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第4章 それでも吸いたくなる「カラクリ」

喫煙者の脳はドーパミンの反応が弱い先生だいぶ表情が明るくなったね、B子さん。B子さんそうなんです。なんだか、本当に禁煙したいような気持ちがしてきたんです。でも、まだいろいろ心配があって。先生できそうな気もするし、心配な気もすると。例えばどんなことが気になるかい?B子さん例えば、食後の1本とか、休憩時間の1本とかですね。先生なるほど。じゃあ早速、その秘密に取り掛かろう。食後や休憩時間、何か楽しい時に1本吸いたくなってくる、その理由を理解するためには、脳内ドーパミンの説明が必要です。ドーパミンというのは、幸せや安らぎを感じる時に、脳内報酬系と呼ばれる神経回路から出てくる神経伝達物質です。ドーパミンは、食事や、金銭的な報酬、美しい顔、魅力的な異性、家族の笑顔などの、社会的報酬によって出てくることがわかっています。人生の喜びの源といってもよいでしょう。

さて、ニコチンはこのドーパミン神経に作用して、強制的にドーパミンを分泌させることができるのでしたね。この性質はアルコールや覚醒剤、麻薬などにも共通しているのですが、繰り返しになりますが、この「強制的」というのが重要です。なぜなら、いくら本人にその気がなかったとしても、ニコチンが脳に届くと、ドーパミン神経は強制的に刺激を受けて反応してしまうからです。ですので、初めての1本は不快な感じがするのでしたね。過剰な刺激になって頭痛がしたり、吐き気がしたりするわけです。最近のタバコは、麻酔薬などいろいろな添加物が加えてあるのでなんともなかったという人もありますが、基本的には

気持ちの良いものではなかったはずです。それで、子どもは油断してしまうのです。「なんだ、たいしたことないじゃん。先輩と付き合う時くらいいいか」という具合です。ところが、いくら本人にその気はなくても、付き合いだけのつもりでも、繰り返し吸っていると、脳に変化が起きてきます。ドーパミン神経が弱ってくるのです。つまり、ニコチンにより、繰り返し、強制的に無理やり働かされていたために、ニコチンがないと働きが鈍くなってくるのです。専門的には、代償性感受性低下と呼んでいます。ですので、喫煙者と非喫煙者のドーパミンの反応を比べると、喫煙者の脳ではドーパミンの反応が弱いことがわかっています。喫煙者では脳波のアルファ波が減っているのを思い出した人もあると思います。調べ方が違うのではっきりしたことは言えませんが、これらはお互いに共通する現象を別々の方法で、つまり一つは脳波で、もう一つは神経物質の反応で見ているのかもしれません。「失楽園仮説」さて、ドーパミン神経がある程度弱ってくると、タバコの味がわかる瞬間がやってきます。きっとドーパミン神経が弱った結果、ニコチンによる強制刺激がちょうどよくなったのかもしれません。本人は満足しているかもしれません。タバコの味がわかった、吸えるようになったんだ、というわけです。しかし、この瞬間に、ほぼ依存症は完成しているといってよいでしょう。なぜなら、この後子どもの行動が大きく変化するからです。どう変化するかは、もうおわかりの人も多いでしょう。そう、それまでは、先輩にもらっていたのに、自分で買いに行くようになるのです。味がわかってしまったからです。そして、自分で買うので、自由に吸えて、次第に本数が増えていきます。それにつれて、ドーパミン神経はますます弱り、さらに本数が増える結果になるのです。さて、ここまでは誰もが納得できると思うのですが、私はここでもう一つ大きな変化が、タバコを吸う人の日常に起きてくるのではないかと考えています。タバコのせいで日常生活に気づかないうちに大きな影響が出てくるのです。何だと思いますか?ヒントを出してみましょう。この弱ってしまったドーパミン神経は、もともとは何をしていたかということです。そう、ドーパミンは、幸せや安らぎを感じる物質でしたね。ということは、これが弱ってしまったということは……、おそらく日常生活の、幸せや安らぎが減ってしまう、感じにくくなってしまうのではないか、ということです。ただしこれは、現時点では、まだ厳密には科学的に証明されたわけではありません。そこで、私は仮に「失楽園仮説」と呼んでいます。なぜ「失楽園仮説」かというと、『聖書』の物語からです。アダムとイブはエデンの園という楽園で何不自由なく幸せに暮らしていますが、ある日蛇にそそのかされて、食べてはいけないといわれていた果実を食べてしまいます。そのため神の怒りに触れ、楽園を追放されてしまう、という説話ですね。その様子が、ちょうど、タバコというものに手を出してしまったために、ドーパミン神経が弱り、楽園、つまり日常の幸せや安らぎが感じにくくなってしまった喫煙者に似ていると思うのです。喫煙者に「さわやかな朝」はないでは、次に幸せや安らぎが失われてしまうとは、具体的にはどんなことなのか見ていきたいと思います。私も夢中になって読んだ人気少女マンガに『NANA』というのがあります。『NANA』には黒いナナと白いナナという2人の少女が出てきます。黒いナナのほうはロック歌手になり、白いナナのほうはミーハーな女の子という設定です。物語は、その2人が偶然一緒に暮らし始めるところから進展していくのですが、2人で暮らし始めて朝起きると、黒いナナが窓から外を眺めながら、いかにも幸せそうにタバコを吸っているのです。その様子を見て、白いナナは思わずつられてしまい、1本吸ってみたくなるのです。禁煙中の人も、やはりつられてしまうかもしれません。脳の中の魚の群れが、そちらに向かいかけるのです。さてここで、魚の群れを引き戻すために白いナナに一言声をかけるとしたら、どんな突っ込みが入れられるでしょうか。「失楽園仮説」をもとに考えてみてほしいのです。なにしろ、黒いナナの脳は弱ってしまっているわけですよね。何か思いつきませんか?こんなのはどうでしょう。「もしタバコが切れていたら?」。

もしタバコが切れていたらどうでしょう。黒いナナはこんなに幸せそうな表情をしているでしょうか。そうは思えませんね。きっと朝からタバコの自動販売機を探したりして、大変そうにしているはずです。そもそも喫煙者には、朝になるとタバコが吸いたくなる人が多いのです。夜寝ている間にニコチンが切れているからです。ニコチン切れのひどい人だと、朝起きて5分以内に吸い始めることも珍しくありません。率直にいってしまえば、喫煙者には「さわやかな朝」はなくなってしまったのです。もちろん、タバコを吸わない人が毎朝さわやかとは限りません。でも、2日に一度か、3日に一度かわかりませんが、タバコを吸わない人の場合、「ああ、よく寝た。いい天気だ。今朝は気持ちいいなあ」という日があるのです。ところが、喫煙者の場合、さわやかな朝は1年365日のうち1日もないのです。朝起きれば、必ずニコチンが切れているからです。頭が重い、体がだるい、のどが痛い、そしてとりあえず1本、となってしまうのです。そもそも喫煙者はタバコが切れた時のつらさをよく知っているので、朝起きたらタバコがない、なんてヘマはしません。切らさないように用心しているのです。これが、「日常の幸せが感じにくい」の一つの例です。食後に吸いたくなる本当の理由では、食後に吸いたくなるのはなぜでしょうか。まずタバコを吸わない人から考えてみましょう。脳が元気であれば、ご飯を食べた後には、「ああ、おいしかった」ということで、ドーパミンが出てくるのでしたね。あなたも子どものころはどうでしたか。大好きなおやつが出たら、ニコニコして食べていたはずです。ドーパミンが出ていたのです。それが、タバコを吸うようになってからはどうでしょうか。レストランでどんなにおいしい好物をおなかいっぱい食べたとしても、それだけで本当に100%満足できますか?最後にしめの1本が欲しくなってきませんか?そんな場面で、急に「禁煙です」と言われたら、「ええ~っ」となりませんか?外に吸いに行く人もあるでしょう。どうしてこんなことになってしまったのでしょう。それも同じ、ドーパミンの出が悪いからです。どんなにおいしいものをたくさん食べても、100%は幸せになれない、なんとなく物足りなくなってくる。それでタバコが必要になるのです。いうならば、タバコのせいで、喜びが完成しない脳になってしまったのです。ちなみに禁煙を始めると脳は回復を始めます。それで、禁煙すると、ご飯がおいしくなるという人が出てくるのです。一般的には、禁煙後食事がおいしくなるのは、味覚の麻痺が回復したからだと説明されています。確かにそれもあると思います。しかし、それだけならば、まずい味にも敏感になってよいのではと思うのです。ところが現実には、おいしくなったという人ばかり。ということは、味覚の回復もあるにせよ、やはり幸せを感じるドーパミンの回復もあるのだと思います。あとよくあるのは、お酒の席でのタバコですね。普段はほとんど吸わない人が、飲み会になると、何本も何本も吸ってしまう。本人もなぜだろう、と不思議に思っていたりするのですが、それも同じ仕組みです。タバコを吸わない人の場合、今日はもう仕事はおしまい、飲み会だ!カラオケだ!となると、ドーパミンがどんどん出ます。そして楽しみ盛り上がります。ところが、タバコを吸う人の場合、ドーパミンの出が悪いので、とにかく1本吸って始まります。ところが気の毒なことに、ドーパミンの効き目は長続きしません。ニコチンが切れてくるからです。なんとなくつまらなくなってくる。ところが周りは盛り上がっている。それで、また1本吸うわけです。それでしばらくはいいのですが、またニコチンが切れてきます。なんだか白けてくるのです。それでさらにもう1本。こうして、周りが盛り上がれば盛り上がるほど、自分も楽しさをキープしようとして、次から次へと吸ってしまうというわけです。しかし、吸い続けているうちに、だんだん1本の効き目が弱くなってきます。脳にしてみれば、いくらニコチンがきても、もう疲れてきてしまうわけです。それで最後のほうには、おいしくもなんともないのに、惰性で吸っている状態、そんなことを話してくれる喫煙者もたくさんいます。

隣で吸っている人が気の毒に思えるようにこうしたカラクリを読んでしまうと、そんなことならタバコを吸うんじゃなかった、という気持ちになる人もあることでしょう。でもまあそれも人生の一部です。誰だってバカなことの一つ二つはしでかすものですよね。それにこの経験は、実は悪いことばかりではありません。というのは、禁煙後にこの経験が活きてくるという面白いデータもあるからです(それはもう少し後に紹介しますね)。さて、すんだことより大事なのはこれからです。そして何より、今からでも遅すぎるということはないのです。なぜなら今回の禁煙は、今までのとは違う、つまり、禁煙を始めた時に、こうした理屈がわかっているのといないのとでは大差があるのです。こうしたタバコのロジックが何もわかっていないまま、禁煙を始めてしまうと何が起こるか。例えば、飲み会の席で隣の人が吸い始めたとしたら、ただひたすら我慢するほかありません。もちろん、体に悪いから、お金がもったいないから、せっかく禁煙を始めたから、といろいろ頑張る手がかりはあります。また、1本でも吸えば、グルグルの「止まらない回路」にスイッチが入ってしまう、という知識も役に立つでしょう。しかし、酒の席でタバコを吸いたくなる仕組みが理解できていれば、もっと簡単に気持ちの整理がつくかもしれません。なぜなら隣で誰かが吸い始めた時、ふと例のドーパミン曲線を思い出すかもしれないからです。ドーパミンが足りなくなってきて物足りなくなってきたのを、タバコを吸って必死に持ち上げようとしてタバコを吸う。しかし上げてもじきに下がってくる。そして上がっては落ちを繰り返しながら、一生懸命幸せをキープしようとし続ける、あの曲線です。それが頭に思い浮かぶとどんな気持ちになるでしょう。「おっ!吸いだしたぞ。頑張ってるなあ。一生懸命幸せをキープしようとしているなあ。でも、だんだん1本の効き目が落ちてきたようだ……」。そんなことが思い浮かぶかもしれません。なんとなく吸っている人が滑稽に思えたり、気の毒に感じられてくるのです。教えてあげたいけれど、わかってくれないだろうなあ、と思う人もあるでしょう。もちろん、隣の人の様子を見て、タバコにつられる気持ちもあるでしょうが、その後の欲求が、今一つ盛り上がってこないのです。つまり、タバコのカラクリを知ることで、脳の中に魚の群れができにくくなり、仮に魚がそちらに行きかけても、さほどあわてずに戻ってこられる、つまり心に余裕ができ、気持ちの整理がつきやすくなるのです。タバコの仕組みがわかっていなかった時は、ただひたすらうらやましかったのが、今ではなんだかかわいそうに思える。そんな変化が起きてくるのです。タバコなしでは幸せを感じにくくなる

それではここで、さらに幸せが感じにくくなってしまう場面について考えてみましょう。幸せが感じにくい脳、幸せが完成しない脳の影響に話を戻すということです。喫煙者が感じにくくなった幸せは、他に何があるでしょうか。例えば、登山で山のてっぺんについた時などどうでしょうか。長い時間をかけて登り切り、目の前にとても素晴らしい眺めが広がっています。あろうことか喫煙者は、そこで吸いたくなってしまうのです。吸わない人から見ると、一番景色が良くて、一番空気の良い場所でなぜわざわざ吸うのかな、と不思議でたまらないのですが、喫煙者にしてみれば、そういう場所だからこそ、なんとなく物足りない感じがしてしまうのでしょう。もしそこで吸えなかったら、どうなるのでしょう。例えばふもとの駐車場にタバコを忘れてきたとか?ある喫煙者は苦笑いしながらこんなふうに答えてくれました。「そこで吸えなかったら……疲れただけ」別の例として、仕事がひと区切りついた休憩時間はどうでしょうか。喫煙者の中には、休憩中にそこでタバコが吸えないと休憩した気持ちになれない、という人もあります。タバコを吸わない人はどうやって休憩するのだろう、と不思議に思ったりしています。でもタバコを吸わない人からしてみると、半分仕事が片づいただけで、十分幸せだったりするのです。釣りが好きという人が、「大物が釣れた後に1本吸う」と言っていたのも同じでしょう。もう本当に例を挙げだせばきりがありません。みんなでスポーツをやった後、大きな仕事を片づけた後なども吸いたくなってきます。きっと達成感が感じにくくなっているのです。この話を少年院でしたことがあります。そうしたら、ある少年が、声をかけてくれました。「自分たちは薬物をやっている時も、ひっきりなしにタバコを吸いながらやっていました。それも一緒ですね」私は少しびっくりしましたが、本当にそのとおりだと思いました。覚醒剤のように直接快楽を引き起こす物質を使っている時すら、タバコがないと100%その感覚を味わえない、そこまであらゆることに幸せが感じにくくなっているのです。元気づけの1本の真実ある社長さんにこんなことを言われたことがあります。「うちの社員は、社長の私に会う前に1本吸ってから来るんだよ。なんとかならんか」状況はわかりますよね。社長が呼んでいるよ、と言われると、社員は不安な気持ちになるのです。何か失敗したかな?怒られるかな?というわけです。それで、吸いたくなってくるのです。あるいは、例えば10時に社長に会うとわかっていると、9時50分には仕事を切り上げ、1階まで下りていって、1本吸ってから会いに行く、ということをしている人もあります。大事なプレゼンの前に元気づけの1本、というのも同じですね。そんな時にタバコが切れていたら、どんどん心配になってしまう人もあるでしょう。ところが、そんな時でも、タバコを吸わない人は、不安を感じながらも、プレゼンをしたり社長に会いに行けるわけです。すぐに来いと言っていたよ、と言われたら、きっとそのまま急いで行くことでしょう。そんなタバコを吸わない人の様子を横目で見て、喫煙者は自分のことをどう思うでしょう。情けなく感じるかもしれません。なにしろ自分は、1本吸って元気を出してから行きたくなるわけですから。タバコに頼っているように感じるのです。あるいは、タバコを吸わない人のことを「すごいな」と感じるかもしれません。彼らはタバコに頼らずやっていける強い人だなあ、とか、そうでなくても、何かうまいストレス解消の方法を知っているのかなあと考えるかもしれません。でも実際のところ、どうでしょう。タバコを吸わない人は本当にそんなに強い人たちなのでしょうか。それとも特別のストレス解消法を知っている?正直、そうとも思えないのではないでしょうか。実際当人たちもそうは思っていないのです。それではなぜ、タバコを吸わない人は、タバコなしで社長に会いに行けるのでしょう。タバコを吸ったことがない、とはどういうことなのでしょう。それは脳の仕組みを考えればわかります。タバコを吸わない人は、脳が元気で、アルファ波やドーパミンが出てくるのです。例えば、軽く目を閉じて何回か深呼吸をするだけで、アルファ波が出てきます。タバコを吸わない人は、社長に会いに行く途中に、無意識に深呼吸をしているかもしれません。そして、社長室の扉の前でさらに何回か。あるいは、緊張を感じるとそれを和らげるようにドーパミンが出てくるのです。

ドーパミンは、快楽物質として説明してきましたが、実はそれ以外にも、いろいろな場面で出ていることがわかっています。例えば、ネズミの足に電気ショックを与えたり、水におぼれさせたりしてもドーパミンが出てくるのです。つまり、動物の体には、もともとストレスがかかると、それに対処する仕組みがあったのです。人間の場合も同じです。ところが、タバコを吸うとその仕組みが弱ってしまいます。それで、タバコが必要になってしまうのです。今はタバコを吸っている人でも、子どものころは、学習発表会の前にタバコが吸いたくなったでしょうか。そんなことはありませんね。つまり、そのころは、ちゃんとドーパミンが出ていたのです。要するに、タバコを吸う人はタバコのおかげで元気が出る、と感じていますが、実際に起きていたのはあべこべで、タバコのせいで自分の力では元気が出なくなっていたのです。喫煙で喜びの感度が鈍ってしまった少年たち私は「失楽園仮説」を実験的に証明したくていろいろな研究者に働きかけてきましたが、反応は限りなくゼロに近いものでした。ところが、ごく最近になって、「失楽園仮説」の根拠となりそうな研究が海外で発表されたので紹介しましょう。舞台は未成年の喫煙が10代前半にまで広がり、問題になっているヨーロッパ。2011年の5月、ある研究チームが発表した論文が人々に衝撃を与えたのです。研究の中心となったのは、ドイツの脳神経学者ヤン・ペーター博士。博士たちは、喫煙習慣と脳の関係を調べるため、14歳で、タバコが手放せなくなっている少年たちを集め、実験を行いました。実験のルールは、二重丸の合図が出れば、ご褒美としてキャンディー10個、三角が出ればキャンディーはなし、丸ならば、キャンディーが2個もらえます。そして、脳の活動を精密に測定する装置(fMRI)で、合図を出した時の脳の変化をとらえます。その結果、タバコを吸わない子どもでは、二重丸でたくさんのキャンディーがもらえるとわかると、脳のある場所が強く活動しました。一方、タバコを吸う子どもは、二重丸を見ても、なんと、ほとんど活動していません。どういうことなのでしょうか。調べていたのは、喜びを生み出す脳の中核、報酬系の線条体という場所です(前掲図参照)。この場所には側坐核と呼ばれる神経の塊があり、そこで、喜びの神経物質ドーパミンが分泌されるのです。つまりこの結果は、タバコを吸っている人のほうが、同じご褒美を前にしても、喜びの度合いが弱かったことを表しているのです。イメージとしてはこんな感じでしょうか。タバコを吸わない少年は、キャンディーを見ると「わーい」と素直に喜ぶのに対し、タバコを吸う少年は、「なんだ、キャンディーね……」となんとなく白けた反応なのでしょう。さらに衝撃的だったのは、この神経の反応低下は、タバコを吸い始めて合計10本未満の、本当に吸い始めたばかりの子どもにも認められたという点です。しかも、吸う本数が増えるにつれて、低反応がひどくなるという関係になっていました。タバコの影響がこんなに早くから現れているとは本当に驚きです。タバコの影響が、吸い始めた直後から本人も気づかないうちに始まる、このことは非常に大きな影響を喫煙者の心にも

たらします。なぜなら、自分の脳の変化がわからないことにより、数えきれないほどの誤解や不思議が生まれるからです。そのうちから、特に皆さんの助けになりそうなものを選んで、次の章にまとめました。

 

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