はじめに あなたは、仕事だけではなく、プライベートにおいても、決断を迫られ、迷うことがあるでしょう。
「どうすればいいのだろうか?」「続けるべきか、やめるべきか?」「どちらを選択すればいいのか?」 当然です。
人は誰でも、悩むこともなく、常に淡々と生きることができるわけではないのですから。
天才と称される孫正義でも同じです。
しかし孫正義は、幾度となく訪れる窮地から、いとも簡単に這い上がり、成功を手にしたように見られています。
その孫正義の問題解決法とは、いったいどんなものなのでしょうか? 私は、 1998年にソフトバンクに入社し、 2000年から社長室長として Yahoo! B B事業の立ち上げやナスダック・ジャパンの設立、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の買収案件などに関わってきました。
本書は、ソフトバンクで働くうちに私が孫正義から学んだことを質問に答えるという形式でまとめたものです(敬称は省略させていただきます)。
ソフトバンクは、国内では 2006年にボーダフォン日本法人を買収し、ソフトバンクモバイルとして事業を立て直しました。
iPhoneのヒットとともに圧倒的な営業力で純増 No. 1の快進撃を続けています。
さらに 2013年にはアメリカの携帯電話会社スプリントを買収するなどし、世界的 No. 1の通信キャリアを目指して拡大を続けています。
孫正義の経営手法から学ぼうと、ソフトバンクで社長室長をしていた私にも多くの講演依頼が舞い込んできます。
本書で掲載している質問の多くは実際に受けたことのある質問です。
私が講演をした後や大学の授業後の質疑応答、さらには懇親会での雑談の中で受けた質問などからまとめたものです。
質疑応答をした人の中には、経営者やビジネスパーソンとして成功している人もいます。
時折報告をくれる人もいます。
もちろん私のアドバイスが効果を現さなかった人もいます。
こうした違いはどこから生まれてくるかを考えると、アドバイスを受けて実際にどう行動に反映するかどうかの違いのようです。
私のアドバイスは、基本的に、孫正義の考え方やソフトバンクでの私の経験を下敷きにしています。
アドバイスを生かせた人は、「孫正義やソフトバンクのことだから自分とは違う」「企業規模が違うから自社には当てはまらない」などと思わず、自分に引き寄せて考えることができたようです。
同じように講演を聞いて、質疑応答をしても、自分のこととして捉えて、行動に生かせるかどうかで、効果はまったく違ってくるのです。
ぜひとも自分の立場に引き寄せて、この本を読んでもらいたいと思います。
本書の構成は、「孫正義の生き方」「決断の方程式」「仕事術」「交渉」からなっています。
「孫正義の生き方」では、仕事だけではなく、人生においての目標の立て方や、実現する方法、また「わらしべ長者」のように何もないところから成功を勝ち取る考え方などを紹介しています。
「決断の方程式」では、人生においての二者択一問題の答えを得る思考や様々なシチュエーションで求められる決断を、どのようにするべきかについてまとめました。
いつも決断に迷う方におすすめです。
「仕事術」では、ソフトバンクで学んだ仕事術、大量な仕事を急速に仕上げる方法についてまとめています。
さらに、「交渉」では、人生において、仕事において避けることのできない人や組織との関わり方を取り上げています。
例えば、「相手と意見が異なり、衝突した場合、どのように建設的な解決を見いだすか?」また「会社でチャンスを与えてもらえない時、どうするか」など、ビジネスパーソン必読の章です。
この本の読み方としては、まず目次を見て自分の悩みに近いところがあれば、そこを読んでください。
まったく同じ悩みがなくても、ぜひ自分の問題に引き寄せて読んでみてください。
そのうえで、実際に行動に移せば、成功に一歩近づくでしょう。
「もし自分が孫正義だったら……」と考えることができれば、あなたの悩みや問題は、きっと解決するはずです。
2014年2月 三木 雄信
はじめに
第 1章 孫正義の生き方──リスクのない人生はない 孫正義の成功ルール
01 成功したいなら「わらしべ長者」になれ! ソフトバンクの「わらしべ長者」のような成功 まわりから声がかかるように常に情報を発信する 孫正義の成功ルール 02 最終目標から逆算して計画をつくる! リスクをとらない生き方では夢は実現しない 50年計画を立ててから、 1日の計画までブレークダウンする 孫正義の成功ルール 03 勝ち癖をつける! 孫正義がいつも自信満々でいられる理由 日本の大企業の沈滞は、組織が自信を喪失したから 部下に自信を取り戻させるための強烈なひと言! 「売る経験」を積ませて営業マンに自信をつけさせる 孫正義の成功ルール 04 大きなチャレンジを細かく変換する! 依頼を受けたら即時に判断をする チャレンジを「当然できること」に変える 孫正義の成功ルール 05 困った時は得意な分野だけに注力する! ネットバブル崩壊の危機から孫正義が脱出した方法 事業の中で成功している要素を見つけて、伸ばす 孫正義の成功ルール 06 行き詰まったら脳をリフレッシュさせる! 日頃会っていない友人から新しい発想やアイデアをもらう 以前の自分自身から元気をもらう 孫正義の成功ルール 07 ゴールを決めた上で必要なことを学ぶ! 孫正義から飛び出した質問 適切な質問で専門家以上の知識を手に入れる まずは登る山を決める 孫正義の成功ルール 08 ロールモデルを決めてやり方を真似る! ロールモデルは職場の先輩でも有名人でも憧れの人でもいい 孫正義のロールモデルは日本マクドナルド創業者 孫正義の成功ルール 09 自ら掲げた「理念」のために働き続ける! アメリカと日本では労働観が異なる 日本的な要素が強い孫正義の経営 「社会の発展のため」が長寿企業をつくる
第 1章 孫正義の生き方──リスクのない人生はない 孫正義の成功ルール

この質問の答えは、ほとんどの人が知りたいと思っているのではないでしょうか? みんな、運をよくしたい、チャンスをつかみたいと思っているはずです。
運をつかむ能力に長けた人は、やはり孫正義をおいてほかにはいないでしょう。
私だけではなく、多くの人が、「孫正義ほど運がいい経営者はいない」と思っています。
他の IT経営者が、市場から次々と退場していくなかで、ソフトバンクは急激な成長を続けています。
また、 iPhone販売当初、日本での独占販売権を手にしたように、チャンスをつかむことについては、孫正義以上の経営者はいないでしょう。
では、どうやって孫正義はチャンスをつかんでいるのでしょうか? それは「わらしべ長者」のような経営を実践しているから。
おとぎ話の「わらしべ長者」の話は、みなさんご存じでしょう。
昔々、あるところに貧しい若者がいました。
若者は「立派な屋敷に住んで、お金持ちになりたい」と観音様にお願いをします。
お参りをして帰ろうとすると転んでしまい、起き上がる時に、たまたま藁をつかみました。
その藁を持って歩いていると、虻がいたので、捕まえて藁の先に括りつけてまた歩き始めます。
すると、虻を見た子どもが親に虻がほしいとねだり泣き始めます。
そこで、子どもの親は若者に「虻とミカンを交換しませんか?」と言います。
若者は虻とミカンを交換し、ここから「わらしべ長者」への道を歩むのです。
その後、同じように若者は、ミカンを反物に、反物を馬に、馬を屋敷に交換して、観音様にお願いした通りに立派な屋敷に住むお金持ちになったという話です。
この話の面白いところは、若者が最初に手にする藁が最後には屋敷に変わってしまうところです。
全然価値の違う藁と屋敷が、途中で様々なものと取り替えていくうちに交換できてしまいました。
ソフトバンクの「わらしべ長者」のような成功 孫正義は、まさしく「わらしべ長者」のような成功パターンでしょう。
1981年の創業当初、ソフトバンクが、今のような日本を代表する通信キャリアになるとは誰も想像もできなかったでしょう。
これまで歩んできた一つ一つの過程では、非常にリスクが高く見え、実現不可能なように思えましたが、きちんと分析してみると、勝算のある戦いの繰り返しだったのです。
例えば、ソフトバンクモバイルの躍進の理由の一つは、 iPhoneの日本独占販売でした。
現在でこそ、他社も iPhoneを販売していますが、当初はソフトバンクだけだったのです。
日本での販売権については、他社と厳しい獲得競争があったとされています。
各社の社長がアメリカのアップル本社を訪問して獲得を目指したのですが、この獲得競争において最初から孫正義は圧倒的に有利だったのです。
それはソフトバンクが、すでにアップル社の重要な顧客となっていたからです。
iPhoneの販売前にソフトバンクは、既存の携帯電話の販売キャンペーンとして大量に携帯音楽端末の iPodを仕入れていました。
すべての携帯電話にキャンペーンの景品として付けるほどの勢いでした。
当時のソフトバンクモバイルが他社と比較して、音楽配信機能などの携帯電話の多機能化に出遅れていたことを補完する意味もありましたが、孫正義がアップル社の製品にそれほどの価値を見出していることも示唆していました。
ソフトバンクモバイルは、この時、会社のロゴと携帯電話販売店舗のデザインを一新しました。
これは、当時の iPodのカラーリング、さらに言えば、アップル社のイメージカラーに準じた銀と白をベースした変更でした。
アップル社のスティーブ・ジョブズとの交渉の現場にいたわけではありませんが、孫正義はソフトバンクがアップル社をリスペクトしていることをアピールしたに違いありません。
「iPhoneの販売を任せるならソフトバンク」だという結論に至ったのも、うなずけます。
過去のソフトバンクの「わらしべ長者」の例も見てみましょう。
ソフトバンクが躍進した理由の一つは、大企業と同じ規模で見本市に出展したことでした。
創業直後のベンチャー企業としては、非常に大胆な賭けでしたが、このことをきっかけにしてソフトバンクは成長しはじめたのです。
ソフトバンクのアメリカ進出はコムデックスという見本市事業の買収から始まりました。
当時のコムデックスは、 IT業界の主要企業の CEOがラスベガスに集まる見本市を運営していました。
I T関連の見本市としては世界一の規模だったのです。
このためソフトバンクのコムデックス買収は、アメリカの I T業界で大きな話題となりました。
孫正義自身も世界の I T企業のトップと並んで、話ができるポジションを得たのです。
こうして孫正義はアメリカで積極的に投資をする起業家として知られると、様々な投資案件が舞い込んでくるようになりました。
その中から投資したのがポータルサイト
ポータルサイトの Yahoo!だったのです。
まわりから声がかかるように常に情報を発信する『わらしべ長者』の例で孫正義以外に思い出す人物がもう一人います。
新進気鋭の建築家として知られる nendoの佐藤大氏です。
佐藤氏は「 Newsweek」誌「世界が尊敬する日本人 100人」にも選ばれたことのある人物です。
実は、佐藤氏は早稲田大学生時代にソフトバンクでアルバイトをしていました。
2001年 ~ 2003年ごろ、当時ソフトバンクブロードバンド事業の立ち上げのため、 24時間体制で人や資材の出入りがありました。
様々な雑用をやってくれる学生のアルバイトを多数雇っていたのですが、その中でも、今の nendoのメンバーが、このアルバイトを非常に熱心にやっていました。
そうして彼らは、仕事で稼いだお金で 2006年に世界的な家具の見本市のミラノサローネに出展して賞をとったのです。
業界の人は、「佐藤大にはパトロンがいる」と考えていたようですが、実際にはソフトバンクで、長時間のバイトをして得たお金で大きなチャレンジをしていたのです。
この賞をとった後はとんとん拍子で、国内外の建築やデザインの賞を次々と受賞していき、日本を代表する建築家の一人になりました。
分野は違いますが、世界的な見本市に出展しているということが、孫正義と共通していますね。
このように、幸運をつかむためには、しっかりと準備をしておくことが重要なのです。
『わらしべ長者』の話では、どの場面でも、相手から声をかけてきています。
こちらから「虻とミカンを交換してください」と言っているわけではありません。
交渉が当然のように成立するのは、どちらにとっても価値のある取引ができる時です。
孫正義は、一度チャンスがめぐってきたら、必ずものにします。
例えば、アメリカ第 3位の携帯電話会社であるスプリントの買収の時、競合が現れ、当初の予定より価格が上がったのですが、孫正義は、競合に圧倒する価格を提示し、株主を説得して買収に成功しました。
このようなことは、コムデックス買収でもありました。
一旦は競合の会社が、ソフトバンクより高い買収価格を提示してコムデックスを買いました。
普通はここであきらめるところですが、孫正義は、しばらくして、さらに高い価格を提示し、その会社からコムデックスを買収したのでした。
孫正義はチャンスと見たら、ものにします。
そのための努力は惜しまないのです。
運をよくしてチャンスをつかむために大事なのは、まずは相手から声がかかるように種まきをすることです。
その種は業界で広く知られるようなものがいいでしょう。
広く認知されればされるほど、いろいろな案件が集まってくるようになります。
その中から幸運を拾えるように準備をしておくのです。
幸運の女神を逃がしそうになったら、そこからは力業であっても、しっかりと捕まえることが重要なのです。
A 日々種をまき、チャンスが来たら、つかむ

現代の日本では、大きな夢を持ち、実現していくことは、なかなか難しいことでしょう。
なぜならば、すでにモノあふれ、一次産業、二次産業はもとより、サービス業などの三次産業、また情報通信などの四次産業においても、様々な業種が生まれ、ほとんどの需要をカバーしているからです。
第二次世界大戦直後の日本は焼け野原の状態で、何もないところから社会の仕組みをつくり直すような状況でした。
そのころは、モノを作れば飛ぶように売れ、新しいビジネスを思いつけば、実践するだけで大儲けする人がいました。
近年では世界的な大企業に成長したソニーやホンダのようなベンチャー企業は、このころ創業しています。
きっと一人ひとりの気持ちが前向きで大きな夢を描きやすい時代だったのでしょう。
それから 60年がたち、多種多様な会社が生まれました。
今では、モノがあふれすぎて、「どうやって捨てるか」をテーマとした書籍がベストセラーになるほどです。
また、社会の仕組みができ上がっているので、隙間を見つけて創業しようにも、なかなか簡単ではありません。
市場が飽和し、そこに大企業がひしめいている状況なのです。
さらに、バブル時代の大量入社世代が会社に残る中、大出世したり、ベンチャー企業を起こしたりすることは難しいでしょう。
リスクをとらない生き方では夢は実現しない 世の中の仕組みができているので、その仕組みにのればいいと思い、いい大学に行って、いい会社に入ろうと考える人も多いでしょう。
会社に入っても出世しようと思わず、できるだけ目立たずに上司の指示の範囲で仕事をして、大過なく定年まで勤めあげることを目指す人もいるでしょう。
今のような社会では、夢を失ってしまう人が多いのは当然かもしれません。
しかし、こうしたリスクをとらない生き方は、逆に非常に危険だと思います。
笠井和彦取締役(平成 25年 10月 21日 逝去。
ご冥福をお祈り申し上げます)の言葉を思い出します。
笠井取締役の言葉で「新しいことをやるのもリスク、やらないのもリスク」というものがあります。
笠井取締役は、富士銀行(現みずほ銀行)の元副頭取で、為替ディーリングの世界で大成功した人物として金融界では知られています。
あの孫正義が三顧の礼でソフトバンクに迎えた傑物です。
ソフトバンクでは、孫正義が次々に手掛ける日本テレコム、ボーダフォン日本法人買収のサポート、アメリカで巨額な資金調達を行い、ソフトバンクの事業の発展を支えてこられました。
笠井取締役は、おそらく為替相場での経験から「新しいことをやるのもリスク、やらないのもリスク」と語られたのでしょう。
為替相場であるポジションを考えれば、当然リスクをとっています。
そのままでもリスクをとっていますが、相場の変化に合わせて組み直すのもリスクをとることです。
しかし、相場に返って組み直さないのもリスクをとっていることには変わりありません。
笠井取締役は、この言葉を心にとめてソフトバンクの事業を支えてこられたのです。
この言葉は、会社の経営に当てはまると同様に、人生にも、そのまま当てはまります。
会社は創業した以上、人間は生まれた以上、社会において、なんらかのポジションをとっているのです。
つまり、絶対に安定しているものなどないのです。
あなたが会社で目立たないようにそつなく仕事をしていたならば、転職をする時、面接官に語れるような業績はあげられないでしょう。
社内の調整だけで、そつなく仕事をしていても社外の人からは評価されません。
これでは転職は難しい。
また、上司からの指示に「ちょっと法律的に大丈夫かな」「取引先との関係上、ちょっと変だな」と思いながら、従った場合を考えてみましょう。
危険な仕事で失敗したならば、上司から責任を押しつけられる可能性があることを認識しましょう。
ドラマではありませんが、上司が「私は反対していたのですが、こいつが勝手にやったんです」とあなたに責任をなすりつけてくることもあり得ないとは言えません。
こういうことを考えれば、「できるだけ目立たずに上司の指示範囲で仕事をして、大過なく定年まで勤めあげる」ということもリスクがあるのです。
リスクをとって仕事をするのも、リスクをとらないで仕事をするのも、結局は両方リスクがあるということなのです。
同じリスクがあるならば、大きな夢に向かっていったほうがいいでしょう。
従って、「とても実現しそうにない夢を持ったほうがいいのでしょうか?」という問いの答えは、「イエス!」。
しかし、それだけでは十分ではありません。
世の中には「夢は紙に書いて張り出せばかなう」「夢を何度も口に出して言えば、自然と夢がかなう」と実行している人も多くいるでしょうが、それだけで成功した人は少ないでしょう。
本当に成功した人は、そこからさらにやっていることがあるはずです。
50年計画を立ててから、 1日の計画までブレークダウンする
孫社長の人生 50年計画は有名ですから、知っている人もいるでしょう。
孫社長が 19歳のころ、「 20代で名乗りを上げ、 30代で軍資金を最低で 1000億円貯め、 40代でひと勝負し、 50代で事業を完成させ、 60代で事業を後継者に引き継ぐ」という人生 50年計画を立てたという話です。
ソフトバンクは確かに、この計画の通りに成長してきています。
孫正義は、 20代でソフトバンクを創業し、 30代で株式公開をして 1000億円以上の軍資金をつくり、 40代でブロードバンド事業の大勝負をし、 50代で携帯電話事業を世界的に拡大して事業を完成させようとしています。
着実に「実現しそうにない夢」を実現させてきているわけですが、 なぜそれができたのでしょうか? 実は 10年、 1年、1月、 1週、 1日とブレークダウンした目標を持っているからです。
孫正義は毎年、新年に年間目標を決定します。
1月 1日に孫社長の自宅に呼び出されて、その年の計画を作るのを手伝ったことがあります。
孫正義は時々、自分の抱えている事業計画をすべてメモに書き出しています。
それを朝、車の中でチェックするのです。
A 4のコピー用紙を横にして四つに折れば、縦長の長方形になります。
意外にも小さくて丸っこい字で、課題となっている事業計画や事業をどんどん書き出します。
それを胸ポケットに入れて時折確認をしているのです。
だから縦長になるように折られているというわけなのです。
実は、こうした孫正義の目標はすべて最終目標から逆算されています。
今の実力でできることを一つ乗り越えるとまた、次の山を目標にして登っていくという具合です。
こうしていくつかの目標を越えると最初には到底、達成できないように見えた目標も、達成できるような体力や環境が整ってくるのです。
つまり、「とても実現しそうにない夢を、確実に達成するにはどうしたらよいでしょうか?」との問いの答えは、「とても実現しそうにない夢を持ち、 10年、 1年、1月、 1週、 1日にブレークダウンした実現の可能性のある目標をつくり、時々軌道修正しながら進んでいくこと」ということになります。
A 10年、 1年、1月、 1週、 1日とブレークダウンした目標を持つ

自信を持つことは非常に大切です。
入学試験でもスポーツの大会でも音楽の発表会でも自信がなくドキドキしながらのチャレンジでは、実力が発揮できない可能性が高まります。
大人に成長しても、ビジネスにおいて、社内の上司や部下、同僚や社外の取引先の担当者は常に「あなたが自信のある人物かどうか」を見ているはずです。
それは、自信がある人と一緒に仕事をしたほうが仕事が成功する可能性が高く、プロジェクトや事業が進めやすく心地よいからです。
また、自信がなければ、新しいチャレンジをすることは難しいでしょう。
新しいことにチャレンジすることなく、今までの誰かがやってきたことを繰り返しているだけでは、業績をあげることは難しい。
それが現在の企業社会です。
毎日同じことが繰り返されるルーティーンの仕事をしていては、そのうちほかの誰かにとってかわられることにもなりかねません。
時々、大学で授業をするのですが、学生からよく出てくるのが、「どうすれば自信が持てますか?」という質問です。
どうやら、自信を持つことができない人が数多くいるようです。
この質問を受けて思い出すのは、孫正義の自信の源についての話です。
孫正義は、経営者として、常に自信と将来についての確信に満ちあふれているように見えます。
株主総会や様々な新規事業の記者会見などでも、手元のメモを見たりすることもなく、言いよどむこともなく、常に自分の言葉で聴衆に語りかけます。
また、企業買収や巨額の資金調達などの時でも、厳しい交渉でも、交渉相手の立場と自分の立場をすり合わせて合意するために常にはっきりと主張します。
孫正義がいつも自信満々でいられる理由 なぜいつもそんなことができるのでしょうか? 理由の一つには、孫正義のお父さんの「天才」的な育児法があったことは間違いないでしょう。
孫正義は、小さなころからお父さんに「お前は天才だ」と言われて育ったそうです。
ちなみに私の同級生だった孫泰蔵(弟)さえも同じように「お前は天才だ」と言われて育ったとも聞きました。
そのやり方は言葉だけでなく、抱き上げてもみくちゃにするような熱烈な褒め方だったそうです。
お父さんは、単なる「親ばか」でこのような育て方をしたのではなかったのです。
実は意図的に、努力して、褒めていたと聞きました。
二人から私が直接聞いたので、間違いない事実です。
そして、お父さんは、ビジネス上の課題や悩みを、小学生の孫正義に相談していたそうです。
その回答がよいものだったので、実行しました。
喫茶店を経営している時に、孫正義のアドバイスを受けて「一杯無料券」を配ったことなどはいい例です。
さて、このような子育ては一般的なやり方、教育法とは正反対と言えるかもしれません。
「普通」では、できていないところを指摘して、矯正します。
すべての面で均一な、バランスのいい人物をつくることに注力しています。
「お前は天才だ」と言って子育てをしている親はまずいないでしょう。
「天才だ」と言って育てたら「自信過剰な人」になるのではないかと思うのが普通です。
孫家の子育ては、むしろアメリカ的なやり方かもしれません。
自信を持たせて本人の資質をのびのびと伸ばすような子育てです。
こうした子育ての結果が、孫正義や実弟の孫泰蔵の成功につながっています。
二人とも起業家として成功しているわけですが、そもそも起業には大きなリスクが伴います。
自分に対してしっかりとした自信がないとチャレンジできません。
「そんな育てられ方をしていないから」と多くの方が思うかもしれません。
もちろん、親の教育だけがすべてではありません。
日本の大企業の沈滞は、組織が自信を喪失したから「自分に自信があるかどうか」が、一人ひとりのビジネスパーソンにとって、会社での出世や企業としての成長とも密接な関係があることは周知の事実です。
社会は、革新的なユニークな商品やサービスをつくり出すことに価値を認めるように変化しています。
中国や韓国、将来的にはベトナムなどの ASEAN諸国が工業を発展させていくなかで、ますますその傾向は強まるでしょう。
日本の大企業の沈滞の理由の一つは、ビジネスパーソンの自信のなさです。
例えば、業績連動の報酬制度の効果があります。
2000年ごろから年功序列の給与体系の代わりにアメリカの企業を真似して導入され始めた業績連動の報酬制度ですが、その効果に日米で大きな差が出ています。
日本でも個人の能力を生かして業績を上げることを目的として業績連動報酬制度を導入する企業が 2000年前後から増えてきました。
アメリカ人には、「業績に連動して報酬が上がるなら大きな目標を立てよう」と思う人が多いのです。
しかし、日本では、狙った通りの効果を上げることはできませんでした。
日本人の多くは、「業績に連動して報酬が決まるなら、目標は絶対に達成できるものにして確実に達成しよう」と考えたのです。
この結果、日本企業の経営はむしろ萎縮したように思えます。
だから、特に家電メーカーなどで革新的な商品やサービスが生まれなくなったのではないかと思っています。
逆に言えば、日本企業には業績連動の報酬制度は向いてなかったと言えるでしょう。
日米で急成長するベンチャー企業の数の差は歴然としています。
自信の有無が影響しているのです。
世界的なベンチャー企業の多くはアメリカから出てきています。
もちろん、アメリカの国力が大きく、人口も多いからという背景もありますが、やはり意欲的で革新的なビジネスモデルを持つベンチャー企業が数多く生まれているのは、それだけではありません。
ベンチャー企業をつくるだけの自信を持つ野心的な起業家が数多くいるからです。
一人ひとりが自信を持つことは、個人の成績だけでなく、企業や国の発展とも大きく関連していると言えるでしょう。
ここで最初の問いに戻りましょう。
どうすれば、自信をつけることができるでしょうか? 親から「お前は天才だ」と言って育てられた人はいいでしょうが、そんな人はまずいません。
では、手遅れなのでしょうか? 安心してください。
そういうことはありません。
孫正義が社員に自信をつけさせるためにやっていることをお教えしましょう。
部下に自信を取り戻させるための強烈なひと言! それは、小さなことでもいいので、成功体験を積むことです。
例えば、自信を失った人を再生させるような場面は、企業買収の現場でたびたび起きます。
なぜならば、買収される会社は多くの場合、業績不振で社員も自信を喪失しているからです。
しかし、その企業や事業に可能性があるから買収したのです。
孫正義としては立て直すことが前提ですから、社員にも自信を取り戻してもらわなければなりません。
ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収した時のことです。
当時、ボーダフォン日本法人は万年 3位で、このままでは、上位 2社に顧客を刈り取られて消失すると思われていました。
社内の雰囲気も暗かったようです。
ソフトバンクが買収して新しい経営計画を立てようとしても、営業幹部からも新しいアイデアは出ませんでした。
そこで、孫正義が営業会議に乗り込んでいきました。
「お前ら、負け癖がついとるんじゃないか? 一度でいいから一番になってみろ」 こう一喝したのです。
そこから孫正義も入って徹底した会議が始まり、携帯電話加入の純増 No. 1を一度達成することができました。
当時はまだ iPhone発売前で、純然たる営業の工夫と努力で達成した No. 1だったのです。
これをきっかけに、様々なアイデアも出るようになり、孫正義が口を出さずとも純増 No. 1を維持できるようになったのです。
そして、その後のソフトバンクのモバイル事業の快進撃につながったのでした。
「売る経験」を積ませて営業マンに自信をつけさせる こうした社員に自信をつけさせるための配慮を、孫正義は営業面でもしています。
営業マンも最初は、自分の売っている商品に自信が持てないものなのです。
そこで、最初はキャンペーンを大々的に展開して、会社としては利益を削ってでも「売る」経験を前線の営業マンに積ませます。
営業マンは一度「売る」と、それが自信につながっていきます。
ソフトバンクの商品を「売る」経験をたくさん積んだ営業マンが数多く生まれ、圧倒的な営業力の基盤の一つになりました。
小さな成功が自信につながります。
一度成功すると「自分は勝てる」「自分は成功できる」という自信が生まれてきます。
このためには、小さなチャレンジでも、そこでは絶対に勝てるように最大限努力をしましょう。
資格試験やスポーツ、音楽の発表会でもそのチャレンジに過剰なぐらいの考える時間や作業する時間を投入するのです。
あなたがビジネスパーソンであれば頭を切り替えましょう。
成功して回収が見込めるのであれば、今までにない額の資金を投入してもいいかもしれません。
縮小均衡で小さく縮こまるのではなく、拡大均衡で大きく構えることが重要です。
そして、小さなチャレンジで確実に成功するのです。
こうして一度成功すると自信がついて、頭も柔軟になってアイデアが出るようになります。
それがさらなる成功につながっていくのです。
ぜひとも、読者のみなさんも自分自身が自分の親になったつもりで、自分に成功体験を積ませる努力をしてみてください。
A 小さな成功の積み重ねが自信になる

この悩みは、仕事だけではなく、日常生活においてもあることです。
誰でも失敗するのは怖いでしょう。
例えば、私であれば、英語でプレゼンテーションをするのはかなりプレッシャーがかかります。
特にプレゼンテーションの数日前は非常に大きなストレスが襲ってきます。
「この依頼を受けなかったほうがよかったのではないか」「聞き取りにくい英語のアクセントの人が質問してきたらどうしよう」「飛行機で遠くまで移動するのが面倒だな」と思うこともあります。
もちろん当日、現場まで行けば、そういう思いは消えるのですが。
依頼を受けたら即時に判断をする こうしたプレッシャーに負けないために、やっていることがいくつかあります。
まずは、依頼を受けたら即時に「やる」と決めることです。
なぜならば、判断を先延ばしにすればするほど、ネガティブな気持ちが出てきてしまうからです。
この無意識の心理は、心理学的にも説明されています。
最新の心理学によれば、「人間は、時間が経過して発生するコストやリスクよりも、直近に結果が出るコストやリスクを重く見てしまう」と説明されています。
これをリスク認知バイアス(ゆがみ)と言います。
読者のみなさんの中には海外旅行の準備をしていて、計画をしている時や出発の 1ヵ月前ぐらいまでは楽しみだったのに、数日前にはなんだか行くのが面倒になってきたという人がいるのではないでしょうか。
私もその一人で、成田に行く直前に、「空港まで行くのが面倒だ」などと考えてしまいます。
また認知バイアスは、リスクについてだけでなく金銭的な利益についても言えます。
省電力のエアコンを 8万円払って買い替えると、毎年 2・ 5万円分の電気代が安くなるとしましょう。
しかし、このことを頭でわかっても、すぐに買い替える人は少ないのです。
4年以上のスパンで考えれば、借金してでも買うほうが得なことは明白ですが、目先のリスクにとらわれて、買い替えの決心はなかなかできないものです。
なぜならば、人は直近のコストやリスクを過大に考えて、将来の利益は小さく評価してしまうものだからです。
このように人の心理は時間との関係で様々に影響を受けます。
ですから、依頼を受けたら即座に判断することにしています。
時間がたてばたつほどリスクを感じてしまうようになり、受けたくなくなる可能性が高いからです。
そして、「意思決定を早い時期にする」ということは、準備をするためにもいい影響を与えます。
早くから準備をしておけば、その分、十分な準備をすることが可能になります。
これがもし、直前に決めたらどうでしょうか? あわててそこから準備を始めても、十分ではなく、心の余裕もなくなって失敗する確率が高くなるだけです。
もしくは、そうした心配から、断ってしまい、チャレンジもせず、自分の将来の可能性をつぶしてしまうことにもなりかねません。
チャレンジを「当然できること」に変える 意思決定を早い時期にしてしまって、相手に伝えれば、あとはやるだけです。
スケジュールを見ながら着々と準備をすればいい。
例えば、私のプレゼンテーションの場合であれば、それぞれのスライドごとに言いたいことを3つ決めます。
スライド 1枚ごとのキーメッセージは 1行で書いておきます。
3つの言いたいことは、このスライド後のキーメッセージを補強するための説明になるはずです。
万が一、それを忘れた場合でも、心配はいりません。
最悪、3つのコメントを忘れた場合でも、そのスライドについてのみ集中して、何かを3つ話せばいいのですから。
自分がスライド 1枚で3つのコメントを話すと 3分間かかることを知っています。
これは過去の自分のプレゼンテーションの実績の時間とスライドの枚数から計算した結果です。
人によって、このスライド 1枚あたりで話す時間は違うでしょうから、読者のみなさんも一度計ってみてください。
だから私は、自分のスピーチについてはまったく心配することはありません。
今まで忘れて困ったこともないですし、常にほぼ時間通りに終わっています。
大事なことは、大きなチャレンジを細かく変換することです。
プレゼンテーション全体を一つの塊として、全部の中身を暗記しようとしても、無理でしょう。
しかし、作る時から、「 1枚のスライドにつき、 3分間かけて3つのことを話す」と決めれば、そんなに難しいことはありません。
45分のプレゼンテーションをするのではなく、 1枚のスライドを見て3つだけスピーチすればいいのです。
これならきっと誰もが「自分でもできる」と思うでしょう。
自分ができる範囲で自信が持てることをするのであれば、様々なチャレンジをしても不安にならないはずです。
というより、「チャレンジでもない」と言ったほうがいいでしょう。
「戦わずして勝つ」必勝の構えをつくるのです。
こうすれば、チャレンジではなく「当然できること」に変わります。
本番の一発勝負でなく、事前に準備をしておくのが、孫正義のやり方です。
不確実な要素はできるだけ排除して、勝つべくして勝つ。
チャレンジが当然成功するような準備をきちんとして臨むのです。
孫正義のプレゼンテーションに原稿はありません。
これが可能な理由は、自分でスライドを作り、そのスライドを作っていく過程で、その理由やスライドにはのせなかった情報について、きちんと整理しているからです。
このように準備をしっかりしておくことが、心配な気持ちが起きることを防いでくれるのです。
「失敗を恐れず、チャレンジする」ためのコツは次のようなことになるでしょう。
①チャレンジをすることを早めに決めてしまう。
②それをまわりに宣言する。
③そのうえでチャレンジを細かく自信が持てる単位にまで分割する。
④その単位ごとに時間をかけてしっかりと準備をする。
A 即決後、細分化した一つ一つの単位ごとに準備をする

これまでの人生で、あなたの最大のピンチは何でしょうか? 生きていれば、何度か絶体絶命のピンチに陥ったこともあるでしょう。
もちろんソフトバンクも例外ではありません。
絶体絶命のピンチにソフトバンクが陥ったことは何度かあります。
その中で最大のものは 2000年のネットバブル崩壊だったでしょう。
「ソフトバンクは虚業だ」「ソフトバンクは資金繰りが危ないらしい」などと、ずいぶんマスコミからも叩かれました。
この時、ソフトバンクの株価はあっという間に 100分の 1になってしまいました。
ネットバブル崩壊は、将来ネット関連事業が成長するだろうという過剰な株式市場での期待が剝げ落ちる現象でした。
確かに、 2000年当時のネットバブルは、 IT企業を過大評価していたかもしれません。
しかし、現在、ソフトバンクも Yahoo! JAPANもネットバブル時の水準に回復しています。
言い換えれば、ネットバブルは長期的には正しかったとも言えるでしょう。
結局、株式市場は短期的には過剰に上昇したり下落したりしながらも、長期的には実態に合ってくるということです。
この時、株式市場の波に飲み込まれてしまった会社もたくさんありました。
どんな会社の社長も危機から脱出をしようと全力を尽くしたはずです。
こうした時には会社の社長には「あきらめる」という選択肢は基本的にはありません。
公開前のベンチャー企業や中小企業であれば、社長は会社の借金についても個人保証しているはずですし、株式を公開してしまえば、数多くの株主に対して責任があります。
どうにかして会社を立て直す必要があるのです。
では、消えていった会社とソフトバンクの差は何だったのでしょうか。
ネットバブル崩壊の危機から孫正義が脱出した方法 この時、孫正義がしたことは何でしょうか? それは、ソフトバンクの事業として何をしないのかを決めたのです。
孫正義は、残す事業を Yahoo! JAPANに絞りました。
それ以外の大型事業は売却、また不採算事業は閉鎖しました。
当時のソフトバンクは、株価も低下し、世間の評判も地に落ちていました。
しかし、こんな時には、力を集中することが重要です。
そして、持てる力を最大限に生かすことが大事なのです。
Yahoo! JAPANは残すべき虎の子と決め、その力を最大限活用することになりました。
こうして既存事業を絞り込むと同時に、新規事業としてブロードバンド事業を開始しました。
孫正義はこのブロードバンド事業に時間と労力のすべてをかけたのです。
孫正義は、当時箱崎にあった本社ビルの 17階ではなく、本社ビルの向かいにあった雑居ビルの一会議室に常駐しました。
そこで、午前 9時 15分から午前 2時まで働き続けたのです。
ブロードバンド事業の会員の募集は Yahoo! JAPANが担うことになり、ブロードバンドサービスのブランド名は Yahoo! B Bとなりました。
そして、 Yahoo! JAPAN上で会員募集をすると、あっという間に 100万件の申し込みを獲得することができました。
この結果は、ブロードバンド事業だけでなく、 Yahoo! JAPANの業績維持・向上のためにもなったのです。
。
孫正義流、絶体絶命の危機対応法は、縮小均衡に陥らないことです。
ソフトバンクは事業を整理しましたが、単なるリストラではありませんでした。
一般的なリストラとは、事業を整理して人員も整理して、損益が赤字からプラスマイナスゼロまでもっていく活動のことを言います。
言い換えれば、縮小均衡を達成することです。
通常の会社は、この道を選ぶでしょう。
成長を考えるよりも、一度、事業を縮小させて、均衡をとることを最優先にします。
経営上のバランスがとれず、赤字を垂れ流せば、倒産の憂き目に遭わないとも限りませんから、当然のことです。
しかし、ソフトバンクは事業を整理して、その売却資金を、ブロードバンド事業に投資したのです。
むしろ、成長策であり、拡大均衡への道を辿ったのでした。
既存事業で残った Yahoo! JAPANは、新しい事業の拡大に貢献し、新しい事業は Yahoo! JAPANの業績を下支えすることになったのです。
つまり、拡大均衡を新旧事業の中で実現していたのです。
こうして現在のソフトバンクにつながる通信事業が始まり、ソフトバンクは絶体絶命の危機を脱したのです。
事業の中で成功している要素を見つけて、伸ばす 現在、私はこのような孫正義流の危機脱出法を活用して、いろいろな会社やプロジェクトを支援しています。
ソフトバンクから独立した後に、社外役員を 3社引き受け、年金記録問題に関連して、日本年金機構(旧社会保険庁)の非常勤理事や福島原発事故に関連して内閣府のプロジェクト・マネジメント・アドバイザーをしています。
だいたい私に声がかかる場合は、危機の場合だけ(笑)。
当然と言えば当然です。
非常にまずい事態なので、社外で対応できそうな人を探して声をかけてくるわけですから。
社外役員を引き受けている 3社はすべて就任時には赤字でした。
中には、就任直後から資金繰り表と睨めっこする羽目になる会社もありました。
私が社外役員に就任すると、その会社の事業構造を分析して、赤字の事業を縮小・売却するなど事業を絞り込みます。
どうしても内部では事業の絞り込みが難しいことが多いのですが、遠慮なくどんどん進言します。
そして、既存事業や新規事業の中で成功している要素を見つけます。
一旦、成功要素を見つければ、そこからはその成功要素を可能な限り急速に拡大するように検討します。
拡大均衡を目指すわけです。
結果、これら 3社はいずれも近年、増収増益しています。
株価が急上昇していたり、未公開の会社であっても高い評価を受けたりしているのです。
A 絶体絶命の時こそ、縮小均衡でなく拡大均衡で潜り抜ける

長い間働いていれば、仕事で調子が出ない時や落ち込んだりする時もあるでしょう。
そのような場合には、よく「仕事から離れ、旅行に出たりして気分の転換を図ること」がすすめられるようです。
一見、仕事から離れたほうが、気分が変わっていいような気もしますが、落ち込みの原因が仕事にある場合、仕事の状態が変わらなければ、あまり効果はありません。
日頃会っていない友人から新しい発想やアイデアをもらう こうした時にどうするべきでしょうか? 私の答えは、「しばらく会っていない人に会いに行く」です。
その理由は、「しばらく会っていない人」こそ、現状の閉塞した状況を打破してくれる人である可能性が高いからです。
毎日、毎週、毎月ごとに定期ミーティングを持っているような人と会っても、そこから新しいアイデアや情報を手に入れることはないでしょう。
なぜならば、もともと付き合っている人間関係も似ていて、同じような情報のネットワークに所属している可能性が高いからです。
しかし、しばらく会っていない人は、新しい発想やアイデアを連れてくる可能性が大いにあります。
それは付き合っている人間関係も違い、所属している情報ネットワークが異なるからです。
だからこそ、調子が出なかったり、落ち込んだりした時は、しばらく会っていない友人と食事し、新しい発想やアイデアをもらいましょう。
行き詰まっている仕事を打開するきっかけになるからです。
また、人と会うことで、どんな話をするのかを考えるきっかけになり、脳をリフレッシュさせることができます。
2000年前後に、孫正義から「ある通信会社のトップを訪問するから資料を作れ」と言われたことがありました。
当時その会社は若者向けにスタイリッシュな携帯電話を販売し、勢いのある時期でした。
一方で、当時のソフトバンクは次の一手に悩んでいる状態です。
そこで、孫正義に「どんな資料を作りますか」と聞くと「今から考える」という返答でした。
実は、面談のスケジュールを入れてから、提案内容を検討し始めたのです。
つまり、当時勢いのあったこの会社と一緒に事業をすることが、まず目標だったのです。
この時から孫正義が携帯電話事業に興味を持っていたことは、間違いないと思っています。
孫正義とミーティング当日まで議論して出てきたのが、「ソフトバンクと同社で新型メールサービスを行う」という提案だったのです。
この時はこの会社側のトップが特に興味を示さなかったため、この案は成果に結びつきませんでしたが、もしこの「新型メール」の話が進んでいれば、日本初のツイッターのようなサービスが生まれていたかもしれません。
以前の自分自身から元気をもらう「しばらく会っていない人」と会うことで、自分自身が前回その人と会った時にどんなことを話して、どんな気持ちで仕事をしていたかも思い出すことができます。
自分の現状を説明する際には、以前の自分自身の考えと現在の気持ちの差を認識することが大切になります。
たとえ落ち込んでいたとしても、以前の自分自身の考えや気持ちを思い起こすことで、心理的に立ち直るきっかけをつくることができます。
「しばらく会ってない人に会う」効果には絶大なものがあります。
読者のみなさんも「なんか最近仕事が行き詰まっているな」とか「新しいアイデアが出ないな」ということがあれば、名刺入れやメールボックスをざっと見てください。
「しばらく会っていない人」で「今会ってみたいと思う人」がきっといるはずです。
まず、会うスケジュールの調整をして、その日までに何を話すべきかを考えることです。
きっと現状を打破して、楽しく仕事をこなせるようになるでしょう。
A 「しばらく会っていない人」に会って原点に戻る

この質問は、スペシャリストを目指すべきか? ゼネラリストを目指すべきか? という問題でしょう。
就職活動中の学生も若いビジネスパーソンでも、一度や二度は必ず考えたことのある疑問なのではないでしょうか。
大学生であっても「何か手に職をつけたほうがいいのではないか?」「スキルを持っていないと就職活動で不利ではないか?」と思い、英会話や会計のスクールに通ったりする人もいるでしょう。
若いビジネスパーソンの中には、最初に配属された部署の仕事を極めるべきかどうかで悩む人もいるでしょうし、異業種交流会やセミナーに参加して幅広い知識や視野を持とうと努力する人もいるでしょう。
この質問の答えはこうです。
「単に無目的に幅広い知識や視野を持っても意味がない。
自分のなりたい姿、ゴールをイメージしたうえで、そのために必要なことを学ぶべきだ」 考えてみてください。
就職活動では、資格を持っていれば有利ですか? 例えば、簿記の資格を持っていれば、どんな会社にも就職できますか? また TOEICのスコアが 900あれば、就職できますか? 実際にはそれだけでは十分ではないでしょう。
なぜならば、資格を取ろうと思ったきっかけをきっと面接官は聞いてくるからです。
資格は、あくまで資格に過ぎません。
会社に入って資格を取っても、それだけで評価が上がったり、より昇進が早まったりはしないでしょう。
では、どうすれば就職でき、キャリアをつくっていけるのでしょうか? 孫正義から飛び出した質問 20代の終わりのころ、孫正義とこんな会話をしました。
「多くの人が成功できない理由を知っているか?」「うーん? わかりません」「多くの人は登る山を決めずに、山すそのあたりをぐるぐる回っているだけだ(ホワイトボードに山とその下にぐるぐると螺旋を書きながら)。
これじゃ、決して山頂にはたどり着けない。
まず登る山を決める。
そして、その山頂を目指して歩き始めるんだ」 これが孫正義の考え方です。
「一つの目標に打ち込む」ための「目標」をまず決めることが、もっとも重要だということです。
ソフトバンクの社名にもあるように「銀行がお金を預けたい人と借りたい人を結ぶようにソフトウェアを送り出したい人と受け取りたい人をつなぐ」ということを事業の核としてきました。
ソフトバンクは新規事業の立ち上げや企業買収など行ってきましたが、実はこの社名から離れた事業はしていないのです。
例えば、最初の事業であったソフトウェアの流通もしかり、出版事業もしかり、 Yahoo!のようなインターネット事業、 Yahoo! B Bなどのブロードバンド事業、携帯電話事業もそうでしょう。
すべて、情報の出し手と受け手をつなぐ事業です。
こうした事業を一貫してやってきたわけです。
では、こうした事業をするために、孫正義は幅広い知識や視野を必要としなかったのでしょうか? そんなことはありません。
必要です! 適切な質問で専門家以上の知識を手に入れる 孫正義は、新しい事業を展開する前後には徹底して、その事業に関連することを勉強します。
その勉強方法は独特なものです。
ソフトバンクが、企業買収を行うための資金調達をする際、金融の専門家である投資銀行にプレゼンテーションを依頼するのです。
そこで、孫正義は自分の達成したい目標に合わせて独創的な質問をするのです。
時には、あまりに独創的すぎて、専門家でも答えることができないこともあるほどです。
そのような質疑応答を通じて、孫正義は、あっという間に専門家を超えるような知識を身につけてしまうのです。
これは、金融的な知識だけではありません。
孫正義は、法律についても広告についても I Tテクノロジーについても、同じようにその道のプロから最新かつ最高レベルのことを学んできたのです。
普通の大企業の社長であれば、ここまで自分自身で理解しようとはしないでしょう。
社内に専門家がいるからです。
財務であれば財務部、法務であれば法務部があるわけです。
しかし、孫正義はこれらの分野についても部長クラスどころか担当者レベルの知識を超えるほどの細かなことまで理解しているのです。
こうして学んだ多くの知識を組み合わせて、孫正義は他社が真似できない独創的な戦略を組み立てているのです。
この点では、幅広い知識や視野を持つことは成功のため絶対に必要だと言えるでしょう。
孫正義の勉強方法は自分のやりたい事業、やっている事業に即したものなのです。
漫然と「財務を勉強してみよう」とか「 I Tテクノロジーを勉強してみよう」というようなことではありません。
このため最新の情報で実務を拡張できる勉強になっているのです。
だから、非常に幅の広い視野や深い知識を得る結果となっています。
まずは登る山を決める みなさんにとって、もっとも大事なことは、「目標」となる「登る山を決める」ことです。
それに合った幅広い視野や知識を身につけることが必要なのです。
もちろん、孫正義のように専門家を呼んで質疑応答するわけにもいかないでしょう。
なので、「本屋に駆け込む」ことをおすすめします。
自分自身が決めた目標や現在必要な業務についての本を買い込んで、ざっくりと一気に勉強してしまうのです。
必要ならば、その後スクールに行きましょう。
こうして得た視野や知恵は生きたものになります。
例えば、学生ならば就職活動で「なぜその資格を取ったのか?」と聞かれたら、明確に目標と関係づけて説明できるし、志望動機や努力を示すチャンスにもなります。
また、ビジネスパーソンであれば実務に必ず生きてくるはずです。
あなたの立てる企画や施策に深みが出てきて、上司や他部の人から「彼はちょっと違う」と思われるようになるでしょう。
まとめれば、「一つのことにとことん打ち込む」ことは成功のための十分条件ですが、「幅広い知識や視野を持つ」ことは必要条件だということです。
つまり、「幅広い知識や視野を持つ」ことは必要だけれども、それ自体が目的となっては成功には結びつかないということなのです。
A 必要なことは、専門家から学ぶ

「やりたいこと」がないとは、非常に困った状態です。
それでは、どちらの方向にも踏み出すことができません。
たとえるならば、大平原の真ん中で道に迷ったような状態でしょう。
しかし、人生において、それはよくあることだとも言えます。
今の時代、情報が氾濫し、無限に見える可能性の中から、やりたいことを一つに絞るということは難しいでしょう。
やっている最中は「こっちに行けば正解だ」という確信は持てず、その答えは、結局、結果でしか判断できません。
会社でも入ってみなければ、わからないし、仕事でもやってみなければわかりません。
ロールモデルは職場の先輩でも有名人でも憧れの人でもいい では、「やりたいこと」がない時にはどうしたらいいでしょう。
まず、どちらかの方向に一歩を踏み出すことです。
なにしろ「やりたいこと」がないぐらいですから、どちらの方向にも踏み出しにくいかもしれませんが、少しでも、やりたいと思う方向に進む必要があります。
どの方向を選択しても、その場で正解はわからないのですから、リラックスして、一歩踏み出してみましょう。
方向性を探す方法の一つとして、ロールモデルを探すという方法があります。
ロールモデルとは、自分の人生において見本になる人です。
例えば、職場の先輩でもいいですし、有名人でもいいのです。
「やりたいこと」というと、なかなかイメージが湧かなくても「憧れの人」であれば、思いつくのではないでしょうか? 先ほどの大平原のたとえで言えば、遠くに見える山のようなものです。
「漠然と好き」でも「あの人のようになりたい」でも OKです。
とにかく、そちらの方向に向かい、山を登り始めるきっかけになればいいのです。
私が I T業界に入るきっかけになったのは、高校生の時から孫正義を知っていたからでした。
きっと、私と久留米大学附設高校の同級生だった堀江貴文さんもそうだったのでしょう。
それは、同級生に孫正義の弟の孫泰蔵さんがいて、当時から「東京で、すごか仕事をしとる先輩がおるばい」と知っていたからでした。
こうしたことから考えると、ライブドアで一世を風靡した堀江さんや、「パズル&ドラゴンズ」で大ヒットを飛ばしたガンホー・オンライン・エンターテイメント会長の孫泰蔵さんにとってのロールモデルは間違いなく孫正義でした。
孫正義がいなければ、ライブドアも「パズル&ドラゴンズ」もなかったでしょう。
孫正義のロールモデルは日本マクドナルド創業者 孫正義にとってもロールモデルは存在していました。
それは藤田田さんです。
藤田さんは、日本マクドナルドの創業者で、独特の経営哲学で知られた人です。
孫正義が高校生のころ、アメリカ留学をする際に、何を勉強したらいいかを藤田さんに聞いたそうです。
すると藤田さんは、「コンピューターだね」と言いました。
これが、孫正義がアメリカでコンピューターを学ぶことになったきっかけだったのです。
孫正義は、大学で実際に自分自身でプログラミングもするなどコンピューターに関することを学び、その時の経験がソフトバンクを創業するベースとなったのでした。
実は、その後のソフトバンクのビジネスモデルも、藤田さんのビジネスのやり方を真似した部分があります。
タイムマシン経営です。
タイムマシン経営とは、海外で成功したビジネスを日本に取り込むことです。
日本マクドナルドは、日本で現在約 3200店舗を展開するハンバーガーのフランチャイズ・チェーンです。
ハンバーガーですから、もちろん、その本拠地はアメリカにあります。
アメリカで大成功したビジネスモデルを日本に持ってきて展開したのが藤田さんだったのです。
ソフトバンクが、日本マクドナルドのビジネスモデルを取り入れたのが、 Yahoo! JAPANです。
もともとアメリカでインターネットのポータル(玄関)として成功しつつあった Yahoo!のビジネスモデルを日本に持ってきて、ジョイント・ベンチャーで展開したのが Yahoo! JAPANです。
それ以降、ソフトバンクはアメリカで成功したインターネット企業とジョイントし、どんどん展開しました。
すべて藤田さんをロールモデルとして、見習ってのことだったのです。
孫正義とソフトバンクの基盤は、藤田さんに学ぶことでできたと言っても言いすぎではないでしょう。
何かを成すには、ロールモデルを持つ意味が非常に重要なのです。
自分が憧れるような人とは、自分の理想とする状況を実現している人に近いはずです。
ロールモデルになる人が見つかれば、自分の人生において、どこに重き
を置くべきかがわかってきます。
そのロールモデルになる人が実現していることこそ、あなたが大切にするべきことなのです。
自分が大事に思うことは、当然ながら人によってそれぞれ異なるでしょう。
例えば、「子どもの能力を高める仕事をしたい」「お金持ちになりたい」「人の役に立ちたい」「ある分野で世界的に活躍できる能力を身につけて世界中を飛びまわりたい」「異性にモテたい」「料理研究家になりたい」「お店を開きたい」「新しい技術を開発したい」など、重要だと思うことは十人十色です。
ローモデルを見つけたら、その人の経歴や現在やっていることをよく研究するのです。
一流のお菓子を作るパティシエになりたいとすれば、どうすればなれるのか、その一流パティシエの経歴を見ればわかるでしょう。
どんな学校に行けばいいのか、日本ではどんなお店で修業したらいいのか、フランスに修業に行くべきなのか。
フランスに行くならば、どんなお店で修業するべきかが明らかになるはずです。
ぜひともロールモデルを見つけてみてください。
そこからその人をひも解いていけば自分が何をしたいのか、何をするべきかがはっきりしてくるでしょう。
A ロールモデルを見つけたら、徹底的にやり方を研究・実践する

非常に多くの人から、この質問をされます。
誰もが不思議に思うことのようです。
確かにソフトバンクは、日本だけでなく、世界にソフトバンクの携帯電話事業を拡張しようとしています。
ソフトバンクが日本有数の業績を上げる大企業に成長しても、さらにリスクをとって成長しようとする理由を、みんな知りたいと思うのでしょう。
人が働く理由はいろいろあります。
「とにかく日々の生活費を稼ぐため」「お金持ちになりたい」「有名になりたい」「好きなことを職業にしたい」「人の役に立ちたい」などなど。
新しい事業を起こす起業家であれば、「新しい商品やサービスで世の中を変えたい」「とてつもなくリッチになりたい」などの欲求があるでしょう。
働く理由は千差万別です。
アメリカと日本では労働観が異なる しかし、孫正義を見れば、働く理由はもはや見当たらないのです。
お金も使いきれないほどあり、有名な経営者でもあり、世の中を変えるような新サービスをいくつも提供しています。
こうなると寝る間を惜しんでまで、働く理由が見当たりません。
多くの起業家は、孫正義のはるか手前で満足してしまっています。
例えば、株式を公開して資産家になると、株の一部を売却して不動産に投資して安定した家賃収入で生活していくことを目指す人もいます。
マスコミなどで有名になる前にリタイアしてしまって、悠々自適の生活を送ることにした起業家もいます。
リタイアをするパターンはアメリカでも多く見られます。
思想によって労働観も異なります。
キリスト教の世界では、「労働は神が人間に与えた罰」という考えが背景にあり、日本では、「働くこと自体が人間修養の道である」という労働観があります。
この点が、日本製品の品質の高さの一つの要因になっているとよく言われます。
こうした「労働観」の違いがそのまま、日米でのリタイアについての考え方の違いになっているようです。
アメリカの企業の中でも、特に I T企業では、企業が永続的に続くとは考えていないようです。
数百年続いている企業は、アメリカにはありません。
アメリカ合衆国の建国自体が 1776年ですから、当然と言えば当然のことですが、それ以前に、企業を容易に売却したりするからなのです。
日本的な要素が強い孫正義の経営 一方、孫正義はソフトバンクを 300年は続く企業体として残そうとしています。
孫正義と一緒にソフトバンクの 300年計画を Excelで作ったことがあります。
300年分ですから 1枚のシートでは到底収まらないので A 3で何枚にもなってしまい、巻物のようになってしまいました。
300年も続く経営を目指すという発想は、日本的です。
日本では数百年の老舗は数多くあります。
世界最古の企業も日本企業です。
それは 578年創業の宮大工の金剛組です。
1400年以上の社歴があるのです。
また、財閥やゼネコンの多くも江戸時代に創業した会社がほとんどと言っていいでしょう。
企業が永続性を目指すと自然と事業領域が広がっていきます。
企業の永続を目指そうとすれば、自然とそうならざるを得ないのです。
一つの事業の寿命は 30年と言われていましたが、現在はもっと短くなっているでしょう。
I T業界であれば長くても 10年。
つまり、一つの事業をしているだけでは、その会社は 10年で寿命がきてしまうのです。
それを避けるためには常に新規事業にチャレンジしていくことが大事です。
一方、短期的に利益を上げようとするならば、一つの成功したビジネスモデルのみを高速で回転させることこそが目指すべき道になります。
これはアメリカ企業で見られるパターンです。
新規事業の投資がないので、その事業のみの成長と維持に集中して、投資リターンを最大化することができます。
しかし、この場合には、「事業の寿命 =企業の寿命」となってしまうのです。
300年以上続く企業グループを目指す孫正義の経営は、日本的な経営の側面が強いことがわかります。
そうでなければ、ここまでソフトバンクを拡大しようとは思わないでしょう。
「社会の発展のため」が長寿企業をつくる
経営学では、人が働く理由はマズローの 5段階欲求説で説明されます。
マズローは、アメリカの心理学者です。
マズローの 5段階欲求説では、「人の欲求は、 1段目から徐々に一段ずつ満たされていく」のです。
1段目は、食欲や睡眠欲など「生理的欲求」。
2段目は、危険から身を守り安定した環境にいたいとする「安全の欲求」。
3段目は、ある集団に所属したいという「親和の欲求」。
4段目は、社会から承認や尊敬を受けたいという「自我の欲求」。
5段目には、自分の能力を発揮したいという「自己実現の欲求」。
マズローの 5段階欲求説では、 300年続く企業をつくっていきたいというようなソフトバンクや伝統的な日本企業の経営者の欲求は説明できません。
例えば 5段目の「自分の能力を発揮できるようになること」と 300年続く企業とは、無関係としか言いようがないからです。
逆にマズローの 5段階欲求説は、アメリカの企業の経営者には、ぴったり適合していると言えるでしょう。
実はマズローは、晩年に 5段階のさらに上に 6段目を提唱していました。
第 6階層は、「自己超越欲求」です。
自分自身のエゴを超えて、目的を達成することに集中し、自分の所属する企業や地域、また国家などのコミュニティーの発展を願うようになる段階です。
6段目はアメリカでは珍しいものかもしれませんが、 300年続く企業をつくるという考え方は、 6段目を抜きに、説明することができません。
企業が社会としての側面を持っているから永続を願うのです。
人は何のために働くのかということは、マズローの 5段階欲求説で説明できると同時に、さらにその上の「自己超越欲求」の段階まで含めれば、孫正義がなぜ働くのかも説明できると言えるでしょう。
A 自分自身のエゴを超えて、目標達成を目指す
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