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第6章自分の中に「怒りにくい仕組み」をつくる

目次

怒りの背景にある自分と向き合う「怒りにくい仕組み」をつくろう

本章では、第5章のアンガーログをふまえて、怒りの背景に向き合います。怒りを生み出してしまう「コアビリーフ」の歪みはどうして起きるのか。

その歪みによって生まれた怒りが、どういったきっかけで噴出してしまうのか。それらを自分の内面や過去と照らし合わせて、探っていくのがこの章です。

そして、もっと深く自分の「怒り」に向き合って、自分の頭の中に「怒りにくい仕組み」をつくっていきましょう。あなたの頭の中の「怒りやすい仕組み」は長い時間かかってつくられてきたものです。

それを変えていくのですから、少しの時間とトレーニングが必要です。ですが、必ず変えることができます。あせらず、じっくり取り組んでいきましょう。

「コアビリーフ」と「トリガー思考」の関係

頭の中に「怒りにくい仕組み」をつくるときのキーとなるのが、「コアビリーフ」と、最終的に怒りを大きくするきっかけとなる「トリガー思考」の二つです。

このコアビリーフとトリガー思考の二つがセットになって怒りが生まれ、大きくなります。そして、この二つが変わらないかぎり、いつまでも同じように考え続けます。ですので、この二つと向き合い、変えていく必要があります。

まず、第2章でもご説明したように、コアビリーフは自分にとっての辞書のようなものです。

私たちは出来事を認識するときに、自分のコアビリーフに照らし合わせて、それがどういうことなのかを意味づけします。

意味づけした結果、それが受け入れられないものであったり、間違っていると思ったりすれば、怒りが生まれます。

どんなコアビリーフをもとうと、それは個人の自由ですが、それが自分にとっても、まわりの人にとってもマイナスなものとなるようなものであれば、修正していったほうがいいでしょう。

さて、一方の「トリガー思考」とは何でしょうか。それは、最終的に自分の怒りを大きくするきっかけとなる考えのことです。

「トリガー思考」はコアビリーフと深く関係しています。

コアビリーフが怒りのもととなる考え方ならば、トリガー思考はその怒りのもとが表に出るときの「きっかけ」「引き金」です。

アンガーマネジメントを身につけるには、自分がどのようなコアビリーフをもっているのか、どのようなトリガー思考があるのかを深く理解しなければいけません。

「コアビリーフ」の歪みがどうして起こるのかを、自分の内面、過去を振り返って探ること。怒りが噴出するきっかけの傾向(「トリガー思考」)を探ること。

本章では、自分と向き合いながらこの二つを探っていきましょう。

この二つを探ることは、第5章で行った「アンガーログ」よりも自分の内面や過去に向き合うことですから、少しつらい思いをすることがあります。

コアビリーフの歪みがどこにあるのかを見つけ、直そうとすることは、自分の考えや価値観、信念を曲げることに近いので正直ストレスを感じることもあるでしょう。

とはいえ少しずつ、無理をしない程度に、コアビリーフに向き合い、トリガー思考を探り、少しでも自分を「怒りにくい仕組み」にしていきましょう。

3コラムテクニックでコアビリーフの歪みを正す自分の認識のエラーに気づく

さて、では具体的に「コアビリーフ」にどうやって向き合えばいいでしょうか。

「3コラムテクニック」という方法です。

私たちは何かを認識するとき、自分のコアビリーフに従って認識します。

コアビリーフは自分が一番正しいと信じていることや、「~すべき」と思っている事柄で、それが客観的に正しいかどうかということは関係ありません。

「信頼関係を築きづらくなるから担当者はずっと同じ人であるべき」と思う人もいれば、「担当者がずっと同じだと癒着のもとになるから、定期的に代えるべき」と思う人もいます。

あるいは、「女性は、ストレートに発言すべきでない」と思う人もいれば、「女性ははっきり発言すべき」という人もいます。

「子どもにはダメなことはダメと強く言うべき」と思う人も入れば、「子どもも一人の人間だから、丁寧に理論的に諭すべき」と思う人もいます。

世の中の多くは、どちらが明らかに間違っているとも正しいとも言えないものです。

なのに、なぜか人は、「こうあるべき」「こうしなきゃ」と思い込みがちです。

ふだん、私たちはこうした自分のコアビリーフの歪みや認識のエラーにはなかなか気づきません。とくに怒りで冷静さを失っているときはよけいにそう思うことはできません。

だからコアビリーフの歪みや、認識のエラーを自分でチェックをしないままだと、いつまでも同じ問題を繰り返すことになってしまいます。

そこで、コアビリーフの歪みやエラーをチェックする方法が「3コラムテクニック」なのです。

3コラムテクニックのやり方

では、3コラムテクニックをご説明していきましょう。

3コラムテクニックでは、何か怒りを感じる出来事が起きたときを思い出し、次の3つについて段階をおって考えます。

そして次の図のように書き出してみましょう。

●はじめに思ったこと:その出来事に対して最初に怒りを感じ、思ったことを書きます。

●認識のエラー:次にそう思ったことに認識の歪みがあるかどうかを疑います。このときにどのようなコアビリーフにもとづいてその認識がなされたのかも考えます。

●リフレーム(言い換え)その出来事をプラスな方向にとらえるためにはどのように認識できればよいのか、そのために必要なコアビリーフはどのようなものかを考えます。その上でどのようなアクションが起こせるかを考えます。

3コラムテクニックをやるときは、怒りを感じた直後は避けてください。

なぜなら3コラムテクニックは、アンガーログと違い、自分の内面や過去とより深く向き合うので、怒りを感じた直後だと怒りに引っぱられてしまうからです。

「アンガーログ」は、アンガーマネジメントの認識の修正の基本となるものですが、あまり自分の過去や悩みや内面には深くつっこみません。

ですが、3コラムテクニックは違います。

なので、できれば週末など、落ち着いてゆっくり時間がとれるときに行ってください。

なるべくなら落ち着いた環境が望ましいでしょう。

ストレスの少ない状況で、ゆったりと時間をとって、じっくり自分と向き合うのです。

また、3コラムテクニックをする際は、次のことを自分に質問しながら行ってください。

「長期的な視点から見たとき、自分やまわりの人にとっても健康的でプラスになるためにできることはなんだろうか」この質問を自分自身に投げかけながら行うのです。

この視点をもとに自分のコアビリーフを疑い、修正していきます。また、アンガーログと同じく書きながらやってみてください。頭の中だとうまく自分の考えがまとまらないからです。

第5章でやったアンガーログをもとに3コラムテクニックをやるのもいいでしょう。

その一週間で記録したアンガーログ10枚なり、20枚なりを眺め、その中から取り組みたい怒りを数件取り出し、そのことについて深く考えてみるのです。

「バイトは使えない」という認識のエラー

では、3コラムテクニックを実際にやる前に、例を二つ見てみましょう。

〈ケース1〉ファストフード店で店長をしている小山さんは、アルバイトの管理で苦労をしていました。

すぐに辞めてしまったり、無断欠勤する高校生が何人もいたので、「アルバイトなんてどいつもこいつも使えないヤツばかりだ」と信じています。

そこに、今日アルバイトの予定の入っている高校生から欠勤するという電話がかかってきました。

小山さんはアルバイトの高校生に大激怒。「もう来なくていい」と言ったのでした。そして、あとで冷静になったところでひとしきり反省し、3コラムテクニックをやってみたのでした。

●はじめに思ったことどいつもこいつもワガママばっかり言いやがって。高校生なんてみんなダメだな。今どきの高校生に期待するほうがおかしいのかもしれないな。

●認識のエラー「高校生バイトがみんなダメ」というのは、自分の勝手な思い込み、コアビリーフだ。これがあるから「欠勤の電話」で、「こいつもダメな高校生だ」と認識し、怒ってしまうのだ。この高校生には、他に正当な理由があったかもしれなくても。

●リフレーム(言い換え)「高校生バイトがみんなダメ」ということはない。「一人ひとり違うから、できる高校生もいる」というコアビリーフをもつようにしよう。そして一人ひとりをきちんと評価しよう。そのためには、できる高校生の特徴を見抜けるようにしよう。バイトの採用基準も見直してみよう。

〈ケース2〉浅野さんはつきあっている彼が毎日電話してくれないことに不満をもっています。

浅野さんにとっては、彼は毎日彼女に電話をするのが当たり前と信じているからです。今日も彼からの電話を待っているのに、まったくかかってくる気配がありません。イライラしながら彼の電話を待っている間に、以前習った3コラムテクニックをやってみようと思ったのでした。

●はじめに思ったこと

なんで電話してこないの?毎日電話するのが普通だよね。

●認識のエラー

「彼が彼女に毎日電話をするのは当たり前、義務だ」というコアビリーフがあるから、彼からの電話がないと「彼はひどい」と歪んだ認識をし、怒ってしまうのね。でも、たしかに電話は義務ってことはないよね。私が当たり前だと思っていることは、自分の願望であって、彼の当たり前ではないのだろうな。

●リフレーム(言い換え)

「毎日の電話は必要ない。どうしても話したいなら自分から電話をする」というコアビリーフをもとう。そうすれば、今みたいに「彼からの電話を待つ」ことにイライラしないはず。

ただ、その一方で、毎日かかってくるかどうかわからない電話を待つのは疲れるから、今度からは電話してもらう日を決めよう、と彼と話し合ってみよう。

このように3コラムテクニックでは、自分のコアビリーフが歪んでいないか、認識にエラーがあるかどうかをチェックしていきます。

その上で、どのようなコアビリーフをもてば、問題を起こさない認識ができるのかを考えます。

そして、修正したコアビリーフをもとに、どのようなアクションをとっていけば問題が解決するのか、をセットで考えるようにします。

自分のコアビリーフに歪みがあるかどうかを判断するポイントは、自分や周囲の人にとって、それがプラスで健康的なものになっているかどうかということです。

当然のことながら、自分にもまわりの人にもプラスになるコアビリーフや認識のしかたが望ましいわけです。

自分のコアビリーフ、認識をチェックしたとき、どうしてもそれが長期的な視点から見て自分にもまわりの人にとっても健康的でプラスなものになっているの

かどうかわからないときは、まわりの人に自分が考えていることを話してみましょう。

何人かの人(できれば利害関係のない人)に自分が信じていることや認識していることを話し、どのような意見をもつのかを聞いてみるのです。

第三者から意見を聞いていくことで、独りよがりになることを予防できます。

3コラムテクニックを実践することで、理想の自分になるために必要な考え方、具体的なアクションを自分で理解することができるようになります。

自分の価値観や過去を疑う

さて、それでは一緒に3コラムテクニックをやってみましょう。まずは、最近、記録したアンガーログの中から気になるものを一件取り出してください。そしてその出来事を思い出してください。そしてなるべくその出来事で感じた怒りの背景に、素直に向き合ってください。

【はじめに思ったこと】まず怒りを感じた状況を思い出してください。そして、そのときにはじめに思ったことを素直にそのまま書いてください。

【認識のエラー】自分はなぜそう思ったのでしょうか。そしてそう思ったのは、どのようなコアビリーフによってそう思ったのでしょうか。自分のそのコアビリーフは歪んでいないのかを考えてみましょう。自分の認識にエラーがないか疑ってみましょう。自分が「常識」「当たり前」と思っていることは、本当にまわりの人にとっても常識や当たり前のことでしょうか。どうしてもわからないようであれば、まわりの人に率直に聞いてみましょう。

【リフレーム(言い換え)】その出来事をプラスな方向にもっていくためにはどのように認識できればよいのか、そのために必要なコアビリーフはどのようなものかを考えます。

その修正したコアビリーフをもてば、どのような認識になるのかを考えます。

さらには、その修正したコアビリーフにもとづいて、自分にもまわりの人にもプラスになるような状態になるためには、どのような言動をとっていけばよいのかを書き出してみましょう。

コアビリーフを疑う「3コラムテクニック」をやってみて、いかがだったでしょうか。

3コラムテクニックは、自分の内面と深く向き合い、自分の信じている価値基準や自分の過去を疑うことになるため、少しつらい部分があります。

ただ、これをすると、アンガーマネジメントが一気にうまくいくようになります。

これをゆっくり、じっくりとでかまわないので、きちんと取り組めば、必ず怒りにふりまわされずにアンガーマネジメントができるようになります。

コアビリーフを検証できる自分でいよう

3コラムテクニックをする際に、気をつけてほしいことがあります。

これを行っていると、自分が当たり前と思っていることでも、周囲の人は当たり前と思っていないことはいくらでもあることに気づきます。

自分が常識と思っていることも、常識ではないと気づくこともよくあることです。

だからといって、自分が信じていることのすべてに自信をなくしてくださいということではありません。

ただ単純に、自分のコアビリーフのうちの一部が自分にもまわりの人にとってもプラスにならないことはあるというだけのことです。

「自分のコアビリーフの一部が歪んでいることでまわりとの間に問題が起きるのなら、それは直していこう」と謙虚に自分の行動を見直せばいいのです。

自分のコアビリーフや認識をまったく疑わなければ、とても独りよがりな人になってしまいます。

そしてその独りよがりによって怒り、まわりを傷つけ、事態を悪化させ、結果的に自分をも苦しめてしまうのです。「私のコアビリーフは歪んでないか」と検証できる視点をもち、自分と向き合えることこそが大事なのです。

「怒り」によって大切なものを失くさないように、どのようなコアビリーフをもてば自分にもまわりの人にとってもプラスなものとなっていくのかを考え、自分が望む形に変えていきましょう。

怒りの爆破スイッチ「トリガー思考」を知る 「地雷」の原因は過去にあり

さて、コアビリーフの歪みにじっくりと向き合い、変えていくと同時に、あなたのトリガー思考についても考えてみましょう。

トリガー思考は、怒りが表に出るきっかけになる考え方です。つまり、私たちがふだん「地雷をふんだ」のような言い方をしているようなものです。このトリガー思考に気づかないと、私たちはいつまでたっても同じようなことで怒ってしまうことになりかねません。

私たちはコアビリーフ同様、さまざまなトリガー思考をもっています。自分の怒りのきっかけになりやすいトリガー思考は誰にもあります。ある人は「自分がバカにされた」ということが最も大きなきっかけになるかもしれません。

ある人は「だまされる」ということが一番のきっかけになるかもしれません。ある人は「容姿のことを言われる」のがトリガー思考になるかもしれません。

自分のどのようなトリガー思考が最も危険なのかを知ることは、怒りをマネジメントしていく上では欠かせません。

自分の危険なトリガー思考をあらかじめ知っておくことで、もし誰かが自分のトリガー思考にふれるようなことを言ったとしても、「まずい、これは自分のトリガー思考だ」と先回りして対処することができるようになるからです。自分のトリガー思考に向き合うのは、少し苦痛かもしれません。

なぜなら、自分にとってパワフルで大きな意味をもつトリガー思考は、自分のコンプレックスだったり、思い出したくない苦い過去に関係していることが多いからです。

例えば、「無視された」ということがトリガー思考の場合、その人は過去に無視されたことで大変傷ついた過去があります。

あるいは、「誰も話を聞いてくれない」ということがトリガー思考の場合、その人は誰も話を聞いてくれないことで、とてもつらい思いをしたことが過去にあります。

アンガーマネジメントは基本的にはソリューションフォーカスアプローチなので、あまり過去にさかのぼって原因を追究しないのですが、トリガー思考はある程度、過去を振り返って過去に向き合う必要があります。

トリガー思考もコアビリーフ同様、過去から長い時間をかけて少しずつ形づくられてきているものだからです。

結局は、同じトリガー思考で怒っていた

では、トリガー思考を探る一例をあげましょう。

証券会社で営業をしている福田さんは、これまでに何度かまずい言動をしてしまったことがあり、そのことについて反省していました。

ただその一方で、何がきっかけで自分がこうも激しく怒ってしまうのか、今ひとつ自分自身でわかっていませんでした。

福田さんには、このことを解決するため、アンガーマネジメントを受けるにあたり、アンガーログをつけてもらいました。

その際、この事件は大きいなと思われるアンガーログの二件に注目することにしました。

それは、次の二件です。

福田さんは「接待こそ営業の要」ということから、今、狙っているお客さまに対して連日の接待をしていました。ライバルとの競争は激しかったのですが、これだけ接待をし、信頼を得ていれば大丈夫だと思っていました。

先方からも「福田さんと一番仕事をしたい」と言ってもらえたりして、福田さんは営業の手応えを感じていました。ところが、結局そのお客さまはライバル会社と契約をしてしまったのです。

それを知った福田さんは激しく怒り、お客さまに電話をして「なんで突然変えてしまうんですか!?信頼してたのに!ひどい!」とくってかかったのです。

当然、この電話が原因で先方から会社に苦情が入り、上司からもひどく評価を下げられたのでした。また、福田さんの部下が転職したときも一悶着ありました。福田さんは、その部下をかわいがり、手塩にかけて育てていると自負していました。

ところが、突然その部下が、福田さんになんの相談もなく転職をするということを告げてきたのです。その時も福田さんは、「君にどれだけ手をかけたと思ってるんだ……。恩を仇で返すのか!」とその部下を強く責めてしまったのです。

もちろんそれ以降、福田さんの社内での評判は決してよいものにはなっていません。

この二つの事件のうち、共通している思いはなんでしょうか。

福田さんには、この二件をじっくり思い出してもらい、その二件に共通する思いを書いてもらいました。その結果、二つの事件に共通して「裏切られた」という思いが福田さんの中にあったのです。そうです、福田さんの怒りを大きくするきっかけとなったトリガー思考は、「裏切られる」ということだったのです。

実は福田さんはこれまで生きてきた中で、何度か裏切られたということを経験していて、その度にとても傷ついた経験があったのです。

そのため「裏切られる=自分にとっては最悪のこと」というように自分の心の中に書き込まれていたのでした。

接待営業の件では、契約がとれなかったということは目に見える現象であって、トリガー思考ではありません。トリガー思考は、通常はその目に見える現象の裏にあるものです。

ですから、福田さんを本当に怒らせたものは、契約がとれなかったという事実が象徴している「相手が自分を裏切った」ということでした。

「自分がこれだけお金と時間を使って尽くしたのだから相手は当然それに応えるべき」というコアビリーフの歪みが福田さんにはありました。

そして、相手が自分と契約をしなかったことで、「自分は裏切られた」と受け取り、お客さんにくってかかるというまずいことをしてしまったのでした。

部下の転職の件も同じことです。

福田さんは、「自分がこれだけ手塩にかけて育てているんだから、部下は自分の期待に応えるべき」というコアビリーフの歪みがありました。

そして、部下が自分に相談することなく転職を決めてしまったことで、「自分は裏切られた」と受け取り、部下を罵倒したのでした。

福田さんが経験したことは、契約がとれなかったり、部下が転職したりというまったく別の出来事です。ただ、福田さんを激しい怒りにおいやったのは、「自分は裏切られた」という共通のトリガー思考だったのです。

目に見えない思いと深く向き合おう

トリガー思考に実際向き合う際は、3コラムテクニック同様、なるべく静かな環境でゆったりと自分と向き合える環境を用意してのぞみましょう。

内面に深く向き合うものですから、ストレスのないリラックスした状態でするのが望ましいのです。

そして、第5章でつけたアンガーログを数枚用意してください。

そのアンガーログを見ながら、怒った出来事も思い出しましょう。

その上で、アンガーログの項目のうち、「思ったこと」「感情」「結果」に注目するのです。

自分はその出来事で「どう思ったか」「結果としてそれをどのようにとらえたのか」という「目に見えない気持ち、感情、思い」についてフォーカスするのです。

アンガーログの中でも、「上司に怒鳴られた」「何度も同じミスをする」といった「出来事」などの、〝目に見える事象そのもの〟は見なくてかまいません。

気持ちや感情の中で、自分が怒ってしまう要因になったものは何か。それを考えてください。ただし、怒ったことを思い出す際、「思い出し怒り」をして、再び誰かに怒りを抱かないよう気をつけてください。あくまでも自分の心と向き合うのです。

そして、一枚一枚のアンガーログに、自分のトリガーを特定して書き込んでいってください。ある一件は、「バカにされた」ことかもしれませんが、ある一件は、「裏切られた」ことかもしれません。

ですが、一件一件「トリガー」を書いていくと、何度も同じ「トリガー」が出てくるはずです。それこそがあなたの大きな「トリガー思考」なのです。

過去にとらわれない視点をもつ

このように、トリガー思考は、「自分の怒りを爆発させてしまうきっかけとなるもの」です。

一般的なトリガー思考としては、次の一覧のようなものがあげられます。

自分自身で、アンガーログを見つめ、自分と向き合ってください。ただ、ここで一つ、気をつけてほしいことがあります。

それは、過去に経験した苦しみ、つらさ、悲しみは今後も同じように繰り返されるわけではないということをしっかり頭においておいてほしいということ。

例えば、「無視された」というのが自分の大きなトリガー思考の場合、これまでに「無視された」ことでつらい思いや悲しい思いをしてきました。

だから、今でも「無視された」と思えば、そのつらさや悲しさを一瞬でも忘れたいために、怒りをもつのです。怒りはつらさ、痛み、悲しみなどをごまかしてくれる役割もしているからです。とはいえ、これまでに「無視された」経験があるからといって、今後もまた「無視される」とはかぎりません。

また、「無視された」と思っても、よく考えれば実はたいしたことないこともよくあります。昔の「無視された」ことと、今の「無視された」ことは違うものです。

トリガー思考の原因となった苦しみ、つらさ、悲しみは、あくまでも過去のこと。そう自分に言いきかせて、今後はそれにとらわれすぎないようにしてください。

怒るワンパターンから脱する いつも似たようなことで不快になる人へ

さて、アンガーログをつけ、コアビリーフ、トリガー思考に向き合っていく中で気づいたことはありませんか。

そう「イライラ、ムカムカする」といっても、実は、怒りを感じる人はいつも同じ上司だったり、イラつくのは必ず電車の中だったり、ムカムカする出来事があるのは決まって午前中だったり、と自分なりのパターンがあるのです。

あなたも自分でもあきれるぐらい同じようなことで怒って、同じことを言ったり、したりしていませんか。人は知らず知らずのうちにワンパターンにはまるものなのです。

人がワンパターンにはまるということは、良いか悪いかは別にしてラクなのです。決まったことさえしていればいいのですから深く考える必要がありません。

いつもと違ったことをするというのは、大きなエネルギーがいるということを、人は無意識のうちに知っているのです。

だから、人は放っておくとワンパターンにはまるものなのです。といっても、ここで「ワンパターンがダメ」と言っているのではありません。

よけいな労力を払わなくていいのであれば、そのほうがいいのですから。

ここで言いたいのは、ワンパターンだから不都合なのではなく、いつものワンパターンの中に、イライラ、ムカムカを引き起こしてしまうものがあるのなら、変えていきましょう、ということです。

いつもの行動を一つだけ変える

あなたはどのようなワンパターンにはまっているでしょうか。

毎日の出来事を振り返ったり、アンガーログを見直してみて、これはもしかしたらワンパターンなのかもしれないということがあれば、書き出してみてください。

そしてワンパターンにはまっていると思ったときは、アンガーマネジメントでは、「ブレイクパターン」を試みます。ブレイクパターンとは、文字通り「パターンを壊すこと」です。

いつもの通勤経路、話し相手、仕事内容、食事場所など、イライラ、ムカムカするワンパターンの中で、一つだけ、いつもと違う行動をしてみるのです。

やり方としては、まず第5章でつけたアンガーログの中で、「そういや、いつもこのことでムカついてるな」という件を取り出してください。

そしてそれについて3コラムテクニックをするのです。その3コラムテクニックの中で、とくに「リフレーム」の項目に注目してください。正しい認識に修正したあと、その認識をもってやるべき行動をいくつかあげてもらったと思います。その行動のうち、一つだけを実際にしてみるのです。

このブレイクパターンは、第5、6章でやってきた「認識の修正」を具体的に行動に移す、という意味があります。変化した認識をもとに、自分の行動を変えたのならば、まわりではどういう変化が起きるのかを確認していくのが目的です。

そしてその変化が自分にとってプラスのものであるのならばブレイクパターン成功です。逆に、変化があまりなかったり、好ましいものでなかったのなら、また別の行動にトライしてみてください。

ブレイクパターンのポイントは、いつもと違うことを一つだけするということです。

なぜなら、一度に複数変えると、何が原因でうまくいったのかがわからなくなってしまうからです。

もう一つ、ブレイクパターンをより効果あるものにするためのポイントは、まずは小さな行動を変えることから始める、ということです。では、ここでブレイクパターンの一例をあげましょう。

毎朝、コンビニでイライラするケース

笠原さんは、朝、始業時間ギリギリの5分前に会社近くのコンビニでコーヒーを買う習慣になっています。

が、そこで朝から財布を出すのにトロトロしている人がいて列ができていると、イラつきます。

「朝っぱらからゆっくりしてるなよ。みんな急いでいるんだから」また笠原さんは、昼休みに銀行に行って、窓口で並ぶたびにムカムカしています。

「なんでいつもいつもこんなに混んでるんだ。こんなに混むってわかってんなら、もっと人を用意しろよ」平日の昼休みの時間帯は銀行の窓口が最も混む時間帯です。

笠原さんがいくら不平不満を言ったとしても、これは変えることができません。なのにムカムカしてしまうのです。

このムカムカを引きずって、午後、社に戻ってからもささいなことで怒ってしまうことも少なくありません。

笠原さんは、「コンビニはお客さまを待たせるべきではない」「銀行は混むとわかっているなら人を用意すべき」というコアビリーフをもっています。

その怒りを生んでしまうコアビリーフの歪みを抱えたワンパターンの中で、笠原さんは生活をしてしまっているのです。ワンパターンに「怒る仕組み」にはまってしまっているのです。

それに気づいた笠原さんは、ブレイクパターンを試みることにしました。

まずは、朝のコンビニの件です。

いつも「コンビニが混むたびにイラつく」というパターンをくずすために、まずは認識の修正をし、「コンビニだってお客さまを待たせることがある」という正した認識のもとに、できる行動をいくつか考えました。

「自動販売機でコーヒーを買う」「少し時間に余裕をもってコンビニに行く」「そもそもコーヒーを買わない」などの行動が思い浮かびました。

自動販売機だと、コーヒーの選択肢が少なすぎます。また、コーヒーを飲まないでいるのは気が進みません。

ですので、「レジが混むこともある。そんなことで朝からイラつくのはもったいないから、時間に余裕をもってコンビニに行こう」と、「一本早い電車で通勤する」という行動の変化を一つだけ実行することにしたのです。

結果、コンビニで並ぶことがあっても、始業時間までは余裕があるため、イライラすることがなくなりました。

また、お昼休みの銀行の件では、「昼休みに銀行は混むものだ。人手の問題ではない。並ぶのはわかってるんだから、その間に何か暇つぶしできるようにすればいい」とコアビリーフを修正し、いくつかの解決策のうち、笠原さんはお昼休みに銀行に行くたびに、「本を持っていく」という行動を一つすることでブレイクパターンを試みました。

これで、「じっとイライラ待つ時間」が「本を読める時間」になり、イライラせずにすむようになったのです。

腹が立つ相手は、決まって上司のケース

先ほどの笠原さんの例は、「同じような時間帯でイライラする」だけで、特定の相手がいるケースではありませんでした。

ですので、比較的スムーズにイライラを解消することができました。では、特定の相手がある場合はどうでしょうか。ブレイクパターンの例をもう一つ見ていきましょう。

会社で経理を担当している夏野さんの怒りのワンパターンは、「社長」です。夏野さんは、経理という仕事柄、社長とは身近で働く存在です。社長は、物言いが多少きついところがあります。

そこへもってきて、感情の起伏が激しいところがあるので、機嫌が悪いときに書類で不備があったりすると、大きな声で怒鳴られるのです。

そのたびに夏野さんは、社長に対して怒りや不満を募らせていました。

「社長なんだから、社員を思いやれ」「社長は鷹揚にかまえているべき」というコアビリーフをもつために、怒りを抱くのです。

当たり前ですが、このコアビリーフが当の社長に通じるはずはありません。

ですので、コアビリーフのズレを修正して「社長とはいってもいろんなタイプがいる」と思うようにし、その考えのもとに社長とのいさかいを減らすためにどんな行動ができるかを探ってみました。

彼は一つのことに注目しました。

それは「月末近くになると社長の機嫌が悪くなる」ということです。

夏野さんは、経理という仕事上、「月末近くに社長の機嫌が悪くなる」のは、「資金繰りの心配のストレス」ではないかと考えました。

とはいえ、「特に資金繰りに窮している」ということはないので、「社長自身があまり経理に明るくない」ということが原因だと推測したのです。

そこで、夏野さんは通常の資金繰り表のほかに、「社長のためにとてもわかりやすい簡易的な表を作る」ようにしました。夏野さんのブレイクパターンで変化した行動は「簡易的な表を作る」ことです。

このわかりやすい一つの変化で、社長の資金繰りに関する不安を減らすことができると考えたからです。効果は上々でした。社長は月末近くにイライラすることがぐんと減りました。

社長のイライラが減るということは、夏野さんの怒りも減るということです。それだけでも、夏野さんの気はかなりラクになりました。

夏野さんがつくった一つの変化によってブレイクパターンが成功し、社長との間の不満の一部が解消したのです。

このことで夏野さんは、「そのほかのことでもブレイクパターンをして、社長が原因の怒る仕組みを減らそう!」という前向きな気持ちになることができました。

小さな変化を積み重ねる

ブレイクパターンができるようになると、「怒るパターンから自分の力で脱することができる」と思えるようになります。そうなると、「自分」のほうが「怒り」より立場が上になり、「自分」が「怒り」を支配していると実感しやすいのではないでしょうか。

ブレイクパターンのコツは、小さなことでよいので、何かいつもと違う行動を一つだけするということ。一度に大きな変化を望むのではなくて、小さな変化をつくることを考えてください。

小さい変化でも、自分が変わったことで相手も変わったこと、怒りのパターンをくずせたことは大きいはずです。こういう小さな変化の積み重ねが、「怒りにくい仕組み」「怒りにくい生活パターン」をつくりだしていくのです。

人には、同じようなことでイライラする「怒りのパターン」があるものです。まずは自分のパターンを見つけましょう。

そして、自分の認識を変え、目に見える小さな行動を一つだけ変えることでブレイクパターンをしていきましょう。このブレイクパターンは、認識の修正の先にある行動の修正です。認識の歪みに気づき、その認識を直し、正した認識をもとにすべき行動を考える。そして実際に行動を起こしてみる。結果、プラスの変化が起きれば、「認識の修正」ができたといえるのです。

これを繰り返していけば、怒りにとらわれず、ムダに争わず、穏やかに仕事をするあなたに変わっていくことでしょう。

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