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第6章応用・展望編これからの私たちの働き方

目次

1パート社員を組織化するときによく起きること

これは以前、当社でもあったことですが、社歴の長いパート社員がいると、その人でないと、その仕事がわからないというケースがあります。これは危険な状態です。会社に協力的なパート社員だったら、まだいいのですが、そうでない場合、困ったことが発生します。

この人に辞められると困るからと、経営者が従業員に気をつかう、といったことが起きてしまいます。こうなると本人がますますいい気になってしまい、「私がいないと困るでしょう」と増長してしまうケースがあるのです。

これを仕方がないことと認めてしまうと、他の従業員にも影響が及び、上司の言うことをきかない、統制の取れない組織になってしまいます。さらに、仕事の中身についても、担当者が故意に複雑で難しいやり方にしているということがよく見られます。

これは、マニュアルを作るときによく発覚します。よくある例としては、仕事を共有化することに対して非常に抵抗し、その職場に新人を配置するといやがらせをして新人を辞めさせることなどが挙げられます。

そして、やがて会社としてはなかなか改善が進まなくなります。このような状況になっていたら、いったん上司がその仕事の内容と流れを覚えるか、上司の監視下で、1~2カ月間新人に仕事を教える、ということを強制させることが必要です。

これらのことを防ぐためにも、仕事は複数のメンバーができるようにしておくことが肝要です。一極集中にならないよう、リスクを分散させてください。また、主婦のパート社員を活用する場合に、古くからいるベテランパート社員のボスへの対応をよく相談されます。

派閥を作る、新人をいじめる、自分の都合のいいように仕事をして会社に協力をしない、こういったことを放置しておくと、いつまでたってもパート社員の戦力化は進みません。私たちの今までの経験では、ベテランパート社員の能力レベルと活用の仕方が合っていないため、不満になっているというケースがほとんどを占めています。

要するに、本人のやる気と仕事の内容にズレがあったのです。意欲が高いのならば、数字として業績に現れるような責任ある仕事を任せると、やる気が出て会社に協力的になり、優秀なパート社員に変化していきます。

意欲が低い場合には、勤務時間に対し、仕事の量が適切かどうかを確認することをおすすめします。暇な時間ができると、無駄話をしたり、その延長で派閥を作るなど、どうしても人間関係に目がいってしまう人がいます。そこで暇な時間を作らない、仕事と人の配分を的確に行う、ということがとても重要になります。

わが社でも、パート社員の活用を進めるときに、実際に上司がこれらのことを実践しました。協力的でないベテランパート社員へは、個人面接を行い、会社の進む方向性を話し、協力してがんばっていくか、無理と判断するかを、本人に決断させたことがあります。

結果として、辞めていく人がほとんどでしたが、お互いの合意が得られない中で仕事をしても、結果に結びつかないので、早めに対処したほうがよい問題です。

2もう一度整理をしてみると

先日、これからパートで働こうとしている友人と、話をしたときのことです。

友人「ようやく下の子が3年生になったから、これから働こうと思ってるんだ」

鈴木「そう、雑誌で探してる?」

友人「うん、ショッピングセンターの中で、いいところないかなと思って」

鈴木「連絡してみた?」

友人「ううん、これからなんだ。でもブランクがあって、また働き出すのって結構大変だね」

鈴木「そうだね。でも、実際に働き出して、生活のリズムがつかめたら、すぐに慣れると思うよ」

友人「そうだといいな、ところで、鈴木さんってずっと働いているよね」

鈴木「うん」

友人「何年ぐらいになるの?」

鈴木「途中で育児休暇取ったりしたけど、17年かな」

友人「えっ、17年、それはすごいね。ずっと同じ会社だよね」

鈴木「そうだよ」

友人「今、正社員?」

鈴木「ううん、パート社員だよ」

友人「働き続けるのって、大変じゃなかった?」

鈴木「大変だったけど、働く時間帯をね、いろいろ変えてきたの。子供が小さいときは短くしたり、水曜日を半日にしてもらったこともあったし。それに、子供が病気のときや学校行事のときは、休んでいいことになっているから、その点、気が楽だったね」

友人「へぇ、そんな会社もあるんだね。最初の子供ができるまで働いていた会社が、そんな感じだったら私も続けられたかな」

鈴木「9時から5時まででないと困りますって言われたら、きっと無理だったと思うよ。自分がつらくなっちゃうものね」

友人「そうなんだよね、私も今、3時には仕事が終われるところで探してるもの」鈴木「いいところが見つかるといいね」

私たちは、会社以外でも子供から手が離れてきたお母さんたちと、このような会話をすることが増えています。希望の条件どおりとはいかなくても、折り合いをつけながら、働く場所をそれぞれが決めているようです。

中には、午前3時から6時までの3時間、市場やお弁当の製造工場で働くお母さんもいます。仕事から帰ってから、子供を学校に送り出すことができ、しかも時給が高いので人気のある仕事だと聞きます。

就職情報誌でも、フリーペーパーでも、パート社員の募集は増えています。私たちも訪問した先の社長さんに「パート社員で誰かいい人がいたら紹介してほしい」とよく声をかけられます。

これからパート社員の活用を進めたいと思う会社と、その会社で働くパート社員との間には、お互いに建設的な合意を見出していくことが必要です。

●望む結果を達成するために、パート社員が会社に求めるもの

●望む結果を得るために、会社がパート社員に求めるもの

「望む結果を達成するために、パート社員が会社に求めるもの」の筆頭が、パート社員の立場を受け入れる、ということだと私たちは理解しています。

●家事と育児、仕事の両立ができる

●都合のいい時間と曜日で働ける

●扶養の範囲内で働ける

パート社員の問題を、パート社員の立場から見て、正しく理解し、対処することが、まず活用の第一歩ではないでしょうか。

優秀なパート社員を採用するためには、最初にその人が働ける環境を整備しておくことが大切です。

わが社が、現在、他社に比べて優秀なパート社員を採用できているのは、パート社員の働く環境が、他の会社より優位性を保っているからだと思います。

「望む結果を得るために、会社がパート社員に求めるもの」は、会社によってそれぞれでしょうが、当社では「高い収益性」になります。

その仕組みとして、採用・OFFJT・OJTの3つに分けて、パート社員をどのように育成しているのかを紹介しました。

パート社員をサポート的な仕事に使っている限り、利益を生み出すことはできません。正社員のやっている仕事へ、どうやってパート社員をシフトしていくのかをまず考え、システム化を図ることが重要です。

サービス業では、このシステム化が進んでいます。しかし、事務系でシステム化を図り、また、システムをハードとすると、それを円滑に動かすソフト(育成・管理)の充実を図った組織は、まだそれほど多くはありません。ハード面が整備されると、ソフト面はおろそかになりがちです。

しかし、そこを妥協せず徹底して行えたことが、わが社の成功につながったのだと思います。この本を書いている時点では、うまくいっていますが、また社会環境が変わればその環境に適応していく必要があります。

成功するには、その時代や環境の中で、優位性を保つ努力をしていかなければなりません。パート社員の活用で何より大事なのは、「パート社員を活用する」というトップ自らの決断です。

「どうせパートだから、ここまでしかできないだろう」などと思わないでください。トップがそう思っていたら、「そこまでしか、しなくていいんだ」とパート社員は感じ取ってしまいます。できると信じ、期待をかけ、育てることで、正社員並みの仕事をするパート社員が生まれるのです。

3働く主婦に対する配慮

当社では、パート社員が誕生日を迎えると、トップからバースデーケーキのプレゼントがあります。このケーキは直径が25センチもある立派なケーキで、とても美味しく、初めてこのケーキをもらったパート社員は、全員「すごい!」と感激します。

結婚して家庭を持つと、女性は家族のことが優先となって、自分のことは後回しになってしまうことが多いのですが、誕生日も例外ではありません。

自分のためにケーキを買ったり、特別にお祝いをするということも少ないので、このバースデーケーキはパート社員にとても好評で、その家族にも喜ばれています。

また、この他にも年間を通じてレクリエーションが行われています。お花見やボーリング大会、クリスマス会など、家族で参加できるようにと配慮されていて、子供たちも喜んで参加します。

家族と一緒に楽しむことのできる行事が多いので、スタッフの家族同士の交流を育むことができています。主婦が、仕事をする場合は、家族の協力が必要です。

それでもなるべく家族に負担がかからないようにと、私たちは努力をしています。その中で、会社から家族への配慮があると、本当にありがたいと心から思います。

働く側の事情を受け入れてもらい、配慮してもらうと、私たちも仕事をがんばろう、この会社をよくしようという気持ちが高まります。

帰属意識は、正社員だから持つというものではありません。パート社員も認めてもらいたいと思っているし、認めてもらうとうれしいのです。そういう気持ちをぜひ汲んでほしいと思います。

4今後の課題

最後に、働く主婦の意見を少し聞いてほしいと思います。

私たちは、よくメンバー同士でこんな会話をしています。

「いつまで働こうと思ってる?」

「定年までかなぁ」

「私は働けるまで」

「働けるまでって?」

「う~ん、80歳ぐらい?」

「すごいね!」

「うちのおばあちゃんなんか、倒れる前日まで畑仕事してたよ」

「そっかぁ、ずっと働くにはまず健康だね。健康にいいこと何かやってる?」

私たちはいつもあることを考えます。これから子育てが終わって、「さぁバリバリ働こう」といったときに、今度は、親の介護について考えていかなければなりません。

働く女性の先輩が、介護のため、毎週新幹線で東京と親元を往復したという話や、できるだけ自宅でもできる仕事をまわしてもらっているという話を聞き、想像以上に大変なことなのだと感じています。

しかし、「仕事があるから救われた」「他のところで集中できる時間があるということがプラスになった」という話を聞き、励みにもなっています。

介護については、会社にとってもこれからの課題です。パート社員へのアンケートで、「こんな制度があると助かるというものはありますか?」との質問に、介護に関することも出てきました。

数年先はもっと増えていくでしょう。本書の執筆中にも、実際に正社員の女性が介護の問題に直面しました。トップと話し合い、職務の役割の変更と勤務時間の見直しを行い、介護と仕事の両立を図っています。

介護は、育児と違い予測することが難しく、各家庭によって状況は異なります。状況が明らかになった時点で、個人と会社が相談しながら調整を図り、対処していくことが求められます。

仕事を辞めるという選択だけでなく、時間の調整や休業等、その状況で一番よい方法を、会社と合意の上、決めていくことができればありがたい、と私たちは考えています。

「多様な就業形態、家庭環境の人が集まり協同し、収益の上がる会社を運営する」

これは、中小企業だからできる、という側面もあるのではないでしょうか。

そのための仕組みを、今後も模索していく必要性を私たちは強く感じています。

あとがき

2006年の5月、「ブックオフパートの主婦から社長に」という見出しが、多くの新聞や雑誌の紙面を飾りました。私たちは、ちょうどこの本を書いている最中で、ワクワクしながらその記事を読みました。

多くの人は、パート社員というと「単純作業者」「正社員の仕事の補助者」というイメージを持っていると思います。私たちは、そういう枠でくくられないパート社員について、この本を書いてみたいと思いました。

そんな中、「パートの主婦から社長に」という見出しは、私たちにとって、大きな励みになりました。経営者でもない、一パート社員の私たちがいろいろと生意気なことを書いて参りました。

パート社員の立場でいうと、実は私たちの考える最終ゴールは正社員ではありません。能力(付加価値)を身につけ、正社員も含めて「働く環境を選ぶ自由を手に入れる」。これを最終ゴールと考えています。

出産、育児、子育てまたは介護など、人生の課題に柔軟に対応しながら、ビジネス社会にも参加して高い評価を得、自分にとって最もいい環境を手に入れる。これは可能なことだと思います。

以前、わが社で働いていたパート社員が、正社員として転職した先の会社から、研修の依頼を受けたことがあります。その理由は、「今度入社した○○さんは、仕事の基本ができていて助かっています。どうして身につけたのかを聞いたところ、前の会社で研修制度があり、そこで身につけたと話していました。うちでもそういう研修をやっていただけますか」とのことでした。

このように、働く場が変わっても変わらないことがあります。それは、仕事のできる人は、自分の会社にとっても、よその会社にとっても、価値ある資産だということではないでしょうか。そして、ここが大事なのですが、誰もがそうなる可能性を秘めていると思うのです。

私たちは、初めの一歩からスタートし、資産となる能力を身につけた人を育てるお手伝いをしたい、と思いながらこれを書きました。その私たちの書いたものが、一冊の本になりました。

これも私たちを取り巻く方々のおかげです。一人ひとりのお名前が書けないことが残念ですが、本当にありがとうございました。

この本は、セミナーにご参加いただいた方、また、その上司の方など、多くの人たちとのやりとりから生まれました。私たちに多くのご指摘を与えてくださった皆さまに、心から感謝申し上げます。

そして、東洋経済新報社の中村実様、コンサルタントの木村喜子様、弊社グループ所長の鈴木眞一、上司の久野輝行、弊社グループ諸氏、皆さまの協力なしには、この本はでき上がりませんでした。本当にありがとうございます。

また、家族の励ましも私たちにとって大きな支えとなりました。最後に、この本を手に取り、読んでくださった読者の皆さまに、心より感謝申し上げます。

皆さまの貴重なお時間をいただき、何かひとつでも役立つことがあれば幸いに存じます。これから、皆さまの会社で戦力となるパート社員が何人も育っていき、私たちの仲間が増えてほしい、心からそう願っております。

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