❶最大のピンチは最大のチャンス!
改革というのは常に潰される運命にあると先に述べました。
改革、改革と声高に叫べば、叫ぶほど、その改革は既得権を持った人にあっさり潰されるのです。
しかし、強烈な外圧や環境変化により、強制的に改革せざるを得ない事態が発生することがあります。
その場合、相当な痛みと苦しみ、屈辱感を伴って一気に変わらざるを得ません。
いま、そんな事態が起ころうとしています。
本書は令和2年1月頃から執筆を開始しました。
その途中で新型コロナウィルス感染症が世界的に蔓延、拡大しました。
本書の執筆途中でのその環境の急変・深刻さゆえに、最後に少し補足し、終えさせていただきます。
令和2年4月に全国的に発出された緊急事態宣言は、5月末に解除されましたが、事態が完全に終息する出口はいまだ見いだせない状況です。
たくさんの感染者が出て、医療崩壊の危機に瀕し、経済活動が止まり、都心部・観光地はゴーストタウン化しています。
まるで戦争が起こったかのようです。
そのような状況下ですから、お客様からも悲鳴にも似た声が聞こえてきます。
改革やむなしの状況に追い込まれる、中小企業の後継社長が多数いるのです。
これは本書で想定していた改革とは少し次元が異なります。
平時にオヤジから引き継いだ会社を改革するより、いっそうタフな、待ったなしの意思決定が求められるのです。
お客様からよく「先生、この状況はいつまで続きますかね?」「いつごろ元に戻るのでしょうか?」と聞かれます。
私は「残念ですが、もう元には戻らないでしょう」「その前提で考え、早期に具体的対策を考えましょう」とお答えしています。
仮にウィルス感染症が終息したとしても、個人消費やインバウンド消費は量的・質的に元に戻ることはないと考えます。
世界的に経済社会に残す爪痕はまさに敗戦直後のような大変な状況になるはずです。
日本は過去、第二次世界大戦の敗戦後、国家や経済活動が元通りになりませんでした。
社会・経済が意図せず一変したのです。
基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を基本原理とした新しい憲法が制定され、国家の根本理念が変わりました。
新しい価値観をもって新しい秩序と体制が生まれたのです。
国家の財政破綻も経験しました。
まさに一度「リセット」されたのです。
しかし、その革命のような変化の歴史があったからこそ、日本は「戦後の奇跡」と呼ばれるほどの高度成長を果たし、いま何不自由のない豊かさと平和を享受できているのだといえます。
私たちは、今まで通りの価値観・考え方を継続し、今までの延長線上で事業を行いたい、変わりたくない気持ちでいっぱいです。
しかし、どうやら状況がそれを許してくれません。
いま、従来の価値観での事業推進・拡大をすることについて、いったん立ち止まり、または縮小・撤退することが求められています。
いや、それを余儀なくされると言うべきでしょう。
この度の実態経済の変容をもたらしたウィルス感染症の拡大は「きっかけ」に過ぎません。
もともと問題化する要素はしっかりと根付いていました。
GDPの2倍を超える、莫大な日本の借金です。
すでに無理に無理を重ねていたのです。
日本の借金約1100兆円に、100兆円を超える国家予算と赤字国債の大量発行を伴うコロナ緊急経済対策がなされます。
コロナ長期化に伴い、今後も続く巨額の経済支援対策、税収の大幅減収により財政破綻となる可能性があります。
また、銀行などもコロナ対策の融資などにより、大量の不良債権が発生して行き詰る可能性があります。
この莫大な借金という危機的状況は、ウィルス感染症拡大以前の問題です。
私たちが子孫に残してしまった、とんでもない負の遺産です。
今まで誰も財政再建を必死でやろうとしてきませんでした。
もう、アフターコロナにおいて財政再建はできないでしょう。
国家経営の失敗と言うことができます。
この国家経営の失敗・財政の破綻は結局、甚大かつ急激な有形・無形の国民負担というかたちで私たちにのしかかってくることは間違いありません。
国の借金は私たち国民の借金なのです。
私たちは考え方・やり方につき、いろいろな意味で「甘かった」「間違っていた」といえるかもしれません。
おかしいことは続かないのです。
いったん、仮に財産を失い、売上や所得が半分以下になったとしても、反省し、もう一度、しぶとく出直しましょう。
戦後の焼け野原に立ちつくした若き経営者がそうであったように、です。
最大のピンチは、最大のチャンスです。
おかしいことを改めざるを得ず、また、できなかった〝改革〟をやるしかなくなります。
読者の皆さんのような〝本物〟のみが生き残れる時代となったのです。
おわりに
~人と違うことを恐れない経営者のみが生き残る~大手企業で何らかの会社存亡の危機に当たったとき、会見では役員と言われる偉い人たちがずらっと前に並んで一緒に頭を下げます。
報道陣からフラッシュがたかれる、よくある風景です。
そして、その偉い人たちはしばらくして責任をとって、退職金をもらって辞めていきます。
中小企業のオーナー社長とナンバー2以下では、その意識や責任に大きな格差があります。
会社の存亡を左右する債権者集会があったとします。
その際、常にオーナー社長が1人で矢面に立つはずです。
城まで攻め込まれ、一族全員が逃げてしまったのち、オーナー社長は1人で最後まで城に立て籠もり、涙しながら切腹自害する、そんなイメージです。
私は倒産した会社の後継社長を少なからず見てきました。
おおむね人当たりの良い「いい人」が多かったと思います。
また、交友関係も広い方ばかりでした。
育ちが悪く、粗野な私とは対象的で、品がよく、スマートな方々です。
でも、優勝劣敗の資本主義社会、経済戦争で勝ち残る戦国武将としては失格でした。
他人を尊重しない人は、もちろん後継社長失格です。
でも、人の目を気にしすぎる人、ええカッコしいの人、人が良すぎる人、孤独に耐えられない人、イザとなったら逃げる人も失格なのです。
経営においてその会社が抱える問題は千差万別です。
それぞれの固有の問題に対して、固有の解決策を考え、固有のプログラムで実行していかなければなりません。
他社の例やどこかでうまくいったフォーマットは、結局他社のケースであって、参考にはなってもお手本にはなりえないのです。
私たちは安直に他社と同じような製品やサービス、同じようなシステム、同じような組織の作り方、同じような人事給与制度など、即効性がありそうな手段に飛びつき、安心しようとするのです。
それでは局面は打開できません。
これから巻き起こる、戦後最大の大混乱時代の経済戦争で勝ち残るためには、他人からの批判や人と違うことを恐れてはいけません。
腹をくくり、「われ一人で行かん!」という孤高の精神が、何よりリーダーに必要なのです。
本書が従来の人事の常識、一般的な人事制度にとらわれず、貴社の固有の問題に対して、固有の解決策を考え抜く一助となれば大変嬉しく思います。
読者の皆さんのご健闘をお祈りします!2020年5月福田秀樹
福田秀樹HidekiFukuda1972年大阪府生まれ。
同志社大学経済学部卒。
人事コンサルタント/特定社会保険労務士。
社会保険労務士事務所「福田式賃金管理事務所」所長。
平成12年に社会保険労務士として開業登録後、平成18年に人事給与コンサルタントの専門会社を設立。
開業以来一貫して、中堅・中小企業の人事給与問題の解決を得意とする実務コンサルタントとして、300社以上の経営支援に関与する。
これまでに数百人以上のオーナー社長、経営幹部に関わり、実情に即しながら会社の強みや特徴を最大限に引き出し、問題解決に導いてきた、困り果てた企業が最後に門をたたく「ラストコールコンサルタント」。
著書に『監督官がやってくる!小さな会社の労基署調査対策』(日労研)、『はじめての就業規則100問100答』(アスカ出版社)などがある。
中小企業の賃金研究の第一人者、北見式賃金研究所・北見昌朗氏の門弟。
●福田式賃金管理事務所http://www.fukudasiki.com/
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