6-1緊急時対応の基本的考え方
小売・流通業やフードサービス業には、来店中のお客さまの人命を預かっているという認識が不足している企業が多いようです。これはホテルや旅館、交通機関などと異なり、店舗(売場)の広さやお客さまの在店時間が短いことに起因していると考えられます。
しかし、一部の地域に片寄りがあるにせよ1964年以降、3年から5年のサイクルで大きな地震が発生し、死者を含めかなりの被害が出ています。火山列島ニッポンにおける大地震の可能性は、1995年に発生した阪神大震災だけの問題ではありません。
また、地震・雷・火事……の例を出すまでもなく、地震や火災、水害、そして小さくは停電や断水といった緊急事態における、店舗での対応は他人ごとではありません。
40歳以上のベテラン店長のいる店舗では、これらの事態に何らかの体験をしている場合が多く、判断力もあるため、ある程度の対応は可能と思われます。
しかし、店長の年齢が若齢化傾向にある多店舗展開する企業にとって、緊急時の対応は盲点と言えます。何かあってからでは済まされないにもかかわらず、ナショナルチェーンを除いて、緊急事態に対応するためのマニュアルが正式にない企業が多いのが実情です。
防火管理責任者(従業者+客席数=収容人員30人以上の飲食店は消防法により選任を要す)はいても、名前だけであったり、避難訓練なども怠りがちではないでしょうか。
そこで、地震や火事といった「緊急事態に対応する」ための基本的なマニュアルを提案します。自店の実情に合わせ必要な個所を手直しし、店長以下P/Aまで緊急事態への対応訓練をすることをお勧めします。
また、P/Aトレーニングに際しては、これらのマニュアルを1度は教えることと、必要な場合にすぐに見て対応できるよう保管場所を決めておきます。緊急時の行動基準緊急事態への対応と処理の基本的な流れを優先順位に沿って挙げてみます。
①冷静になり決して慌てない。火災発生やその可能性のある場合、火を消し、ガスの元栓を閉める
②消防署や管理室(ビル内などの営業店)へ通報、連絡
③お客さまの安全確保(地震の場合は原則として待機)、必要により誘導、避難※中規模までの地震の場合、主要振動が継続するのは1分前後である。
従って、1分を過ぎれば地震の直接の危険は去ったと考えてよい。ただし、大型の地震の場合は、揺れ戻しがあるので注意
④従業員の避難(火災発生時、可能なら消火器を集め初期消火)
⑤時間があれば重要書類(非常持ち出し品)などの持ち出し
⑥火災発生の場合、消火活動の円滑化に協力
⑦緊急連絡先リストにより連絡
⑧復旧作業と正しい情報の入手
⑨所定の手続きにより報告以上の流れに沿って緊急事態に対応します。
5つの緊急事態にすぐ対応できるマニュアルを掲載してありますので、参考にしてください。
また、非常持ち出し品(現金やタイムカード、雇用契約書など)も企業により適正な範囲で定め、専用の袋なども用意し、定位置管理を徹底します。
6-2緊急時の訓練法
緊急事態に直面すると、大の大人でもパニックとなり119番すら満足に通報できないといいます。いくら良いマニュアルがあっても、それがいざというときに実際の場面で生かされなくては意味がありません。
そのためには、社員はもちろんのことP/Aまで含んで、できれば月1回は訓練をすべきです。地震や火災を想定し、どんな場合でも落ち着いて最適な行動がとれるよう、マニュアルに沿って繰り返し繰り返し訓練し、頭で理解するのではなく体で覚え込むことが重要です。
訓練とともに大切なことは、各店が所在する対象物における緊急事態に対応した計画づくりです。具体的には、前述の防火管理責任者が作成し所轄の消防署に届け出る[消防計画]となります。
これは震災対策にも適用されていますが、内容的には火災発生時の通報、連絡や消火・避難・誘導の計画と訓練、消防用設備などの維持管理までが含まれています。
詳細は省きますが、少なくとも正社員と中心となるP/Aはマニュアルとともにこれらを熟知し、訓練に活用すべきです。この訓練の実施と計画を「防火管理」と消防法では呼んでいます。これらの実施により、仮に災害が起きた場合でも、被害を最小限にくい止めることが可能となります。
火災発生時における、日ごろの避難誘導訓練の成果は事例を挙げるまでもありません。死傷者の数は地震や火災の大きさよりも、避難訓練や消火設備などの不備といった人災に因ることは、過去の悲惨な例からも明らかです。
地震や火災は他人ごとではありません。特に、再開発に伴う地下街や高層ビル、ショッピングセンターといった、テナント出店による店の場合、大災害となる危険性も高く、ほかのテナントとの連係による対応が不可欠です。
規模の大小にかかわらず、緊急事態への対応マニュアルを作成し避難訓練を定期的に実施しましょう。
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