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第7章……従業員満足は、コミュニケーションの強制から

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第7章……従業員満足は、コミュニケーションの強制から

【Q37】なぜ管理職に「現場同行100回」を求めるか?

武蔵野のオフィスには、「現場同行50回帳」「現場同行100回帳」と書かれた模造紙が貼られています(次ページ)。

新任の管理職が、部下と一緒に現場に行った回数をフセンで数えます。原則として、課長は100回、部長は50回が義務です。

課長の100回のうち、前半50回で、これから所管する部署の仕事を把握させます。現場を知らない上司が、とんちんかんな指示をして、部下との関係が悪化するのを防ぐためです。

後半50回は、上司と部下がコミュニケーションを深めるのが狙いです。家族や恋人などプライベートの情報を共有し、マンツーマンの指導を効果的に行うのに不可欠な、人間関係の基盤を整えます。

課長、部長に初めて昇格した場合、この現場同行が終わるまで、新しい職責の管理職手当は支給しません。

達成した時点で、就任日に遡って支給します。人材教育は、本質的に手間がかかります。

そんなこと、分かっているよ──。そう思われる経営者に、お尋ねしたい。

会議室に社員を集め、講師の「ありがたいお話」を聞かせただけで、教育した気分になったことはありませんか。社員が仕事を覚えるプロセスは、子供が自転車に乗るのと似ています。

座学でどんなに説明してもダメです。だから、学ぶ前に行動させる。「考」の前に「行」です。

加えて、個別指導がカギを握ります。初めて自転車に乗ったときにつまずくポイントは人それぞれです。だから、個々に合わせた説明が必要です。

すると本人が頭で考えはじめて、習熟が早まります。このような手法は、先生1人に生徒3人が限界です。

生徒4人以上は、習熟度の低い人が先生の目を盗んでサボります。理想はマンツーマンです。会議室で一斉に講義を受けさせるより、手間もコストも膨大です。

しかし、手間をかけなければ、社員は育ちません。

だから私は、新任管理職に「現場同行100回」を義務付け、マンツーマンで部下指導を求めている。

ただ、こんな仕組みを中小企業が導入したら、現場の負担が重すぎて、社員が悲鳴を上げる。お客様に手が回らなくなり、ライバル会社に負けます。

そこで我が社では、ITの活用で業務を効率化して、事務の負担を極限まで抑え、社員同士やお客様とのコミュニケーションに、たっぷり時間を取れるようにしています。

アナログな人材教育とデジタルな効率化は、中小企業を発展に導く車の両輪です。

【A】部下の「個別指導」を、上司に強制する

【Q38】なぜ、「サシ飲み」を申請させるか?

我が社は、上司と部下の「サシ飲み」を、明確に義務づけています。上司は毎月1回、部下と1対1で飲みに行く。同じ部下と2カ月連続で行くのは禁止。

部下が1人だけの上司は、3カ月に1回でいい。そんな公式ルールを、明文化しています。

さらに、「サシ飲み」の後、次の写真のような報告書を提出させます。領収書と証拠写真の添付を求めます。

それらを一覧できるように、本社の会議室の壁に貼り出しています(その次の写真)。

なぜ、ここまで詳細な報告を求めるのか。

「サシ飲み」に、最大で1組5600円の補助を出しています。その不正受給を防ぐため。そう考えることもできますが、本質ではありません。

社長が「社員がやるべき」と思って、「やれ」と指示したことを、言いっぱなしにしないためです。

社長が「やれ」と号令しても「やらない」のが正しい社員の姿です。人間の本質です。本気でやらせるなら、基準の設定とチェックの仕組みが必要です。

私は、「儲かる会社をつくるには、上司と部下の『サシ飲み』は必要不可欠であり、『サシ飲み』が上司の義務である」と、本気で思っています。

だから、「毎月1回」の基準を定め、それが守られたかを「報告書提出」の仕組みでチェックしています。

2カ月連続で未提出の上司は、始末書です。半期に始末書2枚で賞与半減。サボる上司は厳しく指導します。

そこまでやらなくては、「社長は本気だ」と、社員が思いません。「軽い思いつきで、そのうち忘れてしまうだろう」と考え、様子見を決め込みます。

ただ漠然と、「部下とコミュニケーションをとってください」とか、「『サシ飲み』の機会をつくりましょう」と言うだけでは、社員は絶対、動きません。

なぜ、上司と部下の「サシ飲み」が必要か。上司は必然的に、部下を叱らなければなりません。コミュニケーション不足の上司と部下は、関係をこじらせます。

仕事で部下が失敗しても、個人攻撃や人格否定をしないのは当然です。コトを叱って、ヒトを叱らない。これが鉄則です。

しかし、どんなに上司が冷静に叱っても、反感を覚える部下はいます。根本的な問題は、上司と部下の間に「1対1」の人間関係ができていないことです。

上司にとって、自分は「たくさんいる部下の一人」。この距離感で、部下は上司を見ています。要するに「1対n」の人間関係です。

この関係で叱られると、どんな正論でも、部下はカチンときます。「私のことをよく知らないくせに、心のなかまで土足で踏み込んできやがって」です。

だから上司は、部下を叱る前に「1対1」の人間関係をつくる。それに役立つのが、「サシ飲み」です。我が社は、部下と飲むときの段取りも管理職に指導しています。

最初は上司から15分ほど、故郷や家族、昔の恋人の思い出など、自分のプライベートについて話します。

それを受けて、今度は部下が15分、自分のことを話す。こんな流れでやると、どこかでクラッチが合い、自然と打ち解けます。

【A】「上司の義務」だと、明確に示すため

【Q39】「サンクスカード」を書かせる教育的効果は?

社員のモチベーションアップに一番、効果があるのは何か。ほとんどの人は、直感的に正解を知っています。仕事で褒められることです。

それなのに、部下を褒める経営者も幹部も少ない。部下を褒めるのに1円のコストもかかりません。なのに褒めないのは、もったいないことです。

企業規模を問わず、赤字会社の共通点は、経営者と幹部が、部下を褒めないことです。

コストゼロで、社員のモチベーションを上げる方法があるのに、その手間を惜しんでいるから、本気で業績を上げる気になれない。

武蔵野は、すべての部署に「サンクスカード」を入れるボックスを用意しています(次ページ)。社員全員分あります。

仕事で「ありがとう」と伝えたいときは、カードに書いて相手に渡します。社員が前月、何枚のカードを書いて送り、何枚を受け取ったかも、ボックスに表示します。

こうすれば、誰がたくさん書いて、たくさん受け取っているかが一目瞭然。数の少ない社員は、肩身が狭く感じます。だから、サンクスカードの流通量が増えます。

今では、従業員数760人の会社で、年に約7万枚が流通しています。こんな半ば強制的な形で、社員に「ありがとう」と書かせることに、抵抗を感じる人もいるでしょう。

しかし、自然に任せたら、経営者も幹部も、そして社員も、永遠に「ありがとう」と言えません。私自身がそうでした。

30年ほど前は、部下を褒めるどころか、暴言社長。そして会社の業績は低迷していた。サンクスカードの仕組みは、仲間の会社から単純にパクりました。実際やると、他人を褒めるのは難しいです。

褒めるには、その人のことをよく観察しなければなりません。そのうえで、その人ならではの美点を言葉にするのは、とても面倒です。

面倒なことを自発的にやるなんて、よほどの聖人君子でなければ、できません。けれど、強制されて続ければ、凡人でも変わります。

部下の長所に気づき、最初より上手にできるようになります。これぞまさに成長です。

サンクスカードの強制の効果は、褒められた社員のやる気を上げるだけではありません。褒める側の気づきの力も高めます。

むしろこの人材教育の効果のほうが重要です。こうして社員が育ち、会社が明るくなり、業績が上がった。だから、「ありがとう」の強制は、正しい。

私は毎日、褒める材料を探して幹部の話を聞き、ネタを見つけて、社員にハガキを書き、ボイスメールを送っている。

この活動に毎日1時間使います。昔と違って、私が聖人君子になったわけではありません。

儲かる会社をつくるため、経営者がすべきことを突きつめたら、必然的にそうなった。社員を叩きのめすように叱るのは愚かで、褒めまくるのが賢い。そんな事実に気づきました。

【A】他人を観察させ、気づく力を高める

【Q40】企業間の競争は今、「何の奪い合い」なのか?

「いい人を選んで採用したい」「やる気のない社員には辞めてもらって、いい人と入れ替えたい」──。

それが、多くの経営者の本音でしょう。そして実際、その戦略が正しい時代もありました。しかし、悲しいかな、そんな贅沢な時代は終わった。

まさに今、企業間の競争のルールが変わった。競争の基準が「売り上げの奪い合い」から、「人の奪い合い」にシフトしました。

このうねりは、1980~90年代に、大量生産型の企業が衰退し、少量多品種生産の企業が伸びたことに比肩するほど、大きなものです。

人手不足が原因で店舗を閉鎖したり、倒産したりする企業が話題になっています。

私が経営指導する中小企業でも、受注できる仕事は山ほどあるのに、人手が足りないばかりに受注できない悲鳴を聞きます。

売り上げの確保より先に、人手確保に知恵を絞るべし。働く人を一定数確保できれば、売り上げは後からついてくる──。極論すれば、これからの企業経営のセオリーです。

社員との関係も、おのずと変わります。働きたい人が多くて、企業が選べた時代は終わり、働き手が企業を選ぶ時代です。

しかし、悲観することはありません。ゲームのルールが変わるとき、新しいルールにいち早く適応すれば、大逆転が可能です。

【A】「売り上げの奪い合い」から「人手の奪い合い」に変わった

【Q41】「もったいない」は、正しい価値観か?

「人手の奪い合い」は、生産性の向上がカギです。環境整備と業務改善がますます重要です。加えて、設備投資です。

我が社は、全部署にウェブカメラを取り付けています。誰が席にいるのかを、すぐ確認できて便利です。

iPadも発売直後から大量購入し、社員とパート・アルバイト全員に600台を配りました。

こういう投資に、中小企業の社長は尻込みします。すごくお金がかかると思い込んでいます。ちゃんと調べれば、そんなことはありません。

あらゆる電子機器が安くなっている今、この手のウェブカメラは1個当たり5万円ほど。中小企業にも手が届く設備です。

日本語に「もったいない」という言葉があります。家庭生活で大事にすべき考え方だと、私も思います。

しかし、会社経営に、この日本人特有の美学を持ち込むと大きな弊害があります。効率を上げるには、絶え間ない投資が不可欠です。

まだ使えるパソコンでも、もっと性能が良くて、仕事のスピードが上がる新機種が出たら、すぐさま古いのは捨てて、新しいのを買う。

そこで「もったいない」という価値観を捨てなくては、儲かる会社はつくれません。

【A】家庭生活では〇。会社経営ではNG

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