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第8章……基準を定めて、チェックしよう

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第8章……基準を定めて、チェックしよう

【Q42】「やれ」と指示した後に、するべきことは?

武蔵野は4週間に1度、全社が張りつめた空気に包まれます。「環境整備点検」が、実施されるからです。

社長と幹部が1日かけて全部署を回り、整理整頓や掃除など、環境整備の実施状況を点検します。

部署ごとに21項目をチェックして採点し、3回連続で高得点を取った部署は、メンバー全員が2000円のご褒美を獲得し、賞与が増えます。逆に得点が低ければ、賞与は減ります。

次の写真は、環境整備点検日の早朝の一コマです。本社社屋の2階の窓を、社員が外側から念入りに拭いてます。

こんな社員の姿を見た人は「武蔵野の社員さんは、真面目だなあ」と、感心しますが、実のところは前述の通り。

お金に釣られているのです。環境整備で社員教育する経営手法は、私の専売特許ではありません。

今となっては伝説のコンサルタント、故・一倉定先生の教えに従ったもので、武蔵野創業者の故・藤本寅雄も熱心に取り組みました。

環境整備の実施状況を、社長と幹部でチェックする仕組みは、私のオリジナルです。部下に「やれ」と命じて、「はい」と返事が返ってくると、社長も幹部も気が緩みます。「はい」と答えが返ると、やってくれると信じます。しかし、口約束と実行は別の次元です。

部下の実行の担保は、上司が現場に足を運び、自分の目で確かめなければできません。

私は、藤本の時代から、社長がどんなに「環境整備をしろ」と言っても、社員がサボる現実を見てきました。当時、社員だった私も当然サボっていた。

だから、社長になって、「環境整備で業界一になる!」と宣言した後、現場でチェックを行った。それも、「●月●日に、チェックします」と予告してから行きました。

これが、環境整備点検の始まりです。点検日を指定すれば、社員は嫌々ながら、環境整備をやります。いつやるかといえば、点検の前日、あるいは当日の朝です。

直前に慌ててやります。そういう社員を責めるのは愚かです。締め切りの直前に慌てて仕事を片づけるのは、人間の自然な性です。

しかし、慌ててではあっても、社員が言われたことをきちんとやる会社と、やらない会社では、どちらが強いか。

答えは明白。しかも雲泥の差がつきます。

【A】点検日を予告して、チェックに行く

【Q43】社長が現場を回れば、十分か?

私が現場を点検に回ると、社員は必要最低限の力で環境整備を始めました。最低限の力なのに、本人は一生懸命のつもりです。

これが曲者です。社員は皆、自分なりに一生懸命、整理整頓や清掃に取り組んで、しかも結果に個人差があります。

点検では「○」と「×」をつけます。すると、「×」をつけられた社員は、不満に思う。「こっちは一生懸命やっているのに、なんでだよっ!」そこで、私は気づきました。

「見せなければ、分からない」根本的な問題は、私と社員の価値観が一致していないことでした。

私が考える「きれいな現場」と「汚い現場」の違いが、社員に分からなかった。原因は、現場を一緒に見ていないことでした。

現場で1カ所ずつ、「ここはきれいですよね」「ここは汚れていますね」と確認し、価値観をすり合わせないから、お互いの「きれい」と「汚い」の基準が一致しなかった。そこで、環境整備の点検に、社員を同行させました。

さらに同行した社員に、点検の一部を任せた。すると、「×」をつけられた社員も納得する。

「確かにこの部署は、うちより整頓ができている」「自分は頑張っているつもりでも、ほかと比べれば、まだまだなんだ」と。

私は、こんな例え話をします。

「『あそこの店に、きれいな娘さんがいる』と、言葉で100回言っても、伝わらないよ」と。なぜなら、「きれいな娘さん」の基準は人によって違います。あなたの基準は、どれほど言葉を重ねても伝わりません。けれど、1回でも一緒に「きれいな娘さん」を見せれば、正確に伝わります。

社長一人が現場をチェックするだけでは、会社は変わりません。社員と一緒に現場に行き、時と場所を共有しながら、価値観を合わせる。手間はかかるが、地道な積み重ねが、強い会社をつくる第一歩です。

【A】社員にも見せなければ、伝わらない

【Q44】評価基準をつくるコツは?

武蔵野の環境整備点検のチェック項目とはどのような内容か。主な項目をざっと紹介します。

□文房具が所定の位置に向きをそろえて置かれているか

□掲示物が4点で留められているか

□掲示物が水平に掲示されているか

□「」、

□蛍光灯の型番の表示を見て、向きがそろっているか

□蛍光灯をさっとなでて、手に汚れがつかないか

□パソコンを移動させたとき、周囲に汚れがないか

□キーボードの間やモニターの角を綿棒でなぞって、汚れがつかないか

これらは、整頓や清潔のチェック項目として比較的分かりやすい。

そのほかに、武蔵野独自の仕組みが、きちんと運用されているかをチェックする項目もあります。

以前に紹介した(こちらを参照)、部署ごとの月次の粗利益と営業利益を示す表が、会社のルール通りに記入されているか。

このあとに紹介する(こちらを参照)、「業務改善シート」が3カ月分、きちんと掲示されているか、といったことです。

要するに、会社が「やれ」と、社員に指示しても、社員がなかなか「やらない」ことを、どんどん点検項目に加えた。

環境整備点検の点数は、その部署のメンバーの人事評価に反映され、賞与の額を左右します。お金がかかっているから、皆、必死にやります。

こうして、会社の方針が末端の隅々まで行き届く、実行力の高い組織ができました。環境整備の点検項目は、今では社員が変更します。私の役目は社員の提案の承認だけです。

自分の提案が会社の方針に変わると面白いので、社員は活発に提案します。その結果、現場に要求されるレベルはどんどん上がり、自分で自分の首をしめていますが、社員は喜んでやっています。

ただ、ここまで読んで、「うちの会社でも環境整備点検を始めよう」と思い立った人に、ぜひとも注意してほしいことがあります。

それは、最初から評価基準を上げすぎないことです。環境整備点検に限った話ではありません。

多くの会社が、評価基準を厳しくしすぎて失敗しています。子供に自発的に勉強させるには、どうしたらいいでしょうか。賢い学習塾は、こんなやり方をしています。

生徒が入塾後、最初に受けるテストを易しくして、みんなに高得点を取らせる。するとお母さんは「偉いね」と、子供を褒めます。

だから子供がやる気を出して、勉強に励む。そこで次のテストは、前より少しだけレベルを上げる。

とはいえ、子供たちは勉強するから、今度も高得点を取り、モチベーションを維持します。

こうすれば、子供に余計なストレスを感じさせることなく、その実力を確実に引き上げていけます。

しかし、多くの学習塾が、その逆をやります。いきなり難しいテストで低い点を取らせ、やる気を奪ってしまう。社員教育も、同じ轍を踏む企業が目立ちます。

私が、環境整備点検を始めたとき、工夫したことが2つあります。

第1に、採点を120点満点にしました。こうすれば、20点の減点でも100点。普通の学校のテストなら満点の数字です。だから、100点満点で80点を取るよりうれしいと考えました。

第2に、120点を取れる部署が出るように、採点基準をいったん緩くした。

110点、115点の部署は、あと少しの努力で満点が取れるので、満点を狙って頑張ります。こうして全体のレベルを上げて、採点基準をまた戻した。

何年も続けるうち、会社の隅々までピカピカになりました。今では、会社を訪れた人たちから「社内がきれいですね」と褒められるので、社員のやる気は増すばかりです。必要なのは、発想の切り替えです。

「努力したら満点をあげる」のでなく、「最初に満点をあげて努力させる」。人手不足が深刻化する今後、ますます有効な考え方ではないでしょうか。

【A】わざと満点を取らせて、やる気にさせる

【Q45】社員を規律正しくするコツは?

武蔵野の早朝勉強会を見学した人が最初に驚くのが冒頭、我が社の「経営理念」と「七精神」の唱和です。

全社員が背筋をぴんと伸ばし、喉が張り裂けんばかりの大きな声で唱和するので、多くの社長が疑問に思います。

「どうしたら今どき、こんなに規律正しい社員を育てられるのか」答えは簡単で、練習をさせるからです。

年に1回の経営計画発表会と半期に1回の政策勉強会は、若手社員から2人を選抜し、経営理念と七精神の唱和の「導師」に任命します。

当日は、導師が大きな声で経営理念を読み上げると、それに続く形で全社員が唱和します。導師は大役で、選ばれた若手は緊張します。

しかも、導師はリハーサルの際、声の大きさを音量計で計測されます。男性100デシベル、女性は95デシベルが基準。超えないと不合格です。合格するまで、何回でもやり直しをします。

最初のころは、合格までに1時間かかることもざらでした。導師が合格しないことには、リハーサルが終わりません。本人はもちろん、リハーサルに参加する社員全員が疲れます。だから、みんなが必死になります。

導師に選ばれると、本人に気合いが入るのはもちろん、上司や同僚も「頑張れっ!」と、圧力をかけます。

なぜなら、早くリハーサルを終えて、本番の前に休憩する時間がほしいからです。動機は不純です。

けれど、不純な動機で頑張る結果、大声で唱和するのが当たり前になり、見学者に感動を与えます。

「こんなに礼儀正しく、規律ある社員がそろった会社はほかにない」と、褒めてもらえます。礼儀正しく、規律ある社員を育てるのに、社員の心が変わるの待ってはいられません。

そもそも社長一人の力で、社員の心を美しく変えることなどできません。できると思うのは、過信であり、傲慢です。だから私は、不純な動機で社員を追い込み、行動を変えます。

礼儀正しく、規律ある行動を取らざるをえないよう、強制的に仕向けます。社員の行動を変えるには、道具が必要です。それが音量計です。

漠然と「大きな声を出せ」と言われても、どのくらいの大きさならば十分か、社員には分かりません。

道具を使って、「男性100デシベル」「女性95デシベル」という、明確な基準を示します。

そして、この基準を満たしているかを、道具を使ってチェックする。すると、社員の行動が変わります。行動が変わると、気持ちが変わります。

見学した人に褒められてうれしくなり、経営理念の唱和時に一体感の心地よさを味わいます。こうして、いつしか心も変わっていきます。

形から入って、心に至る。環境整備の底流にあるこのセオリーは、礼儀、規律にも当てはまります。

【A】「行動の基準」を数字で示す

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