第2章では、タスク管理の必要性について説明しました。
この章では、ストレスフリーを実現し、仕事の生産性を高めるため私が実践している具体的な方法、使用しているツールについて紹介したいと思います。
3―1使っているツール
使用しているツールをGTDの各ステップ順に並べるとこのようになります。
・収集‥SnapEntry
・処理~整理~レビュー‥Nozbe、Evernote
・実行‥TaskChute
本当ならば、すべてのステップを1つのツールで包括的に管理できれば良いのですが、それぞれのツールに一長一短があるので、それぞれの良いとこ取りをしつつ、組み合わせたツール全体で最も効果の出るような運用をしています。
(1)SnapEntry
ふと思いついたアイデアや気になること、やるべきタスクをその場でメモして、頭で覚えておく必要のない状態にする。
これは、これまでに何度も書きましたが、仕事・プライベート全般にわたってストレスフリーに近づくための第一歩です。
メモを取るだけであれば紙とペンを使ったアナログな方法が1番早いのでしょうが、後々の活用や他の人へのシェアを考えるとデジタルツールの方が便利です。
現在SnapEntryを使っているのは、Evernoteにメモを保存する最後、ノートにリマインダーを付けることができるからです。
次のステップ(処理、整理)ではNozbeを使っていますが、Evernoteのノートにリマインダーが付けられると、そのノートが自動的にNozbeのタスクとしてインポートされます。
(2)Nozbe
NozbeはiPhone、Android、パソコン、Mac、各種OSで使用できるマルチプラットホームのサービスで、NextAction、プロジェクト、コンテキストなどGTDのステップをツール上で再現できるGTDに完全に準拠したツールです。
同じようなGTD準拠のサービスは他にもたくさんリリースされていますが、私がNozbeを使っているのは、個人のみのタスク管理のみでなく、他の人とのタスク共有、チームでのタスク管理ができるからです。
個人として1人で使うのであれば、もっと高機能で美しいインターフェースのサービスもあるでしょうが、複数のメンバーで一緒に仕事をするのであれば、Nozbeが最も使いやすいでしょう。
Nozbeをチームメンバーと一緒に使用する方法については、次の章で紹介したいと思います。
(3)Evernote
頭のなかの気になることだけでなく、目の前に積み重ねられた資料やWebページなど、今見ているものが気になるときは、タスクと同じようにGTDのフローにのせて処理、整理をおこないます。
例えば、ネットでたまたま見かけたページが気になればWebクリップ機能でEvernoteに保存します。これはGTDのステップで言うと、その気になるページが「資料」として保存されたことになります。
(4)TaskChute
Nozbe上で処理、整理されたタスクは日次レビューを通してTaskChuteに転記されます。日次レビューについては次の項目で説明したいと思います。
TaskChuteはシゴタノの大橋さんが開発されたExcelマクロで動くツールです。
『シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌』http://cyblog.jp/modules/weblogs/TaskChute2http://shigotano.info/mbr/taskchute2/paypal.htmlTaskChuteは仕事中、サブディスプレイに表示させ、常にそれを見ながら作業を進めています。
自分の気持ちを整理し、見通しを立てるための中核となるツールです。
基本的な機能、このツールを使うことで何故そのような効果が出るかについては、また後述したいと思います。
3―2日次レビュー
仕事の進捗により常に変化する、やるべきこと考えるべきこと。
それらを現時点でつくっているタスクリストとすり合わせ最新の状態にするのが日次レビューです。
この日次レビューをおこなうことで、今日やるべきこと、そのなかでも優先的にやるべきことを洗い出し、時間を見積もり、それらの仕事が本当に終わるのかを判断します。
ここでは、ルーチンタスクとして毎日実行している3つの日次レビューについて紹介します。
3―2―1始業時レビュー
始業時レビューは、出社後パソコンを立ち上げ、具体的な仕事にとりかかる前に必ず実行するようにしています。
- メールチェック
- スケジューラー確認
- 手帳の確認
- Inboxの整理
- 連絡待ちタスクの確認
- クローズドタスクの作成
- TaskChuteへの転記
具体的にはこのような内容です。
各項目でどのようなことをおこなっているかを説明します。
(1)メールチェック
夜のうちに受信したメールをチェックし、簡単に読めるもの、数分で返信・転送できるものはその場で処理します。
内容が自分に何らかの行動を促す内容であれば、その場でさっとGTDのフロー(処理・整理)を走らせ、自分が具体的にやることをタスクリストに追加します。
(2)スケジューラー確認
会社のスケジューラーを確認し、自分の部署のメンバーが今日どのような予定かさっと確認します。
(3)手帳の確認
前日におこなった社外での打ち合わせメモがあれば、内容を確認してやるべきことを抽出し、タスク管理ツールに登録します。
また、カレンダーに記入している予定と会社のスケジューラー、Googleカレンダーを同期させます。
(4)Inboxの整理
社外、例えば自宅や通勤途中の電車やバスのなかで思いついたアイデアやタスクは、iPhoneのメモアプリ(SnapEntry)を通して、NozbeもしくはEvernoteに送られます。
始業時レビューでは、その内容を確認し行動に移すもの、資料として保存するものを整理します。
(5)連絡待ちタスクの確認
人にお願いしているタスクは「連絡待ち」と言うコンテキストで整理されています。
これは他の人にお願いしている仕事を頼みっぱなしで放置しないためです。
ここでは、そのリストを確認し、締切りが近いものなど進捗が気になるものについて「確認メールを送る」などのタスクを追加します。
(6)クローズドタスクの作成
上記のステップはいわゆる、GTDの処理・整理のフローをインボックスに適用し、タスクリストを最新にする作業です。
このステップでは、そのなかから今後のスケジュールや重要度を考慮し、今日必ず実行すると決めたものを抽出します。
この作業はNozbe上でおこなわれます。アプリの操作としてはタスクに☆印を付けNextActionに分類する作業となります。
(7)TaskChuteへの転記
Nozbeで整理したNextActionをTaskChuteに転記し、それぞれのタスクを終わらせるのに必要な時間を見積もり、記入します。
次に、それぞれのタスクの重要度を考えながら実行する順番を検討し、実行する順番に上から並べ替えをおこないます。
TaskChuteでは見積時間を入力することで、それらすべてのタスクを終わらせると何時になるか?を表示させられるので、この時点で作成したクローズドタスクの量が適切か、それらの見積時間が適切かを判断できます。
この時点で、やっと今日の見通しが立ったと感じられます。人が仕事を進める上で感じるストレスは「見通しが立たないまま仕事を進める」ことで生まれます。
この仕事は本当に終わるのか、何時に終わるのか、うまくいくのか?そのような雑念を頭の片隅に置いたまま作業をすると、心は常に軽いストレス状態に置かれ、「何かを新しいアイデアを考える」、「問題解決に向けた方策を練る」、「他の人の作業に気を配る」など、余裕のあるときには目を向けることができたことに目がいかなくなるのです。
午前中に提出すべき資料があるなど、タイトなスケジュールで出社の時間を迎えると、パソコンを立ち上げてすぐに作業の手を動かしたくなりますが、その浮き足立つ気持ちを抑え、淡々と日次レビューをおこない今日の仕事の見通しを立てる。
その結果として余裕をもった気持ちで作業を進めることができ、また周りにも気を配りつつ、作業に大きな抜けが生じてないかを判断できる。
それが始業時レビューの目的であり最大の効果です。
3―2―2中間時レビュー
中間時レビューは昼休み後の午後1番におこないます。
お昼休みの最後の15分は机の上で軽く目を閉じ仮眠を取っているので、少しぼんやりした頭をすっきりさせるため、特に頭を使わずにできる単純作業や身体を動かす作業、また細々した事務作業で緊急ではないが溜まると面倒なものを集中的に実行します。
おおよそ5~10分で終わる作業です。
- 掲示板の確認
- デスクトップに散らかっているファイル整理
- 交通費精算
- 名刺の整理
- 協議資料
- 受領資料のスキャニングとEvernoteへの保存
始業時レビューが頭のなかを整理するプロセスなら、中間時レビューは身の周りに散逸している雑多なゴミ、資料を整理し身の周りの仕事環境を整える作業と言えます。
3―2―3終業時タスクレビュー
終業時レビューは、日報作成と机の周りの整理整頓をおこない、翌日のタスクリストをざっと整理します。
- 机の周りの片付け
- 作業日報作成
- 翌日のタスクリストの整理
始業時レビューで作成したタスクリストも実際には割り込みや、作業時間の見積もりの甘さから計画どおりに進むことはありません。
割り込み作業も10分単位のものであれば、TaskChute上で設けたバッファー内に収まりますが、割り込み作業が数時間単位で入ってくるともう駄目です。
今日終わらせようと予定していた作業は、翌日以降に先送りされてしまいます。
終業時レビューでは、その先送りしたタスクを翌日以降に割り振り、中期計画の作業スケジュールのなかで収めることができるかをチェックします。
明日以降に先送りしても大丈夫。今日はできなかったけど明日やればOK、またはその作業を他の人にお願いできるなどのチェックです。
明日以降の作業について本当にできるかどうかは別として「見通しが立っている」と言う安心感をもてるかどうかを確かめます。
それが、仕事を終え会社から出た後、通勤途中のバスや電車のなか、布団のなかで仕事のことを考えなくて良い環境をつくるために必要なのです。
3―3気の重い仕事にとりかかるには
前の項でTaskChuteのメリットの1つとして見積時間を分単位で設定できることを書きました。
機能としては些細なものですが、これを使ったちょっとしたテクニックは気の重い仕事に取り組む際に効果を発揮します。
例えば、複数の仕事を並行して進めているとき、そのなかの1つが非常に重くスケジュールが厳しいと、その実行に時間と心が割かれ、比較的時間に余裕のある仕事は先送りされがちです。
その結果として先送りされた仕事の作業時間がなくなり、余裕のあった仕事も締切り前にはタイトなスケジュールになってしまいます。
このようにして気持ち的にストレスレベルの高い仕事から優先的に着手していくと、時間の経過にともない楽だった仕事も炎上案件に変わります。
次の図で言うと、仕事1、仕事2がとても忙しい仕事。
仕事3は比較的時間に余裕のあるはずだったのが、仕事1~2に時間を奪われ、結局時間がなくなった状態です。
その悪循環を防ぐためには、緊急ではない仕事(仕事3)についても、毎日少しずつ心と時間を割くしかありません。
特に、仕事3の仕事のなかで、自分でも全容が掴めていない作業がある場合は要注意です。
ギリギリになって着手してみたら、とても時間のかかるたいへんな作業や、人にお願いしないと終わらせられない作業が待ち受けていた。
なんてことにもなりかねません。
それを避けるには、ある仕事がどんなに忙しく余裕がない状況であったとしても、他の仕事の手を完全に止めてしまわないこと。
毎日少しずつで良いので時間を割くことです。時間を割くと言うことはその仕事に心を割くことです。
心を割くことで問題点を明らかにし、大きな問題を小さな課題に分解し、すぐに実行できるレベル状態にすることです。
TaskChuteでは、分単位で見積時間を設定できるため、どんなに気の重い仕事でも「5分だけでもやってみよう」と言う状態を意識的につくれます。
5分だけ資料を眺めてみよう、5分だけデータ整理をしてみよう、5分だけ相談に乗ってもらおう、5分の間に一本だけ電話しよう。
実際にやれる量はたいしたものにはなりませんが、このような行動を起こすことでやる気のスイッチが入ります。
もう少し専門的に言うと脳のなかにある2ミリメートル程度の小さな器官、側坐核(そくざかく)と呼ばれる部分が行動を起こすことによる「作業興奮」で活性化され、やる気を引き起こすための脳内物質が分泌されるのです。
やる気を起こすには行動を起こす必要がある。行動を起こすにはやる気が必要である。
このタマゴが先か鶏が先かと言うジレンマを解決するのが「5分だけやってみる」と言うテクニックなのです。
3―4クリティカルパスを意識する
ここまで紹介したタスク管理の実践方法は、主に今日明日と言う短期視点での見通しを立てる方法でした。
仕事を円滑に進める上では、もう少し目線を上げた中期、長期レベルでのタスク管理が必要となります。
その視点でのタスク管理ではクリティカルパスと言う考え方がポイントとなるので、その考え方について紹介します。
私がGTDに出会う前、仕事のタスク管理手法としてWBSと言うシステムを使っていました。
WBSとは(WorkBreakdownStructure)の略語で、もともとはPERT(ProgramEvaluationandReviewTechnique)と言うシステムと併せ、冷戦時代の米海軍が原子力潜水艦を設計する際に最適な工程管理をおこなうために使用していた手法とされています。
WBSの最初のステップは、目標を達成するのに必要な成果物を明らかにし、それを達成するために必要な工程をタスクとして細かく分解する所から始めます。
この部分はGTDのプロジェクトの考え方と同じですね。
次のステップは分解した各タスクを実行するのに必要な時間、人員を割り当て、各タスクの主従関係を矢線で結びます。
これは、その仕事をすべて完了させるのに必要な時間とリソースを可視化させることが主な目的です。
簡単ですが、そのイメージを表したのが次の図です。
いわゆるガントチャート(ネットワーク図)と呼ばれるものですね。
このサンプルでは、この仕事を終わらせるために必要なプロジェクトを3つ挙げそれをさらに細かい3つのタスクに分割しています。
WBSでは、このネットワーク図を見ながら、この仕事を完了させるのに必要なクリティカルパスを割り出します。
クリティカルパスとは、全体の工程のなかで、このタスクに遅れが生じると、全体の工程に影響を及ぼすと言う最長の工程です。
例えば、この工程表のプロジェクト1のタスク2、3の作業が遅れても全体の工程には影響しませんが、プロジェクト2~プロジェクト3のどれかに遅れが生じると、全体の工程に影響が出ます。
中期、長期視点のタスク管理をおこなう際は、このクリティカルパスを意識し、そこに遅れが生じないよう自分自身と併せ、一緒に仕事を進めるチームメンバーのタスク管理、スケジュール管理をおこなう必要があるのです。
また、このサンプルでは水曜日から翌週の水曜日にかけてタスクが重複しているので、この仕事を円滑に進めるにはその期間に最低でも2人の人員が必要だと判断できますね。
私が仕事で使っているのはMicrosoftProjectと言うソフトですが、みんなでガント.com、Brabio!など、ブラウザーで簡単に使える無料のサービスもありますので、新しい仕事を始める前、打ち合わせの前など節目ごとにこのような視点でレビューをおこない、見通しを立てるようにすると良いでしょう。
〈みんなでガント.com〉http://minna-de-gantt.com/〈Brabio!〉http://brabio.jp/
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