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第5章「価値観」重視で採用しなさい

目次

「能力」で採ってはいけない

能力が高い人よりも、価値観が合う人を採用する

世間一般の会社は、「優秀な人」を採用したがりますが、私は、いくら優秀でも、「エゴが強い人」(利己的な人)は絶対に採用しません。

わが社では、社員も、パートも、「能力よりも価値観の合う人」を選んで採用します。能力や資質は、二の次です。わが社のパートが辞めないのは、「価値観が合うこと」を最優先にしているからです。

わが社の文化になじめないパートが入社すると、本人にとっても、わが社にとっても不幸です。スキルは、教育によって高めることができますが、性格だけは私の力では教育できません。

教育できたとしても、時間がかかる。中小企業のわが社に、悠長なことをしている余裕はありません。いくら頭が良くて能力が高くても、会社の考え方に従えない人は、結果として戦力になりません。能力のある社員を集めても、価値観が揃っていなければ、組織はバラバラになる。

一方で、価値観が揃っていれば、同じ優先順位で行動するため、少しくらい能力が劣っていても、組織力で勝負できる。

したがって、環境整備や社内アセスメント、バスウォッチングなど、わが社の文化を違和感なく受け入れられる人材を採用しています。

「株式会社アムズプロジェクト」の平沼正浩社長が実施している「お見合い研修」も、会社とパートの相性を見極めるしくみのひとつです。

「アムズプロジェクトでは、新人のアルバイトが入ってきたら、先輩アルバイトと新人を『お見合い』させています。要は、先輩アルバイトを新人の教育係にするんです。

そして、1週間経ったら、店長、古株、新人の3人で飲み会を開いて、お見合い研修の振り返りをしています。新人は、先輩アルバイトと終日行動をともにするので、会社や仕事に疑問があれば、お見合い期間中に解消することができます。

立場や仕事内容が違う人から教わるより、同じ現場の先輩から教わったほうがわかりやすいですし、指導を受けている間にコミュニケーションも取れるので、職場の雰囲気に馴染みやすくなります。

また、指導を任された先輩アルバイトも、『人に何かを教える』という経験を通して、自分を成長させることができます」(平沼社長)

1週間お見合いをして、双方ともに「気が合う」とわかったうえで一緒になるから(雇用契約を結べば)、離職率を低くすることができます(お見合い研修や経営計画書の徹底などの取り組みが功を奏し、数年前まで57・8%あった「アムズプロジェクト」の早期離職率は、32・5%にまで減っています)。

能力があっても、仲間と仲良くできない人には辞めてもらう

同じ能力なら、元気で明るく素直な人を採用します。また、コミュニケーション能力や協調性も大切です。武蔵野には、レクリエーション的な行事がたくさんあります。

仮に「そんなの仕事とは関係ないので参加しません」と言うパートがいたら、場をしらけさせます。私は、能力よりも、「職場の仲間と仲良くできること」を評価しています。

今から数年前、個人面談を通して、「派閥によるいじめ」が発覚しました。私はすぐに派閥のリーダーを呼んでこう言いました。「あなたには経験も能力もあるので、いなくなったら会社は困る。困るけれど、今のまま会社にいられるのはもっと困る。なぜだかわかりますか?あなたがいると、他のパートさんがやりにくさを感じるからです。

わが社では、能力があることを評価しません。あなたに人をいじめる権利はない。他のパートと仲良くできないのなら、この会社を辞めて他の会社へ行ってください」すると彼女は、「すみません、気をつけます」と私に頭を下げましたが、私は許さなかった。

「気をつけるだけではダメです。今まであなたがいじめてきた一人ひとりに謝って、その人たちから『一緒に仕事をしてもいい』という許可をもらってきなさい。みんなから承諾を得られたら、会社に残ってもいい」彼女は全員に頭を下げ、それ以降、いじめはなくなりました。

パートにも、新人採用の決定権を与える

多くの会社では、社長や上司だけが人事権(採用権)を持っていますが、わが社では、現場にも決定権を与えています。

新しいパートを採用するときは、「働きはじめて2週間以内に、職場の人たちの半数以上が『あなたと一緒に働きたくない』と言ったら、辞めていただきます」と説明しています。

「パートの50%以上の賛同を得てから採用する」のが、経営計画書に明記されたわが社のルールです。2週間というのは、法的に認められた試用期間であり、試用期間内であれば解雇予告が不要です。

会社が従業員を解雇する場合は、基本的に、「30日前に予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う」必要がありますが、試用期間中のパートには適用されません。

新しく入ってきたパートは、職場の人たちから嫌われないように言動に気をつけるので、いじめや嫌がらせが起きません。私は、男性よりも女性のほうが、相手の本質を見抜く力があると思っています。

相手(新しいパート)が猫をかぶっていたとしても、女性(古株のパート)は騙されません。ですが、わが社の男性社員は、コロッと騙される。新しく採用したパートがどういう人なのかを判断するには、同じパート仲間にヒアリングする。そのほうが、正確な評価が下せます。

「日昭工業株式会社」でも、パートに、「新規採用の決定権」を与えています。現在、日昭工業では、ベトナム人の雇用を進めていますが、久保社長は、現地(ベトナム)にパートを派遣して、パートに採用を任せています。

パートでも社員も、『やってみたい』という人に仕事を任せてみるのが、久保社長の基本的な考え方です。「『ベトナムに行って、現地で採用をしてみたい人はいない?おいしいワインも飲めるよ』と声をかけたら、手を挙げたパートがいたんです。なので、任せてみようかと。

私がベトナムに行って採用を決めてくると、パートさんは他人事と考えてしまって、新人の面倒見が悪くなることがあります。ですが、自分で選んできた人材であれば、面倒を見たくなりますよね。それが狙いです」(久保社長)

「採用」ではなく「定着」が最優先!

新しい人を採用するより、今いるパートを辞めさせないことが先決

私は「新しいパートを採用すること」より、「今いるパートを辞めさせないこと」が先決だと考えています。人が採れない時代に必要なのは、採用ではなく、定着です。「今いるメンバー」が最善だと考え、「今いるメンバー」の戦力化を図るべきです。

どれほど人を集めても、すぐに辞めるようだと、「あの会社はダメだから、やめたほうがいい」と口コミを広めることになります。多くの社長は、「今よりも優秀なパートがほしい」と考えますが、今いるパートも、「もっと良い会社で働きたい」と思っています。

でも、そうしないで残っているから、「会社にとって、今いるパートが最良のパートナー」です。だとすれば、今いるパートに感謝しなければなりません。

多くの社長や管理職は、パートに対する感謝の気持ちが希薄です。だから、「あのパートのあそこが悪い、ここが悪い」と文句ばかり言うようになる。感謝の気持ちがあれば、怒鳴ったり威張ったりしないで、パートの「良い部分」を見つけてほめることができるはずです。

会社がヒマなときに採用したパートは、辞めやすい

「会社がヒマなとき」に採用したパートと、「会社が忙しいとき」に採用したパートでは、どちらの定着率が高いと思いますか?答えは、「忙しいとき」です。

会社がヒマなときに採用したパートは、定着しにくい。なぜでしょうか。社長や幹部に時間があるので「細かいことまで教えすぎる」からです。一度にたくさんのことを教えるから、ストレスを感じて辞めてしまうのです。

反対に、忙しいときは、少しずつしか教えられないので、パートは段階的に覚えることができます。花は、水をあげすぎると根が腐る。あげないと枯れる。パートも同じです。ちょうどいいのは、「手を離して、目を離さない」ことです。

新人パートを指導する場合は、「自分が教えたいと思うことの3分の1程度」からはじめて、できるようになってから、教える量を少しずつ増やしていくのが正解です。

お世話係を導入して早期離職を防ぐ

「株式会社未来」(愛知県/山口俊晴社長)は、化粧品の企画、開発、通信販売を行う会社です。「未来」では、お客様からの問い合わせを受けるカスタマーサポートを「おもてなしスタッフ」と呼んでいます。

山口社長は、おもてなしスタッフの戦力化に向けてさまざまな取り組みをしていますが、パートの離職を防ぐポイントとして、次の2つを挙げています。

「社員とパートを同じ基準で評価すること」と「コミュニケーションの量を増やすこと」です。

「パートを社員と同等の戦力としてみなしています。社員とパートを切り分けたりせず、業務内容も、評価も、同じ基準で考えています。勤務時間帯や扶養といった条件以外に、違いはありません。社員との差をなくすことでパートもやる気を出しますし、成長も早くなると思います」(山口社長)

また、コミュニケーションの量を増やすために、2ヵ月ごとのランチ会、毎月の面談、朝礼などを実施して、会社の価値観をさまざまな場面で伝えています。

『お世話係制度』を導入してから、おもてなしスタッフの早期離職はゼロになりました。入社してから3ヵ月間は、先輩スタッフが新人パートの『お世話係』になって、仕事の進め方や会社の方針などを指導しています(月1回のランチや面談などを実施)。新人パートのさまざまな悩みや不安をお世話係が解消してくれるので、新人の定着率が劇的に向上しました」(山口社長)

「高待遇」じゃなくてもパートは集まる

求人広告のメインコピーには、自社の強みを打ち出す

「株式会社エネチタ」の後藤康之社長は、「愛知県という地域柄、トヨタ系の企業に人材が集中している」と危機感を感じています。

「トヨタに比べたら、当社の条件はどうしても見劣りします。ですから、条件以外の部分をアピールしなければなりません」(後藤社長)せっかく予算をかけてパート求人広告を出しても応募がないとしたら、その理由のひとつは、求人広告のメインコピーに、「自社の強み」が表現されていないことです。

自社の強みや魅力がどこにあるのかを確認するには、「パート」に直接聞いてみるのがいちばんです。パートに、「どうしてうちの会社を選んだのか」を聞いてみれば、「仕事が簡単そうだから」「誰にでもできると思った」「休みが取りやすい」「時給が良さそう」と、いろいろな意見が出てきます。

出てきた中でもっとも多い意見が「休みが取りやすい」なら、求人広告に、「休みが取りやすい会社です。子どもが病気になったときでも、安心して会社を休めます」と書く。すると、自社の強みや魅力が際立ちます。

普通の会社の社長は、「こういう人に来てほしい」という「社長の思い」を強調しています。ですがわが社は、実際に働いている人の「現場の実感」を表現している。だから、人が集まるのです。

「日昭工業株式会社」の久保寛一社長は、「子育て世代」の人材を確保するために、「自社の強み」を打ち出した採用をしています。

「子どもが急に体調を崩して、母親が保育園から呼び出されたとしても、普通の会社では、なかなか早退しにくいと思うんです。ですが当社では、どんなに仕事が忙しくても、『はい、行ってらっしゃい!』と送り出しています(笑)」(久保社長)

中小企業の中には、「子育てが終わった世代」を中心に採用する会社もあります。子どもが体調を崩すたびに、早退されたり、休まれたりすると仕事に差し支えるからです。ですが、久保社長の考え方は、反対です。

「子どもの具合が悪くなったら、いつでもシフトを変えられる」ことをアピールした採用をしています。その結果、働くことを躊躇していた子育て世代の戦力化に成功しています。

働く理由は「お金」だとはかぎらない

「株式会社末吉ネームプレート製作所」の沼上昌範社長は、「30代の子育て女性には、優秀な人が多い」と話しています。「私の妻が『子育てをしている30代には、優秀な人が多い』と言うんです。

『結婚して出産をすると、一度、社会から離れることになる。けれど、社会との接点を持ち続けたいと考えている人もいる。2、3時間の短い時間しか働けなくても、こうした女性を採用したら戦力になるのではないか』と……。

そこで、子育て中の女性を採用したら、実際にすごく能力が高かったんです」(沼上社長)また、沼上社長は、「女性がパートとして働く目的は、必ずしも、お金がほしいからではない」と感じています。

「あるパートに『時給を上げます』と言ったら、喜ぶどころか、『結構です』と断ってきたんです。理由を聞くと、『時給が上がると働く時間が減って、家にいる時間が増える。家にいるとお姑さんに気を遣う。それが嫌だ』と言うのです。本当に、働く理由は人それぞれだと思います。

時給では他の会社にかなわなくても、仕事の中身、休みの取りやすさ、子育て世代がともに助け合うしくみなど、当社なりの付加価値を打ち出していけば、新しい人を採用することも、今いる人に居続けてもらうこともできると思っています」(沼上社長)「ダスキンケア事業部メリーメイド小金井支店」の南聖愛も、「社会とのつながり」を求めて武蔵野に入社したひとりです。

「ずっと主婦だったので、家の中や学校など、狭い世界しか知らなかったんです。『もっと社会的につながっていたい』と思って仕事をはじめたのですが、それまで経験がなかったことにたくさん直面して、『えっ?私って、こんなに何もできないんだ』とか、『やっぱり社会って厳しいんだ』みたいなことを肌で感じました。

家の中ではたいていのことはできるし、大きな失敗もしませんが、社会に出ればそうはいかない。責任の大きさを痛感しましたね。でも、少しずつ『前の自分とは違う自分』を見つけられるようになって、『大変だけど、社会の中で責任を持てる人になりたい』と思うようになりました」(南)

「不人気業種」でもパートが集まる方法

「株式会社エヌエスケーケー」(兵庫県/玉田宗彦社長)は、au、ソフトバンクの代理店として、携帯電話キャリアショップ(auショップ3店舗、ソフトバンクショップ4店舗)を運営しています。「エヌエスケーケー」の従業員数は81名で、約4分の1がパートです。

「ソフトバンクイオンモール伊丹昆陽」は、2017年3月に新規獲得件数で日本一を獲得、また「auショップJR六甲道店」でも過去に年間日本一を達成するなど、高い実績を上げています。

携帯電話キャリアショップは、業界的に「慢性的な人手不足」と言われています。玉田社長も「意外と不人気業種なので、募集をかけても、なかなか人が集まらない」と感じています。

「スマートフォンが登場してから、募集をかけても人が集まりにくくなった印象です。とくに女性の採用が厳しいですね。スマホが多機能化しているため、『携帯電話キャリアショップの仕事は、むずかしい』『専門的な知識がないと務まらない』『知識を身につけるための時間がない』と思われているようです。

実際はそんなことはないのですが……」(玉田社長)そこで玉田社長は、従来とは違った採用方法を模索しています。「採用に関しては、2つの方法を考えています。

ひとつは、窓口と事務作業を分けた採用です。携帯ショップの業務は、店舗接客だけではありません。単純な事務作業などもあるので、スマホの知識がなくてもできる仕事はあります。

携帯ショップは、一般的に、『お客様がカウンターに座ると、目の前にいるスタッフが最初から最後まで担当してくれる』というイメージがあります。

でも、窓口の人と、事務作業をする人を別々にしてもいいと思うんです。銀行がそうですよね。銀行では、窓口でお客様の対応をする人と、後ろで事務をしている人がいます。

仕事を切り分けて採用をすれば、『携帯電話キャリアショップはむずかしい』という先入観をなくせるのではないかと考えています」(玉田社長)

ひとりのパートをオールマイティーにするのではなく、作業を分解して人を割り当てるという玉田社長の考えは正しい。武蔵野の業績がいいのも、業務を分担しているからです。

以前の経営サポート事業部は、ひとりの社員が一気通貫でお客様の担当をしていました。このとき、新規の顧客獲得数は、「月に2件」くらいでした。

ところが現在は、インターネットでお客様を集める部隊、集まったところに行く部隊、契約を取る部隊といったように、作業を分解しています。

その結果、月の新規顧客件数は「10件」に増えています。携帯電話キャリアショップの営業時間は、10時~20時が基本です。ショッピングモールにある店舗だと、21時まで営業することもあります。

二部制にするほど長くはありませんが、かといって、1日通しで働くと長い。主婦の場合、20時まで働くと晩御飯の準備ができないなど、家事をする時間がありません。

すると、主婦のパートが集まらない。ですがこのような場合も、「午前中は主婦の人にお願いして、午後からは学生に代える」など、作業を分担することで課題を解消することができます。

シニア世代を積極的に採用し、戦力化する

玉田社長が考えるもうひとつの方法は、「シニア」の登用です。「シニア世代の落ち着きや明るさは、貴重な戦力になると考えています。商店街にあるショップだと、年配のお客様が多いんです。シニア世代がこれからスマートフォンを使おうと思ったときに、『同年代が接客をしてくれたほうが安心できる』という声もあります。

携帯ショップは、基本的に扱っている商品も価格も同じで、差別化するには『人』だと思います。ですから、年配のお客様が多い店舗は、年配のスタッフで対応するのもアリだな、と考えています」(玉田社長)武蔵野には、iPadを使える70代のパートが5人います。

シニアでも十分に戦力になることを武蔵野が証明しています。最初からスマホを使える人はいません。でも、教育をすれば必ず使えるようになります。

「女性はITが苦手」「シニアはITが苦手」と決めつけないことが大切です。パートが戦力化できていないとしたら、その原因はパートにあるのではなく、社長のやり方、社長の考え方に問題があるからです。「これが正しい」という社長の思い込みは、多くの場合、間違っています。

「パートの実力では、これくらいのことしかできない」「パートだから、ここまでしかやってもらえない」という固定概念を捨てることが、パート戦力化の大切な要諦です。

 

 

小山昇(こやまのぼる)株式会社武蔵野代表取締役社長。

1948年、山梨県生まれ。

東京経済大学卒業後、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。

一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。

1989年より社長に就任し、現在に至る。

「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育て、日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞。

著書に『強い会社の教科書』『残業ゼロがすべてを解決する』(ともにダイヤモンド社)など多数ある。

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