第8章もっとウケるために
トークの前後にも気を配ろうこれまでの章では、ウケるトークの探し方や作り方、そして話し方について、例を交えながら紹介してきました。この本に書いてあることを実践すれば、きっとあなたもトークで笑いが取れるようになります。それでは、この章では何をするのかというと、ウケるトーク術をモノにしたあなただけに贈る、「もっとウケるための技術」を紹介しようと思います。ウケるトークの中身や話し方に関してはだいたいお分かりいただけたと思いますが、いざトークをする際に、その前後で「あること」をすれば、あなたのトークはもっとウケるんです!それは何だと思いますか?答えは、「つかみ」と「コメント」です。ここでは、あなたのトークをもっとウケるものにするために、「つかみ」の仕方と「コメント」の入れ方を紹介していきます。トーク前のつかみを意識芸人さんがよく使う言葉に「つかみ」というものがあります。「つかみ」とは、漫才やコントなどの本ネタに入る前にお客さんを笑わすことで盛り上げ、その後の笑いを誘いやすくする方法です。毎回、特定のフレーズやギャグを使って笑いを誘うことが多いです。この「つかみ」を行うことにより、お客さんとの距離感が縮まり、笑いも起こりやすくなります。この「つかみ」を、ウケるトークにも取り入れていきましょう!この場合、「起承転結」の「起」の前に、今から話す内容の「つかみ」を入れてあげてください。トークにおける「つかみ」とは、これから話すことの予告のようなものだと考えてください。予告をしてやることで、聞き手はより集中して、より興味を持って話を聞くようになります。だからと言って、決してオチや核となる部分は言ってはいけませんので、注意してくださいね。「つかみ」には幾つかの手法がありますので、ここで紹介します。〔同意型つかみ〕相手に共感を求める出だしで始める。例:「女の勘って、すごくないですか?」→この間、彼女と……「旅先ってついハメはずしちゃうよね?」→高校のころ、修学旅行で……〔質問型つかみ〕相手に質問する形で話し始める。例:「本当に痛いときって、どうなるか分かります?」→小学校の夏休みに……「大人になってから号泣したこと、あります?」→つい最近の話なんですけど……〔感情型つかみ〕自分の気持ちから話し始める。例:「僕にはガッカリな父親がいるんですけど」→もう60歳過ぎなんですけど……「めちゃめちゃ後悔した話なんですけど」→気になる女の子と……いかがでしょうか?このように、エピソードトークにおける「つかみ」には、「同意型」「質問型」「感情型」の3つがあります。自分のキャラクターやトーク内容に合ったものを選んで入れてあげてください。これを踏まえて、第7章で変身させた話の1つ、「真夏の刺身」に、それぞれのパターンで「つかみ」を入れてみます。3つの「つかみ」から受ける印象は、それぞれ異なると思います。〔同意型つかみ〕「女の子からの手料理って、普通はうれしいことだよね?」→でも、俺の彼女、すんげぇ料理が下手なんだよ……〔質問型つかみ〕「食べ物で死にかけたことある?」→俺の彼女、すんげぇ料理が下手なんだよ……〔感情型つかみ〕「最近、彼女と別れようかなって思うときがあるんだ」→なぜなら、俺の彼女、すんげぇ料理が下手なんだよ……
このように、トーク前の「つかみ」を有効に使うことで、あなたの話を注目させたり、期待させたりすることができます。どんな出だしで話を始めたらいいのか?これを参考に、相手を引き付ける方法を工夫してみてください。トーク後のコメントを意識トーク前の「つかみ」は、聞き手をあなたへ引き付ける効果があると述べました。次は、トーク後の「コメント」について話をします。「コメント」には、エピソードトークの後に、笑いを付け加える効果があります。自分の感情や話の続きを言うことで、さらに笑いを重ねることができるんです。「コメント」も「つかみ」と同じく、「同意型」「質問型」「感情型」の3つに分けられます。〔同意型コメント〕相手に共感を求めるコメント。例:(浮気がバレて丸坊主になった話の後)「浮気なんて、するもんじゃないね!」〔質問型コメント〕相手に質問する形で話し終える。例:(浮気がバレて丸坊主になった話の後)「浮気がバレたとき、お前ならどうする?」〔感情型コメント〕自分の気持ちで話し終える。例:(浮気がバレて丸坊主になった話の後)「今度はバレないよう上手くやるよ!」「つかみ」と同じように、「真夏の刺身」の話に「コメント」もそれぞれ入れてみます。〔同意型コメント〕(……山小屋のトイレ独占状態だったよ。)「いやぁ~本当に料理下手な彼女と付き合うと、命がいくつあっても足りないよ!」〔質問型コメント〕(……山小屋のトイレ独占状態だったよ。)「お前ならどうする?料理がマズいって正直に言える?」〔感情型コメント〕(……山小屋のトイレ独占状態だったよ。)「最近じゃ、彼女の顔見ただけでお腹痛くなるんだよ……」このように、トーク後に「コメント」を入れることで、あなたの話はよりふくららんでいきます。トークの続きや、自分の感情をコメントとして入れてあげると、聞き手はもっとあなたの話を聞きたいと思うようになるでしょう。さらに、質問型のコメントだと聞き手の話も引き出すことができるので、その場にいるいろいろな人へ話を振ることができる、いわゆる「回し上手」にもなれます。「つかみ」「エピソード」「コメント」と、すべてに気を使うことで、さらにウケるトークへと変身させることができるんです!
上手い人を真似ようエピソードトークをより盛り上げるための方法として、「つかみ」や「コメント」について話しましたが、ここではもう1つ、もっとウケるためのコツを紹介しておきたいと思います。それは、「上手い人を真似る」ということです。テレビで活躍中のお笑い芸人さんの話し方や表現方法、ネタの中身など、何でも真似できるものは真似しましょう!真似をするための手順としては、まず、自分が好きな芸人さんで、トークが上手いと思う人をチェックします。そして、その人のトーク内容をメモに取って自分なりに分析を行ってください。その際、その話を自分がイチから作るとすると、どうやるだろう?と考えながら分析をしてみてください。例えば、次のようなポイントをチェックしてみるといいでしょう。*「アニキとタケシがカコ住食」に分けるとどこに分類される話なのか?*その話を起承転結に分けるとどうなるのか?*話の中で、笑える瞬間はどこなのか?*どんな風に緊張(フリ)は展開されていて、どう緩和(オチ)をしているのか?*その話のどこに聞き手は共感するのか?その芸人さんが面白いと思った部分はどこなのか?また、話の内容以外の部分でも参考になるテクニックはたくさんあるので、それもしっかりと分析してみましょう。*比喩の上手い芸人さんをチェックする。上手い例えは、メモを取っておく。*面白い擬態法を使う芸人さんをチェックする。自分なりの擬音を考えてみる。*トーク中、どんな風にキャラを演じ分けているのか?自分でもいろんなキャラを試してみる。*話が上手い人の声の出し方やテンポ、動きなどを真似して、自分のものにする。このような感じで、話の内容はもちろん、話し方も十分参考になるので、ぜひチェックしてみてください。空気を読むチカラを付けよう芸人さんから学べるものとして、もう1つ挙げるなら、彼らの「空気を読むチカラ」でしょう。お笑い芸人という職業は、個性が目立ってナンボの世界に見えますが、実は、テレビのバラエティ番組などでは、出演者の集団によるルールの中で、上手く個性を発揮しなければ笑いは取れません。バラエティ番組におけるルールとして、次の2点が挙げられます。時と場所を考えて発言する相手の発言を見捨てないまず、「時と場所を考えて発言する」についてですが、芸人さんは時間帯を選ばず1日中テレビに出演しています。そんな中、彼らは深夜とゴールデンタイムでは、トークのネタやキャラクターを変えているんです。例えば、深夜にはマニアックな趣味の話や、性に関する失敗談などをしゃべる芸人さんも、ゴールデンタイムでは家族の話や淡い恋愛の思い出などを出してきます。キャラクターも深夜は毒舌全開なのに、ゴールデンタイムでは良き父親を押しているかもしれません。ぜひ両方出ている芸人さんをチェックしてみてください。時と場所で違う顔を見せているはずです。続いて、「相手の発言を見捨てない」についてです。芸人さんは、芸人同士はもちろんですが、相手が歌手やアイドルといった、笑いに対して浅い人でも、笑いを共有することができます。それは、彼らが歌手やアイドルの人たちの発言に対して、見捨てることなく、的確なコメントやツッコミを入れて笑いに変えているからです。歌手やアイドルの方々が芸人さんと絡んでいるところをよく見てみてください。芸人さんに助けられている瞬間を目にすることができるはずです。もちろん、この2つのルールは、ウケるトークを「もっとウケる」ものにするためにも大事だと言えます。あなたは、「時と場所を考えて」エピソードトークをする必要があります。昼と夜では話せる内容が違うでしょうし、会議の場と合コンの席でもその内容は全く変わるでしょう。また、聞き手が知り合いばかりの場合と、知らない人も含まれている場合でも、話の深さは変わってくるはずです。これらの違いは、ある程度は感覚で分かると思いますが、回りの状況や反応を見て、話の内容を変えていけたらより素晴らしいでしょう。一方、「相手の発言を見捨てない」というのは、ほかの人が話をしているときに効果的です。あなたが聞き手になった場合は、話し手としての自分が聞き手にされてうれしいことをしてあげましょう。つまり、良いリアクションと、適度な質問をしてあげるということです。無表情で聞かれると、話し手としては困ってしまいますよね?なので、話に対して相づちを打ちつつ、リアクションを取ってあげるといいでしょう。さらに、ほかの聞き手の人が想像をしやすいように、質問をしながらそのトークを一緒に盛り上げていきましょう。そうすればきっと相手も、あなたが話しているときに、同じことをやってくれるようになります。もっとウケるために、ぜひ芸人さんから「空気を読むチカラ」を学んでみてください。
あとは実践あるのみ!さて、ここまでいろんなことを言ってきましたが、この本を読んでいただいたあなたには、ぜひとも「ウケるトーク術」を実践してもらいたいと思います。最初のうちは、緊張して失敗の連続かもしれません。そんなときは、「どうせだれも期待していない。スベっても大丈夫!」と開き直ってください。そしてとにかく、人前で話すことに「慣れ」ましょう。続いて、ネタを探すのに苦労することもあるかもしれません。「アニキとタケシがカコ住食」を毎日つぶやくことを心がけてください。きっとネタを探すことが楽しくなるでしょう。トークの構造は「5W1H1D」と「起承転結」です。ドラマを観るとき、マンガを読むとき、だれかの話を聞くときなど、これらの構造を常に意識してみてください。笑いの原則は?そうです。「緊張の緩和」と「共感」ですね。緊張状態の場所には笑いが落ちています。これはネタ探しにも役に立つでしょう。「フリ」の大切さも忘れないでくださいね。聞き手を共感させるには、「自分の気持ち」を話に入れてあげることが大切です。話し方も今までとガラッと変えましょう。大丈夫です!だれもあなたのキャラクターなんか覚えていません。中途半端なマイナス思考はNGです。「声の出し方やテンポ」も工夫して、トークに出てくる登場人物は、その人をモノマネする勢いで話しましょう。「比喩」や「擬態法」もバンバン使ってあげましょう。芸人さんの例えや擬音を真似して使ってもいいんです。さらに、トークをする際、口だけじゃなく「動き」も取り入れてくださいね。しゃべりながら動くということは、聞き手の集中や注意を引き付ける効果だけでなく、あなたの緊張をほぐす効果もあるんです。どうでしょう?あなたの話はウケていますか?もしウケが悪いなら、「補足説明」が足りないのではないか?より面白く「脚色」すべきではないか?不要な部分を「削除」すべきではないか?など、トークの加工も忘れてはいけません。これは、話をする前の段階、トークを作るときにもやっておきましょう。ここまでしたら、エピソードトークは万全です。あとは「つかみ」と「コメント」も入れてやりましょう。「つかみ」「エピソード」「コメント」の流れで、あなたのウケるトークはより完璧なものとなるでしょう。あとは話すだけです。「ウケるトーク術」を実践するだけで、あなたは聞き手の笑顔に包まれ、最高の気持ちを味わえるはずです。聞き手も笑うことで、幸せな気分を得ています。話し手も聞き手もどちらも幸せになれる──これは、この本で紹介してきた「ウケるトーク術」ならではの最大のメリットです!
おわりに「沈黙は禁」──ウケるトークのススメ古くから伝わることわざに「沈黙は金」という言葉があります。これには、しゃべりの上手い人よりも、沈黙を守れる人の方が貴重である、という意味があるそうです。「おい、おい。ここにきて沈黙の方が大事だなんて、何を言ってるんだ!」「そんなこと言っちゃ、身も蓋もないだろう」そういった声が聞こえてきそうです。もちろん、その通りです。ですから、あなたに送ることわざは「沈黙は金」ではありません。金ではなく、禁止の禁で、「沈黙は禁」と言わせてください。人と人とのコミュニケーションで成り立つ現代社会において、いつまでも沈黙しているわけにはいきませんよね。自ら話さなければ、何も得られないのですから。そのためには、何度つまずいてもいいんです!本書を読んで終わりではなく、ぜひ実践してください。失敗を恐れては何も生まれません。「はじめに」でも述べましたが、極度の人見知りだった私がここまでできたんです。あなたにできない理由がありません。というわけで、最後にもう一度言いたいと思います。「沈黙は禁」ぜひ、ウケるトーク術を実践してください。2009年10月田中イデア
プロフィール田中イデア(たなかいであ)放送作家・ライター/鹿児島県出身。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。教育学の大学院を修了後、教育者になるであろうという大半の予想を裏切り「マスコミ業界」へ。テレビやラジオの企画構成や映画の脚本を担当。他にも携帯サイトの企画プロデュースやイベントやライブの構成も行う。また教育大での経験を活かし、若手芸人の発掘や育成を目的として、ワタナベコメディスクールや東京アナウンス学院、松竹芸能タレントスクールなどで講師、ネタ見せの活動を行っている。主な受賞歴に『ラジオCMグランプリ』金賞、『のこすことば文学賞』優秀賞、産経新聞社主催『約束(プロミス)エッセー大賞』大賞など。その後、『約束エッセー大賞』大賞作品を原作とした映画『アニと僕の夫婦喧嘩」の脚本も執筆。著書に『お笑い芸人に学ぶいじり・いじられ術』『お笑い芸人に学ぶウケる!アイデア術』(共に小社)、小説『ハケン芸人』(扶桑社)、共著書に『爆笑コント入門』(小社)、構成に『女性解放区(杉本彩・さかもと未明・倉田真由美)』(PHP研究所)などがある。
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