第7章「リーダーの孤独」を感じた時こそ、勝負どころ
01リーダーにとっての「孤独」⦿なぜ、リーダーになると孤独を感じるのか?⦿孤独を感じたら02「不条理」を乗り越える⦿「理不尽」と「不条理」の違いを意識しておく⦿不条理な経験は、財産になる⦿名経営者にも、不条理な経験はある03常に「2:6:2」で考えると、反対も怖くない⦿反対されても、気にしすぎない⦿賛成者を作るために必要なこと04「立場」で人を動かさない⦿なぜ、人がついてこないのか?⦿部下を「プロ」として敬う05孤独を感じたら、本に答えを求めよ!⦿「解決の扉」はいくつもある⦿本棚は、薬箱のようでもある⦿「座右の書」を見つけ、それを何度も読み返す06社外の人との接点を増やす⦿「村人意識」が、孤独感を助長する⦿常に新しい常識を求める07時には、〝弱さ〟を見せたほうがいい⦿初めてのリーダーが陥りやすい失敗⦿弱みを見せるのも、強さである図版────桜井勝志
01リーダーにとっての「孤独」リーダーシップの獲得は「旅(ジャーニー)」に喩えられる。
旅路では、孤独も感じる。
でも、それは旅で遭遇する試練にすぎない。
その先に新しい光景が広がっていることを知った時、「孤独」は、試練ではなく、「成長のチャンス」であることに気づく。
⦿なぜ、リーダーになると孤独を感じるのか?役職が付いた瞬間から、人によっては「孤独」を感じることがあります。
今までに感じたことのない部下との距離、上司からほめてもらう機会の減少、1人で解決しないといけなくなったプレッシャー…まあ、色々な変化を感じることでしょう。
そんな時は、こう考えてください。
いよいよ、リーダーシップの本当の旅がスタートしたのだ、と。
リーダーシップの獲得は、このように旅のようでもあると言われます。
リーダーシップ研究の権威、一橋大学大学院の一條和生教授が著した『リーダーシップの哲学』(東洋経済新報社)という本の中に、こんな一節があります(この本は、著名な経営者12名へのインタビューで構成されているものです)。
「どなたにも程度の差はあれ、アップとダウンの時期があった。
それにもかかわらず、すべてのリーダーシップ・ストーリーが悲劇に終わらなかったのは、全員がつらいときにも未来に希望を持ち、苦境を乗り越えてジャーニーを続けたからである」たしかにリーダーシップを獲得する過程で、必ず孤独を感じる瞬間はあります。
部下がついてきてくれない時もあるでしょうし、上司が理解してくれないと感じることもあるでしょう。
しかし、いかなる状況も、リーダーになるとすべて自分の責任として跳ね返ってくるので、仕方ありません。
プレイヤーの時は、かばってくれる人も多いのですが、リーダーになると、そうはいきません。
未来志向を持ち、苦境を自分で乗り越えなければならないのです。
⦿孤独を感じたら『はじめてのおつかい』というテレビ番組を見たことがないでしょうか。
2~3歳の小さな子供が1人で、近くのお店におつかいに行く姿を追う番組です。
たった5分程度の道のりであっても、子供にとっては、それは〝冒険〟であり、途中で泣き出してしまう子供もいます。
しかし、おつかいから帰ってきた子どもは、買ってきたパンや野菜を誇らしげにお母さんに渡します。
「全然、平気だった」と言いながら。
そして次からは、1人でおつかいに行けるようになるわけです。
リーダーも一緒。
孤独を感じた時、泣きたくなることもあるでしょうが、必ずそれは成長への試練、成長のチャンスなのです。
まず、そう思うようにしてください。
とはいえ、苦しいことには違いありません。
その時、必要以上に悲観的にならないためのコツを紹介しておきましょう。
やるのは、この3つ。
●まず、能力不足を悲観しない(リーダーの向き不向きを考えない等)●視点を変える(ほかの視点を持つ、長い目で見る等)●行動を変えてみる(教えを乞う、とにかくやってみる等)うまくいかなかった時、この3つを繰り返せば、確実に乗り越えられます。
逆に、今まで研修で多くの役職者を見てきて、苦境からなかなか抜け出せない人というのは、「自己正当化」をしてしまう人です。
うまくいかなかった時、「商品力がないから仕方ない」「部下がやってくれないから仕方ない」「景気が悪かったので仕方ない」と言えば、許されそうに思えますが、リーダーにおいては、天にツバを吐いているのと一緒。
周囲は「だから、どうすべきなの?」と思うはずです。
「商品力がないなら、どうする?」「部下がやってくれないなら、どうする?」と。
リーダーは、「それでどうする?」を考えるのが仕事。
苛酷に感じることもあるでしょう。
この章では、そんな「リーダーの孤独」を乗り越えるコツを紹介していきます。
Point孤独を感じた時は、悲観をせず、「視点」を変え、「行動」を変えれば、必ず景色が変わる。
02「不条理」を乗り越える時には「貧乏クジ」を引いてしまった、「はしごを外された」ということもあるかもしれない。
しかもその時、周囲は苦境にあえぐあなたにさほど関心を示してはくれない。
でも、それを乗り越えた時、かけがえのない「宝物」を手にすることができるのだ。
⦿「理不尽」と「不条理」の違いを意識しておくある会社の幹部から聞いた話。
「理不尽と不条理は違う。
理不尽は乗り越える必要はない。
でも、不条理は乗り越えることで、強くなる」「理不尽」とは、虐げを受けること。
罪ではないのに罪だと言われたり、ムリなことを強要されたり、いわゆる、尊厳を反故にされること。
「不条理」は違います。
特に何か落ち度があるわけでもないのに、自分が不利な状況に追い込まれること。
貧乏クジを引かされた…そんな状況です。
多くの場合は、情勢が変わったといった、本人以外のことに起因するものがほとんど。
例えば、ある部門に責任者として着任したのはいいけど、思った以上にボロボロで、立て直しに時間がかかることが判明したとします。
それを報告したところ、「それでは、話にならない。
急いでやってほしい」と言われることなどは、まさに、よくある不条理でしょう。
はしごに登ったら、はしごを外された…。
そんな感じです。
残念ですが、やはり、これは起こることなのです。
というのも、状況が刻々と変わるので、仕方ないのです。
その対処も含めて、請け負うのがリーダーです。
でも、こう考えてください。
この不条理を乗り越えれば、必ず強くなれるのだ、と。
⦿不条理な経験は、財産になる実は、私もささやかながら「不条理」は経験済みです。
その1つを紹介しましょう。
会社員時代、役職を1つ落とされたことがありました。
でも、悪いことはしていませんし(むしろ、かなり真面目でした)、人事考課も良かったのです。
どちらかと言うとほめてもらうことが多かったほうでした。
当時の上司に「降格ですか?」と言うと、「そうではない。
わかってくれ」との返事。
ただ、当時、景気が急激に冷え込んでおり、会社全体の状況は一変していました。
でも、「なんで俺が?」という気持ちはぬぐえませんでした。
「辞めようかな」とも思いましたが、「これも経験かな」と視点を変えました。
10年後の自分にとって、意味あるものにしようと、仕事に打ち込むようにしました。
自分でいうのもはばかられますが、その経験によって、人間力が高まり、リーダーシップの獲得につながったと感じます。
不条理を抱えながらも頑張っている人が多いことに気づけたり、孤独を感じながらもブレない自分の軸を持てたりしたことは、今となっては財産となっています。
この話には後日談があります。
会社を辞めてから、すでに退職している当時の取締役に、その時のいきさつを聞いてみたのです。
お互い辞めているので本音の話ができます。
すると、想定外の答えが返ってきました。
「あれ?聞いてないの?あれは、ただの一時的な調整。
戻ると思っていたよ。
聞いていなかったのか…。
理由か…。
むしろ、評価はしていた。
実はさ…」詳しく聞くと、私に非はなく、全社での一時的な調整で、たまたま私がその縮小幅の大きい組織を担当していたことが原因でした。
さらに「実はさ…」の後に教えてもらった、当時の真相を聞いた時、腰が砕けそうになりました。
オレンジジュースかリンゴジュースかを選ぶ時に目をつぶって取ったら、たまたまオレンジだった…その程度のことで、それ以上でもそれ以下でもない、と聞かされたのです。
冤罪が晴れた、そんな不思議な感情にもなりましたが、今ではその経験に感謝しています。
リーダーシップ獲得には最高の試練だったと、確信しているからです。
⦿名経営者にも、不条理な経験はある今は、各業界のリーディング・カンパニーのリーダーシップ研修をする立場ですが、うまくいきすぎている人を見ると、むしろもったいないな、と感じたりもします。
事実、私のエピソードなんてささやかすぎるもので、先ほどご紹介した一條和生教授の著作『リーダーシップの哲学』に登場する12人の名経営者のエピソードはとても考えさせられます。
例えば、玉塚元一氏(元ローソンCEO)はかつて、ユニクロを展開するファーストリテイリングの創業者・柳井正氏の後継者として、鳴り物入りで同社の社長に就任。
しかし、わずか3年で辞めざるを得なくなったことは、今なお有名なエピソードです。
「まだ、チカラがなかった」。
それが、玉塚氏が当時を振り返って語る言葉です。
今は、経済界でも著名なプロ経営者ですが、当時の心中は穏やかではなかったことでしょう。
同書の第1章を飾った藤森義明氏(元LIXILグループCEO)もそうです。
あのジャック・ウェルチにも見初められ、日本人として異例とも言えるGEの副社長を務めた、プロ中のプロ経営者。
その手腕を買われ、LIXILのCEOに招聘されました。
この本が出版されたのはその時期のこと。
しかしその後、CEOを電撃退任されています。
積極的なM&A投資に対する周囲の不信が退任に追い込んだのでは、と言われています。
ほかにも、まだまだあります。
例えば、スティーブ・ジョブズは、自分が創業したアップルを部下にクビにされ(その後、復活)、長嶋茂雄・巨人終身名誉監督は初めて監督に
就任した若い頃、成績不振で退任を決意せざるを得ない状況に追い込まれました。
パナソニック創業者の松下幸之助氏ですら、戦後にGHQによって公職追放の憂き目にあった経験があります。
書くとキリがないくらいに、ほとんどの名リーダーは不条理を経験しているものです。
ただ、ここに挙げた人たちに共通することがあります。
全員がそうなのですが、再度、声がかかった人たちでもあります。
一條和生氏の言葉、「つらいときにも未来に希望を持ち、苦境を乗り越えてジャーニーを続けたから」こそ、また、再起ができたのでしょう。
不条理な経験があるからこそ、部下の気持ちにも寄り添いながら、厳しい判断もできるようになりますし、今の状況を謙虚に受けとめ、自分を横に置き、使命を果たすことに没頭できるようになるわけです。
不条理な経験は、そのことを心で理解できるよう、教えてくれるのです。
Point不条理なことがあれば、リーダーとして伸びているチャンスだと考えよう!
03常に「2:6:2」で考えると、反対も怖くないリーダーは、全員から好かれる必要はない。
新しい挑戦をする時、必ず反対はあるし、時には猛烈に嫌われることもある。
しかしいかなる時も、全員が嫌っているわけではない。
悩みそうになったら、「2:6:2の法則」で考えると、勇気を持てる。
⦿反対されても、気にしすぎない何かに挑戦をしようとした時、必ず反対する人がいませんか?時には、あなたを受け入れようとしない、という人もいるかもしれません。
でも、あまり翻弄されないことも大切です。
もちろん、現状を知るため、またコンディションを把握するために、意見はしっかり聞くべきですが、多数決や全員一致でチャレンジを考えることはしません。
やるべきチャレンジはリーダーが決断します。
ゆえに、リーダーは必ず反対者と対峙しなければならないと考えてください。
この時、多くの場合において「2:6:2の法則」が働いていると考えれば、ラクになります。
2割は賛成者。
6割の人は様子を見る人。
そして、最後の2割が、反対する人です。
この時、「反対する2割」「関心のない6割」に目を向けると、孤独感を感じることでしょう。
「8割(ほとんど)が関心を持ってくれない」と。
しかし、「反対者は2割しかいない」と、逆の視点で見ると見方が変わります。
まず、関心のある2割を味方につけ、その2割を起点に6割を巻き込むのです。
そうなると、反対者の2割もやらざるを得なくなる、そんな流れを作ります。
⦿賛成者を作るために必要なこと参考になるのは、企業再生コンサルタントです。
若手のコンサルタントが、再生先に送られ、陣頭指揮を執るのですが、そこには古株のプロパー社員がいるわけです。
新しいことをする際、「何もわからない若僧が何を言っているのだ」と抵抗感を持たれるのが普通です。
やっかいだな、と思いませんか?でも、ここからがスタートです。
まず、「こいつは本気だな」と思ってもらわなければなりません。
なので、最初にやるべきことは、誰よりも汗を流すこと。
いわゆる率先垂範です。
これをやらないと、最初の賛成者2割の心をつかむことも難しくなります。
私が取材したコンサルタントの例を紹介しましょう。
誰よりも早く出社して掃除をし、「今日もよろしくお願いします」と挨拶から始めた人がいました(この職場、事業を大事にしたい気持ちを表す行動)。
一方で、その事業を理解するため、誰よりも一生懸命にお客様を訪問し、お客様の状況把握をした人もいます(誰よりもお客様と向き合っている姿を見せる。
また、「お客様がこう言っているから」と言うと、影響力を持ちやすくなる効果もある)。
そうしたベースを作った上で、「私と皆さんが大事にしたいものは一緒。
ただ、その大事にするものを守るためには変わらないといけない」といった形で思いを伝えます。
そして、賛成してくれる2割の意見を聞きながら、進め方を決め、この過程で6割に役割を与えながら巻き込んでいきます。
重要な役割を任されると、任されたほうは俄然やる気が出るもの。
もちろん、反対する2割にも役割を付与し、会話を続けますが、すぐには変わらないと考えておくことです。
また、2割の賛成者がいるなら、全員で「どうしたいのか」を忌憚なく話し合う、ミーティングや研修も効果的です。
2割を占める賛成者の発言を聞き、6割にも伝染する流れが生まれるでしょう。
もし、反対者や理解しようとすらしない人がいたとしても、焦らないことです。
まず、この2割を着実に味方につけてください。
Pointまず、最初の2割を味方につける!そのためには、率先垂範の行動を見せよう!
04「立場」で人を動かさない上司やお客様には従順でありながら、下(部下)に厳しい人を見て、あなたはどう思うだろうか。
ついていこうと思わないだろう。
上司が考えている以上に、部下はそのことには敏感であることを忘れてはならない。
10倍は敏感だと思っておくくらいでいい。
⦿なぜ、人がついてこないのか?人望がないリーダーにはなりたくないものです。
人望のない人は、次のような言葉をよく口にします。
「…をやらせる」「…をしてくれない」こういう上司は、今の時代は人を動かすのが難しくなっています。
なぜなら、今は「納得感」を大事にする時代だからです。
このようなセリフを言う上司は、「つべこべ言わず、思ったように動いてほしい(自分の部下なんだから)」と考えていることが多く、もはや時代錯誤なのです。
そして、部下が思うように動いてくれない場合、彼らはこう思います。
「ダメな奴。
面倒だ」と。
そりゃあ、人は離れますし、その結果、孤独を感じるわけです。
もちろん、自分の主義をつらぬく一貫性は必要ですし、やってもらわないと困るわけですし、現に昭和生まれのリーダーたち(バブル世代まで)はこの感性で育ってきています。
ですので、先ほどのセリフも違和感を持たずに使っていました。
でも、時代は猛烈なスピードで変化をしています。
今の時代、職場を出ていくのも自由。
むしろ、その先には、いくらでも「納得感」を大事にしてくれる会社があるでしょう。
なので、「この上司、ちょっと違うな」と思われたら、そこで終わり。
その人も、それを見ている周囲の人も、その職場から離れていくわけです。
そうなると結果も出せず、当然、ますます孤独感を感じることになります。
⦿部下を「プロ」として敬う話は脱線しますが、最近、ちょっとした法則かも、と思えることを見つけました。
飲食店で店員への言葉遣いが横柄な人は、自分の部下にも横柄に接する、と。
「ねえ、まだ?(注文を取りにくるのが遅くなった時)」「(フォークを落とした時)店員に持ってこさせたらいいじゃん」という人は、部下にも同じように雑な言葉で接していることが多いのです。
〝立場ありき〟ゆえ、1人の「人」として尊重する感覚を持てないのです。
こうはなりたくないものです。
さて、話を職場に戻しましょう。
まず、誰に対しても「立場」ではなく、相手を「プロ」として敬うことから始めねばなりません。
具体的には、自分の口ぐせに細心の注意を払ってみてください。
参考になるのはヤマトホールディングスの「逆ピラミッド」の組織図。
同社のホームページにこんな一節があります。
「ヤマトの組織図は逆三角形です。
一番上はお客様、その次に位置するのは、最前線で荷物を運び、お客さんと接し、新商品を開発するセールスドライバーたちです。
経営陣は彼ら最前線のバックアップです。
現場に大半の権限移譲を行っています」部下1人ひとりを「プロフェッショナル」として認める好事例ではないでしょうか。
部下を自分の所有物のように見てしまうと、孤独感を感じることが多いでしょう。
一方、相手を「プロ」として認めることができれば、孤独感を感じることはなくなります。
Point部下を「下」と見ず、「プロ」として敬う姿勢を持ち、口ぐせにも細心の注意を払おう!
05孤独を感じたら、本に答えを求めよ!風邪をひいたら薬を飲むように、仕事で悩んだら、本を読む。
本は薬のようなもの。
実際、本を読めば、解決の扉がいくつもあることを知る。
幸運にも座右の書に出会えたら、かかりつけの名医に出会ったようなものでもある。
⦿「解決の扉」はいくつもある「自分の頭で考えることなく、本にすぐ答えを求めるな」とよく言われるのですが、私は求めればよいと思うのです。
何なら、そのままマネをしてもいいと感じています。
1人で悩むより、はるかにたくさんのヒントが本から得られるからです。
例えば、次のようなヒントを手軽に得られます。
●セオリーからヒントを得られる(やるべきことが明確になる)●著者の実体験からヒントを得られる(スランプ脱出の手法がいくつかあることを知る)●勇気をもらえる(もっとつらい状況でも大丈夫と知る)そして、何より本の良いところは、時間をかけなくていいところ。
短時間のうちに自分が必要とする情報をピックアップできる点は見逃せません。
早ければ1日、長くても数日で、必要なヒントに触れることができます。
⦿本棚は、薬箱のようでもある私は、本は薬のようでもある、と感じることがあります。
言うなれば、本棚は薬箱のようなもので、その時の症状(課題や気分)に合わせて、読む本を薬のように取り出せる環境を作っておくのも得策です。
今、横にある私の本棚を見ると、ずいぶん前に買った『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析』(小此木啓吾、大和書房)という本があったりしますが、当時、ちょっと困った同僚に手を焼いており、ヒントを得ようとして読んだことを思い出します。
リーダーとして、なかなか相談しにくいこともあるものです。
ぜひ、本にヒントを求めてみてはいかがでしょう。
例えば、ビジネスでのヒントが欲しい時は、ビジネス書は、まさに薬です。
戦略の本を読めば、「選択と集中」「競争優位性」の大切さを再確認できるものです。
「そうか、結果が出ないのは強みが不明確だし、戦略対象が不明確だからか…」と。
もし、勇気が欲しいのであれば、経営者の本もオススメです。
成功の裏にあった紆余曲折は、我々が想像しているより激しいものであることが多いからです。
自分の悩みのちっぽけさに気づける効果があります。
「スティーブ・ジョブズですら、部下にクビにされたことがあったのか。
でも、復活を果たせている…。
何が必要なのか…」と気づきを得られるでしょう。
歴史小説、歴史書も同様の効果があります。
史実に基づき、主人公の人生をドラマチックに描いた多くの小説は、ダイナミックに挑戦をし続ける様を追体験できるでしょう。
ソフトバンクの孫正義氏が「15歳の時に『竜馬がゆく』を読んだのがきっかけで、目からウロコが落ちた」と語っていることは有名です。
⦿「座右の書」を見つけ、それを何度も読み返す座右の書に出会えると幸せです。
まさにバイブルとしての役割を果たしてくれます。
経営コンサルタントとして著名な小宮一慶氏は、『道をひらく』(松下幸之助、PHP研究所)を何度も何度も読み返し、そのたびに発見があると言います。
ヤマトホールディングスの木川眞会長は、『失敗の本質─日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか、中公文庫)を「読むたびにマーカーや付箋が増えている」「失敗事例を学べば、同じような失敗は必ず避けられる」と言います。
(※①)ちなみに、私自身の座右の書にもこの2冊は含まれており、何度も読み返しています。
ヒントが欲しい際は、ぜひ書店に足を運び、本をペラペラとめくってみてください。
その上で、良さそうなものを迷わずに購入し、そこから「ヒント」を1つでも2つでもいいので、ピックアップしてみてください。
きっと、解決の扉に早くたどり着くことができるでしょう。
※①『PRESIDENT』(2015年8月31日号、プレジデント社)Point迷った時は、書店に行って本をペラペラとめくってみよう!
06社外の人との接点を増やすもし、今の会社を追い出されたら、やっていける自信はあるだろうか。
断言したい。
あなたは100%やっていける。
でも、その確信を持てないから不安になる。
社内の人とだけしか接点がないと、いたずらに不安を感じるのだ。
⦿「村人意識」が、孤独感を助長する役職が上がるにつれ、「道徳的に考えると、本来はやるべきではない。
でも、会社のためにやらねばならない」、そんな心のせめぎあいを経験するかもしれません。
狭い世界で重圧を感じると、どんなに優秀な人であっても、非合理的な判断をしかねないことを、リーダーは自覚しておかねばなりません。
太平洋戦争の特攻隊は、まさにそうでしょう。
当時、特攻隊を送り出していた中尉がこんな言葉を残しています。
「たとえ特攻の成果が十分にあがらなかったとしても、この戦争で若者たちが国のためにこれだけのことをやったということを子孫に残すことは有意義だと思う」と。
21世紀を生きる我々からすると、違和感しかない考え方ですが、「我々も当時の日本に生きていれば、そう思ってしまったかも…」と考えるのが、リーダーが持つべき視座です。
そうならないためには、役職と責任を担うようになったら、様々な常識に積極的に触れる機会を持つことが極めて重要だ、と私は確信しています。
日本企業の多くは「村社会」だとよく揶揄されます。
「村社会」をウィキペディアで検索すると、このように記されています。
「有力者を頂点とした序列構造を持ち、昔からの秩序を保った排他的な社会」20年ほど前、ある大手自動車会社にお邪魔した時、それを感じたことがありました。
会長が廊下を大名行列のように部下を引き連れて歩いていく姿でした。
その間、廊下が一時封鎖され、来客中のお客様も目の前を通りすぎる会長を眺めながら待つ、といった光景でした。
この会社はその後、不正を繰り返し、そのたびに新聞沙汰になっています。
でも、1人ひとりの社員は極めて優秀な方が多く、また人情味があって、大好きな方ばかりでした。
人としては、まさに尊敬できる、そんな方々ばかりだったのです。
社内の重圧で忖度が働き、判断が狂ったとしか思えません。
⦿常に新しい常識を求める重圧の中では、優秀さより、フラットさや視野の広さが極めて重要になります。
判断を誤らないために、社内の常識ではなく、「別の視座」から考える習慣を持つことがリーダーには不可欠なのです。
仕事だと思って、他社の人と積極的に会い、「教えてもらう機会」を持ちましょう。
ベストセラー『LIFESHIFT(ライフ・シフト)』(リンダグラットンほか、東洋経済新報社)にも、こんなことが書かれています。
これからの時代、「エクスプローラー(探検者)」というステージが必要になり、多様な人たちとの接点を通じ、それぞれの価値観を自分の価値観としてインストールする「るつぼ」の経験があることが望ましい、と。
なるほど、似たようなことならできそうです。
リクルートで数々の情報誌を立ち上げ、「創刊男」との異名をとった、くらたまなぶ氏の著書にこんな一節があります。
「アポは『遠い人』を優先する」これは、自分とは異なる価値観に触れることの大切さを意味する言葉です。
その点、営業職の方はラッキーです。
お客様と仕事の話だけでなく、新たな価値観を聞かせてもらう、といったことも日常の仕事の中でできます。
もちろん、内勤であっても、勉強会やセミナーを探して顔を出してみる、といったことでも十分です。
「干されたらつらい。
だから、やらざるを得ない」と思うことはもうやめましょう。
常にフラットな視座を持つことが、ますます必要になっています。
重圧を感じた時、様々な価値観を持っておくと、広い視野からの判断ができるため、無用な重圧から孤独を感じることはずいぶんとなくなるでしょう。
Pointリーダーになったら、「違う価値観」に触れる習慣を持っておこう!
07時には、〝弱さ〟を見せたほうがいい真面目でキッチリしているだけでは、部下との距離は縮まらない。
リーダーに必要なことは、〝賢さ〟でも〝ソツのなさ〟でもなく、「人間くささ」。
人間くささとは、「弱さ」である。
自分の弱さを知り、その弱さを隠さないことも、リーダーには必要なのだ。
⦿初めてのリーダーが陥りやすい失敗リーダーだから、「弱みは見せるべきではない」「恥ずかしいところは見せられない」と考えているなら要注意。
リーダーになってから精彩を欠く人の特徴に、「ポジティブすぎること」が挙げられることは少なくありません。
いつも元気で前向き。
それは極めて大事なのですが、部下からしてみると、少し本音が見えない、といったことにもなるのです。
うまくいかない上司の典型は、ひとことでいうと「人間くさくない」、ということ。
従業員満足度の調査で意外とスコアが低く出るのは、このタイプがリーダーの組織です。
初めて役職が付き、肩に力が入っているという場合もありますし、意識することなく生来のポジティブさで突っ走っている人もいます。
いずれにせよ、それでは部下との距離は縮まりません。
この場合どうすれば良いのでしょうか?リーダーになったら、あえて弱みを見せる、といったぐらいの適当さが必要なのです。
例えば、ある幹部はこんなことを言った時、みんなの心を一気につかみました。
「営業時代、あまりにしんどくて、客先に行かず、山手線を何周かした」誰でもこれに近い経験はあるのではないでしょうか。
私も恥ずかしながら、大阪の環状線をまわったことを思い出しました。
「この人でも同じだったんだ」、こう思ってもらえる会話もリーダーには必要なのです。
一方で、サボったことのないリーダーは、あえて「弱み」「失敗談」を思い出してでも語ることをお勧めします。
⦿弱みを見せるのも、強さである以前、有名な合気道の師範と会話をする機会がありました。
日本屈指の方なのですが、次のような質問をしてみました。
「ヤンキーに絡まれたらどうしますか?」と。
師範は言いました。
「怖いので、全速力で逃げる」と。
この返答には驚きました。
でも、聞くとこういうことでした。
「想定外のことをする人は、やっぱり怖い。
なので、全速力で逃げる」と。
でも、しつこくさらに尋ねてみました。
「もし殴られたらどうするのか」と。
するとこんな返答でした。
「恨みを買わない程度の最小限の防御だけをして、全速力で逃げる」と。
どうでしょう。
とても人間くさく感じませんか。
お弟子さんたちもきっと人間味を感じていることでしょう。
よく言われることですが、やはり、こういうことです。
「本当に強い人ほど、怖がりであり、小心者だったりする」だからこそ、弱みを見せることで、ぜひ部下との距離を縮めてみてください。
きっと、部下はこう感じるでしょう。
本当にすごい人だから、弱さを見せられるのだ、と。
これもリーダーとしての処世術です。
Pointリーダーになったら、あえて「失敗談」を語るようにしよう!
■本章の参考文献・『リーダーシップの哲学』(一條和生、東洋経済新報社)・『PRESIDENT』(2015年8月31日号、プレジデント社)・『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』(くらたまなぶ、日本経済新聞出版社)・『LIFESHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットンほか、東洋経済新報社)
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