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第6章長生きしたけりゃ筋トレをしなさい

──筋トレを中心にした生活をすると、心と生活リズムが整い、かっこいい身体になり、QOLが高まることはわかりました。

それに加えて、筋トレを初めとする運動習慣には予防医学的な側面もありますよね。

筋トレと健康の関係について教えてください。

まず、大前提として「筋トレが全体として健康にポジティブな影響を与える」ということについては研究の世界でも概ね異論がありません。

ですので、筋トレが健康に良いのはなぜなのか?どんなメカニズムなのか?という基礎的な研究がたくさん行われています。

例えば、薬理学的なアプローチや栄養学的なアプローチに加え、高強度(高重量)の筋トレをすると、骨密度が増加する、という現象がありますが、これはストラクチュラルエクササイズ(特に頭から脚にかけて重量を感じるようなもの:スクワットやショルダープレスなど)をすることによって、骨に刺激が入り、骨の形成を促すというメカニズムによるものとされています。

アンチエイジングのところでも触れたが、筋トレが中高年の健康寿命を伸ばすことに大きく貢献し、国家単位の大きな目で見れば医療費削減、介護問題の解決、労働人口の増加、消費の増加と日本が抱える深刻な問題を一挙に解決できるというのは冗談ではない。

真面目な話、課題先進国(少子高齢化、温暖化、デフレなど現代日本が抱える課題は中国、インドなどの新興国にもいずれ訪れる問題であり、世界各国に先駆けてこれらの課題を解決する方法を模索しようという考え方)の日本が予算内で行える国策で義務筋トレ以上のものが思いつかない。

筋トレが国策となり、筋トレが日本を救う日は近いぞ。一億総筋トレ時代だ。

──なるほど!確かに運動習慣のない中高年の人が体調を崩して病院に行くと、医者から歩くことと同時に筋トレをすすめられるケースが多いようですね。

Testosteroneさんのおっしゃるように、病院に行く必要性が出てくる前から筋トレを習慣化し、予防医学的な意味合いでの筋トレが国民に広まれば日本にとっては大きなプラスですよね。

はい、筋トレや有酸素などの運動と健康や長寿の関係についてはかなり研究が進んでいて、何千人、何万人という大きな集団を対象にしてある疾病との関連を調べる「疫学研究」も盛んに行われています。

今回はそうした壮大な疫学研究の中でも、ある1つの期間から数年後、数十年後までを追って因果関係を調べる「前向き研究」(コホート)をいくつか紹介します。

──「筋トレと病気」について掘り下げた研究があるということですか?その通りです。Stamatakisら(2017)は8万人を対象に、様々な疾患に起因する死亡率と筋トレとの関連を調べました。

その結果、週に2回以上筋トレしている人はそうでない人よりもガンに関連する死亡率が約30%低いことが明らかになりました。

ここで驚きなのは、有酸素運動を単体で行った場合にはガンに関連する死亡率は低下しなかったということです。

さらに、ガン以外も含めた全体的な死亡率についても明確な関連性がでていて、筋トレをしている人たちは若年死する確率が23%低下したそうです。

──おおっ!8万人とはすごくスケールの大きな研究ですね。

簡単に言うとジョギングだけをやっている人より、筋トレをしている人の方がガンで死ぬ確率は低くなるということですね。

さらにガンに限らず、若くして死んでしまう心配も減ると。アスリートだけが筋トレする。筋肉付けたい人だけが筋トレする。そんな時代はもうすぐ終わる。

〝走る〟という行為にもジョギング、ランニング、ダッシュと様々な強度があるように、皆が皆超ハードな筋トレをする必要はない。

一般人は一般人の強度で、アスリートはアスリートの強度で、筋肉を付けたい人は筋肉を付けたい人の強度で筋トレすればいい。

予防医学や健康管理の一環としての〝筋トレ〟が日本でもっと認知されればうれしいな。

また、この研究から

①自重での筋トレでも、器具を使った筋トレと同じような効果(死亡率の低下)が期待できる

②WHO(世界保健機関)の筋トレ指針に従って筋トレをするとガンに関連する死亡リスクの低下が期待できるが、有酸素運動に関するWHOの指針は死亡率を下げなかった

③筋トレと有酸素運動を組み合わせるとより大きな死亡率の低下が期待できる──ということもわかっています。

──自重筋トレでもOKだけど、ランニングだけだと効果なし。

筋トレとランニングを組み合わせるとさらに◎ということですね!ちなみにWHOの指針ってどれぐらいなんですか?筋トレについては18─64歳の場合、中強度の身体活動を週に150分以上、高強度身体活動であれば75分以上を推奨しています。

いわゆる有酸素の運動については、1回あたり10分以上で、中強度なら週に300分以上、高強度であれば150分以上行うことを勧めていますね。

──軽いジョギングやマラソンだと週に300分以上、5時間もやらないといけないんですね!結構ガッツリやらせようとしてきますね…それに比べ、高強度の筋トレなら75分でいいんですね。中強度の有酸素と比べても1/2で済みます。

前の章でも取り上げましたが、忙しいビジネスパーソンが筋トレを選ぶのもわかりますね。そうなんですよ。筋トレは超効率的なんですよ。

世界を股にかける超多忙なグローバルスーパービジネスエリートの僕なんかだと、1分1分がとても貴重で運動する時間がなかなか捻出できないからね。

ちなみに、そんなグローバルスーパービジネスエリートの僕の週の筋トレ時間は週800分です!──結局軽い有酸素の約3倍の時間使ってるじゃないですか(笑)。

筋力と死亡率の関係についてもう一つ付け加えると、2008年にRuizらが20歳から82歳の約8000人の男性に対して行った研究では、筋力レベルが高い人(上肢の筋力はマシンを用いたベンチプレス、下肢の筋力はレッグプレスを用いて測定)は筋力レベルが低い人より20─30%死亡率が低いことが明らかになりました。

これは単純に筋トレをして筋量、筋力が増えて、健康リスクのある余分な体脂肪が減ったからとも予想できますし、筋トレのために食事に気を付けはじめたり、身体活動量が上がったりと、付随的な役割を筋トレが担っていた可能性もあります。

おそらく、膨大な要素が絡み合って死亡率を下げているのでしょう。

そこが筋トレの素晴らしいところで、筋トレの効果を最大化しようと思うと自然と生活リズムが整う。十分な栄養補給と睡眠は筋肉の成長には欠かせないからだ。

ご存知の通り、栄養と睡眠はホルモン分泌や自律神経の調整、免疫力のアップ等、人間が健康でいるための多くの重要な要素と関わっている。

「筋肉をつけたい!」という欲求に従い生きる結果、もっとも健康的な生活習慣が身につくのだ。生活習慣の矯正まで求めてくる趣味、筋トレ以外になくない?筋トレは本当に最高だ。

死亡率についての調査にはいろいろなものがあって、身長と体重の関係から算出するBMI(BodyMassIndex)に関するものも多数あります。

BMIは肥満度を測るためのものですが、体脂肪率を考慮していないので、筋トレ界隈では評判がよくありません。体脂肪率が5%とかのマッチョでも、体重が重いとBMIの上では「肥満体型」になってしまうからです。

ただ、BMIもなかなかバカにできなくて、東アジア諸国を対象にした46の研究をまとめ、Lancet誌に掲載された論文の図表から解釈すると、BMIが5上がるごとに死亡率が約10%上昇してしまうことがわかります。

私はBMIには反対です。個人的な理由からではなく、確固たる理由があります。聞いてください。5~6年前でしょうか。会社の健康診断でBMIの数値から〝肥満〟と判定されたんです。カルテを受け取る際、「肥満なので生活習慣にお気を付けくださいね」と女医さんに言われました。

女医さんが超タイプだったので、カッコつけたい欲が出てしまい「肥満ではありません!筋肉です!嘘じゃありません!」とつい強めに主張してしまい苦笑いされながら冷たい視線を向けられました。

あれは完全に変人を見る目でした。あの事件がなければあの晩、僕は女医さんとディナーに行けていたはずです。間違いありません。BMIは許しません。

個人的な理由以外の何物でもないじゃないですか(笑)。

この出来事がなければディナーに行けていたという科学的エビデンスもありませんし。うるさい!恋は科学では測れないんや!──……(笑)。脱線してるので話を元に戻しますね。

根深いBMI問題は置いておいても「死にたくなったら筋トレ」ってだけじゃなくて、「死にたくなかったら筋トレ」とも言えそうですね!ちなみに死んでしまうような深刻な疾患以外にも筋トレは効果があるのでしょうか?例えば生活習慣病についてはどうでしょうか?BiomedResearchInternationalに掲載されたStrasserら(2013)の総説では、筋トレがグルコースの輸送体であるGLUT4による糖の取り込みを増加させることによって2型糖尿病(糖尿病全体の90%以上を占め、主に生活習慣の崩れが引き金になって起こる糖尿病)を予防できる可能性があることを示唆しています。

またDiabatesCareに掲載されたEvesら(2006)の総説によると、筋トレは他の章で触れたサルコペニアなどを予防するほか、血糖コントロールやインスリン感受性を改善するため、2型糖尿病罹患者にも推奨できるものであるとしています。

──糖尿病は合併症のリスクがあって怖いですからね…。

将来の健康リスクのためにきちんとした食事をとったり、規則正しい生活を送ったりするのはなかなか難しいですが、趣味である筋トレのため、筋肉のためと考えたらできそうな気がしてきました!一つ留意してほしいこともあります。

前述のEvesらも「ほとんどの先行研究が専門家のスーパーバイズ(監督)のもとで行われたものであること、筋トレには専門の器具やエクササイズの知識がある程度必要であること」を指摘しています。

つまり筋トレの恩恵を十分に受けるには正しい知識と環境が必要ではないか、ということを示唆しているのです。知識を広め、そういった環境を作っていくことも、我々の仕事の一つなのかもしれません。

全人類が正しい筋トレの知識を理解し、手軽に筋トレに取り組める環境を整えることは俺の人生の究極の目標だ。筋トレインフラ。

、、。

──筋トレという素晴らしい習慣を一部の愛好家だけで独占するんじゃなくて、広く人類全体にシェアできたら素晴らしいですよね。

最後になりますが、筋力と死亡率や生活習慣病の関連を調べた研究の多くは、簡単に調査できる握力を「筋力」と定義しています。

ちなみに握力は全身の筋力とも相関があることが多くの研究で知られていますので、握手をすると、その人の筋力がある程度わかるかもしれませんね。

──Testosteroneさん握手してください!私の筋力を握力なんかで判断しないで!もっと全体を見て!まずはハムストリングから!──こ、こいつめんどくせぇ……。

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