57カラダの力を抜く
付録日常生活での取り組み口のトレーニング早見表目的別さくいんおわりに
腹式呼吸を自然に行う
腹式呼吸は発声の基本。カラダに力を入れたいときもリラックスしたいときにも使います。
とくに女性は腹式呼吸が苦手だという方が多いものですが、じつは赤ちゃんのときには誰でも腹式呼吸を行っています。人間が本来行っている呼吸を思い出せば良いのです。
人間は、寝ているときには自然に腹式呼吸になっているものです。まず仰向けになってみましょう。そしてお腹に手を当ててゆっくりと呼吸をすると、それだけでお腹が上下しているのがわかるはず。
つまり、どんなに腹式呼吸が苦手でもいつの間にか自然と腹式呼吸になっているのです。立ち上がって呼吸をする際にも同様のイメージを持ちましょう。
それからもう1点、ストローを使って呼吸をするのも有効です。
隙間がないようにしっかりとストローをくわえて、よく通る声を出す練習(レッスン40参照)と同じように、息をフッフッと吐き出します。
胸で呼吸をするとうまく息を出せないので、自然にお腹からの呼吸となるのです。口から空気が抜けてしまうようなら、鼻をつまんで行っても良いでしょう。
まとめ
腹式呼吸は本来自然にできるもの寝ながら呼吸する姿をイメージ
腹筋を鍛える
お腹から呼吸をするには、腹筋を鍛えておくことも大事です。腹筋を鍛えると肺活量が増えますし、長く息を持たせることもできます。
また健康にも良いうえ、正しい姿勢も取りやすくなります。ここでは、「筋トレ」がイヤという方でも無理なく腹筋を鍛える方法をご紹介します。
まず、四つんばいになってください。あごはしっかりと上げて前を向きます。
そして、1.5リットルのペットボトルをくわえたまま、「アッアッアッ、ウッウッウッ」と何度も声を出しましょう。
声を出した瞬間、グッとお腹に力が入るのがわかるはずです。苦しくない程度に続けたら、いちど鼻から息を吸って、また同じように発声していきます。
一度に続けるのは1分間ほど、時間があるときに繰り返し行うと良いでしょう。
このトレーニングの優れた点は、まずお腹から声を出す感覚がわかることに加え、大きな声を出す練習にもなるということ。
そしてペットボトルをくわえることで、唇の力をつける練習にもなることです。
唇を鍛えておくと、唇の横と縦の動きが滑らかになるため、聞き取りやすい声を出すことができるようになります。
そして何より、きつくないのでラクに続けられる、ということでしょう。
まとめ
お腹に意識を向けよう何度も繰り返すとさらに効果的
舌を鍛える
ここで、改めて割りばしをつかって舌を鍛えるためのトレーニングをご紹介します。
ただ割りばしをくわえるだけとはいえ、正確に行うとより効果が高まりますので、正しいくわえ方と発声法を身につけておきましょう。
まず、割っていない割りばしを2本用意し、縦にして太い側を奥歯でくわえます。
歯には力を入れすぎず、割りばしがしっかりと固定される程度が良いでしょう。
舌をちゃんと動かすには、口元から割りばしが「ハの字」を作るくらいが良いので、鏡をチェックして行ってください。
そして、「らかなたさ」と何度も発声します。
「ら」以外は、舌の先を下の歯の裏側に添えておくと良いでしょう。
「ら」は舌全体、「た」は舌の先端、「な」は舌の中央、「か」は舌の奥、「さ」は舌の先を動かしていることがわかるはずです。
うまく発音できない人は、普段、いかに舌を使っていないかということです。1語1語をしっかりと発音することに注意を向けると、5つの発音で舌がまんべんなく鍛えられます。
慣れたらだんだんスピードを上げたり、左の表にあるようにバリエーションを増やしたりして発音してきましょう。
まとめ
ひとつひとつの発音をはっきりと舌全体を使うイメージで
唇を鍛える
UENO式のトレーニングでは、舌と唇を鍛えることに重点を置いているため、唇は舌(前項参照)と同時に鍛えていくことを推奨しています。
唇を鍛えるということは、口輪筋を鍛えるということです。
口輪筋を鍛えると、口の縦と横の動きをしっかりと行えるようになりますので、聞き取りやすい発音や豊かな表情が身につきます。
ここでは、道具を使わなくてもすぐに行える方法を載せておきますので、時間を見つけて繰り返してください。
まず、「ぱぴぷぺぽ」を2回ずつ発声します。
このとき大切なのは、母音(あいうえお=A、I、U、E、O)までしっかりと発音すること。唇で空気を叩くように意識して、勢い良く声を出しましょう。
何度も声を出していると唇が疲れるかもしれませんが、これはしっかりと筋肉を使っているという証拠です。
無理のない程度に続けてください。最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げながら表の順番に発声していきましょう。
なお唇と表情筋のトレーニングでは、割りばしを使って唇を鍛える方法など、発音トレーニングをまとめて紹介していますので、併せてご覧ください。
まとめ
唇で空気を叩くように母音をしっかりと発音しよう
緊張をほぐす
声を出すときに無理な力は禁物です。ここでは、一瞬にしてカラダの力を抜き、リラックスする方法をご紹介します。
発声する前はもちろん、日常生活でも非常に役立つ方法で、私も日々この方法を実践しています。まず、首をすくめるようにグーッと力を入れて肩を持ち上げてください。
3秒ほどそのまま我慢したら、フーっと息を抜きながら一気に肩を落とします。これを3回ほど繰り返すと、驚くほど力が抜けるのがわかるはずです。同時にリラックスする方法も記載しておきます。
まず口からス───とゆっくりと息を吐いていきます。
息がこれ以上吐けないところまで来たら、鼻からお腹の中の風船に空気を入れるイメージでゆっくりと息を吸っていきましょう。
そのまま「ウッ」という感じで息を止めます。5〜10秒ほど息を止めたら、またゆっくりと5〜10秒ほどかけて口から息を吐き出します。
これを2、3回繰り返すと、緊張がほぐれて気分も落ち着いてるはずです。
また、このときに心のなかで「リラックス、リラックス……」と唱えると、さらに効果的でしょうまとめ息はゆっくりと吐き出そうリラックスするイメージを持とう
力みを取る人と話したり歌ったりする前に、カラダに力が入りすぎているとうまく声が出ないものです。
また、自分では力んでいないつもりでも、日々の生活ではいつのまにか力が入ってしまっていることもあるはずです。
そこで、以下の方法でカラダの力みを取り、声を出しやすい状態を作っておきましょう。やり方はとてもシンプル。ゆっくりと首を回しながら声を出すだけです。
まずは上を向いて息を吸い、「あ───」と声を出しながら左回りに首を回していきます。
1周したら、上を向いた状態で呼吸をリセットし、続いて「え───」と声を出しながら逆回し。これを「い───」「お───」「う───」と声を出しながら何度か繰り返しましょう。
5秒ほどかけて、ゆっくりと首を1周させることが重要です。当然ですが、首に痛みを感じたらすぐに中止してください。これは、まず首を回すことで筋肉をほぐす効果が期待できます。
そして声を出してゆったりとした呼吸をすることで、カラダの力を抜くと同時に発声練習にもなる、というメリットもあるのです。
かんたんですが短い時間で行える効果的な方法なので、ぜひ試してみてください。
まとめ
しっかり声を出しながら首を回そう1周5秒ほどかけると効果的
コラムヴォイストレーニングは美容に効く
ヴォイストレーニングは、健康や美容にも効果があることをご存知ですか。顔には30種類以上の筋肉があります。
加齢とともに出てくるほうれい線や顔やほほのたるみ、二重あごなどは、顔の筋肉の衰えや顔に脂肪がつくことが原因です。
そこで、割りばしを1本縦にして前歯でくわえ、「おあおあ」と声を出しながら口角を上げるように筋肉を動かしてみましょう。
口角を上げるヴォイストレーニングを行うと、口輪筋や表情筋が引っ張り上げられます。その結果、ほうれい線やたるみが軽減するはずです。
また、筋肉をつけることで脂肪も燃焼しますので、あごのラインもすっきりするでしょう。それから、ヴォイストレーニングには顔の歪みを取る効果もあります。
ほとんどの方は顔が左右均等ではありません。
とくに歯並びが悪い方は、片方の奥歯でかむ癖がつくため、どんどんゆがんできます。
そこで、(鏡の前で)口の真ん中に人差し指を立てて、あごを左右にスライドさせるように動かしてみましょう。
歪みで引っ込んでいる側にはあごが動きますが、もう片側には動かしにくいはず。
これは、歪みで筋肉が硬くなっているということです。
「おあおあ……」と言いながらあご動かし続けると、筋肉がほぐれて歪みも改善されるはずです。
日常生活でできる取り組み①自転車に乗りながら歌おう毎日発声練習をする時間がないという方は、日々の生活でもちょっとした工夫をするだけで、声を良くすることができます。
自転車に乗りながら歌う、ということもそのひとつ。
なぜそれだけで声が良くなるのと思うかもしれませんが、きちんとした理由があります。
まず、自転車をこぐときには腹筋を使います。
声を出すために腹筋はとても重要なポイントですし、腹筋を鍛えながら声を出せば自然と腹式呼吸になります。
つまり、声を出すための呼吸が自然と身につくことになります。
また、一般に肺活量を増やすには、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動が良いとされています。
自転車に乗ることも立派な有酸素運動ですので、結果的に肺活量が増え、長く息を持たせることができるのです。
腹筋を使い、有酸素運動をしながら、さらに歌う−呼吸、息継ぎ、発声の練習が一気にできてしまうというわけです。
そして何より、自転車に乗ることは、多くの人にとっては気持ちが良いものです。
ジョギングなどの運動が苦手でも、自転車に乗ることが嫌いな方は少ないでしょう。
自転車に乗ったら歌を歌ってみる。
ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。
日常生活でできる取り組み②息を止めて横断歩道を渡ろう横断歩道を渡るときにも、呼吸のトレーニングを取り入れることができます。
赤信号で立ち止まったときに呼吸を整え、信号が青になったら、息をいったん吐いてから吸い込みます。
そのまま呼吸を止めて横断歩道を渡るのです。
カラダを動かしながら息を止めるのはきついですが、横断歩道を渡り切る時間は大体10〜30秒ほど。
呼吸を止めてカラダを動かすには、ラクすぎずきつすぎずと、ちょうど良い距離なのです。
渡り切ったら息を整えましょう。
息を吸って、止めて、カラダを動かすことで腹式呼吸の練習になりますし、「息を止めてから話す」コツが身につけば、遠くまで通る声を出せるようになります。
なお、普段の生活のなかで信号を渡る機会がなくても、駅やビルの階段を登るときに息を止めたり、普段通る決まった区間を移動するときに息を止めてみたりなど、同じようなことはどこでもできるはずです。
大事なのは自分でルールを決め、それを日常生活の中に取り入れるということです。
もちろん負担に感じたら無理に行うことはありません。
楽しく、ラクに声を良くしていきましょう。
目的別さくいん
声を変える正しい口の開け方18正しい姿勢2062地声を知る22110地声を使いこなす245092大きな声を出す283638104134しっかり聞こえる小さな声を出す30高い声を出す24324852106低い声を出す2434響く声を出す34108よく通る声になる2036104声を長く出し続ける38滑舌を良くする3040早口を話す4042138早口を直す447488歯切れの良い声を出す466266愛らしい声を出す485296ソフトな地声を出す508698明るい声を出す52鼻濁音を出す54どもり、吃音を改善する56人づき合いを変える信頼されたい607682好感を持たれたい404652627880自分をアピールしたい284664感謝を伝えたい4666同情してもらいたい5068感動を伝えたい324070怒りを伝えたい284272苦情を伝えたい244474謝罪をしたい245076苦手な人と話したい78目上の人とうまく話したい4680後輩や部下とうまく話したい2482親とうまく話したい2484子どもとうまく話したい245086お年寄りとうまく話したい444688モテる声って何?222492男性が女性にモテる声344694女性が男性にモテる声324896相手に好意を伝える声5098カラオケでモテるには46100104歌を変える通る声を出す28104126134高音を出す32106低音を出す34108オンチを治す110リズム感を磨く114ビブラートをかける112裏声を出す116ミックスボイスを出す118「こぶし」を効かせる120歌に感情を込める116122124歌を上手に聴かせる112122124息継ぎのコツ126喉を傷めないために128132カラダを変える腹式呼吸を身につける1321
腹筋を鍛える134喉とあごを鍛える323494106唇を鍛える42485288138舌を鍛える3070106136緊張をほぐす132140142力みを取る1321401
おわりに
小学校のころを思い出してみてください。国語の授業で朗読をした経験は、誰もがお持ちだと思います。
出席番号の小さい方はすぐに当てられてしまい、小説を読むにしても一本調子の棒読みになってしまい、恥ずかしい思いをしたことはありませんか?また、前の人が当てられているのを見て、「次は自分の番でいやだなあ」と思った経験はありませんか?いま思うと、これらはすべて自信がなかったからではないでしょうか。
朗読だってうまくできれば自信につながります。
自信がつけば、声を出すことだって嬉しいと思えるはずです。
ではうまく朗読するとは何でしょうか。
それははっきりした明瞭な発音や、心に響く発声で読むこと。
しかし、学校では正しく声を出すための方法は教えてくれません。
誰も習っていないのですから、うまくできずにみんなが苦手になってしまうのも当然のことだと思います。
上野ヴォーカルアカデミーでは、「発声はスポーツのひとつ」と考えています。
スポーツ選手が良い結果を残すためには、基礎トレーニングで筋肉をつけ、そしてテクニックを身につけます。
これは声を出す場合でも同じです。
声を出すための筋肉と声を出すテクニックを身につければ、誰だって良い結果が出せるはずなのです。
本書では、声を出すための基礎トレーニングと併せて、多くのテクニックをお伝えしてきました。
本書をひと通り読み、実践すれば、一流のスポーツ選手のように誰もが思うままの声を出すことができます。
そうすれば、声を出すこと、人と話すこと、歌うことなどがもっと楽しくなるでしょう。
この本で、皆さんが抱える悩みが少しでも解消され、声を出すことが前よりも楽しいと思っていただけたら幸いです。
2012年1月上野由紀
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