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第4章 「私にはできる!」

誰だってその人なりの問題を抱えている。完璧な人生なんてありえない。絶対に。

目次

問題は必ず起こる

ちょっとしたイヤな気分や軽い敗北感は、生きていれば普通に味わうものだ。

何をやってもうまくいかず、あきらめるつもりはないけれど(ときにはあきらめることもあるが)、間違いなくつらいときは必ずある。

大きな問題に見舞われるときもある。

仕事をクビになったり、離婚届を出されたり、車で事故に遭ったり、その三つが同時にやって来たり。

お守りを持っているだけではどうにもならない出来事が人生では起こる。そこまで深刻ではないものもある。

お気に入りのシャツをなくしたり、メガネが割れたり、犬があなた宛ての手紙で遊んだり。夜あまり眠れない人もいるかもしれない。料理を焦がしてしまった人もいるだろう。

そして、ネガティブな体験はたいてい一つの問題で終わらない。問題は拡散する。毒ガスのように、人生のあらゆる側面へにじみ出していく。

お金の問題を抱えている人は、意識的か無意識かは別にして、食事がストレスになる。つまり食事を楽しめない。家族にイライラすることも多くなる。パートナーに腹が立ち、子どもを避けるようになる。

犬が吠えたり、ご近所が騒がしくしたりすればむしゃくしゃする。渋滞や行列のような小さなことにもがまんできなくなる。

小さな問題が大きなものに拡大していくのは、人生すべてが汚染されていくような感覚だ。デスクにこぼしたコーヒーのように、小さな問題はあっという間に大きく広がっていく。

茶色い液体が容赦なくパソコンや電話、書類の束に迫っていき、慌てて紙を当てて被害を食い止めようとしても役に立たず、状況は悪化するばかりだ。

小さな問題は人生のあらゆる部分に影響を及ぼし、そしてやがて、その問題にまつわる感情が物事を見つめるレンズになっていく。そしてついにはこう考えるようになる。

  • 「生きるのってすごく面倒」
  • 「自分には耐えられない」
  • 「どいつもこいつもクソ野郎だ」
  • 「自分の人生は終わった」

こうした思いは、(今はどんなにそう思えても)現実を映したものではなく、現状に対する主観でしかない。

ところが、その違いがわかったところで、今まさに泥沼にはまっている人にはなんの意味もない。というより状況がさらに悪化しかねない。

ネガティブな経験のせいで問題を乗り越える気力が湧かず、何より人生が楽しくない。そんなときは、問題や世界の見方を変えることだ。

ものすごく前向きで地に足のついた、新しいアプローチを採用することだ。そんなわけで、この章のアサーティブな言葉は「私にはできる!」だ。

大変なのはあなただけではない

人類全体の不幸を一つの場所に集め、誰もが均等に自分の取り分を受け取らなければならないとしたら、ほとんどの人は取り分に納得するに違いない。─ソクラテス

人間は、誰しもその人なりの問題を抱えている。完璧な人生なんてありえない。絶対に。

ソクラテスが生きていた2400年前もそうだった。もちろん今もそうだ。

自分に容赦なく正直になると、自分の抱えている問題は、ほかの人が抱えている問題と比べればてんで大したことがないと気づく。

本当だ。よく考えてみてほしい。

この本を読んでいるあなたの人生が、ソマリアに生まれた子どもや、インドでアンタッチャブルとして生まれた子どもと同じくらい厳しいということはないはずだ。

ソクラテスが生まれた紀元前470年ごろの人たちと比べれば、困難はずいぶん減ったはずだ。

当時は近代医学も、電気も、車も、人々を守る優れた法律もなかった。感情でびしょ濡れになったナラティブなセルフトークではなく、現実や本当の人生とつながろう。

地球の反対側の人たちや、はるか昔の人たちを比較対象にするまでもない。住んでいる町の反対側へ行くだけでいい。あるいはオフィスや近所の人たちを見渡せばいい。ほぼ間違いなく、自分よりもっと大変な問題を抱えた人たちが見つかるはずだ。

大変なのはあなただけではない。みんな、そうなのだ。他人に見えるのは人生の上澄みにしかすぎない。

一方、自分の人生を見るとき、私たちは裏側にばかり目を向ける。「それが問題を解決する何の助けになるの?」と思った人もいるだろう。まあ、確かに助けにはならない。

そんなことを言ったところで、車のタイヤが新品に換わるわけじゃないし、銀行口座の預金が一気に増えるわけでもない。

それでもここで、貴重な人生のほんのひとときでいいから、自分の人生の暗い面を見つめるのはやめて、まわりを見渡してほしい。

感情でびしょ濡れになったナラティブなセルフトークではなく、現実や自分の本当の人生とつながろう。

そうすると、現実ベースの視点で物事をとらえられる。

力強い姿勢で人生と問題の数々に向き合い、すきあらばあなたにとりつこうとしてくるネガティブさという名の亡霊を追い払える。

まわりのみんなが自分の問題(場合によってはあなたのものよりもはるかにひどい問題)に対処できているなら、あなたにだってできないはずはない。

こんなことを言いながらも、私もわかっている。本当にひどい出来事が起こったら、落ち着いてなんかいられない。

見方を変えたからといって、問題は依然として残っているし、つらいし、ネガティブな感情が自分の明るさを奪っていく。

あなたはこれまで問題を乗り越えてきた

そういうひどい気分を味わったときは、一歩下がるといい。一歩と言わずもっと下がってもいい。いや、もっとずっと下がって、下がって下がって……人生の全体像をありのままの姿で見つめられる場所まで下がってみたらいい。

そしてその場所から、想像力を働かせよう。私はクライアントに、まず人生全体を見つめるように言う。視界の端から端まで、人生という名の線路が左から右へ伸びている光景を想像するのだ。

もちろん、線路は何もない空間に伸びているわけじゃない。

背景には田園もあれば町もあり、トンネルも、橋も、どこまでも広がる海も、そびえ立つ山々も、深い峡谷もある。

そうしたまわりの風景の広大さと、魔法のような多様さを思い描いてみよう。そうしたら、今度は線路の左のずーっと向こうに目を向ける。それはあなたの過去だ。

あなたの来し方や、これまで旅してきた土地だ。その方向へ、線路をずっとたどってみよう。歩いていくと、これまでの人生が見渡せる。

目の前には、あなたの身に起こったすべてが広がっている。それが見えたら、特に記憶に残る出来事をいくつかピックアップする。思い出すのはたぶん、愛にまつわる思い出だろう。

はじめての子どもを腕に抱いたときの感触。かけがえのない記憶だ。カリブ海の島へ家族で旅行に行き、楽園で何日か過ごしたことでもいい。はじめてのマイホームをついに手に入れた思い出はどうだろう。

狙っていた仕事に就けたことは?なんでもいいので、そうした夢のような思い出に浸ろう。

人によって差はあると思うが、振り返るべき最高の経験は何十個、あるいは何百個もある。卒業、昇進、受賞、仲間、恋人。

心が安らぐ子どものころの小さな思い出や、ほっこりした気持ちになれる懐かしの味や光景、音でもいい。心を開き、すばらしい日々に立ち戻ることを自分に許してあげよう。

しかし残念ながら、このアプローチは甘美な思い出を振り返るだけでは終わらない。次はイヤな思い出を振り返らなくちゃならない。つらかった時期や苦しかった時期、打ちのめされた出来事を思い出そう。口げんか、別れ、スピード違反の切符、公共料金の督促状。

こっそり家を抜け出そうとして、親にこってり絞られたことは?つらい子ども時代を過ごしたなら、それをすべて確認しよう。

手術を受けて何日も病院のベッドで寝て過ごしたことは?恋人と別れて何週間も絶望を味わったことは?深く心が傷ついた悲しい出来事から、ちょっとイラついたり残念だったりしたことまで、すべてを目にしよう。

問題をすべて思い出し、そして乗り越えよう。過去の問題の多くは、よく見ると、あなたが今抱えている問題とすごく似ている。あなたは過去に、今と同じような気分を味わったはずだ。

もう二度と恋人なんてつくらない。これ以上の仕事なんて見つかりっこない。こんな恥ずかしい思いをしてもうこの先生きていけない。

しかし、あなたは生きている。立ち上がって、また歩み出した。そして今から振り返ると、問題の中には小さなことに思えるものもある。

高校の数学のテストでDを取ってパニックになったことが、あるいは気になっていた男の子や女の子と2回目のデートに漕ぎつけられなくて最悪の気分になったことが、今のあなたには信じられないはずだ。

もっと深刻な問題も、今ではだいぶ違って見える。

つまるところ、あなたはその苦境をどうにかこうにか乗り越えてきたわけで、その経験が今のあなたを形づくっているのだ。

未来に目を向ける

さて、線路の片側を端まで行ってみたら、今度は振り返って逆方向へ進んでみよう。右側は、もちろんあなたの未来だ。

そこにはこれから起こること、この先の経験や出来事が待っている。まだ見ぬ人との新しい関係。行ったことのない場所。ずっとやりたかったこと。

すごく好きになった人とはじめてキスをして、背筋に電流が走ることもあるだろう。愛し合う伴侶と一緒に年を取り、絆や満足、心の平穏を感じることもあるだろう。

子どもを授かって、その子が成長し、優秀賞をもらい、タッチダウンを決め、クラスの劇に出るのを見るかもしれない。

すぐに子どもの人生をいとおしく思うようになるはずだ。孫と一緒に映画を観に行き、ディズニーワールドに行く日も訪れるだろう。

人生の一大イベントから、親友と笑い合う夜まで、まだ内に秘めたままの能力が発揮できるときやチャンスがやって来ることなどはたくさんあるはずだ。

人生は、本当にすばらしい出来事の数々をあなたのために取ってある。もちろん楽しいことばかりじゃないが、それはもうわかっているはずだ。

試練や苦難の時期はやって来る。失望、敗北、競争、恐怖。けれどそこで立ち止まらず、未来の一番端まで進もう。そう、人生には終わりが来る。命が尽きて地上に存在できなくなり、生の体験が完結するときは訪れる。

自分の最後の日を想像してみてほしい。気持ちのいいものではないが、その日は必ず来る。なら今のうちに受け入れておこう。

生きていれば、やりたくないことを、苦手な人と一緒に、どうでもいい場所でやらなくてはいけないときもある。

せっかく出会った人が、あっさりあなたの人生からいなくなることもある。お金を損したり、何かが壊れたり、犬が死んだりすることもある。

しかし、あなたはそれを乗り越える。いいことも悪いことも。これまでと同じように。あなたはチャンピオンのようにそこに立つ。

そうした出来事の数々は、あなたの人生のストーリーという映画の、過ぎ去っていく1シーン1シーンにすぎない。

人生の舵を握れ

真っ暗闇の中にいるときこそ、光に目をこらさなくてはならない。─アリストテレス

このエクササイズの目的は、客観的な視点で物事を見つめられるようになることだ。過去の体験や、まだ見ぬ経験を確認しながら、今の自分が向き合っているものをじっくり確かめてほしい。

今あなたの目の前にある問題は、たくさんの何かの中の一つにすぎない。あなたの船はまだ沈んでいないし、簡単に沈みもしない。

波はあるし、ときには嵐もやって来るし、船酔いにかかることもある。それでも、人生の航海は続く。そして船長なら、大荒れの海にただ翻弄されるだけじゃいけない。

舵を握り、望みの方角へ船を戻す仕事に取りかからなくちゃならない。ここまでの旅は、なかなか思いどおりにいかなかった。

しかしそれは、あさっての方向へ流されていくのをいつまでも黙って見つめているしかないという意味じゃない。

人生の一面で起こった出来事に、すべてをダメにされるようなことは絶対にあっちゃいけない。

仕事がうまくいかないせいで、家でみじめな気分になったり、恋人とけんかしたせいで暗い気分で仕事をしたりするヒマは、私たちにはない。

やって来る問題に一つ一つ向き合い、問題に集中しながら進んでいこう。ひとまとめに解決しようとしてわけがわからなくなるのはよくない。必要なのは思考の正確性と忍耐、そして規律だ。

それぞれの問題に、頭の中の解決策を使って粛々と取り組もう。忘れないでほしい。どんなものにでも解決策はある。

ないように思えるときもあるが、それはまだ見つかっていないだけだ。そして見つからない理由の多くは、問題との距離が近すぎることにある。少し、あるいは大いにズームアウトして、全体像を眺めよう。

これは、心理学者が「認知再構成法」と呼ぶテクニックと同じものだ。問題の見え方をシフトさせよう。人間の心は、ごく当たり前に本人をだまし、変なふうに思考をゆがめる。

本人は常に理性的だと思っていても、実際にはそうじゃない。人は認知バイアスや感情、勘違いの影響を受けている。そしてほとんどの人はそのことに気づいていない。

近すぎて、あるいは深入りしすぎていて、気づくことさえできないときもある。

大切なのはいったんスピードを緩め、一歩下がり、実際の状況を把握することだ。イヤな気分について、一つ奇妙なことがある。

我々はまったくのウソを自分自身に語り、自分をだましてみじめな気持ちをつくり出すことがよくあるのだ。─デビッド・D・バーンズ(アメリカの認知療法の専門家)

それでもまだ問題にピントが合わないなら、もう一歩下がろう。ダメならもう一歩。さらにもう一歩。「本当の現状はどうなのか」を自分に問いかけよう。

そのうちに問題が印象と切り離されて、クリーンに、そしてクリアに見えてくるはずだ。

辛抱強く下がっていけば、人生の道行き全体が見えてきて、目の前の問題が道の一つのこぶにすぎないことに気づく。

あなたにはできる!

そして、ついに問題を客観的にとらえられるようになったら、こう主張するときだ。

「私にはできる!」あなたはきっとその言葉を心から信じ、実際にうまくやり、前に進める。

あなたならやれる。問題につぶされたりはしない。人生は終わりなんかじゃない。まだたくさんのことが残っている。たくさん。

「私にはできる!」というのは、完璧な解決策があるという意味じゃない。

単純に、あなたにはハンドルを握る力があり、今までと同じように今回の問題もなんとかできるという意味だ。

やってやろう。問題があるからこそ、生きている実感が味わえる!いつも明るい人生を送れるわけじゃない。いつも楽しいわけじゃない。だけどあなたは解決に乗り出した。

「私にはできる!」と言うのは、問題にふたをし、ほんの一瞬だけ気持ちを楽にするためじゃない。

これまで歩んできた道のりを振り返ろう。実際にやれたじゃないか。だから今回もやれる。昔はできたんだから、今だってできる。本当の自分に声をかけ、そしてこう言おう。私にはできる。私にはできる。私にはできる。

 

 

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