。

■ 生命保険の継続について(第 5条) まず生命保険の死亡保険金は、戸籍上の関係者が受け取ると非課税枠が適用されるので税金はかかりません。

結婚期間中に加入したのなら、受取人は夫になっているはずです。

しかし、離婚し「元夫」という立場になると、戸籍上の関係者ではなくなるので、夫が保険金を受け取ると非課税枠は適用されません。

一方、離婚しても親子関係は変わらないので、受取人を子どもにしておけば非課税枠が適用されます。

現実的には子どもが成人するまでの間、受取人の名前が子どもでも、実際には夫が保険金請求の手続きや保険金の引き出し、そして子どもの学費等に充てることを代わりに行います。

あくまで受取人の名前の違いであって、保険金を養育費のかわりに使うという点では同じです。

そして生命保険については無断で解約したり、さらに受取人を変更したり(例えば、子どもから義父へ)、保険料を滞納したりすることを禁止しますが、これらの約束には違約金を設定することが可能です。

具体的には妻に「違反したら大変なことになる」と思わせることで勝手なことをさせないようにする効果があります。

違約金の相場はありませんが、例えば、年収分くらいを設定すれば、怖くて約束を破ることはできないでしょう。

万が一、妻が途中で亡くなっても、妻がまとまった金額の遺産を残せば、子どもは遺産を相続し、養育費に充てればよいのですが、現実問題として妻の収入では養育費を払いながら貯金することは難しいので遺産は期待できません。

万が一の場合、生命保険に頼るしかないのですが、だからこそ、念には念を入れて、生命保険を最後まで継続してもらえるよう工夫する必要があります。

■ 母と子の面会について(第 6条) 基本的には離婚に伴って、いきなり母子の関係が激変することはなく別居中の母子関係が離婚後も続きます。

別居中、妻が子どもと会っていない場合、離婚後も「会いたい」と言ってこないでしょう。

逆に別居中も妻が子どもと定期的に会っている場合、離婚後も母と子の面会が続くことが予想されます。

公正証書に面会の条件を盛り込む理由は決して「妻が子と面会しやすくなるように」ではなく、「面会トラブルを解決しやすくなるように」です。

端的にいえば妻からの面会の申し入れをうまく断れるようにするための工夫です。

文中には面会を拒否できるシチュエーションとして「子どもが面会を拒否する意思を示したとき」を挙げましたが、あくまで一例であって、他の理由で面会を拒否できないわけではありません。

例えば、習い事や塾、友達の約束や地域の行事などで子どもと妻のスケジュールが合わなければしかたがありませんし、ほかの理由で面会を断ることは可能で、面会に協力するかどうかは、あくまで夫次第です。

常識的には 1週間以上前から面会の時間や場所、送迎方法などを夫と妻との間で詰める必要がありますが、もし 1、 2日前になって突然「今日行くから」などと妻が言い出したら、やはり迷惑でしょうから、このような理由で面会を断るというシチュエーションが起こりうるかもしれません。

■ 報告義務について(第 7条) 万が一、養育費が止まった場合、妻の給与を差し押さえるには、勤務先の会社名、所在地が必要です。

もちろん、いったん就職したにもかかわらず、職を転々とする可能性もあるので、その都度、報告することも義務づけました。

報告義務の対象は、連絡先(住所、電話番号、メールアドレス、 LINEの IDなど)だけでなく勤務先(会社名、所在地)も含まれます。

■ 清算条項について(第 9条) 離婚後、追加でお金(財産分与、慰謝料)を請求しないという意味です。

ただし、養育費は清算条項の対象外なので、追加請求することが可能です。

まず財産分与においては、「夫の名義の財産は離婚後も夫の財産」「妻名義の財産は離婚後も妻の財産」という意味です。

妻の知らない夫名義の口座が存在するとして、離婚後、口座の存在を知られても、すでに妻は請求権を失っているので蒸し返されることはありません。

同じようにお年玉や親戚からの祝い金などを貯金している子ども名義の口座がある場合、清算条項を盛り込むことで正式に親権者である夫の管理下になります。

もちろん、隠し口座や子どもの口座の存在を公正証書に盛り込むと妻が難癖をつけてくる危険はあるので、あえて何も記載しません。

次に慰謝料ですが、離婚後、妻の浮気が明らかになったとしても清算条項を盛り込むことで、妻に対して追加で慰謝料を請求することができなくなります。

しかし、公正証書は夫婦間の契約であって、それは清算条項も例外ではありません。

夫婦以外の人間、例えば、浮気相手の男性には効力が及ばないので夫にその気があれば、清算条項を入れたとしても、浮気相手に対して追加で慰謝料を請求することが可能です。

あとがき

第 1章から第 3章までお読みいただいたので、すでに理論武装は完了。

悪妻と離婚し、子どもを守り、そして財産を確保するための武器を手に入れたところですが、少し考えてみてください。

そもそも何のために今、離婚すべきなのでしょうか?最後に私がどうしても伝えたいのは、男の人生……特に仕事(収入や地位、お金)、プライド(自信ややりがい、充実感)、子ども(愛情やつながり、存在感)は結婚相手によって左右されるという現実です。

まず無理に悪妻と結婚生活を続け、仕事に悪影響を及ぼし、本当なら得られる収入を手放した男の証言を聞いてみましょう。

村山哲也さん(岡山市在住、 47歳、結婚 12年)も悪妻のせいで仕事がはかどらなくなったと言います。

「仕事用のメールアドレスへ妻からの不愉快なメールが多く入ってくるのですが、そのせいで職場でのパフォーマンスが下がったと感じています」。

哲也さんいわく、家のこと、子どものこと、そして些細な愚痴まで、妻は哲也さんに対してメールで送ってくるようで、いちいち気を取られて、なかなか仕事に集中できなくなってしまったそう。

それだけではありません。

哲也さんは話を続けてくれました。

「なるべく娘と過ごすため、仕事はさっさと切り上げるようにしています。

今はだいぶ慣れましたが、最低限のことをすませるにとどまっています。

でも正直、がっかりすることも多いですよ。

この前も急いで帰宅したのに娘は疲れて就寝していたり、せっかく一緒に風呂に入ろうと思っていたのに、妻と先に入っていたりするとね」 哲也さんが言うには、現在、結婚 12年目ですが、もし結婚していなければ、今よりも 12年間で 1000万円は多く稼ぐことができただろう、とのこと。

「嫁のため、嫁の実家の手前、家を購入したのですが、時期尚早でした。

これによって僕は趣味をあきらめたのに、家計のやりくりで文句を言われるようになりました。

また嫁や嫁の実家から頼まれ事が多く、そのせいで会社での集中力、身の入れ方に大きくマイナスが出ました」 対照的に離婚したおかげで仕事がうまく回り始めた男もいます。

彼の証言に耳を傾けてみましょう。

松本薫さん(沖縄市在住、 49歳、結婚 24年目で離婚)は、結婚は仕事へ悪影響を及ぼしたけれど、逆に離婚は仕事によい影響を与えてくれたと答えてくれました。

「家事や育児の手伝いを優先すると、どうしても仕事がおろそかにならざるをえません。

結果としてボーナスが下がってしまったのですが、そのせいで妻から罵倒され、精神的につらかったです。

だからといって今度は仕事を優先しようとしたら、家庭がめちゃくちゃになり、結局、仕事のことでも家庭のことでも妻から罵倒され、どうしようもなかったです」 薫さんいわく、どんなに仕事を頑張っても、家事や育児を頑張っても、妻がねぎらいの言葉をかけてくれたことはなかったそう。

これでは薫さんが結婚生活に絶望して、離婚を視野に入れるのも無理はないでしょう。

そして薫さんが別れを切り出してから 10か月で離婚が成立したようですが、妻の罵倒によって薫さんは今の仕事に対して完全にやる気を失っていたので、心機一転するため、離婚と同時に転職にも踏み切ったそうです。

「今まで仕事をどんなに頑張っても、家に帰れば、どうせ妻に罵倒されるに決まっているので、仕事に対するモチベーションも低かったです。

しかし、今の会社に入ってからは、久しぶりに仕事に対する熱が湧いてきて、いい仕事ができているなと実感しています」 最後に薫さんは 24年間の結婚生活をこんなふうに振り返ってくれました。

「僕の場合はパートナーが理解ある人でなかったため、仕事、家庭どっちも中途半端でどちらも集中できませんでした。

パートナーと仕事について、そして家庭について話し合いをしっかりしておけばよかったと、今ではそう思います」 このように離婚することで今まで費やしたお金や時間、愛情が水の泡と化すのは確かですが、悪妻と過ごした結婚生活が何の意味もなく、すべてが無駄だったとは限りません。

最後の最後ですが、現在、 2人目の妻と再婚し、幸せに暮らしている男の証言を紹介しましょう。

今となっては結婚も離婚も、そして再婚も「仕事に役立っている」と話すのは立花孝義さん(栃木市在住、 44歳)。

孝義さんは残念ながら 1回目の結婚は 7年しかもたず、離婚という結果に終わったのですが、現在は 2回目の結婚をしており、今( 8年目)に至っています。

「今はとても幸せです。

離婚したら人生終わりだと思っていましたが、そんなことはなかったですね。

過去の経験があるので、純粋な愛を感じています」 孝義さんは再婚の生活について語ってくれました。

「過去の結婚や離婚で本当に多くのことを学びました。

離婚なんてマイナスばかりで無駄なエネルギーを使うだけだと思っていましたが、そのときの経験が仕事に役立っています。

離婚の経験から『トラブルの本質』を理解することができたので、仕事での危機察知能力が高まったと実感しています。

また以前は悲観的なタイプでしたが、今はそんなに思い詰めることもなくなり、トラブルを解決するのも早くなりましたね。

前と比べれば自分にも他人にも、ずいぶん寛容になったと思います。

結局は『 1人では何もできない』と悟ることができたのは大きかったですね」 孝義さんにとって結婚、離婚、そして再婚はプライスレスで、きっとお金には換算できないほど大事な経験だったのでしょう。

ちょうど今、離婚という人生の岐路に立っているあなたに「 1度目の結婚、離婚は糧になった」と言う彼の言葉は勇気を与えてくれるはずです。

本書を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

露木幸彦 Yukihiko Tsuyuki行政書士、ファイナンシャルプランナー、男女問題研究家。

1980年生まれ。

国学院大学法学部卒。

金融機関に入行後(融資担当時代は住宅ローンのトップセールス)、離婚・不倫など「男女トラブル」を専門に扱う行政書士事務所を開業。

これまでの有料相談件数は 1万件近くに達する。

特に妻の多重債務、不倫、ヒステリー、育児・家事放棄などに悩む「男性の離婚相談」を得意とし、理不尽な状況から解決へと導いてきた実績を持つ。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演歴多数。

芸能人の男女トラブルなどに言及するコメンテーターとしても活躍。

著書に『婚活貧乏 結婚してはいけない人を避ける方法』(中央公論新社)、『離婚のことばハンドブック 今すぐ解決したい人のキーワード 152』(小学館)など。

▶本書はダイヤモンドオンラインの連載「実例で知る!他人事ではない『男の離婚』」に加筆、修正を加えて再構成したものです。

男の離婚ケイカククソ嫁からは逃げたもん勝ちなる早で!!!!!著 者 露木幸彦編集人 寺田文一発行人 倉次辰男発行所 株式会社主婦と生活社 〒 104‐ 8357 東京都中央区京橋 3‐ 5‐ 7 http:// www. shufu. co. jp/ © Yukihiko Tsuyuki

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