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第5章時間の投資先を決める

本書のタイトルにある「仕事ができる人」というのは、「目標達成し続ける人」でなければなりません。

どれだけテキパキ仕事をこなしていても、会社から与えられた「目標」を達成し、周囲の期待に応えることができていなければ、「仕事ができる人」という評価を獲得することはできません。

本書を読んでいただいている方の中には、「一生懸命やっているのに、なぜ結果が出ないのだろう」と袋小路に入ってしまっている方もいるでしょう。

しかし、一生懸命やるのは「アタリマエ」ということを理解しなくてはなりません。その上で、一生懸命のやり方が間違っているという事実にも向き合わなければなりません。すなわち、それは、成果に繋がる「行動」が選択できていないことを意味します。

この章では、あなたの限られた時間をどのような「行動」に投資すれば良いかを考えていきます。

◎「行動」を変える6ステップステップ①「目的」「目標」「戦略」「戦術」の違いを理解するステップ②「目標達成シナリオ」を描くステップ③8つの「戦略」を描くステップ④64「」、10ステップ⑤周囲に公言するステップ⑥PDSAサイクルを最速で回す

目次

ステップ①「目的」「目標」「戦略」「戦術」の違いを理解する

NHKの大河ドラマには、『風林火山』の山本勘助、『天地人』の直江兼続、『軍師官兵衛』の黒田官兵衛など、軍師にスポットライトを当てた作品が多いです。

軍師は、地形図を頼りに「兵糧攻め」「水攻め」「奇襲」などの作戦を立て、ときには戦場の高台から一望して敵の弱点を見抜き、戦況を一変させます。名将の陰に軍師あり。

優秀な軍師は、「目的」「目標」「戦略」「戦術」の違いを正しく理解しています。

その上で、戦の「目的」「目標」を兵士にまで周知させ、効率的かつ効果的な「戦略」「戦術」を選択していきます。

このようにして兵士の「行動」を指揮しやすい体制を整えているのです。

「目標」や「戦略」は、会社や上司から与えられるもの、示されるべきものという固定観念があるかもしれません。

しかし、そのような働き方でも通用する時代は、あと数年で終焉を迎えることでしょう。これからは、あなたがあなた自身で「目標」や「戦略」を描き、自分の人生をデザインしていく時代です。

本書ではこれまでにも、「目的」「目標」「戦略」「戦術」という言葉が何度も出てきましたが、ここで改めて、これらの言葉を私なりに定義しておきたいと思います。

「目的(Purpose)」「目標」の存在意義・不変の理由「何のためにやるのか(Why)」「どうありたいか(Howtobe)」

「目標(Goal/Target)」「目的」を果たすために達成すべき明確な指標「いつまでにやるのか(Whentodo)」「どれくらいやるのか(Howmuch)」「何を目指すか(Whattoaimfor)」

「戦略(Strategy)」効率的かつ効果的に「目標」を達成するための方針資源配分の方針「何をやるか(Whattodo)」

「戦術(Tactics)」効率的かつ効果的に「戦略」を遂行するための具体的な手段・手法資源活用の方法「どのようにやるか(Howtodo)」山登りに例えると、次のように言えます。

「目的」=「登山をする理由そのもの」

「目標」=「いつまでに山頂や中間地点まで登るのか」

「戦略」=「どのルートで登るのか」「どのようなメンバーで登るのか」「どのような時間配分・計画で登るのか」

「戦術」=「各メンバーがどのような役割を遂行するのか」「各メンバーがどのような順番・配列で登るのか」「どのような服装・装備で登るのか」さらに、「英語の勉強」という身近なケースで、これらの違いを整理してみましょう。

「目的」=「国際線のCAになって海外を飛び回り、外国人乗務員と楽しく仕事する」「目標」=「就活が始まるまでに、TOEIC700点を取得する」「戦略」=「1日5時間、テキストを中心に独学で勉強する」「戦術」=「通学中の車内で、英単語の音声を聴いて、その日本語の意味を考える」「文法テキストを1日1単元ずつ進める」「週末に、本番同様に時間を測って、公式問題集を解く」このように、「目的」→「目標」→「戦略」→「戦術」の順で考えた上で、具体的な「行動」を起こすことが大切になります。

これが時間の投資先を決めるということです。

ステップ②「目標達成シナリオ」を描く

第1章では、「パッション」「ミッション」「ビジョン」を言語化することで、あなたの仕事の「目的」を明確にしました。本章では、あなたの「目標」を明確にし、「目標達成シナリオ」を描きます。

まず、良い「目標」は、次の5つのポイントを押さえていると言われています。

  • ①Specific(具体的である)
  • ②Measurable(測定可能である)
  • ③Attractive(やりたくなる)
  • ④Resultbased(成果に基づいている)
  • ⑤Timebound(期限が明確である)

これらの頭文字をとって、「SMART」とも言います。私は、これらに加えて、「『影響の輪』の範囲内である」ことも重要な要素だと考えています。

「影響の輪」とは、「あなたの関心事の中で、あなたが影響を及ぼすことができる領域」のことです。

例えば、プロ野球選手として、「20勝すること」や「打点王を獲得すること」を「目標」に掲げる選手がいますが、私はそれらを良い「目標」だとは思いません。

なぜなら、20勝できるかどうかは、自分がピッチングを頑張るだけでは実現できないことだからです。チームメイトが1点も取ってくれなければ、勝つことは難しいでしょう。

打点王についても同様で、チームメイトが出塁してくれなければ、自分がどれだけ打っても打点を稼ぐことはできません。ですから、「影響の輪の範囲内ではない」と考えられます。

その点において、自分が頑張りさえすれば結果に影響を及ぼすことのできる「防御率を2点台にする」や「打率3割を打つ」という「目標」のほうが良い「目標」だと考えています。

また、私が1万人以上の営業職の方に対して研修を行う中で気づいたことがあります。

それは、目標達成できない人は、会社から与えられた「目標」を「ノルマ」や「夢」として捉えているということです。

「ノルマ」を主体的に捉えたものが「目標」であり、「夢」に日付を入れたものが「目標」なのですが、目標達成できない人は、その考え方を持てていませんでした。

一方、超一流のアスリートは、小学生の頃からこれらを理解しています。

プロ野球のイチロー選手、サッカーの本田圭佑選手、テニスの錦織圭選手などの小学校の卒業文集を読むと、小学生の頃から「目的」と「目標」を明確に意識し、目標の達成に向けて主体的に努力していたことがうかがえます。

例えば、本田圭佑選手の場合、目的:大金持ちになって親孝行すること目標:世界一のサッカー選手になるワールドカップで有名になるセリエAのチームの10番として活躍する年俸40億円の選手になる日本代表の10番として活躍するワールドカップの決勝でブラジルと対戦し、2対1で勝つナポレオン・ヒル博士も、「目標の明確化が夢の扉を開く」と、「目標」の大切さを伝えています。

「目標達成シナリオ」は、「長期(50年間)」「中期(7年間)」「短期(半年間)」の3つのアプローチで作成します。

「長期」「中期」「短期」の順番で、それぞれの「最終目標」から逆算して描いていくことがポイントです。

ソフトバンクグループ創業者の孫正義さんは『人生50年計画』として次のようなシナリオを描いています。

20代で名乗りを上げ30代で軍資金を最低で1000億円貯め40代でひと勝負し50代で事業を完成させ60代で事業を後継者に引き継ぐ私は就活生だった頃、これをヒントに自分の「目標達成シナリオ」を描きました。

当時、「32歳で起業独立する」ことを「目標」にしていたので、そのために必要な資源(マネジメント力・営業力・人脈)を得られる会社かどうかが就職先を決める基準でした。

大手企業に入社することが成功とされていた超就職氷河期の最中、私はベンチャー企業だけに絞って就職活動を行う「戦略」で、パソナ、ソフトバンク、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、ナムコ(現在のバンダイナムコ)などの内定を獲得しました。

大手企業で歯車のひとつになるよりも、ベンチャー企業で大きな仕事を任せてもらうほうが、自分が速く成長できると考えたのです。

その後、26歳でリクルートグループに転職した私は、「目標」をさらに細かく逆算して立てるようになりました。

「32歳で起業独立する」という「目標」を達成するためには、「自分自身をブランディングする」という「戦略」が必要だと考え、そのためには、「退職するまでリクルートグループで前人未到の営業表彰記録をつくる」という「目標」を達成することが必要不可欠だと考えました。

さらにそのために、「29歳には、営業MVPを獲得する」「27歳には、営業表彰される」という「目標達成シナリオ」を考えました。

このように、「目標」さえ定まれば、あとは、「何をやるべきか」という「戦略」と、「具体的にどのようにするのか」という「戦術」を考え抜き、実行するだけでよくなります。

結果、私は、32歳で起業独立するまでは計画通りに達成することができました。

一方、その後の挫折は前述した通りです。

私の大失敗の背景には、自分の「ミッション」「パッション」に沿った生き方を選択しなかったことと、「目標達成シナリオ」を定期的に見直さなくなっていたことがありました。

では、「目標達成シナリオシート」を使って、あなたの「目標」と「目標達成シナリオ」を記入してみましょう。

※このシートはダウンロードができます。

詳しくは巻末の最高の目標達成術をご覧ください。

★は目標コンパスシートと同じものを入れる。

「目標」については、「長期」「中期」「短期」それぞれ「重要度」の高い順に5つ以内で記入してください。

「長期目標達成シナリオ」については、「パッション」「ミッション」をベースにイメージを膨らませてみてください。

「中期目標達成シナリオ」については、「ビジョン(7年後のイメージ)」から逆算してイメージを言語化してください。

「短期目標達成シナリオ」については、会社から与えられている「目標」から逆算して考えると良いでしょう。

「目標」の数を5つ以内に絞る理由は、「時間」「エネルギー」「お金」といった資源を集中させたほうが達成確率は高まり、大きな成果が上げやすいからです。

また、絶対に達成すべき「仕事の目標」である「短期目標達成シナリオ」については特に、「目標」を自ら高く設定し、達成期日も前倒して計画・実行することを心掛けてください。

ただし、この段階でもまだ「どのようにその目標を達成するのか」を考える必要はありません。

人間がイメージできることは必ず実現できるものです。

まずは「目標達成シナリオ」のイメージを膨らませて、言語化することだけに集中してみてください。

ステップ③8つの「戦略」を描く

「目標」を達成しているイメージが具体化したら、次は「戦略」を具体化していきます。

「戦略」と言うと難しそうですが、実は、私たちは「戦略」を描くことが苦手なわけではありません。

「何をやるべきか」という「戦略」については、あなたも頭の中でなんとなく描けていることが多いはずです。

「戦略」と「戦術」を考える際には、「拡散的思考」をフルで働かせた上で、「収束的思考」で絞っていくプロセスが必要です。

「拡散的思考」は情報を元にさまざまな方向に考えを巡らせ、まだ存在しない新しいアイデアを生み出す思考方法です。

一方、「収束的思考」は、すでにある情報を元に、1つの正しい答えへ辿り着く思考方法です。

「拡散的思考」によって、数多くの「戦略」と「戦術」のアイデアを膨らませた上で、「収束的思考」によって、効率的かつ効果的な「戦略」と「戦術」だけに絞っていきます。

これらの思考をフル回転させるためのサポートツールとして、「目標達成マンダラシート」をご用意しました。

このシートは、私が認定パートナーでもある「原田メソッド」の「オープンウィンドウ64」をヒントに作成しました。

原田メソッドは、『一流の達成力』(フォレスト出版)等の著者である原田隆史先生が開発した目標達成メソッドです。

当時、大阪の公立中学の陸上部を指導していた原田先生は、このメソッドを使って、7年間でその陸上部を13回も日本一に導きました。

北海道日本ハムファイターズで活躍した大谷投手が高校1年生のときから実践したメソッドとしても有名で、今ではファイターズの二軍の若手選手も学んでいるそうです。

では、「目標達成マンダラシート」の記入方法を説明します。

まず、マンダラの中央のボックスには、あなたが1年(もしくは半年)以内に最も達成したい「目標」を記入してください。

そして、その周りを囲む8つのボックスに「戦略」を記入してください。

「戦略」は、資源配分の方針です。

効率的かつ効果的に「目標」を達成するための方針とも言えます。

あなたの資源は「お金」と「時間」の2つです。

あなたの「お金」と「時間」を何に「投資」するのかを描いてください。

また、8つ中3つの「戦略」には、「心を磨く」「技を磨く」「体を磨く」の3つを書いてください。

『7つの習慣』の第7の習慣に「刃を研ぐ」という原理原則がありますが、まさにそれに該当するものです。

どんなに素晴らしい「戦略」「戦術」を描いても、「心技体」が伴わなければ、実行と継続は不可能です。

「心技体」を磨くことは、すべての「戦略」の大前提にあるものだと理解してください(心技体を磨く時間を確保する参照)。

ステップ④64の「戦術」を描き、10に絞る

次に、8つの「戦略」それぞれの周りのボックスに、「戦術」を8つずつ描きます。

つまり、8×8の合計64個の「戦術」が描かれることになります。

「戦術」とは、資源活用の方法です。

効率的かつ効果的に「戦略」を遂行するための具体的な手段・手法とも言えます。

私の経験上、「何をやるべきか(Whattodo)」という「戦略」については理解し、イメージできている人は多いのですが、「それを具体的にどのようにやるのか(Howtodo)」という「戦術」を具体的な「行動」レベルに落とし込むことができている人は少ないです。

具体的な「戦術」を描けていない状態で、結果を出すことはできません。

なぜなら、人間は、具体的にイメージできていることしか実現できないからです。

そこで、ここでは、「戦術」を具体的に描く方法を解説していきます。

「戦術」を立てる際の大切なポイントは、5W2Hで具体的に描くことです。

「どうやったらできるようになるか」という問いを自問自答し、「When(いつ・いつまでに)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「What(何を)」「How(どのように)」「Howmuch・many(どれくらい)」やるのかを具体的に描きましょう。

また、そもそも「Why(なぜ)」それをやるのかを見失わないようにしてください。

「目的」のない「戦術」を遂行するほど、ムダな時間はありません。

私たちの周りは、「やったほうが良いこと」で溢れています。

このまますべてをやろうとすると、あなたの「お金」と「時間」という資源が分散投資されることになり、多大なエネルギー消費の割に、大きなリターンを生み出すことはできません。

資源の投資先を絞ることで、最も重要な場面で最も大きな成果を上げられる状態をつくることが大切です。

そこで、64個の「戦術」の中から、より重要な16個の「戦術」に絞るプロセスが必要です。

投資対効果の大きい「戦術」から順に選んでいきましょう。

この段階では、あなたが信頼する上司や先輩からの客観的な意見にも耳を傾けてみてください。

また、「戦術」を選択する際には、最悪シナリオを想定することが重要です。

「戦略」「戦術」を大きく描くときは、うまくいくことだけを考え、楽観的に最高シナリオを描けばいいのですが、「戦術」を絞るときには逆の視点も必要です。

想定通りに遂行できなかった場合のリカバリー策まで描いた上での「戦術」、もしくは遂行できる可能性の高い「戦術」を選択するようにしましょう。

外部環境に左右されず、あなたが頑張りさえすれば、必ず実行できる「戦術」を選択することが大切です。

では、「目標達成マンダラシート」の64個の「戦術」の中から選んだ16個の「戦術」を赤色のペンで囲ってください。

さらに、この16個の「戦術」の中から、直近3ヶ月以内に完遂させる「戦術」を10個以内に絞ってください。

そして、それを完遂期日とともに、次の表に記入しましょう。

その際、できる限り、「戦術」の進捗度を測定できるように数値化します。

※このシートはダウンロードができます。

詳しくは巻末の最高の目標達成術をご覧ください。

その期間は、そこに記入した「戦術」以外のことは忘れてしまって構いません。

その代わり、記入した「戦術」だけに集中し、必ず完遂させましょう。

ステップ⑤周囲に公言する

ここまで記入してきた3つのワークシート「目標達成コンパスシート」「目標達成シナリオシート」「目標達成マンダラシート」の内容を、毎朝毎晩、読み返す「習慣」を心掛けましょう。

潜在意識にまで刷り込むつもりで、読み込んでください。

その上で、あなたの「目標」を周囲に公言してください。

家族でも親友でも上司でも構いません。

あなたが信頼できる人すべてに、あなたの「目標」を共有してください。

家族や友人には、プライベートな目標を公言し、上司や同僚、ビジネスパートナーやクライアントには、ビジネスの「目標」を公言すると良いでしょう。

あなたが達成困難だと感じている目標を、想定以上に短期間で達成させるノウハウを持っている人やサポートしてくれる人が見つかるかもしれません。

ただし、あなたの夢や目標を否定してくる「ドリームキラー」と呼ばれる人が現れるリスクもあります。

例えば、「そんなのムリだよ!」とか「失敗するかもしれないよ」と言ってくるかもしれません。

しかし「ドリームキラー」の多くは、悪気はありません。

いただいた意見に感謝の気持ちだけを示して、自分の「目標」に邁進しましょう。

自分の「目標」を周囲に公言することで、あなたは「目標」達成に対して、よりコミットするようになるはずです。

また、これまでの自分では達成が困難だと感じるくらいの「目標」にすることが大切です。

それが、あなたの潜在能力を最大限引き出すことに繋がるのです。

「目標達成マンダラシート」の記入例にあるように、私にとって最も重要な「目標」は、「1年間で、会社の営業利益を3倍にすること」としました。

「本当にやるべきことは何なのか」(戦略)と「どうやったらできるようになるか」(戦術)を考え抜き、最初の一歩さえ踏み出すことができれば、切り拓けない道などありません。

活躍されている芸人さんには、貧乏な家庭で育った人が多いと言われていますが、ダウンタウンの松本さんは、次のような主旨のコメントをしていたことがあります。

「貧乏だと、ゲームとか、おもろいもんが周りにないから、おもろいことっていったら、笑いしかやることがあらへん。

だから貧乏だったことが、自然におもろいことを考えたりするのに役立ってるんちゃうかな」私も40歳を目前に全財産を失ったからこそ、「本当にやるべきこと」が明確になり、「どうやったらできるか」を考え抜くことができ、1つの答えが見つけられたのかもしれません。

渇望こそが、ブレイクスルーを生み出すのです。

今、「お金がない」「時間がない」と思っているのであれば、それを嘆いている時間ほどムダな「時間の使い方」はありません。

あなたは今、一番答えを見つけやすい場所に立っているとも言えるのです。

ステップ⑥PDSAサイクルを最速で回す

最後のルールとして、PDSAサイクル(Plan計画−Do実行−Study研究−Act改善)を最速で回すことを挙げたいと思います。

もともと、日本では、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4ステップを繰り返すことによって、継続的な業務改善を行っていく「PDCAサイクル(PlanDoCheckActcycle)」のほうが一般的に知られています。

PDCAサイクルは、生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法として、第二次世界大戦後、エドワーズ・デミング博士らによって提唱されました。

多くの日本の製造業で採用された影響で、PDCAは一般的になりましたが、実は、デミング博士は後に、入念な評価を行う必要性を強調して「Check(評価)」を「Study(研究)」に置き換え、「PDSAサイクル」と称したのです。

そこで、本書ではPDSAを採用しています。

PDSAを本書の言葉に置き換えると、次のように定義できます。

Plan(計画):「目的」のある「目標」を掲げ、「戦略」「戦術」を描くことDo(実行):「戦略」「戦術」に沿って、「行動」することStudy(研究):「行動」の結果とその要因を分析することAct(改善):「戦略」「戦術」を見直して、再び「行動」することでは、PDSAの各ステップでの重要なポイントを確認していきましょう。

まず、「Plan(計画)」で重要なポイントは、「大きく計画する」ことです。

これについては、「目標達成シナリオシート」「目標達成マンダラシート」とを活用して、とにかく大きな「目標」を掲げ、大きく「戦略」「戦術」を描きます。

次に、「Do(実行)」で重要なポイントは、「早く小さく始める」ことです。

どれだけ計画が素晴らしくても、それが実行されなければ意味がありません。

また、計画通りに事が進むかどうかは、実行しない限り誰にも分からないことです。

そこで、計画を立てたら、「早く小さく始める」ことが大切です。

コンサルタント時代に、クライアントの営業工数分析に関わったことがあります。

これは、ハイパフォーマー(高業績者)とローパフォーマー(低業績者)の「時間の使い方」の違いを分析する試みだったのですが、この「早く小さく始める」という実行スタイルは、ハイパフォーマーに共通して見られるものでした。

また、ローパフォーマーほど、月末や期末に急激に仕事量を増やす傾向があり、ハイパフォーマーは常に一定のペースでPDSAし続けている傾向にありました。

「Study(研究)」で重要なポイントは、成功体験・失敗体験の両方から学ぶことです。

デミング博士は、「評価」よりさらに深く「研究」することが必要だと考え、「Check(評価)」ではなく、「Study(研究)」に置き換えました。

失敗した場合は「なぜ失敗したのか」を研究し、同じ失敗を繰り返さないようにすることが重要です。

また、成功した場合は「なぜ成功したのか」を研究し、同じ成功を再現し続けるために必要なことを明確にしておきます。

その上で、最後の「Act(改善)」に進みます。

「Act(改善)」の重要なポイントは、目的意識を持って、「行動」を「習慣化」させていくことです。

「Do(実行)」の段階では「まずやってみる」というレベルでも構わないのですが、「Act(改善)」の段階ではただ実行するだけでなく、目的意識を持ち、それを「習慣化」させていく意識を持つことが大切です。

プロ野球の世界でも、目的意識と「習慣化」の重要性がよく取り上げられます。

昔話になってしまいますが、ここは小学生時代の私のヒーロー掛布雅之さんを例に挙げたいと思います。

現役時代の掛布さんは、徹底した素振り練習によって、阪神タイガースの4番、そしてミスタータイガースと呼ばれるまでの打者に上り詰めたことで有名です。

かつて、インタビューでもこのようにコメントしています。

「バッティングマシーンは同じリズムで投げてくるから、同じように打とうとする。

ところがピッチャーは微妙にバッターのタイミングを狂わせながら、カーブやスライダー、あるいはフォークボールやカットボールを投げてくる。

そういうボールを自分が主導権を握って打ちたいのであれば、どんなボールにでも対応できるスイングを身につけなければならない。

それはマシーンではできないんです。

素振りじゃなきゃ身につけられない」現役当時、掛布さんは、毎日500スイングの素振りを欠かすことはなかったそうです。

ただ、その回数については、他のプロ野球選手と比べて特段多かったわけではありません。

掛布さんと他の選手との違いは、その「意識」にありました。

掛布さんは、素振りを行う際、「投手は誰で、どんな球種で、スピードはどれくらいか」を1回1回意識しながら、素振りを繰り返したそうです。

結果を出そうとするあまり、ただ一生懸命「Do(実行)」することだけを考えてしまうことがありますが、それだけが重要な要素ではありません。

「量」をこなすことはもちろん大切ですが、それ以上に1回1回の「質」を高めることが、時間の投資という観点では大切です。

1つ1つ丁寧に意識と集中力を高めて、「Do(実行)」することで、「Study(研究)」と「Act(改善)」がしやすくなり、「習慣化」もしやすくなるのです。

日本の武道や茶道の世界には、「守破離」という言葉があります。

「守」:既存の型を「守」り、修練する「破」:既存の型を「破」り、改良・改善を加える「離」:既存の型から「離」れ、独自の新しいメソッドを開発する「Act(改善)」は、まさに「守破離」の「離」を行うことです。

「Do(実行)」と「Study(研究)」を繰り返し、自分に合った方法を見つけ、それを「習慣化」させていきましょう。

尚、これらのPDSAサイクルを3ヶ月間、自分史上最速で回し続けても結果が出ないときには、「Plan(計画)」自体を見直し、改善することも考えてください。

逆に言えば、PDSAサイクルの各ステップの重要なポイントを押さえた上で、PDSAサイクルを高速回転させることができれば、たった3ヶ月でも必ず結果が出せることをお約束します。

 

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