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第6章 いよいよリセット開始!

血液中のニコチンは3日で抜けるB子さん本当に禁断症状は出ないのですか?先生ほとんど出ないね。B子さんはいつも夜は何時間寝る?B子さん6時間くらいです。先生朝、すぐ吸いたくなる?B子さん吸いたくなります。先生B子さんの場合は、せいぜい禁断症状が出ても、その朝の時と同じ程度だと思うよ。それも、3日でおさまると思います。ノンスモーカーにはピンとこないかもしれませんが、スモーカーは朝になるとタバコが吸いたくなります。朝起きて何分以内にタバコを吸いますか、という質問は、ニコチン依存度を測る時の最も大切な質問とされています。朝、タバコが吸いたくなる理由は、夜、寝ている間はタバコが吸えないからです。ニコチンの血中濃度は30分で半分になります。ですから、6時間寝ている人の場合、単純に計算すれば、半分の半分の半分の……と12回、すなわち、2の12乗分の1、つまり、4096分の1になっています。つまり、おおざっぱにいえば、血液中のニコチンは一晩でほとんどなくなり、2~3日もすれば、完全に体から抜けます。それにつれて、脳波の遅くなる現象も見られなくなっていきます。それで、禁断症状が出るといっても、脳波の遅れによる身体的な症状は、せいぜい3日間です。その強さは朝起きた時の吸いたさぐらいということになります。これは、もちろんゼロではありませんが、不思議なほど軽いと感じる程度です。肉体的な禁断症状はすぐ消えるでは、残りの禁断症状はどこへ消えたのでしょうか。ここで思い出してほしいのが、ニコチンの禁断症状の成り立ちです。ニコチンの依存には体の依存と心の依存の二つがありました。そしてニコチンの場合、禁断症状はほとんどが心、つまり精神的な依存による症状なのです。例えば、もうタバコが吸えないとわかっている飛行機の中などでは、いくらでも我慢できるけれども、飛行場についた途端に吸いたくなる、という経験をした人もあるでしょう。この場合、飛行機が上空を飛んでいた時に感じていた感覚が、体による依存の症状です。それに対して、飛行場に近づき、着陸し、いよいよ吸えるぞ、喫煙所はどこかな、となって湧き上がってくる気持ち、これが心の依存による症状だとわかります。飛行場についた途端、ニコチン切れがひどくなる、ということは考えにくいですよね。この例でわかるように、精神的な依存による症状は、吸えそうで吸えないでいる状況で最も強まります。恋人にもう少しで会えそうなのに会えないでいる時、といえばわかりますね。もう一つは逆に、この先ずっと吸えなくなりそうな状況の時にも強くなります。長い会議の前に1本吸っておこう、というケースですね。これも、普段は何気なく付き合っていた人でも、もう一生、二度と会えないかもしれない、となると、無性に会いたくなるのと同じ、といえばわかるでしょう。このように、ニコチンの禁断症状は、体で感じる部分はむしろ少なく、精神的な依存による症状が極めて大きいとわかります。禁煙して何年もたったのにまた吸い始める人がいます。これは身体的な依存は治っても、精神的な依存、つまりこの場合は、タバコの思い出に対する気持ちの整理がついていないからです。それに比べれば、肉体的な禁断症状は弱いのです。現に、あなたは夜、寝ている最中にタバコが欲しくなって目を覚ましたことがありますか?ニコチンの身体的な依存に対する禁断症状は、その程度のものなのです。面白い映画やゲームに熱中している時はどうですか?タバコのことは忘れていますね。ゲームが終わって、夢中になるものがなくなって初めて、かすかに感じる不安感。これがニコチンの体が感じる禁断症状なのです。ですから、リセット禁煙で、タバコ詐欺の正体に気づき、タバコに対する興味が失われ、吸いたい気持ちが出てこなくなった時点で、禁断症状の大部分は永遠に消えてしまったのです。それで、みんな、不思議な思いがするのです。安心してください。今までとは違います

今までに何度も努力型で禁煙し、失敗した人は、「吸いたい気持ち」が湧いてくるのはそのままで、我慢しながら禁煙していました。しかも吸おうと思えば吸えるのに吸わずにいる、という状況そのものが精神的な禁断症状を強めるため、苦しい思いをする人も少なくないのです。我慢すればするほど吸いたくなってくるのです。特に元来、意志の強い人の場合、半端なく我慢できるので、非常に苦しい経験をしてしまうこともあります。そのため、そのこと自体が、トラウマ、つまり大変つらい思い出になって、二度と禁煙をすまい、と禁煙自体をあきらめてしまう人も少なくありません。そういう人にとってみれば、リセット禁煙で禁煙しても、はじめのうちは、「あの時の禁断症状がまたくるのでは」と非常に心配になります。それは無理もないことです。でも、安心してください。今までとは違います。つまりこういうことなのです。タバコの味に2種類あったように、禁断症状にも2種類あるのです。一つは、船底に穴があいたまま、タバコのメリットや食後の特別においしいタバコを信じたまま、我慢をしている人の感じる禁断症状。これは、当然、苦しいものになります。魚の群れができやすく、なおかつ群れが大きくなりやすいからです。こんな感じです。「ここで吸えたらなあ。いやダメだ。でも吸いたい。1本でも吸えたらストレスが解消されるのに。いや、ダメだ。ああ、でも、どうしても吸いたい。もうなしではやっていけないんだぁ!」。それに対して、もう一つは、タバコのカラクリがわかり、船底の穴のふさがった人の感じる禁断症状。これは、体からニコチンが抜け、アルファ波が正常になる、わずか3日程の間我慢すればよい、軽いもの。こんな感じです。「ああ、この感覚……。確かに昔なら、ここで吸ってたよ。タバコを吸うと間がもつなんて信じていたからな。でも実際は、ニコチンが切れてきて、間がもたないように感じていただけなんだ。まあ確かに思いどおりにならないことも多いけど、吸っていたころに比べればまだましだ。もうあんな生活に戻るのはこりごりだよ」ここまで、読み進めてきたあなたの場合はどうなるか。もちろん、後者です。今のあなたは、タバコがストレスや口さびしさを増やすことも理解したし、食後に吸いたくなったわけは、ニコチン切れのために食事が本心からは楽しめていなかったからだとわかっていますね。誤解が解けているので、仮に何かの拍子に魚の群れができかけたとしても、群れは大きくなりにくいのです。もし、よく納得できないというのであれば、前に戻って読み返してください。本気でそうアドバイスします。その場合はまだ禁煙してはいけません。しかし、理解できているというのであれば、禁煙の用意はできています。なんなら、3日間くらいちょっとやってみるか、ぐらいの軽い気持ちでかまいません。あなたは、一歩を踏み出すだけでよいのです。あとは、体が、脳が、元に戻るために一生懸命働いてくれます。あなたがしなければいけないのは、何度もこの本を読み返して復習すること。そして、吸いたい気持ちが、2日目あたりに少し強くなり、その後はだんだん弱くなっていくのを確かめてください。それが、ニコチン欠乏のためにいったん減少したアルファ波が底を打ち、次第に回復してくる過程にあたるからです。つまりあなたはすべてを体に任せて、自分では何もしなくてよいのです。脳波が回復し、体が調子が良くなってくるのをのんびりと待っているだけでよいのです。実際に始めて2~3日もすれば、努力型の禁煙と、リセット禁煙の違いが実感できるはずです。そして、不思議なほど楽に禁煙はできるのです。本来の「優しいお母さん」に戻れるB子さんリセット禁煙の場合、3日でOKというなら、私にもできるかな、という感じがしてきました。でも、まだまだ不安な感じがするのですが。先生そうなんだよね。何か新しいことに挑戦しようとすると、人はどうしても不安を感じてしまうものなんだ。なぜならば生物としては、これまで生きてきた状況を変えるかどうか、というのは、大げさにいえば生死にかかわる問題だから。むやみに変えれば、死につながってしまう。その一方で、人間には変化や成長に対する欲求もあるんだよね。より良い人生を求めて。B子さんなんとなくわかります。そして、この安定を求める不安と成長に対する希望や行動のバランスが、進化の過程で生き残れるかどうかを左右してきたのですね。私は今、子どもをさずかったばかりだけれど、ひょっとしたら、そんな場面でこそ、私たちの祖先はきっと赤ちゃんに良い選択をしてきたのかもしれませんね。先生確かにそうだね。私たちの祖先は実際に赤ちゃんに良い選択をしてきたのだと思うよ。だって、そうできたことで、子孫を残せてきたのだろうから。B子さんなるほど。ということは、私のDNAの中にも、そんな力が入っているということかなあ。先生うん。確かにそういうことになるね。さて、それじゃあ禁煙の前後について、もう少し詳しく見ていくことに

しよう。禁煙したらどうなるか。まずは、吸い続けてしまったお母さんの例から紹介しましょう。それはある女の子からの話だったのですが、その子はボタンをつけて、とか、集金袋にお金を入れて、というような、ちょっとした頼みごとをお母さんにするのに、お母さんがタバコに火をつけた直後をねらっていく、と教えてくれたのです。どういう意味かわかりますか?それにしても子どもというのは、自分の親の様子をよく見ていますね。つまり、タバコを吸うとお母さんは機嫌が良くなるのです。きっと優しくなって冗談の一つも口にするのかもしれません。その時をねらって頼みごとをしに行く、というわけです。私がその子のことをしみじみとかわいそうだな、と思ったのは、彼女が、「タバコを吸っている時の優しいお母さんが私の本当のお母さん」と話したからでした。タバコを吸っている時の優しいお母さんが本当のお母さん……。彼女はそう信じているのです。ところがはたから見ると、このお母さんはどう見えるのでしょう。全くあべこべに見えるのです。この子のお母さんが優しい?とんでもない。この子のお母さんは、普段からいつもイライラしていて怒りっぽい、という具合に見えるはずです。そして、当人も自分は育児やら何やらでイライラしがちな生活をしていて、唯一の息抜きはタバコなんだと思っているはずです。ほら、タバコを吸ってひと息ついているという具合に。でも、本当は、どうなのでしょう。このお母さんは本当に怒りっぽいイライラした人なのでしょうか?そうではありませんね。話はあべこべ、この子が言っていることのほうが本当かもしれないのです。つまり、この子のお母さんは本当に優しい人で、それがタバコを吸っているうちにドーパミンが弱って、ニコチンが切れるようになって、普段イライラするようになってしまったのだとしたら?そして、タバコに火をつけた時だけ「本当の」優しいお母さんに戻るのだとしたら?私はこの話を聞いた時、思わず胸をつかれる思いでした。この子にとって「優しいお母さん」が「本当のおかあさん」。そのお母さんに戻るのはタバコに火をつけた時だけ……。私はこの母子がどうなったか知りません。でももし、お母さんがタバコの悪事に気づき、リセット式で禁煙することができれば、人生が変わったように感じるだろうと思います。そして何より、この子にはタバコの魔術から解けた優しいお母さんが戻ってくることになるのです。車の運転が変わったという人もリセット禁煙法で禁煙した後、車の運転が変わったという人もいます。あるタクシーの運転手さんは、娘から、「お父さん、運転変わったね。優しくなった」と言われたそうです。いつもなら、脇から他の車が入ろうとすると、「危ないじゃないか!」とすぐにクラクションを鳴らしていたのが、まあいいか、どうぞ、という感じになったと。これはどういうことなのでしょう。よく、ハンドルを握ると人は性格が変わる、といいますね。この場合、ニコチン切れの落ち着かない気持ちが、運転に直に反映されていたのでしょう。この人に限らず、私のところにはタクシーの運転手さんがよくきます。彼らはタバコを吸っている人が多く、ストレスがたまるからどうしようもない、と口々に言います。きっとスモーカーにとっては、脳波が遅くなるのをタバコでカバーしつつ走ったほうが、いごこち良く、優しく走れるのでしょう。しかし、もともと、脳波さえ遅くならなければ、運転はもっと楽しくなるはずです。大事な会議やプレゼンの前には不安な自分を落ち着かせ、自分自信を景気づけるために、必ずタバコを吸ってからいく、と言う人がありました。この人は自分でも仕事が楽しいという、若い、きれいなキャリアウーマンでした。私から見ると、この人生の一番楽しくて、はなやかな時期に、タバコに引っ掛かってしまって、楽しむべき時間の半分も楽しめていないであろうことが、本当にもったいない、気の毒だと思いました。この人は、ニコチン切れを、不安な感じとしてとらえているのでしょう。もしこの人が禁煙できたら、きっと体の健康だけでなく、気持ちもずっと晴れやかに明るくなり、ちょうど受験生の成績が上がったように仕事の業績も上がるはずです。同じ景色が違って見えるようにもなるこうしてみると、本当にタバコとは恐ろしいものです。人生の本来味わうべき幸福を感じにくくし、意味のない、余計な不安を募らせる。スモーカーは常に常にこの状態で毎日を送っています。禁煙に抗うつ薬が効果があることがわかってきました。この薬にはドーパミンやノルアドレナリンを増やす作用があるからです。人間はなかなか、自分が不幸せだと認めたくありません。スモーカーの人も同じです。しかし、実際にスモー

カーは、いつも、いつも、不安を抱え、タバコがないと不幸せだと感じているのです。スモーカーが禁煙と聞くと不安になるのは、このせいです。単にタバコをやめるというのではなく、人生全体の楽しみをうばわれるように感じるからです。ですから、「もし、禁煙に成功してしまったらどうしよう」という、わけのわからない、一見冗談のような不安が心の奥底に渦巻いています。その一方で、スモーカーも、もちろん、理性的な人ですから、いつかはタバコをやめなければいけないとわかっています。そして、吸えば吸うほど、この互いに矛盾する気持ちが両方とも大きくなっていき、にっちもさっちもいかなくなってしまうのです。たとえていえば、あなたはプールサイドにいて、入ろうかどうか、もじもじしているのに似ているかもしれません。ちょっと足の先だけ水につけてみると冷たい感じがして、ひゃーっ!と思うのですが、思い切ってプールに飛び込んでしまえば、次の瞬間はもう水の中、案外飛び込んでみたら中は温泉かもしれないのです。それに思い出してほしいのは、タバコの場合、飛び出すのも簡単だということです。また吸えばよいだけですから。ということでいずれにしても、スパッとやめると神経は徐々に回復していきます。実際にドーパミンの反応が増えてきます。ご飯がおいしい、感動が増える、幸せを感じる!そして、ストレスにも強くなるのです。禁煙するとすべてが変わります。不安は自信に変わります。「同じ景色を見ていても、それが違うんです。いつもと同じ部屋なのに、ぜんぜん違うんです。何十年も若返って、また成人式を迎えているかのようです」と説明してくれた人もいます。あなたにも、もう、その予感がしているかもしれませんね。スモーカーという実は恵まれたポジション先生多少は不安な気持ちはあるにせよ、禁煙後が楽しみな気分になってきただろう?ここで、とっておきのいい話をしてあげよう。B子さんええ(身をのりだす)。先生あの、B子さんのママ友のC子さん、彼女はノンスモーカーだったよね。B子さんそうです。先生B子さんとC子さん、2人とも、結婚して子どもができて、今だいたい同じような生活をしていると思うけれど、今後の人生で、これまでよりも、さらに明るく安らかな気持ちになることのできる可能性があるのはどちらだと思う?B子さん今より、もっと明るくて安らかな毎日ということですか。先生そう。毎日がそんなふうに変わっていく潜在力を間違いなく持っている人がいるんだよ。それは……。B子さんわかりました。それは私ですね!人生にはいろいろな分かれ道があります。就職や結婚など、AにしようかBにしようか、迷うことはたくさん。それぞれにメリットとデメリットがあるからです。ところが、ここに、スモーカーにだけに許された、全くデメリットのない分かれ道があります。リセット禁煙です。もし、B子さんが、リセット禁煙をした場合、彼女はほとんど禁断症状を味わうこともなく、煙まみれの生活から解放されます。タバコ片手にものうげに過ぎていた時間も取り返します。健康や体力も回復し、何より、気持ちが落ち着き明るくなり、まるでモノクロの世界から、オールカラー天然色の世界に飛び込んだようになります。禁煙による変化は、回復ばかりではありません。実は最近、元喫煙者はもともとタバコを吸ったことのない人に比べて、辛抱強く、長期的な視野での選択ができる、というデータまで出てきたのです。非喫煙者には決して体験できない、喫煙者だけに体験することが許された禁煙達成という経験が活きてくるのです。当然、人間関係も経済的な状況も改善していきます。これは、現実に今までに多くの喫煙妊産婦さんに起きたことです。すでにフルパワーの状態のノンスモーカーC子さんが、これと同じだけの変化を起こそうとしたら大変。かなり工夫や努力をする必要があるかもしれません。このことは妊産婦に限らず、あらゆる立場の人にあてはまることがわかりますね。そう、スモーカーはこの世の誰もがうらやむような恵まれたポジションにいるのです。次はあなたの番です。さあ、一歩を踏み出しましょう。最後のステップあなたの心の中は不思議と静かな気持ちになって、もうノンスモーカーになったような感じを味わっているかもしれません。あるいは、もう決心してしまった、というようなカラッとした気持ちなのかもしれません。もちろん不安な気持ち

もあるはずです。ただ、私のカンでは、あなたにはもうリセットがかかっていると思います。新しい自分に変わった瞬間はすぐまた元の自分に戻りうる瞬間でもあるため、あなたに不安があったとしても、それは多かれ少なかれ誰もが感じるもの。でも、不安が強い人は、もう一度、気になるところや、印象に残ったところを読み返すのもいいでしょう。さて、次に進みたい人も多いでしょう。その人は最後のステップに進んでください。それは、この本を読み終わったら、1本タバコを取り出して、よーく意識を集中して味わってみるということです。煙が、のどから気管、肺へと吸い込まれていくのを感じ取ってください。そして、ニコチンが吸収され、発ガン物質が吸着し、脳波が一時的に速くなり、そしてまた遅くなっていく。こうしたタバコのあらゆる側面を考えるのです。そして、この1本を最後の1本にするかどうか決めてください。タバコを取り出したものの、怖くて吸えないという人はそれでも結構。それは、リセットがかかっている何よりの証拠です。実際に吸う吸わないは本質的な問題ではありません。これを最後の1本にするかどうかが問題なのです。では、1本取り出して、吸ってみましょう。火をつけて、ゆっくり吸って、吐いて……。どんな味でしょうか。実際のところ、タバコのどこが楽しいですか……。今、あなたのアルファ波はどうなっているのでしょうか。そして、火を消すとどうなっていくのでしょう。もしあなたが、このままこれを最後のタバコにして、もみ消して、立ち上がったとしたら、あなたはどんな気持ちになるでしょうか。ずっと先のばしにしてきたことを決断した自分を、どんなふうに思うのでしょうか。その時の心の声を聞いてみてください。その後あなたは、家族と過ごして、食事をして、それでもタバコは口にしていない。そんな自分に気がついて、自分で自分にどんな言葉をかけてあげますか?その時周りの人は何と言うでしょうか。実際に思い浮かべて聞いてみてください。その言葉を聞いて、あなたはどう感じますか?ついにリセット完了次の日の朝です。ノンスモーカーに戻ったあなたに、朝の日差しが差し掛かる。体の調子はどう?窓からはどんな景色が見えますか?何が聞こえますか?小鳥のさえずり?子どもたちの声?そして、そのまま禁煙は続いていき、1日たち、2日たち、タバコを思い出すことはあるにせよ、どんどん不安な気持ちは薄らいでゆく。自信が芽生えてくる。もう、タバコのことで思い煩う必要はない。解放されたんだ。その時の自分の心に触れてみてください。澄んだ吐息の匂いを嗅いでみてください。生活自体の変化はどうでしょうか。もう灰皿も捨てた。部屋もきれいに片づいている。健康状態は?肌のつやは?人間関係は?仕事は?経済状況は?毎日の食事や楽しみは?気がついたら、1週間、2週間。そしてもう、1か月。その時あなたは、生まれ変わった、その素晴らしい体と精神で何をしたいですか?誰に会いますか?何に挑戦していますか?ドラマのワンシーンのように思い浮かべてみてください♪おめでとうございます!これでリセットがかかりました。悪夢は終わったのです。リセット後の3つの注意点❶3日間は特に注意今までの人もそうでしたが、リセットのかかった後、数日は、不思議な感じがするでしょう。10人に1人くらいは、不思議に吸いたくない、なんだかマインドコントロールされているようだ、と感じる人もあるようです。ただそういう人の中には、こんなに簡単にやめられるなんておかしいな、本当にやめられたかどうか試してみよう、と1本吸ってみたくなる人がいるので気をつけてください。どんなになんともなくなっても、脳の中には「止まらない回路」が残っていましたね。不思議なもので1本吸うと、また1本、また1本とだんだん増えて、元に戻ってしまいます。ただ、そこまで吸いたい気持ちが消えてしまうのは少数派です。大半の人はやはりどこか心配が残ったり、何かの拍子にタバコを思い出したりすることでしょう。しかし仮にそうだとしても、それでもやはり、今までの禁煙とはかなり違うと感じる人が多いようです。例えば、今まで、努力で禁煙していた時は、そばにスモーカーが近づくと「私は我慢してるのに、楽しそうに吸わないで」とイライラしていたのが、「この人も騙されているんだ」と違った感じがしたりするのです。ただ3日目くらいまではニコチンがまだ抜けている最中なので、比較的、吸いたい気持ちが起きやすいかもしれません。脳の研究でも、薬物(この場合はニコチン)の血中濃度が減少していくこの時期には渇望が起きやすいとわかっています。でもその感じは努力で禁煙していた時に比べれば、不思議なほど弱いもの。これこそ、リセットがうまくかかっている証拠です。そのまま、ニコチンが抜け切るのを待っていればOKです。どのみちたいした欲求ではないし、体と心が

もし吸いたい気持ちの予感がしてきたら、魚の群れが大きくならないうちに、あらかじめ決めておいた約束事を試してみましょう。深呼吸?水を飲む?軽い運動?黙想?いろいろな方法がありましたね。❷気づきを忘れないように復習を大事なことは、人間は忘れる動物だということ。変わったばかりの時は、元に戻ってしまいやすいということ。そして、世間にはリセット禁煙に関する本を読んだあなたを除くと、スモーカー・ノンスモーカーを問わず、タバコを正しく理解している人は皆無に等しいということ。ですから、まだ、自信が持てない時はもちろん、どんなにやめれた!よかった!と思っても、本書を人に貸したりせず、必ず手元に置いて、時々復習してください。特に禁煙後しばらくは、5回でも10回でも繰り返し読んで、しっかりフルリセットしましょう。「もう、わかった」と思っても、繰り返し読めば、そのたびに必ず新しい発見があります。復習しないと世の中、間違ったイメージだらけなので、また同じ罠にかかってしまいそうです。特に、何か、厄介ごとなど、ストレスを感じた時には注意。そんな時は、月並みですが、「人生、晴れの日もあれば、雨の日もある」と考えてください。そして、ニコチンと脳波の仕組みのところを読み返してください。タバコを吸っても、雨がやむわけではありません。それどころか、タバコでは、ストレスを減らしたつもりが、逆に増やしているんだよ、ということでしたね。❸1本でも油断しないあとは、周囲のスモーカーの心理を理解してください。彼らは、やめたあなたがうらやましいのです。いつもは細かくてケチなやつが、喜んで、1本どう?と差し出しますよね。でも、いくら罠の仕組みを知ったからといって、油断しないこと。1本でも吸ってしまえば、どんなにわかっていても、脳の中で起こってくるのは容赦のない強制的な化学反応。止まらない回路にスイッチが入ってしまうのでしたね。これは、簡単にやめられた、と実感した人ほど、特に厳しく肝に銘じておいてください。文言巻末に、私の考える依存症から抜け出す8つのステップをまとめておきました。ぜひ参考にしてください。

巻末資料①依存症から抜け出す8つのステップ(拙著『二重洗脳─依存症の謎を解く』〈東洋経済新報社〉より編集)「また吸いたい」「また飲みたい」「またやりたい」というあやしい気持ちになった時に、どうするかまとめておきます。吸いたい気持ちと自分との間に素早く距離がおけるように、魚の群れができかけた時の対応をあらかじめ決めておくことがきわめて大切です。①「ホラー映画と同じ」と思いながら、深呼吸をしたり水を飲むある人は、「お吸い物のふたをとったら、突然タバコが浮かんでいるように感じた」と笑いながら話してくれました。このようにわけがわからなかったとしても、「何かの関連性(金魚の輪っか)があったんだな。大丈夫、ホラー映画と同じ」と思いながら、深呼吸をする、水を飲む、うがいをするなど、ささっと対応するようにします。②体の感覚を取り戻す深呼吸などをしている時、肺の膨らむ感じ、空気の温度、匂い、かすかに聞こえる空調の音、座っている椅子の感覚などを意識して感じ取り、今の体の感覚を取り戻します。「視覚」「聴覚」「触覚」の3つは必ず意識するようにしましょう。こうして感覚が狭くなること、つまり「鹿を逐う者は山を見ず」の状態になるのを防ぐのです。ある時宮本武蔵のところに、「父の仇を討ちたい」という少年が訪ねてきたといいます。武蔵は、少年の、助太刀を求めてきたのではなく自分の力で仇を討つという健気な心にうたれ、日が暮れるまで二刀流の稽古をした後、こう言います。「よいかな。明日、試合の場所にのぞんだなら、立ち合う前に地面を眺めるのだ。この季節のことゆえ、必ずやありがおるはず。ありが見えれば、お前の勝ちだ」そして翌日、少年は見事に父の仇を討ったといいます(木暮正夫『宮本武蔵』講談社)。このように昔の剣の達人は、真剣勝負の緊張感の中で、刀の重み、足底の土の感触を味わい、遠くの山を眺め、風の音、鳥のさえずりを聞いていたといいます。きっとそれが、平常心を保つ剣の極意、冷静で客観的な感覚を保つコツなのでしょう。③自分を客観的に見る力(メタ認知)を働かす体の感覚を取り戻しながら、自分のことを第三者的に外からの視線で眺めてみます。その時、自分の写っているビデオを遠くから眺めるイメージを使うのもいいでしょう。もしかすると、自分の写ったビデオを動画から静止画にしたり、カラーからモノクロにしてみたりして、気持ちが楽になる工夫ができるかもしれません。④思考の内容も確かめるそして大切なのは、自己観察の対象には自分や周囲の事柄だけではなく、心に生まれてきた思考・考えも含めるということです。観察すると、たいていはかつて依存にどっぷり浸かり、自分のことを客観的に見られなくなっていた時に思い込んでいたこと、例えば、「○○は、あらゆるストレス、イライラ、悲しみ、怒りなどに効く(本当は「ニコチン切れのストレス」など、依存対象への欲求不満にしか効かない)」「クリーン(クスリや酒を使わずにいること)は、退屈で気が滅入る(本当は依存症的行動のせいでドーパミンが減り、気が滅入っていただけ)」などが、心の中に生まれていることに気づくでしょう。こうしてそのたびごとに、「そうではなかった」と思い返し、この本を読み返し、改めて客観的に見られるようにすればいいのです。あるいは、以前そう信じていた「○○は必要悪。なしだと自分が自分でいられない」という恐怖がよみがえっているかもしれませんが、その場合も、「大丈夫、この恐怖はホラー映画と同じ。何もしなくても何も起きない。やめられて本当によかった」と思い出せばいいのです。

これはちょうど、私が「あれは事故だったんだから」と自分に言い聞かせながら、ブレーキを踏まずに走り続けていたのに相当します。しかし同じシーンでも、「本当に事故が起きる」と思っているのにブレーキを踏まずにいようとしたら、どうでしょう。大変なプレッシャーに襲われるはずです。これが今まで気づきなしで、「努力型」でやっていたことです。「失楽園仮説」や「二重洗脳」について気づかないまま、意志と努力だけで渇望をやり過ごそうとしていたのですから。それと比べて、「あれは事故だったんだ」と意識できれば、相変わらず強い恐怖を感じたとしても、その質に大きな違いが出るはずです。この客観的な「気づき」をもとに、恐怖の本質を自分に言い聞かせる――これはネズミにはできない芸当です。ぜひ挑戦してみてください。なにしろ依存症の渇望の場合には、車が接近してきたことによる恐怖より、非常に有利な点があります。というのも、依存症の渇望の場合には、そのまま何もしなくても、万が一にも現実に事故が起きることは……ありませんよね。気が狂うこともありません。すぐにおさまっていくだけです。本当に安心して挑戦できるのです。あるいは、そういう気持ちになったらなったでいいや、と開き直ったって大丈夫なのです。⑤謙虚にテキストを復習する「あやしい気持ちになったけど、本を読み返したらおさまった」という類いの話は本当に大勢の人から聞きます。必ず読み返すたびに、新しい「気づき」があるというのです。「気づき」の最大の敵は覚えていますか?「わかったつもり」でした。だからあまり難しく考えず、繰り返し復習しておけば、そもそもそんなに強い渇望には襲われないと思います。十分学習できていれば、深呼吸を数回して、何か他のことを始めるだけでも大丈夫な人が多いでしょう。少なくとも数回は(人によっては10回以上も読み、一生の宝にする人もいます)、この本の内容を学習しておけば、仮にその理解がまだまだでも、なんとかなるでしょう。なにしろ、そもそも何もなしでもうまく続けていく人はたくさんいるのですから。⑥とにかく1回やり過ごすそして何より大切なのは、とにかく1回でも渇望をやり過ごすことです。その効果は、他の何よりも確実です。なぜなら、それができたその瞬間に、脳は新しい学習をしたことになり、勢いがつき、新しい自信と喜びが生まれるからです。その調子で、もう1回、もう1回とやっていくうちに、感情(吸いたい気持ち)のぶり返しは弱くなり、自信もついてきます。薬物から悪意に基づく集団による心理操作まで、あらゆる方法を駆使したカルト教団によるマインドコントロールでさえ、この繰り返しで克服できます。あまり先のことは考えないでください。かえって不安になるだけです。足元の1日1日を大切にして、少しずつ進んでいけばいいのです。⑦変化に身をまかせる薬物や依存行動から抜け出た後も、少なくとも数か月、人によっては何年も、軽い吸いたい気持ちがよみがえることもあるでしょう。なぜなら「関連づけ」自体は、「自分には変えられないもの」だからです。私もいまだに左から車が例の角度とスピードで接近してくると、イヤな感じがします。しかし、その臨場感は確実に弱くなり、もはやブレーキを踏むことはありません。それを思うと私は、思考や行動は「変えられるもの」だと改めて感じます。人間は常に変化していきます。生きてさえいれば、これと同じ変化がどの人にも生じてくるのです。⑧本当は心の底で求めていた、心安らかな生活を心がける本当は、これを一番目に書くべきだったかもしれません。荒れた食生活を避け、朝日の中で目を覚まし、軽い運動や黙想をするなど規則正しい生活をする。そして人を騙したり、傷つけたりしない。具体的には、私はお釈迦様の八正道を理想としてイメージしていますが、このようなある意味まっとうな日々を過ごし始めると、意外にも若く幼かったころには退屈でつまらないと思っていた日常こそが、素晴らしいと感じる時があると思

うのです。科学的にも、こうした生活には、ドーパミン神経やセロトニン神経をはじめとする、人間本来の心を安らかにする自然の力を回復する作用があることが明らかになりつつあります。逆にいえば、生活が荒れてくると、神経の抵抗力がそがれて、心に穴があきやすくなってしまいます。そして例の悪循環が待っています。かつての荒れた生活の中には、きっとより多くの、フラッシュバックの引き金になる要素が含まれているはずです。仮にいろいろな事情でそんな生活がしにくくても、折に触れて自然の中でリフレッシュできると、本当に素晴らしいと思います。ちなみに、現在、最先端の心理療法は、例えば第三世代の行動療法に見られるように、仏教に急速に近づいていると私には感じられます。

巻末資料②大麻・ハーブ──子どもに広がる究極のウソ大麻をめぐる売る側の情報操作には、背筋が寒くなるようなものがあります。最近はやりの大麻(ハーブやお香とカモフラージュされています)などの違法薬物では、たいしたことないよ、酒やタバコとどこが違うの?自己責任でやっても大丈夫だよ、と「普通に見せかけ作戦」が本気で仕掛けられてきます。B子さん「普通に見せかけ作戦」って何ですか?先生例えば、あなたの知り合いの押尾学みたいなイケメン(?)が、「変わったハーブがあるんだ、試してみる?合法だし、タダでいいよ」とあやしいものを使ってみせてくれました。その人に裏のねらいがあるとしたら何でしょうか。最悪のケースを考えてみてください。B子さん最悪のケースですか。まず、合法というのがあやしいですよね。それから、タダでいい、というのも、最初だけで、そのうちやめられなくなったらお金を取るんじゃないですか?先生うん。なかなかいい線いっていると思うよ。じゃあ、そのあやしいものを、実際に吸ってみせてくれたわけは何だと思う?最悪のケースを考えると、あと2つポイントがあるんだけど。B子さんそうですねえ……。それは、かっこよく見せたいから?友達を依存症にして儲けるつもり?なんだろう?先生この問題は大学の「依存症」の特別講義で使っているんだけれど、一応、解答例はこんな具合になっているんだ。読んでみるね。〈解答例〉①合法というのはウソ。合法と言えば言うほどあやしい。②あなたを金づるにしようとしている。その気はなくても繰り返していればやめられなくなるので、それからたっぷりお金を取るつもり。③その人自身もうやめられなくなっている。だから、自分のハーブ代を稼ぐために、わざわざ普通にやってみせて、油断させ、好奇心をかきたて、試させようとしている。④一度でも試せば弱みを握ったことになる。隣に仲間がいて、こっそり写真を撮っているかも。B子さんうーん。もうやめられなくなっている。納得です。だから、危険を冒してまで、使ってみせてくれたわけですね。せっぱつまっているわけだ。そして、弱みも握られてしまう。マジで怖いですね。先生後から、今度、甲子園に出るんだって?とか、公務員の○○さんがこんなことしてていいんですかね、とか、写真をネタにゆすられてしまったり。B子さんそうか、1回OKすれば、何度でも誘ってくるでしょう。それから、何度かやって、お金もかさんできて、やめたいなと思ったころに、ゆすられてしまう。そして実際に職場にばれて新聞沙汰になる人も出てくるわけだ。先生そうなんだ。だから、日本でも鉄道会社の運転手などでは、薬物の検査を行うようになってきた。ところで、ハーブについて、いろいろな薬を混ぜて調合する工夫に凝っている人があるんだけど、なぜだかわかるかい?B子さん……。先生それは、調合を工夫することで、なんとか、薬物の「気持ち良い作用」だけを純粋に取り出そう、としているんだよ。どんな薬物でも使用した後、気持ちの悪い作用がやってくる。タバコでもそうだよね。いっそやめてしまいたい。でも、やめられない。それで、少しでも純粋に「快楽」の部分だけ取り出せないかと、いろいろ工夫しようとするんだよ。でも錬金術と同じで、どんなに工夫してもうまくいきそうでいかない。それでますますハマっていくんだよ。B子さんなるほど。それを聞いて、お酒の飲み方にハマっている人とか、パチンコでどうやって勝つかにハマっている人とか、似ているのかなと思いました。先生そうだね。確かに似ていそうだね。大麻の重要な販路にインターネットがあります。そのため、ネット上では売る側の情報戦も徹底的。大麻を擁護する非常に詳しいホームページがあり、多数の科学的なデータが極めて巧妙に紹介されています。それを見ると、むしろ知的な

子どもほど納得してしまいそうです。例えば、超一流の医学雑誌「ランセット」(2009)に掲載された論文ウェイン・ホール(WeyneHall)の結論部分は、「大麻の公衆衛生への負担は飲酒、喫煙に比べて軽いと考えられる」となっています。しかしこれは、公衆衛生に関する論文です。公衆衛生、つまりある国や地域の人口全体で見た時に、タバコや、アルコールが原因の疾患負担と比べて、大麻によるものが少ないという意味です。やさしく言えば、例えばある国の総人口に対するある薬物が原因の医療費が、タバコが原因のガンや心臓病などの総医療費より少ないからといって、子どもたちに「その薬物はタバコより安全なんだよ」と説明できるのか、ということです。例えば日本で覚醒剤が原因で死ぬ人は、自殺や事故などを含めても、タバコが原因でガンになって死ぬ人よりずっと少ないですが、だからといって覚醒剤はタバコより安全でしょうか?大変な誤解を招きかねません。オランダでは合法だ、というのも誤りです。オランダは2010年、政策を転換。1日3000人に販売していた大麻カフェに1000万ユーロ(約12億4000万円)の罰金を科すなど、取締りを強化しました。心配なのは米国で、あまりにも大麻が広がってしまい(高校生の約4割が経験)、取締りを放棄しつつある地域があることです。どうせやめないから取り締まるお金がもったいない。貧乏人やマイノリティーには吸わせておいて税金を取ろう、ということでしょうか。2010年にカリフォルニア州で行われた大麻に課税する提案は、住民投票で否決されましたが、これは地元の大麻業者が合法化に伴う大手の参入を嫌って反対したのではないか、とテレビで報道されていました。タバコ教育の大切さタバコは、煙を吸うことから大麻使用のゲートウェイドラッグ(入門薬物)となります。大麻パーティーで17人が摘発された事例では、1人だけ大麻を使用していなかった子どもがあり、その子どもだけは非喫煙者で煙が吸えなかったためでした。私たちの調査でも、定時制高校で喫煙経験者の9割が、大麻は「簡単に手に入る・何とか手に入る」と回答しています。タバコ会社が喫煙の有害性を繰り返し否定してきたのと同様に、大麻の売り手も大麻の危険性をごまかそうとしています。しかし大麻には確実に依存性があります。しかも大麻はタバコと違い、1回でも忘れられなくなる危険があります。わかっていてもやめられず、結果的に逮捕される人があとを絶たないことがそれを証明しています。

大麻代欲しさにバーで働いていた女子中学生の事犯も報道されています。また米国に続き日本の職場でも、鉄道の運転士などで大麻の検査が行われるようになりました。このように軽いタバコのインチキ穴、メンソールの添加物など、タバコの学習は、子どもを騙そうとする勢力の存在を目の前に突きつけ、大麻など現在進行中の問題へも視野を広げるきっかけとなります。変化が激しく、親が気づかないうちに子どもをねらう手口が巧妙化する現在、保護者や教育医療関係者の役割はますます重要となっています。

巻末資料③家族を禁煙させたい人へ──本書利用のポイントお父さんにお母さんにタバコをやめてほしい。子どもに禁煙してほしい。こうした願いを繰り返し相談されています。なんとかできないかと私自身もいろいろ考えたり工夫したりしてきました。うまくいったこともあれば、そうでない時もありました。こうした経験を通じて皆さんに伝えておきたいことは、どんなスモーカーであっても、心の底には本当は禁煙したいという気持ちを持っている、ということです。仮に「私は絶対に禁煙しない」と言っていたとしてもです。その次に伝えたいことは、十分にタバコの危険や害を伝えれば禁煙する、という期待は往々にして裏切られるということです。タバコのせいで糖尿病が悪化し、片目が失明した。受動喫煙で、娘が気管支喘息発作を起こし入院した。タバコのせいで、非常に苦しく危険な心筋梗塞の発作を起こした。こうしたことが起これば、禁煙するのに十分だと考える人は少なくありません。しかし、実はこれで十分とは限らないのです。何が足りないのでしょうか。それが本書にまとめられた内容です。喫煙者が信じてやまない、「タバコのメリット」、そして「禁煙のデメリット」を疑わせる必要があるのです。実際、前作の『リセット禁煙のすすめ』を読んで禁煙できたという報告は、出版以降、絶えることなく続いています。では、いかにしてこの内容を伝えるか。自分でリセット禁煙の内容を理解し伝える。これでうまくいった家族もあります。その秘訣は、結論だけを伝えるのではなく、気づきにつながるような質問や、説明を順番に並べていって伝えるということにあるようです。本書でいえば、第1章から順に半ば読み聞かせるくらいの慎重さで、タバコの謎を解いていくとうまくいきやすいのです。もちろん、本人が読んでくれればそれが一番簡単ということになります。読んでくれるかなあ……。そんな声が聞こえてくるようです。それについてはこんなふうに考えてみてください。人に禁煙してもらうには、その人の考える禁煙の重要性と、実際に禁煙に挑戦した時に成功する自信の2つが重要だ、ということです。そして、現代の日本においては、禁煙の重要性は、ほとんどの人が理解しているといってよいと思います。では何が問題かというと、それは自信度が低い人が多いことです。特に禁煙失敗を繰り返した場合はそうですね。自信度が低いと、重要性の認識も低くなりがちです。どうせできないからどうでもいいや、とか、なるべく都合の悪いことから目を背けようとするわけです。ですので、禁煙に対する自信度をいかに上げるかが大切になります。ここから先は、専門家でもなかなか思うようにはいかない領域になりますが(実は私の専門は「動機づけ面接」という面接法なのですが、いかに自信度を上げるかについては、いつもいつも議論が絶えません)、いくつかポイントをあげておきます。1つは、身近な人が禁煙した時です。「あいつにできたのなら自分にも?」という心理が働くのです。もう1つは、とにかく強制的に禁煙している時です。例えば手術などで入院してしまった時。その場合には、禁煙できるかどうかではなく、禁煙が続けられるかどうかという話になるので、決定的なチャンスとなります。身体的にも依存は解消されているわけなので、あとはこの本を読んで心の依存も解くことができれば、そのまま禁煙できる可能性が高くなるでしょう。3つ目としては、禁煙外来や市販の禁煙用のはり薬と併用するというやり方です。禁煙支援の飲み薬やはり薬は体の禁断症状に対するものですが、その効き目は確かなものです。ですのでそれと併用することで成功率が高まります。それからもう1つ、リセット禁煙という心の依存を解く、コロッとやめられるかもしれない方法があるんだよ、と真剣に伝えることだと思います。最後に(これは必ずしもおすすめというわけではないのですが)、一般の人にもできる、専門的な禁煙支援の方法を正面から身につける、というものがあります。具体的には動機づけ面接が良いと思います。これは、アルコール依存の研究から始まったものですが、他の方法と比べて、相手が怒っていたり、反抗してくる場合に特に効果が認められているからです。そんな特長を持った心理療法は私の知る限り他にはありません。家族に喫煙者がいるのであればよく理解できると思いますが、喫煙者は、こちらが「禁煙」とひと言言っただけで、身構えます。2人の間に緊張が走るのです。そんな不協和な状況を克服しつつ禁煙に進んでいく、それを体系的に支援できるのが動機づけ面接の最大の特長だと思います。動機づけ面接は医療関係者だけでなく、現在では福祉・司法関係者や教育関係者にも広がっています。対人関係全般に

広く応用が利くからです。また特別に心理などの専門教育を受ける必要もなく、一般の人でも学ぶことができます。残念ながら日本での普及はこれからですが、そんなところも魅力の1つといえるでしょう。

本書は、書き下ろし作品です。

著者紹介磯村毅(いそむらたけし)1989年、名古屋大学医学部卒。同大大学院卒業後、テキサス大学医学部研究員として癌と老化の遺伝子研究に従事するも研究は頓挫。帰国後は名鉄病院呼吸器科に勤務。そこで出会った村手部長の指導のもと「子どものための禁煙外来」開設や、河合塾との「禁煙で合格率アップ」の取り組みを通じ、新しい禁煙法「リセット禁煙」を開発。現在は、リセット禁煙研究会・予防医療研究所代表。子どもをタバコから守る会・愛知世話人。トヨタ記念病院禁煙外来医師。名古屋大学医学部非常勤講師(依存症とメディカルコーチング)。日本呼吸器学会認定専門医。動機づけ面接トレーナー。主な著書に、『リセット禁煙のすすめ』『リセット禁煙プラクティスマニュアル』(以上、東京六法出版)、『リセット!─タバコ無用のパラダイス』(幻冬舎)、『二重洗脳―依存症の謎を解く』(東洋経済新報社)、『脳内ドーパミンが決め手「禁煙脳」のつくり方』(青春出版社)、『図解でわかる依存症のカラクリ』(秀和システム)などがある。

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