態度スキルってなんだろう?
マンガに登場するやる気のない新入社員、大島萌さんのエピソードのように、やる気のない人のモチベーションを上げるのは大変です。
しかし、教える技術を習得すると、相手のやる気を上げることもできるのです。
この章でお伝えする最後の技術は「態度スキル」です。
態度スキルとは、運動スキルや認知スキルのように、何かができるようになるスキルではありません。
たとえば、タッチタイピング(運動スキル)ができるようになったり、エクセルの関数(認知スキル)が使いこなせるようになったりするためには、まずそれをマスターしようという決心が必要です。
そしてその決心を持続して、練習することを続けることが必要です。
途中で嫌になったり、飽きてしまったときに、自分の感情をコントロールして練習を再開することも必要です。
つまり態度スキルというのは、自分が決心し、その決心を継続し、嫌になったときはなんとかして軌道修正するというようなスキルです。
よく「やる気が出ない」とか「やればできるのに、なかなか手がつけられない」と言って、物事を後回しにしてしまうことがあります(私もそうです!)。
やり始めてしまえば、なんとかなることはわかっているのですから、問題は、自分自身が「よし、始めよう!」と決心できるかどうかなのです。
このように何かを決心して始めることは、態度スキルのひとつです。
また「始めてみたものの、なかなか上達しないので嫌気がさしてきた」と言ってやめてしまう場合もあります。その一方で粘り強く何かを続けていける人もいます。このように自分をコントロールして、継続することも態度スキルのひとつです。
態度スキルは、運動スキルと認知スキルを使う自分自身をコントロールするスキルなのです。
まとめ ▼自分自身の気持ちをコントロールできるようになるのが、態度スキル
葛藤状態から抜け出し前進するためには?
態度スキルは、自分自身をコントロールするスキルです。自分自身をコントロールできるので、すでに備わっている運動スキルと認知スキルを使うことができます。
そしてさらに習熟して上達することができるのです。練習すれば少しでも上達することは当たり前のこととして知っています。
ですので、問題は自分で練習をする気持ちになるかどうかです。もし練習が面倒なものであれば、「今はやりたくない」という気持ちが起こるでしょう。
「今はやりたくない」という気持ちや感情は本当のことです。実際にそのように感じるのですから。しかし、その一方で、「長い目で見れば、今これをやっておかないとあとで困ることになる」という気持ちもあるのです。
「今はやりたくない」という気持ちと「今やらないとあとで困るだろう」という対立する2つの気持ちはぶつかりあいます。
このぶつかりあった状態を「葛藤」と呼びます。こうした葛藤状態は生活や仕事のなかでときどき起こります。そして「悩む」という状態になります。しかし、悩んでいる限り、前には進めません。
今はそれを避けて代わりに他の楽しいことをするという決断もできませんし、また気が進まないけれどもやるべきことに手をつけるという決断もできません。
ただ悩んでいるだけで時間が過ぎていきます。
このような葛藤状態におちいったときに、ただ悩んでいるのではなく、少しでも手をつけるのか、あるいは今はあきらめて他のことをするのか、という決断をできるかどうかが態度スキルなのです。
まとめ ▼
態度スキルを身につければ、葛藤が起こったときに決断できる人になる
態度スキルはトレーニングで身につく
態度スキルは自分自身をコントロールするスキルと言いましたが、具体的には、自分の行動をコントロールすることと自分の感情をコントロールするスキルです。
自分の行動をコントロールすることによって、嫌なことでも、面倒なことでも、手をつけることができます。手をつけたらそれを続けることができます。続けることができたらそれを習慣にすることができます。
こうして良い習慣が身につきます。また、自分の感情をコントロールすることによって、良い人間関係を作ることができます。
たとえば、ちょっと気にさわることを言われてすぐに怒り出す人もいれば、自分の思いどおりにならないからといってイライラする人もいます。
このあとで説明しますが、そうした感情は、自分に何かを知らせてくれます。感情がわいてくるのは自分にとって意味があることなのです。
しかし、そうしたネガティブな感情をいつまでも引きずると、しだいに人間関係が悪くなっていきます。たった 1回のケンカで完全に人間関係が壊れてしまう場合もあります。
ですので、感情はなんらかの知らせを受け取ったものとして、そこから何を学ぶかが重要なのです。では、自分の行動と感情をコントロールする態度スキルはもともと備わったものなのでしょうか。
請け負った仕事を締め切り前には余裕を持って終わらせている人もいれば、締め切り間際に焦る人もいますし、いつも穏やかでやさしい人がいる一方で、いつも何かに怒って、イライラしている人もいます。
こうした特徴は、その人にもともと備わっているものなのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。その人特有の特徴もまた、その人が学習によって獲得してきたものです。ということは、トレーニング次第で身につくということです。
まとめ ▼態度スキルはもともと備わっているものではない
「やる気」は使えば減る
自分の行動をコントロールする態度スキルから考えていきましょう。あなたは面倒なことだけど、やらなければいけないことをするときにどうしますか。
「えいっ!」と自分に号令をかけて「やる気」を出す!?そうですね。面倒なことであればあるほど自分のやる気を奮い立たせる必要があります。
あるいは、やらなければいけないことから逃げようとして、別のことをすることを「我慢」する必要があります。
こうした「やる気」や「我慢」は自分の行動をコントロールするために必要です。ここでは「意志力」という名前をつけておきましょう。まさに意志の力です。意志力によって私たちは自分の行動をコントロールしているのです。
さて、この意志力は目に見えません。しかし、使えば減るものだということが心理学の研究によって明らかになっています。
意志力は筋肉と似ていて、使うと疲れるのです。意志力は使うと次第に減っていきます。しかし、睡眠をとると回復します。
ですから、私たちは朝起きたときに、意志力が満タンの状態になっています。そのあと、さまざまな活動をすると意志力はだんだんと減っていきます。
何かを決心するたびに、また何かを我慢するたびに少しずつ減っていきます。そして夜寝る前が一番意志力が減った状態になります。
このときにお菓子を食べ始めたり、お酒を飲んだり、ゲームを始めたりすると止まらなくなりますね。それは「もうやめよう」という意志力がほとんどなくなっているからです。
これからわかることは、意志力はそうしばしば使うことはできないということです。やる気さえ出せば、どんな困難なことでも乗り越えられると信じることは自由です。しかし、現実には使える意志力には限界があるのです。
まとめ ▼
夜寝る前は、意志力がもっとも下がっているとき
意志力を節約する方法とは?
意志力は筋肉と同じように、使えば疲れ、限界があることがわかりました。ですから、いざというときのために大切に使わなければなりません。
いつでも「やるぞ! 頑張ろう」と言っている人は掛け声ばかりで、実行がともなっていません。
なお悪いことに、掛け声をかけるとなんとなくやったような気になってしまうのです。それでますます行動できなくなってしまいます。
では、どうすればいいでしょうか? それは、なるべく意志力を使わなくても行動できるように自分をトレーニングすることです。
具体的には、やるべきことを習慣にしてしまうことです。これを「行動の習慣化」と呼びましょう。習慣化するとどうなるでしょうか。意志力を減らさずにやるべき行動ができるようになります。
「よし、頑張ろう」と言わなくても、自動的に行動することができるようになります。それが習慣化ということです。
習慣化すると「やろうかな、それともあとにしようかな」と考える必要がなくなります。そうなると自分のエネルギーすべてをやるべきことに注ぐことができます。
「どうしようかな」と迷っている間は、時間が無駄になるばかりか、意志力も同時にすり減らしています。結果、手をつけられなくなってしまいます。
ですから、やるべきことは習慣化してしまえばいいのです。とはいっても、それが難しいのですね。習慣になってしまえばいいのですが、習慣になるまでが大変なのです。
それが、自分をトレーニングするということです。何かやるべきことを習慣化するためには、それが習慣になるまでに少しの意志力が必要です。
意志力を無駄にせずに、習慣化するために使いましょう。次に、その具体的な方法を考えていきましょう。
まとめ ▼
習慣化するためには、少しの意志力が必要
意志力を鍛え習慣化するための 3ステップ
やるべきことを習慣化すれば、意志力を使わずに進めていくことができます。その結果、短い時間でなしとげることができ、効率が良くなります。
パフォーマンスの高い人たちは習慣化することによって、ルーチンワークのように仕事を進めているのです。ではどのようにすれば習慣化できるでしょうか。それは次の3つのステップにまとめられます。
⑴段取りとペース配分を計画する
⑵逐一記録し、無理があれば計画を修正する
⑶ふりかえりをして、次の機会のためにまとめておく
最初に、段取りとペース配分を計画します。ポイントは大きなゴールを細分化することです。
ゴールに行きつくためにどのような課題があるのかを書き出していきます。
そして、それを長くても 1時間以内でできるような作業に分割し、カレンダーやスケジュール帳に割り付けていきます。その際、一度に全部を片付けてしまおうと思わないこと。
その作業が何時間もかかるものであれば、手をつけるのが怖くなり、先延ばししてしまうからです。
ですから、長くても 1時間で終わるような内容にします。そうしておけば、楽に始めることができます。楽に始められれば、意志力は減りません。
2番目に、やり終えたことは逐一記録しておきます。カレンダーやスケジュール帳に書いておいた作業項目をマーカーで塗りつぶしていくのもいいでしょう。項目を塗りつぶすこと自体が楽しみになれば、習慣化されたということです。進めながら、計画の実施が遅れ気味になってきたとすれば、それは計画を修正したほうがいいという印です。ためらわずに計画を練り直しましょう。こんなふうにして、計画したことは全部やりとげることができるのです。
最後に、ふりかえりをしておきましょう。
ふりかえりをするのは、また次同じような仕事をするときに気をつけるところをまとめておくためです。
このように「計画とペース配分/実行と記録/ふりかえりとまとめ」をひと通り回せばひとつのまとまった仕事を完成させることができます。
そして、このサイクルを意識することなく回せるようになれば、それが習慣化したということです。
意志力は、計画通りにサイクルを回すために使うのではなく、仕事における重要な決断のときに使うようにすれば、仕事全体の質が上がっていくでしょう。
まとめ ▼
意志力は、仕事における決断の場面で使う
感情をコントロールするスキルとは?
ここまで、態度スキルのひとつ目として、自分の行動をコントロールするスキルについて説明してきました。もうひとつの態度スキルは、自分の感情をコントロールするスキルです。人間は感情の生き物です。
私たちは感情を持っているので「生きている」という感じを持つことができます。楽しい感情やワクワクする感情などのポジティブな感情は、私たちに幸せを感じさせてくれます。
その一方で、いつでもイライラしている人もいますし、ときどき怒りで爆発する人もいます。
怒りや悲しみといったネガティブな感情とどのようにつきあっていくかは、日々の生活や仕事をする上で重要なスキルと言えます。
どんな人でも、ついイライラしたり、たまに怒ってしまったりすることがあると思います。それは自然なことです。しかし、怒りを爆発させてしまうと、それがきっかけで人間関係は簡単に壊れてしまうことにもなります。
また普段からあまりにも怒りっぽい人は、周りの人たちから遠ざけられてしまうでしょう。ポジティブ感情と同様にネガティブ感情がわいてくることは、人間として自然なことです。
ただし、ネガティブ感情に支配されてしまうと、さまざまな問題が起こります。怒りの爆発は人間関係を壊しますし、悲しみを引きずっていると元気が出てきません。そこで、自分の感情とうまくつきあっていくスキルが必要になってきます。
感情がわいてくるのは自然なことですが、その感情に自分が支配されるのではなく、感情をうまくコントロールするスキルが必要なのです。
まとめ ▼
感情に支配されないスキルを身につける
ネガティブ感情が教えてくれる大切なこと
怒りやイライラなどのネガティブ感情は、それを引きずるとさまざまな問題を引き起こす可能性があります。そうならないために、怒りをコントロールする方法も考えられています。
それは、アンガーマネジメントと呼ばれる手法です。
このような手法が考えだされているということは、逆に言えば、怒りをコントロールすることが難しいということの表れなのでしょう。
さて、このようにコントロールしにくいネガティブ感情は役に立たなくて意味のないものなのでしょうか。もしそうだとすると、人類が長い間それを持ち続けている理由が立ちません。
じつは、ネガティブ感情は役に立ちます。それは「そこに問題がある」ということを私たちに知らせてくれるものなのです。
そこに問題があるということに気がつけば、私たちはそれを解決しようとして、注意力をそこに集中することができます。
つまり、怒りやイライラといった感情は、そこに問題があるので解決したほうがいいですよということを私たちに教えてくれているのです。
私たちは常に「このようになったらいいな」「ぜひこうなってほしい」という期待やイメージを持っています。しかし、いつでもそうなるとは限りません。
むしろ自分の期待を裏切るような事態になってしまうことのほうが多いかもしれません。自分の期待を裏切るようなことが起こると、ネガティブな感情が湧いてきます。
それは怒りだったり、悲しみだったり、イライラだったりします。ネガティブ感情は「今まさに自分の期待を裏切る事態が起きている」ということを自分自身に知らせてくれているのです。
つまり、危険信号を送って、なんとかしなくてはいけないということを知らせているのです。
これがネガティブ感情の役割です。
まとめ ▼
自分の期待を裏切ることが起きているときに、ネガティブ感情が起こる
ネガティブ感情とうまくつきあう練習法
ネガティブ感情は危険信号を送ってくれるという意味で必要なものであるということがわかりました。まずいのは、それをいつまでも引きずることです。
では、ネガティブ感情とどのようにつきあえばいいのでしょうか。これが行動のコントロールと並ぶ、もうひとつの態度スキルの訓練です。
まず、悲しみや怒りやイライラなどのネガティブ感情が起こったら、自分を責めずにその感情のままにしましょう。そして静まるまで待ちます。怒りのあまり、相手を怒鳴ってしまうこともあるでしょう。
それは仕方ありません。
しかし、相手を深追いするのは避けましょう。深追いすると相手との関係を永遠に壊してしまうかもしれません。少し気持ちが落ち着いたら、このネガティブ感情が何を知らせているのかを考えましょう。
考えられるようになれば、もうあなたは感情に支配されていません。感情に支配されている間は考えることはできません。考えられるようになったら、感情をコントロールできているということです。
簡単に言えば、感情のコントロールとは感情から思考に切り替えることです。感情をそのまま受け取ったあとは、考えることにスイッチします。それがスムーズにできるようにする練習をしましょう。
考えられるようになったら、何が問題でネガティブ感情が起こったのかを特定しましょう。自分がこうあってほしいと抱いていた期待が完全に裏切られたからなのか。
相手はこのように行動するべきだと考えていたことが完全に裏切られたからなのか。ネガティブ感情が起こるところには、必ず自分の期待や予想していたことが裏切られているはずです。
それを危険として知らせるためにネガティブ感情が発動されたのです。
まとめ ▼
感情を受け取ったあとは、なぜネガティブ感情がわいたのかを考える
自分の期待を伝えて相手とビジョンを共有する
ネガティブ感情は自分の期待が裏切られたときに、それを知らせてくれるものだということがわかりました。では、そのあとはどのように対応したらいいのでしょうか。
ネガティブ感情にはたいていの場合、相手がいます。自分が不当に評価されたというのであれば、評価した相手がいます。自分が期待したとおりの働きをしてくれなかったというのであれば、その相手がいます。
このように、相手の行動が自分の期待を裏切っているときにネガティブ感情が起動します。
とすれば一番良い解決方法は、相手と話してみるということです。相手と話をする目的は、相手を非難することでもなく、相手を励ますことでもありません。自分の「こうあってほしい」というイメージを共有することです。
自分の「こうあってほしい」という期待を相手が裏切ったので、怒りやイライラというネガティブ感情が起動したのですから、それを相手に伝えることが解決の第一歩となります。
そうすると相手は「そういうことを期待していたのですね。初めて知りました」と答えるかもしれません。または「その期待は私が考えていることと反対です」と言うかもしれません。
いずれにしても、自分の期待を話すことで相手とビジョンを共有することができます。
このように進めていけば、ネガティブ感情が起こったことをきっかけにして、相手との関係性を良い方向に持っていくことができます。これこそが、ネガティブ感情の正しい使い方なのです。
実際にこのように自分の感情を扱うことができるようになることが、態度スキルということになります。自分の感情をコントロールすることは、初めはなかなかできないかもしれません。
それは当然のことです。これまでそう考えたこともなかったし、それを練習する機会もなかったからです。それを少しずつ練習していきましょう。
まとめ ▼
「こうあってほしい」という期待を相手に話してみる
対話をしながら相手のなかにストーリーをつくる
行動スキルと感情スキルを教えることによって、相手の気持ちや態度を変え、望ましい方向に導いていく方法を話してきましたが、その望ましい方向、つまりどんなふうになってほしいというストーリーは、教える側がつくるわけではありません。相手がつくります。
ただし、相手は「なぜ、それをやることが必要なのか?」「それをやるとどんないいことがあるのか」といった理由がわからない状態ですから、教える人が相手に気づかせるようにお手伝いをしてあげるのです。
たとえば、「もっと向上心を持ってほしい」と思っているなら、「向上心を持つ意味があるとしたら、それはどんなことなのか?」「いろいろな物事に興味がわくことかな?」「興味が広がるとどんないいことがある?」「アイデアがわいてきて、やってみたいことも増えて、仕事も楽しくなるよ」こんな会話をしていきます。
こうして会話を通して、相手のなかに「向上心を持つようになると、可能性が広がるぞ」といったようなストーリーをつくるように手助けするのです。他にも、こんなふうに使えます。
会社での一場面。
後輩が有給を取ったとき、仕事を代わってくれた人にお礼を言ったり、「休みます」とひと言声をかけたりすることをしなかったので、先輩のA子さんがそのことを後輩に注意しました。
すると、「有給って当たり前の権利なのに、なんでそんなに気を遣わなきゃいけないんですか?」と逆に後輩から質問されてしまいました。
ここでお説教をしてはいけません。後輩の意見はある意味正論ですし、かえって、溝が深まって信頼関係が崩れるかもしれません。
このような場合も、後輩のなかに「なぜお礼を言ったり、ひと声かけることが大切なのか」といったストーリーをつくってみるのです。
たとえば、こんな感じです。
- 「○ ○さん(後輩)にとって、職場で一緒に働く同僚ってどんなイメージかな?」
- 「みんな有能ですよ。それぞれにバリバリ仕事をしている感じです」
- 「一人ひとりはそんなイメージなんだね。チームとしてはどう?」
- 「一緒の舟に乗っている感じかな。共通の目標に向かってみんなで力を合わせて漕いでいるような」
- 「でも、メンバーはいつも最大の力で漕げるわけではないよね。ときどきは休まないといけない。そんなときはどうする?」
- 「もちろん休ませてあげます。いつも頑張っているんですから、休むべきです」
- 「その人が休んでいるときは、他のメンバーはどうしていると思う?」「その人の分をカバーします。当然です」
- 「休んでいる人は、うれしいよね」
- 「うれしいですし、カバーしてくれる仲間にきっと感謝すると思います」
- 「感謝する。それが仲間だよね」
まとめ
▼教える人は教える相手のストーリーづくりのお手伝いをする
答えは相手のなかにある
対話をしながら相手のなかにストーリーをつくる、と言いましたが、それは相手にストーリーを押しつけるということではありません。
そのストーリーはすでに相手のなかにあるのです。ですから、教える人は、実際には教えるという行為はしません。教えるのではなく、相手のなかにあるストーリーを聞き出せばいいのです。そのために質問をしていくのです。
職場でチームワークがうまくとれずに孤立している社員には、「あなたにとって、職場で一緒に働くってどんなイメージ?」という質問で始めてみましょう。
ホスピタリティがなぜ大切なのかがわからない社員には、「あなたが、お店を選ぶポイントはどんなこと? 何度も行きたくなるお店と、一度行ったらそれきり行かなくなるお店の違いはどこにあると思う?」という質問で始めてみましょう。
こうした質問は、ただ尋ねているだけですから、命令や指示ではありません。ですから、相手は抵抗することなく答えてくれるでしょう。一度、答えを考え始めると、ストーリーがどんどん明確になってきます。
「ああ、自分はこんなふうに考えていたんだ」ということを自分で発見してびっくりするかもしれません。
つまり、ストーリーはすでに相手のなかにあるのです!話しながら質問に答えていくうちに、ストーリーが現れてくるのです。
ですから、教える人の仕事は、そのストーリーを引き出すということに徹しましょう。それ以外のことは何もしなくていいのです。
まとめ ▼
答えを引き出すような質問をすると、ストーリーが見えてくる
ときどきしか会えない相手のやる気を引き出すには?
会社のように、毎日顔を合わせる相手なら、日々少しずつ信頼関係を積み重ねていくことで、態度スキルを身につけさせることができます。
では、ときどきしか会えない相手に、今すぐやる気を出してもらいたいときはどうしたらいいでしょうか?たとえば、塾に来ている子どもたちのやる気をアップさせるような指導をしたいときにはどうしたらいいでしょうか?また、アルバイトのモチベーションを高めて、アルバイトを長く継続してもらいたいときにはどうしたらいいでしょうか?そんなときには、「相手の強み」を探すことです。
塾に来ている子どもであれば、それぞれに強みがあります。
計算が速い子、字がきれいな子、歴史に詳しい子、星のことをよく知っている子、虫のことをよく知っている子、積極的に発言する子、めったに発言しないけれどよく考えている子、周りにわからない人がいたら教えてあげようとする子……。
こんなふうに、どんな子でも何かしら「強み」を持っています。
しかし、その強みは自分では気づきにくいのです。自分では当たり前のことだと思っているからです。ですから、教える人がその子の強みを探して言ってあげましょう。
アルバイトのモチベーションを高めたいときにも、「相手の強み」を探してあげます。
作業をできるだけ速く正確にやろうと努力する人、仲間が忙しそうなときにすぐに手伝う人、おっとりとした物腰で周りの雰囲気を和やかにする人、いつも楽しいギャグを披露してくれる人……。
こんなふうにその人の強みを言ってあげます。自分のいいところを認めてもらえたら、誰だってうれしくなりますよね。
強みを言葉にしてもらったほうが、「やる気を出せ!」というセリフよりも、もっとたくさんのやる気を出してくれるでしょう。やる気を出す、モチベーションを上げる、ということは態度スキルのひとつです。
最終的には、「自分で自分のやる気を出すスキル」を獲得することが、態度スキルのゴールでもあるのです。
そのためには、どういうときにどういうことをすれば、自分のやる気が出るのかということを、体験しなければなりません。
自分の強みを認識することは、やる気を出すためのいい方法です。でもそれは、なかなか気づくことができないので、それを教える人がしてあげるのです。
まとめ ▼
人は強みをたくさん言われると、モチベーションが上がる
コーチングスキルを使えば相手の態度が変わる
「相手と一緒にストーリーをつくり出す」「答えは相手のなかにある」「相手の強みを探す」といった技術を説明してきました。
これらは何か決まったことを決まった順序に教えていくということではありません。
「相手が自分で学ぶことを助ける」ということです。このことを「コーチング」と呼びます。態度スキルを教えるためには、コーチングの方法を使います。
それは「態度スキル」というものを直接教えるのではなく、相手が「自分の態度をどのようにして決めていけばいいか」ということをスムーズに気づけるように手助けするということです。
しかし、「自分で自分の態度を決めてください」と言うだけではうまくいきません。
自分の態度を決めることが上手にできるようになるためには、実際に自分の態度を決めていくという行為を何度もやってみることが必要です。そしてそれを手助けするのがコーチングです。
コーチングをするときには、次の4つのポイントの頭文字をとった「 GROWモデル」というものがよく使われます。
この4つのポイントに絞って、相手と話し合っていくと、自然に相手は自分の態度を決めていくようになるのです。
ゴール( Goal)/達成したい目標を再確認して、明確に設定する
現実( Reality)/目標に対する現在の状況はどうなっているかをチェックする
選択肢( Options)/現在の状況から目標に近づくための選択肢や行動案を決める
意志( What, When, Who, Will)/何をいつ誰がするのかを決め、実行する意志を持つ
では、具体的にどう教えていけばいいのかというと、この4つを順番に質問していけばいいのです。
ここでひとつ例をあげてみましょう。会社の後輩に、家で自炊をして、きちんと食べることがいかに大切なのかをコーチングしてみることにします。
ポイントは、家で自炊をして食べることが大切であることは後輩も十分わかっているので、それを実行に移すためにどのようにして決心してもらうかというところです。
後輩 「いや、自炊したほうがいいっていうのはわかっているんですけどね」あなた 「外食ばかりでは健康にも良くないよね。
最終的にはどれくらい自炊できればいいと思ってるの?」後輩 「完全に自炊っていうのは無理だとして、半分は自炊にしたいですね」【ゴールの設定をしてくれました】あなた 「今はどれくらい自炊しているのかな?」後輩 「いやぁ ~、まったくしていません。
ガスコンロを使うのもカップラーメンのお湯を沸かすだけ」【現在の状況をチェックしました】あなた 「じゃあ、半分は自炊するという目標に近づくために、まずどんなことをすればいいと思う?」後輩 「そうですね。
週一回のノー残業デーのとき、その日は食材を買って、何かを作るくらいならできるかな?」【行動案を決めてくれました】あなた 「いいね。
じゃあ、最初の日はいつにする?」後輩 「来週の水曜日にします。
その日は買い物して、何か作ってみます!」【意志を確認しました】こんなふうに、「ゴール設定」 「現実チェック」 「ゴールに近づくための選択肢を出したり行動や方法の決定」 「意志確認」の順で質問をするだけで OKです!とても簡単ですね。
ぜひ、試してみてください。
このあとは、マンガの後編を読んで、態度スキルの復習をしてくださいね。
まとめ ▼ G R O Wモデルを会話に取り入れて「決心」させる
態度スキルの教え方
- ●態度スキルとは、自分の気持ちをコントロールできるようになること。
- ●意志力を無駄に使わない。
- ●やるべきことを習慣化する。
- ●「計画とペース配分」「実行と記録」「ふりかえりとまとめ」で習慣化できる。
- ●ネガティブ感情は、自分の期待を裏切ることが起きているときにわき出る。
- ●その感情は、何を教えてくれているのかを考える。
- ●教える側は教える相手に、自分が期待していることを言葉にする。
- ●対話によって相手に気づかせ、ストーリーをつくる。
- ●相手のストーリーは、質問で引き出す。
- ●相手の強みをたくさん言葉にする。
- ●「ゴール設定」 →「現実チェック」 →「ゴールに近づくための選択肢を出すなど行動や方法の決定」 →「意志確認」の順で、相手に決心させる。
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