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第3章失敗しない!クレーム対応法

目次

第3章失敗しない!クレーム対応法

016クレーム対応力を上げる方法クレームを言う側になると、やるべきことが見つかる

クレームへの対応を一刻でも早くうまくなりたい、お客様の怒りを笑顔に変えられるようになりという方、とっておきの方法があります。それは、「自分がクレームを言う立場だったら、どうしてもらうと嬉しいか」を考えてみることです。

私のクレーム対応研修では必ず最初に「自分の会社・お店にクレームを言った場合、どう対応してもらうと、次も利用するようになりますか?箇条書きにして挙げてみてください」と受講者の方に問いかけ、考えていただくワークから始めます。

そうすると面白いことに業界を問わず、全く同じ回答がでてきます。

  • 最初にしっかり謝罪をして欲しい。
  • 言い訳も否定もせず、ちゃんと話を聴いて欲しい。
  • 私が今、何に困っているかを理解して欲しい。
  • 迅速に対応して欲しい。
  • 解決して欲しい。良い提案をしてもらいたい。
  • できることとできないことをハッキリさせて欲しい。
  • 事務的な対応をしないで欲しい。
  • クレーマー扱いしないで欲しい。

実は、一般企業やお店だけでなく、病院や学校関係者、市役所・区役所の職員へのクレーム対応研修でも同じ回答が出てきます。ここにクレーム対応のやり方の「答え」があります。クレーム対応を難しく考える必要はありません。

クレームに対応する立場からクレームを言う立場になって考えてみると、自ずとやるべきことが見つかるということです。すでにクレーム対応の答えを誰もがもっているのです。あとは実践するだけで良いのです。対応者側の考えをやめてお客様側に立つと見えることがたくさんあります。

これが“お客様視点”です。お客様視点とは、お客様の横に立って同じ方向を見るということです。自分がされて嫌だと思うことはやらない、という意識をもつようにしてください。

クレームの心理 自分がクレーマーになってみると、クレーマーの心理がよくわかる。

具体的行動 お客様はどう対応してもらうと嬉しいのか、常に意識するようにしよう。

017クレーム対応の時間を短くするポイント クレームは“処理”ではなく“対応”することを心掛ける

クレームに対して「処理する」という表現をしている人でお客様の怒りを笑顔に変えられている対応者を、一度たりとも私は見たことがありません。なぜなら「クレーム処理」という言葉を使っている時点で、クレームは嫌なもの、早く終わらせたいという思いがあるからです。

クレームは嫌なもの、早く終わらせたいと考えて処理するとクレームは長引きます。早く終わらせたいという態度が全面に出てしまい、それが伝わってしまうことで、お客様は余計に怒り続けるからです。

もし、あなたがクレームを言われる時間を短くしたいと思うのなら、まず言葉を変える必要があります。クレームは処理するものではなく、“対応するもの”、“受け止めるもの”と変換するようにしてください。

人間は言葉によって、認識が変わり物事の捉え方が変わります。捉え方が変わると行動も大きく変わります。しっかり受け止めようとして、お客様に向き合うことでお客様の怒りを鎮めることができるようになります。

お客様から何度も同じことを言われることもなくなり、対応時間も自ずと短くなります。私がコンサルティング依頼を受けた企業のお客様相談室の話です。

10人のスタッフがいましたが、クレームを受けることがとても嫌なようで、業務が終了する18時になるのを静かに祈り続けているような非常にクレームに対して後ろ向きな現場でした(笑)。

私はスタッフの意識を変えるために「お客様相談室はクレーム処理係ではない、お客様を笑顔にするためにある部署です」と伝え続けたところ、「どうやればクレーム対応で笑顔にできるのか」「対応に使えるボキャブラリーをもっと増やしたい」とスタッフが自発的に勉強するようになり、数か月後にはスタッフ全員がお客様に寄り添う対応できるようになり、クレーム対応に対して誇りをもって仕事をする現場にまで生まれ変わるようになりました。

魔法の言葉は存在しません。言葉自体が魔法の力を兼ね備えています。自分が使う言葉ひとつでお客様の笑顔をたくさん増やせることを胸に刻みこみましょう。

クレームの心理 自分が使う言葉によって、物事との向き合い方も変わってくる。クレームであっても例外でない。

具体的行動 逃げの気持ちを捨てて受け止めるようにすると、対応時間も短くなる。

018理不尽なクレーマーが誕生するポイント初期対応に失敗すると、クレームはこじれる

「クレームでもっとも気をつけるべき点は何ですか?」という質問に対して、私の答えは「初期対応に失敗しないこと」と、必ずお伝えしています。

初期対応を誤ると、解決すべき問題より、対応者に対しての不信感の方が大きくなり、クレームのお客様が無理難題を押しつけてきたり、揚げ足を取るかのように対応者に対しての個人攻撃が始まったりしてしまうのです。

対応者の信用も失うので、人を代えない限りはその場を収めることが難しくなってきます。100円ショップでの出来事です。年輩のお客様がレジに来て、「おたくのお店は値札がついてないから不親切だ!」とクレームがありました(笑)。

これに対してレジのスタッフがバカにしたような態度で「ウチは100円ショップですけど!」と言ってしまい、お客様に恥をかかせてしまった。これに対してお客様は激高し、「何だお前!その言い方は!上を出せ!」とレジから動こうとせず、レジ待ちのお客様の行列ができるという大きなトラブルに発展してしまいました。

「100円ショップだから値札はつけなくてもそれぐらいわかるだろう」は、店側の勝手な解釈です。お客様は「商品を気に入って買いたいと思っているのに値札がついてなくて不親切だ!」と困っているのです。

クレーム対応だけではなく、仕事をする上でとても大切なことに、何でも「客観視」できる、心のゆとりをもつことがあると思っています。自分たちの常識や当たり前はお客様にとってはそうではないことがたくさんあります。

自分たちの常識や当たり前はお客様にしっかり伝わっているだろうかと俯瞰して見る習慣をもつことです。お客様に対しては自分の身内や大切な友人のように愛をもって接する必要があります。

クレーム対応のスキルを学ぶと同時に、自分たちの仕事を客観視する習慣をつくっておくことで、クレーム対応で初期対応に失敗することはなくなります。未然にクレームを防ぐこともできるでしょう。

クレームの心理 対応者への第一印象を挽回するのは難しいので、初期対応に失敗しないことが重要である。

具体的行動 初期対応に失敗しないために、自分たちの「常識や当たり前」を俯瞰して見るようにしよう。

019「すぐに来い!」と言われたときの対応法すぐに行くのではなく、まずお客様の話を聴く

クレーム対応のあるあるのひとつに激怒したお客様から電話が入り、時間や場所に関係なく「すぐに謝りに来い!」と要求される場合があります。とくにお客様が暴言を吐いてくる状況であれば、対応者側はパニックになることも少なくないと思います。

しかし結論から言うと、すぐに謝りに行くかどうかは、対応者側の判断で決めて大丈夫です。お客様に言われたからといってすぐに謝りに行く必要はありません。

クレーム対応をするなかで、忘れないでいただきたいポイントのひとつに、クレーム対応は対応者側が主導権を握る必要がある、ということがあります。

お客様は感情に任せて、「すぐに来い!」というものです。そこで対応者側としてはまず、本当にお客様のところにすぐに謝りにいくべき案件なのかどうか、冷静に判断してもらいたいのです。それが最優先事項です。

この見極めの判断基準としては、「緊急性」と「必要性」があります。「大至急対応するべきものなのか?」、「現場に行かないと対応できないものなのか?」、この2点です。

ホテルでの話です。宿泊客からフロントにお客様から内線が入り、お客様が「部屋がヒドイ!どういうことだ!謝りに来い!」と言われました。この場合は、フロントスタッフはあわててお客様の部屋に謝りに行く必要はありません。

「お部屋にご満足いただけなかったようで申し訳ございません。お部屋はどのような状態でしょうか?お聞かせください」と、まず話を聴いて、部屋の状態を確認すればいいのです。洗面所が水漏れしているケースもあれば、隣の部屋の音が気になるというご不満のケースもあるでしょう。

話を聴いてお客様の言い分やご要望を受け、すぐに部屋に行った方が良い場合もあれば、代わりの部屋の空きを確認してから行くことでも遅くないときもあるでしょう。

対策を考えて現場に向かうほうが早く解決するものです。一度不満を吐き出したお客様は、少し冷静な気持ちでスタッフを待つようにもなるでしょう。

クレームの心理 人は一度不満を吐き出すと、少し冷静になることが多い。

具体的行動 対応者側が主導権を握り、すぐに行くかどうかは緊急性と必要性の観点で判断してから決めるようにしよう。

020お客様を怒らせてしまうNG対応①なだめようとすると、かえって怒らせてしまう

クレーム対応に対しての経験が不足していたり、苦手意識があったりすると、ついやってしまうNG対応として「クレームから逃げようとする」「お客様を否定してしまう」ことがあります。

カフェでの出来事。お客様を席に案内した店員がオーダーを通し忘れてしまい、お客様から少しイライラした表情で「コーヒーまだ?」とご指摘を受けてしまいました。

通し忘れていたことに気付いた店員は、慌てて「すぐにもってきます」とだけ伝え、厨房に下がりました。数分後にコーヒーをおもちした際に「大変お待たせしまして、申し訳ございませんでした」の一言もなく、コーヒーを置いてしまったことが発端で、このお客様は帰り際にこの店員に激しい口調でクレームを言ったということがありました。

この激しいクレームに対して、動揺した店員が最初に言った一言が「お客様、もう少し落ち着いてください!」でした。その後、このお客様がSNSで店の名前と場所、店員の名前まで公開した上で、さんざん悪い書き込みをしてしまい、カフェを経営する本社の広報がこの投稿を見つけ、大騒ぎになってしまった、というのがこの話の結末です。

どうでしょうか。自分がお客の立場ならSNSにまで公開することはないと考えるかもしれませんが、これに近い気持ちになったという読者の方はいるのではないでしょうか。では、この一連の対応はどこがダメだったのでしょうか。最大のポイントは、お客様に謝罪するべき場面で、逃げてしまったのが要因でした。挽回する機会を自分で全て逃してしまいました。

①オーダーを通し忘れていたと気付いたとき、②コーヒーをおもちしたとき、③レジでクレームを言われたときの3回です。

そしてSNSに書き込みまでされてしまったNG対応が「もう少し落ち着いてください!」と、なだめようとしたことでしょう。なだめる行為は、お客様を否定しています。拒絶してしまうのです。

もう少し落ち着く必要があるのは、この店員自身であることはあきらかです。自分に非があるとわかったのなら、自分の不手際を認めて謝罪することができれば大きな問題にはならなかったのです。

クレームの心理 お客様は、自分が否定されていることをわかると怒りが湧いてくる。

具体的行動 お客様の気持ちに寄り添うために、自分の至らなかった点をしっかりお詫びするようにしよう。

021お客様を怒らせてしまうNG対応②クレームに同調しても、受け止めたことにならない

2000年代に入り、日本では企業や行政に寄せられるクレームが増加傾向になった頃に組織がクレーム対策を意識するようになりました。残念ながら、その時代に作成されたクレーム対応マニュアルがいまだに正しいと信じられ、現場で使用されている組織が少なくありません。

私はクレームにもトレンドがあると思っています。時代にあわせて対応策を進化させていかないと、お客様の怒りを笑顔に変えることはできないと考えています。先日、研修会社のクレーム対応研修のテキスト監修依頼があった際に驚いたのですが、草稿にはやはり2000年代前半に作成されたと思われる古いタイプのクレーム対応方法が記載されていたのです。

クレーム対応の伝統かのように、揃って記載されている対応法に「不必要に謝罪をするのを避ける」というものがあります。これは、アメリカ社会の影響が大きいのですが、「謝罪をして非を認めることで、多額の賠償金を請求される恐れがある」ということをいまだに信じている人が少なくなく、業界によっては、これが定番の考えとして信じられています。

はっきり言うと、時代は変わりました。アメリカ社会でも申し訳ないことをしたとわかったなら、謝罪してどうすればお互いがハッピーになるかを冷静に話し合うように変わってきています。

同じくクレーム対応の伝統として残る常套句(笑)として、お客様の話を聴いている際のあいづちに「おっしゃる通りです」「ごもっともでございます」があります。とくに公共機関、企業のお客様相談室・コールセンターで多用している言い回しです。

「おっしゃる通りです」「ごもっともでございます」という同調の対応は危険です。同調は、許してもらおうとしています。早く終わらせようとしている行為です。この誠意のない対応にお客様はさらに怒りを募らせることもあるでしょう。

それこそ、同調は全面降参と同じですのでお客様から言われる要求を全て受けいれざるをえない状況に陥る可能さえあります。

クレームの心理 お客様は同調には不実を、謝罪には誠実さを感じることが多い。

具体的行動 「おっしゃる通りです」「ごもっともでございます」など、同調の言葉で許してもらおうとするのをやめる。

022お客様を怒らせてしまうNG対応③急いでいる様子を見せると、相手は不愉快になる

お客様が激怒していると、この場を何とかおさめたい気持ちが大きくなり、すぐに解決策を出す対応者が少なくありません。恥ずかしながら私もお客様相談室時代は、クレームを言っているお客様の話を途中で遮って、「お金を返すように段取りします」お金で解決しようとしてしまい、さらにお叱りを受けたことがあります。

もちろん状況によっては、早く解決策を提示することによってお客様の困りごとを取り除くことが優先される場面もあります。ただ、クレームを言うお客様は、解決もして欲しいのですが、その前にこの状況を“理解して欲しい”から言います。言いたいことを全部出し切らないと、不満の内容を聴いてもらってからではないと、どんな解決策を提示しても納得しないものです。

解決策を急ぐ対応のもうひとつのパターンとして、「またこのクレームか……」とお客様の話を全て聴く前から決めつけてしまい対応に失敗するケースがあります。病院での話です。入院患者の年輩の男性からのクレームで「6時の夕食の時間が早すぎる」というものがありました。

このクレームを言われる理由が、食べる時間が早いので、「夜中にお腹が空いて寝られない」というのがほとんどだったという経験のもと、対応した看護師がいつもと同じ対応で「夕食を6時にすることで消化が早くなり、太ることもない」というメリットの部分を全面に出して話し始めたところ、「あなたは何もわかっていない」と入院患者をさらに怒らせてしまったことがありました。

実はこの入院患者が6時の夕食が早すぎて困る理由は、3歳の孫がお見舞いに来てくれる時間が夕方の6時から7時の1時間らしく、この時間は一日の唯一の楽しみの時間で、ゆっくり孫と遊びたいというのがクレームになった背景でした。

自分が早く終わらせたいと考えたり、よく起きるクレームへの慣れからくる決めつけた対応をしたりしては、お客様からの信頼を一気に失う可能性があるので、注意をしてもらいたいところです。

クレームの心理 承認欲求は、話を聴いてもらうことで満たされる場合も多い。

具体的行動 100個のクレームがあれば、クレームを言う理由は100パターンあると考えて対応しよう。

023卑屈にならない方法良き理解者になることで、卑屈にならないで済む

クレーム対応では、冷静に論理的に話をしてくれるお客様もいれば、興奮して大声でクレームを言ってくるお客様もいます。でもブレてはいけないのは、クレーム対応のゴールはお客様の怒りを笑顔に変えることです。

「クレームを言っても、ちゃんと受け止めてくれる良いお店だ」「ファンになった、またこの会社を利用し続けよう」と、お客様に思ってもらい、お客様と仲良くなることです。“クレーム転じて福となす”というようにクレーム対応はお客様と信頼関係を築くことができる最高の機会であるということです。良い関係性を作る上で必要なことは、お客様の良き理解者になることです。

意外に思われるかもしれませんが、クレーム対応の際のお客様との関係性は対等で良いのです。なぜなら理解者という立場に上も下もないからです。同じ問題を抱えたパートナーとして、お互いにとって良い状態になるよう対話することが大切です。

クレームを言ってくる人に対して理解をすることが難しいという方、どうしても感情的になってしまう方は、「クレームを自分に対する悪口」と捉えてしまっているのかもしれません。私も経験があるのですが、クレームの矢印を自分に向けてしまうと自分が否定された気持ちになってしまいます。

否定されたと考えてしまうと、対立関係ができあがってしまいます。お客様のクレームは自分に向けられているのではなく、自分たちの仕事ぶりに対してのアドバイス・改善のヒントであると捉える必要があります。

自分と仕事を一旦切り離すようにするのです。切り離すことで冷静さを保つことができ、少し俯瞰した視点で、クレーム対応に臨むとお客様がクレームを言ってくる意図や理由が手に取るようにわかるようになります。

良き理解者として、クレームを言うお客様をわかろう、知ろうという姿勢に変えることができるようになります。お客様と対等の関係で向き合うことを実践してください。

クレームの心理 自分と仕事を切り離すと、クレームを人格否定と思わないで済む。

具体的行動 お客様の良き理解者になるために、冷静になって対等の関係で向き合おう。

024お客様の怒りを鎮める方法最初にしっかり謝ることで、お客様は落ち着きを取り戻す

クレーム対応がうまくできない組織は、今までの経験を頼りにケースバイケースでその場限りのクレーム処理をしています。クレーム対応はその場の状況に応じてやるものではありません。クレームを言ってきたお客様に対して最初はどんな言葉を投げかけるべきか、ちゃんとした法則が存在します。

クレームが発生した際にお客様に対してやるべき最初の対応は、“お詫びの言葉”を投げかけることです。クレームに対して最初にお詫びすることに抵抗感がある方が少なくありません。

こちらに非があるかどうかわからないのに、お詫びするのは全面的に非を認めてしまうことが危険だと考える人が多いのです。もちろんお客様の話を全て聴く前から全面的に非を認める必要はありません。ただ、クレームはいきなり発生してしまいます。自分たちはしっかり仕事ができていると思っていても、お客様は突然電話をかけてきて、店頭に現れていきなりクレームを言ってきます。

その時点では、一体誰が悪いのかは明確ではありません。話を聴いてみると、自分たちに非がないこともあるでしょう。でもクレームが発生した時点でわかっていることがひとつあります。

それは、お客様は何らかの怒りの感情をもってクレームを言ってくるということです。「聞いていた話と違う!」とお客様がお怒りのご様子であれば、「お客様のご期待に添えられない点があったようで申し訳ございません」と、お客様のガッカリした気持ちに対して寄り添う、お詫びの言葉を投げかけることをおススメします。

最初の謝罪を怠るとお客様は怒りの感情そのままにあなたに対して厳しい言葉をぶつけ続けるでしょう。まさに初期対応に失敗してしまう典型的なパターンです。お詫びの言葉は早ければ早い程、良いのです。この言葉を受けたお客様は一気に冷静さを取り戻すようになります。

クレームの心理 クレームが発生した時点で唯一わかっていることは、お客様はお怒りだということである。

具体的行動 怒りの感情をやわらげるために、まずお詫びの言葉を投げかけよう。

025初期対応に失敗しない方法①限定付き謝罪を使うと、対立を対話に変えられる

「私共の対応でお客様に嫌なお気持ちを与えてしまい、誠に申し訳ございません」「いつもご利用いただいておりますのに、ご満足いただけない点があったようで申し訳ございません」「お客様へのご案内に至らない部分があったようで、申し訳ございません」これらは「限定付き謝罪」と言います。

クレーム対応で最初に使うお詫びの言葉として是非、活用するようにしてください。限定付き謝罪とは、全面的に非を認めるのではなく、限定した部分に対して謝罪する方法です。

クレーム対応の現場では、「お客様に嫌な気持ちを与えてしまった」、「ご満足いただけない点があった」、「ご案内が至らない部分があった」という、お客様を悲しませてしまった部分に限定して謝ることを実践するようにしてください。

限定付き謝罪は上記の3つの表現だけではありません。現場でよく起きるクレームをイメージしてどのようなお詫びの言葉を使うのかを準備しておかないと、お詫びのタイミングを逃してしまい、初期対応に失敗してしまう恐れがあります。

クレーム対応が発生した時点で、残念ながらお客様は対立姿勢で電話をかけてきます。対決モードで店頭に乗り込んでくるものです。そしてお客様からのお怒りの言葉を聞き続けるのは、とてもストレスがかかります。激しい言葉に恐怖心を抱いてしまってもいけません。

この状況からいち早く脱するために、限定付き謝罪を使うことで、お客様は怒りのボルテージを下げ、対立から「対話」「話し合い」の状態にもっていくことができるのです。対立を対話に変えられれば、クレーム対応に心をすり減らすこともなく、必要以上に対応時間が長くなることもありません。

クレームの心理 お客様は最初に謝罪がないと、謝罪がなかったことにも怒りを大きくしてしまう。

具体的行動 冷静に話し合いができるようにするために限定付き謝罪を活用しよう。

026初期対応に失敗しない方法②自分事として話を聴くと、怒りを和らげることができる

クレームはお客様の話を聴いてみないと、一体なぜお怒りなのか、こちらのどの部分が良くなかったのかを把握することができません。「レジでの従業員の対応が良くない!どんな教育をしている!」とクレームを受けたのなら、お詫びの言葉とあわせてお客様の話を聴こうとする姿勢を見せます。

「大変ご不便をおかけしたようで、誠に申し訳ございません。私どもにどのような対応がございましたか」「お客様に不快なお気持ちを与えてしまい申し訳ございません。恐れ入ります、状況を詳しくお聴かせいただけませんか」

クレームは自分のミスより他人のミスや自分の知らない現場で起きたこと、たらい回しにされたお客様が、自分の担当部署ではないことについて話をしてくることもあります。

この場面こそ、いかに自分の問題としてお客様の話を聴こうとするかが、重要です。パフォーマンスではありませんが、ある意味見え方も大切です。

少しでも自分のせいではないのにという気持ちや表情がお客様に伝わってしまうと、お客様は不満をもちしっかり話を聴こうとしないあなたに対してクレームの矢印が向かってくるようになります。

このような二次的クレームに発展して対応が長引いてしまうことは、クレーム対応の現場でホントによく起きます。

「(アルバイトなので)私に言われましても……」「私の担当部署ではありませんので……」「苦情専門部署がありますので、そちらに連絡をお願いします」これは、私の取引先のスーパーで店舗スタッフが実際にお客様に伝えてしまい、大炎上した言葉です。

クレームを受けたくない、私のせいではないのにという気持ちがあると、思わず反応で出てしまう言葉なのかもしれません。働くとは「傍(はた)を楽にすること」です。お客様を笑顔にすることです。働く者として恥ずかしくない行動をとるようにしたいものです。

クレームの心理 クレームを受け止める姿勢を「見せる」ことの力は大きい。

具体的行動 お詫びとセットで話を聴く姿勢を見せよう。

027お客様との距離を近づける方法部署と名前を名乗ると、お客様が安心する

クレーム対応は誰がやるべきなのか?その答えは、お客様からクレームを言われた人が対応すべきなのです。責任者やお客様相談室の部署の人だけがやるものではありません。現場でクレームを直接受けた人が組織の代表として受け止める必要があります。

お客様はクレームを言う人を無意識のうちに選んでいます。クレームを言ってもちゃんと対応してくれなさそうな人にはクレームを言いません。なぜなら、お客様はこれ以上嫌な思いをしたくないからです。

自分のこの怒りの感情を受け止めてくれそうな人に対してクレームを言いたいのです。対面でクレームを受けることが多い業種、百貨店や飲食店からコンサルティングのご依頼を受けると、必ずと言っていいほど、現場の方から私への相談内容に「なぜか私ばかりいつもクレームを受けますが、どうしてでしょうか」があります。

経験上、クレームをよく受ける人は運が悪い人ではありません。その現場で一番仕事ができる人です。一番お客様の立場に立てる人がクレームを言われています。

お客様から信頼されているのです。これは、役職や年齢は関係ないのです。お客様はやはりこの人ならわかってくれると思って期待してクレームを伝えてきます。

電話でのクレーム対応の場合、お客様から冒頭に「話のわかる人を出してちょうだい」と言われることがあります。

これは、電話では相手が見えないので、これ以上嫌な気持ちになりたくないという気持ちから「話をちゃんと聴いてくれる人」を求めてそう言うのです。

何を言いたいのか?クレームを言われることを誇りに思えば良いのです。組織の代表としてクレームをしっかり受け止めれば良いのです。

「私、営業部の〇〇と申します。是非、詳しく話を聴かせてください」と堂々とした態度でしっかり名乗るようにしてください。お客様との距離を近づけるようにするの

です。お客様対お店ではく、人と人の対話になりますので、お客様は話を大きくして伝えてくるなど、ゴネるような態度はしてこなくなります。

クレームの心理 お客様がクレームを言う相手を選ぶのは、自分がこれ以上傷付きたくないからである。

具体的行動 「お客様対お店」から「人と人の対話」にするため、自分の名前を堂々と名乗って対応しよう。

028クレーム対応で効果的な会話法傾聴を心掛けると、自分はあまり話さずに済む

クレーム対応の話の聴き方で意識すべきことは、話を全て引き出すことです。お客様の怒りの感情を全て吐き出してもらうことです。クレーム対応が苦手だと言う方の特徴に、「言葉が出てこない」、「何とお客様に言って良いのかわからない」があります。

お客様からのクレームに対して対応者が何かを話そうとしようとしなくて大丈夫です。傾聴するのです。イメージとしては対応者が1割でお客様が9割、話すことを意識してください。

インタビュー形式での話し手と聞き手の関係をつくるようにしてください。テレビの対談番組や専門家のゲストコメンテーターに話を聴くスタイルを思い出していただいて良いと思います。

話を聴こうとしている対応者に対して、人間は長時間怒り続けることは難しいのです。時間にして5分以上怒り続けることの方が大変です。言うことがなくなるとトーンはどんどん下がってきます。1時間以上怒り続けられたという方がいるのであれば、事務的な態度を取ったり、反論したりしてしまったことによる初期対応に失敗したケースです。

他にはこちらに非がないと考えお客様の話を全部聴く前に話を遮ったしまったことが原因だと思います。「でも」「ですけど」「いや、それはですね」「そんなことはないと思いますよ」「今までそういうご指摘はなかったですけど……」このような言葉を使用してしまうと、お客様はこの対応者は何もわかっていないと考え、感情的になって何度も同じことを話すのです。

クレーム対応研修の質疑応答でよくある質問に「お客様が何度も同じことを言ってきて困るのですが、なぜこうなってしまうのでしょう?」の答えは、「ちゃんと最後まで話を聴こうとしないから」です。

これ以外、理由が思い当たりません(笑)。“しっかり話を聴こうとすれば、クレームの怒りは5分で終わる”と信じて、全力で傾聴することを最優先してください。案外、大したことでもなく、すぐに終わることも少なくありません。

クレームの心理 クレーム対応ではうまく言い返そうとせず、お客様に話をしてもらう状況をつくると、怒りはおさまってくる。

具体的行動 怒りを鎮めるために、全て吐き出してもらおう。

029クレーム対応の主導権を握る方法言ったことを全て書き残すと、事実関係でもめなくなる

クレーム対応の現場でメモを利用しない対応者が少なくありません。人間の記憶はあいまいです。メモを書き残さなかったことで、上司や責任者に報告するときにヌケ・モレがありクレーム対応に失敗してしまいます。また、あいまいな記憶のまま、担当者が勝手な解釈をして組織に共有されることでお客様から「そういう意味で伝えたのではない」と、余計に怒らせてしまうケースも起きてしまいます。クレーム対応の現場で上司や責任者がもっとも困ることに、対応者の報告内容とお客様のクレーム内容に食い違いがあることです。メモを取らない対応者の勝手な解釈を信じてしまうことで、クレーム対応の落としどころを見誤ることがよく起きています。クレーム対応では、必ずお客様の話をメモに取ることを心掛けてください。お客様の言葉を記録に残すようにしてもらいたいのです。自分が勝手な解釈をすることはなくなり、お客様が何と言ったのかという「事実」を書き残すことができます。メモの取り方のポイントは、お客様が伝えてきたクレーム内容を全て書き残すことです。多少時間がかかっても構いません。お客様の話を止めても問題ありません。「お客様、恐れ入ります。今、お話の内容をしっかり書いていますので」と、こちらが主導権を握りながらメモを書き留めるのです。クレーム対応の主導権はお客様に渡してはいけません。メモを利用して話を聴くことができれば、一方的にお客様が早口で話されることもなくなります。クレームの内容によっては、その場で解決することができず、後日の対応になる場合もあります。時間が経つことで、お客様が前回と違うことを言い始めたり、なかには新たな内容のクレームを言ってきたりするケースもよく起きています。その場合にもメモが残っていると、「お客様、前回はこう仰っていました」「恐れ入ります。前回の内容につきまして話を進めさせてください」と、やはり主導権を握ることができるのです。

クレームの心理 「メモを取らせてください」と伝えると、相手も言い方が丁寧になる。

具体的行動 クレーム対応の落としどころを見誤らないために、メモを取りながらクレームに対応しよう。

030お客様の“良き理解者”になる方法共感のあいづちを使うと、クレームを言いにくくなる

クレーム対応の話の聴く際、あいづちのうち方で意識してもらいたいことがあります。それは「共感のあいづち」を使いながら話を聴くことを実践するようにしてください。クレーム対応での共感とは、「理解を示す」ことです。お客様が興奮状態であってもこちらは冷静にお話の内容に理解を示すのです。理解しているということを言葉にするのです。■共感のあいづちの言葉「はい」「ええ」「そうでしたか」「そうだったのですね」「そんなことがありましたか」「えっ!そんなことが!」

「そう思われたのですね」「私共の対応が良くなかったのですね」「長年ご利用いただいて、そういうことはなかったのですね」「そういう認識でいらしたわけですね」「驚かれたわけですね」「お急ぎだったのですね」「信頼していただいていたのですね」「その後はどうされたのですか」「○○ということですね」「私共に対してそういうお気持ちでいらっしゃるということですね」「お話、良くわかります」「それで今、ご連絡いただいたのですね」「いかにお怒りなのかよくわかりました」「状況、よく理解できました」いかがですか?意外にたくさんの言い回しがあると思いませんか?「はい」「ええ」しか使っていなかったのなら是非、参考にしてください。これはクレーム対応のテクニックとして覚えておいていただきたいということもあるのですが、親身になって「お客様には一体何があったのか」「私たちのどの部分にご不満をおもちなのか」を理解しようとすると、自然にこのような言い回しやフレーズが自然と口からでてくるのではないでしょうか。クレームを他人事ではなく、いかに自分事として捉えるのか、自分の大切な家族や友人の話を聴くかのように共感しながら寄り添うような接し方が大切だということです。共感しながら聴くと、お客様の気持ちが手に取るようにわかるようになります。

クレームの心理 お客様は、「この対応者は私の良き理解者だ」と思うようになると、クレームを言えなくなる。

具体的行動 話しを聴くときの「共感のあいづち」のバリエーションを増やそう。

031やってはいけない話の聴き方すべきは「共感」であり、「賛成」ではない

クレーム対応で話をしっかり聴いているうちに、お客様の話に感情移入しすぎる方がいます。良き理解者になるために共感することが大切だとお伝えしましたが、「賛成」することは避けてもらいたいのです。和菓子のお店でようかんを買って食べたというお客様から電話で「異物が混入していた」というクレームが入りました。本来であれば、お詫びしてお客様の話を聴いて、どんな異物が入っていたのか回収して確認し、どの製造工程のなかで混入したのかを調べた上で、お客様へどのようなリカバリーをするかを考えるのが、良い対応だと考えます。ただ、このお客様は友人宅へのお土産としてもっていったものに異物が混入していたことで、自分がどれだけ恥をかかされたかを1時間近くも話し続けたようでした。実は1時間近くものクレームになったには理由がありました。対応したパートの女性が、このお客様に感情移入してしまい、同情してしまったようで製造工程がいかに管理できていなかったのかをお客様と一緒になって非難していたようでした。最終的はお客様も怒りが収まらなかったようで、「店長を出せ!」となり、さらにクレーム対応に1時間以上も費やすことになってしまいました。事務的な対応でお客様を怒らせてしまうケースとは逆で、お客様の立場に立つことまでは悪くはなかったのですが、お客様と一緒になって店を悪く言うのは避けてもらいたいところです。このときにパートの女性がお客様に使っていたあいづちが「はい、私もそう思います」「そんなことはありえないですよね」「お客様がそうお考えになるのは当然です」と同調の言葉であり、お客様を支持する言葉の数々でした。この言葉にお客様は「そうだ!悪いのはこの店だ!」と怒りを増大させたのです。今回の場合であれば「私共の商品で大変ご不便をおかけしということ、状況がよくわかりました」という、起きた事実に対して理解を示すことができていれば、お客様のさらなる怒りを買うことはなかったと考えられます。

クレームの心理 対応者が賛同すると、攻撃対象が同じ方向を向いてしまい、お客様の怒りは増幅してしまう。

具体的行動 お客様のお怒りの気持ちに理解を示すのは良いが、賛成・支持することは避けるようにしよう。

032お客様に安心してもらう話の聴き方話すスピードとトーンを、お客様にあわせる

クレーム対応の上級者がテクニックのひとつとして実践していることに、お客様の話すスピードとトーンをあわせにいくことがあります。これは、クレームを言う立場になればわかることなのですが、たとえば通販で注文した商品が時間通りに到着せず、急いでコールセンターに連絡したとしましょう。「午前中に届くはずの商品がまだ届いてないのですけど!」と少し早めの口調で伝えたところ、対応に出てきたオペレーターから「まずはお客様のお名前とお電話番号を教えていただけますか」と冷静に言われたらどんな気持ちになるでしょうか?企業のコールセンターの対応マニュアルをたくさん監修してきましたが、ど

のお客様に対してもどんな用件であっても、まずお客様のお名前と電話番号をうかがう」と決められているのです。全てのオペレーターが同じ対応をできるようにするために作成されたのが対応マニュアルの良い部分かもしれませんが、裏を返せば親近感がわかない、融通が利かない印象をお客様に与えます。正直言うと、全員が同じ対応をするならオペレーターでなくてネット対応でも充分です。画一的な対応を優先するマニュアルの存在によってお客様との良好なコミュニケーションができず、心を通わすことができる機会を損失しています。今回であれば明らかにお急ぎでお困りのご様子がうかがえる内容だとわかります。であれば、こちらも少し早口で「さようでございましたか!お客様にご不便をおかけしまして、申し訳ございません!」と少しお客様の話すスピードにあわせるようにお詫びの言葉を伝えるとお客様も安心されるのではないでしょうか。お客様も「あっ!私が困っていることをわかってくれている」と考え、気持ちも少しは落ち着くはずです。逆に落ち込んだご様子でゆっくりとした口調でクレームを言ってくるお客様もいます。この場合であれば、笑顔で爽やかな対応をすることを控えるようにします。こちらもお客様の話し方のトーンをあわせながら、早口にならずに同じスピードで話すことを意識すれば、お客様も安心して話すことができるようになります。

クレームの心理 対応者とお客様の話すスピードと声のトーンが近いと、お客様はシンパシーを感じる。

具体的行動 お客様の感情にあわせて話すスピードとトーンを変えることを意識しよう。

033クレームがきつくなる原因お客様の正面に立つと、クレームはハードになる

お客様からの感情的なクレーム、大きな声で主張されるクレームを受けると、恐怖心でいっぱいになります。男性の私であっても攻撃的なクレームは震えるぐらい怖いです。対面でのクレーム対応の注意点として、お客様との立ち位置は正面を向いた状態を避けるようにしてください。クレームを言う立場だとわかるのですが、正面の相手に対してはとてもクレームが言いやすいのです。逆にクレームを受ける側は、正面から受けるクレームはお客様と目が合い、威圧感を感じ平常心を保つことが難しくなります。私にクレームのご相談がよくある業種として、病院、市役所、銀行、携帯電話ショップとクリーニング業界があります。とてもハードなクレームが多く「現場が疲弊しているのでアドバイスが欲しい」と、クレーム対応研修の依頼がよく入ります。最近になってこの一見バラバラだと思われるハードなクレームの多いと言われる業界には、共通点があるということに気付きました。それは“カウンター越しにお客様と正面から向き合ってクレーム対応をしている”ということです。面と向かっての立ち位置は敵対関係を作りやすい環境なのです。クレームがハードになるのは立ち位置が原因なのでした。ではどうすれば良いのか。当然ですがお客様との立ち位置を変える必要があるということです。一番良い方法は、横に付くことです。横並びが不自然になるようであれば、斜め45度ぐらいの角度に立つことをおススメします。横に並べると、お客様は大きな声を出しづらくなります。対応する側もお客様と面と向かって目を合わせることもなくなり、話やすい空間スペースをつくることができます。たとえばですがカウンター越しではなく、カウンターから出ていきソファー

席に移動してお客様の横に座る方法もあります。さらにメモも取りながら話を聴くようにするとメモに視線を落とすこともできますので、自分が一番落ち着いて対応できるようにもなります。ただし、別室に通すと居座られることもあるので気を付けましょう。

クレームの心理 正面でのクレーム対応は敵対関係をつくる原因となる。

具体的行動 お互いが落ち着いて話せるように、意識的にお客様の正面には立たず、横に付くようにしよう。

034お客様の話で押さえるべきポイント「何があったのか」把握すると、誤解が生まれにくくなる

クレーム対応の経験が少ないと、お客様からの一方的なクレームには、しっかり内容を理解し冷静に判断することが難しく感じられるかもしれません。リフォーム会社にお客様から入ったクレームで「この間、リフォームで張り替えた風呂のタイルで滑って大ケガをした!これは不良工事だ!リフォーム代返せ!」という内容のものがありました。その際、対応した若手営業マンが上司に報告してきた内容は「金銭要求の悪質クレーマーから電話が入っています」でした(笑)。少し極端な例を出しましたが、これに近いことはどこの組織でも起こる可能性があります。

お客様の話をしっかりメモしておかなかったことが一番の原因だと思いますが、この若手営業マンが上司に報告した内容はお客様が伝えてきた「事実」ではなく、「自分の勝手な解釈」でした。お客様は被害者意識があると、少し事を大きくして伝えてくることがあります。その際にもお客様の言葉に引っ張られるのではなく、「何があったのか」の事実を把握することを意識するようにしてください。お客様の話で押さえるべきポイントとして①「何があったのか」、②「お客様は何に対して怒っているのか」、③「どうしてもらいたいのか」があります。今回でいけば、①「先日リフォームしたお客様が張り替えたタイルに足を滑らせてケガをされた」、②「不良工事なのではないかとご心配されている」、③「リフォーム代を返せと、ご希望が出ている(金返せというぐらいお怒り状態である)」というポイントを上司に報告できれば良かったと思います。このお客様が言った「事実」をもとに対応すれば良いのです。解決方法としては、お客様が患ったおケガに気遣いの言葉をかけ、どのような状態で足を滑らせたのか現場のタイルの状況も確認し、工事に不備があったのかどうかを調べるようにしてはどうでしょうか。不備がなかったのなら、心配をかけてしまったことをお詫びするという対応で十分だと思います。

クレームの心理 クレーム対応に不慣れな段階で詰め寄られると、「自分の勝手な解釈」をしてしまうことがある。

具体的行動 「何があったのか」「何に怒っているのか」「どうしてもらいたいのか」を把握し、お客様が伝えてきた事実に対して対応するようにしよう。

035お客様の言いたいことがわかる効果的な方法質問を繰り返していくと、お怒りの理由がわかる

お客様からのクレームの内容を聴いている際、言わんとしていることが理解しづらいケースが多々あります。どういう意味で言っているのかがわからないときもあるでしょう。その場合はお客様の話に対してどんどん質問を投げかけても構いません。たくさん質問することで、お客様がどうして欲しかったかが理解できるようになります。■言いたいことがわかる効果的な質問の言葉「それは、私共の案内が不足していたということでしょうか」「つまり、商品がご要望の内容と違ったということでしょうか」「1時間以上もお待ちいただいていたということでしょうか」「お客様を疑うような対応があったということでしょうか」このようなフレーズで質問をしていくと、どの点にお客様が不満や不信感を抱いていたのかが明確になってきます。紳士服のお店のお客様相談室に「今後、おたくでは商品を買わない!」とお怒りのクレームが入りました。店舗スタッフの対応が事務的だったというクレーム内容だったのですが、「商品がお客様のご期待にそえられなかったということでしょうか」「お客様の立場に立った接客でなかったということでしょうか」と、質問を繰り返すなかでわかったことがありました。それは、お客様が気に入って買ったジャケットを家で試着してみると糸のほつれや毛玉がたくさんあったので不良品だと考え、交換してもらおうと家から電話したところ、「不良品かどうかを確認するので着払いの宅急便で商品を送り返して欲しい」と対応されたようでした。実はこのお客様は、翌日の大切な商談に着用するために購入したジャケットだったのです。着ていくことができなくなったことがクレームになった理由でした。クレームのお客様はお怒り、というより何かお困りであると考えてみてはどうでしょうか。今回でいけば、もう少し深く突っ込んで話を聴ければ、すぐに商品を交換して商談に間に合わせる対応をすることもできたのではないかと思います。

クレームの心理 お客様の怒りの理由を正確に把握するのは、お客様自身でも難しいときがある。

具体的行動 何をやるべきか、どうして欲しかったかを明確にするために、お客様にどんどん質問するようにしよう。

036解決策を出す際に知っておくべきポイント「お客様のなりたい姿」は、クレーム解決の鍵になる

クレームの内容をしっかり受け止めるようになると「そうか!だからお客様はクレームを言ってきたのか!」ということに気付くことがたくさんあります。2011年に実際にあった有名な話です。本と雑貨の買い取りショップのレジで、お客様から「本の買い取り価格が3,000円は安すぎる!もっと高く買い取って欲しい!」というクレームが入りました。これに対して店員は「買い取り価格は当店の決めた金額でお願いしています」と、いつもあるクレームだと考えて、このお客様に3,000円を渡しとところ、このお客様は「ケチケチしやがって!」と怒りながら、レジ横にあった東日本大震災の義援金箱に3,000円を丁寧に入れて帰っていったそうです。

クレームは、「こうして欲しい」「こうなりたい」という期待が最初にあり、それが裏切られた場合に発生するものだと考えるようにしてください。ですので、クレームを言ったお客様の「なりたかった姿」が理解できるとお客様のためになる解決策も出せるようにもなります。東京・江戸川区の住宅街にある本屋さん「読書のすすめ」をご存知でしょうか。小さな書店ということもあり、人気ビジネス書をたくさん仕入れることができず、過去はお客様からクレームを言われることが少なくなかったそうです。でも、この書店のオーナーの清水克衛さんはクレームを言われて、気付いたことがありました。それは、お客様には「お客様のなりたい姿」があって、この本を読むことによって自分の悩みや問題を解決したいのだということでした。このことがキッカケで清水さんは画期的なサービスを始めました。お客様の悩みや問題を聴いて理解してから、その問題を解決できる本を一人ひとりに丁寧に提案するようにしたのです。一気にクチコミが拡がり全国からお客様が自分の悩みを解消できる一冊を求めて清水さんに会いに来るようになったのです。現在は、日本中にファンがいる日本一の本屋さんになりました。

クレームの心理 お客様はサービスを提供されて「なりたい姿」に近づこうとするが、近づけないでいるためにクレームにつながっていることがある。

具体的行動 良い解決策を提示するために、お客様の「なりたい姿」を探ってみよう。

037解決策を伝える前にやるべきことお詫びと共感の言葉は、切り返す前に言うと良い

一通りお客様からのクレーム内容を聴くことができたら、すぐに解決策やこちらの言い分を話し始めるのではなく、是非お客様に伝えていただきたいことがあります。それは、クレーム内容についてしっかり把握できたということです。このことを、言葉にして投げかけていただきたいのです。この際にお客様に伝えるべき言葉は、「お詫びと共感の言葉」です。話を聴いて、これはこちらに不手際があったと理解したのならお詫びの言葉をしっかり伝え、こちらの対応で嫌なお気持ちを与えてしまい、お客様がガッカリされているとわかったのなら、そのお気持ちに寄り添うような共感の言葉を伝えるようにしましょう。■「お届けした商品に不具合があった」というクレーム「この度はお買い上げいただいた商品に不手際があったことで、〇〇様のお仕事に支障をきたしてしまい、大変ご不便をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます」(お詫び)■「従業員の接客教育がなってない」というクレーム「いつもご利用いただきながら、私共の従業員の対応で、〇〇様に嫌なお気持ちを与えてしまったこと、お話を聴いて状況がよく理解できました」(共感)いかがでしょうか。クレームを言った立場で考えると、「わかってくれた」「私の話を受け止めてもらえた」と安心するのではないでしょうか。逆にお客様の思い込みや勘違いから発生するクレームだったとしても、すぐに切り返してお客様の勘違いを指摘するようなことをしてはいけません。この場合も「お話をおうかがいして私どもの対応にご満足いただけなかった点があること、よく理解できました」といったん受け入れることで、お客様との関係性を良い方向にもっていくことを実践してみてください。お客様は話の内容を全て聴いてもらえたと思うと安心し、その後の話を受け入れやすくなる。具体的行動信頼関係を強化するために、解決策を出す前にお詫びと共感の言葉をつかおう。

038解決策にお客様が聴く耳をもつ方法肯定の言葉を引き出すと、その後を進めやすくなる

ここでは、クレーム対応の解決策を出すタイミングについて、お伝えしたいと思います。お客様の話が長く続いてしまったりすると、話を遮って、「いや、それにつきましては……」と、こちらの言い分を話はじめてしまう対応者がいます。当然ですが、お客様から「話を最後まで聴け!」とさらにお叱りを受けてしまうこともあるでしょう。解決策を出すタイミングに関しては、お客様が話を全て出し尽くしたと判断したときで結構です。ただ一方的に判断するのではなく、こちらが解決策を出して良いかの了承をお客様から得ることがとても大切です。

たとえば「お客様、私から話をしても宜しいでしょうか」、「私共からお伝えしたいことがございますが、話をしてもいいでしょうか」という言葉を入れてみてください。このときに「いや、待て!まだこっちの話は終わっていない。」と言われたら、「承知しました。引き続き、お願いします」とお伝えして話を全て聴くようにしてください。一方でお客様が自分の話を全て出し尽くした、言いたいことは全て伝えられていたのなら、「うん、どうぞ」というように、了承を得ることができます。了承・許可を得たときのお客様からの「うん、どうぞ」という「YES」の言葉を引き出すことがとても重要です。人間は一旦、自分で肯定の言葉を使用すると、相手を受け入れようとする心理が働き、こちらが提示する解決策もじっくり聴いてくれるようになります。さらに、お客様心理として全部話を聴いてもらえたのだから、相手の話も聴かないと悪いという気持ちも働くようになりますので、ここの部分はとても重要なやりとりになります。この後に、こちらから提示する解決策をお客様に受け入れてもらいやすくなることにも繋がっていきます。どんな解決策を出すかよりも、どう切り出すかの方が重要であることが多いのです。

クレームの心理 人は一度自分で肯定の言葉を使用すると、相手を受け入れようとする心理が働き、聞き分けが良くなる。

具体的行動 お客様も解決策を受け入れてもらうために、「今、私から話をして良いでしょうか」などと解決策提示の了承・許可を得るようにしよう。

039解決策がすぐに出せない場合の対応法お待たせするときは、具体的な時間を提示する

クレーム対応の解決策については、状況を確認してみないとお客様に具体的な解決策を提示できない場合があります。その際にお客様にこれ以上お叱りを受けたくないと考え、「すぐに調べましてご連絡いたします」や「大至急、対応いたします」と、伝えてしまう対応者がいます。迅速に行動する意思を明確にすることは悪くないことですが、実はこの「すぐに」「大至急」という言葉は後になってトラブルを起こす大きな要因になることがあります。なぜならこのような言葉は人の感覚によって大きな時間差が生まれる可能性があるからです。たとえば企業のコールセンターに問い合わせをした場合、オペレーターから「お客様、お調べしまして、すぐに折り返しお電話を差し上げます」と言われた場合、読者のあなたはどれぐらいの時間で折り返しの電話がかかってくると思いますか??「10分?」「30分??」、せっかちな人であれば、「5分」「3分」という方もいるかもしれません。オペレーターは何気なく「すぐに」という言葉をつかってしまったものの状況によっては、調べるのに1時間もかかってしまうことがあるかもしれません。1時間後、問い合わせ内容に対しての回答の電話を差し上げたとしたら、どうなるでしょう。「おい、一体何時間待たせるんだ!ふざけるな!」とお客様からお叱りを受けてしまうのではないでしょうか。日本社会はスピーディで便利な世の中になりましたが、その弊害として待てない日本人を増やしました。それに従って待ち時間のクレームも急増しています。とくにクレーム対応の場合はお客様に時間をいただく際は慎重にしていかないと大きなトラブルに発展します。「すぐに」「大至急」という言葉を使うのではなく、「1時間後にご連絡したく存じますが、ご都合はいかがでしょうか」「明日の15時までにご連絡いたしますが、お時間をいただけますか」と具体的な時間の提示をするようにしましょう。

クレームの心理 「すぐに」「大至急」「のちほど」「しばらく」という言葉は、受け手によって感覚が違うのでNG。

具体的行動 必要以上のトラブルを避けるために、「1時間後」など、時間を明確に伝えよう。

040解決策提案のNG対応①たらい回しにすると、お客様の怒りは増大する

最初からお客様が激怒した状態で感情的にクレームを言ってきた場合、“たらい回し”にされたことが原因で激怒していることがほとんどだと思います。「自分の部署ではわかりません」「こちらは窓口ではありませんので……」と拒絶の対応を受け、お客様は怒りを募らせているということです。市役所・区役所の行政からのクレーム対応研修の依頼を受けた際、「よくあるクレームにどんなことがありますか?」と質問すると、「住民が最初から激怒していて一方的にクレームを言ってきます」という回答が少なくありません。世間で“お役所仕事”と嫌味を言われてしまう最大の理由、「私は担当ではな

いのでわからない」と、当たり前のように言ってしまう仕事のやり方がお客様の怒りを増大させています。仮に自分の部署とは関係のない問い合わせにはどう対応すれば良いのか。「わからない」という言葉はお客様対応に関してはNGワードです。クレームと同じで、お客様は“お困りである”と考え親身になってご相談に乗ることが重要だと思います。自分が「わからない」と言ってしまった時点で次に電話を受ける人が感情的なクレームを受けてしまうという想像力を働かせてもらいたいのです。アメリカの大人気の靴屋さんの話です。電話番号を間違えてピザの配達を注文してきたお客様のために、代わりにピザ屋に配達の注文をしてあげたという神対応をやってのけた話は有名です。自慢ではありませんが、私もお客様相談室時代、お客様の勘違いで同業他社のクレームを受けたことがありました。お客様も途中で勘違いに気付かれたようですが、私は最後まで話を聴いて、「これは業界全体の課題だと思います」と伝えたことで、お客様から感動され、「今後はあなたからしか商品を買わない」と言われたことがあります(笑)。目の前のお客様のためにできることを全力でやることが大切だと考えています。

クレームの心理 お客様はたらい回しにされると、「困っている」という気持ちが相手に受け止められていない気がしてくる

具体的行動 自分以外がクレームを受けないために、お客様の気持ちに共感を示すことを考えよう。

041解決策提案のNG対応②規則を盾に説明すると、かえって反発したくなる

法律や会社のルールを盾にお客様を説得しようとしてもお客様は怒り続けます。そして、クレームが大きくなる要因になります。「お客様、個人を特定できる書類がないと、申請は受けられません」と伝えたところで、お客様からは「お前らが勝手に作ったルールを押し付けるな。そんなのは知らん!」と受け入れてはくれないでしょう。法律やルールをお客様にお守りいただくのは、大切なことですが、伝え方に気を付けないとお客様は押し付けられたと反発するようになります。では、どうすれば良いのか。それは、なぜそれをお願いするのか、“背景”や“理由”を明確にすることが必要です。今回でいけばなぜ、個人を特定できる書類が必要なのかをしっかり説明していないからお客様は事務的で誠意のない対応だと腹を立てるのです。個人を特定できる書類が必要なのは、「なりすましでの犯罪を防ぐために、皆様にご協力をいただいている」という事情が背景にあります。この部分をしっかり説明することで「そうか!だから必要なのか」とお客様に納得していただくことが、最低限必要だと思います。大阪の串カツ屋さんでは「ソースの二度漬け禁止」というルールをお客様に守ってもらっています。これは押し付けているのではなく、食べかけの串をソースにつけることで感染症になることを防ぎたいという衛生面と、ソースの味を変えてしまわないためという観点から禁止していることを明確に説明しています。だからお客様もそのルールに快く従うようにしてくれるのです。クレームの多い病院とそうではない病院とでは、患者への説明の仕方で、接遇力に大きな差が付いています。とくに待ち時間の問題では、「お呼びするまで待合室でお待ちください」と伝えることなら誰でもできます。どれぐらい待つのか、なぜ受付の順番通りに診察が受けられないのか等も説明できる病院は患者さんからのクチコミ評価が高く、クレームも起きません。相手の立場になれば、どう説明してもらえれば納得できるかをすぐに理解できるようになると思います。

クレームの心理 法律や会社のルールで決まっていると言われると、結論を押し付けられているようで嫌な気持ちになる。

具体的行動 ルールを言うだけでは納得してもらいにくいので、ルールができた背景をセットで伝えるようにしよう。

042解決策提案のNG対応③再発防止を約束すると、逆効果に働くこともある

クレーム対応の解決策の常套句のひとつに「再発防止に努めます」があります。とくに店長や管理職の役職者はこの言葉を使い、その場を収めようとする傾向があります。「再発防止に努めます」という言葉は使って良いときとダメなときがあることを理解していただきたいです。使ってはいけない場面というのは、当然ですが何の対策案も立ててもいないのに伝えてしまう時です。スーパーで常連のお客様からレジの接客に関するクレームが入ります。「店長、従業員の教育がなってない!商品を投げ捨てるようにレジ袋に入れられましたよ!」と言われた際の切り返しの言葉で「2度と同じことがないよう、

再発防止に努めます」と伝えたところで、「テキトーなこと言うんじゃないよ!まだその従業員に何も指導してないでしょ!」とさらに怒られ、店長に対してもお客様は不信感をもつようになるでしょう。再発防止について口にして良いときは、一通りお客様の話を聴いて、状況確認してからです。自分たちの仕事ぶりでどこに改善点があったのかを明確にしてからです。今回の場合では、ご指摘を受けたレジの従業員に、お客様からご指摘があったことを伝えて状況をヒアリングすることです。従業員から「レジに列ができていたので、早く処理しようと、あわててレジ袋に商品を入れていました」という話が聴けたのなら「あわてなくも結構です。目の前のお客様に気持ち良くお買い物としていただくことを意識してください」と指導しましょう。その上で、後日お客様が来店された際に「お客様、先般はご指摘、ありがとうございました。従業員にも話を聴くことができ、同じことがないように指導することができました。引き続き、よろしくお願いいたします」と伝えることができれば、お客様も喜ばれるのではないでしょうか。やはり、クレームはお客様からのアドバイスです。仕事の改善のヒントを教えていただけているのです。本当に再発防止するために、クレームをきっかけに仕事のやり方を変えるようにすることで、お客様の笑顔を増やすことができるのです。

クレームの心理 「再発防止に努めます」と言われても、自分は被害をこうむったという事実は変わらないので、真剣に取り組むところを見ないと納得できない。

具体的行動 お客様の笑顔を増やすため、サービスを進化させるためにも再発防止に真剣に取り組もう。

043お客様に提示すべき解決策反省を示すことで、収束できる問題もある

クレーム対応でお客様に提示すべき解決策は、お客様の話をしっかり聴いていると自ずとわかるようになります。具体的には大きく分けて、2つのパターンがあります。1つ目は、問題を解決して差し上げる必要があるもの。2つ目は、一言、言いたかった。わかって欲しかったもの。1つ目は、商品に不備があった等、提供すべき商品やサービスが行き届かなかった場合です。この場合は商品を交換する対応やお客様の要望通りにやり直すパターンがあります。たとえば、通販で注文した商品が違うものが届いたときや、修理を依頼したスマホでまた同じ不具合が出たというときが想定されると思います。この場合はすぐに商品を交換することや再度修理を行い、お客様の不便の原因を取り除くことで解決を目指します。2つ目は、お客様が不満に感じたことを我慢できず、一言、言っておきたかった、こんな気持ちにさせられたと自分の気持ちをわかって欲しかった、というものです。たとえば、温泉旅行であれば旅館のイメージが写真とは全然違った、エアコン修理であれば自宅にきた作業員が不親切で嫌な気持ちにさせられた、等があります。この場合の解決策は、物理的な対応はできず過去の出来事に対して不快なお気持ちを与えてしまったことが、お客様のお怒りの原因となりますので、どれだけお客様に反省の気持ちを伝えるかが優先されるようになります。「次回のサービス券をお渡しします」「従業員教育を徹底します」とだけ解決策を伝えても、「それだけで済まそうとするな」と、お客様はさらに怒りを募らせるでしょう。一言、言いたかった場合のクレーム対応には具体的な解決策は存在しません。「ご期待に添えられず、私共も本当に残念でなりません。心よりお詫び申し上げます」「私共の仕事ぶりに気持ちの緩みがあったこと、お話をうかがって恥ずかしい気持ちでいっぱいです」と受け止め、反省の気持ちを伝えるようにしましょう。

そうすれば、「わかってくれたらそれでいいです。同じことがないようにしてもらえれば、それでいいので」とお客様から納得した話が出てくるものです。

クレームの心理 「一言、言いたかった」タイプのクレームは、気持ちを受け止めることが何よりも大切。

具体的行動 過去の出来事へのご不満については、お客様の気持ちを受容して反省の言葉を伝えるようにしよう。

044お客様が解決策を受け入れてくれない理由解決策を押し付けると、要望とズレることがある

クレーム対応の解決策は最終的にお客様に受け入れていただく、ご納得いただくことがとても大切です。解決策として「社内で共有し業務改善を検討いたします」「すぐに正しい商品をお届けいたします」という解決策を提示するだけでは不十分です。「今回の件、ご了承いただだけますでしょうか」「こちらの対応で宜しいでしょうか」という言葉も必ずお伝えして、お客様から了承を得るようにしてください。お客様からの「わかりました」「そうするようにしてください」と了承を得ることなしに対応を終わろうとすると、後になって「対応がとても事務的で親身なものではなかった」と、違う部署やお客様相談室に再度クレームが入るこ

とがよくあります。人気のスイーツの通販サイトに主婦のお客様から「注文したジャンボシュークリームが1個足りなかった」というクレームがメールで入りました。メール対応者が「ご迷惑をおかけしました。現金書留にてご返金、もしくは商品をお送りします」と返信し、大きなクレームに発展したことがありました。メールの文面だけではお客様のお困りごとがわかりにくいかもしれません。過去にも同様のクレーム対応の経験があると、今までと同じ対応をしてしまいがちです。実はこのお客様の解決策の要望は「義理の母に私が注文の個数を間違えたのではないことを証明して欲しい」ということでした。クレームの背景はこうでした。同居する義理の母親から、友人3人が家に遊びにくるので、いつも頼んでいるシュークリームをみんなで楽しみたいという話になり、このお客様が4個を注文したにもかかわらず、シュークリームは3個しかなく、義理の母親から「あなたホント使えないわね」と嫌味を言われて、肩身の狭い想いをしているということだったのです。メール対応では、こちらの判断で解決策を押し付けてしまうような対応になることがあります。今回でいけば、お詫びの手紙として「こちらの不手際でした」という内容を書面にて送付することで、このお客様の立場を守るということができると思います。解決策の了承を得ることは徹底するようにしてください。

クレームの心理 過去のクレーム体験を重視すると、解決策をお客様に押し付けてしまうことがある。

具体的行動 お客様を「説得」しようとするのではなく、了承を得て「納得」を得ることを目指そう。

045クレーム対応のクロージング法感謝の言葉で締めると、クレームはアドバイスになる

クレーム対応を締めくくる際には、どんな言葉をお客様に伝えているでしょうか?「この度は、誠に申し訳ございませんでした」とお詫びの言葉で電話を終えたり、お客様のもとを離れたりしてはいないでしょうか。実は、クレーム対応のクロージングにお詫びの言葉を使用することはNG対応なのです。クレーム対応は、初期対応に失敗しないために、最初は必ずお詫びの言葉から始めることが鉄則だとお伝えしてきましたが、最後はお詫びの言葉ではなく“感謝の言葉”を投げかけるようにしてもらいたいのです。■クレーム対応の最後にお客様に伝える感謝の言葉「私共の至らない点を教えてくださり、誠にありがとうございます」「今回ご指摘いただいたことで、気付くことがたくさんありました。お電話いただき、本当にありがとうございました」「教えていただいたことで、今まで他のお客様にも同じようにご迷惑をおかけしていたのではないかと気付くことができました。ご指摘ありがとうございます」このように、お客様からのご指摘内容で自分たちの仕事のやり方にはまだまだ至らない点があったということをしっかり言葉にするようにしましょう。クレーム対応の上級者たちは、クレーム対応するときは、最後に必ず感謝の言葉で終えるというイメージをもって対応しています。そういう心構えで臨むと、お客様の怒りを笑顔に変えられることを知っているのです。なぜ、お詫びの言葉ではなく、感謝の言葉でクレーム対応を終えるようにするのか。それは、お詫びで終えると、「クレームを言ってきたお客様」扱いのままですが、感謝の言葉を伝えることによって、“アドバイス”してくれたお客様に変えることができるからです。感謝の言葉を耳にしたお客様は、クレームをちゃんと受けとめる信頼できる会社だと考えるようになり、良いクチコミを広めてくれるありがたいお客様にもなってくれるでしょう。

クレームの心理 お詫びの言葉で終えられると、お客様はクレーマー扱いされた気持ちになってしまう。

具体的行動 お客様の怒りを笑顔に変えるために、クレームを言ってくださったことに感謝の意を示して対応を終えよう。

046クレーム対応マニュアルの重要性

マニュアルがないと、対応を体系化できないクレーム対応はその場限りの処理するのではなく、順序立てして体系的にお客様とコミュニケーションを取ることで失敗することはなくなります。この順序をクレームの対応マニュアルとして作成することで、組織の誰が担当しても同じ対応と同じゴールを迎えられる体制を整えておくことが必要です。クレーム対応にあたっては、自分がクレームを言う立場だったら、どうしてもらえたら心を癒されるのかを常に意識するようにしましょう。その上で、対応の順序としては以下になります。最初にお客様の気持ちに寄り添うお詫びの言葉を投げかけることで、冷静になってもらい、対立関係から対話ができる状態にしていきます。

お客様の話はメモを取りながら、しっかり聴きましょう。お客様の言葉に理解を示しながら受け止めるようにします。そうすることで、お客様はどんどん落ち着いてゆっくり話をしてくれるようにもなります。解決策を急ぐ必要はありません。お客様がクレームを言う背景や事情を汲み取ることができてから、「お話、よく理解できました」と伝えることで、お客様の良き理解者としてのスタンスを明確にして解決策を出すのです。お客様にして差し上げることができる解決策は、お客様にこちらから話をして良いかの了承を得てから提示します。解決策は押し付けるのではなく、提示内容でご納得いただけるかを必ず確認するようにします。お客様が解決策を受け入れてくれたなら、クレーム対応の最後はお客様がクレームを言ってくれたことに対して感謝の気持ちを伝えるようにします。この順序で対応ができるとお客様の怒りは笑顔に変えられますので、対応マニュアルとして作成しましょう。クレーム対応のゴールは、「クレームを言って良かった」と思ってもらえることです。嫌な思いはしたけれど、ちゃんと受け止めてもらえたと思ってもらい、次もご利用いただけるファンになってもらうことです。クレーム対応はピンチではなく、お客様との絆を強くするチャンスという前向きな接客機会と考え、対応マニュアルを組織で浸透させるようにしてください。

クレームの心理 マニュアルを作成して対応方針や手順を体系化しておくことで、現場は安心することができ、クレームから逃げることなく取り組むようになる。

具体的行動 全員が同じ対応ができるようにするため、クレーム対応マニュアルは必ず用意しておこう。

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