「認知スキル」が開発されると言葉やイメージを操作できる
社会人になると、みんなの前でプレゼンをしたり、書類の書き方を覚えたり、お客さんの要望を解決したりと、頭で考えることが増えてきます。
つまり、「認知スキル」を使う場面が多くなってきます。
マンガに登場する橋本翔太さんは、プレゼンで頭のなかが真っ白になり、うまく言葉で伝えることができませんでした。
こうしたミスをすると、たいていはできない自分を責めることが多いものですが、そうする必要はありません。
なぜなら、認知スキルのコツを覚えれば、誰でも上手にできるようになるからです。認知スキルには、複雑な思考が必要です。
文章を書くのも、英単語を覚えるのも、パズルを解くのも、頭を使ってよく考えなければなりません。
どうやってうまい思考をするのか、ということが教えるゴールです。
身体で覚える運動スキルは、上達するにつれて「身体が覚えた」という感覚になり、だんだんと言葉がなくなっていきますが、頭で考える認知スキルは、上達するにつれて、言葉やイメージを頭のなかで素早く操作することができるようになるのです。
じつは、学校で教えてもらった勉強の大部分は、この認知スキルです。
体育や美術、音楽といった科目は運動スキルが中心ですが、それ以外の国語や数学や理科や社会などは認知スキルを開発するための科目といってもいいでしょう。
それは、社会に出たときに、認知スキルが重要になるからです。認知スキルの教え方はすべての人に必要なことです。
まとめ ▼
どのようにうまく思考するかを教えることが、認知スキルのゴール
「頭を使って考える」パターンは3つ
「頭で考える」認知スキルは、次の3つに分けられます。それは「記憶すること」「問題を解決すること」「話したり書いたりすること」です。
1番目の「記憶すること」は、学生時代に学んだように、英単語を覚えたり、元素記号を覚えたり、歴史上の出来事を覚えたりすることです。
学校の教科書には、覚えるべきことがたくさん載っていましたね。社会に出ても、覚えることはまだまだあります。
たとえば、交通標識とその意味を覚えることは、自動車を運転する人だけでなく、歩行者にも必要なことです。
また、営業をしている人は、自分の会社が扱っている商品の名前とその特徴を覚えておく必要があります。
何かを覚えておくことは学校でトレーニングされることですが、覚えるのが苦手だという人は多いでしょう。それでも日常のなかには覚えておかなくてはならないことがたくさんあります。ということは、効率良く覚え、しかも忘れないようにする方法を教えてあげることが、教える人の仕事です。
2番目の「問題を解決すること」は、お客さんから受けたクレームを処理したり、相談された悩みを解決したり、パズルを解いたりすることです。
問題解決をするには、大きな問題をいくつかの小さな問題に分解したり、効率の良い手順や段取りを考えたりすることが必要です。
複雑な問題を、単純な問題に分解して、それを段取り良く解決していく方法を教えてあげることこそ、教える人の仕事です。
3番目の「話したり書いたりすること」は言葉を使う技術です。
たとえば、会議で新企画を提案したり、プレゼンで話をしたり、メールを書いたり、文章を書いたりすることです。人間は言葉を使う動物です。
言葉を上手に使うことによって、他の人たちとコミュニケーションをとったり、楽しくおしゃべりをしたり、自分の考えを文章にして他の人にわかりやすく正確に伝えたりすることができます。
マンガに出てくる小林係長が部下にプレゼンの仕方を教えたように、上手に言葉を使う技術を教えてあげることが、教える人の仕事です。
まとめ ▼「記憶する」「問題解決」「話す&書く」を教えることをマスターしよう
「記憶する方法」の教え方その 1詰め込み勉強では覚えられないワケ
ここでは、認知スキルの 1番目「記憶する方法」の教え方についてお話しします。「記憶すること」は、学校で最初にトレーニングされることのひとつです。
小学校から、中学、高校、大学まで、私たちは、さまざまなことを記憶してきましたね。
九九、四字熟語、百人一首、英単語、歴史上の出来事と年号、化学式、因数分解のパターンなど、もうすっかり忘れている人がほとんどだと思いますが、とにかくいろいろなことを記憶してきました。
また、社会に出てからも覚えなければならないことはたくさんあります。
同じ職場にいる人の名前やクライアントの名前、扱っている商品の名前と特徴、経費精算書の書き方、パソコンソフトの使い方、資格試験の知識などです。
ですから、覚えなければいけないことを効率的に記憶する方法を教えてあげることは、教える人の大切な仕事です。
では、どのように教えればいいのかというと、まず人間の記憶のしくみを知る必要があります。
試験の前日に猛烈に勉強した経験は誰でもあるでしょう。いわゆる「一夜漬け」です。一夜漬けのように集中的に勉強することを「集中学習」と呼びます。この集中学習は、じつはあまり効果的ではないことが、心理学で実証されています。
みなさんにも、徹夜覚悟で一夜漬けをして、一生懸命記憶をしたけれども、翌日の試験では覚えていなかった、という経験があるかもしれません。そう、一夜漬けは効率が悪いのですね。
では、どうすれば効率良く勉強できるのでしょうか?それは、覚えたい事柄を、間隔をあけて繰り返して覚えるのです。
英単語を覚えることを例にとると、 1回目を覚えた後、何日か後にまた同じ英単語を学習します。
さらに、また何日か後に 3回目の学習をします。こうして同じことを何回か繰り返し覚えることで、最後のほうはラクラクと英単語が出てくるようになります。
つまり、すべてを一度で覚えようとしないことです。これを「分散学習」と呼びます。
分散学習は集中学習よりも記憶できる確率が高くはるかに効果的なのですが、この学習法はあまり人気がありません。
それは、 2回目以降、学習するときに「あ ~、思い出せない」という項目が多少出るからです。この「思い出せない」というのが、ちょっとイヤな感覚なのですね。
しかし、それをクリアさえすれば、次回覚えるときは、前回よりもスムーズに思い出せるようになります。少しの努力で覚えられるようになるので、記憶することが楽しくなるでしょう。
あなたの周りに記憶することが苦手な人がいたら、ぜひ、分散学習がいいことを教えてあげましょう。
ちょっとしたコツを教えてあげるだけで、覚えることへの苦手意識がなくなります。
まとめ ▼
集中学習よりも分散学習のほうが効果的
「記憶する方法」の教え方その 2会った人を忘れないように記憶しておく
ワザ先にお話しした通り、何かを記憶するには分散学習が効果的です。
一度にすべてを覚えることはできませんが、 2回目、 3回目と回を重ねるほど明らかに覚えやすくなるので、忘れることを気にせず、そのとき、そのときに覚えればいいのです。
さて、分散学習の方法ですが、ただやみくもに繰り返して覚えるのは、効率良くありません。
たとえば、英単語を覚えるのに、単語カードを使うことがよくあります。
しかし、ただ英単語とその日本語訳を見るだけでは、記憶が定着しないのです。
では、「記憶したことを忘れないようにしたい」と相談されたら、どう教えればいいでしょうか?それには、覚える内容をいろいろな角度から検討して、すでに知っている知識に関連づけて覚える方法が効果的です。
たとえば、人の名前を覚える場合、「岡山恵実」という名前であれば、「岡山」は「岡山県」に結びつけて、岡山さんが岡山県に旅行するイメージを作ります。
これで名字が覚えられました。
次は「恵実」という名前ですが、これを「笑み」に結びつけて、恵実さんが微笑んでいる顔をイメージします。
「えみ」という名前には「恵美」という漢字もありますので、「だんご(実)を食べている」というふうに結びつけます。こじつけでもなんでもいいのです。
名前を何かに関連づけてイメージすることが大切です。
以上をまとめると、岡山恵実さんが、岡山県に行って、だんご(実)を食べて微笑んでいるところをイメージします。これで名前を忘れなくなります。ついでに漢字も間違えなくなるでしょう。
まとめ ▼覚える内容とすでに知っている知識を結びつけると、記憶できる
「記憶する方法」の教え方その 3教える相手は聴覚型?視覚型?
記憶する場合には、大きく分けてふたつの方法があります。
ひとつは、「耳で聞いて覚える方法」、そしてもうひとつは、「目で見て覚える方法」です。もちろん、普通は、耳で聞いて、目で見て覚えるというように、聴覚と視覚の両方を使って記憶します。
しかし、人によって、聴覚のほうが強く働く人もいれば、視覚のほうが強く働く人もいます。
つまり、耳で聞いたことが強く残る人(聴覚優位)と、目で見たことが強く残る人(視覚優位)がいるのです。
その人が聴覚型なのか視覚型なのかを探ることは、そう難しくありません。その人と話をしているときに、出来事の話し方に注目すればわかります。出来事を話すときに、時系列に沿って流れるように話す人は、聴覚が強く働くタイプです。
「去年、屋久島に行ってダイビングをしたよ。その日の夜、浜辺で寝転がって一晩中夜空を見ていたんだ。都会では決して見られない満天の星空で感動したよ」といったように物事が起こった順番通りに話をします。
このタイプの人は、そのとき誰がどんな話をしたのかまでよく覚えているので、会話をそのまま再現することができたりもします。
一方、視覚のほうが強く働く人は、出来事を話すときに、その場面場面を切り取ったような話し方をします。話す順番は、印象の強い場面からです。
たとえば、「あの満天の星空は、感動ものだったよ」と突然思い出したように言ったりします。周りの人は「えっ? いつのこと?」などと聞き返します。すると「去年、屋久島に旅行したときのことだよ」といった具合です。
教える相手はどんな話し方をするのかを観察して、聴覚型なのか視覚型なのかを判断し、その人のタイプに合わせた方法で教えるといいでしょう。
どんなふうに教えればいいかというと、聴覚型の人には、物語を聞いているかのように語って教えてあげます。すると、いつまでも記憶に残ります。
一方、視覚型の人には、図を描いたり、グラフを描いたりしてあげましょう。実際にその物を目で見たりしたほうが頭にスッと入ってくるものです。
同時に、自分自身が、聴覚型なのか、あるいは視覚型なのかということも、認識しておくとよいでしょう。
というのは、教える側は、つい自分の教えやすい方法で教えてしまうからです。
自分の得意な方法だけで教えるのではなく、相手のタイプに合わせた方法で教えることができるようになると、教えられる人の理解も早くなり、上手に教えることができるようになります。
まとめ
▼相手は聴覚型か視覚型かを見極め、相手に合わせた方法で教える
「問題解決」の教え方その 1「どうしてわからないんだ?」ほど無意味な質問はない
ここからは、認知スキル 2番目の「問題解決」の教え方についてです。
問題解決とは、お客さんから受けたクレームを処理したり、相談された悩みを解決したり、パズルを解いたりなど、目の前にある問題を解決することです。
問題を解決するためには、たくさんの思考のステップを踏むことが必要です。
次の図を見てください。「ハノイの塔」というパズルです。
すべての円盤を最初の位置から別の位置に移動させるパズルですが、「一度に 1枚の円盤しか動かせない」「下の円盤よりも大きな円盤を上に置くことはできない」という条件があります。
このパズルを解くためには、まず円盤を 2枚だけにして一番簡単な状態で解いてみます。次に、 3枚の円盤で解いてみます。
このようにして、解き方のパターンがわかれば、 5枚でも 6枚でも同じように解くことができます。一度、ハノイの塔のパズルの解き方がわかったら、今度はそれを他の人に教えることを考えてみましょう。
おそらく相手はなかなか解けないと思います。それを見て、あなたはもどかしく感じるかもしれません。
しかし、もどかしく感じるのは、あなたがすでに「解き方のパターン」を獲得してしまったからなのです。
あなたがじれったくなって、思わず「どうしてわからないの?」と聞いてしまったら、あなたは教える人としては失格です。
相手がわからないのには、理由があるのですから。それは、解き方のパターンをまだ獲得していないからです。それを教えるのがあなたの役目です。
そのときに「どうしてわからないの?」と聞くのは無意味ですし、相手の気分を害するかもしれません。わからないからこそ、あなたに習っているのですから。
この「解き方のパターン」を「スキーマ」と呼びます。スキーマができると簡単に問題が解けるようになります。つまり、問題解決を教えるというのは、このスキーマを相手に獲得させることなのです。
相手がわからないのは、理解力がないからではなく、スキーマをまだ獲得していないからなのです。このように考えれば、相手がなかなか思うように答えを導けなくても、イライラすることはありませんね。
まとめ ▼解き方のパターンを習得させて、問題解決を教える
「問題解決」の教え方その 2解き方のパターンは多ければ多いほどいい
解き方のパターンのことを「スキーマ」と呼びますが、このスキーマをどれくらいたくさん持っているかが、その人の問題解決能力の高さを決めるのです。
たとえば、将棋や碁やオセロが強い人は、いろいろな戦術をスキーマとして持っています。
同じように、事務仕事やクレーム処理を的確に素早くできる人は、さまざまな対処の仕方をスキーマとしてもっています。また、一連の流れとしてスキーマをとらえたほうが効率的な場合もあります。
たとえば、会社に新入社員が入ってきたら、電話の受け方を教える必要がありますが、敬語で応対する、メモをとる、といったひとつひとつの行動をバラバラに教えるよりも、左手で受話器を取って、敬語で応対しながら、右手でペンを持ち、メモをとる。
相手の名前と連絡先を必ず聞き、必要があれば行事の日時、場所なども聞いてメモをとる……といった流れで教えるのです。
最初のうちはうまくいかないこともあるでしょう。しかし、何回も経験していくうちに、一連の動作が順序良く、漏れなく、スムーズに進むようになります。
このような状態になったら、「電話の受け答えについてのスキーマ」がその人のなかに完成したということです。一度、普遍的なスキーマが完成してしまえば、そのスキーマのなかでバリエーションを増やすことができます。
たとえば、相手がお得意様か、クレーマーなのかによって、対応の仕方を変えることができるといった具合です。
どのような状況でも基になっているのは「電話の受け答えについてのスキーマ」ですから、基本のスキーマをしっかりと教えることが大切です。
その上で、バリエーションを増やしながら応用範囲を広げ、さまざまな問題解決ができるように導けるのです。
まとめ ▼スキーマをどれくらいもっているかが、問題解決能力を決める
「問題解決」の教え方その 3ひとつの解き方を学んだらさまざまな場面で活用する
「KPT法」というのをご存知ですか? イベントやプロジェクトなどのふりかえりのための枠組みです。
毎日の業務の終わりのふりかえりとして使うこともできます。
KPTの Kは「キープ」で「良かったこと・続けること」です。Pは「プロブレム」で「悪かったこと・問題点」です。Tは「トライ」で「次に試すこと」です。
イベントやプロジェクトが終わると反省会やふりかえりの会合を開くことがよくあります。
しかし、反省会を開いても、それぞれがバラバラの意見を述べていくだけでは「ああ、そんなこともあったね」という印象しか残りません。
そこで KPT法というスキーマを使います。まず「良かったこと・続けること」をあげていきます。これはあげやすいので、最初のスモールステップとしては最適です。
その意見が十分にあがったら、次に「悪かったこと・問題点」をあげていきます。その意見も十分にあがったら、最後は「次に試すこと」を考えていきます。悪かったことを改善し、同時に良かったことを続けられるようなアイデアを出していくのです。
このように KPT法というスキーマを使うことで、あまり生産的でない反省会を、意味のあるものにすることができます。これがスキーマの力です。
さらに、 KPT法というスキーマを一度獲得したら、そのスキーマをいかに柔軟に利用できるかがポイントになってきます。
KPT法はイベントやプロジェクトのふりかえりとしてだけでなく、たとえば、スポーツのふりかえりや料理のふりかえり、旅行のふりかえりなどにも応用できます。
ひとつのスキーマを学習したら、さまざまな場面に当てはめて使ってみることを教えてあげましょう。その問題解決スキーマが柔軟性をもち、応用範囲が広がります。
まとめ ▼
スキーマを学んだら柔軟に利用する
「話す&書く」の教え方その 1言葉を使う
スキルの基礎はノートをとること 3番目の認知スキルは「話したり書いたりすること」です。会議で提案をしたり、プレゼンをしたり、メールを書いたり、文章を書いたりといった、言葉を使う技術です。
日常会話では、言葉を使ったコミュニケーションは不自由なくできます。毎日やっていることですし、多少間違ったり変な言葉遣いをしても、大きな問題はないからです。
しかし、ノートや議事録をとったり、会議で提案したり、プレゼンで話をしたりするためには、そのやり方を学び、時間をとってトレーニングをする必要があります。
日常的に行っているものではないので、訓練して習得しなければ身につかないからです。そして、こうした「言葉を使うスキル」を習得すれば、その人の可能性は大きく広がります。
ぜひ、教えたい技術です!なかでもノートをとる技術は、ぜひ身につけてほしいものです。
ノートをとることによって、相手の話を理解することに集中できるだけでなく、相手の話の全体をまとめ、そこに自分なりの考えを追加することができます。
ノートをとらなければ、その場ではわかったような気になったとしても、あとで思い出すことは難しいでしょう。
最近では、大学で、新入生にまずノートのとり方を教えるケースが増えてきています。
会社に入れば、報告書を書いたり議事録をとることもありますから、ノートをとるトレーニングは仕事上でも必須です。
ノートをとるためには、相手の話が始まったらすぐにメモ帳やノートブックを出し、ペンを持つことを習慣づけることです。この習慣こそが最初のトレーニングです。
普段おしゃべりをしているときには、メモ帳を取り出すことはありませんから、これは意識的にしなければできません。それを指導するのは教える人の役目です。
では、どのようにノートをとればいいのでしょうか? ここで「コーネル式ノート」というノートのとり方をお教えしましょう。
コーネル式ノートとは、米国にあるコーネル大学の学生のために、 Walter Paukという人が考案したノート術です。
次の図のように、ノートに縦と横に線を引き、右上に「ノート」、左上に「記憶のヒント」、下に「まとめ」のカテゴリーを作ります。
1の「ノート」欄には、会議の内容や相手の話の内容を箇条書きでできるだけ簡潔に書きます。
そして、会議や相手の話が終わったあとに「ノート」欄を読み返し、 2の「記憶のヒント」欄に大切なことをキーワードにしたり、図表にしたりして、ここを見れば要点がすぐに思い出せるような手がかりを書いていきます。
同時に、 3の「まとめ」欄にも特に重要なことをまとめて記入していきます。
このコーネル式ノート術を覚えると、あとから見直すだけで相手の話をしっかり思い出すことができるので、とても便利です。ノートのとり方を教えるときに、ぜひ参考にしてください。
まとめ ▼あとから見てすぐに記憶がよみがえるノートのとり方を定着させる
「話す&書く」の教え方その 2文章の書き方を教えるのが難しい理由
ノートやメモをとるのは、文章を書くための準備です。文章を書くのに、何の準備もせず、いきなり真っ白の紙(または、真っ白のワープロ画面)に向かうのは無謀です。
まず、書く内容について簡単なメモをとっておきましょう。メモは完璧なものでなくていいのです。そもそも、「完璧なメモ」というものはありません。
仮に覚えておくためのものを「メモ」と呼ぶのですから。このようにメモをとってから、文章を書いていくわけですが、文章を書くことを教えるのはなかなか難しいことです。
理由のひとつは、文章を書くこと自体が大変な仕事だからです。大変な仕事というのは、一度に並行していくつもの作業をしなければならないということです。
文章を書くときの状況を考えてみましょう。まず、書いているテーマについて考えなければなりません。テーマからずれないように、どういう順番で、どういうストーリーにしたらいいのかということを考えています。
また、この文章がどういう読者に向けて書いているのか、ということも考えなければなりません。相手によって、言い回しを変えたり、専門用語を言い換えたり、説明の詳しさを変えたりしなければなりません。
段落の長さも調整しなければなりません。文の長さも調整が必要です。漢字にするかひらがなにするかも考えなければなりません。
このように、文章を書くときには同時にいくつもの作業をしているのです。これが文章を書くのが難しい理由です。
ですから、文章を書くことを教える人は、複数の作業を一度にさせるのではなく、分割して取り組んでいくという戦略をとるといいでしょう。
まとめ ▼文章を書くときは複数の作業を同時に行うため、教えることが難しい
「話す&書く」の教え方その 3文章は「小さなステップを踏んで書く」と教える
文章を書くのが難しい理由は、前項でお伝えしたように、一度に複数の仕事をこなさなければならないからです。
そこで、文章を書くことを教えるときは、複数の作業を細かく分けて、ひとつずつステップを踏んで書くように教えていきます。
こうすれば、誰にでも伝わりやすい文章が書けます。かも、ラクです。では、どのように教えればいいのか、具体的に見ていきましょう。
ここでは「書き方」研修会の企画について、書く例を示します。
◆ステップ 1
マップ形式/アイデアを出す段階です。
大きな白紙にマップ形式で書いていきます。
真ん中にテーマを書き入れてスタートです。
思いついた順に、好きな場所に、キーワードを書いて、線でつないでいきます。
絵やマンガを描いてもいいでしょう。
できるだけ自由に、リラックスしてアイデアを出していきます。
◆ステップ 2
箇条書きストーリー/ステップ 1のマップを見ながら、書いていく順番を考え、ストーリー形式で箇条書きに書き出していきます。
◆ステップ 3
おしゃべりスタイル/箇条書きにしたメモを見ながら、おしゃべりをするように文章を書いていきます。
おしゃべりですので、表記や言い回しは気にしません。
◆ステップ 4
段落形式/ステップ 3である程度の量の文章ができているので、それを段落ごとに整理しながら、つながりの言葉を入れて全体を整えます。
これで完成です!文章を書く仕事のように、複雑な作業がたくさん必要なものは、小さくて単純なステップを踏んでいけば、無理なくできることを教えましょう。
まとめ ▼
いくつもの作業を同時にこなす仕事は、単純なステップに分けて教える
「話す&書く」の教え方その 4「型」を教えることで文章が書けるようになる
書こうとする文章の種類が決まっているならば、その型(テンプレート)を利用するのもよいでしょう。
これを利用すれば、型、つまり文章全体の構成に注意を払うことなく、埋めていく文だけを考えればいいことになります。
たとえば、企画書や提案書では、どんな企画や提案なのかを明確にし、なぜこの企画や提案をしようと思ったのか、その意図を伝えることが大切です。
また、提案するからには、その中身を具体的に伝えることも必要です。
これらを伝える型は、序論 コンセプト(企画提案の意図)を書く本論 ①目的、 ②構造(企画・提案に関わる人、組織などの構成)、 ③プロセスを書く(実際の進め方、期間など)結論 実施するメリットとお願いを書くの 3部構成です。
最初にコンセプトを言い切ることで、読み手は次に何が書かれているかをだいたい推測できるので、安心して読めるというわけです。
また、社会人になると、報告書を書く機会は多いでしょう。
イベント、研究、会議、打ち合わせ、視察旅行など、そこに参加していない人にもわかるように要点を整理してまとめる能力が問われるのが報告書です。
その場合の型も、序論 報告の概略を書く本論 ①1つめの要点(内容や実施したこと、出来事など)、 ②2つめの要点、 ③3つめの要点を書く結論 全体のまとめを書くという 3部構成になります。
このように、どんな文章にしても一定の型があるということを教えてあげることが大切なのです。
まとめ ▼どんな文章にも一定の型がある
「話す&書く」の教え方その 5上手なプレゼン方法を教えたいときは?
最近では、小学校や中学校でも、プレゼンを練習するようになってきました。大勢の人の前で、的確に説明をしたり、自分の主張を話すことは大切な技術だということがわかってきたからです。
プレゼンは、実物やスライドを見せながら話をするのが一般的ですが、基本になるのは、一人でまとまった話をすること、つまり〝スピーチ〟です。
では、上手なスピーチをするためにはどうすればいいかというと、準備と練習が必要になってきます。準備の段階では、話す内容を決めます。
本章冒頭のマンガにもあるように、『「話す&書く」の教え方その 3』で紹介した「ステップを踏んで文章を書く」という手順とほとんど同じと考えてもいいでしょう。
まず、話したい内容を、マップに描きます。そして、それを見ながら、話をする順番を決めて箇条書きにしていきます。これで、ストーリーができあがりました。
完全な文章にしたくなるかもしれませんが、暗記したものをただ読み上げるだけだと、どうしても棒読みになりがちで、つまらないスピーチになってしまいます。
ですから、スピーチ原稿を作って練習したとしても、スピーチをするときにはいったんすべてを忘れることです。そして、初めて話をするときのように、原稿に視線を落とさないでスピーチをするのです。
そうすれば、聞いている人の顔を見ながら、イキイキとしたスピーチができるでしょう。
もし、スピーチのなかでこれだけは忘れてはいけない、という人の名前や固有名詞があれば、それは小さなメモ用紙に書いて、本番のときに持っていきましょう。
これで安心して話せますね。
上手なスピーチの仕方を教えるときは、スピーチメモ(もしくは、原稿)の作成と繰り返しスピーチの練習をする大切さを伝えましょう。
準備万端にしておくことです。
まとめ ▼スピーチメモの作成と本番同様の練習を繰り返すことが大切
まとめ 認知スキルの教え方記憶する
- ●詰めこみ暗記ではなく、間隔をおいて覚えさせる
- ●知っている知識と関連づける覚え方を教える
- ●相手が視覚型か、聴覚型かによって教え方を変える問題解決
- ●「どうしてわからないんだ?」とは言わない
- ●解き方のパターンを覚えさせて活用する話す&書く
- ●コーネル式ノートのとりかたをマスターさせる
- ●文章を書くときは、小さなステップに分割させる
- ●文章の「型」を教える
- ●スピーチはメモの作成と練習が大事
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