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第9章……会社のなかをパクッて歩こう

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第9章……会社のなかをパクッて歩こう

【Q46】優良企業を視察する前に、見せるべき場所は?

武蔵野は全部署に「黄色ボード」と呼ばれる、次ページの掲示物があります。その部署が最近、実施した業務改善を3つ、A4サイズのシートで説明します。

重要なのは、シートの下にある、評価の欄です。

評価結果に加えて、評価者の名前と所属部署、評価した日付を書く欄があります。違う建物にある部署の社員が評価するのがルールです。

ルール通りに他部署の社員の名前がないと、環境整備点検で減点されます。その狙いは、評価を名目に「社員に他部署を見に行かせる」ことです。

儲からない会社の共通点は、社員が他部署を知らないことです。知らないどころか、見たことも、足を踏み入れたこともありません。

ホテルなら、フロントに配属された人は、ずっとフロントにいて、客室にも厨房にも入ったことがないといった具合です。

だから、フロントの人はフロントのことしか知らないし、客室の人は客室、厨房の人は厨房しか知らない。

ホテル全体のことをお客様に説明できるスタッフは1人もいません。こういうタコツボ化した会社が、えてして社員に競合他社の視察をさせます。はっきり言って、ムダです。

業務改善で最も効果的なのは、自社ですでに結果が出ている取り組みを、横展開することです。なぜか。

第1に、成功確率が高い。

他社の成功事例のマネは、前提となる競争条件が違うために失敗することが多い。自社のマネなら、競争条件は同じです。

第2に、マネされた部署のモチベーションが上がります。

第3に、社員の気づきの力が上がります。

他部署をマネして成功した体験があると、社員の他部署を見る目が変わります。日ごろ、見慣れた景色のなかに、自分の仕事に役立つ何かが隠れている。

そういう視線で社内を見るので、今まで気づけなかったことに気づきます。結果、業務改善が加速します。

こうして違いに気づける社員が育った後なら、優良企業を視察し、ベンチマークするのもいいでしょう。自社と他社の違いも分かります。

【A】自社の他部署を見せるべし

【Q47】気づけない人に、気づかせる方法とは?

結果を出せない社員に2つのタイプがあります。1つは、ほかの人が実践している「いい方法」に気づけない人。

もう1つは、「いい方法」に気づいているのに、面倒臭いから実践しない人です。どちらが上司にとって指導しやすいか。後者です。「面倒だからやらない人」を変える方法は多くあり、即効性が高い。

しかし、「気づけないからやらない人」は、一朝一夕に変えられません。

では、気づける人を育てるため、何をすべきか。多くの経営者は訓示する。だから効果が上がりません。

私は、社員に他部署を見せる。さらにそこに、カンニングの仕組みを取り入れています。

武蔵野で、力を入れている社員教育の取り組みに「バスウォッチング」があります。社員とパート・アルバイトが、社内の全部署を1日がかりで視察します。

年に十数回の開催で、各回の参加者は30人ほど。社員は年1回の参加が必須です。バスを貸し切り、パート・アルバイトには日給を支払います。

各部署で、現場の人が「3押し」を発表します。自分たちが整理整頓や業務改善で、特に工夫しているポイントを3つ選び、解説します。

狙いは、2つあります。

1つは、特定の部署で成果を上げている「いい方法」を、全社に広げる。

さらに重要なのは、何気ない現場の風景に潜む工夫に、自ら気づける力を育むことです。だから、バスウォッチングでは、「今日1日で気づいたこと」を、社員は50個以上、パート・アルバイトは20個以上、書いて提出してもらいます。

書ければ500円のご褒美が出ます。となると、やはり皆、50個、20個を目指して、頑張ります。

しかし、自分一人で数十個は、ハードルが高いです。そこでカンニングです。移動中のバスで、一人ずつ「自分が気づいたこと」を発表させます。

ほかの人は、そのなかに「自分が気づかなかったこと」がないかと必死に耳を傾け、あれば「なるほど」と思ってメモします。

特にいいのは、それまでは内心、「あいつは仕事ができない」と思って、バカにしていた同僚や後輩が、結構いいことを言っているケースです。

「あんなやつに、オレは負けているのか」と悔しくなり、強く印象に残ります。こうして自分の手と頭を動かし、さらに感情まで揺さぶられた瞬間、その社員の「気づく力」は確実に上がります。

お金で釣って、わざとカンニングさせる。このようなやり方に、眉をひそめる人もいるかもしれません。

しかし、元来、ものぐさな人間が、何のインセンティブもヒントもなく、今まで気づけなかったことに目を向けるのはムリです。

だから、会社がわざわざバスを用意し、ご褒美や日給を提供してまで、強制的に気づかせるのです。

【A】わざとカンニングをさせる

【Q48】「会社を変えたい」と願う社長が、陥る罠とは?

「会社を変えたい」と、社長は願う。それ自体は、まったくもって正しい。強い会社の条件は、常に変わり続けることです。

そこで大半の社長が間違えるのは、一度に多くを変えようとすることです。大改革の計画を練っているうちに疲れ果て、何も実行しないまま、挫折してしまう。

あるいは、支離滅裂な指示を繰り返した末に社員が混乱し、すべてが中途半端に終わる。結果として、何一つとして変わらないまま、時が流れます。

私は、社員に絶え間なく変化を求めるが、いつでも「1度に1個でいい」と、念押しします。それも、「一番易しいことを1個だけやればいい」と、強調します。

バスウォッチングの後に「気づき」のリポートをもらうとき、そのなかから「自分が実行すること」を、1つだけ申告させます。

武蔵野は従業員数760人で、バスウォッチングの参加者は、パート・アルバイトも含めると年に400人くらいです。

400人の従業員が1人1個変えれば、会社全体で400個が変わります。

実際は、「この1個をやります」と申告した人のうち、実行に移すのは半分より少し多いくらいです。

それでも200個以上が変わります。

我が社のような従業員数760人の会社で、1年に200個以上の変化が生まれれば、もう全然違う会社になります。

しかも、その変化は、社長が「上から目線」で、決めたものではありません。

社員自身が「現場目線」で、「こうしたら本当に仕事がやりやすくなりそうだ」と感じて、選んだ変化です。

社長1人で考えて、一度に何百個もの変化を起こそうとしても、絶対にうまくいきません。

しかし、何百人もの従業員が、今すぐにできることから1人1個の変化を起こせば、会社は100%の確率で、大きく進化します。

【A】一度に多くを変えるのはNG。「1個」にこだわれ

おわりに

2016年4月期、武蔵野は14期連続の増収を記録し、売上高は54億5800万円に達しました。前期比11%の増収です。実質的な経常利益は約5億円。経常利益率は9%以上です。かつての自社の姿を振り返れば、奇跡です。

私が、創業者の故・藤本寅雄から経営を引き継いだ約30年前、武蔵野は売上高7億円で、赤字続きでした。

社長になって、最初に立てた中期経営計画の売上高目標は15億円。5年で倍増。はっきり言ってムリですが、達成しました。ムリして頑張った。

その後も七転八倒しながら、無謀な挑戦を重ね、そして今、夢の「売上高50億円」を達成し、利益もたっぷり出ている──。私には奇跡としか思えません。そんな奇跡が、なぜ起きたのか。

武蔵野を指揮することになったとき、私はまず大号令をかけました。「環境整備で、業界一になる!」そのときには、深い理由などありませんでした。

当時、師事していたコンサルタント、故・一倉定先生が常々、「環境整備が大事」と言っていたからです。

社長になって真っ先に経営計画書をつくったのも、一倉先生の教えに従ってです。何をするにも、最初はそれくらい、いいかげんでいいのです。

一倉先生の指導先に、業績が伸びている中小企業が多くありました。ならば、結果が出ている方法をマネてパクろう。

そう考えて、環境整備に力を入れ、経営計画書をつくってみました。理由なんて、最初は分かりません。

けれど、実際にやって、体験してみれば、環境整備の意義も、経営計画書の意義も、骨身に染みて分かってきます。

この本でパクりのネタを見つけ、実践する人が一人でも多く出ることを願います。誰もがいきいき働く職場をつくるヒーロー、ヒロインになってください。

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