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第6章 「自分は思考ではなくて行動だ」

目次

思考が変われば人生は変わるか?

「思考が変われば、人生が変わる」

最近、フェイスブックを見ていてこんな素敵な言葉を見つけた。ジャスティン・ビーバーの投稿だとか過激な投稿よりもたくさん「いいね!」を集めていた。

私は真っ赤なスモーキングジャケットとクリーム色のネクタイ姿で、宵の口のクレームドマントをゆっくり口にしながら、その言葉の哲学的な意味を熟慮した(というのはウソで、本当はくたびれたAC/DCのTシャツとスエットパンツという姿でコーヒーを飲んでいた)。

そしてすぐに、「なんてくだらないたわごとだろう」と思った。職場で仕事をしたくないなと思ったときを思い浮かべてほしい。

「気が乗らない」だけでなく、すごくゆううつな気分になったときだ。時計を見るとまだ10時34分。昼休みだってだいぶ先だ。

「今日は何を食べようか。そういえば、あそこの新しいお店を試そうと思ってたんだった。職場の人がすごくおいしいって言ってたし。だけど値段がなあ……」

そこでハッとわれに返り、画面のカーソルをぼんやり見つめている自分に気づく。

「ああ、やる気がしない。今日は無理。エネルギーが足りない」そして自分でも気づかないうちに、ブラウザを開いてお気に入りの時間つぶしサイトを眺め始める。

「うっそ、ホバーシューズ?実用化されたの?」そしてまた、すぐに現実へ逆戻りする。

メールをチェックすると、クレジットカード会社からメッセージが届いている。

「やばい、使いすぎだ。いつものことだけど。これじゃホバーシューズとレストランでのランチはがまんかな」

何週間か前に登録した出会いサイトからも通知が届いている。

「メッセージはなし。恋の気配はゼロ。恋愛に向いてないのかな」誰かが近くに歩いてくる。

あなたは急いでマウスをクリックしてキーボードをたたき、通りがかっただけの同僚に向かって忙しいふりをする。

「ふう、危なかった!」時計を再び確認。11時13分。また30分を無駄にした。

「ホントにそろそろ仕事を始めないと。だけど最後にちょっとだけ……」こうした経験、あなたにもないだろうか。

仕事以外でも、やりたくないことに向き合わなければならなくてうんざりする。別のことで時間をつぶして、なかなか本題に取りかかれない。

「やること」リストが「やりたくないこと」リストに早変わりする。私たちは、日々こういうことを繰り返しながら生きている。

最高にエネルギッシュで、最高に賢い、最高の成功を収めた人も例外じゃない。では、そういう人たちとあなたを分けるものは何なのか。

それは、彼らが(意識的にか無意識にかはわからないが)一つのシンプルな事実を知っているからだ。すなわち、人間の考えていることとやることは必ずしも一致しない。

人間は思考ではない

あなたはあなたの思考ではない。

あなたという人間を決めるのは、頭の中にあるものじゃない。何をするか、つまりは行動だ。

偉大な思考は思慮深い精神にのみ訴えかけるが、偉大な行動は全人類に訴えかける。

─セオドア・ルーズヴェルトほとんどの人は、精神状態に大きく左右された行動を取る。

しかし、本当に偉大な人たちは、イヤな気持ちを味わいながらも、思考に引きずられない行動を取ることができる。

彼らも自分を疑わないわけじゃないし、何かを先延ばしにしたり、避けたりしないわけでもない。自分のすべきことがいつでもわかっているわけじゃない。

単にやるべきことに集中し、無理やりにでも行動しているだけだ。

ネガティブな思考は抱かないようにできれば最高だけど、それは現実的じゃない。ポジティブ・シンキング派はこの言葉にムッとするだろうが、考えてほしい。

そもそもなんでポジティブな姿勢が必要だと思ったのか。ネガティブな人や状況の影響を受けそうになったからじゃないのか。

そう、ポジティブ・シンキングを心がける人たちだって、どれだけがんばってもネガティブな思考で頭がいっぱいになるときは必ずある。

つまり、思考はコントロールできるどころか抵抗もできない。当然だ。すでに言ったとおり、思考の大半は無意識的なものなのだから。

思考の中には重要なものもたくさんあるが、たわいもないものもたくさんある。人間の頭には、そうした思考が日々浮かんでは消える。

自分には価値がないとか、まわりから浮いているとか、才能がないとかいった思い。

そうした思考が通勤途中に、料金の支払い中に、買い物の道すがら、あるいはドライブ中に浮かぶのは普通のことだ。

私はクライアントに、人生の見方や人生との向き合い方を変えてもらうことを求めている。

しかしこれは長期的な解決策で、相手の無意識をシフトさせるのはすごく時間がかかることだ。

ときどきネガティブな考えが浮かぶのは仕方ない。ときどきじゃない人もいるだろう。毎日という人もいるかもしれない。毎日何百回もという人もいるかもしれない。

ベッドから出たくない、仕事に行きたくない、責任を引き受けたくない日は誰にでもある。しかし、最終的にあなたはそれをやっている。どうしてもやりたくないことに取り組んでいる。

それはつまり、今のあなたにも、思考と独立した行動を取る力があるということだ。

私がクライアントに言うように、気分じゃなかろうが、とにかくやるしかないんだ。

もちろん、正しい心持ちや気構えは大切だが、心が完璧に整うのを待っていたら、いつまでたっても何も始められない。

気分じゃなかろうが、とにかくやるしかない。私はこれまで、完璧な精神状態をずっと待って過ごしている人に、それこそ何千人と会ってきた。

インスピレーションやモチベーションは確かに人を刺激するが、どちらも気まぐれな友人だ。必要なときにやって来るかどうかもわからない以上、あてにするのは難しい。

人は公正な行動を取ることで公正な人間になり、節度ある行動を取ることで節度ある人間になり、勇敢な行動を取ることで勇敢な人間になる。─アリストテレス

人生は、思考ではなく行動で変えるものだ。もっと言うなら、考えと行動とが一致すると、奇跡のようなことが起こる。行動をともなわない思考はただの思考だ。

あなた自身やまわりの人、状況に対するネガティブな思考は放っておけばいい。大した影響はない。

行動が思考を変える

行動のメリットは二つある。第一に、行動すれば必要なことができる。当たり前だ。そして次に、おもしろいことに行動は思考を変える一番の近道になる。

理由はいくつかある。自分のためになることをやっていれば、行動と思考が近づいていく。

逆に思考が人生や健康、貯蓄といった本人の利益を損ね、思考のせいで内に秘めた力を引き出せなくなることもある。

不安や恐怖、怠慢、怒りに支配される日々を送っている人は、前に進めない。

一方、やらなくてはならないタスクにすぐ取り組むようにすると、やがてそれは直感的な行動になり、次第にネガティブな思考から切り離されていく。

自分の弱さを嘆いたり、ためらったりしなくなっていく。何かに完全に集中しているとき、不安や頭の中のネガティブな会話は消えてなくなる。

あなたにも経験はないだろうか。意識的に全力で没頭すると、心の声はどんどん小さくなる。

ゴルファーも、テニス選手も、瞑想家も、編み物をする人も、ミュージシャンも、アーティストも、ランナーも、みんなそのことを知っている。

スポーツ選手はそれを「ゾーン」と呼ぶ。

そしてゾーンには誰でも入れる!目の前の行動だけに集中していれば、意識にも要領がわかってくる。そして入るたび、自信が深まる。そうした経験すべてが、あなたの思考を長い目で見て変えていく。

行動と思考の関係には、もう一つ大事なポイントがある。思考が現実になるのは本当だ。

しかし、思考は行動を通じてはじめて人生になっていく。それまではただの思考でしかない。

思考はミラーハウスの鏡に似ていて、人生やあなたの内に秘めた力をゆがんだりぼやけたりした形で見せる効果がある。

心は現実とかけ離れた形で世界をとらえやすい。その原因は、解釈や誤解、習慣、常識、文化的、家族的な価値観だ。

それは人生の上に重ねた紙に描かれた絵のようなもので、そのデザインに合わせようとすればするほど、現実は息苦しいものになっていく。

実際の人生と、自分が考える人生とのあいだのギャップ。人はたいてい、そのブラックホールのようなすき間にはまってもがくことになる。

何かがいいとか悪いとか、簡単とか難しいとかいった印象は、無意識を流れる不快なノイズ、あるいは思い込みがつくり出している。

大事な場面でヘマをやらかしたとする。

あなたの頭には、すぐさま「自分はなんてバカなんだ」とか「自分はいつもこうだ」といった言葉がとりとめもなく浮かぶはずだ。

そうした思考は、実は断片でしかない。

それでも、自分のダメさ加減を嘆いてばかりだと、脳はそれが真実だとすっかり信じ込むようになっていく。

逆に、ネガティブな思考は全体の一部にすぎないことがわかると、自分がいかにずれた考え方をしていたかに気づいていける。

これは精神科医も使っている手法だ。つまり効果があるということだ。

思考の逆をいく行動を取り、イヤだった状況に自分をさらすことで、脳はもっと意識的に世界をとらえられるようになる。

印象に基づいた人生ではなく、「ありのままの」人生を生きるくせがついていく。ネガティブな考えが浮かんでゆううつになったときは、すぐ行動しよう。

思考は無視して行動しよう。

自動思考や感情の命じるままに動くのではなく、自分のためになる行動を取ろう。やればやるほど慣れていき、いずれハッと気づくはずだ。

「あれ、やれるじゃん。自分は成長してる!」と。

心がやる気になるのを待っていてはいけない

行動せずにいると疑念や恐怖が生まれる。行動すれば自信と勇気が生まれる。恐怖を克服したいなら、家でじっと考えるだけではいけない。外へ出て忙しく過ごさなくてはならない。─デール・カーネギー

私はこの言葉が好きだ。

様子見ではなく行動を選び、自動思考を振り切って動き出すと、おもしろいことが起こる。悩んでいたことを忘れていくのだ。

これは単純に、行動しているとほかのことをする時間がなくなるからだ。忙しく動き回りながら、同時に心の中の不安や嘆きに集中するのは難しい。勢いもある。

いったん動き出してしまえば、そのあと動き続けるのはそう難しくない。すごく長くて恐ろしげに見えた道のりも、スピードが出ているときはかすんで見えなくなる。

しかし、それにはまずキーを差し、エンジンをかけ、ギアを1速に入れなくちゃならない。車は自力では走れない。あなたが乗り込むのを庭でじっと待っている。

ここは勘違いしがちなところだ。人は誰しも、早くドライブをしたいと思っている。

前向きな気持ちになれば誰か別の運転手が人生を動かし、自信を持てば物事がもっと簡単に進むと思い込んでいる。

しかし、目的地へたどり着くにはあなた自身がハンドルを握らないといけない。準備ができていなくても、シートベルトを締めてアクセルを踏まなければいけない。

今日から、今までと違うあなたになってほしい。ネガティブで非生産的な思考から切り離された行動を取ってほしい。今すぐ、目の前のタスクに着手しよう。

自分がどう思うかなんてどうでもいいから、動くんだ!心がやる気になるのを待っていてはいけない。

自分を駆り立てる魔法のような感覚をいつまでも探していてはいけない。

ただ動こう。思考は脇に置いて進もう。心の準備ができていないときもあるだろう。常に正しい行動を取れるわけでもないだろう。それでも動こう。やろう。

「ちょっとあとで」はナシだ。「この本を読み終わったら」もナシ。今すぐだ。もちろん、心はいつも「動くべきじゃない理由」を探し出す。

「やることはほかにもいろいろあるじゃないか」とささやきかけてくる。

「このあいだは動いたせいでストレスを感じ、不安になったじゃないか」と訴えかけてくる。

そうした思考に基づいた行動は取っちゃいけない。取るべきは目の前のタスクに基づいた行動だ。人生を変えるには行動を変えることだ。それがただ一つの方法だ。

まだ動けない?それなら、知っている中で一番偉大な人物を思い浮かべてほしい。個人的な知り合いでも、著名人でもいい。あなたは、そうした人たちの思考を想像したことがあるだろうか。

ガンディーやリンカーンは、疑念や恐怖、不安といった思考に押しつぶされそうになることはなかっただろうか。

ニコラ・テスラやスティーブ・ジョブズは?彼らが毎朝申し分ない気分で目を覚まし、「すべてはバラ色になる」なんて歌が頭の中で鳴るような日々を過ごしていたとあなたは本当に思うだろうか。

そんなはずはない!彼らだって、あなたと同じ最低最悪の気分を味わうこともあったが、それでも動いた。

ネガティブな思考をぎゅっと縮め、脇へどけて未知の領域へ踏み出した。それは積極的な取り組みだ。彼らはたまたま偉大なことを成し遂げたわけじゃない。行動したから偉業を成し遂げたのだ。

彼らが動かなかったら、彼らが何に情熱を燃やしていたのか、私たちにはわからなかっただろう。

偉業や知恵を目のあたりにすることもなかっただろう。偉人だって悩み、苦しみ、眠れない日々を送った。不安と闘いながら這い進み、やっとのことで目的を達成した。

一方、「いい思考」を持っていたはずなのに、大きなことを成し遂げられなかった人はたくさんいる。

それは、行動よりも思考ばかりを気にしていた人たちだ。逆に、ネガティブな思考を持っていてもすさまじい大成功を収めた人もいる。

ドラッグ中毒だった伝説のミュージシャン。気性の荒いプロスポーツ選手。不健康な体つきのモデル。いつも何かに飢えている大金持ち。例を挙げればきりがない。

ポイントは、ポジティブ・シンキングが必ず成功につながるわけではないし、ネガティブな思考が失敗への一本道というわけでもないことだ。

偉人はみんな気持ちとは関係なく行動した。あなたにも同じことができるはずだ。すべては動くかどうかだ。

外へ出て、動き始め、道の途中のネガティブなものをすべて受け入れよう。気持ちは楽にならないし、簡単に付き合えるようにもならない。いつまでたっても理解はできない。そういうものだ。

人生は今という瞬間にしかなく、今以上の最高の瞬間なんてどこにもない。何をしたらいいかも、どこから始めたらいいかもわからない?OK、ならそれを見つけるのが最初にすべき行動だ。

何をすべきかを見つけ、理解しよう。インターネットを漁り、本を読み、質問を投げかけ、講座を受け、アドバイスを求めよう。自分を卑下するのをやめて人生を生き始めるのに必要なことをなんでもやろう。

立ち上がって歩み出すのだ。行動が幸福につながるとは限らないが、行動せずに幸福が得られることは決してない。─ベンジャミン・ディズレーリ(19世紀英国の政治家)

思考と自分を切り離せ

自分は思考ではなくて行動だ」これがこの章のアサーティブな言葉だ。

そして、このフレーズにはこの章のすべてが凝縮されている。さあ、言ってみよう。

「自分は思考ではなくて行動だ」あなたはあなたの思考じゃない。

思考は頭の中をランダムに流れるものの集合にすぎず、ほとんどコントロールできない。ポジティブで前向きな思考を持つのは大事だ。けれども、ただ待っているだけでは望みのものは手に入らない。

心と体に負荷をかけ、何かを体験し、恐怖と向き合い、失敗という形でも何かを最後までやり遂げてはじめて、本当の意味で自分を変えられる。

世界で一番賢い人間だって、行動しなかったらその賢さはなんの意味も持たない。

「自分は思考ではなくて行動だ」という言葉を、この次「気が乗らない」ことがあったら思い出してほしい。

仕事に行く気がしなかったり、人生の重大な決断をする気になれないときに。自分に自信がなくて最初の一歩を踏み出せないときに。ネガティブな思考は一切忘れよう。

ただ踏み出そう。続けてもう一歩。さらにもう一歩。あなたは思考じゃない。行動だ。

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