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第6章グーグルの疲れない働き方

パソコンを閉じる時間を意図的につくるさて、僕は「そんなふうに、パソコンを広げてすごい速さで仕事をしていて疲れませんか」と尋ねられることがあります。

はい、疲れます(笑)。

日々10倍の成果を上げようと、すごい勢いで仕事に取り組んでいると、頭が回らなくなって、バーンアウトしそうになることも少なくないわけです。

そこでグーグルは、会社としても、いかに社員の身体を守って、脳を落ち着かせるかということに、力を入れているのです。

たとえば、睡眠室をつくって昼寝ができるようになっていたり、マッサージ部屋にマッサージチェアが置いてあったり、瞑想を推奨したり……。

第6章では、「すぐ動く」ためのシンプルな心の使い方をまとめていきたいと思います。

マインドフル・ミーティンググーグルでは、同時進行で複数の仕事をこなすのが当たり前です。

たとえば会議中でも、チャットが出てパーッとその返信を書いてプロジェクトを進めていたり、急ぎのメールに返答していたりします。

でも、ずっとそれをやっていると集中できなくなり、かえって作業が遅くなります。

そこで、すでにご存知の方もいるかもしれませんが、自分自身の振り返りの時間もかねてマインドフルネス瞑想を取り入れることになりました。

マインドフルネスは、簡単に説明すると、「今この瞬間」に集中するということで、僕がいたチームの中でも、国籍を問わずよく行なわれていました。

たとえばビデオ会議の前に、1分くらい瞑想をします。

1分間、パソコンを閉じて、静かに自分の呼吸に集中してただ座っていましょう、ということです。

目は閉じても閉じなくてもかまいません。

自分の呼吸や体に注意を払って、ただその場にいます。

そんなシンプルな1分間の取り組みですが、たったそれだけのことでも、会議の様子がガラリと変わってきます。

何かみんながその場の議題に集中しようという雰囲気が生まれてくるのです。

それ以外にも、瞑想のための部屋があったり、ヨガマットを持参する人もいます。

各自、「何もしない」時間をつくり、リフレッシュしているのです。

第1章でお話ししましたが、環境だけでなく、自分のコンディションを整えるのも、自分の責任です。

いきなりオフィスでヨガを始めたら怒られるかもしれませんが、必要に応じたリフレッシュの時間は、うまくとるほうがよいと思います。

同時進行の時間と、集中して仕事をする時間を分ける仕事中にメールがどんどん届いて、返信するだけで就業時間が終わってしまう、という人もいるはずです。

「すぐに返信しよう」と思うと、他の作業と同時進行で行なっていかなくてはなりません。

これではどうしても集中力がそがれてしまう。

どうしたらよいのでしょうか。

僕は、複数の作業を同時進行をする時間と、ひとつのことに集中して仕事をする時間や大事な会話をする時間を分けています。

たとえば、移動中の電車の中では、携帯を使って様々な仕事をしています。

フェイスブックやメールをチェックして、LINEに返信して、ネットで何か調べて……。

それぞれ数分で次々と処理していきます。

一方、お客さんとこれからプロジェクトを始めようというときは、資料を見せるとき以外はパソコンを閉じ、代わりにA4の紙を出して、一緒にアイデア出しをすることもあります。

人と会話をしたり、集中してアイデアを出すときは、極力それ以外のものは見ないようにしているのです。

また、緊急の連絡がくる可能性のあるメッセンジャー以外のポップアップ通知は消しています。

僕は相手に合わせて、いくつかのメッセンジャーを使っていますが、メールが来るたびにポップアップの通知が出てくると集中できません。

メールの返信は、空き時間に集中して行なうようにしています。

たとえば、打ち合わせまでに1時間あれば、その時間をメールタイムにします。

未処理のメールだけインボックスに残したら、残りは「完了」フォルダに振り分ける「ゼロインボックス」というコンセプトがあるのですが、短いメールですぐに処理できるものはその場で処理して、少し考えなければならない案件については、専用のフォルダに入れておくのです。

ここで「その場で処理しない」メールとしては、調べてそれなりの返答をしなければならないメールと、見て腹が立つようなメールがあります。

前者は、慌てて意味のないでたらめの答えを出すよりは、しっかり調べて、きちんとした回答を出すべきものです。

もうひとつは、みなさんも覚えがあると思いますが、感情的になって返信して失敗しそうなメールです。

英語で、「ホットコグニション」と「コールドコグニション」と言いますが、ホットコグニションというのは、感情的な反応のことです。

大脳辺縁系がサバイバルモードに入って攻撃されているという気持ちになったときは、建設的な考えは何も出てきません。

だから怒りの感情が湧いたときは、一度放っておいて、落ち着いてからもう一度見直し、建設的な返答を出すようにします。

ちょっと頭にきて、イラッとしたまま返信すると、次に来る返信がさらに攻撃的になって悪循環になる……ということを防ぐわけです。

マルチタスクにもコツがある飛び込んでくる仕事に対処しているうちに色々なものが散らかってしまい、集中できなくなるということもあるでしょう。

マルチタスキングには、たしかに、効率が悪い面もあります。

ここでも、「スプリント」を行ないます。

「今日はこれから1時間、集中してメールだけやろう」などと決めて、作業をするのです。

そして、今の仕事に関連するものだけを、ディスプレイに映し出して、作業をします。

たとえば、報告書を書くのであれば、その関連資料と、今調べている情報と、報告書を作成するドキュメントソフトだけ映し出すのです。

ただし僕は、常に複数のディスプレイの画面は開いておきます。

といっても、様々な仕事のファイルを開いているのではなく、たとえばひとつのパソコンで文章を作成していたとしたら、もうひとつのパソコンはグーグルを開いておき、作業中わからないことが出たらすぐ調べて、またすぐ作業に戻れるようにしているのです。

散らかっているように見えても、同じ仕事に必要なものであれば、一連の流れの中で仕事を終えることができます。

マルチタスクにも、やりようがあるわけです。

感情の起伏に対処する仕事においては、できるだけ冷静沈着でいたいと考える人も多いでしょう。

スティーブ・ジョブズは感情の起伏が激しかったといわれますが、リーダーとしての職務を果たすうえでは、一時アップル社を追われたり、思うようにいかなかった時期もあったようです。

しかし、感情が揺れ動かないようにするのは難しいですし、何より逆効果であるように思います。

合気道の創始者と言われる植芝盛平先生は、弟子からなぜ先生は常に体の中心を守れるのかと聞かれたときに、「僕もみなさんのように中心がずれてしまうのは同じだけど、元に戻るのが速い。

ずれないようにするよりも、立て直すほうが速い」という話をしたそうです。

この話は、僕にとって、大きな気づきになりました。

なぜなら、人間が感情的にならないということはないからです。

でも、自分の感情の動きをいち早く認識して、その感情を緩めて建設的な心の状態に戻すというのは、練習ができるのです。

これを「エモーショナル・インテリジェンス」と言います。

たとえば、今自分が怒っていることに気づいたら、その感情を言葉にする。

「今怒ってます」「今うれしいです」「今恐いです」と自分で言うことができたら、「そうか、今怒ってるから相手に反応しないほうがいいな」と判断して、大人の態度につながると思うのです。

よくありがちなのは、自分の気持ちが表現できない人が、逆切れするパターンです。

誰が見ても完全に怒っている、というときに、「あなた怒ってますね」と言われると逆切れして、「全然怒っていません!!(怒)」と大声で暴れたり……。

夫婦げんかなどでもよく見られる光景だと思います。

人間ですから感情的になるのは、ある意味当然です。

むしろまったく感情的にならないのも危ないです。

イラッとしないということは、自分の価値観がわかっていないということですし、恐がらないというのは、危険のあるところが見えないということだからです。

僕が心がけているのは「中庸」です。

感情を殺してしまうのではなく、いつもニュートラルなところに戻ってくる。

感情は、仕事においても、とても大事です。

たとえば、論理で伝えるより感情で伝えるほうが、影響力は高いのです。

自分がうれしいときは周りの人までワクワクしたり、自分が悲しいときは周りの人も共感を示してくれたりします。

でも、「今悲しい」ということを、冷静に論理的に説明したとしても、人は気持ちを動かされません。

仕事でも、気持ちが伝わることで、人が動くということがあるのです。

では、どうやってニュートラルに持ってくるか、それは驚くほど簡単なやり方があります。

感情がブレたら姿勢を整え、頭を少し上げて、周辺視野でできるだけ遠くまで見るようにするのです。

そのままアゴを少し落として、舌の力を抜き、顔とアゴの筋肉を緩めます。

そして深呼吸をしてみましょう。

すると、不思議なことに気持ちが落ち着いてきます。

ぜひ試してみてください。

昼寝・おやつ・リラックスは自己責任先ほどもお話ししましたが、グーグルに仮眠室があったり、ちょっと気分転換をしたくなったらスナックをつまめる場所があったり、マッサージルームがあったりするのは、脳と身体を休めてもらい、より効率よく仕事に励んでもらう、という目的があります。

とはいえ、仮眠室まで完備してある企業は、多くはないでしょう。

それでも、自分がよい状態で仕事に取り組めるよう、仮眠をとったり、おやつを食べたり、散歩などしてリラックスをしたり、ということは意識的に行なったほうがよいと思います。

疲れてきて正確な判断が下せない状況になったり、徹夜をして本当に眠いときは、わずか5分や10分でも寝てしまったほうが、最終的には作業が早く終わるということもあります。

性善説で会社を動かす僕が根本的に疑問を感じるのは、なぜ、そんな辛い状況で仕事をしなければならないのか、ということです。

パフォーマンスが大事、そして利益を得ることも大事、というのはわかりますが、いずれも「そこにいることが楽しいか、楽しくないか」に大きく左右されるはずだからです。

2015年のAON社の調査によると、日本人で仕事にやりがいを持っている人は38%で、残りの62%はやりがいを感じずに仕事をしている、という結果が出ています。

一方、2014年にギャラップ社が行なった調査によると、「働きがい」を持たせることによって、生産性は21%アップし、利益は22%上がるとしています。

したがって、日本の生産性が低いと言われる原因は、このあたりにもあると感じます。

また、ご参考までに今後必要な人材として、グーグルが求めているのは、図6-2の中の「クリエイティブエコノミー」の部分です。

知能・勤勉さ・服従といったものは、すべて機械に置き換えることができます。

情熱・創造性・率先を引き出すことが、働く人にとっても、会社にとってもプラスになるのです。

そのために必要なのは、ピラミッド構造のトップダウン型の組織ではなく、現場の社員に権限と活力を与えるような組織のスタイルだと思います。

一言でいえば、今活力のある会社というのは、「性善説」に則った会社なのです。

たとえば、グーグルの場合、人事は、いかに従業員をサポートすればいいかを第一に考えます。

エアビーアンドビーのようなもっと若い会社では、エンプロイー・エクスペリエンスとか、エンプロイー・サティスファクションなどと呼ばれるやり方をしています。

つまり、いかに社員にいい経験、いい体験をさせるかということに注力しているのです。

そこで、マネジャーに求められるのは、管理ではなく、完全にサポートに移っています。

これは、組織の前提がまったく違います。

従来の組織が、なぜ「管理」に重きを置くのかというと、「人は悪い」「人は怠け者」という性悪説に則っていたわけです。

一方のグーグルやエアビーアンドビーは、「人はいい」「人は成長したい」という性善説の組織づくりになっているのです。

すると、やっぱり環境にも目が向きます。

最近、それは社員を操るためだろうという理論も出てきているようですが、従業員満足度を見ても、グーグルやエアビーアンドビーほど満足度の高い会社はそんなにないのではないでしょうか。

まとめ□時にはパソコンを閉じよう□1分間の瞑想でも集中力は変わる□それぞれの時間で集中することを決めてやる□感情を押し殺すのではなく、いつもニュートラルなところに戻す□休憩も自己責任

 

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