第4章……数にこだわり、色にこだわる
【Q20】「何個持つか」を、どう決めるか?
次の写真は、「メリーメイド小金井店」の備品置場です。お客様のご自宅の清掃を中心に家事代行サービスを提供しています。
約700店あるダスキンのFC(フランチャイズチェーン)店のなかで、日本一の売り上げです(2016年10~12月に3ヶ月連続)。

この職場では、常時20人以上のパートさんが働いています。上の写真に並ぶ緑色のボックスは、使用頻度が高い洗剤を1箱にまとめたもので、すべての現場に担当のパートさんが必ず携行します。
この「必携セット」を7つ並べ、1番から7番までナンバリングしています。遠くから見ると分かりにくいので、近くに寄った写真を下に用意しました。
ではまず、なぜ7つなのでしょうか。この支店には営業車が7台あります。そしてパートさんが現場に向かうときは営業車を使います。
営業車1台につき、1セット必要です。だから、7セット以上使うことは、絶対にありません。つまり、8つ以上持つのはムダです。
最低限、必要なのは何セットか?この問いを突きつめて考えれば、おのずと導き出される答えは7です。
【A】「これ以上は使わない」という数を、突きつめる
【Q21】備品に数字を振るのはなぜ?
では、なぜナンバリングするのでしょうか。先ほど、箱に1から7まで、番号を振っている写真を紹介しましたが、営業車も1番から7番までナンバリングされています。
そして1番のボックスを持ったら、1番の営業車に乗る。2番のボックスのときは、2番の営業車という具合に、番号で紐付けて使うのがルールです。
さらに次ページの写真のように、ボックスに入れる洗剤にもすべて番号を振り、ボックスのなかでの置き位置を「テプラ」を貼って、示しています。

こうして1番のボックスには、必ず1番の洗剤を入れる。さらに1番のボックスは、必ず1番の営業車に載せる。洗剤1本から営業車まで、1番なら1番で一気通貫させて、管理している。
なぜ、ここまでナンバリングにこだわるのか。ムダを徹底的に潰すため。加えて、お客様先での置き忘れ防止です。
ここまでナンバリングを徹底すると、面倒なようで、従業員のムダな動きが激減し、時短が進みます。片づけの時間が減ります。
「何をどこに戻すのか」が、新入りのパートさんにも、すぐに分かるからです。さらに、探し物の時間が減ります。
「何がないか」がすぐ分かり、それがどこにあるかの見当もすぐにつくからです。1番のボックスに、洗剤が1本欠けているのに気づきました。
欠けている洗剤は何か。ボックスの底を見れば「浴室用洗剤」と書いてあります。だから、「1番の浴室用洗剤を探せばいい」と、すぐ分かります。
1番の浴室用洗剤は、1番の営業車にしか載せないから、まず1番の営業車を見る。
それで見つからなければ、1番の営業車が訪問したお客様のお宅に問い合わせる。この過程のどこかで必ず、なくした洗剤は見つかります。
ナンバリングを徹底していない普通の会社では、こうはいきません。まず「浴室用洗剤が1本なくなっている」事実に、なかなか気づきません。
ないことに気づいたときには、洗剤が今すぐに必要という緊急事態で、パートさんはパニックに陥ります。
そして7台の営業車をくまなく探して、時間を浪費した揚げ句、「今すぐないと困るから」と、新しく洗剤を1本買います。
するとほどなくして、なくした洗剤がひょいと出てくるといった具合です。こうなると、「時間のムダ」に加えて、「お金のムダ」が、発生します。
こういうムダが多い会社は、儲からないのはもちろんですが、ほかにも多くの問題を抱えます。トラブルが頻発するから、従業員満足度が低く、パートさんが定着しません。
お客様からのクレームも増えて、パートさんはますます不機嫌になり、悪循環に陥ります。だから、私たちは徹底的してモノに番号を振ります。数は、それだけで言葉です。
職場に置かれたモノに、数を振れば、それだけで多くのメッセージを、そこで働く人たちに伝えます。数が発するメッセージが、職場に規律を生み、従業員が明るくきびきび、生産性高く働く土台を整える。
【A】数はそれだけで言葉。ムダのない動き方を伝える

【Q22】輪ゴムで引っかけたタグ。
それが何の役に立つ?次の写真を見てください。トイレ用洗剤と浴室用洗剤に、それぞれタグのついた輪ゴムを引っかけています。
本体の番号が1なら、タグの番号も1です。先ほどの写真と同じ、家事代行サービスを手掛ける部署での整頓の工夫です。

何のためでしょうか?少々、マニアックな質問ですが、経営者や幹部ならば、この写真をパッと見て、ピンとこなくては失格です。
もちろん、経営者や幹部に、こんな細かな工夫はできません。この業務改善も、パートさんの発案です。こういう工夫をしたパートさんが現場にいるとき、それを見逃してはいけません。
パッと見てすぐ、「ああ、こういうことだよね」と気づき、すかさず、「この改善はすごい。よく思いついたね。ありがとう」と、激励し、モチベーションを高める。
だから、経営者と幹部は、こまめに現場を見て歩く。さて、洗剤につけたタグの狙いです。答えの前に、次の写真がヒントです。
パートさんが、お客様の自宅でお掃除をしている間、タグはこのように緑のボックスに引っかけられています。

この緑のボックスは、すべての現場に持ち込む道具がそろった「必携セット」です。すでに説明した通りです。そして、タグがついていたトイレ洗剤と浴室洗剤は、予備の資材です。
「今日の現場は二世帯住宅で、トイレと浴室が2カ所ずつある」など、必要に応じて、特別に追加して持っていく分です。このような予備の資材は、現場にうっかり置き忘れて、迷子になりやすい。
普段は現場に持っていかないモノで、前に紹介した写真のように、ボックスのなかで置き場所を示すテプラも貼られていません。そこでタグです。
予備の洗剤を使っている間は、タグを外して「必携セット」の箱に、写真のように引っかけておく。すると、帰りがけに「ああ、今日は予備の洗剤を持ってきていたっけ。忘れずに持って帰らなくちゃ」と、気づく。
タグがショッキングピンクで、目立つ色であるのも重要なポイントです。
もっとマニアックな話をすれば、この部署のパートさんは、ナンバリングされた予備の資材のチェック表(次ページ上)まで用意しています。
一覧表にラミネート加工を施し、ホワイトボード用の消せるマーカーを取りつけて、使用中の資材には〇をつけ、使い終わったら〇を消す。そんな仕組みです。

このように、二重三重にモノの所在をチェックしている。だから、モノがなくならない。だから、モノを探す余計な時間が発生しないし、余計なモノを買ってしまうムダも発生しない。
さらに、この部署では、飲みかけのジュースが誰のものか分からなくなるのを防ぐため、個人別のタグをつくり、冷蔵庫に貼っています(前ページ下)。
こんな細かいことまでと、笑われる方もいるかもしれません。しかし、神は細部に宿ります。小さなムダを徹底的に潰す。
その方針が、パート・アルバイトに至るまで、会社の隅々まで浸透している。こういう現場が、儲かる会社を底辺からがっちり支えている。
【A】迷子のモノをゼロにする
【Q23】なぜ、この本はカラー印刷なのか?
儲かる会社をつくるコツは、余計なモノを持たないことです。だから、余計なモノを買わない仕組みが必要です。いわゆる発注管理です。
そこで、ご参考までに、メリーメイド事業部が実践している、発注管理の仕組みを紹介します。
オフィスの一角に、「発注カード」が並んだコーナーがあります(次ページ上)。

この部署で必要な洗剤やブラシなどの備品について、商品名や単価を明記し、写真をつけたポケットが用意され、一覧できます。
それぞれのポケットには、1枚ずつ、ラミネート加工された発注カードが入っています(前ページ下)。
カードには、商品名と型番、一度に発注する数量(発注単位)が、あらかじめ記してあります。
そして、現場のスタッフが、「この備品が切れそう」と判断したら、このカードに、発注したい数量と自分(発注者)の名前、発注日をマジックで書き入れ、「発注してください」と書かれたポケットに移します(次ページ)。
ここに発注カードが入っていたら、担当者が発注をかけた後、「発注中です」と書かれたポケットに、カードを移します。
そして備品が届いたら、発注カードに書かれた発注者名などを消して、最初のポケットに戻します(次ページ)。

この仕組みは、現場のパートさんがつくりましたが、私が非常に感心したポイントは、色の使い方です。
備品に十分な在庫があって発注がかかっていないときは、発注カードを収納したポケットは、あまり目立ちません。上部の黄色い部分に商品名が表示されているのが目に留まる程度です。
しかし、発注がかかって、カードをポケットから抜くと一転、ショッキングピンクの地色に「発注中」の3文字が浮き上がって見えます。
どの備品が今、発注中なのかが、一目瞭然です。先ほど、「数は、それだけで言葉」と書きましたが、色も同じです。色は、それだけで言葉。
文字で表現する以上のメッセージを、一瞬で効果的に伝えることができます。だから、この本はカラー印刷です。
職場の環境整備のコツを、写真を使って伝えるなら、モノクロ印刷は、ありえません。どこに、どんな色を使っているかが重要です。
そして、読者の皆さんにも、どうか色使いに注意して現場を視察し、現場を改善していただきたい。
現場が色の工夫をしているか。その工夫に、経営者と幹部が気づけるか。それだけで、会社の底力に大きな差が出ます。
【A】色はそれだけで言葉。強い現場は色使いが違う
【Q24】なぜ、発注管理は難しいのか?
多くの中小企業経営者は、発注管理が重要であることを察しています。
発注管理で適正在庫を維持できないのが、トヨタ自動車のような立派な大企業と、自分たちとの大きな差と、認識しています。
そこで自社に発注管理や在庫管理の仕組みを導入するが、足踏みします。考えすぎてしまうからです。
具体的には、発注基準の設定がネックになります。在庫がどれくらい減った時点で、どのくらいの発注をかけるか。
このような発注基準を定めることが、発注管理の導入には不可欠ですが、適切な水準を見極めるのが、とても難しい。
そこで音を上げ、あきらめてしまう経営者が多い。打開策は簡単です。デタラメな基準を決めて、仕組みを回してしまう。
デタラメな発注基準で運用すれば、必ず問題が発生します。すなわち、基準が低すぎれば在庫が不足し、高すぎれば、余剰在庫が発生します。
そうやって最初は失敗しても、結果が出れば、そこから先は簡単です。基準が低すぎると分かったら、上げる。高すぎたら、下げる。
それを繰り返せば、適正な基準はおのずと分かります。深く考える必要などありません。ここでも「考より行」です。失敗を恐れずに、実行に移す。
そして失敗した結果を受けて、手直しする。これは、非常に重要なノウハウです。最悪なのは、正しさを追い求めて考えすぎるあまり、行動しないことです。
【A】基準の設定が難しい。デタラメで走り出すべし


【Q25】「12色セットの蛍光ペン」を持つ人の問題点は?
儲かる会社をつくるコツは、余計なモノを持たない。いくら強調しても、強調しすぎることのない事実です。あなたの会社で、社員は蛍光ペンを何本持っているでしょうか。
一人で12色セットを持っている社員が、いたりしませんか。いたら、反省してください。絶対にムダです。
どんな仕事をして、蛍光ペンを12色も使うのでしょうか。普通はせいぜい2色か3色です。
特殊な仕事ならば違いますが、蛍光ペンを12色も使う特殊な仕事を、私は見たことも聞いたこともありません。
使わないのに12色セットを持っている社員は、「いつか使う」と思っている。
しかし、その「いつか」が訪れないまま5日たち、1年たち、気がつけば、3年たっても一度も蓋を取らない蛍光ペンが何本もあるといった調子です。
もう一つ、お尋ねしましょう。
あなたの自宅のクローゼットを開けたら、ネクタイが何本並んでいますか。あなたの自宅の靴箱を開けたら、靴が何足並んでいますか。何十本も何十足も持っている人が、多くいます。
そのなかに、この3年間、一度も使わなかったものがいくつあるでしょうか。それらを使う機会が、これからの3年間にあるでしょうか。
過去3年間に使わなかったものは、もはや未来永劫、使うことはありません。皆さん、薄々、気づいています。
それなのに、古いネクタイや靴を捨てることなく、新しいものを買ってきて、戸棚に押し込み、入りきらないから、新しい戸棚を買います。
【A】永遠に使わないモノを「いつか使う」と思っている
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