ルー・タイスの愛弟子の一人に、マーク・シューベルトという方がいます。シューベルトさんは、その世界ではたいへんな有名人です。
シューベルトさんのことを紹介するときは、『冬の旅』や『白鳥の歌』など数々の名曲を残し、「歌曲の王」と謳われるフランツ・シューベルトが興味を引く話題です。
彼は、このオーストリアの大作曲家の末裔なのです。ただ、私が彼のことを「有名人」というのは、このことゆえではありません。
じつは、シューベルトさんはアメリカが生んだ驚異的なオリンピック水泳選手、マイケル・フェルプスのコーチを務めた人なのです。
ご存知のように、フェルプス選手は 15歳でシドニーオリンピック( 2000年)に出場し、 200メートルバタフライでいきなり 5位に入賞しました。
その後も国際大会で驚異的な成績を収め、 2008年に行われた北京オリンピックでは、前人未到の金メダル 8冠王に輝きました。
シューベルトさんがフェルプス選手のコーチに就いたのは、彼がまだアメリカ国内の有望選手の一人にすぎなかった 13〜 14歳のころのことです。
それ以来、幼いフェルプス少年に、目標達成のためのコーチングが施されました。
オリンピック連戦連勝のフェルプス選手の実力は誰もが認めないわけにはいきませんが、その実力を引き出したのがシューベルトさんのコーチングだったわけです。
シューベルトさんはオリンピック出場を決める以前の彼に、自らの成功イメージを徹底的にビジュアル化するようアドバイスしました。
彼がまだ、年齢別の全米水泳でトップにも立っていなかったころのことです。
フェルプス選手は毎晩ベッドに入ると、天井のあたりを見つめ、そこにオリンピックの決勝戦で泳いでいる自分の姿を描きました。いや、念じた、といったほうが正確かもしれません。
決勝戦の出場メンバーは誰で、自分はどのコースを泳ぎ、どのように一番のライバルに競り勝って優勝するのか。そうした具体的なイメージを、強く思い描いたのです。フェルプス選手は、出場イメージを脳裏に焼きつけながら眠りにつくのを日課にしました。
その習慣は、 2012年のロンドンオリンピック後もずっとつづいているはずです。
また、オリンピックで競う自分の姿をイメージするときは、同時にセルフトークを行っていたことでしょう。
たとえば、「私はすごい選手だ。もうこんなに 2番手を引き離している」とか、「泳いでいるときは、最高の気分だ」などです。
ゴールを達成した自分の姿を強く思い描きながら、そのときに達成していることを自分に語りかけるのがアファメーションです。
いったい、アファメーションのどこに、ゴールを達成させる力が隠されているのでしょうか。
アファメーションを自在に使いこなすためには、アファメーション、エフィカシー、そしてゴールという3つの関係を理解することが大切です。
アファメーションはゴールを達成するための技術である、と受け止めている人がいます。「ゴールを達成するために、アファメーションを毎日欠かさずにつづけています」 彼らは決まって、こんなことをいいます。
たしかに、アファメーションはゴールを達成するために必要な技術のひとつですが、あなたをゴールに導いてくれるのは目的的志向です。
そこで、脳にゴールのイメージを刷り込むことがいかに大切かという話を、私は 4章で紹介しました。
では、アファメーションは、何をするために行う技術なのでしょうか。じつは、これが、セルフトークとアファメーションが決定的に異なる部分です。セルフトークは、使い方次第で見えなかったものを見えるようにする技術ということができます。
たとえば、朝目覚めたときに、「今日は、ツキがある。きっといい一日になるぞ」というセルフトークを行うと、その日は一日、いいことばかりが起こります。
なぜかといえば、そのセルフトークがブリーフになり、そのために悪い出来事はスコトーマがかかって見えなくなり、いいことだけが目に入るからです。
あなたの目標がいい一日を送ることであれば、目覚めたときのセルフトークひとつで、それを達成することができます。見えるものをコントロールすることが目標なら、セルフトークをうまく使うことで、いくらでも達成可能です。
しかし、達成したいことが人生のゴールとなると、単に見えるものをコントロールするだけではどうにもできません。
前章でふれたように、あなたが自動的にゴールにたどりつくように潜在意識を働かせるためには、現状のコンフォートゾーンを、ゴールを達成したときの将来のコンフォートゾーンに上げてやる必要があります。
いまのあなたが将来のゴールのコンフォートゾーンをリアルに感じるからこそ、あなたは現状のコンフォートゾーンに満足できなくなり、無意識のうちにそこから抜け出し、ゴール達成にふさわしい選択と行動をとるようになります。
これが、目的的志向があなたをゴールに導くメカニズムです。
その意味で、ゴールを達成する方法の中心は、いかにして将来のコンフォートゾーンを自分のものにするかという一点に求めることができます。
つまり、ゴールを達成したときのコンフォートゾーンを、いまのあなたが強烈にリアルに感じ、同時にその高いコンフォートゾーンで自然にふるまう強烈な自己イメージを持つ必要があるのです。
では、アファメーションは、ゴールの達成にどう絡んでいる技術なのでしょうか。
じつは、現状のコンフォートゾーンをゴールの世界にふさわしいコンフォートゾーンに上げるために必要なのは、高いエフィカシーと強い臨場感です。
そして、アファメーションはこの2つのものを、誰もが簡単に獲得するための技術なのです。
まず、エフィカシーを高めることから説明していきましょう。
たとえば、いまのあなたが日本の代表者としてホワイトハウスに招かれ、オバマ大統領を向こうに回して交渉する姿を想像してみましょう。
ただぼんやり思い浮かべるのではなく、室内の匂い、敷き詰められたカーペットの感触、同席した米国政府高官たちの表情、高い天井を持つ会議室の広い空間、日本人の体にはサイズが合わないテーブルと椅子など、細部をできるかぎりリアルに感じるようにしてください。
あなたにとって、ホワイトハウスは行ったことも見たこともない場所かもしれませんが、とにかく、あなたがこれまで経験したことのない異空間を、念入りに想像してみましょう。
その場所で、あなたは日本に不利な取り決めをしないよう、オバマ大統領に日本側の考えを伝えなくてはなりません。
席について待っていると、オバマ大統領がやってきました。あなたは、大統領に最大限の敬意を払いながら初対面の挨拶を述べます。
そして、かつてアメリカを旅したときの思い出などを織り交ぜながら、自分の人となりや今回の交渉に対する意気込みをさりげなく伝えます。
オバマ大統領は、表情を変えずに、あなたにこう促すでしょう。
「よろしい。では、日本の考えを聞こう。話してみたまえ」 それを合図に、あなたは無駄な言葉を一つもはさむことなく、順序立ててはっきりと考えを伝え、大統領の信頼を勝ちとらなければなりません。
交渉シーンに強いリアリティを感じれば感じるほど、あなたは緊張し、とても居心地の悪い気分になるはずです。
そんな大役をいまこなさなければならないとしたら、うまくしゃべることも、自然な表情でいることも、椅子にきちんと座っていることも、何もかもできそうにない、と感じるのではないでしょうか。
その理由は、ホワイトハウスという場所も、オバマ大統領との交渉も、いまのあなたのコンフォートゾーンにはない場所であり、出来事だからです。
人間は、自らのコンフォートゾーンからはみ出たところに身を置くと、いつも当たり前にできることができなくなってしまいます。
たとえば、小学生のころ、初めての発表会で演壇に上がるときに、自分の足がまるで自分のものではないように感じ、うまく歩けなかった経験はないでしょうか。
「いけない、自分のおかしな様子を見られている」と思ったとたんに、平坦な床で躓いたり転んだりした失敗もあったはずです。
そのために発表はしどろもどろになり、自分が何をしゃべっているかもわからなくなってしまいます。
そのため、人間は現状のコンフォートゾーンにない場所、機会、相手に遭遇すると、無意識のうちにそれらを遠ざけ、元々いたコンフォートゾーンに戻ろうとしてしまいます。
現状のコンフォートゾーンから抜け出そうとしない人は、せっかく大舞台に上がるチャンスがあっても上がろうとしないし、パーティーで特別な有力者と話をする機会があっても話しかけようとしません。
そんなことをして冷や汗をかくよりも、会社で地味に仕事をしたり、行きつけの飲み屋で仲間と一杯やったりするほうがよほど快適だ、と考えてしまうわけです。これではいつまでたっても、人生は何も変わりません。
人生を変え、ゴールを達成するには、現状のコンフォートゾーンではなく、ゴールの世界の高いコンフォートゾーンを自分にとって快適なゾーンになるようにしてやる必要があるのです。
人生のゴールの世界のコンフォートゾーンは、いまだ現状のコンフォートゾーンに安住するあなたにとって、オバマ大統領との交渉の場のように居心地の悪いところです。
そこで、ゴールのコンフォートゾーンが自分にとって一番心地よいゾーンだと、脳に刷り込んでやらなければなりません。
これが、私がいつもいっている「自分のコンフォートゾーンを上げてやる」ということの意味です。
この刷り込みがなければ、いくら人生のゴールを設定しても、あなたは無意識のうちに古いコンフォートゾーンに戻ろうとしてしまいます。
古いコンフォートゾーンに戻れば、あなたは永遠に今日の延長線上のあなたでしかありません。実現できることといえば、精一杯努力し、運に恵まれても、「理想的な現状」が最高でしょう。
では、ゴールの世界の高いコンフォートゾーンを脳に刷り込むために、何をすればいいのか。それはとても簡単なことで、高いエフィカシーを持つことです。
ゴールのコンフォートゾーンが自分に最もふさわしいと感じることです。先に、私はエフィカシーを自負心という言葉で紹介しました。
そのほうがイメージを伝えやすいと考えたからですが、じつは TPIEではエフィカシーに対する訳語が決まっています。
「自己のゴール達成能力に対する自己評価」がそれです。つまり、「私は高い能力を持っている」という本人の評価のことです。
エフィカシーは、他人の評価ではなく、自己の評価というところがミソです。自分で自分を評価するのですから、あなたはいますぐにでも、高いエフィカシーを持つことができます。
「私は高い能力を持っている」と決めるだけでいいし、そのときのエフィカシーの高さは制限なく上げることもできます。エフィカシーが十分に高い人ならば、本心からこう思うでしょう。
「私は、オバマ大統領と寛いでどんな交渉でもできる、すごい人間だ」 もしも、あなたがいますぐに高いエフィカシーを持つことができないとしたら、それはあなたが、「君は、このくらいの能力の人間だよ」という他人の言葉を受け入れてきたからです。
本当のあなたは、何でもできる、素晴らしい能力を持った人間なのに、他人の言葉を受け入れてしまったがために、自分の能力を限定したものとして認識しているのです。
この他人の言葉の呪縛を解き、エフィカシーを高めるために必要なものが、アファメーションなのです。
「私は、たいした人間だ」「私にはできる」という内容のアファメーションを行うことによって、毎日、エフィカシーを高めていくようにするのです。
エフィカシーが高まっていけば、コンフォートゾーンを上げることができ、ゴールのコンフォートゾーンがいまのあなたにとってごく当たり前のコンフォートゾーンになっていきます。
すると、あなたはあらゆる点で、ゴール達成にふさわしい選択と行動を行うようになり、無意識のうちに古いコンフォートゾーンに戻ろうともしなくなるのです。
さて、次は臨場感についてです。
いまのあなたのコンフォートゾーンを、ゴールのコンフォートゾーンに上げるためには、ゴールを達成したときの自分と、そのときに目の前に広がっている世界に対して、強烈なリアリティを感じている必要があります。
強いリアリティがなければ、ゴールのコンフォートゾーンは単なる絵に描いた餅にすぎません。
あなたがリアルに感じていないものを、いったいどうすればあなたが手にできるでしょうか。
ルー・タイスは述べました。
「想像が現実になる」と。
想像したものを実現するためには、単に空想するのではなく、想像に強烈なリアリティを与えてやる必要があります。
さもなければ、目的的志向は働いてくれず、ゴールの世界もけっして実現してはくれません。
想像に強烈なリアリティを与えるのは、臨場感です。
私たちはあまり深い考えなしにこの言葉を使いますが、認知科学の分野では、臨場感はきわめて重要なキーワードのひとつです。
その理由は、人間の脳は臨場感の強い世界を現実と認識するからです。
たとえば、映画を観ているとき、私たちはスクリーンに映し出された世界に強い臨場感を感じます。
そのとき、脳は、スクリーンに映し出された世界を現実だと認識しています。
それゆえに、ただのつくりものの世界を観ているだけなのに、手に汗を握ったり、思わず「あっ!」と叫んだりといった生理的反応を起こすわけです。
映画を観ているときの物理的な現実世界は、たとえば隣にかわいい女の子が座っているとか、床にポップコーンが散らばって汚いといったものでしょう。
ほとんどの人は、こちらのほうが現実だと考えるでしょう。ところが、いっぽうに物理的な現実がありながら、脳は、映画を観て手に汗握るという生理的反応を起こしています。
映画の世界が現実ではないと認識しているなら、なぜ脳がこのような反応を起こすのか、合理的な説明がつきません。
じつは、脳が現実だと認識する情報は、物理世界にかぎられていないし、その情報が嘘か真かという区別もありません。
では、脳が何をもって現実と認識するのかといえば、一番臨場感の強いものなのです。
映画館の場合は、映画館という物理世界よりも、スクリーンに展開する情報世界のほうに、より強い臨場感を感じていれば、脳はそれを現実として受け止めます。
だから、手に汗を握ったり、叫び声を上げたりという反応が起こります。
同様に、小説を読みふけり、物語により強い臨場感を感じていれば、目の前に急ぎの仕事が山積みにされていても、脳にとってそれは現実ではないのです。
このように、人間は、自らが一番強く臨場感を感じている世界を、現実として選びとり、現実として認識します。
逆に、たとえ目の前で起こった大事件であっても、それ以上に強い臨場感を感じている世界があれば、大事件は現実として選択されないし、現実として認識もされません。
これが認知科学のひとつの到達点です。
つまり、人間は、一番臨場感の強い世界を選びとって生きているのです。
これはとても重要な理論で、高いコンフォートゾーンを獲得しようとする場合にも適用することができます。
いま強い臨場感を持っている現状のコンフォートゾーンよりも、さらに強い臨場感をゴールのコンフォートゾーンに与えてやれば、脳は自動的にそれを現実として選択するということです。
ゴールのコンフォートゾーンに強い臨場感を与える方法として、アファメーションは簡便で、効果的な方法です。
私は 1章で、人生のゴールは漠然としたものでいいのだ、と述べました。
現状の外側に設定するゴールというのは、つねに最初は曖昧模糊としているものだからです。
漠然としたゴールのイメージを映画のように精緻につくり込むことはできませんから、ゴールのコンフォートゾーンもまた、それがどれほど高いものか簡単につかめないに違いありません。
人生のゴールを設定することのできた人でも、その場ですぐわかることといえば、将来とても高いコンフォートゾーンに身を置くことになるということくらいではないでしょうか。
とすれば、あなたに必要なことは、ゴールのコンフォートゾーンの臨場感を、不断に上げていくというプロセスです。
そうやって臨場感を絶えず強化し、同時にコンフォートゾーンそのものも、よりゴールにマッチするよう上げていくのです。
アファメーションのつくり方は後ほど説明しますが、たとえば、夜、床についたとき、朝目が覚めたとき、あるいは通勤電車に揺られているときなどに、人生のゴールを強く思い描きながら、自らつくったアファメーションの言葉を自分に語りかけていきます。
アファメーションは、あなたのゴールのイメージを明快で鮮明にしてくれる効果も発揮します。
たとえば、あなたが心からやりたい仕事に取り組んでいる姿、顧客が感動する精力的な仕事ぶり、新しいビジネスパートナーと熱心に交渉するさま、希望する事業の拡大に取り組んでいる様子、ゴールを達成したときのあなたには、さまざまなシーンが待ち受けています。
プライベートでも、たとえば会員制クラブのラウンジでとる休息、仲間たちと開くホームパーティー、家族とともに行く海外への船旅など、たくさんのシーンがあるはずです。
実現したいシーンの数々を強く思い浮かべ、アファメーションによって、その臨場感を強めていきます。
始めてしばらくの間は強い臨場感をえられなかったとしても、あきらめずに毎日、アファメーションをくり返してください。
個人差はあるかもしれませんが、 1カ月か 2カ月ほどで、臨場感の高まりを実感できるようになります。
そして、これからの長い人生においてアファメーションを毎日の日課とし、欠かすことのない習慣にするのです。
以上に見てきたように、アファメーションは、ゴールのコンフォートゾーンをあなたの脳に選択させるための技術です。
この方法をつづけていけば、あなたがとるすべての選択と行動は、ゴールの世界の高いコンフォートゾーンにもとづいたものに変わっていきます。
じつは、これが人間の成長というものです。
ずいぶん会わなかった昔の仲間に久しぶりに会ったとき、相手が社会的に成功し、いかにも落ち着き払った態度を身につけていたら、あなたはどのように声をかけますか。
「なんだか、大人物になったように見えるなあ」とか、「ずいぶんリーダー然としてきたじゃないか」と、驚きの声を上げるのではないでしょうか。
相手がいかにもそう声をかけたくなるような人物に変化したのは、彼があなたの記憶にある昔ながらのコンフォートゾーンから、高いコンフォートゾーンへと、いつの間にかゾーンを変えているせいです。
高いコンフォートゾーンの話し方やふるまいが、あなたに強く相手の成長を意識させるわけです。
およそ社会でひとかどの人物と評価されるような年配の人は、自らの成長プロセスの中で高いコンフォートゾーンを獲得しています。
たいていの人は無意識のうちにそれを行っています。
意識的にやったという人でも、コンフォートゾーンやアファメーションの理論を学んだことはないと思います。
彼らに共通するのは、将来こうなりたいという自分の姿を強くイメージし、つねに「私にはできる」と自らを肯定しつづけてきた点です。
それが高いエフィカシーと強い臨場感につながり、コンフォートゾーンを上げる作用をもたらし、目的的志向を働かせたということでしょう。
さて、アファメーションで用いるのは、必ずしも言葉だけではありません。
ルー・タイスは、こう述べました。
「大切なのは、ワーズ(言葉)、ピクチャー(イメージ)、エモーション(情動)」 つまり、アファメーションとは、言葉、イメージ、情動を使って、エフィカシーを高め、臨場感を強める技術です。
ここでも、情動をうまく使うことがとても大切です。
ルー・タイスが講演会でよく披露したのは、レモンの話です。
聴衆に目を閉じてリラックスしてもらい、ルーはおもむろに次のように話し始めます。
そして、キッチンに新鮮なレモンをひとつ取りに行くところを想像してもらいます。
「冷蔵庫に向かって歩き、ドアを開いて果物ケースを引き出します。その中の、固く黄色いレモンを手に取ります。そして、冷蔵庫のドアを閉め、キッチンの引き出しから果物ナイフを取り出し、みずみずしいレモンを半分に切ります。片方を手に取りゆっくりと口に運び、じっさいに味わってみます。さあ、大きくひとかじりしましょう」
あなたもルーの言葉どおりにして、レモンをかじってください。
「すっぱい!」という、きわめてリアルな感覚があなたに訪れるはずです。
このリアルな感覚は、あなたの中にある記憶です。
それは、山登りの途中の山小屋でもらった、青々とした夏のレモンの記憶かもしれないし、ひどい風邪で伏せっているときに、母親が絞って飲ませてくれたレモンの記憶かもしれません。
いずれにしても、「すっぱい!」という感覚には、すがすがしい気持ちや自分の体にエネルギーが満ちる喜びなど、記憶に刻み込まれた何らかの情動をともなっているはずです。
アファメーションの言葉を自分に語りかけるときも、ゴールのイメージをリアルに思い描き、同時に、心からすがすがしく感じたときの気持ちや、楽しくてわくわくしたときの喜びといったポジティブな情動を、記憶の中から引っ張り出して味わうようにします。
言葉とイメージにポジティブな情動が結びつくことで、高いエフィカシーを保つことも、臨場感をより強化することも容易になります。
オリンピック出場を目指していたマイケル・フェルプス選手が毎晩、眠りにつく前にベッドで行っていた出場イメージのビジュアル化も、まさにこの方法だったと考えることができます。
彼は、オリンピックに出場できると確信し、それを言葉にして、決勝戦で泳ぐ自分の姿をイメージし、そこでどんなに素晴らしい情動を味わうかをリハーサルしていたはずです。
つまり、言葉、イメージ、情動の3つを使ってエフィカシーを高め、ゴールの世界のコンフォートゾーンがいかに自分にふさわしいものであるかを、自らに刷り込んだのです。
この刷り込みのプロセスは、次の公式によって表すことができます。
I(想像力 Imagination) × V(臨場感 Vividness) = R(現実 Real) この公式が意味するところは、ゴールを達成した将来の自分の姿を想像し、そのイメージに強い臨場感を与えていくことによって刷り込みが行われ、ゴールが現実のものになる、というものです。
最後に、アファメーションのつくり方をまとめておきましょう。
アファメーションには、 11のルールがあります。
ひとつひとつは簡単なルールですが、これらを守って的確で効果的なアファメーションにしていくことがとても重要です。
①個人的なものであること アファメーションは、一人称で書きます。
つまり、アファメーションの主語は、個人の場合は「私」、チームや組織の場合は「私たち」「われわれ」です。内容は、あなたが本心からそう願ったり、考えたりする、個人的なものにします。
社会的な通念にとらわれたり、他人の評価を意識したりして内容を決めてはいけません。あくまで自分の価値観で内容をつくりましょう。
②肯定的な表現のみを使い、肯定する対象のみを盛り込む アファメーションの中には、「こうなりたくない」「欲しくない」という表現を使ってはいけません。
また、なりたくなかったり、欲しくなかったりする対象も、いっさい盛り込みません。
理由は、否定的な言葉や否定する対象を口にしたとたんに、その人のエフィカシーが格段に下がってしまうからです。
このことは、あなたが他人の悪口をいっているときにどんな精神状態になっているか、ちょっと自己観察するだけで理解できると思います。
たとえば、心身ともに充実して仕事に取り組んでいたのに、急に嫌いな同僚が近くにやってきたため、あなたは思わず「こいつ、態度でかいんだよ」とセルフトークをしたとします。
すると、その瞬間に仕事の充実感や満足感が失せてしまうと思います。
これは、相手の悪口をいったことによって、相手と同じ低いエフィカシーに自分を下げるカラクリが働いたからです。
嫌いな相手のことを考えたり、悪口をいったりするときのあなたは、相手と同じレベルに立ち、同じ目線で物事を眺めているはずです。
そのせいで、高いエフィカシーに満ちた状態にいても、相手と同じ低いエフィカシーのレベルに下がってしまうのです。
セルフトークをコントロールすることはもちろん大切ですが、アファメーションでは、このカラクリをとくに注意して排除しなければいけません。
アファメーションでは、「こうなりたい」「欲しい」という表現と、その対象についてのみを記してください。
③「達成している」という内容にする アファメーションは、現在のあなたがすでに人生のゴールを達成している、という考えのもとにつくっていきます。
なぜかといえば、アファメーションは、あなたのゴールのコンフォートゾーンを上げるための技術だからです。
たとえば、「私は ○ ○をきっとやり遂げる」という内容では、あなたのいまのコンフォートゾーンが、ゴールのコンフォートゾーンよりも低いということを前提にしています。
これでは、ゴールのコンフォートゾーンをリアルに感じることはできるはずがありません。
したがって、アファメーションは、「私は ○ ○を持っている」「私は ○ ○をしている」「私は ○ ○だ」といった言い回しを使い、すでにゴールを達成しているという内容にします。
④現在進行形で書く 同じ理由から、アファメーションの文言はすべて、「いままさに ○ ○している」「いま起こっている」などのように現在進行形で記していきます。
⑤決して比較をしない 他人と比較して「こうだ」という内容にしてはいけません。
他人との比較によって成り立つゴールの世界は、本当のゴールではありません。
比較優位で成り立つものや相対化されたものではなく、あなたの本心から生まれた絶対的なゴールの内容を記しましょう。
⑥「動」を表す言葉を使う アファメーションでは、ゴールの世界における自分自身の行動やふるまい方を表すような言葉づかいの工夫をしてください。
たとえば、「私は、どんなに社会的地位の高い人に対しても、にこやかに親しみのある笑顔を向け、落ち着いた身ぶり手ぶりを交えて交渉することができる」といった感じです。
動を表す言葉を使うことで、ゴールを達成した自分の姿をより鮮明にイメージすることができます。
⑦情動を表す言葉を使う ゴールを達成したときに、あなたがいかに感動するか。
その感動をあなたに正確にイメージさせる言葉を使って、ゴールの世界のあなたの姿をアファメーションの中に表していきます。
そして、あなたが選んだ情動を表す言葉に対して、かつて体験した「うれしい」「楽しい」「ほがらかだ」「気持ちいい」などの最高の情動を結びつけておきましょう。
情動を結びつけておけば、ゴールの世界の臨場感はいっそう増し、よりリアルになっていきます。
いささか難しい表現を使えば、これは、いわば未来の記憶をつくる作業です。鮮明な未来の記憶をもつことができれば、あなたは将来必ず、その記憶にたどりつくことができるのです。
⑧記述の精度を高める アファメーションは、一度つくれば終わりというものではありません。
毎日、自分にそれを語りかけながら、気づいたことがあればその都度、修正を加え、精度を高めていきます。アファメーションの中に余計な言葉や曖昧性があれば、それも改めていきます。
言葉を選び、アファメーションの内容を磨いていく作業は、あなたのイメージをゴールにぴたりと一致させ、ゆるぎないものにするためにも、とてもいい方法です。
⑨バランスをとる 人生のゴールは、仕事に限定されるものではありません。
キャリア、家庭、姻戚関係、ライフワーク、財産、住環境、地域活動、精神性、健康、余暇など、生きがいを見つけられるあらゆる分野にゴールを見出すことができます。
仕事で大成功すれば健康を投げ打ってもいいという人はいません。私たちが望む幸福というのは、必ずバランスがとれた人生の中にあるはずです。
これから思い描く人生のゴールには、あなたが欲しい様々な分野のゴールをバランスよく組み合わせましょう。そして、それらをよく調和させ、一つひとつのアファメーションが互いに矛盾しないようにしていきます。
⑩リアルなものにする アファメーションの文章は、その文言からゴールを達成した自分自身の姿が浮きだしてくるくらい、リアルな記述にしていきます。
⑪秘密にする アファメーションは、それがルー・タイスや私の指導を受けた正式のコーチである場合を除いて、誰にも内容を明かしたり、見せたりしてはいけません。
それをきっかけに、あなたの邪魔をするドリームキラーが必ず現れるからです。また、アファメーションを他人と共有したからといって、あなたの手助けができる人もいません。
あなたのゴールは、自分の力でしか達成することができないのです。それが少しはできるのは、正式なコーチだけです。
アファメーションは、何よりもあなたの個人的なツールです。あなたのゴールも、あなたのアファメーションも、他人の評価から遠ざけ、懐に大切にしまっておいてください。
以上に記した 11のルールを守って、さっそくあなたもアファメーションをひとつ、つくってみましょう。そして、それを毎日、自分に語りかけてください。
自分に語りかけるタイミングと時刻にルールはありませんが、一番いいのは夜の就寝前のひと時です。就寝前は気持ちもリラックスしているし、そのまま睡眠に移行していけば、アファメーションがより記憶に定着しやすくなります。
試験勉強などで経験したことがあると思いますが、寝る直前に覚えたものは脳が記憶によくとどめるからです。
いくつものアファメーションの言葉が出来上がり、就寝前のアファメーションが毎日の習慣になるころには、あなたのエフィカシーはいまよりも相当に上がっているはずです。
同時に、自己イメージも変わり、本当に達成したい人生のゴールについても徐々に輪郭がはっきりし始め、ゴールの世界の高いコンフォートゾーンも想像できるようになっていると思います。
そうしたあなたの変化に合わせて、就寝前のアファメーションも、イメージと情動をうまく使い、少しずつ高度にしていきましょう。
たとえば、アファメーションの言葉を自らに語りかけ、同時にゴールを達成した自分のイメージを思い浮かべます。
さらに、いままでの人生で味わうことのできた最高の情動(たとえば、最高に愛された幸福感など)を、そこに結びつけるようにします。
やったことのない人は難しいと感じるかもしれませんが、過去の情動の記憶を、いま思い浮かべる未来のイメージに結びつけるのは、慣れれば簡単なことです。
まず情動の記憶を過去のシーンごと思い出し、そのままの状態で、シーンだけを未来のイメージに変えてしまいます。
シーンが変わると、せっかく想起した情動が薄れていくかもしれませんが、そのうちに薄れなくなっていきます。慣れてくると、過去のシーンを思い出さなくても、情動だけを簡単に引っ張り出せるようになるはずです。
これが、 I×V = Rの公式の実践法です。
アファメーションによって、ゴールの世界のコンフォートゾーンの臨場感を強め、高いエフィカシーを獲得すれば、もはやあなたは現状のあなたではなくなります。
人生のゴール達成に向かって、目的的志向が働くあなたに変化しているということです。
あとがきに代えてイメージが未来をつくるマーク・シューベルト 私は、数年前に行われた日本の TPIEセミナーの座談会で、ルー・タイス氏と苫米地英人氏、そしてサッカー日本代表前監督の岡田武史氏の 3人とご一緒したことがあります。
ルー、人とは親しい間柄でしたが、岡田監督とは初対面でした。
まだ記憶に新しいことだと思いますが、岡田監督は、 2010年のワールドカップ南アフリカ大会でサッカー日本代表をベスト 16に導きました。
このときの勝利は日本サッカー界にとって、とても大きな転機だったようです。
それ以来、日本のサッカー選手がイギリス、ドイツ、イタリアの強豪チームに移籍するようになり、ヨーロッパのひのき舞台で当地の選手たちとまったく互角に活躍し始めました。
それ以前にもヨーロッパのチームに移籍した日本人選手はたくさんいましたが、それまではどことなくお客さん扱いだったような印象がありました。
ところが、岡田ジャパンが日本サッカーの素晴らしさを世界に見せつけて以降は、日本人選手を世界の一流選手と同等に処遇し、ファンもそのような眼差しで彼らのプレーを眺めるようになったのではないでしょうか。
さて、その 2年前の 2008年、水泳のアメリカ代表、マイケル・フェルプス選手が北京オリンピックで 8冠王に輝きました。
私は、フェルプス選手がオリンピック出場を決める以前から、彼のコーチを務めていました。
異なる競技、異なる立場ですが、私は岡田監督のことを、世界スポーツの新しい風を感じることのできた、数少ない同時代人だと考えていました。
面談の機会を楽しみにしていたことはもちろん、座談会の会場で初対面の挨拶をしたとたんに、私たちはまるで久しぶりに会った旧友のように打ち解けることができました。
いうまでもなく、勝負の世界では、見えない力が作用します。
私はフェルプス選手を 8冠王に導いたコーチと紹介されることがありますが、それはいささか大げさな感じがします。
私は、彼の水泳センスを磨いたわけでも、彼の筋肉や肺活量を鍛えたわけでもありません。
それはすべて、マイケルが自らの力で行ったことです。
水泳の助言や指導を行っていないとはいいませんが、私が一番に力を入れたことといえば、見えない力を彼に上手に使うよう指導した点でしょう。
それが何かといえば、アファメーションです。
じつは、マイケルはオリンピック選手に選ばれる以前から、毎晩、就寝前のベッドの上でアファメーションを行いました。
彼の場合は、ベッドにまっすぐに仰向けになり、天井の壁にビジュアルなイメージを思い浮かべるようにさせました。
オリンピック決勝会場に入場し、控えのチェアに座り、選手紹介のアナウンスに応えて観客に手を振り、軽く体をほぐしながらスタート台に立ち、「レディ」の声とともにスタート姿勢をとり、合図と同時に飛び込む。
飛び込んだときのプールの感触、水をつかんで前進するリズム、先頭を競うライバルたちの気配。
彼は、そこに感じるものすべてを、とても素晴らしいもの、自分にとってこの上なく愛しいものだとイメージしていたのではないかと思います。
そして、これらこの上なく大切なものに包まれて、ゴールに一番でタッチする姿を、彼はイメージしていました。そのとき、彼が至福の思いを味わっていたことはいうまでもないでしょう。
それから 1年ほどで、 15歳だったフェルプス選手は、シドニーオリンピックの全米代表に選ばれました。その大会では、 200メートルバタフライで 5位入賞を果たしました。
その後も、彼は、ベッドで大会出場イメージを思い描く日課を欠かしたことがありません。イメージとアファメーションによって、毎晩、ゴールのコンフォートゾーンを非常にリアルに感じつづけました。
そして、そのとおりにオリンピックや国際大会出場を果たし、栄冠を手にしていったのです。ふり返るに、彼のライバルたちの中には、フェルプス選手と同等の才能と力量の持ち主がいたかもしれません。
彼だけに特別な能力があったと考えるのは、むしろ間違った考え方です。能力で劣っているわけではないほかの選手は、しかし、フェルプス選手に勝てなかったのです。
何が勝敗をわけたのかといえば、オリンピックの大舞台で練習のときよりも高い能力を発揮した、フェルプス選手の高いコンフォートゾーンだと私は思います。
サッカーの試合では、「アウェーの試合だから、たとえ引き分けでも、勝ったも同然だ」とよくいわれます。
一般的には、審判や観客がホームのチームを贔屓するから、アウェーでは簡単に勝てないと解釈されています。
もちろん、こうした表面的な要因もありますが、ホームとアウェーで勝敗に差が出るのは、主としてコンフォートゾーンに原因があるということができます。
たとえば、たいていの選手は、いつも練習している場所をコンフォートゾーンだと感じています。
アメリカの水泳選手なら、泳ぎ慣れた地元水泳クラブのプールを一番快適に感じ、そこで練習するときに最も高い能力を発揮します。
日本のサッカー選手なら、自分が所属するチームのサッカー場をコンフォートゾーンと感じ、それ以外の試合会場はコンフォートゾーンから外れています。
同じ国内ならまだしも、海外での試合となると、コンフォートゾーンから大きく外れてしまうのはいうまでもありません。
そのため、選手は自分がコンフォートゾーンの外にいると感じ、いつもやっていることがうまくできなくなってしまいます。
職場のデスク周辺にいるときは、いつもどおりうまく仕事ができるのに、初めて役員会議に呼ばれて報告することになると、歩き方までぎこちなくなるのと同じことです。
雰囲気にのまれるという言葉がありますが、これは、持てる能力を存分に発揮するにはコンフォートゾーンの内側にいることがいかに重要かをよく表しています。
とすれば、本番で練習と同じ好成績を残すには、本戦の会場の場を自らのコンフォートゾーンにするしかありません。
「でも、どうやって?」と、みなさんは感じるでしょう。その答えが、フェルプス選手がベッドの上で毎晩行ったイメージのビジュアル化であり、アファメーションです。
私は、岡田監督がワールドカップ南ア大会を戦うに当たり、自らと選手の高いコンフォートゾーンをどのように維持したのか、その点に強い関心を持っていました。
その理由は、当時の日本のマスコミが執拗に岡田監督バッシングを行っていたからです。
岡田監督は当時、「ベスト 4に入る」と公言してはばかりませんでした。
これは、当時の日本代表にとって非常に高い目標で、日本のマスコミは、岡田監督が広げた大風呂敷と受け止めたのかもしれません。
聞くところによれば、一部の有力なサッカー評論家が「どこまでが本気なのか」と急に岡田監督バッシングを始めたようです。
ただでさえアウェーというハンディキャップがあるのに、ほんらい味方であるはずの日本のマスコミまでが背後から攻撃を加え、岡田監督は挟み撃ちにあっていました。
いうまでもなく、サッカーは集団競技です。
選手を束ねる監督の動揺はたちまち選手の心に広がり、それが悪い結果につながることは目に見えています。
ところが、本大会のフタを開けてみると、日本代表チームは、それまでの不調を跳ね返すように得点を重ねていきます。
しかも、ホームでしか見ることのできないようなファインプレーがいくつも生まれていきました。
私が受けた印象では、監督と選手のコンフォートゾーンは、あきらかにアウェーである南アフリカの競技場にあったのです。
「あまり余計なことは考えませんでしたし、ベスト 4に入るためにどうするかということだけを考えていましたね」 岡田監督は、セミナーの座談会でこう述べました。
どうということはない発言に聞こえるかもしれませんが、私は「面白い」と感じました。
考えるとは、勝つことをリアルにイメージすることにほかなりません。
スポーツの現場にいる人でなければピンとこないかもしれませんが、私たちが勝つことを考えるときというのは、状況に応じてどのような動きをするか、具体的に細かくリアルに思い浮かべることなのです。
岡田監督は、自分の考えや作戦を選手たちにも細かく話していました。
選手たちも、岡田監督が話す内容を具体的に細かくリアルにイメージしたことでしょう。
そうやって彼らは、南アの競技場でくりひろげる自分たちの素晴らしいプレーを、ベスト 4にふさわしいプレーを、何度もくり返し味わったに違いありません。
目標に合った高いコンフォートゾーンを持つ、勝負の流れというのは、たったこれだけのことで変わってしまいます。
考え方が変われば、見えている現実が変わり、異なる結果が生まれるのです。
岡田監督や選手たちは、ルー・タイスの方法論を知っていたわけでもないのに、まさにルーが発見した公式どおりのことをワールドカップで実践したといえそうです。
勝者は、つねに勝つことだけを考えているものです。
「負けたらどうしよう」ということは考えません。
ルー・タイスがよく紹介する話ですが、フットボールの一流選手は、試合でいつも「俺のところにボールを寄こせ」と強く考えています。
ボールキャッチに失敗すれば、レギュラーを降ろされるかもしれないし、年俸を削られるかもしれません。
じっさい、試合中に「俺にボールを寄こすなよ」と思っている選手はかなり多いともいわれています。
それでも一流選手は、失敗することなど微塵も考えずに、「俺に寄こせ」とだけ考えます。
なぜなら、それが本当に望んでいることだからです。
だからこそ、彼らはキャッチに成功し、観客に超ファインプレーを見せつけることができます。
彼らが望むのは唯一、勝つ自分、成功する自分であり、その目的を果たすためにプレーしているのです。
大きな仕事を成し遂げるときにも、人生のゴールを達成するときにも、同じことがいえます。
バッシングを受けていた岡田監督がそうであったように、本当に望むものを手に入れようとするときに、「失敗したらどうしよう」と考える人はいません。
もし、そういう考えが浮かぶなら、手に入れようとするものが本当に望むものではないか、「次のチャンスが回ってこないかもしれない」と思うからでしょう。
前者の場合は、ゴールの設定を考え直すいい機会だと思います。
ゴールの設定が間違っていれば、いくらアファメーションを行っても、ゴールのコンフォートゾーンに強いリアリティを感じることはできません。
自分が本当に望むゴールだからこそ、高いコンフォートゾーンに強いリアリティを持ちつづけられるのです。
また、後者の場合は、「失敗は存在しない」ということを深く理解してほしいと思います。
たとえば、成果を上げられなかったら次のチャンスはないという仕事に取り組んで、運悪く成果を上げることができなかったとします。
そのときに、私なら「いい経験をした」としか感じないでしょう。
たしかに次のチャンスはないかもしれませんが、だからといって、人生のゴールを達成できなくなるわけではありません。
恐れることは何もないのです。
むしろ、成果を上げられなかった体験が次の成功に結びつき、そのうち誰よりも大きな成果を上げることにつながるはずです。
「失敗したらどうしよう」というのは、「失敗してはいけない」という親の教育が生んだ刷り込みです。
人生のゴール達成のためには、そのブリーフシステムを変える必要があるということは、わが師ルー・タイスと親愛なる苫米地英人氏が述べているとおりです。
私は、これから再び、地球に日本の時代がやってくると考えています。
いまは過酷な社会状況がつづいているかもしれませんが、岡田監督とサッカー日本代表の活躍が、輝かしい未来を暗示しているという思いが、私にはあります。
世界で活躍しようとする日本のみなさんには、本書をつうじて、とくによくアファメーションの原理を学んでいただきたいと思います。
ゴールのコンフォートゾーンに対する、リアリティのある強いイメージこそが、みなさんをきっと羽ばたかせてくれるはずです。
未来は、イメージによって拓かれるのです。
〈著者プロフィール〉苫米地英人(とまべち・ひでと) 1959年、東京生まれ。
認知科学者(機能脳科学、計算言語学、認知心理学、分析哲学)。
計算機科学者(計算機科学、離散数理、人工知能)。
カーネギーメロン大学博士( Ph. D.)、同 CyLab兼任フェロー、株式会社ドクター苫米地ワークス代表、コグニティブリサーチラボ株式会社 CEO、角川春樹事務所顧問、米国公益法人 The Better World Foundation日本代表、米国教育機関 TPIジャパン日本代表、天台宗ハワイ別院国際部長、一般財団法人苫米地国際食糧支援機構代表理事。
マサチューセッツ大学を経て上智大学外国語学部英語学科卒業後、三菱地所へ入社。
2年間の勤務を経て、フルブライト留学生としてイエール大学大学院に留学、人工知能の父と呼ばれるロジャー・シャンクに学ぶ。
同認知科学研究所、同人工知能研究所を経て、コンピューター科学の分野で世界最高峰と呼ばれるカーネギーメロン大学大学院哲学科計算言語学研究科に転入。
全米で 4人目、日本人として初の計算言語学の博士号を取得。
帰国後、徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、同ピッツバーグ研究所取締役、ジャストシステム基礎研究所・ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院 NMRセンター合同プロジェクト日本側代表研究者として、日本初の脳機能研究プロジェクトを立ち上げる。
通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。
現在は自己啓発の世界的権威ルー・タイス氏の顧問メンバーとして、米国認知科学の研究成果を盛り込んだ能力開発プログラム「 PX 2」「 TPIE」などを日本向けにアレンジ。
日本における総責任者として普及に努めている。
著書に『 TPPが民主主義を破壊する!』(サイゾー)、『君も年収 1億円プレーヤーになれる』(宝島社)、『税金洗脳が解ければ、あなたは必ず成功する』(サイゾー)など多数。
苫米地英人公式サイト http:// www. hidetotomabechi. com/ドクター苫米地ブログ http:// www. tomabechi. jp/ Twitter(@ DrTombechi) http:// twitter. com/ drtomabechi携帯公式サイト http:// dr-tomabechi. jp/〈監修者プロフィール〉マーク・シューベルト Mark Schubert米国水泳オリンピックチームのコーチを歴任し、多くのメダリストを輩出する世界トップクラスのコーチ。
ロンドンオリンピックで史上初の 3連覇を達成し、北京オリンピックで前人未到の 8冠(金メダル 8個獲得)を達成したマイケル・フェルプスの育ての親として知られる。
1970年代からルー・タイスにコーチングのスキルを学ぶ。
米国水泳オリンピックコーチを 1980年から 2004年まで歴任( 1980年は米国は不参加)。
2009年6月から 2010年 11月まで米国水泳ナショナルチームのヘッドコーチを務める。
1997年、名誉コーチとして国際水泳殿堂入り。
オーストリアの作曲家シューベルトの末裔。
「言葉」があなたの人生を決める著者 苫米地英人監修者 マーク・シューベルト編集協力 岡本聖司カバーデザイン 重原隆イラスト ミヤケシゲル本文デザイン 二神さやか発行者 太田 宏発行所 フォレスト出版株式会社 〒 162-0824東京都新宿区揚場町 2-18白宝ビル 5 F TEL 03-5229-5750(営業) 03-5229-5757(編集) URL http:// www. forestpub. co. jp/ Hideto Tomabechi 2013————————————————————–●フォレスト出版株式会社『「言葉」があなたの人生を決める』( 2013年 9月 14日 3版)に基づいて制作されました。
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