15つのステージで理想の組織をつくる「ビジョン実現型人事評価制度」「賃金」で組織を崩壊させないために必要なリーダーの力①
「」これから、世の中の中小企業が成長・発展するために、もっとも重要なポイントをお話ししますので、しっかり理解して実践に結びつけてください。
中小企業の成長がストップしたり、売上は拡大できても生産性はあがらなかったりする根本的な要因を明らかにします。
第4章までで、給与、賞与の仕組みに関して、設計、導入の方法とそれぞれポイントを解説してきました。
そして最後に〝「賃金制度」の設計にはまだ手をつけないでほしい〟とお伝えしました。
ここまで読み進めた方は、その理由はご理解いただいているでしょう。
しかし、「はじめに」でまずご紹介した中小企業の生産性を向上させ、そこで働いている人たちの年収アップを実現するために必要な考え方ですので、再度確認しておきます。
実際、私自身もコンサルタントとして駆け出しのころは、「賃金制度設計のみ」あるいは「賃金制度を中核とした人事制度」を仕事で受けたこともあります。
ところが、そうした会社は100%失敗に終わったのです。
第1章でも私の苦い体験として紹介しましたが、「賃金制度」ができても導入すらできない、導入しても評価を連動させて給与や賞与を決めることができず、逆に不満が増大する。
その結果、あいかわらず社長が一人で決めている、といった状態でした。
実は、こうした会社は評価や賃金だけでなく、なんでも社長が一人で決めているという経営スタイルだったのです。
その原因は、リーダーにありました。
しかし、それをつくったのは社長自身だったのです。
くわしく説明しましょう。
②中小企業のリーダーに欠けている2つの力決してリーダーが悪い、能力が低いと言っているのではありません。
そして、一般的によく問題視されている、リーダーの評価スキルが低いということだけでもありません。
もっと根深い、中小企業ならではの組織の重要な課題を解決しなければ、賃金の改革など到底無理だったのです。
その課題とは、中小企業には中間管理職が存在しないということです。
どういうことか、もう少しくわしく説明しましょう。
もちろん、社員が20~50人の中小企業でも部長や課長、あるいは常務、取締役といった役職をもったリーダーは存在します。
ところが、こうした人たちには、管理職として重要な2つの力についての認識が欠けていたのです。
それは「部門をマネジメントする力」「部下を育成する力」の2つです。
私はこの問題に気づくのに、10年以上の歳月を要しました。
③なぜ、中小企業には中間管理職が存在しないのか「経験が長い人」「部門で求められるスキル(営業力や現場での技術など)が秀でた人」「まわりとのコミュニケーション力がある人」「まわりから頼りにされている人」「社長の親族」これが中小企業で求められ、重用視される幹部・リーダー像の実態です。
つまり、自身がプレイヤーとして優秀であり、上司や部下とうまくやれる人が「いい中間管理職」なのであって、部下のマネジメント・育成を求められてこなかったのです。
これは、決して本人に非があるわけではありません。
社長もまわりもこの状況をよしとし、ずっとこうしたリーダーの存在を容認、いや黙認してきたのです。
もっと正確に言うと、組織の成長のためにはリーダーの育成が課題だということは、誰しもわかってはいるが手がつけられていない、結果として後まわしとなっていたのです。
こんな状態の中で評価をリーダーにまかせて面談をさせ、その結果で賃金を決めても組織の混乱を招くだけだったのです。
④組織を成長に導く「人事評価制度」のつくり方この中小企業のリーダーに欠けている2つの力を身につけさせることができるのが、本書でご紹介している「ビジョン実現型人事評価制度」です。
早速、その手順からご紹介しましょう。
ステージ1「経営計画」を策定するステージ2「評価制度」を構築するステージ3「評価制度」を運用するステージ4「経営計画」を運用するステージ5「賃金制度」を設計する全体を連動させて運用するこれが理想の「人事評価制度」づくりの5つのステージです。
まず「経営計画」で、「経営理念」や将来の「ビジョン」を示し、実現に向けた「事業計画」や「戦略」を明確にします。
これにそって社員一人ひとりの役割を落とし込んだ「評価基準」を作成し、運用することで会社が求める人材づくりを行なうことができます。
また、リーダーが中心となって目標達成に向けた戦略を推進することで、会社の戦略推進をまかせられるリーダーが育ちます。
その成果と成長の結果を賃金に結びつけるのです。
この一連の仕組みが、「ビジョン実現型人事評価制度」です。
私は、設計や導入時のコンサルティングだけではなく、運用面でも現場のリーダーや社員たちとひざをつき合わせて、本音で議論しながら一緒に仕組みづくりを行なってきました。
もちろん、「会社をよくしたい」というベクトルはみんな共通です。
こうした実践と現場からのフィードバックにもとづく改善を数えきれないくらい行ない、「ビジョン実現型人事評価制度」は、徐々にブラッシュアップされていきました。
その結果、現段階の「ビジョン実現型人事評価制度」は、もっとも人材の成長や会社の業績アップにつながりやすい仕組みに仕上がっています。
なぜ「ビジョン実現型人事評価制度」が人材の成長や会社の業績アップにつながりやすいかというと、この仕組みを通じて、リーダーが「部門マネジメント」と「部下指導育成」を実践しながら成長するからです。
つまり、中小企業の成長の阻害要因となるリーダーに不足する2つの力を「ビジョン実現型人事評価制度」を通じて身につけてもらうことができるのです。
「部門マネジメント」と「部下指導育成」は、いずれも仕組みの中にその手順と実践のためのツールが組み込まれているため、リーダーに事前に専門的な教育機関の研修を受けさせる必要はありません。
これからお伝えする仕組みの全体像を、細部まで実践し、徹底して継続できれば、成果につながることは私が保証します。
それだけ自信をもって中小企業の社長にお勧めできる仕組みです。
2ステージ1「経営計画」を作成する社員全員のベクトルを一致させる「経営計画」とするには
①「経営計画」の実現に必要な10の要素ここで紹介する「経営計画」は、490社を超える中小企業の現場で19年以上かけて実践しながらたどりついた完成形です。
人材の育成を通じた組織づくりに必要な要素を盛り込んだうえで、社員に実践してもらい、成果に結びつけやすい構成になっています。
具体的には「ビジョン実現シート」というフォームにそって作成していきます。
全体像のイメージを次に掲載する「ビジョン実現シート」でつかんでください。
くわしいことはこの後解説します。
【戦略】については、巻頭で紹介したダウンロードファイルも参照してください(こちらを参照)。
なお、「経営計画」の考え方と作成手順は、拙著『小さな会社は「経営計画」で人を育てなさい!』(あさ出版)でくわしく解説していますので、作成の手引きにご活用ください。
「ビジョン実現シート」は次の3つのブロック、10の項目からできています。
【理念】ブロック1経営理念2基本方針3行動理念4人事理念【目標】ブロック5ビジョン65カ年事業計画7戦略【人財育成目標】のブロック8現状の人材レベル95年後の社員人材像10ギャップを埋めるために必要な課題このフォームで「経営計画」を推進することで社員の理解を進め、実践と成果につながりやすくなりますので、ぜひ作成してください。
②「」それでは早速、「理念」のブロックで作成する4つの項目とそれぞれの位置づけ、考え方をご紹介しましょう。
1経営理念会社はなんのために存在するのか、自社の存在意義、最終目的地・ゴールを定めたもの。
2基本方針会社が「経営理念」に向かって成長していくためにはどんな考え方、姿勢で事業を行なえばよいのか。
「経営理念」を実現したとき、またその過程で会社がまわりにどんな影響を与え、どのように貢献していくのかを明確にしたもの。
3行動理念「基本方針」にそって事業を推進し、「経営理念」に向かっていくために社員に求められる行動・考え方を示したもの。
4人事理念会社の人材に対する根本的な考え方、育成するためのかかわり方、スタンスを明確にしたもの。
この4つの要素の考え方の関係性を図にすると、次の図51のようになります。
よく「経営理念」を長い文章や複数の項目で表現したものも見かけます。
しかし、「経営理念」は自社が行き着くべき最終ゴール、存在価値ですから本来はひとつ、一カ所しかないはずです。
ですから「経営理念」はできるだけシンプルにひとつ、一文とすることをお勧めします。
ただし、ほかにも会社の根幹となる考え方を3つ「理念」として定めます。
「基本方針」「行動理念」「人事理念」です。
「経営理念」で会社はなんのために存在し、どこを目指すのかをはっきり示します。
しかし、どんな姿勢や考え方、手段を使ってでもそこに行き着けばよいのかというと、そんなことは許されません。
この「経営理念」実現までの指標となる考え方を示したのが「基本方針」です。
これを、「顧客」、「商品」、「社員」、「自社」、「関係先」、「地域・社会」などに対して、それぞれどんな姿勢、考え方でかかわり、どのような影響を与え貢献していくのかを文章化します。
また、「経営理念」は社員全員で目指し達成するものです。
ということは、社員全員がつねに「経営理念」にそって行動できるようになれば、その実現性は確実に高まります。
そのためには、社員それぞれが担当する仕事上でどのような姿勢、考え方で業務に当たればよいのかわかるようにするとよいでしょう。
この役割を担うのが「行動理念」です。
そして、「理念」の実現のためになくてはならない人材に対する考え方が「人事理念」です。
このように、「理念」を4項目とし、それぞれの位置づけと役割を明確にすることによって「経営理念」に対する社員全員の理解度が深まり、浸透させやすくなるのです。
「人事理念」をもとに社員を育成し、全社員が「行動理念」にそって行動できるようになると、会社が「基本方針」どおりに動いていることになり、どんどん「経営理念」に向かって会社が進んでいくことができます。
また、顧客や仕入先、協業先、金融機関や業界にかかわる人、地域住民など、自社と接点をもつ社外の人たちと理念を共有することも重要です。
こうした人たちに対しても4つの視点で「理念」を打ち出すことで、会社の考え方や方針を理解してもらい、共感を得、協力や支援につなげることができます。
こうして会社にかかわるすべての人たちを巻き込むことで、社内外への会社の影響力は高まります。
その結果、「目標」や「理念」に向かう推進力は確実に強くなり、会社は発展していくのです。
私は、その過程を5年、10年、15年とコンサルティングでかかわりながら、多くの中小企業で体験してきました。
その様を見ていると、まさに生き物のように会社が躍動しながら進化していくのが体感できます。
このように、自ら進化、発展していく理想の組織を実現できるのが、「経営計画」を根幹とした「ビジョン実現型人事評価制度」です。
③3つの要素で「目標」を定め、5年後のあるべき姿とプロセスを明確
「理念」ができたら「理念」に到達するまでの通過点「ビジョン」を掲げ、そのプロセスを「5カ年事業計画」として数値化します。
そして、これを達成するための手段、手法を「戦略」として明確にします。
「ビジョン」、「5カ年事業計画」、「戦略」の3つを作成するのが、「目標」のブロックです。
5ビジョン5~10年後の会社のあるべき姿を明確にしたもの。
定量的なビジョンと定性的なビジョンがあるほうがわかりやすい。
とくに、定性ビジョンは社員がワクワク感をもって、社長と全社員で目指したいと実感できるものが理想。
65カ年事業計画5~10年間の数値目標(10年間だと10カ年事業計画)を明確にする。
年度ごとの損益計算書を作成する。
さらにその中で、売上については内訳を明確にすることで、どうやって売上目標を達成するのかその手段を示す。
7戦略「5カ年事業計画」を実現するための打ち手、手段、手法を具体化したもの。
この3つの中で、中小企業が苦手としているのが「戦略」です。
「戦略」は、次の項で説明する「評価基準」に落とし込みます。
これにそって社員が行動することで「5カ年事業計画」を達成できる人材に社員を育てることができます。
また、本章5項で解説する「アクションプラン」を通じて具体的な推進計画として実践していくことで、「5カ年事業計画」が達成できるのです。
このように「戦略」は、「経営計画」の中ではもっとも業績への影響力が大きいにもかかわらず、ここに力を入れている中小企業は少ないのが現状です。
実はこれが、中小企業の「稼ぐ力」すなわち生産性に密接にかかわってきます。
「戦略」は、「ビジョン」の実現に必要な業績目標、「5カ年事業計画」を達成するための取り組み、その手段や打ち手を明確にしたものです。
目標数値だけを示して「戦略」が明示されていない会社は、達成に向けた取り組みと手段、打ち手は社員まかせということになってしまいます。
こうした会社では目標の達成度がバラついてしまいますし、リーダーや営業マンの力量次第ということになってしまうでしょう。
「はじめに」でご紹介しましたが、中小企業の生産性は大企業に対して約42%です。
「目標」=「ゴール」までのプロセスを明確にし、達成に向けてPDCAをまわしながら組織を動かしていく仕組みがないことが、「稼ぐ力」を高められない大きな要因なのです。
「経営計画」を通じた「戦略」の推進は間違いなく、あなたの会社の「稼ぐ力」を高めます。
「戦略」についても、そのまま使える戦略事例、「アクションプラン」の推進手順やツールなどを『小さな会社は「経営計画」で人を育てなさい!』(あさ出版)でくわしく解説していますので、ぜひご活用ください。
④「」会社の「ビジョン」を実現するためには社員全員が成長しなければなりません。
そのためにはどんな人材に成長する必要があるのかを明確にすることが大切です。
これを「人材育成目標」として「経営計画」に盛り込み、明示します。
方法としては「現状の人材レベル」を分析したうえで「5年後の社員人材像」を定めます。
そして、そこに到達するための取り組みを「ギャップを埋めるために必要な課題」として明示します。
この3つの要素で社員に現状と成長目標を把握してもらい、成長の必要性も実感してもらうのです。
8現状の人材レベル社員の現状、「強み・長所」「弱み・短所・課題」を洗い出す。
「実務面」と「意識面」「強み」と「課題」として次のような表を作成し、社員に意識づけをうながす。
95年後の社員人材像「5カ年事業計画」を達成し、「ビジョン」に到達するためには、どういう人材に成長してもらう必要があるのかを明確にしたもの。
「全社員」と「リーダー」それぞれに求めるレベルを設定する。
「全社員」は7~10項目、「リーダー」に対しては5項目程度でまとめる。
10ギャップを埋めるために必要な課題「現状の人材レベル」と「5年後の社員人材像」の間にある差を埋めるためには、会社としてどんなことに取り組んでいく必要があるのかを明確にしたもの。
この「人材育成目標」は、一般的な「経営計画」には盛り込まれていない場合が多いです。
しかし、繰り返しますが、「ビジョン」を実現するためには人材の成長が不可欠です。
ここを明確にしていないと、成長に向けた具体的な取り組みは個人まかせ、あるいは上司のレベルや考え方によってまちまちなってしまいます。
結果として、会社が必要とする人材レベルへの成長スピードを鈍化させてしまいます。
具体的な「人材育成目標」を次に作成する「評価基準」に落とし込み、人事評価制度を運用することで全社員を理想の人材に導いていけるのです。
このように「人材育成目標」は非常に重要な要素ですので、必ず「経営計画」に盛り込んでください。
3ステージ2「評価制度」をつくる社員を「理想の人材」に育てる「評価制度」のつくり方
「経営計画」で掲げた「5年後の社員人材像」に向かって社員が成長していくために必要なのが「評価制度」です。
「評価制度」の目的は、会社の理念の実現に向けた目標を達成できる人材づくりです。
とくに、先ほど中小企業の課題としてあげた、リーダーに欠けている2つの力(こちらを参照)のうちのひとつ「部下を育成する力」を身につけることができます。
中小企業のリーダーは「評価制度」とステージ4で解説する「アクションプラン」を通じて、リーダーとして必要な実力や〝部下指導力〟を十分身につけることができます。
社外の研修会社や公的団体、銀行などが提供しているリーダー向けの研修や教育を受ける必要はありません。
これは私自身が約19年間、中小企業のリーダーと向きあってきた実体験から断言できます。
ただ、そのためには、まずステージ1で作成した「経営計画」をもとに、理想の人材の育成に必要な要素を盛り込んだ「評価基準」とすることが重要です。
「経営計画」を「評価基準」に落とし込むまず、「経営計画」の推進を実現できる人材づくりのために、「経営計画」から次の4つの要素を「評価基準」に落とし込みます。
・5カ年事業計画・戦略・ギャップを埋めるために必要な課題・行動理念ひとつずつ説明していきましょう。
(1)「5カ年事業計画」でつねに社員が目標を意識する「5カ年事業計画」の業績数値目標から会社の目標達成のために必要な項目を評価基準の「業績評価項目」に設定します。
全社員が目指すべき数値目標を明確にして、いつも意識しながら仕事に取り組むことによって、個人の目標達成から会社の目標達成に結びつけていくためです。
具体的には、「売上高」「粗利益」「経常利益」、さらにはそれを達成するために必要な「新規開拓数」や「顧客単価」など、数値として目指すべき目標はすべてこの「業績評価項目」に盛り込みます。
業種や職種によっても異なりますので、「評価基準」は職種別に作成します。
各職種、部門別の「業績評価項目」の事例を次にご紹介しておきますので参考にしてください。
【営業職(部門)の「業績評価項目」】「売上高」「売上高前年比伸び率」「粗利益(率)」「新規開拓件数」「顧客単価」「契約件数」「契約決定率」「企画提案件数」「訪問件数」「経費」「クレーム件数」など。
【販売職(部門)の「業績評価項目」】「売上高」「売上高前年比伸び率」「粗利益(率)」「新規来店客数」「顧客単価」「商品購入点数」「人件費比率」「経費」「クレーム件数」「在庫回転率」など。
【製造職(部門)の「業績評価項目」】「生産高」「原価削減率(額)」「生産高/一人当たり」「リードタイム」「歩留り」「設備稼働率」「ヒヤリハット提案件数」「改善提案件数」「製品クレーム件数」など。
【企画職(部門)の「業績評価項目」】
「開発商品売上高(販売個数)」「在庫回転率(期間)」「販促費用対効果」「企画・商品提案件数」など。
【総務・人事職(部門)の「業績評価項目」】「研修実施回数」「マニュアル改善件数」「採用者数」「退職者数(率)」「改善提案件数」など。
【経理職(部門)の「業績評価項目」】「経費削減額(率)」「月次決算完了日」「改善提案件数」など。
このように、会社の目標達成に貢献する数値項目はすべて「業績評価項目」として評価基準に盛り込みます。
また、こうした数値目標を全社、部門(店舗・営業所など)、個人の3つの視点で社員の業績評価項目を作成します。
こうすることで、全社員が会社や部門の業績をつねに意識しながら、チームワークを駆使して行動する組織をつくることができるのです。
(2)「戦略」を実行し、成果を出せる人材をつくる次に、「戦略」からこれを実行するために社員に求める行動、役割に落とし込みます。
たとえば、ある会社が顧客からの受注をアップするために、「営業プロセスの標準化」に取り組むという「戦略」を推進しているとしましょう。
この場合、どのように評価基準をつくればよいでしょうか、実際に評価基準を作成してみましょう。
まず、評価項目を「営業活動」とし、そのために求められる役割を社員のレベルごとに求めていきます。
たとえば、こんな具合です。
【入社して1年以内の社員】営業プロセスを理解し、上司の指示どおりに行動することができていた。
【一人前の営業社員】営業プロセスにそって活動を行ない、決められたルールどおりに進捗状況を報告できた。
【中堅営業社員】「一人前」の仕事内容が行なえていた。
営業プロセスを通じて得た成功・失敗体験を部署全体で共有していた。
後輩に対してアドバイスができていた。
【リーダー営業社員】「中堅社員」の仕事内容が行なえていた。
部下と定期的にミーティングの場をもち、指導を行なっていた。
【マネジメント営業社員】統括する部門(部署・店舗)の部下全員が営業プロセスにそって行動することができていた。
部下それぞれの得意、不得意を把握し、指導、改善させることで部門全体の成果を高めていた。
こうして会社が実行すべき「戦略」を具体的な行動レベルに落とし込み、評価基準で社員全員に示します。
これらを「成果評価項目」として評価基準にまとめます。
(3)「ギャップを埋めるために必要な課題」で理想の人材に必要な能力を身につける「経営計画」で「5年後の社員人材像」が明確になりました。
この理想の人材にステップアップしてもらうために必要な要素が「ギャップを埋めるために必要な課題」です。
これらを解決できるように、必要なスキルや能力を「能力評価項目」として「評価基準」に盛り込み、成長を支援していきます。
このために必要な評価項目は、「報告・連絡・相談」や「改善・提案力」「スケジュール管理」「部下育成指導力」などが一般的です。
どんな会社でも必要となる場合が多いですが、それぞれの会社の現状に応じて前項と同様、社員の階層ごとに役割とレベルをわかりやすく表現しましょう。
(4)「行動理念」を「評価基準」に落とし込み、会社の考え方を全社員で実践する「行動理念」に直結する仕事上での役割、社員に求める行動を「評価基準」に定めます。
「お客様に感動をお届けするために技術とサービスをみがき続けます」という行動理念に対して、どのような「評価基準」を作成したらよいのか、実際に考えてみましょう。
たとえば、「技術力を身につけるために、自己投資を行ない、具体的な知識やスキルの習得に取り組んでいた」と定めた場合、〝どんな自己投資を行なったか〟〝身につけた、あるいは取り組んだ具体的な知識やスキルはなにか〟という点が評価の着眼点となります。
では、「チームワークを重視し、組織力で最大の成果を目指します」という行動理念からは、どんな評価基準が考えられるでしょうか。
「部門のメンバーの状況を把握するように努め、悩みや課題を抱えた人がいた場合は声をかけ、サポートしていた」としたなら、〝まわりをいつも気遣っていたか〟〝周囲を気にして声をかけていたか〟〝他人のサポート、支援はどんなことを行なったか〟などが評価の判断の根拠となるでしょう。
こうして、「行動理念」に直結する行動を「情意評価項目」として評価基準を作成します。
「行動理念」は「経営理念」を実現するために全社員に実践してもらわなければならない重要な視点です。
自社の「基本方針」の実行につながっているのかを、「評価制度」を運用しながら確認し、内容を改善、成果を高めていきましょう。
4ステージ3「評価制度」を運用する部下育成ができるリーダーをつくる運用の5ステップ
「評価制度」運用の5ステップ評価者は「評価制度」の運用を通じてリーダーとして重要な能力、部下育成指導力を身につけることができます。
いいかえると「安心して評価の運用をまかせることができるリーダー」に育つことで「部下育成をまかせられるリーダー」となるのです。
そのためには〝「評価制度」運用の5ステップ〟を通じて、社員育成のPDCAサイクルをまわしていきます。
最終的には、リーダーが主体的にこのPDCAをまわしていくことで自分のチームの目標達成に向けてメンバー全員を導いていける状態を目指します。
次からそれぞれのステップでリーダーの育成につながるポイントを明記しています。
このプロセスも約19年間中小企業の現場で実践し、試行錯誤を繰り返しながら完成した、もっとも成果につながりやすい型となっていますので、必ずこれにそって実践してください。
意外と陥りがちな評価の間違いに気づくはずです。
[ステップ1]評価の実施評価者(リーダー)が評価基準にもとづき、被評価者(部下)の評価を行ないます。
被評価者も自分自身の行動を振り返り、自己評価を行ないます。
■ポイント評価は必ず、「本人」「直属の上司」「その上の上司」の3者(以上)で行なう評価者は、それぞれ別シートで評価を実施する。
上司、自己評価は必ず判断理由を具体的に記入する。
行動評価は「A、B、C」の3段階で判断する。
業績評価は「SS、S、A、B、C、D、E」の7段階で判断する。
[ステップ2]育成会議[ステップ1]で行なった評価の評価点を集計し、評価結果も出して3者分を一枚のシートにまとめます。
これをもとに評価者同士で評価結果を議論したうえで相違点を統一し、評価を決定します。
また、評価結果をもとに、部下の次の評価までの間にチャレンジしてもらう目標を共有します。
■ポイント「直属の上司」「その上の上司」「コーディネーター(社長、人事役員など)」の3者(以上)ですり合わせを行なう。
「コーディネーター」が主導し上司二人のバラツキをそれぞれの判断理由をもとに議論したうえで統一し、評価を決定する。
次のステップ、育成面談で本人に伝え、課題を成長のためにチャレンジしてもらう課題を上司二人で共有する。
[ステップ3]育成面談評価結果を伝え、次の成長に向けた目標をリーダーと本人で共有します。
■ポイント必ず事前に「育成面談シート」を作成し、面談ストーリーを文章化、明確にしたうえで実施する。
上司二人が同席したうえで、直属の上司がメインで行なう。
成長目標を3つ決め、三人で共有する。
[ステップ4]成長目標設定「チャレンジシート」を使って、本人がステップ3で決めた目標をもとにそのレベルとプロセスを決め、記入します。
直属の上司が確認し、アドバイスを行ない、必要があれば修正します。
■ポイント目標項目は3つに絞る。
目標をどこまでやるのか、ゴールを明確に設定する。
実行手順を具体的に手順化し、明記する。
いつまでにどういうプロセスで実行するのかスケジュールを明確にする[ステップ5]チャレンジ面談ステップ4で決めたプロセスの進捗状況、達成度を確認し課題を共有。
アドバイスを行ないます。
■ポイント直属の上司が主導し、実践する。
毎月必ず実施する。
面談時間を10分に決める。
毎月の「チャレンジシート」提出と面談のスケジュールをつくり、面談実施日時も事前に決める。
この5つのステップを自らまわすことができるようになれば、リーダーとして必要な部下育成指導力を身につけたといえます。
なぜなら、5ステップを推進できるということは部下の仕事ぶりをしっかり観察し、適正な評価が行なえ、部下のやる気を引き出す面談ができて、部下のレベルに応じた成長目標が設定でき、支援しながら達成に導けるリーダーになっているということだからです。
部下の育成においては完璧なリーダーだと思いませんか?なお、ステージ2と3の「評価制度」の作成と運用については、拙著『小さな会社の人を育てる「人事評価制度」のつくり方』(あさ出版)で、そのまま活用できるツールなどもご紹介しながらくわしく解説しています。
5ステージ4「経営計画」はアクションプランで推進する部門マネジメントができるリーダーをつくるアクションプラン
会議「経営計画」を実現するプロセスは「戦略」として「経営計画」の中で明確にされています。
その運用をリーダーにまかせることで、戦略推進・進捗管理を行ないながら目標達成に向けた部門マネジメントができるリーダーを育てることができます。
では、具体的にどのように運用すれば、そのような理想のリーダーが育つのでしょうか。
たとえば、「お客様との関係性を強化することで圧倒的なファンを育成する」という「戦略」を立案したとしましょう。
しかし、「戦略」を明示しただけで、あとはリーダーまかせという中小企業が多いのも事実です。
大変残念なことですが、それでは実践までは行きつきません。
成果が出ることもないでしょう。
なぜなら中小企業のリーダーは「戦略」を実践に結びつける手法や管理方法を学んだことがないため、どこから手をつけたらよいのかわからないのです。
これを解決するのが「経営計画」の運用、「アクションプラン」の推進です。
このプロセスどおりに実践することで、「戦略」を推進するときのポイントや手順とその管理方法を身につけてもらうことができます。
先ほどの「お客さまとの関係性を強化することで圧倒的なファンを育成する」という「戦略」に対して、具体的に「関係性の強化」のためになにを、どういう手順で、どのレベルまで実行するのか、どんな成果を得ればよいのかといった事項を具体的に決めて一覧表に明記するのです。
これらをまとめたものが次の「戦略・アクションプラン推進表」です。
「アクションプラン会議」が「戦略」を成果に導く「アクションプラン」の運用にもPDCAが必要不可欠です。
このPDCAをリーダーたちがまわせるようにするために「アクションプラン会議」という社長・リーダーが参加し、アクションプランの進捗状況を確認しながら改善を推進する会議を毎月開催します。
各アクションプラン担当者から前月の実行状況や課題を報告してもらい、参加者全員で共有したうえで推進をサポートします。
実行できているものに関しては効果検証を必ず行ない、効果を高めるための改善もみんなで意見を出しあいながら行ないます。
自らこれらを推進できるリーダーとなれば、安心して組織運営はまかせられるはずです。
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