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第8章 「ひとり」ですべてを教えようとしていませんか?

なぜ、教え方は分かっているのに実践できないのか ここまで読んでくださった皆さんの中には、「言っていることは分かるけど、実際にやるのが難しいんだよね」と思っている方も多いと思います。 確かに、この本を読んでくださっている多くの方は、教えることを専門的な仕事にされているわけではなく、本業の一部として教えているため、教えることだけに集中できないということが問題点として挙げられます。 大人相手に教える際に障害となる点は大きく分けて2つあります。それは、 ●教える時間の確保 ●教える内容の難化 です。 それでは、1つずつ見ていきましょう。教えることだけが仕事じゃないから時間が取れない 現場で教えていて一番苦労するのが「教える時間の確保」、つまり、自分の業務との両立でしょう。教える立場の多くの人は、自分の仕事をしながら相手に教えなければいけません。要するに、教えるための時間を、就業時間の中から捻出しなければならないのです。この時間確保が難しく、頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。 本業である自分の仕事はおろそかにできないので、そちらに集中していると、つい新人を放置状態にしてしまう。逆に、会社によっては、新人に残業をさせられないので、勤務時間中は新人指導に集中していると、自分の本業に手をつけられるのは残業時間中になってしまう。なんてこともあるでしょう。 あるいは、自分は会議や出張で不在にしていることが多く、物理的に新人と会う機会を作れない。サービス業では、お客様と接しているときに新人に指導したい瞬間があったとしても、お客様の目が届くところでは指導できません。仕方ないので、後で指導しようと思っていても、忙しさにかまけて忘れてしまった。なんて話もよく耳にします。 挙げ句の果てには、指導する時間がきちんと取れなかったがために、教える側が自ら新人の仕事を請け負って、自分の仕事を増やしてしまっている場合もあります。仕事であれば締め切りを守ることも、迅速に対応することも大切ですが、教える側が新人の仕事をしてしまっては、一向に、新人は成長しません。また、

目の前の問題を解決しているだけで、問題の原因を解決できているわけではないので、同じことを繰り返してしまうでしょう。 教える時間が確保できなければ、新人がいつまで経っても独り立ちしないだけでなく、自分を苦しめ続けることになってしまうので、いち早くこの問題を解決する必要があります。教える内容が専門的で対応できない 教える内容が、高度化、複雑化、専門化し、教える側も正解が分からないという場合もあります。例えば、 IT業界など、変化が激しい世界では、古くから会社にいる先輩よりも、新しく入ってきた人の方が、最先端の知識・技術を持っているため、答えを知っているということがあります。 小売業などでは、新商品が次から次へと発売され、教える側の自分でさえ把握できていない商品があったり、商品の情報を取り違えて覚えてしまい、誤った情報のまま教えてしまったりということもあります。 また、所属チームや部署が違う新人の面倒を見なければいけないときは、教える側と教わる側とでやっている仕事内容が違うので、業務を教えられないという場合もあります。社会人の先輩として、マナーなどは基本的なことは教えられるけど、専門的な業務部分についてはお手上げ状態になってしまうのです。 中でも一番厄介なのは、部署や仕事内容が同じだったとしても、これが絶対に正解だと自信をもって言い切れないことです。昔は上手くいっていたけれど、お客様も社会環境も変わってきた中で、今の時代、どうやればいいのか、自分もよく分からないといった場合です。そんな状態で「先輩だから教えてやってください」と言われても、何をどう教えればよいか皆目見当もつきません。 学校で教える先生のように、教科書のような教材があって、教える内容が決まっていればいいのですが、残念ながら大人相手の教え方にそういった教材は存在しません。刻々と変化する時代に合わせて、そのとき、その問題にあった答えを用意しなければならないので、教える側も必死です。ひとりで全部抱えない 教える難しさの2つである「時間と内容」への対策は、「周囲を巻き込む」です。自分だけでは頭も体もひとつしかないので、ひとりで抱え込むのではなく、他の人の助けを借りて、足りない部分を補うのです。 まず、私たちが苦労する「業務と教育の両立」に対しては、周囲を巻き込むことで、上手くバランスを取ります。私たちが仕事に集中したいときや、会議・出張で不在の時は、思い切って他の人に新人指導を頼んでしまうのです。 また、高度化、複雑化、専門化し、私たちひとりでは教えきれない仕事の内容についても、他の人の助けを借りることで乗り切ります。私たちよりも、その内容に詳しい人に、新人指導をしてもらうのです。「餅は餅屋」という言葉があるように、その分野に強い人に任せてしまいます。 つまり、大人相手に教える時は、「ひとりで教える」必要はなく、「複数で教える」という手段が有効です。この「周囲を巻き込む」というのが、時間、内容といった面で教える難しさに苦労する私たちが実践できる、現実的な解決策となります。 私たち教える側も正解が分からない場合は、教える相手と一緒に考えていくか、あるいは正解を持っているかも知れない「他の人」の力を借りるしかありません。全部、自分ひとりで教える必要はなく、他のメンバーからも教わる機会を作るのです。 では、どうすれば「周囲を巻き込む」ことができる

のでしょうか。「簡単に言うけど、周りの人の協力を得るのは大変」「他の人も忙しいから、お願いしにくい」「そもそも自分が教える役を任命されているのに、他の人に教育係をお願いしてしまうと、責任放棄しているように見られるかも」と、色々悩まれてしまう方もいるかもしれません。 ここでは、そのためにやってみてほしいこと2つを紹介します。 ●人脈マップの作成 ●周囲への協力依頼職場の見える化「人脈マップ」を作ろう まず、私たちの周囲にどんな人がいて、その人たちに新人指導をお願いできるとしたら、どのように手伝ってもらえそうなのかを整理するために、「人脈マップ」という形で描き出してみます。「人脈マップ」には、皆さんの周囲にいて、新人指導に関わってもらえそうな人たちの「名前」と「強み」を書き出します。例えば、 Aさん…資料作成に詳しい Bさん…交渉が上手い などです。「強み」はより具体的に書き出し、新人がその「人脈マップ」を見た時に、誰が何に詳しいのかがぱっと見て分かるように書くことが重要になります。 経営学の「組織記憶」という研究領域でも「 Who knows what(誰が何を知っているか)」が重要であるとしています。知りたい情報を誰が持っているのかを、教える側が「知っている」ことが、組織を成り立たせる上で大事だということです。 職場に入ってきたばかりの新人が困ることの一つに「誰が何に詳しいのか分からない」ということがあります。「誰に何を訊いたらいいのか分からない」ため、指導者である私たちに訊くしかないと判断し、誰でも分かるような内容を訊いてきたり、見当違いな質問を投げかけたりしてしまいます。 訊ける相手が限定されてしまうことにより、自然と私たちに質問してくることが多くなってしまうのですが、私たちも常に面倒を見られるわけではありません。忙しく相手をしていられない時もあります。また、何度も同じことを訊いてきたりしてウンザリすることもあるでしょう。 月に数回しか書かない書類の書き方を訊かれたり、たまにしか使用しない申請書類の場所を訊かれたり、質問自体の内容は難しくなく、すぐに答えられたとして

としても、その度に仕事の手を止めなければいけないので、効率が悪くなってしまいます。 でも、それも仕方ないのです。彼らが他の人に訊ける環境を教える側が作ってあげないと、私たちだけに訊いてくるか、あるいは誰にも訊けず自分で抱え込むという状態になってしまいます。 だからこそ、「人脈マップ」という形で、人脈の「見える化」をしてあげましょう。これがあることで、新人が「資料作成については、 Aさんに訊くようにしよう」と、自ら他の人に質問しやすくなります。 もし余力があれば、この「人脈マップ」に、その人たちの「趣味」や「好きなもの」、そして「話を振ると喜んでくれる話題」なども書き入れておくと良いでしょう。なぜなら、それが雑談や会話のきっかけになるからです。実は、若い新人が困ることのひとつが、「年上の人と雑談できない」という点です。 仕事のことなら何とか話せるけど、それ以外、何を話題にしてよいのか分からないから、話し掛けにくいという状況を生み出しています。そこで、趣味やプライベートの情報が少しでもあると、話のきっかけを作りやすくなり、いざというときに訊ける相手を増やすことができます。 作るのは大変かもしれませんが、一度作ってしまえば、新人だけでなく、他の会社のメンバーにも使ってもらえるものになりますので、がんばって作ってみてください。新人を受け入れる体制を整える「人脈マップ」ができたら、描いた人たちに対して、新人指導を手伝ってもらえるよう「協力依頼」をしていきます。これは、新人が職場に配属される前にできていると、受け入れ態勢を整えるという意味でとても望ましいです。 協力依頼をするときは、相手の強みを「貸してもらう」というような気持ちで行います。「 Bさんの強みである交渉に関して、新人に教えてやってください」といった感じです。 そうは言っても、同僚や自分より先輩になる人に協力依頼をするのは難しいと感じる方もいるでしょう。そんな時こそ、「上司」の力を借ります。 新人を教える担当として、自分の責任は果たすことをきちんと明言した上で、周囲も絡めて指導していくことを、上司に合意してもらうのです。「私がメインで指導しますが、資料作成に関しては、 Aさん。交渉については、 Bさんの力を借りようと思っています。 C課長からも、 Aさん、 Bさんに軽く伝えてもらえませんか?」といった形での根回しをしておいてもらいます。 あるいは、新人が配属されたとき、たいていの場合、皆の前で上司が新人を紹介することがあると思いますが、その時に、メインの指導担当はあなただとしても、他の人も協力して行うよう、一言言ってもらいます。例えば、「 C君が、メインの指導担当だけど、他のメンバーも協力してやってください」のような一言でかまいません。その言葉を上手く引用しながら、他のメンバーの協力を得ていきましょう。 もちろん、周囲の人たちの協力を得るためには、「関係を築く」で紹介したように、私たち自身が、同僚たちと良い関係を築いておく必要があります。「あいつのお願いだったら、仕方ないな」と思われる関係性を築いておきましょう。複数で教えるときは過負荷に気をつけよう「人脈マップ」は、私たち教える立場が苦労する「時間」「内容」に対する助け舟となってくれます。しかし、周囲の色々な人が絡むことで、別の問題も起こるようになります。それが、「過負荷」と「混乱」という状態です。 私たちがひとりで教えているならば、基本的に新人が行う仕事は、私たちが頼んだ仕事のみになります。そのため、私たちの目が届かないと、放置状態になり、何もすることがないという、手持ち無沙汰な状態になってしまうということはすでに触れました。 そこで、周囲を巻き込み、他の職場メンバーからも仕事を出してもらって、手持ち無沙汰にならないようにします。この時に「過負荷」状態になりやすいのです。色々な人から仕事の依頼があり、新人がその仕事を捌ききれなくなってしまうのです。 周りも良かれと思って仕事を出してくれますが、新人の立場では、先輩からもらった仕事を「できません」と断りづらく、「はあ、やってみます」と受けてしまいがちです。仕事の量が増えてくると、どれから片付けるかという優先順位が必要になりますが、仕事に慣れていない新人の場合、優先順位の付け方が分からず、結局納期に間に合わないという事態に陥りやすいのです。 このような「過負荷」状態を防ぐために、私たちができることは「業務把握」と「交通整理」です。

まず、新人が、誰からどんな仕事を受けているのかを、なるべく把握するよう務めます。朝や夕方に、新人とのミーティング、メールでのやり取りなどを通して、「今日、誰から受けたどんな仕事をするのか?」「明日の予定は?」と確認するようにします。業務内容をきちんと把握するために必要なポイントは以下の通りです。 ●今日終わった仕事と残ってしまった仕事 ●今日頼まれた新しい仕事 ●各仕事の締め切り ●明日の仕事の計画 ただし、1つずつ丁寧に聞いていると、報告する側も報告される側も大変なので、報告する内容について押さえておくべきポイントを伝えて、簡潔に連絡を取るようにします。 次に、周囲からの仕事を「交通整理」します。新人の業務状況によっては、これ以上仕事を受けても対応できないこともあるでしょう。そんな時は、新人からは断りづらいので、指導役の私たちから仕事の依頼主に対して、「すみません。今、新人の仕事量が増え過ぎているので、その仕事を受けるのは勘弁させてもらえませんか」と伝えるのです。 新人が誰からどんな仕事を受けているのか、業務把握を怠ってしまったことが原因で、仕事を受けてからかなり日が経った後に、「ごめんなさい。やっぱり新人では受けられません」と断ったら、せっかく協力してくれた周囲にも迷惑をかけてしまいます。周囲に「協力依頼」するからには、「業務把握」と「交通整理」は忘れずに行うようにしてください。道のりはバラバラでも目的地は同じにする「ひとりで教えず、複数で教える」ことで起こり得る問題の2つ目、それは「混乱」です。 あなたがひとりで教えるならば、新人が「言うことを聞くべき相手」はあなただけになりますが、色々な人が指導に絡んでくると、人によって言うことが違ってきます。例えば、 Aさんは「この資料は作成しなくてよい」というのに対し、 Bさんは、「作成するんだよ」と言ったとしたら、新人は「いったい、どっちの言っていることが正しいの」「誰の言うことを聞けばいいの」と、「混乱」します。 この「混乱」を防ぐためには、私たち教える側と、協力依頼をする周囲のメンバーとの間で「目標の共有」が必要になります。新人にどうなってほしいのか、数ヶ月後の到達状況は何かということを合意しておくのです。「教える目的」は、「現状と目標の差」を埋めることなので、新人指導に絡んでもらう他のメンバーにも「目標 =望ましい状態」が何かを知っておいてもらう必要があります。それが分からなければ、新人をどこに連れて行っていいのかも分からないからです。 おおまかにでも目標が合意できたなら、そこに至らせる方法は色々なやり方があるので、それは教える人にゆだねます。そのほうが、一つのやり方だけでなく、他のやり方も学ぶ機会になるからです。

例えば、目標が「今月中に売上金額、 50万を達成させる」だとしたら、 ● Aさんの営業指導 最初から高額な取引は難しいと考え、定期的に売れる 1万円の商品を 50個売る ● Bさんの営業指導 高額だが、最近の売れ筋でもあるので売りやすいと考え、 25万円する商品を 2個売る ● Cさんの営業指導 売れ筋商品である 25万円の商品を 1個と、定期的に売れる 1万円の商品を 25個売る というように、3つのやり方あるということになります。ただ、あまりに人によって教える内容ややり方が違うと、やはり新人は混乱しますので、フォローはしてあげてください。例えば「 Bさんぐらい経験を積むと、ああいうやり方もできるけど、新人のあなたは、あと 1年は基本的なやり方を続けてもらうから」といったような対応をしましょう。周囲を巻き込んでいくとすべてがうまくいく さて、ここまでは「ひとりで教えず、複数で教える」ことで、私たち教える側の苦労である「時間」と「内容」の解決策について考えてきました。これらは、私たち教える側にとってのメリットであると言えます。周囲を巻き込むことで、私たちの負担が減るからです。 では、教わる側にとっては、色々な人が教えてくれることで、どんなメリットがあるのでしょうか。 まず、「訊ける相手が増える」という点があります。私たちだけにしか質問できなかったのが、他のメンバーにも質問できるようになります。「職場インタビュー」や「人脈マップ」による効果と言えるでしょう。私たちが不在の時、これまでは分からないことがあっても抱え込むことしかできなかったかも知れませんが、訊ける相手が増えたことで、その心配もなくなるでしょう。 そして「手持ち無沙汰が減る」ことになります。前述した「過負荷」には注意しなければいけませんが、他の人からも仕事をもらえることで、新人のやることが増えます。仕事内容によっては、やり遂げたという達成感も味わうことができ、組織になじむために必要な「適度な自信」づくりにもつながるでしょう。 さらに「複数の成功パターンから学べる」というメリットもあります。私たちしか教えていないとすれば、私たちのやり方、成功パターンしか教われないことになります。私たち以外の周囲のメンバーにも指導に絡んでもらうことで、他の人の成功パターンからも学ぶことができるようになるのです。新人の持ちネタ、レパートリーが増えるということにもつながります。 筆者が東大大学院中原研究室で行った別の調査でも、現場で新人に仕事を教える指導員が、周囲の「協力」を求める行動が、新人の「能力向上」につながっていることが明らかになりました。 もしかしたら、私たちのやり方よりも、他の人のやり方のほうが、新人に合うこともあるかもしれません。ちょっと悔しい気持ちもしますが、新人が色々なやり方から学ぶ機会を作ってあげられたと思うことにしましょう。 実際、私たちも今のレベルに到達するまでに、たった 1人の指導者からしか教わってきていないのか、というとそんなことはありません。最初に教えてくれた先輩や上司も大事な存在だったでしょうが、それ以外の多くの方々から学んで、今の私たちがあると言えるでしょう。他の先輩、他部署の方、外部の方、お客様、自分の後輩など、たった一人の指導者からではなく、関わった多くの人たちから、私たちは学んできているのです。 それは、これから私たちが教える新人も一緒です。彼らにとってみれば、私たちの存在も大きいかもしれませんが、他の人たちからも多くを学んでいくことでしょう。 私たちが避けたいのは、私たちだけで新人指導を独占し、他の人が関われないような状態を作ることです。新人をカプセルに閉じ込めて、他の人との接点がないようにしてしまうことは避けるべきなのです。そんな

そんなことをしてしまったら、「メインの指導者は、 Dさんなんだから、自分たちが余計なことを言わないようにしよう」と、周囲も私たちに遠慮してしまいます。 だからこそ、こちらから「協力依頼」をして、周囲を巻き込んでいくのです。それが、新人本人、私たち教える側、そして周囲にとっても良い状態につながっていきます。教える側も正解が分からないときがある もうひとつ、「内容」について教える側が困ることがあります。それは、教える「内容」が高度過ぎて、理解の範囲を超えてしまっているときです。情報社会と呼ばれる現代では、変化の流れが速く、 3ヶ月前の情報がすでに古い情報として扱われることなんて当たり前のようにあります。 教える立場としては、教える内容の答えをきちんと把握し、伝えることが必要となりますが、その答えが分からなかった場合、どうすればいいのでしょうか。その方法を、この章の最後にお伝えしたいと思います。 まず、教える内容の「正解」が分かっている場合について、見ていきましょう。このときの「教える」という行為は、一般的に「導管」モデルが成り立っています。教える側が、たくさんの知識、技術を持っていて、それらを教わる側に流し込むというイメージです。 私たちが学校教育でイメージするのが、この「導管」モデルではないでしょうか。先生たち(教える側)が知識・技術を持っていて、生徒たち(教わる側)はそれを受け取ります。もちろん、学び始めの初期段階のときは、ある程度の知識・技術の流し込みは必要かもしれません。

ただ、この「導管」モデルの前提は、教える側の持っている知識、技術が「正解」で、それを知らない人に伝えるという考え方です。成人教育学者のノールズが、「教育を知識伝達のプロセスとして定義することは、主要な文化的変化のタイムスパン(時間)が、人間のライフスパン(人生)よりも長い時のみに妥当である」と述べています。つまり、人間が生きている間に、どんどん社会が変化していくなら、伝達してもらった知識もすぐに陳腐化するということを言っています。 つまり、情報社会と呼ばれる現代では、「導管」モデルだけでは対応できなくなっていると言えます。正解が分からないときの教え方 そこにひとつのヒントを与えてくれるのが「対話」モデルです。教える側も正解が分からないのであれば、教わる側と一緒に「対話」しながら、共に正解を考え出すようなやり方です。「教える側も正解が分からなくて話しているだけだったら、結局、正解にたどり着けないのでは」という疑問を持つ人もいるでしょう。確かに、正解を知っていたほうが楽ですし、仮に正解が分からなければ、自分よりも知識・技術も足りない相手と話していても、らちがあかないかもしれません。 しかし、2つの効果は見込めます。 1つは、知識・技術が不足している相手だからこそ、凝り固まってない新鮮なアイデアが生まれ、教える側にヒントを与えてくれるということです。もう1つは、対話することで、「 ~が正解ということでやってみよう」とお互いの合意を経た上での「納得解」が得られるということです。 何が絶対の正解かは分からないけど、教える側と教わる側で「自分たちにとってはこれが正解だ」という納得解を得ることで、問題解決の糸口につながるかもしれません。「教える立場なのに、相手に相談するなんてできない」と思う人もいるかもしれませんが、分からないものは分からないとはっきり伝え、「分からないから、解決方法を一緒に考えてもらってもいいかな」と素直に頼ることも、教える立場として大事な要素です。

また、あまり紹介されないのですが、「協力し合う勉強」によってチームでひとつの目的を達成する喜びは、格別です。私自身にもこうした体験がありますが、当時経験した感動は、今も私の中に残っています。自ら体験して獲得するスキルは、教えられる知識以上に、ビジネスの現場で私たちが活かせる問題解決力となってくれることは確かでしょう。 今後、より複雑化していく世の中の教育現場でも、一緒に答えを見つけ出していくという対話モデルが、一般的な教育方法となっていくでしょう。

 

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