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第5章相手の心をつかむ伝え方

あの人の話は、なぜこんなに伝わらないのか?本書の最後となるこの章では、相手の心をつかむ「伝え方」について紹介していきたいと思います。感動ヴォイスで惹きつけた人々の心を離さないためには、相手にすんなり理解してもらえる言葉選びや話し方が重要です。つまり、「わかりやすい」ということですね。でも、ほとんどの人が「わかりやすく伝える」ことができていません。ほとんどの人ができていないのですから、これができるようになるだけで、あなたの仕事や人間関係の株はグン!と上がるということ。それでは、相手にわかりやすく伝えるためのポイントをお伝えしていきましょう。初対面の方とお会いした際に、真っ先にするのが自己紹介ですね。仕事でも、プライベートでも、初めての方にお会いするときは、必ずと言っていいほど自己紹介をします。あなたもこれまで、何百回、何千回と自己紹介をしてきたのではないでしょうか。もちろん私のセミナーでも、必ずはじめに受講者のみなさんに自己紹介をしていただきます。そんな中、私がとても多いと感じている自己紹介が次のようなものです。はじめまして、○○○○と申します。えっと、私は今日、JRと地下鉄を乗り継いで、40分くらいかけてここまで来ました。マッサージの仕事を、そうですね、もう本当に長くやっていまして、こんなに普及するずいぶん前から、いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて、筋膜の癒着についてはとにかくたくさん調べて、施術もしていまして、誰にも負けないくらいの強みなんですけれども、大人数の講演会とかにも呼ばれて話をしたりということも最近していて、仕事の幅が広がってきたなーっていうふうに思っています。今日はさらに活動の幅を……どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょう?なんだか話の内容がごちゃごちゃしていて、何が言いたいのか、わかりづらいと思いませんか。ちなみに、第一印象は出会って最初の3~5秒で決まり、その印象は、その後約7年続くともいわれています。ですから、出会ってはじめにする自己紹介で、相手にネガティブな印象を与えてしまうと、その後約7年間、あなたはネガティブな印象をぬぐえないということになります。ものすごく怖いですよね。ところで、この自己紹介、どこに問題があるのか、もうおわかりですね?問題点は4つ。ひとつめは、一文が長いことです。ダラダラと続いてどこで切れるかわからない話は、聞き手が情報を整理できなくなります。つまり、理解できないということです。ふたつめは、使われている表現が非常に抽象的です。たとえば、「マッサージの仕事を、そうですね、もう本当に長くやっていまして」の「長く」とは、具体的にどれぐらいでしょうか。5年?10年?それとも20年?この尺度は聞き手によってバラバラです。抽象的な表現をすると、それぞれのフィーリングで解釈します。3つめは、業界の専門用語を使っていることです。「筋膜の癒着」という専門用語は業界以外の方にはわからない場合が多いもの。わからない話をされるのは、聞き手にとってはストレスです。そして4つめは、聞き手にとって不要な情報が盛り込まれていることです。たとえば、交通関係や乗り物オタクの方でなければ、会場に来るまでの時間や交通手段に興味はないでしょう。「えっと」「そうですね」などの言い淀みも余計です。意識のベクトルは聞き手に向けるさて、ここまでの問題点を見て、気づいたことはありませんか?それは、この自己紹介には「聞き手が不在」であるということです。どういうことかというと、「聞き手が何を知りたいか」「どう話せばわかりやすいか」「どういう話し方をすれば興味をもってくれるか」という、聞き手への配慮がないまま一方的に話しています。聞き手の存在が無視されているのです。なぜ、こんなにも聞き手を無視して話してしまうのか。それは、話し手の意識のベクトルが、すべて「自分」に向いているからです。私はこれまで、主宰する話し方講座や企業研修などで、本当にたくさんの方の自己紹介を聞いてきました。そこでは、ほとんどの方が「私はこんなにすごい」「私はこんな資格をもっている」と自分のことばかりを話されます。でも、聞き手からすると、「あなたについての話はもういいですよ、お腹いっぱいです」とげんなりしてしまいます。休日の気の合う友だちとのおしゃべりなら、それもいいでしょう。ですが、初対面の相手の心をつかむには、これは絶対にNGです。

人は誰でも、自分に一番興味があります。それは聞き手も同じこと。だから、あなたが発信する情報が、自分にとってわかりやすいものか、興味深いものか、メリットがあるものなのか。聞き手としては、そこに関心があるのです。ですから、情報を発信するときは、そうした点に注意する必要があります。そもそも、コミュニケーションは発信者と受信者で成り立ちます。一方的に発信するのは、コミュニケーションとはいえません。聞き手に受け取ってもらいやすい伝え方をして、はじめて成り立つのがコミュニケーション。つまり、聞き手のことを考えて情報発信するのが基本なのです。受信者のことを常に考えて発信しなければ、いくら感動ヴォイスで人を惹きつけても、やがて見向きもされなくなってしまいます。人前で話すときの5つのポイントでは、どうすれば聞き手にすんなりと受け取ってもらえる話し方ができるのでしょうか?それは、「聞き手にとってのわかりやすさ」を意識することです。ポイントは5つあります。一文は短く話す一文が長い文章は、聞き手の思考に切れ間を与えません。そのため、何が言いたいのかがわかりづらくなります。ですから、長い文章はなるべく句点(文末につける「。」)で区切り、一文をできるだけ短くします。話をする際は、そこで「間」を入れることを意識しましょう。マッサージの仕事を、そうですね、もう本当に長くやっていまして、こんなに普及するずいぶん前から、いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて……マッサージの仕事を、もう本当に長くやっています。こんなに普及するずいぶん前から行っています。いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行きました。こんな具合です。句点を打つ場所は、接続する語でつなげる場所です。話していると「~して、~ですが」など文章をつなぐ接続する語を入れたくなりますが、ここで句点を打ちましょう。そうすることで、ひとつの文章にひとつの事柄だけを書く、「一文一義」の文章にすることができます。抽象表現は具体的にする抽象的な表現が多いと具体性に欠けるため、説得力がありません。また、聞き手によって解釈が異なるため、「聞いていた話と違う」などとトラブルの元になりがちです。抽象表現を具体的にするだけで、聞き手にとってはイメージしやすく説得力のある文章になります。マッサージの仕事を、もう本当に長くやっていまして、こんなに普及するずいぶん前から、いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて……マッサージの仕事を約20年やっていまして、養成学校やプロが主宰する勉強会などに、人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて……このように、抽象的な表現をしている箇所を、数字や具体名に置き換えることで、聞き手はラクにイメージできるようになります。専門用語は使わない聞き手にわかりにくいと思われる箇所は、噛み砕いて説明したり、補足説明を加えたりします。自分の当たり前は相手の当たり前ではないことを常に意識しましょう。筋膜の癒着についてはとにかくたくさん調べて……肩こりや首こりの原因になる……不要な情報は入れない聞き手にとって不要な情報はカットします。それだけでも話はずっとわかりやすく、伝わりやすくなります。えっと、今日、JRと地下鉄を乗り継いで、40分くらいかけてここまで来ました。マッサージの仕事を、そうですね、もう本当に長くやっていまして、こんなに普及するずいぶん前から、いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて……

私はマッサージの仕事を長くやっています。いろんなところに人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりしていて……語尾までしっかり話す「最後まで言わなくてもニュアンスでわかるだろう」と考えて、語尾を言い切らずにぼかしてしまうと、何が言いたいかわかりづらく、無責任な印象を与えることもあります。ですから、語尾は最後までしっかり話しましょう。仕事の幅が広がってきたなーっていうふうに思っています。今日はさらに活動の幅を……どうぞよろしくお願いいたします。仕事の幅が広がってきたなーっていうふうに思っています。今日はさらに活動の幅を広げるために学びにきました。どうぞよろしくお願いいたします。ここまで紹介した5つのポイントを使って自己紹介をすると、次のようになります。はじめまして、○○○○と申します。私はマッサージの仕事を約20年やっています。養成学校やプロが主宰する勉強会などに、人間の体の仕組みについての勉強をしに行ったりもしています。肩こりや首こりの原因となる筋膜の癒着についてはとにかくたくさん調べて、施術もしています。その点は、誰にも負けない強みです。最近では、数百人が集まる講演会にも呼ばれて、マッサージの話をすることもあります。仕事の幅が広がってきたなと思っています。今日はさらに活動の幅を広げるために学びにきました。どうぞよろしくお願いいたします。ずいぶんスッキリとして、わかりやすくなったのではないでしょうか。こんなふうにポイントに沿って話を整理するには、あらかじめ自分の話す内容を書き出してチェックしておくといいでしょう。「えっ、そんなめんどくさいことを……」という声が聞こえてきそうですが、5つのポイントが身につくまでは、そうすることをおすすめします。なぜなら、書き出して推敲することで、自分の情報発信のクセがわかるからです。自分の発信する情報には何が足りないのか、逆に、何が余計なのか。そこがわかってくると、情報発信がどんどんスムーズになって、聞き手に理解してもらいやすくなります。決まった時間内では、情報量が少なければ少ないほど伝わりやすいものです。ですから、話す前に、できるだけ話す内容を推敲して、情報量を絞ってから話し始めましょう。話す順番を意識するもうひとつ、意識していただきたいのが、「話す順番」です。まず、次のAとBを読み比べてみてください。A伊勢神宮は、晴れた早朝の参拝では、参道の玉砂利を踏む音と、木立の間から聞こえる鳥のさえずりなどに心が浄化されていきますが、日本三大神宮のひとつに数えられていて、大小さまざまな125社から成る神社です。鳥羽水族館は、セイウチパフォーマンス笑(ショー)ではセイウチの頭のよさ、かわいらしさに癒やされますが、約1200種もの生きものを飼育する、飼育種類数が日本一の水族館です。御在所ロープウエイからは、琵琶湖や鈴鹿山脈を眺めることができますが、鉄塔の高さが日本一で61メートルなので、山頂に到着したら、ぜひ大自然の美しいパノラマを楽しんでください。B三重県内のおすすめ観光スポットを3つご紹介します。ひとつめは、伊勢神宮です。伊勢神宮は日本三大神宮のひとつに数えられていて、大小さまざまな125社から成る神社です。特におすすめなのが晴れた早朝の参拝です。参道の玉砂利を踏む音と、木立の間から聞こえる鳥のさえずりなどに心が浄化されていきます。ふたつめは、鳥羽水族館です。鳥羽水族館は約1200種もの生きものを飼育する、飼育種類数が日本一の水族館です。ここで必見なのがセイウチパフォーマンスです。セイウチの頭のよさ、かわいらしさに癒やされます。3つめは、御在所ロープウエイです。御在所ロープウエイは鉄塔の高さが日本一で61メートルあります。山頂に到着したら、ぜひ大自然の美しいパノラマを楽しんでください。琵琶湖や鈴鹿山脈の素晴らしい景色を眺めることができます。さて、どちらの文章がすんなり頭に入ってきましたか?どちらも書いてある内容はほぼ同じですが、言わずもがな、わかりやすいのはBですね。なぜでしょうか?ポイントはふたつあります。ひとつは一文が短いということ。それによって各文章の意味がとりやすくなります。また、冒頭で「おすすめ観光スポットを3つご紹介します」と全体像を伝えることで、聞き手はこれからなんの話をされるのかを先にわかったうえで話を聞いてくれるようになります。それが聞き手の理解を促進することにつながります。

逆に、Aのように全体像を伝えずに話し始めると、なんの話がどこまで続くのかわからないため、聞き手からすると「この話、一体どこに向かっているの?いつ終わるの?」とモヤモヤしてしまいます。聞くことがつらくなっていくのです。もうひとつは、Bが「事実→主観の順番で伝えている」ということ。たとえば伊勢神宮の話であれば、「日本三大神宮のひとつに数えられていて、大小さまざまな125社から成る神社」というのは、客観的な事実です。先にこうした事実を述べてから、「特におすすめなのが晴れた早朝の参拝です。参道の玉砂利を踏む音と、木立の間から聞こえる鳥のさえずりなどに心が浄化されていきます」という個人的な主観を述べています。客観的な事実から話すことで、後に続く主観にも説得力が出ます。Bのように、情報を整理して話す順番を意識するだけで、聞き手にとってわかりやすい情報発信ができるようになります。ちなみに、「3」という数字は「マジックナンバー3」といわれる、人の記憶に残りやすい数字です。石の上にも三年、三度目の正直、二度あることは三度ある、三日坊主、三拍子揃う……「三」がつく慣用句はとにかくたくさんありますが、こうした事実も「3」がマジックナンバーたるゆえんでしょう。また、人間の脳は一度に4つ以上のことを覚えにくいといわれています。ですから、情報を発信するときには「3つにまとめる」ことを意識すると、聞き手に届きやすくなりますよ。聞き手に「イエス」と言わせる三角ロジックそもそも私たちは、なんのために声や文章を使って情報を発信するのでしょう?多くの場合、あなたの主張を相手に伝えることで、共感や賛同を得るためではないでしょうか。特にビジネスの場合、相手にこちらの主張を理解してもらい、「イエス」と賛同してもらうことが重要になります。となると、その主張に納得してもらえるような話の流れで伝える必要があるのです。しかし、わかりにくい話をする人の場合、情報過多で主張とは関係ない話がたくさん盛り込まれています。しかも、聞き手が納得するような、論理的な説明がないことが多くあります。それでは賛同を得られませんよね。たとえば、次の内容を読んでみてください。疲れた日は納豆を食べるといいよ。まあ、ネバネバが苦手だっていう人もいるよね~。でも疲労回復効果があるらしいし、納豆って日本の食べ物だけど、海外でも好きな人は好きだよね。あ、最近は関西でも人気が出てきたらしいよ、スーパーで売り切れることもあるんだって!そうそう、ひきわり納豆とかもあるよね。ずっと座って、パソコン作業で疲れた日は、納豆を食べてみるといいよ。いかがでしょうか?話し手としては、最後の「疲れた日は、納豆を食べてみるといいよ」という主張に関して、聞き手に賛同してほしいわけです。ですが、聞き手からすると、「なぜ納豆が疲れにいいのか」がよくわかりません。かろうじて「疲労回復効果があるらしい」とは言っていますが、その後に不必要な情報が続くので、話を聞いているうちに疲労回復効果のことを忘れてしまいます。このように、とにかく自分の知っている情報を思いつきで言葉にして、自分がしゃべりたいようにしゃべると、聞き手を説得して賛同を得ることができません。では、どうすれば聞き手があなたの主張に賛同するような話の流れをつくることができるのでしょうか?こういうときは、「三角ロジック」を使いましょう。三角ロジックは、ロジカルシンキングに欠かせないスキルです。・データ……主張を裏づける事実やデータ・論拠……一般的な事実。原理、原則、法則・主張……話し手が主張したいこと。データと論拠から導かれた結論の3つから成るフレームワークです。

この三角ロジックを使って、先ほどの「疲れた日は、納豆を食べてみるといいよ」という主張に導くなら、次のように当てはめることができます。・データ……納豆にはビタミンがたくさん含まれている・論拠……ビタミンには疲労回復効果があるとされている・主張……疲れた日は納豆を食べるといいこの三角ロジックを活かしてまとめると、次のようになります。納豆にはビタミンがたくさん含まれているんだけど、これが疲労回復にとても効果的なんだって。だから、ずっと座っているパソコン作業で疲れた日は、納豆を食べてみるといいよ。このように話されたら、「なるほど!じゃあ、今日は納豆を食べてみよう」と納得して賛同できるのではないでしょうか。大事なのは、主張を裏づける客観的なデータと論拠を交えて簡潔に話すこと。この点を意識するだけで、わかりやすさも、説得力も桁違いに増して、あなたの話は聞き手に伝わりやすくなります。東京ドームに髪の毛がポツンと1本……あなたの話の説得力が増すポイントを、もうひとつお教えしましょう。それは、聞き手にとってなじみ深いビジュアルを用いた比喩を活用することです。たとえば、私が半導体メーカーで投資家向けの広報(IR=InvestorRelations)をしていたときのことです。その仕事では、投資関連の方々にお集まりいただき、全国で会社説明会を開催していました。投資関連のほとんどの方は、特に半導体に詳しいというわけではありません。そのような方々に、電子機器の中に入っていて直接目に触れることがない半導体の魅力について伝えなければなりません。そして、理解して納得いただき、ファンになってもらい、投資につなげていただく必要があります。でも、「半導体はほとんどホコリのない建物、クリーンルームでつくっているのですが、私どものクリーンルームはクラス100を実現いたしました。クラス100とは、1立方センチの中に1ミクロンのゴミがひとつ存在しているような状態です」といっても、聞き手はピンときません。頭の中が???だらけでしょう。立方センチもミクロンも、聞いたことはあっても、日常で体感することはありませんよね。なじみのない単位なので、それがどれだけすごいのか、よくイメージできないのです。そこで、説明会では次のように言い換えてお伝えしました。「私どものクリーンルームはクラス100を実現いたしました。クラス100とは、1立方センチの中に1ミクロンのゴミがひとつ存在しているような状態です。これは、東京ドームの中に髪の毛がポツンと1本落ちているようなものなのです」こんなふうに、聞き手がイメージできるビジュアル(=東京ドーム、髪の毛1本)を使った比喩を用いることで、「なるほど、それはすごいね!」と納得していただくことができます。その後はみなさんが興味をもって話を聞いてくださいました。ちなみに、情報は耳だけで聞いた場合、3日後に覚えているのは全体の約10%。そこに画像を加えると約65%に跳ね上がり、6倍ほど記憶しやすくなるそうです。脳はノンフィクションとフィクションを区別できないといわれていて、実際に目で見た画像も、脳内にイメージした画像も、本人にとっては同じようなインパクトをもたらします。ですから、聞き手にとってなじみのあるビジュアルの比喩を用いて、頭の中に強烈なインパクトを残すことができれば、しっかりと心をつかむことができるのです。相手に同調すると親密さが増す結局のところ、わかりやすい伝え方とは、いかに聞き手を思いやれるかということです。聞き手の立場に立てる「客観性」。それこそが、わかりやすい伝え方をするために必要な視点です。この「客観性」を活用して、聞き手の心をつかむテクニックもあります。「ミラーリング」という言葉を聞いたことがありますか?カフェやレストランなどに入ったとき、周りを見回して、カップルや仲良しの女性グループを観察していただくと、しぐさや表情、体や顔を傾ける角度が似ていることに気がつくと思います。たとえば、一人がコーヒーカップに口をつけると、一緒にいる人もコーヒーカップに口をつけるとか、一人が足を組むと、もう一人も足を組む。このような行動は、仲がよければよいほどひんぱんに行われます。この「仲がいい人に似てくる」というのは、実は人間の本能です。好意を抱く人と同じ世界に入っていきたい、一体化したいという同調行動なんですね。このように、相手の言動を無意識のうちに鏡のように映し出すのが、心理学でいうところのミラーリングです。

このミラーリングを利用してコミュニケーションをとると、相手は知らず知らずのうちに親近感を抱いてくれます。たとえば、相手がやや頭を傾けて話しているなら、あなたも同じ方向にやや頭を傾けて話す。あるいは、声のボリュームを相手に合わせる、話し方のテンポを相手に合わせる、という感じです。客観的に見て、「同じ」行動をあえてとるわけです。人は、自分と同じテンポで話す人のことを「できる」と思う傾向がありますが、それはおそらく、このミラーリングのせいではないかと思います。あるいは、会話で相手との具体的な共通点を探っていくのもおすすめです。先日、あるところで会った女性と話していると、お互い京都出身ということがわかりました。「え~、京都出身なんですか!」「私、桂に住んでいたんです」「ほんまかいな!すごく家が近い~。私は桂の隣の駅です、西京極~!」出身地が同じだとわかったとたん、急に地域ネタで話が弾みました。あなたにも、きっと同じような経験があるのではないでしょうか。私たちは自分に似ている人を好きになるようにできています。似ている点を見つけたら、積極的にコミュニケーションに取り入れましょう。親密さが生まれて、話が一気に進みやすくなるはずです。相手がその気になる伝え方たとえば、あなたがイベント設営の準備をしているとき。あなたが忙しくしているのに気づいているのかいないのか、誰も手を貸してくれません。このまま自分一人で作業していては時間がかかるし、あまりにも大変だし……手伝ってほしい!さて、こんな状況のとき、あなたならどちらの言い方で周りの人に応援を頼みますか?A.「なんで手伝わないの?手伝ってよ!」B.「手伝ってくれたら、すごく助かる!」ふたつのセリフをお読みいただくとよくわかると思いますが、両方とも「手伝って」という趣旨のことを言っているのに、受ける印象がまったく違いますね。Aは言われた側はなんだか責められているような、怒られているような気になります。また、命令されているような気がして、なんだか不快です。一方、Bは責められたり怒られたりといった印象にはなりません。命令でなく、お願いという感じがしますよね。この違いは、どこから生まれるのでしょうか?実は、ふたつの文は主語が違います。日本語は主語を省略して話されることが多い言語ですが、省略されている主語を補うと、こうなります。A.「なんであなたは手伝わないの?手伝ってよ!」B.「手伝ってくれたら、私、すごく助かる!」何かをお願いする際に、Aのように主語を「あなた」にしてしまうと、「あなたがやるべきだ」という意味になり、メッセージを受け取る側は命令されているような、責められているような、嫌な気分になります。こんな言い方をされた人が手伝ってくれるとしても、しかたなく嫌々やる……という感じでしょう。でも、Bのように主語を「私」にすると、話者は単に自分の素直な気持ちを話しているだけなので、受け手にはどんなプレッシャーもかかりません。そのうえで、「〇〇してもらえたら、私は助かる」「〇〇してもらえたら、私はうれしい」「〇〇してもらえたら、私は安心できる」など、自分のポジティブな感情をメッセージに込めると、相手は「そうか、この人が喜ぶならやってあげよう」と自発的に動いてくれるようになるのです。お願いごとをするときは、主語を「あなた」ではなく「私」で伝える。それだけで相手の心に抵抗を呼び起こすことなく、すんなりとあなたの要望を届けられるようになります。言い方ひとつで相手をその気にさせ、相手が「あなたのために行動してあげたい」と自然に思ってくれるようになるのです。サンドイッチ話法で相手にマイナス要素を伝えるコミュニケーションで非常に難しいのは、聞き手にとって耳が痛い話を伝えなければいけないときではないでしょうか。言われたほうはたいてい嫌な気持ちになりますから、それがわかっていて伝えるほうはなんとも気が重いものです。しかし、聞き手の今後の成長を願うなら、これは避けては通れません。聞き手にとってネガティブな内容だけど、しっかりと受け止めてほしい。そんなときに、聞き手に嫌な思いをさせず、ネガティブなメッセージを届ける方法が「サンドイッチ話法」です。

パンに具材を挟んで食べるサンドイッチのように、ネガティブなことをポジティブな話の間に挟んで伝えるのです。たとえば、私がプレゼンについてのフィードバックをするときは、次のようにサンドイッチ話法を使います。【ポジティブ要素】〇〇さんの伝え方は、論理的な文章構成ですごくわかりやすかったです。【ネガティブ要素】そうですね、もう少しアイコンタクトがあるとよかったかもしれません。アイコンタクトをもっとしっかりとられると、「伝えたい!」という想いまで相手に届けることができると思います。【ポジティブ要素】いやぁ、それにしても、話の内容が論理的に整理されていて、すごくわかりやすかったです!こんなふうにポジティブのパンでネガティブの具を挟んでから差し出すと、「あ~、おいしいですねぇ!」とマイナスの具もすんなりとお腹の中に入れてもらえます。この話法をご存じない方同士で、企業研修などでフィードバックし合っていただくと、たいていこんな指摘が飛びかいます。「えっと~、できていない点は~」「ん~、悪いところは~」そうすると、受け手はしょんぼりしてしまったり、カチンときたり、ネガティブな感情になりやすく、その結果、素直に指摘を受け入れられなくなってしまうことがあります。また、一度心を閉じてしまうと、次にポジティブなコメントでトントンと心の扉をノックしても、なかなか開かないものです。やはり人は、認めてもらったり、褒めてもらったりするとうれしいもの。サンドイッチ話法でポジティブから始めることで、聞き手の心が開きます。自分を認めてもらえたうれしさで心が開いていると、ネガティブなコメントも受け入れやすくなります。ちなみに、コミュニケーションのどの部分が一番人の記憶に残りやすいのかという研究結果があります。これによると、一番残りやすいのはコミュニケーションをとった最後の部分。そして、二番めに残りやすいのが最初の部分でした。あなたのメッセージを相手に気持ちよく受け止めてもらうために、サンドイッチ話法をぜひ覚えておいてくださいね。練習なくして成果なしさて、この本のはじめからここまで、感動ヴォイスのエクササイズ、そして話し方などについてお伝えしてきました。相手の心を揺さぶる声の出し方のポイントや、仕事や人間関係で好印象かつわかりやすい伝え方のコツなど、具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。最後に、あなたにお願いしたいのが、この本は「ふ~、読み終わった。明日からやってみよう」ではなく、今すぐ実践してくださいということです。読みながら、どこか一箇所でも実践してくださった方ならおわかりいただけると思いますが、実践するとすぐに、「ホントに背筋を伸ばして立つだけで気持ちがシャキッとするんだ」とか、「豊かに呼吸して、吐く息に声を乗せるだけで声の響きが変わった」ということを、その場で実感できたはずです。この「本当に声ってすぐに変えられるんだ!」と、あなた自身で実感していただくことがなにより重要だと思っています。「自分には、自分だけの魅力的な声がある」そのことを実感できれば、その瞬間から、自分に少しでも自信がもてるようになり、生きていくのが楽しくなるからです。第3章で紹介した基本のトレーニングや声のお悩み別トレーニングなどは、効果をすぐに体感しやすいので、まだ実践していない方は今すぐやってみてください。何度か実践していただくことで、いざというときすぐに使えるようになります。気になる箇所だけでかまいませんので、ぜひ繰り返し練習してみてください。「実践してみたけど、今ひとつこれまでと声に違いが出なかった」という方は、動画を見ながらやっていただくことをおすすめします。違いが体感できたら、その違いが定着するまで定期的に練習しましょう。一度定着すれば、その後は意識的に感動ヴォイスを基本とした声のテクニックを使いこなせるようになります。変化自体はすぐに体感できますが、それを確実にあなたのものにするには、練習あるのみ!練習なくして、成果なし。でも、その練習こそが、あなたの明日を明るく、大きく変えてくれるはずです。

おわりに最後までこの本を読んでくださり、ありがとうございます。ぜひ本書をご活用いただいて、自分の本当の声を取り戻し、人生を変えていただければ、これ以上の喜びはありません。現在、私がこのような仕事をして本を書かせていただくということは、昔の私からすると考えも及ばないことでした。なぜなら、昔の私は内向的で声が小さく、スムーズにコミュニケーションをとるのが難しい人間だったからです。たまにこのことをお伝えする機会があると、ほぼ100%「信じられない」と言われます。ということは、人間って変われるんだということですね。「できない」「自分には無理」というのは、自分自身がそう決めてしまっているだけで、実際はそんなことはありません。変化するために学び、知識を得て、実践する。そうすることで、声、話し方、そこから人生だって変えられます。特に、声に関しては、「生まれながらのものだから変わるはずがない」と諦めている方が多いのですが、決してそうではありません。声は何歳からでも劇的に変えられます。世の中にふたつとない、自分だけの魅力あふれる本当の声。本当の声に出会うことで話し方まで変わり、自分の中の自信スイッチがオンになります。すると、自己肯定感が上がるだけでなく、周りの人からも信頼を得られ、仕事や人間関係のご縁にも恵まれていきます。自己肯定感と声や話し方は密接につながっています。声や話し方が変わることで、自分を認め、自分らしく自己表現し、他者とつながり、自分の人生に責任をもって幸せに生きる人を増やしたい。私が今、このような活動をしている原点がここにあります。本を書かせていただくというこの素晴らしい経験は、私だけの力でできたものではありません。これまで関わってくださった、たくさんの仲間や家族に支えられて実現できたものです。そして、私の講座やセミナーを受講してくださった、たくさんの方々の変化や成功があるからこそ、この本の中で具体的な事例を紹介できました。声は自己発電できるエネルギー。心や体、人生まで変える力をもっています。いつか、あなたの声を聞かせていただける日がくることを楽しみにしています。本当の声を取り戻し、どうぞ自分らしい幸せな人生をお過ごしください。最後に、このような貴重な機会を与えてくださいました、かんき出版編集部の渡部絵理さん、合同会社DreamMakerの飯田伸一さん、この場をお借りしてお礼を申し上げます。2021年8月吉日一般社団法人感動ヴォイス協会代表理事村松由美子

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