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第4章 人はこんなにダマされる!

目次

「褒め言葉」に二つの効果アリ!

さて、「プラスの言葉」が、とても重要な対人コミュニケーション・ツールだ ということはわかってもらえたと思います。 人と人とがうまくつき合っていくには、脳に嫌われるマイナスの言葉をでき るだけ排除し、脳が好きなプラスの言葉で会話をすべきなのです。

そこでまず、わたしがぜひ使ってほしいと思っているプラスの言葉をうまく 利用してもらいたいのです。 それは褒め言葉です。

ちょっと拍子抜けかもしれません。でも、実際に仕事で成功する人は、褒め 上手が多いのです。彼らは部下の才能を引き出し、やる気を起こさせるには、 褒めることがとても有効であることを知っているからです。 相手の欠点や落ち度を見つけたとしても、ただ頭から否定するのではなく、 その人の良いところを積極的に見いだし、褒めること。 これは、同様に子どもの教育にもいえることですね。 だれだって、褒められて悪い気がする人はいません。ですから、 「ファッションセンスがいいですね」 「いつも、さり気ないおしゃれが素敵ですね」 「そのドレス、とってもキレイ。よく似合っているわ」 「誠実で、すごくやさしそうね」 「いつも、ハツラツとしているわね」 こんな褒め言葉も潤滑油です。ただし、「褒め殺し」はいけません。歯が浮 くようなお世辞は、すぐにパレてしまうものですからね。 人を褒めることの効用は、もう一つあります。前にも言いましたが、それは その褒め言葉が自分の脳にもインプットされるということです。人を褒める言葉や励ます言葉、すなわちプラスの言葉は、自分自身にも良い効果があるとい うことも覚えておいてください。

感謝の言葉、愛の言葉もパワーの源

あなたは一日に何回ぐらい「ありがとう」を言っているでしょうか。 改めて思い出してみると、意外と少ないことに気づくのではないでしょうか。 統計をとったわけではありませんが、わたしの感覚では、日本人と欧米人を 比べると、日本人が「ありがとう」と言う回数は圧倒的に少ないように思えま す。欧米の映画などの中でも、ドラッグストアやスーパーなどで買い物をしたと き、レジで「ありがとう」と言って品物を受け取るといったシ1ン、よくあり ますよね。でも、コンビニで買い物をして「ありがとう」といっている日本人 は、めったに見かけません、残念なことに。 自分のことで恐縮ですが、わたしは、皆さんと比べると、かなり「ありがと う」を言うほうだと思っています。喫茶店やレストランで、お茶や食事が運ばれできたら、運んできてくれたお店の人に必ず「ありがとう」と言いますし、 家で妻がお茶をいれてくれたときにも「ありがとう」、新聞をとってくれたと きにも「ありがとう」、冷蔵庫からビ1ルをとってくれたときにも「ありがと どんなときでも、どんなに小さなことでも感謝の気持ちをきちんう」:::と、 と言葉で表すようにしています。 日本人は、「以心伝心」がよしとされているせいか、特に、ある一定年齢以 上の男性などは、「ありがとう」と口に出すのが苦手のようです。でも、たっ たこれだけのことで、相手も自分も気持ちが良くなるのですから、やらない手 はないと思いませんか? 「好き」とか「愛している」といった愛情を表す言葉も同様です。 恋人どうしだけでなく、家族や友人にも自然に言えるようになればいいです ね。 「何だか照れくさいな」という人でも、たとえば、「お母さんの手料理、わた し大好き。いつもありがとう」「わたし、お父さんのここが好き」というぐら いなら、言えるのではないでしょうか。 人間関係をより良いものにするためには、心の中で思っているだけでなく、とにかく「口に出して言う」ことがとても大切なことなのです。そういえば、少し前に、コミュニケーションをとることによって事故率を減 少させたあるトラック運送会社のことが、NHKテレビで取り上げられていま した。長距離のトラック運転手さんというのは、一人で運転しているわけですから、 たいてい孤独感にさいなまれるのだそうです。 それが会社の中でコミュニケーションをとることによって、実は孤独ではな いんだという認識が各人に生まれ、皆で快適な職場環境を考えていこうという 積極的な取り組みができるようになったというのです。さらには、事故率も下 がったというから驚きです。社内コミュニケーションの第一歩は、お互いに挨 拶を交わすというものでした。 そして、文化祭や運動会などのイベントの開催。 当初イベントは、仕事とは無関係に、ただ親睦をはかるだけのものでしたが、 今では楽しくて、しかも実際の仕事にも役立つような内容に進化したようです。 この番組を観て、わたしがなるほどと思ったのは、やはり「はじめに挨拶ありき」だったということでした。さらに、私たち人間にとって、いかにコミュ ニケーションが大切かということも、改めて感じさせられました。仲間とのコ ミュニケーションをとることで事故が少なくなるなんて、とても素敵な因果関 係だと思いませんか。

「頑張れ!」は要注意の言葉

さて、ここで一つ、注意していただきたいことがあります。 それは「頑張れ」という言葉です。 「頑張れ」という言葉はよく使う言葉ですよね。でも、実はこれ、不思議なこ とにマイナスの言葉なのです。Oリングで実験するとすぐわかります。まずは、 やってみてください。 ﹇実験刊﹈ この実験は協力者(調べる人) と被験者(調べられる人) の二名で行ないます。

まず、例によってあなたは親指と人差し指の先をくっつけて、Oリングをつ くります。 協力者は、あなたに向かって 「頑張れ、頑張れ」と言います。 言い終わったら、協力者は「ハイ」という合図で、両手の指をあなたのリン グに通して輪をつくり、指を開こうと引っぱります。このときあなたはリング を聞かれないように、力を入れます。 なぜか、あなたは指に力が入らず、リングはすぐに聞いてしまいます。

そうなんです。いったい、これはどういうことでしょう?ここであなたに質問です。あなたは、「頑張れ」と言われて嬉しいですか? 正直言って、わたしは嬉しくありません。 たとえば、部下が上司に向かって、「お仕事、頑張ってください」などとは 言いませんよね。違和感がありますよね。普通は、すでに力がある人だと認め た人には、「頑張れ」とは言わないものなので

これはわたしの想像ですが、脳はおそらく、「頑張れ」という言葉は、ダメ な人に言う言葉、できる人には言わない言葉だと認識しているのだと思います。 だから、「頑張れ」と言われると、ダメだと決めつけられたようで不快になり、 結果、力が出ないということが起こるのだと思います。もっとも、スポーツ選手や芸能人などは、いつもファンから「頑張ってくだ さい」と言われていますが、あれは癖というか習慣みたいなもので、脳もあま り嫌だとは感じていないようですね。わたしにしても「ありがとうござんす」 つてなものです。なかには少し評論家気分で「頑張って」と言っている方もい ますが、そんな方でも、あまりにもすごい選手、スーパースターには、おそら く「頑張って」とは言わないでしょう。先日のWBCで大活躍したイチローな どには、「頑張って!」どころか、ファンのほうが「ありがとう!」と声をか けてしまうくらいですよね。

でも、この「頑張って!」は、いろんな場面でつい出てしまう困った言葉でもあるのです。よくある家族の団らんシlンを見てみましょう。

母A子ちゃん、明日算数のテストがあるんでしょ。頑張ってね。来年はお 受験だし、もっとお勉強の時間増やさなくちゃね。お母さんも頑張るから、あ なたも頑張ってね。

A子それよりお母さん、新しい携帯(電話)欲しいんだけどなあ。

母はい、はい、お勉強頑張ったらね。

Aもう、いつもそれなんだからあ。

母ぁ、そうだ、お父さん。あなたと同期のOOさん、部長さんになったんですってね。

父そだけど、何で知ってるの?

母今日、たまたま奥さんに会ったのよ。先越されちゃったわね。あなたも 頑張ってくれないとねえ・:。

父まあな。 母なによ、他人事みたいに。ほんと頑張ってよ。

お母さんは、子どもや夫を励ますつもりで「頑張れ」と言っているのですが、これではまったく逆効果。もし、あなたが、愛する人を本当に励ましたい、応援したいと思うなら、 「頑張れ」は絶対禁句。まして、「頑張れ、頑張れ、:::」という繰り返しは、 ますますストレスを増幅させてしまいまずから、絶対にダメなのです。

見えないストレスが見えるつ・

ストレスが体や心に与える影響は侮れません。たとえば、医学の世界では、 ストレスで免疫機能が低下することはすでに常識となっています。昔から「笑 う門には福来る」といわれるように、やはり、いつもニコニコしていたほうが ストレスがかからないようです。 そういう意味では、落語は免疫力を高めるには最高なんでしょうね。これを きっかけにぜひ寄席に足を運んでみてくださいな(大事なPR)。 それではここで、もうひとつついでに、ストレスを与える簡単な実験をして みることにしましょう。目に見えないストレスが人にどんな影響を与えるのかがわかりますよ。

﹇実験ロ﹈ この実験は協力者(調べる人)と被験者(調べられる人) の二名で行ないます。 被験者はOリングをつくります。 協力者は、被験者にできるだけ接近し、数回、 します。 その日の前を行ったり来たり そして、「ハイ」という合図で、両手の指を被験者のリングに通して輸をつ くり、被験者の指を開こうと引っぱります。このとき被験者はリングを聞かれ ないように、指に力を入れます。 被験者は指に力が入らず、リングは簡単に聞いてしまいます。 おわかりのように、ストレスを受けると明らかに力は入らなくなります。人 間は、こんなちょっとしたことでもストレスを感じるものなのですね。 ちなみにこれは、心理学的にいうと「パーソナルスペース」を侵された状態、 ということになります。 私たちは相手との関係によって、その距離のとり方がずいぶん違うことを日常的に経験しています。誰かと一緒に歩くにしても、それが親しい恋人であれ ば、ぴったりくっついて歩くでしょうし、職場の上司や取引先の人だったら、 少し聞をおいて歩きますよね。このように、社会的な場面で人と人との聞に保 たれる実際の距離のことを対人距離といいますが、このとき「これ以上は入る な」という目に見えない境界のようなものがつくられます。この、自分の周り にある見えない縄張りのような空間がパーソナルスペースです。そして、もし 相手が越境して自分のほうに入ってくると、私たちは通常、不快感を覚え、 トレスが生じるというわけです。

プラスの言葉で「持てる力」と「やる気」を引き出す

さて、「頑張れ」の話に戻しましょう。 ふつう便利な言葉とされる「頑張れ」がいけないのなら、どんな言葉を使つたらいいのか?そうですよね。確かに困ります。そんなときは、 「あなたはできる!」「あなたには力がある!」 と言いましょう。 脳は、こういう言葉を聞くととても気持ちがいいようで、俄然やる気を出し ます。 次にやる気が出る言葉の実験です。 ﹇実験日﹈ この実験も協力者(調べる人)と被験者(調べられる人) の二名で行ないます。 被験者は親指とOリングをつくります。 協力者は、被験者に向かって、 「OOさん、あなたには力がある。絶対できる。よしっ!」 と力強く言います。 言い終わったら、協力者は「ハイ」という合図で、両手の指を被験者のリン グに通して輸をつくり、被験者の指を開こうと引っぱります。このとき被験者 はリングを聞かれないように、力を入れます。

リングは開きませんね。 優秀なスポーツ選手には、必ず、優秀なコlチや監督の存在があります。彼 らは、こうしたプラスの言葉で選手を励まし、本人の「持てる力」と「やる 気」とを引き出しているのです。 たとえば、二OO五年フィギュアスケートのGP(グランプリファイナル)で、 あさだまお 女子フリl優勝の快挙で知られる浅田真央ちゃんのコlチは、実際、「真央は 天才だ!何でもできる!」と、いつも彼女に言っているそうです。真央ちゃ んのお母さんにしても、海外で競技している彼女に、ファックスで「あなたは できる!」という内容を毎晩のように送信しているという話です。 実力はもちろんだけど、そういうプラスの励ましが、あれだけの成果を支え ていたんですね。 また、テレビなどですっかりお馴染みになっているアニマル浜口さんと京子 ちゃん父子もそう。

お父さんのアニマル浜口さんは、いつも京子ちゃんに「お前は強い!お前は勝てる!勝つぞ!勝つぞ!気合いだッ!気合いだッ!!」と言ってい

ますよね。若干パフォーマンス的なところもあるし、行き過ぎかなげとも思 いますが、あれはあれで理にかなっているんですね。もしかしたら、普通の人 は、あれだけ言われるとストレスになるかもしれませんが、子どもの頃からず っと言われ続けてきた京子ちゃんの場合は、お父さんのその励ましがないと力 が湧いてこないのかもしれませんね。

ちなみに、「大丈夫」という言葉もよく使いますが、プラスの言葉、マイナスの言葉という観点からいうと、感心できる言葉ではありません。Oリングで 試してみると、あまり力が入りません。どうしてなのかはわかりませんが、お そらく脳にとっては、「大丈夫」は、少しばかり消極的でインパクトに欠ける 言葉なのだと思います。

プラスの言葉を習慣に

私たちは、オギャlと生まれた瞬間から、人との関わりの中でずっと生きて います。恋愛も、結婚も、家庭も、仕事も、友人・隣人とのつき合いも、すべて人間関係によって成り立っていることは、いまさら言うまでもありません。 そして、人間関係がうまくいっている人は、人生のあらゆる場面でそれがプラ スとなり、良い方向へ歩むことができるのだと、わたしは思います。 繰り返しになりますが、この円滑な人間関係のためには、プラスの言葉がた いへん有効です。良い言葉を選択して使っている人は、それだけで、もうすで に素晴らしい人生に向かって進んでいる人なのです。 ですから、ここでわたしは、一つの提案をしようと思います。 意識的に良い言葉Hプラスの言葉を選択して、その言葉を使うことを習慣に しましょう。 もしかしたら、最初は違和感を覚えるかもしれませんが、使っているうちに だんだん身についてくるものです。ほら、ヘアスタイルを変えたときだって、 最初は何となくへんな感じだったのが、しばらく経つとそれなりに馴染んでき て、自分らしくなってくるものですよね。それと同じなんです。 人の呼び方なんかもそうですね。 こまへい わたしの場合、噺家の世界に入った当初は駒平という名前でした。それが真 打ちになって世之介になりました。そうすると「師匠」と呼ばれるようになるんですね。この「師匠」が最初は馴染めなかったものですが、いつのまにか 「普通」になりましたもの。それから、会社を経営したときは、当然ですが会 社では「社長」であるわけです。この「社長」という呼ばれ方も最初はすごく 居心地が悪くて、落ち着かなかったものです。でもそのうち、社長と呼ばれて もまったく違和感はなくなりました。もっとも、この話にはオチがあって、や っと慣れた頃には、もう社長ではなくなっていたのですがね:::。 さて、良い言葉を見つけていると、日常ごく普通に使っている言葉が、実は すごく重要だったということに、はたと気づきます。 「おはようございます」「こんにちは」 「ごきげんよう」 「さようなら」 「また明日」 「お元気で」 「ありがとう」「ごめんなさい」これらの言葉を改めてOリングで一つひとつ確認してみてください。皆、指 に力が入るはずですよ。 ﹇実験刊﹈ 被験者は親指と人差し指の先をくっつけてOリングをつくります。 被験者はそのままの状態で、元気よくハキハキと「ごきげんよう」「さよう なら」などの言葉を言います。 被験者が言い終わったら、協力者は「ハイ」という合図で、両手の指を被験 者のリングに通して輸をつくり、被験者の指を聞こうと引っぱります。このと き被験者はリングを聞かれないように、指に力を入れます。 どうですか?どれもリングは聞かなかったでしょ。 「ごめんなさい」と似た言葉で、「すみません」という言葉があります。とこ ろが、この「すみません」は、わたしが実験したところ、何度やっても力が入 りませんでした。わたし自身、確かに「すみません」よりは「ごめんなさい」 と謝られるほうが気持ちがいいのですが、一見その違いがわかりませんでした。

「すみません」は、脳にとってはわかりにくい言葉なのかもしれません。Sorry、Excuse me Thanks、「すみません」には、こんないくつもの意味があるのですからね。

ファーストコンタクトとビジュアル

前にも言いましたが、わたしはジョン・ロパl卜・パワ1ズスクールで、「コミュニケーション」のクラスを担当しています。この講義で、まず最初にわたしが言うことは、「ファーストコンタクト」の重要性です。私たちは、最初に与えられた情報からその人のイメージを形成したり、さら には、そうしてつくりあげたイメージに基づいて、その人の行動を理解しよう とする傾向があります。 あなたの最初のイメージが悪ければ、たいていの場合、相手はそのイメージ をずっと持ち続けることになる可能性があるということです。 もちろん、最初は嫌な人だと思っていたのに、つき合っているうちに理解し合うようになって仲良くなった、ということもありますが、こうしたことはそんなにいつも起こるものではありません。やはり、最初のイメージがすべてを 決定してしまうことのほうが、断然多いのです。 コミュニケーションは、相手を一目見たその瞬間から始まっているのです。 ですから、実際には言葉以前に、外見、たとえば服装やお化粧、視線、表情、 身ぶりなどが、とても重要になってきます。 少し前の出来事です。 「何だよお」 「そんなジャマなとこにいるからだろ1!」 電車に乗っていると、こんな言い争いの声が耳に入ってきました。思わず、 その声のするほうを見ると、もめているのは学生風の男性とサラリーマン風の 男性。どうやら、サラリーマンがA駅で降りようとしたとき、学生の肩にぶつ かったらしいのです。学生はサラリーマンのネクタイを引っぱって、 「謝れよお!」 と今にも飛びかかりそうな勢い。対するサラリーマンも、 「何をl、でかいツラして。お前が悪いんじゃないか。だいたいジャマなんだよ!」 と負けてはいません。

さて、このケンカはなぜ起こったのでしょうか?(実は、これは授業でもよく使っている例題です) わたしの結論はこうです。 き』つ〉」、このサラリーマンは、電車に乗り込んだときに、すでに学生のこと を「ジャマだ!嫌なヤツだな!」と思ったに違いありません。その学生はヘ ッドホンステレオにデイパックといういでたちで、ドアのすぐそばに立ってい ました。そのため、サラリーマンは大回りをしなければ車内中ほどに入れなかったのです。 つまり、サラリーマンにとっては、この時点で、すでに学生とのファースト コンタクトがあったわけです。

さらに、サラリーマンは、いくつかの駅に電車が止まるたびに、他のお客さ んが乗ってきて、自分と同じように学生をよけているのを見て、「このヤロ 1!」と思っていたかもしれません。だから、もしかしたらサラリーマンは、 降り際にわざと学生にぶつかったのかもしれませんね。「オレが悪いんじゃないよ。

お前がジャマなところに立ってるのが悪いんだよ」という、これもまた 誠に勝手な論理ではあるのですが:::。ファーストコンタクトというのは、 れほど大きく影響するというお話でした。

瞬間で始まるコミュニケーション

よく、「人は見てくれではない、中身だ」と言いますよね。そういえば、わたしが子どもの頃には、「ボロは着てても心は錦」なんていう歌もありました つけ。確かに、そのとおりだとは思います。どんなにいい物を身につけていても、 どんなにおしゃれをしていても、肝心なのは中身、その人自身であることには 間違いありません。 でも、多くの場合、人は見た目で判断することも事実です。先ほども言いま したように、コミュニケーションは相手を見た瞬間から始まっています。その とき好感をもたれるか、嫌悪感をもたれるか、それはまさにビジュアルで決定 されてしまうのです。

また、私たちは外見によって、その人の職業をイメージすることがよくあり ます。いかにも教師らしい格好とか、いかにもビジネスマンらしい格好とか、 いかにも芸能マネージャーらしい格好などと言うと、ほとんどの方が、ほぽ同 じようなイメージを頭の中で思い描くはずです。 ではたとえば、今あなたがいる場所(オフィスでも学校でも自宅でも構いま せん)に、消防士さんがあの防火服を着たスタイルで来て、「危険はないと思 いますが、念のために一時避難してください」と言ったら、どうしますか? もちろん、即、その場所から離れますよね。でも、サンダル履きで、ヨレヨレ の服を着て、髪の毛もボサボサ、どう見ても怪しい感じの人が来て同じことを 言ったら、どうですか?信じないでしょう。 これはあまりにも極端な話ですが、大なり小なり私たちは、人をこのように 判断しているということなのです。 わたしが、スクールで講義をする時は必ずス1ツを着用して行きます。 初めてのクラスで、わたしは生徒の一人にこんなことを尋ねてみました。 「あなたは、今日初めて会ったわたしに、何らかの第一印象を持ったと思いま す。それを感じたのはいつですか?」

彼女はすこし考えてから、 「たぶん、最初に目が合った時だと思います」 「実はそうではないんです。それよりもっと前なんですよ。わたしが教室に入 った時、誰だと思いました?」 「きっと今日の先生だろうな、と思いました」 「ではもし、わたしがス1ツではなく、作業着を着てたとしたら?」 「うーん、整備点検の人だと思いそう」 そうなんです。もし作業着を着たわたしが教壇に立って授業を始めたら、 「何だろう、この人?」という疑問符が湧いてきてしまう。当然、お互いの会 話だって、スムーズには行かなくなるでしょう。 コミュニケーションは、一目見た瞬間から始まるものなのです。まだ、記憶に新しいかと思いますが、二OO五年の夏は、ク1ルビズと称し て、日本国の首相自らが率先してラフな服装で公の場に臨んでおられました。 テレビなどの報道であれを見て、あなたはどう思われましたか?わたしは、 省エネはいいけれど、これで政治のことがきちっと決められるのかなと、なん

となく不安な気がしたものです。 また、人騒がせだと思っていたら容疑者になってしまった、ライブドアの元 社長ホリエモン氏は、どんな席でもノーネクタイにTシャツがトレードマーク でしたよね。 若い人の中には、既存の枠組みから飛び出した、そういうところに惹かれた という人もいると思いますが、わたしは、彼にどんなに能力があったとしても、 この服装では周りに受け入れられないだろうと感じていました。だって、見て いて、決して気持ちが良いとは思えませんでしたもの。 脳は、言葉と同じようにビジュアルにも素早く反応します。美しい花や風景 などを見ると心地よく感じるのと同じように、きちんとした服装を見ると気持 ちがいいと感じ、反対に、だらしない服装やダラダラした態度を見ると気持ち が悪いと感じるものなのです。 私たちの脳は、気持ちのいいビジュアルと気持ちの悪いビジュアルにも反応 します。 では、Oリングでビジュアルによる反応の違いを確かめてみましょう。

﹇実験問﹈ この実験も協力者(調べる人)と被験者(調べられる人) の二名で行ないます。

A親指を上に向けてみる

被験者は親指と人差し指の先をくっつけて、Oリングをつくります。 協力者は、手をグlにして親指を立てた状態(親指が上に向いている状態)に して、それを被験者に見せます。「べリl・グッド」のサインです。 協力者は「ハイ」という合図で、両手の指を被験者のリングに通して輸をつ くり、被験者の指を聞こうと引っぱります。このとき被験者はリングを開かれ ないように、指に力を入れます。 リングは開きませんね。

B親指を下に向けてみる

被験者はAのときと同じようにリングをつくります。 協力者は、今度は手をグlにして親指を下に向けて被験者に見せます。 そう、「ノl・グッド」のサインですね。

Aのときと同じように、検者は合図をして、被験者の指を聞こうと引っぱり ます。 なぜか今度はすぐに聞いてしまいますね。 上に向けたときは力が入るのに、下に向けたときは力が入りません。そうな んです。脳が「快」と感じるのは親指を上に向けたとき、すなわちベリ!・グ ッド(良い)のサインのとき、「不快」と感じるのは下に向けたとき、すなわ ちノ1・グッド(悪い)のサインのときなのです。これは、アメリカ映画など で頻繁に見かける行為ですが、今では世界中で認識されるサインでしょう。そ れに前の章で述べたように、「上向きはいいイメージ」で「下向きは悪いイメ ージ」という意識は、日本人の中にもあるもの。だから、こうしたサインひと つをとっても、私たちは無意識のうちに、脳の快・不快にしたがって意味を決 定しているのです。 同様の反応は図案化したものでも起こります。 矢印を紙に描いて、それを上向きにして見せると力は入りますが、下向きで は入りません。あるいは「ニコちゃんマ1ク」は力が入りますが、怒った顔や泣いた顔のマlクでは力が出なくなります。

連帯感はどうして生まれるか?

それでは、 だれでも、 ついでに、ちょっと不思議な実験をしてみることにしましょう。 きっと驚きますよ。 今度は協力者が二人必要です。 題して「つながっている感情」。﹇実験問﹈ この実験は協力者(調べる人)と被験者(調べられる人) 二名の計三名で行な います。 被験者Aさんと被験者Bさんは手をつなぎます。 被験者Aさんは、空いている片方の手で親指と人差し指をくっつけて、Oリ ングをつくり、目をつぶります。 協力者は、手をグlにして親指を立てた状態(「べリl・グッド」)にして、それを被験者Bさんに見せます。 協力者は「ハイ」という合図で、両手の指をAさんのリングに通して輸をつ くり、Aさんの指を開こうと引っぱります。このときAさんはリングを聞かれ ないように、指に力を入れます。 不思議ですね。このときリングは聞きません。親指を下に向けて(「ノl・グ ッド」)同様なことをするとリングは簡単に開きます。 サインを見せたのは被験者Bさんで、被験者Aさんは目をつぶっているのに、 そのAさんが影響を受けるなんて不思議でしょう?人数が三人、四人:::と 増えていっても、同様なことが起こります。ちなみに、わたしは最高七人まで 実験したことがあります。 では、なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。 これもわたしの想像なのですが、前にお話ししたように、人間が何かをしよ うとするときは、電気信号が発生し、同時にホルモンすなわち神経伝達物質が 放出されて、神経回路網をものすごいスピードで駆け巡ります。脳はそれによ って、いま何をすべきか指令を出すわけですが、この極微量の電気が別の人に

伝わり、伝えられたその人の脳が同様の反応を起こすのではないかと思うので す。 だから、人間の感情って、 サッカーみたいなスポーツもそうでしょう。よくジlコ監督が言っていたの つながっているんですね。 は、「技術じゃないんだ! 一人でも「まあ、 「まあ、 優勝しようと皆が思うことなんだ!」。 いいや」と思っていたら、勝てないんですね。たった一人の いいや」という感情が、他の選手にも伝わってしまう。そういうことって、どうもあるようなのです。「連帯感」と普通に言いますが、それは言葉にしなくてもそんなふうに瞬時に して全体に伝わってしまうものなのです。 対人コミュニケーションでは、こうした言葉以外のコミュニケーション(非 言語的コミュニケーション)も、とても大事だということを心にとめておいてください。

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