第6章スパッ!と「決められる」リーダーになる01いかなる時も迷わないために
⦿「決めないリーダー」は、問題を増殖させる⦿〝ブレない判断軸〟を持つ⦿トレードオフに妥協しない02迷った時は、「セオリー」で考える⦿星野リゾートの星野社長が「迷わない理由」⦿最初に覚えておきたいビジネス理論03考えるのは、いつも「課題は何?」⦿できるリーダーは、「対策」から考えない⦿どうやって課題を絞るのか?04その場で判断できない時⦿目的に立ち返る(何のための決断か)⦿それでも、判断がつかない時⦿孫社長の「すぐやる」力をマネる05リスクのない範囲で実験する⦿迷ったら、「リーン・スタートアップでやろう」を決めゼリフに⦿現場で「リーン・スタートアップ」をまわす06「自分の正解」にこだわらない⦿プレイヤー上がりのリーダーが失敗する、最大の理由07失敗を恐れないコツ⦿失敗を失敗と思わない人たち⦿失敗を活かす「失敗知識」という資産⦿失敗の確率を出してみる08いたずらに〝やること〟を増やさない⦿スティーブ・ジョブズが、グーグル創業者のラリー・ペイジに伝えたこと⦿たった2週間で120個のやらないことが出てきた!
01いかなる時も迷わないために「まだ、大丈夫では…」と、つい判断を先延ばしにしてしまっていることはないだろうか。
その一方で、「その場の雰囲気」で即決をし、後悔をしたことはないだろうか。
リーダーはブレない判断軸を持っておくことが肝心なのだ。
⦿「決めないリーダー」は、問題を増殖させるリーダーが犯してしまいがちなミスに「意思決定の先送り」があります。
先延ばしにしてしまったばかりに傷が大きくなってしまうことが、なんと多いことか。
飲食店コンサルタントとして著名な小野寺誠氏(株式会社ファースト10代表)は、こう言います。
「できる店長は、人が辞めることを想定し、人がいるうちに募集をかけ、できない店長は、人が辞めるとわかってからあわてて募集をかける」と。
お話を伺うとこういうことでした。
「できない店長は、余裕がないため、背に腹を変えられず、〝週1日からでもOK〟といった安易な対症療法をしようとする。
でも、そんな人を採用しても、結局は戦力にならず、すぐに辞める。
その結果、店のサービスが低下し、取り返しのつかない事態となる」と。
決断の先延ばしは、その間に、菌が増殖するように、問題が増殖します。
ゆえに、リーダーは、リスクを強く意識した上で、「ひょっとしたら、こうなるかも」を想定し、今から動いておいたほうが良さそうなら、多少のムダが発生する可能性があっても、先んじて動くことが正解なのです。
⦿〝ブレない判断軸〟を持つだからといって、「思い切りの良さだけが大事」と言っているのではありません。
ましてや、その場のプレッシャーや雰囲気で〝よし、行こう〟と格好をつけて決めてしまうことは、無用に部下を振りまわしてしまい、部下を不幸にする可能性すらあります。
名著『失敗の本質』(中公文庫)には、思い切りの良さで決めたことで生んだ太平洋戦争の悲劇がたくさん紹介されています。
特に凄惨なのは「インパール作戦」。
今ここで、勝負をしないことは、士気を下げてしまうし、そんな格好悪いことはできない、と考えた司令官は、かすかな期待を込めて作戦を決行(周囲は反対していましたが…)。
結果、日本軍10万人のうち、戦死者3万人、傷病者4万人とも言われる、悪名高き作戦となったことは有名です。
生き残ったある元上等兵の方はNHKのインタビューにこう答えています。
「たいがい、お母さんの名前。
お母さんいない人はお父さんの名前を呼んで死んでいきますね」と。
司令官は、このような事態になることを把握できていたのでしょうか。
ただただ、功名心や体裁が勝ってしまったのでしょうか。
企業でも似たことはよくあります。
取引先にムリを言って自社商品を買ってもらったり、自社買いをして目標を達成したり、検査の数値を少しだけ都合よくしたり…。
場のプレッシャーに流されないためには、「ブレない判断軸(原則)」を持つといいでしょう。
簡単には流されなくなります。
現場リーダーが持っておきたい判断軸を紹介しておきましょう。
【現場リーダーが持っておきたい判断軸】●お客様視点(常に社内事情より、「お客様はどう思うのか?」で考える)●公平な視点(同じ取引額だが、値引率が違う等。
長期で見ると事業を弱くする)●リスク視点(「最悪の場合、どうなるのか?」を考え、早目に手を打つ)●目的視点(「そもそもの目的」から外れていないか。
インパール作戦の失敗はこれ)●効果視点(「投資対効果」で考える。
効果の見えないことはやらない)●回復視点(失敗をしても、ダメージが少なく、勉強代として考えられる範囲か)●長期視点(目先のことで考えない。
この先のことで考える)⦿トレードオフに妥協しない時には「トレードオフ」の状況で判断を迫られることもあるでしょう。
「量」をとれば「質」が下がり、「スピード」をとれば「コスト」が上がる、そんな二律背反する状況をトレードオフと言います。
経営学者のゲイリー・ハメルが言ったのは、「狙うべきはORではなくAND」。
コツがあります。
ANDを実現させる時は、「第三の案」を絞り出すことです。
たしかに、ORに妥協してはブレークスルーを起こせませんし、可能性を潰してしまいます。
例えば、ある人材派遣会社の若手リーダーはこう考えました。
あなたも、一緒に考えてみてください。
【ケース】その営業リーダーが置かれていた状況・クライアントの新規開拓においては、多くの電話をかけないといけない。
・計算では1人、1日100〜200本のコールが必要。
でも、それはあまりにハードであり、離職率アップにつながりかねない。
・アウトソーシングすると、1本のコール数ごとに料金が発生するのが一般的。
ゆえに、コール数が増えるほどにコストは上がる。
でも、その事業は新規事業で、大きなコスト(固定費)をかけられない状況。
さて、この相反する状況に、あなたならどのように対応しますか?その若手リーダーが考えた「第三の案」は次のようなものでした。
「まず、アウトソーシングはする。
ただし、1本のコール数ごとではなく、アポイントごとの成果課金で契約をする。
これなら、コール数が増えてもコストは増えない。
アウトソーシング会社にとっても、企業努力でアポイント効率を高めることができれば、少ないコール数でアポイントがとれ、彼らの利益率は上がる。
そのためのトレーニング、情報提供は惜しまずに提供することも約束する」探してみるものです。
この条件なら、喜んで請け負ってくれる会社がありました。
その結果、順調な立ち上がりを見せ、最初は4人でスタートした事業でしたが、その4年後の今では、まもなく従業員数が100人を超えそうな勢いで伸びるまでになっています。
「量をとるか質をとるか」「効率性をとるか安全性をとるか」、このようなトレードオフの決断に直面した時は安易に妥協せず、「第三の案」を出す視点で考えることをルールとしてみてください。
この判断こそが、職場、事業を強くするチャンスでもあるのです。
Point迷った時は、自分の「判断軸」で決める。
まずは「判断のルール」を決めておこう!
02迷った時は、「セオリー」で考える「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」、そんな格言がある。
実は、有名なビジネス理論のセオリーは歴史が証明したものばかりである。
名リーダーが迷わないのは、ビジネス理論のセオリーで判断しているからなのだ。
⦿星野リゾートの星野社長が「迷わない理由」常に迷うことなく大胆に決断される、星野リゾートの星野佳路社長の考え方は参考になります。
あるパネルディスカッションで「判断軸」について質問されたとき、星野社長は次のような回答をされています。
(※①)「僕の場合は、判断軸の一つはビジネス理論なんです。
理論は信頼できると思っています。
なぜなら、すでに証明されている成功パターン、つまり定石だから。
何か課題があると、必ずどの理論にあてはめたらいいんだろう、と考えます。
その時に大事なことは、教科書に基づいてちゃんとやってみること。
自分の都合の良いところだけをピックアップしてやるのではなく、全部やってみることが大事です」この言葉にウソはありません。
2018年の世界経営者会議に登壇した星野社長は、ハーバード・ビジネス・スクールの竹内弘高教授から、ギャグでこんな指摘を受けていました。
「星野さんは、私と一緒。
徹底的なマイケル・ポーター支持者ですものね(笑)」と。
また、星野リゾートでは、ビジネス理論を学習する研修が多く用意されていることでも有名です。
理論を知ることがそれほど大事であることを物語っています。
リーダーになったからには、基本的なビジネス理論をぜひ知っておきましょう。
「選択と集中で、やることを絞る」「競争優位性が大事」、そんな言葉を聞いたことはありませんか。
「選択と集中」はピーター・ドラッカーが、「競争優位性」は先ほどのマイケル・ポーター(経営学者)が提唱したものであり、これを知っている人なら、やることを絞っていない人を見ると、とても危うく感じてしまうのです。
⦿最初に覚えておきたいビジネス理論では、最初に知っておくべき、オススメの理論を紹介しましょう。
ここでは、詳細を割愛しますが、概ねどのようなものか、どういった効き目があるのかを紹介します。
①事業戦略、マーケティングのセオリー●SWOT分析(戦略を考えるにあたって、事業環境はどうなっている?)●成長戦略(どの領域で伸ばす?新領域にいくのか、それとも既存領域?)●競争戦略(選択と集中をしている?競争優位性は明確になっている?)●マーケティングミックス《4P》(その戦略を進めるための「具体的な戦術」は?)②マネジメントのセオリー●バランスト・スコアカード(ところで何をマネジメントするの?※第5章で解説)●ヒューマンリソースマネジメント(離職を出さず、成果を出すための施策は?最初の配属、研修、評価、報酬は?)●コーチングのGROWモデル(「やらされ感」をどう払拭する?※第4章で解説)③財務の基本セオリー●PL《損益計算書》(売上、粗利率、営業利益率はどうなっている?ムダはない?)もちろん、これらはほんの一部に過ぎず、知っている人から「ほかにももっといっぱいある」とご指摘を受けることは必至。
でも、現場リーダーが、これを知っているのと知らないのでは、判断の質が大きく変わることに異論はないはずです。
興味を持ったら、ビジネスフレームワークの解説本を1冊買ってみましょう。
本格的に学びたいと思ったら、ビジネススクールに通ったり中小企業診断士の勉強をすることもオススメ。
資格の勉強は、たとえ合格できなかったとしても、かなり武器になります。
余談ですが、資格試験には落ちたものの、その知識を武器に社内で影響力を持ったことで昇進したり、その知識と専門性を掛け合わせたコンサルとして起業したりしている人の収入のほうが資格保有者より格段に高い、という逆転現象が普通に起きています。
つまり、大事なことは「資格の取得」ではなく、実務で武器にしているかどうか。
ある時期に、集中して勉強することは財産になることは間違いありません。
リーダーになった時こそが、その絶好のタイミングです。
※①GLOBIS知見録「G1新世代リーダー・サミット2018『G1‐U40へのメッセージ』」の動画をもとに、星野社長の発言部分を筆者が要約Pointリーダーになったら、経験ではなく、セオリーで判断できるようになろう!
03考えるのは、いつも「課題は何?」ダメなリーダーは、いきなり「やり方」から考えて失敗する。
結果を出し続けるリーダーは、「やり方」を考える前に、「課題」を絞るので、やるべきことをはずさない。
課題を絞れば、やるべきことが鮮明になる。
⦿できるリーダーは、「対策」から考えない思いつきで決めてしまうことほど、ムダを増やすものはありません。
労多くして報われないとなると、部下からの信頼も失ってしまうでしょう。
まず、解決すべき問題に直面した時、具体的な対策から考えるのではなく、その前に「課題」を特定しなければならないのです。
まず、課題とは何か、ここをおさえておきましょう。
問題と課題がゴチャゴチャになっている人は少なくありません。
この2つを整理するとこうなります。
問題とは、「あるべき姿(こうありたい)」と現状とのギャップのこと。
課題とは、「まず、解決すべきことは何か」、つまり成功の鍵(要素)のこと。
では、次の図(※1)をご覧ください。
この図は、判断の「質が悪い」リーダーと、判断の「質が良い」リーダーの違いを説明したものです。
このように、判断の質が悪いリーダーはいきなり対策から決めます。
口ぐせは「私の経験では」「ほかでこれをやっているから」「上司がこれをやるべきだと言っているから」で、思考が短絡的なのです。
これでは、筋の良い対策を立てられません。
⦿どうやって課題を絞るのか?一方、判断の質が良いリーダーは、まず「課題」を特定します。
その上で、いくつかの対策案を出し、効果の観点から、スパッと選択します。
さらに細かくプロセスを記すと、図(※2~※3)のようになります。
この図は、離職率を10%にしたいものの、現状は30%の状況にあるケースを例にしたものです。
では、まず課題を特定する方法を見てみましょう。
この図のように、「入社後3カ月間の離職率を3分の1」にすれば、全体の離職率が10%になることがわかったとします。
これだけでも、かなり絞れました。
そこから課題候補を出します。
このケースでは、「入社後ギャップの予防」「歓迎体験の実感」「成功体験の機会」という計3つの候補を出し
ました。
ここでは、離職理由のデータを確認し、課題を「入社後のギャップ」だと判断しました。
その上で、対策候補をいくつか挙げ、最も効果のありそうな対策を選択します。
いかがでしょう。
このように課題から考えることで、優れた判断が可能になるのです。
さて今、あなたが直面している問題は何でしょうか?ぜひ課題を絞ってみてください。
きっと、判断の質が良くなります。
Pointいきなり方法から考えない。
解決したい問題がある時は、まず「課題」の特定をしよう!
04その場で判断できない時それでも、判断に迷う時はある。
だからといって、先延ばしにしてしまうのは危険。
もちろん、短絡的に決めるわけにもいかない。
まず、そうした時はどうすべきか、ルールを持っておくことが大事なのだ。
⦿目的に立ち返る(何のための決断か)その場で決めようと焦るほどに、本来の目的を見失ってしまったり、結論を出すことを必要以上に急いでしまったりするものです。
そんな時こそ、少し〝引いて〟、冷静な視座から考える必要があります。
「何のためにこの決断をしようとしているのか?」という目的に立ち返りましょう。
例えば、私が営業課長だった時、こんなことがありました。
「伊庭さん、おそらく年で30億円の売上が入る新規案件の商談をしているのですが、進めてもいいですか?」と。
その部署の年間売上は、50億円くらいでしたので、かなりのビッグチャンスでした。
内容を聞くと、本業のサービスを販売するのではなく、まったく別の商売、テレビCMやインターネット広告だったのです。
大手広告代理店の仕事をひっぺがえしてくるというのです。
その部下の営業力には感動しましたが、我々の本業は求人広告。
たしかに、その部下は、センスがあり、その部下なら、充分に対応は可能にも感じました。
上司に相談をすると、「伊庭が判断すればいい」とのこと。
私は、考えた末に断ることにしました。
・そもそも、我々のビジョン、本分は「求人を通じて、お客様の収益の成長に寄与すること」。
そのビジョンに基づき、求人サービスに特化している。
・もし、その部下が倒れたり、退職したりすると、対応できる体制がない。
その場合は部署を作らないといけない上にトレーニングをしないといけない。
・その30億円は嬉しいけど、その先を考えた時、本業からかけ離れる。
しかも、決して我々の強みを活かせる事業ではないので、成果が出たとしても一過性にすぎない。
・立ち上げたばかりの会社ならアリだけど、事業全体ですでに2000億円くらいの売上があった。
以上の理由からの判断でした。
その旨を部下に丁寧に説明したところ、「そりゃそうですね」と断ることを快諾。
もし受けていたら、拡大することなく終わっていたでしょう。
その先の展開が見えない領域です。
少なくとも本業に集中すべきタイミングでした。
目先に飛びつかず、軸をブレさせないことの大切さを実感した瞬間でした。
⦿それでも、判断がつかない時それでも、判断がつかない時はあります。
そんな時は、あえて人に聞くことです。
部下に聞く、上司に聞くことはよくやることですが、オススメは、「セオリーで判断できる第三者」「現状を良く知る第三者」にもアドバイスを求める方法です。
大学時代の先輩や同僚、友人、ほかの部署の先輩。
オススメは、昔の上司。
きっと、気づかない視点からアドバイスをくれることでしょう。
経営者や政治家が「占い師」にみてもらうという話を聞いたことはありませんか。
これは得体のしれないお告げを聞きたいわけではなく、フラットな視点から背中を押してほしい、それが目的だそうです。
占い師にお願いするまでもなく、あなたの身の回りには、相談できる相手がいるはずです。
ぜひ意見をもらってみてください。
⦿孫社長の「すぐやる」力をマネる先見の明があると言えば、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏ではないでしょうか。
未知の事業を始めたり、投資をするといったハイレベルな意思決定の場面でも果敢に決断をされているように見えます。
実は、あるルールがあるそうです。
「7割の成功率が予見できればやるべき。
5割では低すぎ、9割では高すぎる」いかがでしょう。
このルール、参考にできませんか。
自分なりにシミュレーションをしてみて、7割程度なら成功できそうかな、と思ったら、小さく始めてみる。
この小さく始める方法を次に紹介していきましょう。
Point判断がつかない時は、フタをするのではなく、「行動」を起こすこと。
05リスクのない範囲で実験するやってみないとわからない時は、「リーン・スタートアップ」でやる、が正解。
リスクのない範囲で実験を繰り返し、勝ち筋を作るのが今のグローバル・スタンダード。
⦿迷ったら、「リーン・スタートアップでやろう」を決めゼリフに「リーン・スタートアップ」を知っておくと、決断力に磨きがかかります。
リーン・スタートアップとは、元々はアメリカの起業家エリック・リース氏が提唱した、「新規事業の立ち上げ」をスムーズに行うための手法のこと。
アイデアがあるなら、シミュレーションに時間をかけるのではなく、短いサイクルで仮説の構築と検証(小さな実験)を繰り返しながら、成功を探り当てていくというものです。
有名な例では、「Instagram(インスタグラム)」があります。
元々は「Burbn(バーブン)」という位置情報アプリとしてスタート。
しかし、当初は思った以上に人気が出なかったのですが、改良の実験、学習を繰り返す中で、「写真の共有機能が最も人気がある」という事実を発見します。
その結果、Burbnは写真投稿を楽しむSNSに方向転換。
写真投稿・コメント・いいねの機能を装着し、今の「Instagram」の源流になったのです。
もう、お察しのことと思います。
そうです。
このリーン・スタートアップを、職場の挑戦を検討する際に取り入れるのです。
まず、リーン・スタートアップの手法を解説しましょう。
⦿現場で「リーン・スタートアップ」をまわすまず、リーン・スタートアップのまわし方を覚えておきましょう。
次の図をご覧ください。
文章で解説するとこんな感じです。
●まず、筋の良いアイデアがあれば、プロトタイプ(新しい方法)を作ってしまい、理屈抜きで「小さく実験」をしてしまう。
●リスクのない範囲でやってみた結果を検証(計測)する。
●結果をもとに学習。
次のアクションを決める。
「促進」「中止」「再実験」を決める。
実際の例を紹介しましょう。
会社員時代、朝礼をなくした私の経験です。
課長の時、「朝礼がムダではないか」と考えました。
儀式のようになっていたからです。
ただこの朝礼は会社の慣習になっており、いわば聖域に踏み込むことだったのです。
上司に相談したところ、上司は反対。
「士気が下がる」との意見でした。
そこで、全廃するのではなく、腹案として用意していた「週に2回の実施(構築)」を提案して合意。
1カ月の実験を経て、結果を計測。
すると、事務所に立ち寄らず直行が増えたため、「商談件数」が増えており、部下の士気が下がるどころか、仕事が前倒しになったことで残業抑制にもなり、むしろ士気は上がっていました。
ただ、チーム全体の動きを知る機会はほしいという部下の声があり、全廃ではなく、週に2回で実施することがベストだと判断。
結果、朝礼は週2回となりました。
あなたの職場でも、「なくしてみたい聖域」「なかなかできないトライ」はないでしょうか。
そんな時こそ、リーン・スタートアップで実験をしてみてはいかがでしょう。
「検討してみる。
でも、難しそう…」といった曖昧でネガティブな対応は、優柔不断だと思われてしまいます。
ぜひ、スパッと「小さく実験」をしてみてください。
Pointわからないから、やらないのではなく、わからない時こそ、実験してみよう!
06「自分の正解」にこだわらないこだわりの強い職人気質のプレイヤーほど、リーダーとして失敗しやすい。
「強み」「個性」「考え方」は人それぞれ。
自分のこだわりを押しつけた時点で、部下の才能は枯れる。
⦿プレイヤー上がりのリーダーが失敗する、最大の理由今や人事のオピニオン・リーダーの1人、サイバーエージェント取締役の曽山哲人氏に「リーダーになるにあたっての注意点」を尋ねたインタビュー記事(「ログミー」2017年4月27日)は参考になります。
「これは簡単ですよ。
自分のやり方を押しつけないこと。
(中略)プレイヤー上がりでリーダーになる人が失敗するのは、これが理由なんです。
(中略)できるリーダーは、メンバーにやり方を考えさせる。
ダメなリーダーは、自分のやり方を押しつける」実に、本質をついた言葉ではないでしょうか。
イチロー選手が新人の頃、その打撃フォームを「基本がなっていない!」と否定し、フォームを矯正しようとしたのは、当時のオリックスの土井正三監督(V9時代の巨人の主力選手)でしたし、若かりし日のダウンタウンの漫才を見て「そんな品のないのはアカン。
そんなん人様の前でやったらアカンで」と言ったのは、当時絶頂を極めていた横山やすしさんでした。
プレイヤーとして結果を出してきた人ほど美学や哲学があり、良かれと思って指摘をすることは少なくありません。
でも、もし当時のイチローやダウンタウンが真面目に言いつけを守っていたらと思うと、ゾッとしませんか。
きっと今の活躍はなかったはず。
自らの正解にこだわらないのはもちろん、むしろ自分を超える方法を〝一緒に考えてあげられないか〟と考えてみてください。
今の20代前半の若者は、たしかにミスを恐れる傾向は否めません。
しかし彼らの突拍子もないアイデアには素晴らしいものがあります。
生かすも殺すもリーダー次第です。
Point自分が「理解できる」ことだけに賛成するのは間違い。
むしろ違う方法を歓迎しよう!
07失敗を恐れないコツ失敗を恐れる人と恐れない人の差は「勇気の差」ではなく、見ている「期間の差」である。
期間を長くとると、目の前の失敗は、成功に向けての「投資」になる。
⦿失敗を失敗と思わない人たち「失敗学」という学問があります。
「失敗を活かす学問」です。
この「失敗学」を研究する元東京大学大学院特任教授・濱口哲也氏によると、「過去の事例を集めると、新しいことに挑戦したとき、99・7%は失敗に終わる」と言います。
(※1)ずいぶんと失敗が多いな、と思いますが、多くは失敗するというのは同感です。
でも、その失敗すらも失敗ではない、と言い切る、そんな猛者も少なくありません。
例えば、パナソニックの創業者、松下幸之助氏はこう言っています。
「世にいう失敗の多くは、成功するまでに諦めてしまうところに原因があるように思われる」と。
(※②)京セラの創業者、稲盛和夫氏もこんなことを言っています。
「世の中に、失敗というものはない。
チャレンジしているうちは失敗はない。
あきらめた時が失敗だ」と。
先ほども紹介した星野リゾート社長の星野佳路氏も、「長期視点に立つ。
理論でもうまくいかないことはある。
でも、長期の時間軸で考えると失敗かどうかわからない。
しつこくやる。
しつこくやるから、失敗したことがないと言われる、成功するまでやり続ける」つまり彼らは、「長期的な視座からその失敗を見ると、実は失敗ではなく、成功へのステップに過ぎない」と言っているわけです。
⦿失敗を活かす「失敗知識」という資産「失敗学」に関して、前出の濱口哲也氏はこうも言っています。
「失敗学は『失敗に学ぶ』ということ。
創造のプロセスで必ず起こる失敗をそのまま終わらせるのではなく、有効活用しましょう、そして次に起こり得る失敗を未然に防ぎ、創造の効率をあげましょう、というのが発想の原点なのです」濱口氏はまた、失敗から学ぶには、「失敗を上位概念である失敗知識に変える」必要があるとして、炭鉱事故の例を紹介しています。
ダメな例は「炭鉱では粉塵が爆発する」と現象を記録するだけ。
これでは、ごく少数の人しかここから学ぶことはできません。
一方、失敗を知識に変えると、こうなります。
「粉体は体積分の表面積が大きいために、酸素を大量に取りこんで爆発する」こう表現すれば、〝教訓〟として多くの人に活かされます。
つまり、長い目で見ると、失敗は成功へのプロセスであることがわかります。
なので、うまくいかなかったことを、キチンと反省する機会、次に活かす方法を話し合う機会を設けることが、失敗を成功に活かすことにつながるのです。
⦿失敗の確率を出してみるそれでも不安な場合は、最悪の事態が起こる確率をシミュレーションしてみます。
あるシーンで、ちょっとイメージしてみましょう。
起死回生の販売キャンペーンを企画するシーン。
「失敗したら降格になるかも」、そんな切羽詰まった状況にいるとしましょう。
不安のために決断できないでいるとします。
この時、仮に「成功、失敗の確率を半々」と考えたとします。
50%が5回。
これらを掛けると、降格になってしまう可能性は約3%。
「降格になるかも」という心配は、取り越し苦労であることがわかります。
迷ったら、数字で「失敗確率」を出すといいでしょう。
リスクではなく、取り越し苦労であることがほとんどです。
※①『Works』(リクルートワークス研究所、No.99)※②『指導者の条件』(松下幸之助、PHPビジネス新書)Point失敗を恐れないために、
失敗を〝俯瞰して〟見る習慣を身につけておこう。
08いたずらに〝やること〟を増やさないムダなことをやらないためには「ムダの基準」を持つことが、極めて大事。
そして、ムダだと判断したなら、思い切ってやめること。
それが、聖域であっても。
⦿スティーブ・ジョブズが、グーグル創業者のラリー・ペイジに伝えたこと「なにをしないのか決めるのは、なにをするのか決めるのと同じくらい大事だ」(※①)こう語ったのは、かのスティーブ・ジョブズ。
実際、グーグル共同創業者のラリー・ペイジが、スティーブ・ジョブズに経営についてのアドバイスを求めた際に答えた言葉にもブレがありませんでした。
「やらないことを決める。
それが経営だ」そうアドバイスしたことが、有名な逸話になっています。
さて、我々は、「やることを決める」ことは多いのですが、どれほどまでに本気になって「やらないこと」を決めているでしょうか。
でも、時代は変わっています。
それを実感する機会がありました。
あるメガバンクの支店長600名にタイムマネジメントの講演をする機会があったのですが、その冒頭で、メガバンクのグループ社長がこうおっしゃったのです。
「長時間、頑張る時代は〝完全〟に終わったと自覚してください。
仕事、プライベート、それぞれを充実させ、しっかりと成果を出す。
そのために、講師の話を〝しっかり〟と聞き、必ず〝実践〟してください」と。
そして、その講演は短い時間ではあったのですが、映像でグループ企業の支店長にも聞かせたいとの相談をいただく、といったことにまでなったのです。
現場リーダーは、もはや「異次元の工夫」が求められる状況になってきているのです。
⦿たった2週間で120個のやらないことが出てきた!私の研修の1つに、みんなで「やらないことを決める」という研修(生産性向上研修)があります。
その研修では、最初に〝ムダを診断する基準〟を紹介します。
それが次の4つの観点で、いずれにも当てはまるなら清々しくヤメてみましょう、というもの。
《ムダを診断する基準》●ヤメても、「お客様満足」に影響しない●ヤメても、「従業員満足」に影響しない●ヤメても、「リスクマネジメント」に影響しない●ヤメても、「業績」に影響しないある企業の60人の職場では、私の研修後にこのノウハウを使い、社内で業務改善プランコンテストをしたところ、2週間で120個もの業務改善の提案が出てきたのです。
少し種明かしをすると、岐阜県の未来工業(ホワイト企業大賞受賞企業)が行っている「改善案を1通提出するごとに、インセンティブ500円を支給」という手法等をマネしたのですが、インセンティブがなくてもそれなりの提案が提出されていたでしょう。
また、コストがかかったといっても、「500円×提案120個」なので、合計は6万円。
これを安いとみるか、高いとみるかは考え方次第ですが、私は明らかに「安い」と思います。
さて、ここで提案です。
この基準を使って、みんなで「ヤメることリスト」を作成してみてはいかがでしょう。
「やること」ではなく、「ヤメること」。
会議、書類など、なくしてもいいことは多いものです。
きっと、隠れたムダをなくす提案が出てくるでしょう。
職場のみんなで、改善案を考え、「やらないこと&やめることリスト」を作成する。
そうすることで、一気に時間を短縮できること、間違いなしです。
きっと、部下の皆さんもイキイキと考えることでしょう。
※①『スティーブ・ジョブズⅡ』(ウォルター・アイザックソン、講談社)Point「やることリスト」ではなく、みんなで「ヤメることリスト」を作成してみよう!
■本章の参考文献・『自問力のリーダーシップ(グロービスの実感するMBA)』(鎌田英治、ダイヤモンド社)・『THE21』(2015年1月号、PHP研究所)・『スティーブ・ジョブズⅡ』(ウォルター・アイザックソン、講談社)・『失敗の本質─日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか、中公文庫)・「ダメなリーダーは「自分のやり方を押し付ける」試行錯誤を続けた男の、チームで勝つ極意」(「ログミー」2017年4月27日、曽山哲人氏インタビュー)
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