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第4章 質疑応答

第4章質疑応答

外国語教育は、子どもたちの考える力を衰えさせる?小説を読んで得られるものは何?多様性が豊かになれば、価値観のぶつかり合いも多くなるが?たくさんある選択肢から、どれか1つを選ぶいい方法は?常に「現状維持」や「前年踏襲」の、腰が重い大人たちを動かす方法は?頑張るための原動力やモチベーションをどうやって維持し、向上させる?人は死んだらどうなるのか。

出口さんの死生観は?「ウィズコロナ」の時代に、何を考え、どんな一歩を踏み出せばいい?賃金や社会保険の格差は、どうすれば解消される?ダイバーシティやインクルーシブという言葉ばかりが先走っている社会。

現状はどうすれば追いつく?ステイホームが余儀なくされる今、有意義な時間を過ごすためのアイデアは?古い考えのゾンビ企業が淘汰されるのを待たずに、積極的に働きかけるには?上司には理由もなく従えという考えの人たちとどう接すればいい?すでに高い日本のGDPを、もっと上げる必要はあるのか?人生のいい巡り合わせを、自分のほうに引き寄せるためにするべきことは?宗教か、科学か。

幸せな生き方ができるために何を信じればいいのか?仕事以外の時間を確保するためには?将来、起業を目指すために学んでおくべきことは?パートナーを選ぶにあたって大切にしていることは?世界で起こっていることに関心を持つようになるにはどうすればいい?性暴力や虐待がなくなるために、どんな意識や行動が必要?情報が氾濫する時代、情報の正確さや意味を見極めるために重視すべきことは?受験のための教育は受験が終われば必要なくなる。

そんな教育でいいの?物事の本質を人にわかりやすく伝えるコツは?発達障害があることを相手にどうやって伝えればいい?男女格差や性差別について、幅広い世代に興味を持ってもらうためには?

幸福度指数は低いというデータもある日本。

生きることに息苦しさを感じるのはなぜ?

生徒私立校の教員を辞め、アメリカに留学することを決めた者です。

私は英語教師だったのですが、英語教育は子どもたちの考える力を衰えさせているのではないかと考えていまして。

出口さんも著書の中でそのことに言及されていたので、もう少し詳しく教えていただければ嬉しいです。

出口言葉は思考のツールです。

だから、どの国もマザータング(母国語)の教育を大事にしています。

ただ、外国語の教育が考える力を衰えさせるかどうかについては諸説あります。

第1言語であるマザータングを学ぶ脳の部位と、第2言語以下を学ぶ脳の部位が同じかどうかの議論があります。

もし部位が異なれば、英語を勉強しても考える力には何の影響もないことがわかります。

これについてはまだ論争が続いているのですが、今の学会の大多数は、母国語をきちんと勉強するのであれば、英語やフランス語や中国語をいくら習っても問題はない、考える力は落ちないという意見です。

それだけではなく、言語は思考のツールですから、他の言語を学ぶことで他の文化圏に住んでいる人々の考え方を学ぶことができます。

ただ、小学校から英語教育を行ったほうがいいかどうかは僕にはわかりません。

言語はスポーツと一緒で、早く始めるほうが早く上達するのは確かでしょう。

幼稚園や小学校からどの程度英語を学ばせるかについては論争があるかもしれませんが、中学・高校以降は英語を勉強して何か問題が生じると考えている人はほとんどいないと思います。

生徒「人・本・旅」の「本」についての質問です。

私はよく小説を読むのですが、出口さんは小説を読んで何が得られたと思われますか?出口めちゃ得られますよ。

小説って人生が書いてあるじゃないですか。

人生のあるシーンを上手に切り取っていますよね。

だから僕も小説が大好きです。

宮部みゆきさんとか大好きですし、朝井リョウさんも格好いいです。

今は冷戦時代のスパイ小説を読んでいたところです。

皆さんも好きな作家の小説を読めばいいんじゃないでしょうか。

漫画も大好きで、『キングダム』も読んでいます。

僕は面白いものがいちばん優れていると思っているので、哲学が上やとか、漫画はいちばん下やとか、そういう考えは一切ありません。

どんなジャンルでも面白ければ読むべきです。

「好きこそものの上手なれ」という言葉があるでしょう。

小説が好きならガンガンのめり込んだらいい。

遠慮することはありません。

生徒ラグビー日本代表を例に挙げ、「混ぜれば強くなる」とダイバーシティについて話されましたが、混ぜれば価値観のぶつかり合いが起こる確率も高まります。

実際に私もそのような状況に直面したことがあります。

そういった状況をまとめなければいけない立場になったとき、出口さんならどのようなことを最優先し、その場をうまくまとめますか?出口大勢の意見をまとめるための最もシンプルな解決方法は多数決です。

皆に意見を出してもらい、最後にそれを1つにまとめなければいけない場合、人々は多数決を採ってきました。

なぜかといえば、全員の意見が一致することはあり得ないから。

世の中には、どれだけ議論を尽くしてもわかり合えないことが山ほどあるということです。

APUには外国人留学生と日本人学生が生活を共にする「APハウス」という国際教育学生寮があります。

部屋は2人部屋とシングルの部屋があり、APハウスを見学に訪れたある大学の先生が、「同じ部屋の2人の相性が悪かったら、1年間大変ですよね、どうするんですか?」と学生に聞いたらしいのです。

するとAPUの学生は、「人生にはそういう、どうしようもないことがたくさんあるということを学びます」と答えたのです。

質問した大学の先生が感動して、「学生に教えられました」と僕にメールを送ってくれて知りました。

その学生のいう通りで、世の中には絶対に解決できない対立が山ほどあります。

そういうことを勉強するのもまた、いい学びになると思うし、どんな問題も必ずまとめられるとも考えないほうがいいでしょう。

まとめられないこともたくさんあります。

そういう経験に頭を打たれながら人間は賢くなっていくのだと思います。

生徒私もAPハウスに住み、ルームメイトもいたので、その学生の気持ちはよくわかります。

APハウス立命館アジア太平洋大学の学生寮。

世界中から集まった学生たちが生活を共にする。

シングル、またはシェアタイプの部屋があり、原則として1回生は全員入寮する。

生徒私は2年生で、これから自分が所属する学部を決め、専門課程に入っていくのですが、先ほどの「どうして勉強するのか?」という講義の中で、「勉強することは、将来の選択肢を増やすことにつながる」とおっしゃっていました。

選択肢がたくさんあることは大いに魅力的なことだと思うのですが、一方で増えた選択肢から1つずつ選んでいくことは時間的にも、自分の能力的にもできません。

増えた選択肢の中でどれか1つを選ぶように迫られたとき、出口さんは何を指針にして選択、あるいは決断されてきたのでしょうか?出口いちばんいいのはあみだくじです。

どれを選ぶか迷っているのは、メリットとデメリットが拮抗しているからです。

8対2だったら迷わず選べますよね。

でも、5対5や、6対4なら迷ってしまいます。

でも、そんなときは考えてもしかたがないので、あみだくじで決めればいいでしょう。

何か1つ、あみだくじで選んでみてください。

やってみれば面白いですよ。

生徒出口さんは何かをあみだくじで選ばれたことはありますか?出口しょっちゅうですよ。

今日の晩ご飯はどちらを食べようかとか。

10円玉を投げたりもします。

晩ご飯はともかく、意思決定が苦手な人は、ルールを決めたらいかがでしょうか。

まず、「1週間後までに決める」というルールを決めます。

その期限までは徹底的に情報を集め、その情報をもとにして考え抜きます。

そこまでやっても決められない場合は、あみだくじの出番です。

適当にあみだくじをつくり、ゴールにA案かB案かを書いておきます。

この方法で、ほとんどの意思決定は行うことができます。

「そんないい加減な方法で大事なことを決めたくない」と思われるかもしれませんが、1週間悩みに悩んでも決められないということは、どちらを選択してもたいして差がないということです。

もっと素直に述べれば、1週間、時間を使うのも無駄です。

さっさとあみだくじで決めてしまったほうがよほど生産的だと思います。

決断をスムーズに行うには、トレードオフを正しく理解し、どちらかを選ぶための情報をできるだけ多く集め、選び方のルールを決めておくことが大切です。

トレードオフ何かを得たり達成するためには、何かを失ったり犠牲にしなければならない関係のこと。

生徒ダーウィンの進化論で、適応できる人材が生き残っていくと話されました。

私は採用や人事担当者向けにコンサルティングを行う仕事をしているのですが、その中で、「現状維持で」とか、「前年踏襲で」とか、「周りが動いてから」とか、何事にも腰が重い年上の大人たちを間近で見ています。

そういう人たちをいかにして動かすかということが私の課題になっています。

そういう大人たちに対してどういうふうにアプローチしていけばいいでしょうか?出口ダーウィン流に答えれば、そういう大人が多い会社は自然と滅んでいきます。

そうすれば新陳代謝がよくなって、社会が活性化するでしょう。

僕らはついつい会社はできるだけ潰してはいけないと勘違いしがちですが、ゾンビ企業を大事に扱えば扱うほど、社会の活力はなくなるのです。

だから、どんどん退場させなければいけない。

コンサルティングをしてもアドバイスを聞かないような会社はむしろ、「素晴らしい考えです。

現状を変えるのは一切止めましょう」とアドバイスをして、そのまま滅んでもらったほうが社会にとってはいいかもしれません。

極論ですが。

大事なのは、新陳代謝をよくすること。

だから、今ある会社全部を救おうという考えは捨てたほうがいいでしょう。

自然界は、死んで、生まれて、少しずつよくなっていくのです。

社会も一緒です。

古い考えのゾンビ企業はどんどん潰れたほうがいい。

潰れなければ新しいものは生まれませんから。

あなたが抱えている問題は、「部分最適と全体最適」の問題でもあるのです。

ビジネスでは「部分最適」に目が向きがちですが、「全体最適」を考えながら対応することも必要です。

生徒ぜひ参考にさせていただき、今後の活力にしていきたいです。

ゾンビ企業実態としては経営破綻しているにもかかわらず、政府や銀行などの支援によって存続している企業のこと。

部分最適と全体最適組織の中の一部や個人が最適な状態になることを優先する考えが部分最適。

逆に、一部や個人よりも組織全体が最適な状態になることを優先する考えが全体最適。

生徒「流れに身を任せ、流れ着いたところで一所懸命やってみる」とおっしゃっていましたが、出口さんは精いっぱい頑張るための原動力やモチベーションはどのように維持したり、向上させたりしていますか?出口まず諦めることです。

流れ着いてしまったら諦めるしかしかたがないですから。

やりたいことがある人は別です。

大坂なおみ選手は世界一のテニスプレイヤーになりたいから頑張れるんだと思います。

彼女のようにやりたいことや好きなものがはっきりとわかっている場合はモチベーションは維持できますが、僕を含めたほとんどの人間はそうではないので諦めが肝心です。

諦めたら何でもできるのです。

僕の場合は明らかにそうです。

APUの学長に推挙され、「受かるはずがない」と思いつつ面白そうだという理由だけでインタビューを受けたら意外にも選ばれてしまった。

引き受けざるを得なかったというのが正直なところです。

あるいは、好きな人に自分の思いを伝えようと、レストランで皆が見ている前で告白する場を設定する人がいます。

皆が固唾をのんで見守っているわけですから、もう諦めて告白するしかない。

告白したら、もう後は頑張るしかない。

諦めがモチベーションになっているのです。

諦めるといっても、僕は中途半端が嫌いですから、すべての物事には「オール・オア・ナッシング」で取り組んでいます。

食べることや本を読むこと、旅に出ることは大好きなので、食、旅、本の購入にはお金を使います。

けれども、それ以外の費用は節約しています。

興味が湧かないからです。

やるならやる、やらないならやらない。

ドイツの政治・経済・歴史学者のマックス・ヴェーバーが書いた『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』という名著がありますが、その中で述べられているカルヴァン派も実は諦めがスタートになっています。

自分は選ばれた民に違いないから後は頑張るしかないと。

ギリシャ・ローマのストア派もそうです。

リーダーの家系に生まれたのだから最前線で戦うしかないと。

歴史を見てみても、諦めるということはありのままの現実をそのまま受け入れるということだとわかります。

それが、モチベーションの源になるような気がします。

僕の友人の名文句に「人生を無駄にしたければ、済んだことを愚痴る、人を羨ましがる、人によく思われようとする。

この3つを、ぜひやってください」というのがあります。

人生を無駄にしたくない人には避けてほしいのですが、3つ目の「人によく思われようとする」ことから逃れるのはなかなか難しいと思います。

なぜなら人間は見栄っ張りで、プライドや自意識が過剰な生き物ですから、ついつい人によく思われようとしてしまいます。

すると、失敗する姿を人に見せることを恐れて、チャレンジしなくなっていくのです。

チャレンジをしない人生に、頑張るための原動力やモチベーションは生まれないと思います。

カルヴァン派16世紀にキリスト教の宗教改革を行ったジャン・カルヴァン(1509~1564年)。

その教えを支持する一派。

ストア派ゼノン(紀元前335~263年)が創始したギリシャ哲学の学派。

重要な教えの1つに、「コントロールできるものには力を注ぎ、コントロールできないものには囚われるべきではない」というものがある。

生徒出口さんは死生観についてどのような考えをお持ちですか?出口極めてシンプルに考えています。

人間は星のかけらから生まれたのだから、死ねば星のかけらに戻っていくだけです。

宇宙はビッグバンによって誕生し、膨張が始まり、やがてさまざまな物質やエネルギーが集まって星が生まれました。

星が一生を終えると超新星爆発が起こり、星のかけらが四方八方に飛び散ります。

そのかけらから地球が生まれ、生命が誕生し、人間に進化して、僕も皆さんも生まれてきたのです。

死生観というたいしたものではないですが。

生徒自分はいつ死ぬのかとか考えてしまうのですが。

出口そんなのは偶然でしょう。

この講義が終わった後、もしかすると交通事故に遭って死んでしまうかもしれないので、そんなことは考えてもしかたがない。

僕自身も星のかけらからつくられているので、死んだらまた星のかけらに戻って、どこかで何か新しいものを生むと思ったら、わくわくドキドキするじゃないですか。

生徒僕はそこで怖がっちゃうんです。

出口でも、死んだら何もわからなくなるんだから怖くないですよ。

生徒そうですか……。

わかりました。

生徒先ほど、「何が起こるかなんて誰にもわからない」というダーウィンの理論を引用されました。

世界では新型コロナウイルスの感染拡大でパンデミックが起こり、情報化革命が起こり、日本では少子高齢化や格差社会が問題になっているなかで、メディアからはネガティブな情報が発信され、それを否が応でも受け取ってしまう僕たちは悲観的な考えに陥りがちです。

若い僕らは今後、何を考え、どういった一歩を踏み出せばいいのでしょうか。

出口悲観的になる必要はどこにもありません。

データで見れば、皆さんはめちゃラッキーな世代です。

今の日本人は、75歳くらいまでは十分に働ける体力を持っている人が多い。

僕は72歳で団塊世代(1947~49年の第一次ベビーブームに生まれた人たち)の真ん中ですが、同じ世代は約200万人もいるのです。

今後、団塊世代が75歳を迎えて社会から退場していきますが、皆さんの世代の新社会人は何万人いますか?100万人前後です。

小学生にもわかる算数で考えてみましょう。

毎年200万人が退場して、新社会人が100万人入場すれば、社会はどうなりますか?圧倒的な労働力不足になります。

2030年には約600万人もの労働力が不足するという試算もあります。

ということは……わかりますよね?上司といくら喧嘩しても飢え死にしない時代が来ているということ。

なぜ悲観的になる必要があるのですか?皆さんは超ラッキーな世代なのです。

生徒マクロな視点で見たら理解できるのですが、現時点では東京でも多くのコロナ感染者が出て、世界経済の回復も見えてきません。

僕が従事しているエンターテインメント産業も大打撃を受け、今年2本ほど舞台に出る予定だったのがなくなってしまいました。

知人も仕事をすべてなくすなど本当に厳しい状況が続き、不安な毎日を過ごしています。

出口不安だとは思いますが、冒頭で話したように新型コロナウイルスは台風が吹き荒れている状態と同じなわけです。

そのときに外に出ますか?生徒出ないです。

出口今はすごく不安なのはわかりますが、全世界に「コロナウイルスという台風」が吹き荒れているわけですから、ワクチンや治療薬ができるまでの「ウィズコロナ」の間は運命だと思って、辛抱して過ごすしかありません。

でも、自然現象ですから必ず収束します。

だから、今は「アフターコロナ」のことを見据えて、何をすれば将来のためになるのかを考えるほうが賢明です。

生徒75歳まで働くことと、今後の労働力不足については確かにそうだなと思います。

ただ一方で、日本の労働環境は非正規労働者が増え、年収も低く、賃金格差が生まれています。

けっしていいとは言えない労働環境で75歳まで働くのは酷かなという気もするのですが?出口酷だという考えの前提に、無理やり働かされているという先入観はありませんか?僕は楽しい「不良老年」になるために働こうと提唱しているのです。

これはお医者さまが話したことですが、「人生100年時代を楽しむためには、まず足腰がちゃんとしてないと。

寝たきりでは楽しめない」と。

足腰を鍛えるには運動をすればいいというアドバイスには「違います」と。

「雨が降ったら誰も運動なんかしませんから」と。

寝たきり老人にならない最善の方法は働くこと。

僕は労働力が足りないから高齢者に働こうなんて一言もいってない。

「不良老年」になってガンガン遊びまくるために働こうといっているのです。

そう、楽しい人生を送るために働くのです。

それから、賃金や年金の格差の話ですが、日本はジニ係数を見たら先進国では格差はまだ少ないほうです。

しかも、格差のほとんどは厚生年金保険の適用拡大で解決できます。

正規・非正規の賃金格差の問題は、すなわち社会保険の問題なのです。

社会保険とは、健康保険と公的年金保険のことで、政府が提供するセーフティネットの根幹です。

それがないと社会が不安定になるし、市民は思いきったチャレンジができなくなります。

だから、みんなでお金(社会保険料)を出し合って、困っている人に給付するのです。

日本の公的年金保険は「2階建て」になっていて、自営業者は1階部分の国民年金保険が給付されますが、企業などに雇われて働く被用者はそれに加えて2階部分の厚生年金保険が給付されます。

人によって異なりますが、平均で国民年金保険は月に5、6万円、厚生年金保険は14、15万円程度の給付でしょうか。

この差はなぜ生まれるのか。

国民年金保険は自営業者の年金です。

例えば、年を取っても店番はでき、お小遣い程度の報酬はもらえるだろうという前提で5、6万円の給付なのです。

企業に雇われている被用者は、定年を迎えて会社を辞めたら報酬はないので14、15万円もらえるという考え方です。

問題は、被用者の中でも最も力の弱いパートタイマーやアルバイトなどが国民年金保険に追いやられていること。

正規・非正規の違いによって老後の年金の給付額に差が生まれ、いわゆる「下流老人」や老後の貧困が問題になっていますが、パートタイマーやアルバイトなどの被用者を適用拡大して厚生年金保険に移行すれば、この問題はほぼ解決できるのです。

なぜ、それができないのか?ゾンビ企業や中小企業が「パートタイマーやアルバイトの社会保険料を払ったら会社が潰れる」と抵抗しているからです。

ドイツでは2003年に制度改革を行い、この問題を解決しています。

当時の首相のゲアハルト・シュレーダーは、「企業が人を雇うということは、その人が老年になったり、病気で動けなくなったりしたときに面倒を見るということだ。

そのためにオットー・フォン・ビスマルクは社会保険をつくったのだ。

社会保険料を払えないような企業は人を雇う資格がない」と言い切り、ゾンビ企業に退場を促しました。

首相の英断によって、ドイツ経済の足腰は強くなったのです。

日本でもこのシステムが整備されれば、年功序列賃金から同一労働・同一賃金への移行が進み、正社員とパートタイマー、アルバイトの区別はなくなるのではないでしょうか。

労働者は自分の好きな形態で働くことができるので、真の多様な働き方が実現できると思います。

人生100年時代ますます健康で長寿の高齢者が増える日本。

政府は「人生100年時代」を提唱し、超高齢社会を見据えた経済・社会システムを実現するためのグランドデザインを描こうとしている。

ジニ係数社会における所得の不平等さや格差を示す指標。

厚生年金保険の適用拡大パートタイマーやアルバイトなど、非正規の労働者を全員、厚生年金保険に加入できるようにすること。

下流老人生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者のことをいう。

NPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんの造語。

オットー・フォン・ビスマルク(1815~1898年)ドイツの政治家。

世界最初の社会保険制度(医療保険、災害保険、養老保険)をつくった。

同時に、社会主義者鎮圧法を制定して労働者の社会運動を押さえつけたために「アメとムチの政策」と呼ばれた。

生徒私は生まれつきの疾患によって手足に不自由があり、車椅子を利用しています。

この講義で、ダイバーシティを取り入れながらワンチームになることでより強い組織、よりよい組織ができるとおっしゃいました。

でも、私が感じるところでは、ダイバーシティやインクルーシブという言葉が先走っているばかりで、現状はそれほど進んでいないと思うことが多々あります。

言葉通りの社会になるように進めていくためには何が必要だと思われますか?出口「Knowledgeispower.(知識は力)」というイングランドの哲学者、フランシス・ベーコンの言葉がありますが、大事なことは、現状は言葉通りの社会になっていないことを知ることだと思います。

有名なIT企業で、子どもの頃に視力を失った女性が働いていました。

彼女は目の見えない人のために、音声だけで操作できるデバイスの研究をしたいと上司に申し出ましたが、なかなか認められませんでした。

理由は、目の見えない人は数が少ないからビジネスとして成り立たないというものでした。

ところが、彼女はねばり強く上司を説得し、ついにデバイスの開発に成功しました。

開発後にわかったことは、目の見えない人が使いやすい音声によるインターフェイスは、実はマーケットがとても広かったということ。

例えば、視力が弱った高齢者や、タイプライターがうまく打てない高齢者に対しても汎用性がありました。

それだけでマーケットはグンと広がります。

みんなが考えていたよりもはるかにビジネスの範囲が広がったのです。

今は違う会社に転職されましたが、開発したその女性は話していました。

「私は目が見えないというハンデキャップがあると自覚していましたが、今はそれをハンデだと思っていません。

目が見えないことは私の個性だと思えるようになりました」と。

僕は感動しました。

チャレンジすることは、実は考えている以上の大きな影響や広いマーケットを開くことがあるのです。

そういう事実を僕たちがもっと知るということが大事だと、彼女のチャレンジから教わりました。

日本では男女差別や障害者差別がまだまだ多く存在しますが、互いをよく知り、彼女のようなエピソードをシェアすることで、少しずつ前に進むことができるような気がします。

インクルーシブ包摂的な。

障害の有無などにかかわらず、あらゆる人を含んだものの見方や行動のしかた。

生徒今、新型コロナウイルスの影響でステイホームを余儀なくされています。

私も大学のキャンパスに通えない状態で、人との学びや旅の学びが大きく制限されてしまっています。

人、旅の学び以外に、出口さんは本の学びがあるとおっしゃいましたが、正直なところ、私はあまり本を読むのが得意ではありません。

この状況下で、どうすればより有意義な時間を過ごすことができるのか、アイデアをいただけるでしょうか?出口本が苦手だからこそ、ステイホーム期間中に読書にチャレンジしてみたらどうでしょうか。

絶好のチャンスじゃないですか。

人生には、それほど多くのチャンスが訪れるわけではありません。

ほとんどが「一期一会」です。

僕の人生のモットーは「悔いなし、貯金なし」だと述べましたが、思ったときにやっておかなければ、次のチャンスが来なかったとき、必ず悔いを残します。

だから、苦手なものを克服するための神様の思し召しだと思って、本を読んでみてください。

でも、本当に本が嫌いだったら、嫌いなものはいくらやってもしかたがないので読まなくてもいいと思います。

ちなみに、日米の大学生が在学中にどれだけ本を読んでいるのかを比較した調査があります。

日本の大学生が100冊未満だったのに対して、アメリカの大学生は400冊。

かなりの差がありますね。

でも僕は、日本の大学生が本を読まない最大の要因は、学生の責任ではなく、日本の社会が大学生に学力を求めてこなかったことにあると思っています。

「古典を1冊読むことは、ビジネス書10冊を読むぐらいの価値がある」という僕の考えに共鳴してくれた若者がいて、実際に試してみようと3年で100冊を目標に古典を読み始めました。

ところが、それまでまったく古典を読んだことがなかったらしく、最初は1年で1冊も読めなかったそうです。

結局、目標の3年で読めたのは5冊くらいでした。

ところが、そこで止めずにずっとトライしていると、あるとき一気に読めるようになり、6年目には年間50~60冊もの古典を読めるようになったと喜んでいました。

しかも、その後は古典の読書会を主催して、読書の価値を広げる活動をするまでになっているとのこと。

僕も、新型コロナウイルス感染拡大の前はオンライン飲み会なんて一度もやったことがなかったのですが、あれ、結構面白いですよね。

もう10回くらいやっています。

チャレンジしてみたらいろんなことができるようになります。

せっかくのチャンスだから、読書にチャレンジしてみてはどうですか?

生徒「古い考えのゾンビ企業」の話をされました。

いずれは淘汰されてなくなると。

僕も出口さんのお考えと同じなのですが、ただ、淘汰されるのを自然に任せているといつまでかかるのか。

人生は短いじゃないですか。

自然に淘汰されるのを待たずに、こちらから積極的に働きかけるいい方法はないでしょうか?出口いちばん簡単な方法は、同志を増やしていくことです。

社内の頭の固い人はだいたい高齢者が多いでしょう。

高齢者は順番に消えていくので、人生100年あれば十分、全員を追い出せます。

単純に考えて、皆さんより若い人たちを全員、自分の味方にしてしまったら、ある年齢に到達したときに多数派になりますよね。

そうすると多数決でも勝てます。

頭の固い上司を変える方法は3つあります。

1つ目は、多数派工作。

家老をみんな味方につけて、殿様が何を言っても「それはダメです」と部下全員で反対して、殿様を諦めさせるというパターンです。

2つ目は過激ですが、面倒くさいから殿様を殺しちゃう。

クーデタですね。

まさか企業で上司を殺すことはできませんから、何か別のやり方で。

3つ目は、実はこれが意外に多いのですが、会社を飛び出して仲間と一緒に同じ仕事を始める。

さらに、会社を大きくして親会社を吸収してしまうパターン。

人間の歴史を振り返ると、上司を変える方法はだいたいこの3つです。

生徒では、仲間づくりから始めていきます。

もう1ついいですか。

僕もダーウィンが好きで、「変化するものが生き延びる」という考え方を信条にしているのですが、日本人間行動進化学会でしたか、「ダーウィンはそんなことは言っていない」という指摘をされたことがあり、ドキッとさせられました。

出口ダーウィンの本にその言葉がそのまま書かれているということではなく、僕が話したのは、ダーウィンの考え方が今、どうなっているかということ。

例えば、リチャード・ドーキンスが書いているような物語がたぶん、現在のダーウィニズムですよね。

生徒『利己的な遺伝子』とか。

出口ですから、「ダーウィンはそんなこと言ってない」という人がいたら、ドーキンスの本をどんと渡して、「読んでみて」といえば解決するような気がします。

日本人間行動進化学会進化という観点から人間の行動や社会を理論的、実証的に理解する目的で設立。

2020年6月に、インターネット上の自由民主党広報ページに、ダーウィンの進化論が誤ったかたちで引用されたことに異論を唱えた。

リチャード・ドーキンス(1941年~)連合王国の進化生物学者、動物行動学者。

遺伝子の視点から進化を解き明かした著書『利己的な遺伝子』で展開された「生き物は遺伝子の乗り物に過ぎない」という考え方は世界に大きなインパクトを与えた。

生徒今の質問とかぶるかもしれませんが、女は男に従っていればいいとか、上司だから理由もなく従えというような不寛容な考え方の人たちと、どういうふうに接したらいいのか。

伺えれば嬉しいです。

出口偏見を持っている上司と接するとき、いちばん効果的な方法は「数の力」です。

さっきも多数派工作と答えましたが、1対1だったら上司から「何を言ってるのだ」と怒鳴られて負けるでしょうが、仲間をつくって1対3くらいになれば勝てるかもしれません。

相手が年上だったり、力を持っていたりするときには一人で立ち向かうのではなくて、仲間をつくって数の力で立ち向かうべきです。

生徒その通りだと思うのですが、日本人って同調圧力が強いなかで権力者に声を上げることをしづらい人が多いのかなと。

出口1回やってみたらいいと思います。

ある会社で、終業時間の17時半になって帰ろうとしたら、課長が「もう帰るのか?」というので思わず座ってしまった。

「どうすればいいですか?」という相談があったので、同志の2~3人で一斉に立ち上がって「帰ります」といってごらんとアドバイスしたら、後日メールが届いて、「課長は驚いて黙っていました」と。

やってみたら意外に成功するかもしれませんよ。

生徒日本のGDPの世界シェアが落ちていて、国民一人当たりの購買力平価GDPは33位、国際競争力ランキングは34位だというお話がありました。

以前のように順位を上げないといけないのはわかるのですが、比較的高い日本のGDPをもっと上げる必要があるのかなとも思います。

出口さんはどのようにお考えですか?出口GDPはもっと上げなければいけないと思っています。

日本は世界で最も高齢化が進んだ国です。

高齢化が進むと、お金がかかることはわかりますよね?放置しておけば、医療費や介護費など毎年1兆円以上も社会保障費が膨らんでいきます。

出費がかさむと、それが家庭であっても政府であっても同じように次第に貧しくなっていきます。

生徒それでも、日本よりGDPの低い国はたくさんあるじゃないですか。

出口先進地域でこの四半世紀のGDPを比べれば、高齢化が進んでいないアメリカもヨーロッパも2・5パーセント成長しているのに対して、日本は1パーセント成長です。

もちろん、例えばアフリカ諸国の人々はもっと低い水準で生活しています。

でも、歴史を振り返ると、生活水準が下がっていきながらもよい社会をつくった国は1つもありませんからね。

貧しくなると気持ちもすさんでいくと思います。

例えば、皆さんの家庭でお父さんの給与が毎月下がっていった、お母さんの給与も下がっていった、でも、アフリカの貧しい子どもたちに比べれば十分にハッピーだからと、お金が減っていく生活を我慢できるでしょうか?人間はそんなに立派な動物ではないし、高齢化による社会のメンテナンス費用を一切考慮することなく今の豊かな社会が維持できるとも思えません。

ですから、少なくとも高齢化が進んだ分を取り戻し、現状維持ができるくらいの成長がなければ社会の安定は保てないと考えています。

数年前、僕は祖父母の墓参りをするために故郷の三重県の山村に帰りました。

久しぶりに訪れた故郷は、高齢化と過疎化が相当進んでいました。

さらに驚いたのは、シカやイノシシ、サルまでもが我が物顔で村中を歩いていたことです。

畑にやってくる動物除けのためのフェンスを張り巡らせているのですが、人間がフェンスの中で農業を営んでいるような錯覚を覚えました。

とくに、シカの害が酷く、ハンターが撃つよりも速いペースで増えているので、村民は車を運転しているときにシカが飛び出してくるとアクセルを踏み込むとまでいいます。

シカを撃つにも、フェンスをつくるにも、お金がかかります。

地域の経済が成長しなければそれすら捻出できず、貧しさが進むのを指をくわえて見ているしかできなくなるのです。

日本はこれ以上、経済成長しなくてもいいと考えるなら、生活が貧しくなることや、過疎化が進んでいくことを受け入れるしかありません。

それが嫌なら、できる限り手を尽くして、成長するための方策を模索するべきです。

生徒出口さんの経歴を一通り聞かせていただき、巡り合わせが大事だとわかりました。

では、いい巡り合わせを自分のほうに引き寄せるために、できることはありますか?出口「まずイエス」ですね。

例えば、APUの学長になったケースでは、「インタビューを受けますか?」と声をかけられたときが、「イエス」「ノー」のわかれ目でした。

ドクターであり、英語もペラペラで、大学の管理運営経験があるという3つの条件に僕は該当せず、しかもそれほど大学に行きたいと思ってもいなかったので、「ノー」という選択肢もあったわけです。

でも、「ノー」と答えていれば、今ここで話している僕はいなかった。

人生の大きな巡り合わせです。

だから、できることは何でも「まずイエス」で飛び込むことだと思います。

僕には昔から1つの癖があって、人生の岐路に差しかかったときには必ず面白いほう、もっといえば、リスキーなほうを選んできました。

僕は旅が大好きですが、外国の町を歩いていて、綺麗な大通りと薄暗い裏通りがあると、裏通りに行きたくなります。

あまりいい例ではないかもしれませんが。

人生は、「イエス」「ノー」ゲームを毎日繰り返しているようなもの。

岐路に立ったとき、まず「イエス」と答えるかどうかでいろいろなことが変わります。

昼ご飯を食べに行こうと誘われたとき、「イエス」と答えるか、「仕事があるからパンを買って済ませるよ」と断るか。

「イエス」と答えて行った定食屋で運命的な誰かに出会うかもしれない。

そういう「イエス」「ノー」の積み重ねが、やがては人生の大きな差になるような気がします。

新しい誰かに会えるという意味でも、「イエス」を選ぶ。

たぶん、「イエス」のほうが人生のチャンスは広がると思います。

もちろん、「イエス」を選ぶだけではなく、普段から勉強はしておかないといけませんよ。

正月に凧を上げたいと思っても、凧が風に乗るまで一所懸命に走る体力がなければ凧は上がりませんから。

風が吹いたチャンスに走れる力を、つまり勉強をしておくことが、チャンスをつかむためには必要なのです。

生徒昔の人は災害や新型コロナウイルスのような疫病が流行するたびに宗教にすがってきましたが、科学が進歩した今、すがる対象は宗教から科学に変わってきていると思います。

でも、まだ新型コロナのワクチンがつくられていないように、科学も万能とはいえません。

何を信仰の対象とし、すがったら、もっと幸せな生き方ができるでしょうか?出口宗教にすがる人もいるでしょうが、現代では科学にすがる人のほうが圧倒的に多いんじゃないでしょうか?先日、ある大学の学長と話をしました。

学長は医学博士で、とても明るい人。

「ワクチンはすぐできますよ」といいます。

「なぜ?」と尋ねたら、「僕が免疫学者だったら、徹夜に次ぐ徹夜で研究に没頭します。

こんなチャンスは100年に1度もないですから。

歴史に名が残るし、たぶんノーベル賞ももらえ、めちゃ儲かります。

だから世界中の免疫学者は今、徹夜で頑張っているはず。

ワクチンはすぐにできますよ」と。

そういわれると、そんな気もしてくるし、宗教にすがらなくてもいいのかなとも思えてきました。

昔と比べると、科学が宗教の役割を代替してきているのは事実でしょう。

でも、宗教を信じる人がいても僕はいいと思います。

科学であれ、宗教であれ、何かを信じるのは尊いことだと思います。

友達でもいい。

人間って、信頼できる対象があれば頑張れますから。

よい友人やパートナーがいれば、人間はそんなに心配しなくても生きていける気がします。

生徒「日本人は年間2000時間も働いて、勉強する時間が取れていない」と話されていましたが、出口さん自身、とくに若い頃、どうやって仕事以外の時間を確保されていたのでしょうか?出口断捨離をしました。

1日は24時間しかないのですから、何かを捨てなければ好きなことはできません。

僕はまずゴルフとテレビを捨てました。

4、5回やってみて、週末の朝から晩まで時間を費やすとわかったので、「ゴルフはできません」と宣言して誘われないようにしました。

僕は何よりも本を読むことが好きなので、その時間は読書に使っています。

寝ること、食べること、そして、読書。

24時間を好きなものから順に埋めていっています。

好きなことや勉強をする時間を確保しようと思ったら、集中して仕事を早く終わらせようというインセンティブも働きます。

生徒今年から生命保険会社で働き始めました。

将来的には起業して経営者になりたいのですが、出口さんが保険会社で働きながら起業を目指すなかで学んでよかったこと、学んでおけばよかったことなどを教えてください。

出口どんなことを勉強しても起業の役には立ちますが、APUの学長になってみると、若いときにもっと英語を勉強しておけばよかったと思います。

好きでも嫌いでも、英語はデファクト・スタンダードになっているので勉強するしかありません。

とくにやりたいことがなかったら、ひたすら英語を勉強してください。

絶対にプラスになります。

英語は国際共通語(リンガ・フランカ)になっていますが、日本の英語力はいまだに低い水準にとどまっています。

TOEFLという世界共通の英語試験のスコアを比較してみると、日本はOECD加盟国の中では断トツの最下位です。

OECD加盟国はヨーロッパの国が多いのである程度はしかたがありませんが、アジア諸国と比べてもいい結果とはいえません。

なぜ日本人は英語が苦手なのでしょう。

答えは簡単、必要がなかったからです。

日常の業務で英語が必要な仕事はごく一部ですし、人生で英語ができなくて困ったという経験もそれほど多くはありません。

けれども、留学したい、海外で働きたいと考えるなら英語は避けては通れません。

英語が話せないまま海外に行くのは、丸腰で戦に出かけていくようなもの。

コロナ禍が収束すると、再び海外から優秀な人材が日本に来て働くようになり、英語力で負けてしまうという状況が国内でも起こり得るでしょう。

やみくもに英語を勉強しなさいとはいいませんが、英語を身につけておいたほうが自分の好きなことをして生きていけるチャンスが広がることは間違いありません。

生徒友人やパートナーが大事だとおっしゃいましたが、パートナーを選ぶにあたって大切にしていることってありますか?出口相性の一言ですね。

生徒一緒にいるときの相性ですか?心地よいとか、落ち着くとか?出口一緒にいて疲れないことがいちばんです。

その次が、面白いこと。

芸人がモテるのは面白いからじゃないでしょうか。

人生を共に過ごすうえでは面白さってもの凄く大事だと思います。

生徒パートナーに欠点があって別れるかどうか迷ったとき、どうすればいいでしょうか?出口迷ったときは、あみだくじか10円玉。

そのくらいの思い切りがあったほうがいいと思います。

生徒私は日本語基準の留学生です。

毎日、日本人学生と接していますが、驚いたのは日本人は物事に無関心な人が多いことです。

世界で起こっていることについても関心が薄く、世界から孤立するのではないかと心配になります。

どうすれば、世界に関心を持つようになり、世界から孤立しない国になることができますか?知ることが大事とおっしゃっていましたが、それ以外に必要なことはありますか?出口いちばん効果的なのは、留学をしたり、旅行に出かけたりして世界を自分の目で見ることです。

「百聞は一見に如かず」です。

さっき、英語は役に立つという話をしましたが、英字新聞のタイトルを見るだけでも日本の新聞と視点が違うことに気づきます。

「何でだろう?」と考える癖がつき、世界に関心を示すきっかけになると思います。

グーグルの検索を英語で行うだけでもいいのです。

日本語で検索するより、英語で検索するほうが何十倍ものユニークで面白いコンテンツが出てきます。

日本語と英語の情報量が桁外れに違うことがわかれば、勉強する意気込みも変わってくるかもしれません。

日本語基準の学生APUの受験方式で、日本語で受験して合格した学生のこと。

英語基準か日本語基準を選択することで、入学後に受ける授業の言語も変わる。

生徒性暴力をなくすための事業を行っています。

今、私がテーマにしているのが、どうしたら人は自分の加害性と向き合えるのかということです。

性暴力も、虐待も、誰もが犯してしまう危険性があるものですが、自分の加害性に向き合える人はほとんどいません。

とくに偉い立場にいたり、権力を持っている人ほど、私が「今の言葉は脅迫ですね?」と詰め寄っても、自身の加害性について受け止められていないように感じます。

そういうことをみんなで考えられるようになることが、性暴力や虐待の軽減につながるのではないかと考えているのですが、教育者である出口さんのお考えを伺いたいです。

出口社会的地位が高い人ほどアンコンシャスバイアス、無意識の偏見や思い込みが強いように思います。

では、何がアンコンシャスバイアスをつくっているのかと考えたら、それは社会構造です。

性暴力や虐待は政策の問題であることを明確に意識して、社会構造を変えていくことと、人々の意識を変えていくことの両面から取り組む必要があります。

例えば、多くのDV(ドメスティック・バイオレンス)の根本には、貧困や職場におけるハラスメントなどの隠れた別の要因があり、意識としては男女差別があると思います。

そういう社会構造を変えていかなければなりません。

性分業を推進している配偶者控除や第3号被保険者を廃止するところから始めることを提唱したいです。

DV配偶者や恋人など親密な関係にある、または、あった者から受ける暴力。

暴力は、身体的暴力だけではなく精神的暴力や性的暴力も含まれる。

生徒メディアの発達によってさまざまな情報が氾濫しています。

情報の正確さや意味を見極めるために、自分の頭で物事を考えることが大切だと思いますが、そのときに重視するべきことは何でしょうか?出口科学的、統計的に裏付けのあるエビデンス(根拠・証拠、理由)を重視すべきです。

エビデンス(根拠・証拠、理由)は、インターネット検索でも簡単に探し出すことができます。

信頼できるデータかどうかを見極めることは大切ですが、Google検索などに使われている検索ロボットは優秀ですから、検索上位に来るのは、国連の諸機関やIMF(国際通貨基金)・世界銀行、OECDなど信頼できる機関のデータが多くなっています。

そういうデータを具体的な数字として示せば、相手も納得しやすいはず。

物事を捉えるときにはエビデンスベースで、つまり、数字・ファクト・ロジックで考える癖をつけるようにしましょう。

生徒僕は入試制度が嫌いです。

受験本位の教育がなされてしまうからです。

出口さんがおっしゃっていたように、教育とはおいしいご飯をつくるための材料集めだと僕も思っています。

けれども、受験本位の教育は、おいしいご飯をつくるための材料が得られる場所に行く地図を暗記させる教育。

その場所に到着したら地図は必要なくなります。

つまり、受験本位の教育はすぐに必要なくなるものです。

必要なくなる教育をベースにしている入試制度について、出口さんはどうお考えでしょうか?出口だからAO入試が増えてきたわけですね。

ただ、全国一斉の一般入試にも素晴らしいメリットがあります。

多くの学者がデータで分析していますが、AO入試のような評価が増えるほど、育った家庭環境の格差が評価に表れやすくなるのです。

上手に意見がいえるのは、家庭が恵まれていていろいろな経験を積んでいるからだと。

でも、全国一斉の一般入試なら、家庭環境には恵まれていなくても勉強さえ頑張ればいい点が取れます。

一律の入学試験にはデメリットもありますが、メリットもあることを忘れてはいけません。

AO入試大学の入試方法には大きく、一般入試、推薦入試、AO入試の3つがある。

AO入試は、入学志願者を大学の求める学生像と照らし合わせて合否を決める。

「この大学で学びたい」という意欲が重視される。

生徒出口さんは物事の本質を人にわかりやすく伝えるのがとても上手だと思います。

わかりやすく伝えるコツがあれば教えてください。

出口伝えるコツというものはありませんが、今から50年ほど前、僕が大学2年生の原書講読の時間に、恩師である高坂正堯先生から次のように教わりました。

「古典を読んでわからなければ、自分がアホやと思いなさい。

現代の本を読んでわからなければ、書いた人間がアホやと思いなさい。

そんなものは読むだけ時間の無駄です」と。

古典では「花」といえば、平安時代以降は桜を指しますが、奈良時代には梅や萩でした。

時代背景を知らなければ「花」が何かさえわかりません。

読み手に勉強が求められるわけです。

一方、現代に書かれた本は、著者と読者が同じ時代を生きています。

「花」といえば桜であり、桜といえばソメイヨシノを連想します。

時代背景や社会状況、言葉の意味を同じくする同時代の人が書いたものは理解できるのが当然です。

それなのに、書いてあることの意味がわからないとしたら、それは著者自身が題材をよく消化していないか、著者が見栄を張ってわざと難しい言葉を使っているかのどちらかです。

だから、高坂先生は「そんなものは読むだけ無駄だ」と教えてくださったのです。

以来、僕も人に何かを伝えたいときは、自分で題材をよく理解し、難しい言葉を使わないことを心がけるようになりました。

生徒尋ねたいのはダイバーシティの重要性です。

APUには大勢の国際学生が学んで多様性にあふれていますが、逆に多様性にあふれた環境をつくるためにあえて多くの国際学生を入学させているように見えたりもします。

それは、多様性であることの目的や、多様性の重要性をあまり理解しないまま環境だけをつくっているように思えるからです。

一時期、APUに障害者支援を行う学生団体が急増しました。

そのときのキャッチコピーは、「APUを本当の意味で多様性のあふれる場所に」というものでした。

私は何だか悲しくなりました。

あまりいいたくないのですが、自分にADHDという発達障害があったので余計にそう感じるのかもしれませんが、多様性にあふれる環境をつくろうと障害者にクローズアップして、「はい、ここ、多様性にあふれています」とアピールしているようで。

APUは多様性にあふれていると思いますが、なぜ多様性が大事なのかということを学生に向けてもっと教えるべきだと思うのですが、その点についてどうお考えですか?出口多様性って何かわかりますか?みんなの顔が違うように、みんなが違う存在であることが多様性だと僕は考えています。

同じ顔の人はどこにもいないでしょう?ハンデキャップがあること、外国人であること、さらには、考えが違う、能力も違う、理想が違う、趣味も違う、つまり「顔」が違うということを認め合うのが多様性だと思います。

外国で育った人は文化や環境が全然違うので、多様性を学ぶには大いに勉強になります。

生徒違いを認め合うことは難しいかもしれません。

私がまだ信頼できない人に向かって、「発達障害があって」と話せません。

目に見えない障害だからこそ偏見を持たれたり、差別される可能性があるからです。

そういう状況にどうアプローチすればいいのでしょうか?出口人と話をするとき、はじめから「私はこうです」とカミングアウトするでしょうか?人と人とのコミュニケーションって、互いに少しずつ知り合っていくなかで育まれるものですよね?相手と話し合っていくなかで、少しずつ心を開いていき、「この人にはもう何を話しても大丈夫だ」となれば大切なことを打ち明けたり、深い悩みを相談したりする。

それは、障害やハンデキャップがあってもなくても同じだと思います。

人間は、そんなに簡単にわかり合えない存在ですよね。

少しずつ心を開いていく動物なので。

国際学生APUは、約6000名の学生のうち、約半数が90を超える国・地域から集まる国際学生(留学生)というダイバーシティが特色。

性別、年齢、国籍などにかかわらず、自由にやりたいことにチャレンジできる環境が整っている。

ADHD注意欠陥・多動性障害。

集中力や落ち着きがなく、衝動的であるという3つの特性を持つ発達障害のこと。

生徒コロナ禍の中、実家に帰って過ごしていて改めて気づいたのですが、男女格差や性差別の問題に対する意識の高さが違うなと。

若い世代はそういう問題に興味があると思いますが、幅広い世代に興味を持ってもらったり、意識を高めてもらうにはどうしたらいいでしょうか?出口男女格差の問題に関して企業では教育や研修が行われていますが、それに加えて社会構造を変えることがとても大切です。

ヨーロッパをはじめとして世界の130か国以上では男性と女性にはじめからポストを割り振るクオータ制が導入されています。

一方、日本の女性の社会的地位は世界で121位ともの凄く遅れています。

ただ逆に、女性の皆さんがこれから頑張れば順位が100番くらい上がる可能性があると考えることもできます。

第一歩は、思ったことをガンガン言い合うことから始めるのがいいですね。

生徒構造的に変えなければいけないことはわかるのですが、ファクトを述べて議論しても、通じたという経験はあまりありません。

新しく知り合った人と話したり、クラスの中で議論になったときに、男女格差についてどういうふうに語り合えば意識を変えてもらえるのか。

難しさを感じています。

出口難しいだろうとは思いますが、やっぱりエビデンス(根拠・証拠、理由)を繰り返し示しながら話し合うしかありません。

他に人を動かす方法はないと思います。

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』という本が売れているのもエビデンスが有効だからです。

生徒GDPと平均寿命の関係を示すデータでは、日本は世界でトップレベルのランクに挙げられています。

一方で、幸福度指数は非常に低いというデータもあります。

皆さんの質問や課題を聞くなかで、統計やデータというものからこぼれ落ちる要素もあり、それによって生きることに息苦しさを感じている人もいるように思うのですが、出口さんはいかがお考えでしょう?出口GDPと平均寿命の関係は学者の間では答えが出ていて、GDPが多いと平均寿命も長くなるように、両要素は比例します。

大雑把にいえば、発展途上国が50歳、先進国が80歳というところです。

GDPと平均寿命の関係で日本が世界のトップレベルに入るのは、国民皆保険制度を導入したことが背景として大きいと思います。

日本の社会保険制度は結構よくできていて、国民全員が保険で医療を受けられるから、相対的に少ないGDPで平均寿命を長くすることができたのです。

これが1つの解だと思います。

半面、日本は幸福度指数が低く、息苦しさや閉塞感を感じている人も少なくないという指摘ですが、幸せでないのは長時間働いても成長率が低いことが大きな原因だと僕は思います。

誰でも「骨折り損のくたびれ儲け」って嫌ですよね。

それが30年間も続いたら気分が滅入ります。

高度成長期は、日本の幸福度指数はそんなに低くなかったはずです。

忙しくて自分が幸せかどうかを考える余裕がなかったのかもしれませんが。

だから、いろいろなデータを見るときには、どういう社会構造の下でこういうデータが出ているのかという構造分析が欠かせないのです。

幸福度指数国連が発表している世界幸福度ランキングによると、2019年は世界156か国を対象に調査し、日本は58位だった。

国民皆保険制度すべての日本国民が、日本全国どこでも同じ医療費で平等に医療が受けられる制度。

国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合っている。

さて、たくさんの質問を残してしまいました。

質問がある皆さんは図書館に行って僕の本を開いてください。

前書きか後書きに僕は必ず個人のメールアドレス(hal.deguchi.d@gmail.com)を記載していますから、そのアドレスの写真を撮ってメールで質問してください。

だいたいのことは答えられると思います。

最後に、皆さんにメッセージを送ります。

僕は、人生は1回きりだということを常に意識して生活をしています。

同じ1回きりの人生を過ごすなら、楽しく、面白く、わくわくドキドキするほうがいいですよね?その方法は、この講義で話したように、「やりたいことをやってみる」に尽きます。

迷っている時間はもったいないので、迷ったらやる。

決められなかったら、あみだくじか10円玉で決める。

チャレンジすることによって、いろいろなことがわかってくると思います。

だから、とにかく何事にもチャレンジしてほしいのです。

卒業式で学生たちに贈る大好きな言葉があります。

「Gowherenobodyhasgone,Dowhatnobodyhasdone.(誰も行ったことのない場所へ行け、そして誰もやったことのないことをやれ)」。

皆さんの平均年齢は20歳くらいですよね?人生100年の時代ですから、まだ80年もあるわけです。

どんなことでも3年間、一所懸命やればプロの腕前になれるといいますから、80年を3で割ると……たくさんチャレンジできますよね。

何でもいいから、ぜひチャレンジしてください!最後の講義、聞いてくださって本当にありがとうございました。

装丁/新上ヒロシ(ナルティス)構成/松井健太郎DTP/松田修尚(主婦の友社)編集担当/池上利宗(主婦の友社)〈番組制作〉撮影福元憲之音声美斉津友洋取材篠原利恵古堤桂太ディレクター三好雅信制作統括内田俊一宮本拓哉長澤智美制作NHKグローバルメディアサービス制作・著作NHKテレビマンユニオン

最後の講義完全版適応力新時代を生き抜く術著者出口治明発行日2021年3月31日発行者平野健一発行所株式会社主婦の友社〒1410021東京都品川区上大崎311目黒セントラルスクエア制作所大日本印刷株式会社制作日2021年2月20日HaruakiDeguchi,NHK,NHKGlobalMediaServices,Inc.,TVMANUNION,INC.2021

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