01マニュアル改訂後にチェックすべきこと
マニュアルは一度作成して終わりではありません。重要なのは、日々の業務で必要なシーンで使われているかということだと何度も述べてきました。
では、具体的にどのような場面でチェックをすればよいのでしょうか。モノを作っている作業現場向けのマニュアルであれば、実際にマニュアルを使用してモノを作れるかを確認するとよいでしょう。
事務作業であれば、必要なシーンでアウトプットが出せるかを確認すればよいでしょう。
いずれにしても、作成者は作成したことに満足することなく、使用されているか、また、間違い・不具合が発生していないかなどをチェックする必要があります。
しかしながら、自分自身が作成したものであるため、主観的になりやすく、使い手が間違っていると認識されがちです。したがって、客観的な立場でチェックするよう心掛けるとよいでしょう。
一般的には、マニュアルを作成するまでの作業に注力されがちですが、作成後も重要であることを理解してください。
そして、マニュアル作成・見直し時には最初から力を入れすぎず、実際に使ってみて(使わせてみて)、確認・チェックの繰り返しのサイクルを回しながら、徐々に完成度を上げていくことをオススメします。
マニュアルを作るということは、手順・やり方が見える化されることで、基準ができることになります。
基準があれば、ものさしができるので、自分自身の良し悪しが把握できたり、正確性が上がったりします。正確性が上がるとやがて能率も上昇していきます。このように、マニュアル作成は、仕事そのものの効率化、あるいは改善にもつながるのです。

※マニュアル改訂のチェックリスト作成
02マニュアルの限界を知る
皆さんがマニュアルを作成するとき、その対象となる業務を洗い出すことから始めることになりますが、その際に「発生していない業務」「発生頻度の低い業務」は抜け落ちてしまう可能性があり、この点は業務マニュアルの限界と言えるでしょう。
つまり、事前に設定されていない業務をマニュアル化することはできない、ということです。
一方で、実際の業務が必要以上に煩雑で非論理的な場合、マニュアル化してもユーザーが混乱してしまうということもあります。
毎回業務手順が異なり、それが問題にならないようでは、手元のマニュアルを見ても業務を再現することはできません。
この場合は、業務フローをマニュアル化に適した形に改善することが求められます。マニュアル化できない職人芸に依存しているようでは、業務フローとして問題があることが多いのです。


03マニュアルにない業務への対応
「マニュアル人間」という言葉があります。
マニュアル通りにしか行動・判断できない人間、機械化された意志のない人間といった意味で、批判的に使われることの多い言葉です。
マニュアル化に限界がある以上、マニュアルにない業務が発生したときにどう対処するかは重要ですが、普段優秀なマニュアルに頼りきって業務にあたっていると、想像力や当事者意識が乏しくなってしまう場合があります。
第2章で述べたように「例外処理」をマニュアル内で述べることはできますが、マニュアルに作成された背景や作業項目として表記できないノウハウ、作り手の思いや判断基準などは書かれていません。
ところが、マニュアルに書いていない業務にあたるには、この「マニュアルに記載されていない事項」が重要になります。
それは、その企業の判断ルールであったり、慣習であったり、効率的な業務のパターンであったりします。
マニュアルを生み出した人は、こういった事項を理解・体得したうえで作成しています。
利用する側はマニュアルに沿った日常業務の中で、「自分はどう考えるか」「それは本当に正しいのか」「自分はこの仕事をどうしたいのか」「なぜそういった手順になったのか」を考えていきながら、このマニュアルの背景を理解していかなくてはなりません。
業務を通じたマニュアルの理解のほかに、企業の価値観や論理、最低限守らなくてはならない法令やルールなどを明文化し、教育していくことで「ベクトルのあった暗黙知」を浸透させていくことは可能です。
マニュアルを生み出せる人材になることが、マニュアルにない業務が発生した際の適切な対応につながっていきます。

【著者プロフィール】株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC〔ジェーマック〕)戦略、生産、研究開発、営業、新事業化、自治体などの革新パートナーとして60年以上の歴史をもつ日本を代表する総合コンサルティングファーム。
「現場主義」「成果主義」に代表されるJMACのコンサルティングスタイルは、日本のみならず海外のクライアントからも高く支持されており、特に一人ひとりのコンサルタントによる顧客現場での革新実践力には定評がある。
【執筆者プロフィール】小野甫(おのはじめ)日本能率協会コンサルティング入社後、生産領域を中心に、複数プロジェクトに参画。
これまで、印刷、食品製造、自動車部品製造、製薬などの業種を中心に活動。
調達のコストダウンを中心に、調達組織全体の改革活動から製造現場・ホワイトカラー業務の生産性向上まで幅広く活動を行っている。
山田康介(やまだこうすけ)日本能率協会コンサルティング入社後、生産領域を中心に、複数プロジェクトに参画。
これまで、印刷、住宅部材、化学などの業種を中心に様々な業種を経験。
製造現場のコストダウンを中心に、現場を基軸としたQCD革新や中小企業の経営改革に至るまで幅広く活動している。
大森靖之(おおもりやすゆき)日本能率協会コンサルティング入社後、新工場建設、生産性向上、在庫削減など複数のプロジェクトに参画し、生産領域を中心にコンサルティングを行っている。
生産領域以外には営業マネジメント力強化やホワイトカラー業務改善の支援も行っている。
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