1夜は照明を暗くしないと、日中の努力がムダになる
これまで何度か述べてきたように、日中に分泌されたセロトニンは、夕方以降になるとメラトニンという睡眠ホルモンにつくり変えられます。
ただし、夜の時間帯の照明の明るさ次第で、その効力は低下してしまいます。一般的な日本の家庭の照明は200~500ルクス。
たとえば、目の網膜に500ルクス以上の光が届くと、メラトニンの分泌が抑えられてしまうという報告があります。さらには、200~300ルクス程度の光を見ただけでもメラトニンの分泌が減ってしまうというデータもあります。
これらは一般的な家庭の照明下では、夜に家にいるだけで、メラトニンを減らしてしまうということを示唆しています。だから夜は、寝室はもちろん、居間もキッチンもトイレもお風呂も、あまり明るくしないほうがいいでしょう。
また、明るさだけでなく、照明の「色」も睡眠に影響を与えます。
市販されている電球や蛍光灯には、「昼光色(最も白い)」、「昼白色(中間)」、「電球色(オレンジがかっている)」の3種類があります。
日中、仕事をするときには、ものがハッキリ見える「昼光色」が好まれます。実際に多くのオフィスで、この色のLEDや蛍光灯が使われています。
しかし、夜に家でくつろぐときには、温かみのある「電球色」がおすすめです。とはいえ、電球色の100ルクスよりは昼光色の40ルクスのほうがマシ。
夜は少しでも「暗め」に、次の条件を参考に色味や明るさを検討してみてください。
理想は、ホテルのバーのように、オレンジ系の明かりが少しだけムーディに灯っている状態です。
欧米人の暮らす室内も参考になります。欧米人は日本人よりも瞳の色が薄く、明かりをまぶしく感じるので、彼らの家の照明は暗めに設定されています。
明るい部屋に慣れている私たちは最初、結構戸惑いますが、本当は日本人にとってもこのくらいでいいのです。朝はどれだけ明るくしてもOKです。
洗面所も、ひげそりを安全に行ったり、お化粧をきれいにするために明るさが必要です。でも、夜もそれを引きずってはいけません。
お風呂に入るときに煌々と明かりが灯った洗面所で脱衣したりドライヤーをかけたりしていたら、メラトニンは激減してしまうリスクがあります。
同じ場所でも朝と夜で、明るさが変えられる工夫をしてみましょう。
- ・電気が2ヵ所にあるなら、夜は一つにする
- ・もともとが明るすぎると感じたら、ワット数の小さい電球に変えてみる
- ・夜は別途、間接照明を活用する
今は、LED電球が普及し、明るさも色味も手元のスイッチ一つで調整できる照明器具が多く出回っています。そうしたものを取り入れれば、朝は白くて明るい空間に、夜はオレンジ系の暗めの空間に、という調整が簡単にできます。
我が家はもともと、明るさとしては控えめな60形相当(電球に「54W」など、60に近いワット数が印字されているもの)で、電球色のLEDを使用していました。
そこで数年前に思いきってリビング、ダイニング、キッチン、寝室、洗面所、バス、トイレと、夜に使用するエリアの照明を全て調光スイッチに取り換える工事をしました。
この工事は数万円で済む上に、夜を極力暗い照明で過ごすことで部屋の表情が変わるので、同じ家なのに違う空間のように感じることができて新鮮です。
照明の明るさを落としてから夜のリラックス度、心の豊かさや幸せ感も格段に上昇。その結果、毎日早く家に帰りたくなり、なぜもっと早くやらなかったのかと後悔したほどです。
睡眠に関してはメラトニンが減りにくいせいか、ますます早い時間に眠れるようになった気がします。このように家の光は調整できますが、街の光はそうはいきません。
看板、ネオン、信号、車のライト……たくさんの明かりがあなたを狙っています。
できるだけ、それらを直視しないように注意しましょう。とくに都心で暮らしていれば、ちょっとコンビニに買い物に出ただけで、明かりをたくさん浴びてしまいます。そういう環境にある人は、夜にこそサングラスをかけてもらいたいくらいですよ。
2夕食を「就寝の2時間前までに終える」には?
よく言われていることですが、夕食後すぐに就寝すると、体は消化活動をしているために眠りが浅くなります。また、就寝の直前まで夕食を摂っていれば、胃腸の運動が続いて、後述する「深部体温」も下がりません。
深部体温が下がらなければ、うまく寝付けないのです(詳しくはこちら参照)。熟睡したいなら、夕食終了から就寝まで少なくとも2時間、できれば3時間は空ける必要があります。
それに、遅い時間に夕食を摂ると、太る可能性が高くなります。
BMAL1という体内時計を調整するタンパク質が、22時から深夜2時までの間に最大に増えることによって、食べたものがどんどん脂肪として蓄積されやすくなってしまうのです。
つまり、たとえ野菜であっても、この時間帯には食べないほうがいいということです。どうしても夕食が遅くならざるを得ないときは、「夕食を2回に分けて摂る」という発想で対処してください。
すなわち、夕方におにぎりやゆで卵など、何か簡単で腹持ちのするものを食べてあまり空腹にならないようにし、就寝前の「がっつり食べ」を防ぐのです。
睡眠の質やビジネスのパフォーマンスを考えたら、平日は「いかに早い時間帯に栄養バランスのよい夕食を摂れるか」が勝負になります。
たとえば、23時に就寝する人の場合、遅くとも21時前には食べ終えていたいところですから、20時ごろに栄養バランスのよい食事をスタートするのが理想ということになります。
しかしながら、帰宅した時間から考えると、ゆっくり支度はしていられないはずです。だからといって、買ってきたファストフードなどで済ませてはなりません。
私たちの体をつくっているのは、毎日の食事です。ビジネスのパフォーマンスを考えたら、食事の内容を疎かにするわけにはいきません。それに、夕食では、その日に足りていない栄養素(朝食と昼食で摂れていないもの)を補いたいところです。
では、時間がないのに、そのように栄養バランスの整った食事をどう用意するのか。
基本的に自分で全部準備しなければならない私が行き着いた結論は、「文明の利器を使った原始人ご飯」です。素材を、焼くだけ、煮るだけ、茹でるだけ……。しかも、その作業は便利な調理器具にやってもらうというものです。
代表的なのが「原始人鍋」。どんな素材も適当な大きさに切り、一つの鍋に入れて鍋用のスープを注いで火にかければできあがり。自動調理の鍋を用いれば、目を離しても吹きこぼれの心配もありません。
もう一つが「原始人バーベキュー」。
やはり、いろいろな素材を切ってお皿に盛っておき、鉄板で焼きながら食します。
いずれも、肉や魚、豆腐類、キノコ類などバランスよく加えることができ、また調理法がシンプルなだけに素材の味を楽しめます。用いる食器も少ないので後片付けも簡単です。残った素材は、翌朝のお味噌汁の具にすればムダなしです。
このように、平日の夕食は時短とバランスが最優先。「強い体をつくる」「足りない栄養素を補給する」ということに徹し、凝ったモノはつくりません。
ただ、自分の名誉のために述べておきますと、私は料理自体は嫌いではないので、休日にはもう少し手間をかけた夕食をゆっくり楽しむことにしています。
3「飲み会で睡眠時間を減らす」のはナンセンス
お酒も食事同様、就寝直前はNGです。できれば、遅くともベッドに入る2時間前、できれば3時間前には飲み終えましょう。
その量も大事で、深酒するとアルコールの影響による中途覚醒が起きやすく、睡眠の質が著しく落ちます。35歳を過ぎたら暴飲はやめましょう。また、意識的に飲み会への出席を減らすのも手です。
ただでさえ、夜は入浴したりと、相応の時間が必要なので、飲み会に行っていたら、どうしたって睡眠を犠牲にするしかなくなります。
多少深酒しても、翌日ちゃんと働けた20代のころとは違うのです。
自分の健康を保ち、仕事で結果を出したいと思うなら、飲み会は減らしていくのが得策です。
前述したように、かつて私はアルコール依存症に近い状態にありました。
そんな私が「お酒を減らそう」と決めてからまず行ったことは、「どうして飲み会に誘われると断れないのか」について掘り下げて考えることでした。
行き着いた答えは、「私が知らないところで楽しいことが起きていたら嫌だ」。つまり私は、皆に「置いていかれたくない」という気持ちに支配されていたのです。
しかしよく考えると、気になるのなら、何があったか後から聞けばいいだけなのですよね。そのことに気付いただけで不安感が減り、私は誘いを断れるようになりました。
次に行ったのが、お酒を飲む人とはなるべく食事に行かないということ。本来、お酒が好きな性質なので、誰かが飲んでいたら自分も飲みたくなります。
だからあえて、そういう場に飛び込まないようにしたのです。家にいてもお酒が飲みたくなるだけなので、強力な炭酸水を箱買いしました。お酒を飲みたくなったら炭酸水でごまかすか、寝ることにしたのです。
そのうち、家にいても炭酸水でごまかしきれるようになり、外に飲みに行くことに魅力を感じなくなりました。そうすると、食事やお風呂も含め、夜の時間をいい睡眠のために使えるようになり、体調も仕事のパフォーマンスも、大きく改善されたのです。
しかしながら、会社員であれば歓送迎会や忘年会などの酒席はなかなか断れません。そういうときは、思いきって幹事を引き受けることをおすすめします。幹事であれば、日程も店も拘束時間も、全て自分主導で決められます。
ポイントは4つ。
①日程……なるべく自分の仕事に影響を与えないようにする。リカバリーのことも考え、前後の日はできれば夜の予定が入っていない日だけを候補日に選ぶ
②店……少しでも移動時間のロスをなくすために、職場や駅から近いところに限定
③拘束時間……ダラダラ飲み続けないように、「2時間飲み放題」など、終わりの時間が決まっているコースを選び、「拘束時間」を最短にする
④開始時間……早めの時間にスタートさせるたとえば、会社が18時終業なら、近くの店で18時15分にスタートし、20時15分には解散。
これなら参加者の負担は少なく、「歓送迎会スルー」「忘年会スルー」したがっている若い人たちにも喜ばれるでしょう。
ところが、古い考えの人に幹事を任せると、隠れ家のような店(しかも遠い!)を自分が知っていることを誇示したがり、「余裕を持って19時集合」などとやりがちです。
そして、いつまでもダラダラ飲み続ける……。
これの何が問題かというと、皆さんもいろいろ思いつくでしょうが、一番の問題は「睡眠時間が短くなること」です。こんな効率の悪い飲み会を開催される前に、あなたが幹事を引き受けて仕切ってしまったほうがいいのです。
なお、こちらでも少し触れましたが、どうせ参加しなければならない飲み会なら「面倒だなあ」という気持ちは捨てましょう。
どのみち、決められた時間は拘束されるのです。
だったら、ネガティブな思いを抱いてストレスをつくるよりも、「○○さんと親しくなろう」「○○課の絆を深めよう」などと、目的意識を持って意識的にオキシトシンを分泌させる時間に変えましょう。
実際にお目当ての人と楽しい時間を過ごすことができれば、オキシトシンが分泌されて「ストレスが解消」され、「活力アップ」して家路に就けるはずです。
そして、家ではお風呂でゆったりして、「ああ楽しかった」という思いを胸にベッドに入りましょう。この方法なら、たとえ飲み会に参加したとしても、ダメージは最小限に抑えられます。
4「38℃のお湯に15分浸かる」と、眠気が起こりやすくなる
忙しいとつい、ゆっくりお風呂に入る時間すら省略したくなるかもしれません。とくに、夏はシャワーだけで済ませる人も多いでしょう。しかし、働き盛りのビジネスパーソンにとって、「湯船に浸かる」は必須の儀式だと思ってください。
それによって睡眠の質が大きく向上するからです。また、疲労回復、ストレス解消にも寄与しますから、入浴にかける時間は毎日のルーティンに必ず組み込んでください。
では、入浴と睡眠にどのような関係があるのかを説明しましょう。
いい寝付きのカギを握るのが、「深部体温」です。体温計で測る「皮膚体温」と違って、深部体温は体の奥のほう(脳や内臓)の体温を指します。
図5-1にもあるように、この深部体温が下がることで体も脳もゆっくりと休息に入り、同時に眠気が起きます。つまり、睡眠に入るときには「深部体温が下がる」ことが必要なのです。
赤ちゃんはもともと体温が高めですが、手がとても温かいと感じることがありますね。そして、そういうときにはすぐにすやすや寝付いてしまいます。手が温かかったのは、その表面から熱を放出しているからで、深部体温は下がっていたわけです。
しかし、大人になれば平熱自体が赤ちゃんのように高くないですから、そのままでは下がったとしてもわずかなものです。
一方で、一℃上昇させれば下げ幅も大きくなり、スムーズに眠りにつけます。このときの「体温が上がった状態」をつくるために、入浴は非常に有効な手段となります。
一般財団法人日本健康開発財団・温泉医科学研究所は、深部体温を上げ、かつリラックスできる入浴法として、38~40℃のお湯に浸かることを推奨しています。早坂信哉所長によると、時間は10~15分で十分とのことです。
思ったよりも短いでしょうが、これでしっかり血行が促進され、体の末端まで酸素と栄養が行き渡り、老廃物も回収されるとのことです。10~15分湯船に浸かるだけなら、できそうですよね。
この入浴法で上がった深部体温は、1時間~1時間半後に下がってきますから、就寝時間から逆算して入浴タイムを設けることが大事です。23時に就寝するなら、22時までには入浴を終えてください。
外で夕食を摂って帰り、「疲れきって一刻も早く寝たい」というようなときにおすすめの入浴方法をお伝えします。家に着いたら鞄を置いて、そのままお風呂場に直行し、湯船にお湯を張ってください。
お湯を張っている間に、服をハンガーに掛けたり、着替えの準備をしたり、冷暖房やテレビのスイッチをつけたり、飲み物を飲んだりしていれば、すぐにお湯は溜まります。
疲れているからといって、すぐにソファなどに座り込んでしまうと、お風呂に湯を張るのも面倒になります。そしてどんどん時間が押して、寝る時間も遅くなってしまいます。
なお、「発汗」や「デトックス」に効果アリとうたう入浴剤を使うと、1時間半たっても深部体温が下がってこないことがあるため、忙しいビジネスパーソンにはおすすめしません。
こうした製品は、週末などの特別なリラックスタイムに用いるにとどめたほうが無難でしょう。
私自身、いろいろな種類の入浴剤を買い集めては随分試しましたが、とくに体を温めるタイプの入浴剤を使うと、決まって寝付きにくくなったり、眠りが浅くなって、翌朝疲れが抜けない傾向が多くありました。
長年不思議に思っていたのですが、入浴の勉強をすることで深部体温に関わりがあることがわかり、その謎が解けました。
また、42℃以上の熱いお湯に浸かると、交感神経が刺激されて体が覚醒してしまいます。その結果、深部体温が下がるまでに3時間ほどかかるので、夜には向きません。むしろ、朝のエンジンがかかりにくい人がシャキッとするために、シャワーや湯舟で活用すると効果的でしょう。
お風呂の前後には、それぞれコップ1杯の水を飲みましょう。寒い冬であっても、お風呂に入るとなんと、800ほどの水分が体から失われると言われています。
5「すごく疲れた日」は、ためらわずに30分早く寝る
食事や入浴、そしてセロトニンづくりを大事にして睡眠の質を上げていっても、厳しいビジネスの現場にいれば、ときには「ぐったり」するようなこともあるでしょう。
すごく疲れてしまったとき、大事なのはそのまま引きずらず、その日のうちにリカバリーさせること。「週末にゆっくりしよう」では、それまでの幾日かのパフォーマンスが確実に落ちます。
また、それだけ疲れるようなときは仕事も溜まっているはずですが、コンディションが悪いまま取り組んでもうまくいきません。
がむしゃらに仕事を片付けようとするよりも、まずはコンディションを戻すことに注力したほうがいい結果につながります。
では、どんなリセットを図ればいいでしょうか。私の場合、とても疲れたと感じたときは、18時の終業と同時に急いで会社を出ます。そして、19時前に夕食を済ませてしまいます。
とはいえ、家に帰ってから支度をするのでは間に合いませんから、途中で消化のいいそばを腹八分目に食べて帰ります。
家に着いたらバッグを置き、お風呂場に直行して湯船にお湯を張ります。その後、服を着替えたり、翌日の準備をしている間にお湯が溜まったら38~40℃のお湯に10~15分浸かります。
そして、お風呂から出て1時間ほどのんびり過ごし、いつもより1~2時間早く寝てしまいます。これで、翌朝はかなり疲れもとれ、胃腸も軽く感じられます。
あなたも、ちょっと調子がすぐれないと感じたら、やりくりしていつもより30分でもいいので早く就寝してみてください。忙しいとき、ストレスが溜まっているときなどは、いつもと同じだけ眠っても疲労が回復しにくくなります。
かといって、目覚ましをかけ直してギリギリまで寝ていれば、第3章で述べた大事な朝のセレモニーができずに、一日のサイクルがどんどん崩れていきます。
それに、たとえ一度は睡眠負債を返済しても、働き盛りのビジネスパーソンは、油断すればすぐに新しい負債を溜め込んでしまいます。
少しでも疲労や不調を自覚したら、いつもより30分でも早くベッドに入る習慣をつけ、自分自身で体調を立て直してください。
6「夜の団らん」で、その日を幸せな気分で終える
第2章でも述べたように、平日の夜、自分のために使える時間はごく限られています。夕食も終えてお風呂に入って、残された時間はわずか1時間前後。その貴重な時間をどう過ごしましょう。
ここで、スマホやゲームをいじってブルーライトを浴びたり、筋トレなど激しい運動をすれば、日中の努力が水泡に帰します。読書も、明るい光の下で行うのであまりおすすめできません。
とくに、推理小説など次の展開が気になるものは脳を興奮させてしまいます。
できるだけいい眠りに入るには、心穏やかになることをするのが一番です。
もし、その日に「心配」「不安」「悔しい」「悲しい」といったネガティブな気持ちを抱いてしまったり、仕事のしすぎで頭がパンパンになってしまったら、帰り道に三呼一吸法で呼吸しながら帰ると「クヨクヨ」や「パンパン」がどこかへ吹き飛び、気持ちや頭がリセットされます。
私も早く気持ちを切り替えたいので、出勤時だけでなく、帰り道も必ず三呼一吸法を行っています。また、どんなときも実行してほしいのは、夜にオキシトシンを分泌させることです。
家族と同居しているなら、ぜひ団らんの時間を持ってください。気の置けない家族とリラックスしながら過ごすことで、オキシトシンが増えます。なおその際、必ずしも会話は必要ではありません。
オキシトシンは、セロトニンの分泌を高めてくれる親愛のホルモンですから、オキシトシンが分泌されれば、一日の終わりを幸せな気分で過ごすことができます。
また、ストレス中枢に作用して、イライラした気持ちを消したり、和らげてくれるのです。
家族とうまくいっていない人は関係を修復する努力をするか、責任を持って犬や猫などのペットを飼い、夜の時間に可愛がってください。
一人暮らしの人なら、実家や友人に電話をかけてもいいですし、人とのコミュニケーションが苦手な人は、ペットを飼ってたわむれるのがおすすめです。オキシトシンは好ましい相手やペットとの5分以上の交流で分泌されます。
その場合、対面でなくても電話でも大丈夫ですが、メールやチャットでは分泌されないことがわかっていますので、そこだけ注意してください。
いずれにしても、夜は自分の中の「愛しい」気持ちを喚起すること。今の時代に健康的なメンタルを維持するには、オキシトシンの力を使うことが科学的に正解と言えます。私もこのような時間を持つようになってから、心も体もだいぶラクになりました。
7寝る前に「ワニのポーズ」で全身をほぐす
私はかつて、ダイエット目的で夕食後に自宅周辺のジョギングに励んだことがありました。
「疲れてよく眠れるだろうから」という思いもあって結構ハードに走ったのですが、かえって寝付きが悪く、眠りも浅く、疲れがとれにくい状態が続きました。
今、考えてみれば当たり前で、寝る前にハードな運動を行ったために交感神経が優位になって、睡眠の質を下げていたのです。それに、都会住まいの私が走っていたルートは、昼間のように明るい場所。
飲食店やコンビニの看板、自動車のライト、信号などの明かりがどうしても視界に入り、メラトニンも減り、ハードな運動とのダブルの悪影響で体が覚醒してしまったのでしょう。
ちなみに、夜に運動すること自体が悪いわけではありません。
私自身、パソコン仕事で硬くなりがちな体をほぐすために、週2回ほどジムに通い、筋トレや有酸素運動を行っていたこともあります。ただそうした運動は、就寝の3時間前までに終わらせるのがベストです。
そして、就寝前には全身をほぐすストレッチを行うくらいでいいでしょう。お風呂に入って血行がよくなっているところで、疲れた体をほぐしてあげましょう。
私がおすすめしているのが、ヨガの「ワニのポーズ」に基本を置いた、ごく簡単なストレッチです。
ベッドに横になり、鼻呼吸をしながら行います(図5-2参照)。まず仰向けで両腕を自然に伸ばし、片方の膝を立てます。次に、立てた膝を逆側に倒し、顔は膝とは反対に向けます。
すると、背中と腰がねじれ、血行がよくなると同時に体の緊張がとれていきます。そのまま10秒間、「気持ちいい」と思える程度にポーズを続けます。
呼吸は吐くことを意識しながら、ゆっくりと行いましょう。これを両サイド行います。
片膝を立てた状態で行うのが難しければ、両膝を曲げて行ってもOKです。いずれにしても、両方の肩がなるべく浮かないようにすることで、ストレッチ効果が高くなります。もちろん、完璧でなくてかまいません。
体の硬い男性は、最初はまったく違うポーズになってしまうかもしれません。
「ポーズもどき」でも一定の効果は得られますし、行っているうちにだんだん体が柔らかくなってきますよ。「気持ちいい」と感じ、そのまま眠りにつけたら最高です。
睡眠の質を上げるために随分たくさんのポーズを探して試した中で、一番簡単かつ効果が高いのがこのポーズだったので、私も毎晩行っています。
8ベッドに入っても眠れないときの「とっておきの方法」
ここまで眠るまでの時間の使い方についてお伝えしてきましたが、いざ寝ようと思っても寝付けない、ということもあるかと思います。
日本中が湧いたラグビーワールドカップの初戦に当たり、田村優選手は「緊張でここ数日あまり眠れなかった」と語っていました。
紀平梨花選手も、フィギュアスケートの全日本選手権のフリー前日に「まったく眠れなかった」と口にしていました。
彼らのような経験を積んだ一流アスリートでさえ、「眠らなければ……」と思っても眠れないのです。いえ、そう思えば思うほど眠れなくなっていくわけです。不眠症気味の人は、毎日がこういう状態ですよね。
「昨日も一昨日もよく眠れなかったから、今日こそ眠らなくては」と考えることが、かえって自分を追い込みますから、「眠らなくては……」というところからの脱却が必要です。
まずは、「眠くなるまでベッドに行かない」でください。もし、眠くなったからベッドに行ったのに20分ほどしても眠くならない場合は、一度ベッドから出てしまいましょう。
寝入るまでに時間がかかると、気分的に焦ってさらに眠れなくなりますし、寝入るまでの時間がかかるほど、眠りが浅くなることがわかっているからです。
では、ベッドから出て何をするか。
眠れない日がしばしばある人は、ふだんから「眠れない日にやること」をリストに挙げておき、いつでも実行できるようにしておきましょう。
そうしないと、ついスマホに手を出して余計に事態を深刻化させてしまいます。リストに挙げるべきは、深く考えなくてもぼーっとした状態でできること。
そして、時間があればやっておきたいけれど、わざわざそのために日中の時間を割きたくないことがベストです。たとえば、洗濯物をたたんだり、本を整理したりするのは、単純作業で力もいらないのでおすすめです。
このとき、「あの本、どこに置いたっけ?」と電気をつけてガサガサ探していると、交感神経が刺激されてますます目が冴えてしまいます。
ですから「眠れないとき」に備え、置き場所を決めておくといいでしょう。ビジネスパーソンであれば、靴磨きもいいですね。
ふだんはさっと汚れを拭き取るくらいしかできなくても、眠れない時間を利用して丁寧に磨いてみましょう。そのうちに疲れて眠くなってきて、朝にはピカピカの靴が用意されていたら一石二鳥です。
そのような「労働」をする気が起きない日は、薄明かりの中で静かな音楽を聴くのもいいでしょう。
なお、眠くないのにベッドに行くとどんなことが起きるか、説明しておきます。
眠くなっていないのにベッドに入る→寝付けないと焦る→余計に寝付きが悪くなる→寝付けても、眠りが浅いという悪循環に陥ります。
前述のようにベッドに入ってから寝付くまでの時間が長いほど、眠りが浅くなるのです。
ちなみに、連日にわたって寝付けない人の場合、「このベッドは眠れない場所だ」と脳にインプットされてしまっている可能性があります。別の場所で寝たり、ベッドの場所を移動することで眠れるようになることがありますから、試してみてください。
心に湧き上がってきたことを書き出してみる眠りのプロを自任する私でも、「今日はちょっと眠りにくいな」と感じることがあります。
そういうときは、たいてい睡眠以外の分野の何かが心に引っ掛かっているものです。
仕事のこと、家族のこと、健康のこと、お金のこと……あなたにも、何かしら心配になったり、イライラしたり、焦ったりすることがあるでしょう。
それらが一度、頭の中を巡り始めると、「いけない。それは忘れて眠らないと」と思ってもうまくいきません。
そんなときのために、ふだんから枕元にノートとペンを置いておくのも手です。そして、心に湧き上がってきたさまざまなことを書き出してしまいましょう。
不安は、漠然と抱えていると余計に大きくなっていきます。あたかも「何か大変なことになりそうだ」と思えてしまうのです。とにかく、あなたの心に引っ掛かっていることを書き出してみましょう。
問題を明確にしてしまうと、それだけで随分落ち着きます。
「明確になったんだから、今からごちゃごちゃ考えずに、明日、起きてから対処すればいいや」という合理的な判断もできるでしょう。
それでもまだ落ち着かなければ、対処するためのスケジュールも考え、書き出しておきます。そこまで決めてしまえば「あとは寝るのみ」です。
たとえば、健康診断の結果が悪く、再検査を受けるように言われたとします。心配ですね。気になってなかなか眠れません。
そんなとき、「大腸がんの再検査を指示された。でも、便の潜血検査は間違いも多く出るという。今から心配しても仕方ない。内視鏡で精密検査をしてから考えればいいことだ」と書くことで落ち着けたら、それでOK。
まだダメだったら、さらに細かくスケジュールを練りましょう。
「再検査の日まで待たずに○○先生に相談してみよう。明日の昼休みに予約の電話を入れて、できれば明日中に診察を受けよう。明日空きがなくても、明後日には行けるはずだ」ここまで書き出せば、かなり気持ちも落ち着くはずです。なお、この作業は、心の整理とその問題にいつ対処するかを決めるために行うものです。大事なのは作業のしやすさ。
暗い中、ぼーっとした頭で使うのに適した、書きやすいサイズのノート、書きやすいペンを用意しておくと便利です。
COLUMN5寝る前の「ブルーライト」は、快眠を奪う天敵
この章の終わりに、快眠を得るために改めて強調しておきたいことがあります。
それは、夜にスマホのブルーライト画面を見るのは大NGということ。
あちこちで言われているために「またか」と思われてしまうかもしれませんが、そのくらい声を大にして言いたいことでもあります。
ブルーライトは太陽の光にも含まれているため、ブルーライトの画面を見ていると、脳が「今は日中だ」と勘違いしてしまうのです。
その結果、せっかくつくられた快眠のための睡眠ホルモンであるメラトニンが減ってしまいますし、ブルーライトが網膜に当たるだけで交感神経を刺激し、結果的に入眠を妨げたり、睡眠の質に悪影響を及ぼすリスクが上がるのです。
とくに寝る前にブルーライトを見たら、まず快眠はできないと思ったほうがいいでしょう。他方で、ビジネスを含め現代の生活に、スマホが欠かせないツールであることは疑いようがありません。だからこそ、それに振り回されないルールが必要だと私は考えます。
夜の時間帯に、いかにスマホから解放されて過ごせるかは、その人が社会で「その他大勢」と違う存在になれるかどうかを決定づけると言ってもいいのではないでしょうか。
とはいえ、「夜は一切スマホを使わない」というのは現実的ではありません。「調べたいことがあるのにスマホが使えない」とイライラしていたら逆効果。
あまり無理せず、できる範囲でスマホの呪縛を解きましょう。
最終的には、こちらで述べたようなデジタルデトックスを行い、「寝室にはスマホの充電器も持ち込まない」を実施したいところですが、まず手をつけるべきは、ベッドの中にスマホそのものを持ち込まないこと。
「ベッドでゴロンと横になりながらYouTubeを見るのが大好き」という人は多いですね。あなたも、その一人かもしれません。
しかし、それによって脳は、ベッドの役割を「エキサイティングな気分を味わう場」と勘違いします。そして、いつまでも眠らずにYouTubeを楽しませてくれるというわけなのです。
私もハマりやすい性格なので、ダメなことはわかりつつ、かつてはベッドの中でのYouTubeに夢中になっていた時期があります。
そうするとなかなか寝付けず、寝る前の疲れが増加し、起きてもまだ疲れている……という悪い循環ができてしまいました。そのことに気付いてからは、キッパリとやめました。
私たちは、ディズニーランドの近くを通れば楽しい気分になり、葬式があるのを目撃すれば沈んだ気分になります。自分がそこに参加しているわけではないのに、脳はそれぞれのビジュアルに対して自動的にイメージ付けを行っているのです。
脳を甘く見てはいけません。脳を味方につけましょう。
ベッドには何も持ち込まず、脳が余計なイメージを抱かないようにします。脳が「ベッドは眠るためだけのもの」と覚えてくれれば、しめたもの。ベッドを見ただけで眠くなってきます。
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