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第3章おもしろい伝え方の公式②今日から使えるたったひとつの〝笑いの原理〟

01そもそも、人はなぜ笑うのか?

枝雀理論、「キンカンの法則」まったく同じことを話題にしているのに、なぜ話す人によっておもしろくなったり、つまらなくなったりするのか?かつて落語家を目指し、その後30年近く放送作家として活動してきた私にとって、それは人生の大半を費やして突きつめてきた課題でした。その結果わかったのは、おもしろいか否かは、すべての笑いに共通するルールに則っているか否かで決まるということです。そのルールこそが、「緊張の緩和」の理論です。「人はなぜ笑うのか?」このシンプルだけど根源的な疑問について、古今東西の哲学者が考え続け、さまざまな理論を発表してきました。その中で、私がもっとも納得できたのは、アリストテレスでもモリオールでもベルクソンでもありません。「浪速の爆笑王」と呼ばれながら1999年に59歳の若さで他界した落語家、二代目桂枝雀師匠の言葉です。枝雀師匠が唯一の笑いの原則としたもの、それこそが「緊張の緩和」の理論です。それを、枝雀師匠は「緊緩(キンカン)の法則」と名付けました。この理論は、いたってシンプル。人は緊張が緩和された時に笑うのです。明石家さんまさんも使う〝緊張の緩和〟あまりにもシンプルすぎて信じられない、と感じている方が多いかもしれません。そこで、もうひとりのスペシャリストによる「笑いの理論」を紹介します。それは、明石家さんまさん。「マジメに考えすぎてしまうので人を笑わせるのが苦手」だと話す日本テレビのアナウンサー桝太一さんに、明石家さんまさんは、こうアドバイスしていました。「笑いに教科書なんてないですからね。突きつめれば〝緊張の緩和〟だけなんです、笑いなんて。緊張させて緩和させるだけなんです」ちなみに、哲学者のカントも「緊張が緩和することで笑いが起きる」と分析しています。また、「進化論」を提唱した生物学者のダーウィンも、「敵が迫り来る緊張感が緩和すること」がそもそも笑いの起源だとしています。そろそろ信じていただけたでしょうか。そうは言ってもまだ半信半疑だという方のために、もう少し具体的に分析していきます。理論はいいから応用例を知りたいという方は、次節以降をお読みください。POINT「緊張の緩和」─笑いの原理は極めてシンプル!

02なぜ、「葬式のおなら」はおもしろいのか?

「キンカンの法則」とは?緊張が緩和することで笑いが起きる、そのもっともわかりやすい例が「葬式のおなら」です。とても笑う気分にはなれない、悲しいお葬式がほとんどですが、たとえば100歳を超えて大往生を遂げた私の曾祖母の葬儀のように、中にはそうでないお葬式もあります。個人的には悲しかったのですが、私の故郷では「そこまで長生きしたのだからむしろ大往生で、めでたい」といった雰囲気も漂っていて、久々に顔を合わせた親戚一同が笑顔で集まるような葬儀でした。とはいえ、お別れの儀式ですから、いざ、僧侶の読経が始まればセレモニー特有の緊張感に包まれます。そんな時、だれかがついおならを漏らしてしまう。それも「プゥゥ~♪」といった、間抜けな音までついていたりすると、多くの参列者は思わず笑ってしまいます。実際に、私の曾祖母の葬儀は真夏だったものですから、開け放った窓から入ってきたミンミンゼミが読経をしているご住職の後頭部に止まってしまうというハプニングが起きました。ご住職は右手に木魚のバチ、左手に経文を持っているため、追い払うこともできません。この時点で私の姉などは、もう顔を真っ赤にして笑いをこらえていたわけですが、ミンミンゼミが木魚のリズムに合わせて鳴き始めたものですから、そのタイミングで全員が大爆笑。笑ってはいけない緊張感の中、場にそぐわない出来事が起こり、脱力して笑ってしまう。「緊張の緩和」を実感した経験でした。「笑ってはいけない」シリーズがウケる理由テレビの世界で、「緊張の緩和」理論を応用して大人気となっているのが、「笑ってはいけないシリーズ」。いまや紅白歌合戦に次いで大晦日の風物詩になりつつある日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の特別番組です。絶対に笑ってはいけない、笑うと〝お尻たたき〟のお仕置きが待っている状況の中、笑いのトラップを仕掛けられると、普段ならそれほどおかしくないものでも、つい吹き出してしまう。そしてメンバーに感情移入しながら見ている私たちも、大笑いしてしまうのです。すべての笑いは「キンカンの法則」である「キンカンの法則」は、ほかにもさまざまな場面で見られます。「風刺」の笑いも「キンカンの法則」の古典的な例のひとつでしょう。たとえばブレジネフ書記長時代の旧ソ連で生まれた風刺の古典的名作にこんなものがあります。ソビエトの赤の広場で「ブレジネフのバカ野郎!」と叫んだ男が逮捕された。裁判では禁固15年の刑を宣告された。罪名は〝国家機密漏えい罪〟だった。いまの私たちには、ピンとこないかもしれませんが、こうした風刺に、旧ソ連時代、一党独裁体制の中で息苦しさを感じていた人々は大いに笑ったといいます。絶対的な権威という緊張が貶められ、緩和することで笑いが生まれたのです。仕事のあと、居酒屋などで上司の悪口で笑って盛り上がるのも「緊張の緩和」です。また、下ネタがおもしろいのも、〝性〟といったある種のタブーを破ることで緊張が緩和され、笑いが生まれているのです。もっと身近でわかりやすい例を挙げれば、漫才も同じ理屈で説明できます。漫才の演者は、基本的に「ボケ」と「ツッコミ」に役割分担がされていますが「ボケ」は〝非日常〟です。日常ではありえないことが起きれば、聞き手の頭の中には「?」が浮かびます。それをツッコミが訂正したりして〝日常〟に戻すことで、緊張が緩和されて笑いが起きているのです。「いやあ、キミ、アツはナツいなあ」とボケがしゃべると、観客の頭には「?」が浮かびます。なんのことだろうと思ったところで間髪入れずに、ツッコミが「そらキミ、ナツはアツいやろ」と訂正することで、観客は安心(緊張が緩和)して笑うのです。江戸時代から続く伝統的な笑いである落語のくすぐり(笑わせるポイント)やオチも同じ理屈です。時代や国を超え、すべての笑いに共通するのが、「キンカンの法則」なのです。ダジャレ=〝ひざかっくん〟!?「キンカンの法則」がわかると、ダジャレがつまらない理由も説明できます。ダジャレは笑いの強要のようなもので、聞き手に心理的な負担をもたらすから避けたほうがいいというのはすでにご説明しました。では、なぜ、突然のダジャレはつまらないのか。その理由は、緊張がまったくないところに、いきなり「緩和=弛緩」がくるからではないでしょうか。たとえるなら、〝ひざかっくん〟のようなものです。だれでも一度はやられたことがあるはずです。立っていたら、いきなりだれかが真後ろから自分の膝を前の人の膝の裏にぶつけて「かっくん」とさせる、あれですね。不意に〝ひざかっくん〟をやられると、時として怒りがこみ上げることがありますが、ダジャレも同じこと。いきなり、心が「かっくん」と弛緩してしまう、しょうもないダジャレを聞かされることに怒りを覚えてしまうのは、あなただけではないのです。また、おもしろい話をしようとする時は語り手が笑ってはいけないというのも同じこと。語り手が先に笑ってしまうと、いきなり場の空気が弛緩するため緊張

が生まれません。だからこそ、笑わずにマジメな顔で話し始めるべきなのです。マジメ(緊張)が緩んだところに、笑いが生まれるのです。「緊張→緩和」は0コンマ数秒の出来事「キンカンの法則」では、まず「緊張」があって、そのあとに「緩和」が来るのがセオリーです。ただし、その間隔はシナプスレベルの場合もあります。「シナプスレベル」と言ってもイメージしづらいと思うので、例を挙げます。「漢字の『傘』みたいな顔してますよね」これは、ダウンタウンの松本人志さんがクリス松村さんの顔を見てボソッとしゃべったひと言です。「漢字の『傘』」と言われて、聞いているほうは一瞬虚を突かれたような感覚を抱くことでしょう。しかし、その0コンマ数秒後に「そう言われれば頭の尖ったところが、『傘』の部首(冠)に、クシャッとした顔も〝4つの人〟のところに似ている!」と結びつく。そして、笑ってしまうのです。

つまり、一瞬「どういうこと?」と思わせておいて、「ああ、なるほど!」と思わせて緊張を緩和させているわけですが、その時、聞き手の頭にはシナプスレベルだとしても「?→!」という流れが起きているのです。少し長くなりましたが、「キンカンの法則」が笑いを生み出していることは理解いただけたでしょうか。次の節から、日常会話でどのように使っていけばいいか、その具体的な方法を紹介していきます。すべての笑いは「緊張の緩和」。以下では、代表的なものを紹介していきますので、日常で使えるものから試してみてください。POINTすべての笑いは、「キンカンの法則」で成り立っている!

実践編キンカンの法則実践例1緊張緩和(倒置法)小池百合子氏の「倒置法」文字通りのもっともベーシックなパターン。いったん聞き手を緊張させて緩和させるパターンです。これを得意としているのが2016年に旋風を巻き起こして東京都知事になった小池百合子さん。「膨れあがるオリンピック予算、一兆、二兆、三兆って……豆腐じゃないんですから」「見てください、この資料!ほとんど真っ黒に塗られて……のり弁じゃないんですから」と、小池さんの演説には追及するような厳しい口調から、いきなりまったく異質なものにたとえて落とすパターンが目立ちます。当時のVTRを見返してみると、集まった聴衆は、このタイミングで確実に笑っています。ふつうなら「豆腐じゃないんですから、一兆、二兆って……」とか、「見てください、のり弁のように真っ黒に塗りつぶされた資料」となりますが、小池氏はあえてひっくり返すことで、「緊張→緩和」の典型的なパターンを使っています。これは「倒置法」を使うことで、効果的に緊張を緩和させるテクニック。この方法で、だれでも簡単に「緊張の緩和」を使いこなすことができます。たとえば雑談。「今日はいい天気でよかったですね」など、天候など共通の話題から入るといい、とアドバイスされることがあります。これを、「今日はよかったですね」と始めてみるのです。すると、「ん?なにがよかったんだ?」と「?」が相手の頭に浮かびますので、そのタイミングで「天気がよくって」と続けるのです。比べてみましょう。今日はいい天気でよかったですねこれでは「そうですね」以外に返す言葉がありません。今日はよかったですね・・・天気がよくってこう言い換えるだけで、いったん頭に「?」が浮かんだ分、相手の心に言葉が深く突き刺さります。きっとリアクションが変わってくるはずです。例をもうひとつ。たとえば購入した洋服を友人A子も買っていたことがわかった時。先週買った服がA子とモロ被りで、もう大ショック!これを、次のように変えてみてください。先週、洋服を買ったんだけど、もう大ショック!・・・A子とモロ被りだったのよこうして文字にしてみると、まさにほんのちょっとの差。でも、もっとも言いたいことを取っておいて、最後に話すだけのこの〝ちょっとの差〟が、言葉にした時、相手の心により強い印象を与えるのです。倒置法は、「キンカンの法則」のベイビーステップです。まずは「笑いをとる」ことよりも、こうしたテクニックを使って相手の頭の中に「?」を浮かべさせ(緊張させて)、それを緩和することから始めてみましょう。緊張状態を意図的につくる小池氏の演説から学べるのは、倒置法だけではありません。小池氏が追及するような厳しい口調で緊張感を高めていたように、話す時にまず、意図的に相手に緊張感を覚えさせるのも効果的です。たとえば、「あれ?」と、仲のいい女性の同僚の顔を3秒ほどじっと見つめてみる。当然、彼女は「え、なに?」と不安を覚えるはずです。そのタイミングで、「いや、今日はいつにもましてキレイだなと思って……」などと言って緊張を緩和させるのです。不安がなくなった相手は、それだけのことで笑顔になるはずです。

「キンカンの法則」を使えば、プロポーズの成功率も上がるかもしれません。たとえば、長年付き合ってきた彼女に、こう切り出してみましょう。「じつは話しておかなきゃならないことがあるんだけど、冷静に聞いて欲しいんだ」この時、彼女の脳には「もしかして、別れ話?」など、ネガティブな予想がよぎり、心理的な緊張状態に陥ります。そのタイミングで、「僕と、結婚して欲しい」とプロポーズすればいいのです。別れを切り出されるのかもしれないという緊張が緩和された彼女は、一気にほっとすることでしょう。そして、受け入れてくれる可能性が高まるはずです。もっともプロポーズが確実に成功するかどうか、こればかりは保証できませんが。【活用例】例部下の企画書をほめる時あなた「・・・この企画書を書いたのはだれだ!」部下「すみません、私です」あなた「おまえなあ・・・なんでこんないい企画、すぐ出さないの!」例部下を早く帰らせたい上司あなた「おまえら全員帰れ!」部下「仕事があるので僕は残ります!」あなた「いや帰れ。俺も帰りたいんだ」例女性から男性へのお願いあなた「相談があるんだけど、怒らないで聞いて欲しいの」男性「ど、どうしたの?」あなた「今度の休日付き合ってもらえないかな、お買い物」男性「なんだ、そんなことか。もちろん付き合うよ」最後の例は、意図的に緊張をつくったうえで、倒置法を使ってさらに効果を高めているケースです。いきなり「今度の休日、買い物に付き合ってよ」と切り出してしまうと、相手は「うーん、こいつの買い物、長いんだよなあ。それに荷物持ちに使われるだけだし」などと思いかねません。しかし「キンカンの法則」を使えば、そんな相手も動かすことができるかもしれません。POINT緊張感を抱くひと言から会話を始めてみよう!

実践編キンカンの法則実践例2自慢自虐自慢話を笑いに変える他人の自慢話ほど、鼻持ちならないものはありません。自慢話は、極力しないよう気をつけたいものです。そんな嫌われる自慢話も、伝え方次第で「笑い」に変えることができます。たとえば、自虐に落とし込む。これならばOK。自慢を聞かされている時の「嫌だな」という緊張が緩和され、聞き手は必ず笑顔になってくれます。自虐ネタが得意なビジネスエリートといえば、ソフトバンクの孫正義さん。孫さんは「髪の毛の後退度がハゲしい」とのツイートにこう返し、話題になりました。「髪の毛が後退しているのではない。私が前進しているのである。」ほかにも、有名人のものではありませんが、こんな自虐ネタもツイッター上で話題になりました。母から電話で「最近変質者が多いらしいから気を付けてよ」と言われたので「変質者は可愛い子狙うから私は大丈夫だよ」て言ったら「なに言ってるの!あなただって危ないわよ!」と言われたので「母さん・・・」とジーンとしてたら「夜道は可愛いかブスかわからないんだから!」て言われて無言で電話切った。自慢っぽく相手に聞こえてしまう話には、最後にこのような自虐ネタをひとつ加えてみましょう。それだけで鼻持ちならない自慢話が、一転して相手を笑顔にするユーモアになります。「自慢して嫌われる」くらいならば、多少話を盛っても構いませんので、自虐ネタを添えてみてください。長い目で見た場合、自分をオトして「おもしろい人」という印象を与えたほうがあなたの人生にとってはおトクですよ。【活用例】例車を買ったことを自慢せずに話したい時あなた「先輩、僕ついにBMWを買いました!」先輩「へえ(うわ、自慢話かよ・・・)」あなた「中古車を72回ローン!これから6年がかりで払います・・・」例上司の愚痴を言いたい時あなた「上の連中は、俺の豊かな才能をわかっちゃいない!」後輩「そうですよね(やれやれ)」あなた「まあ、俺もよくわからないんだけどね」例合コンの成果を話題にする時あなた「昨日は、イケメン軍団とBBQ合コンだったのよ」友人「へえ、いいわね(はいはい、自慢ね)」あなた「でも網の上のカボチャと同じで、結局、売れ残ったんだけどね(笑)」「どうせ私はモテないし……」といった自虐ネタだけだと、相手は肯定するわけにもいかず、リアクションに困ってしまいます。ですが、あげてからオトせば、自然と笑いが生まれるのです。POINT自慢話はオトして笑いに変えよう!

実践編キンカンの法則実践例3思い込み(予想)裏切り〝裏切り〟は武器になる「たぶん、こうなるんだろうな」といった予想や「こうなんだろうな」といった思い込み。それを裏切るのも、「キンカンの法則」の実践法のひとつです。アメリカの認知科学者、マシュー・ハーレー氏らの本『ヒトはなぜ笑うのか』(勁草書房)によると、「推理や自分の思い込みが外れた時に人は笑ってしまう」のだそうです。これはつまり、予想が外れた瞬間に、まず「緊張」(=?)が起こり、その直後に「ああ、そうきたか」と納得の「緩和」(=!)が起きて笑いが生じているということです。たとえば次のふたつの小話は、典型的な例でしょう。あるご婦人が犬の散歩をしていた時のこと。酔っ払い「おい、おまえ、公園に豚なんか連れてくるんじゃねえ」ご婦人「あら相当酔ってらっしゃるのね、これは豚じゃなくて犬ですのよ」酔っ払い「ああ?・・・豚は黙ってろ、俺は犬に言ってんだ」

続いて、ある美術館での会話。客「あら~すてきな絵ですこと。ルノワールですわね」係員「いいえ奥さま、それはダビンチでございます」客「あ~らこちらもすてき、ダビンチですわね」係員「いいえ奥さま、それがルノワールでございます」客「あら、この絵なら私にもわかるわ。ピカソよね」係員「いいえ奥さま・・・それは鏡でございます」

ご婦人が美術館でルノワールやダビンチの絵を見たあと、「ピカソの絵を見ている」と誤解させておいて、鏡を見ていたのか、と気づかせる。こうした誤解誘導は映画やテレビのような映像メディアでは不可能なことですが、話では実に効果的。落語のマクラにもよく使われます。【活用例】例居酒屋での注文あなた「すぐにできるツマミは何ですか?」店員「枝豆、キムチ、もつ煮なら、すぐです」あなた「じゃあ・・・ポテトグラタン」友人「なんで聞いたんだよ!」例飲み会の幹事になった時あなた「今日の打ち上げだけど、俺が出そうか」同僚「おごってくれるの?」あなた「いや、ポイントカード」同僚「貯めるのかよ」最初の会話は、とんねるずがロケで食事をする時によく使うパターン。まず店主に、この店のお勧めを聞き、「お勧めは味噌煮込みうどんです」との答えを聞いたあと、「じゃあ、俺はカツ丼で」。自分でお勧めを聞いたのだから、当然、それを頼むと思わせておいて違うものを頼むことが、視聴者の予想を裏切り、笑いへとつながるのです。POINT予定調和を破ったところに笑いが生まれる!

実践編キンカンの法則実践例4謎解決聞き手の頭に「?」を浮かべる次の文章は、古典落語の『馬のす』のあらすじです。まず読んでみてください。ある釣り好きの男が、釣りをしようと道具を取り出したものの糸が切れています。そこで馬の尻尾の毛を抜いて釣り糸にしようとするのですが、それを目撃した友だちに「おい、馬の尻尾を抜くなんて、とんでもないことをするな」といさめられます。「尻尾を抜くと、どうなるんだ?」と不安がる釣り好きの男に「どうなるどころか、とんでもないことだ」と友だち。釣り好きの男は祟りでもあるのかと心配になり、聞き出そうとします。すると、友だちは「酒をおごってくれるなら話してやろう」と言い、酒をさんざん飲んだあとでひと言。「そんなら言おう。馬の尻尾を抜くとな……、馬が痛がるんだ」。「馬の尻尾を抜くとなにが起きるのか?」という謎でさんざん緊張を高めたあとで、「なぁーんだ、うまいことを言ってタダ酒を飲んだのか」とオチをつける。これも、「キンカンの法則」を実践した典型的な笑いのひとつです。「キンカンの法則」は基本的に「フリ→オチ」の構造になっていますが、フリでは「謎を残した情報」を相手に話して相手の頭に「?」を浮かばせたあと、ネタばらしをすると、効果的に「キンカンの法則」が発動します。そのもっともわかりやすい構図が、ここで紹介する「謎→解決」の型。フリで「謎」を提示して相手の頭に「?」を浮かべ、オチで解決するパターンです。たとえば、モテない友人から、こんな話を切り出されたら、頭の中に「?」が浮かぶのではないでしょうか。「この間いい匂いがするなと思って朝起きたら、見知らぬ若い女性が隣で寝ていたんだよ。もうびっくりしちゃってさ」「なんでこいつの隣に若い女性が?」、「あいつが若い女性をお持ち帰り?」など、あなたの頭の中にはたくさんの「?」が浮かぶはず。まさにある種のミステリー。じつは、このエピソードは私の友人が実際に体験したことです。よくよく話を聞けば、夜行バスに乗車したところ、混んでいたせいかたまたま隣に見知らぬ若い女性が座っただけのこと。そのままぐっすり眠り、目が覚めた時、夜行バスに乗っていることを忘れていたため、隣に若い女性がいて驚いた、という話でした。この話、「この前、夜行バスに乗ったら隣に若い女性が座ってさ……」と話し始めたとしたら、おもしろくもなんともありません。「謎=ミステリー」で始まるからこそ、おもしろくなるのです。【活用例】例営業でのつかみのひと言あなた「今日は商品の紹介ではありません」先方「はあ(じゃあなにしに来たんだ?)」あなた「まずは私という人間を知ってください」例友人や同僚との雑談あなた「最近なぜか夜眠れなくて」同僚「なにか心配事でも?」あなた「昼寝はぐっすりなんだけど」同僚「それだよ」「謎→解決」の型のポイントは、相手の興味をかきたてること。相手の頭の中に「?」が浮かぶような導入を考えてから話し始めてみてください。POINT相手の興味をかきたてる「謎」から話し始めよう!

実践編キンカンの法則実践例5権威失墜落差が笑いを生む権威が失墜しても、「キンカンの法則」により笑いが生まれます。映画監督の北野武さんが2016年秋、フランスで最も権威のあるレジオン・ドヌール勲章を受章した時のコメントはこういうものでした。「総理大臣がバナナの皮を踏んで転ぶと皆笑うとチャプリンが言った言葉があるが、同じように、お笑いのためには素晴らしい賞をいっぱいもらって、それから落ちることが『落差』がつくということだと思います」芸人「ビートたけし」と世界的な映画監督「北野武」。この落差が笑いを生むことを意識しての発言でしょう。また、落語の世界にはこんな小話があります。できれば目で文字を追うだけでなく、声に出して読んでみてください。よりおもしろさが伝わるかもしれません。明治天皇が鳥取砂丘をお訪ねになった時、一陣の風が舞いました。ふと陛下を見ますとなにやら、目をこすっていらっしゃる。慌てた侍従が「陛下、いかがなさいましたか?」そう言うと陛下がひと言。「目ぇいじってんの~」。大正天皇が民の台所は賑わっておるかと、築地市場をお訪ねになった時、ふと見ると陛下が、大きな赤い魚を突然、お担ぎになった。慌てた侍従が「陛下、なにをなさっておいでですか?」そう言うと陛下がひと言。「鯛、しょってんの~」。昭和天皇が宝塚の観劇にお出かけになった時、陛下は劇場の扉をお開けになりましたが、なぜかそのまま戻ってこられました。慌てた侍従が「陛下、いかがなさいましたか?」そう言うと陛下がひと言。「ショー、終わってんの~」。戦前であれば不敬罪に問われ牢獄行きになりかねないようなダジャレですが、戦後の寄席では結構ウケています。本来は、それほどおもしろくはないはずのダジャレ。しかし、天皇という普段は決していじられることのない存在をいじることで、「緊張の緩和」が生まれて笑いが起きるのです。もちろん私たちが皇室のような対象をネタにすることは避けたほうが賢明です。ですが、たとえば身近な権威を少し落とすことで、笑いを生み出すことはできそうです。たとえば、仲間内で上司を「くん付け」で呼んでみる。あと、総理大臣を「安倍ちゃんも、世界中飛び回って頑張ってるけどさあ」と、上から目線で言ってみてもおかしみが生まれます。【活用例】例職場での会話1あなた「山田社長から金一封をもらったよ」後輩「へえ、すごいですね」あなた「中を見たら500円玉が一枚、山田くんもケチだなあ」例職場での会話2後輩「先輩、ヒロコ先輩が目を三角にして怒っていますよ」あなた「あら私、ヒロポンの逆鱗に触れたかしら?」「権威→失墜」のパターンでは、あえてちょっとだけ「上から目線」でものを言ってみましょう。すると、「キンカンの法則」の効果が高まります。ただし、上司や先輩をネタにする時などは、当然ながら当人に聞かれないよう要注意。POINT少しだけ上から目線がポイント!ただし、使い方には要注意

実践編キンカンの法則実践例6たとえる結びつく「おもしろい人」は「たとえ」がうまい!この章の前半でも、松本人志さんの絶妙な「たとえ」を紹介しましたが、「たとえる」ことで生まれる笑いも「キンカンの法則」に当てはまります。では、どうすれば笑える「たとえ」がつくれるのか、そのコツを見ていきましょう。先ほども紹介した松本人志さん。クリス松村さんを「漢字の『傘』」だけでなく、「へその緒みたいな顔しているよね」と言ったことがあります。なぜ、このようにうなるような「たとえ」をつくることができるのか。そのしくみを私なりに分析してみたところ、「笑えるたとえ」をつくる時、たとえようとする物事をいったん「抽象化」しているのではないか、という結論にたどり着きました。先ほどの例で言えば、クリス松村さんの顔を「なんだか茶色くてクシャクシャッとしている」と抽象化したうえで、「茶色くてクシャクシャッとしているものと言えば……」と、連想を広げて、いつか目にした「タンスの中にしまってあったへその緒」にたとえたのです。松本さんは、このようなフレームワークの発想を瞬時に行っているのかもしれません。

距離があるものにたとえるほどおもしろくなる「たとえ」を考える時は、発想を広げるようにしてみてください。先ほどのクリス松村さんの例。「茶色くてクシャクシャッとした」〝人物〟や〝動物〟、あるいは〝もの〟にたとえてもよかったはずです。でも、松本さんは、「タンスにしまってあったへその緒」にたとえた。まさにぶっ飛んだ発想です。このように、「たとえる対象」と「たとえたもの」の距離が離れていれば離れているほど大きな笑いになるのです。どんどん距離が離れていけば、「たとえる対象」と「たとえたもの」が、より異質なものになっていきます。つまり笑いというのは「異質な材料の新しい組み合わせ」でもあるのです。しかし、単に遠ければいいわけではありません。いくらぶっ飛んだ発想でも、「共感」してもらえなければ、「緊張の緩和」は生まれません。まとめると、なるべくたとえるターゲットから距離をとりながらも、相手になじみのあるものにたとえるのが得策でしょう。「このお茶、渋いな」「まるで〝うちの経理〟ですね」「このせんべいは固いな」「まるで山田部長の頭ですね」共感を呼ぶために、もっとも簡単なのは、このように身内にたとえること。要するに共通認識があるものにたとえればいいのです。ほかにも、その時々で話題になっていることも多くの人に共通認識がありますから、有効です。たとえば、「ポケモンGO」が流行っていた時は、「がっかりした」ことを表す「たとえ」として、こんな伝え方もできそうです。「せっかく孵化させたタマゴから現れたのが〝ポッポ〟だったくらい、がっかりしましたよ」ほかにも、次のような「たとえ」も汎用性があります。

いずれにしても「遠いジャンル」からネタを借りてきた異質なものを「身近なものにたとえる」のが大原則。そうすることで、相手の頭に一瞬「?」が浮かび、そのあとで納得するといった「?→!」の動きが生まれ、「キンカンの法則」が発動するのですPOINT「たとえ」は、遠いジャンルからネタを借りてこよう!

実践編キンカンの法則実践例7たとえツッコミ(ツッコミ→たとえ)「たとえ」と「ツッコミ」のハイブリッド続いてはちょっと高度な技、「たとえツッコミ」です。「たとえる」テクニックと「つっこむ」テクニックのハイブリッドですから、難易度は高いかもしれません。でも、マスターできれば最強のテクニックですから、チャレンジする価値は十分にあります。「たとえツッコミ」は、ダウンタウンの松本人志さんやフットボールアワーの後藤輝基さんなど、得意としている芸人は数多いのですが、特にお手本にしたいのは、くりぃむしちゅーの上田晋也さんです。たとえば、似ているようで全然違うものに対しては、「加藤あいと阿藤快くらい違うよ!」とうてい不可能なことに対しては、「産婦人科で処女を探すくらい難しいよ!」流行に乗り遅れている人に対しては、「月に冷やし中華始めましたくらい遅いよ!」

このような、上田さん流の鋭くてわかりやすい「たとえツッコミ」は日常で応用できたら大きな武器になるはずです。たとえば、営業先から帰ってきた時の上司への報告。新しい取引先が提示してきた条件が、あまりにシビアで現実離れしていたとしましょう。「先方のTさんは無理難題ばかりで、まったく話になりませんでした」こう聞いた上司は内心、「おまえのアプローチが甘いんじゃないか」と考えるかもしれません。ですが、「たとえツッコミ」を使って、このように言うこともできます。「課長、○○社のT女史は無理難題ばかり、まるで〝かぐや姫〟みたいなんですよ」『竹取物語』の中で、かぐや姫は言い寄る貴公子たちに「龍の首についている五色の玉を持ってこい!」とか「火鼠の皮衣を持ってこんかい!」といった、ありえないものを要求して求愛を断ろうとするわけですが、無理難題を言うTさんをかぐや姫にたとえれば、いかに高いハードルを設定されたかを伝えることができるでしょう。

ちなみに、「無理難題=かぐや姫」という「たとえツッコミ」は、くりぃむしちゅーの上田さんが無理難題ばかり言う女性ゲストに、「無茶ばかり言うなよ、かぐや姫か!」と「たとえツッコミ」をしたことが元ネタです。これは、やや高度すぎますが、「まるで××ですね」と反応するだけで気の利いた返しになりますよ。POINT「まるで××ですね」から始めよう!

実践編キンカンの法則実践例8ノリツッコミリアクションしづらい時は、いったん乗ってみる続いてはいわゆる「ノリツッコミ」と呼ばれる技です。○○「ソースとってくれる?」××「はい(ホースを渡す)」○○「そうそう、やっぱトンカツにはホース・・・って違うやろ!」

つまりボケに対して、いきなり「違うやろ!」と否定するのではなく、いったん受け入れるフリをしたあとでつっこむパターンですね。明石家さんまさんや雨上がり決死隊の蛍原徹さんが、よく使いますね。これも「そうそう」と乗った瞬間、相手が「あれ?否定しないのかな」と違和感(緊張)を感じたあとで、「ああ、やっぱり否定か」と安心する、というしくみです。ただし、関西の一部地方をのぞいて、日常で「ソースとって」と言われてホースを渡すようなボケをする人はあまりいません。私たちが日常で使うとしたら、次のようなシチュエーションです。特にいじられた時などに有効ですのでお試しください。【活用例】例上司からのいじりへのリアクション上司「おまえ、顔が長いなあ」あなた「そうなんですよー、もうネクタイより長いですから・・・って、そこまでは長くないですよ」例先輩からのいじりへのリアクション先輩「早く仕事終わらせてくれよ。なにをしても遅いんだな」あなた「そうなんですよー、給食も最後まで食べていたタイプで・・・って、もう終わりますよ」例課長からのセクハラへのリアクション課長「○美ちゃん、今日もデートかい?」○美「そうなんです、モテる女は辛い・・・って課長、それ四捨五入したらセクハラですからね(笑)」いきなり否定したら角が立つ場面でも、いったん乗っかることで笑いが生まれます。まさに潤滑油的ユーモアと言えますね。そうは言っても、最後に紹介した、課長のいじりは四捨五入するまでもなくセクハラです。この本を読んでいただいているよい子のみなさんは、絶対にこういうことを言わないよう気をつけましょう。ただ、まだまだこうした「昭和の化石」とも言えるおじさんが生息しているのも事実です。そういう人に「それってセクハラですよ!」と、目を三角にして訴えても、逆恨みされるだけ。「ノリツッコミ」で、とりあえずその場をかわしましょう。そして、あとでしかるべきところに被害を訴えてください。また、この「ノリツッコミ」は、乗っている間に、その次の言葉を考えることができるというメリットもあります。POINT即座に否定しないで、いったん乗ってみると笑いが生まれることも

実践編キンカンの法則実践例9あるあるツッコミ〝あるあるネタ〟にたとえよういよいよ最後の実践法です。「たとえ」を使って笑いをとる場合、聞き手の共感を得ることが大切だというのは、すでにお伝えしていることです。ですから、なるべく共通の体験、いわゆる〝あるあるネタ〟にたとえると笑いにつながります。だれでも共感できる共通体験の典型といえば、「小学校や中学校時代に体験したこと」ですが、じつはこの〝あるあるネタ〟も「キンカンの法則」によって笑いを誘う手法です。小中学校時代のことは普段は忘れていますから、言われた瞬間は、「あれ、それって!?」と緊張が走ります。そして、その直後に「確かにあった、あった!」で緩和する。こうして、興味深い話ができるようになるのです。【活用例】例職場で後輩に注意する時「キミって、小学生の時も〝消しゴムを最後まで使ったことがない〟タイプだったでしょ」例目立った行動をしてしまった人に・・・「授業中、校庭に迷いこんだ犬くらいの注目度だったな」

例うっかりなれなれしい口を利いた人に・・・「もしかしたら小学生の時、先生を〝お母さん〟と呼んでしまったことない?」例つまらないことではしゃぐ後輩に・・・「はしゃぐなよ、給食がソフト麺の日の小学生か!」例楽しみにしていたことが寸前でダメになってしまった時・・・「好きな子の直前で曲が終わるフォークダンスくらい残念だ」「たとえツッコミ」と〝あるあるネタ〟のハイブリッド・ツープラトン攻撃ですから、その破壊力は抜群です。「キンカンの法則」を細分化していけば、ほかにもさまざまな応用パターンがあります。まずはここまでに挙げた9つの基本形をマスターし、使えそうなものからどんどん使ってみてください。POINT〝あるあるネタ〟をストックしておこう!

Column3おもしろい話の組み立て方「?→!」は〝S・Q・A・F〟のテンプレートを使え!おもしろい話は「緊張の緩和」。そうはいっても「いきなり、そうした組み立て方は難しい」と思う方もいるはずです。そう感じる人は、「S・Q・A・F」のフレームワークを使ってみてください。「本当にあった!?笑える話」というWebサイトにあった次の話をこのフレームワークで組み立ててみましょう。学生の頃、渋谷のこじゃれたカフェでバイトしてた頃……ふたりのオヤジがやってきました。オヤジ1「ここはなかなかおいしいんだよ、これなんかいいですよ」オヤジ2「ほー、じゃ、俺はこれにしようかな」そう言うと、オヤジ2はメニューを指差しながらはっきりとこう言った。「トマトとジルバのスパゲティ」その瞬間、俺の脳裏には、トマトと麺が踊り狂ってる様が浮かんだ。(マズイ、ここはこらえろ、笑っちゃイカン!)などと思っていると、間髪入れずにオヤジ1が「じゃ、俺はこの『ペロロンチーノ』」もう限界、っていうか完敗。そのあまりにマヌケな響きに、俺は注文の確認もせずにそそくさと逃げるようにその席を後にした。オヤジギャグも困るが、素でボケられても困る。状況(Situation)バジルと言えば、学生の頃、渋谷のこじゃれたカフェでバイトしていた頃、ふたりのオヤジがやってきたことがあったんですよ。謎フリ(Question)そのオヤジのひとりが、メニューを指差しながらどう言ったと思いますか?オチ(Answer)・・・『トマトとジルバのスパゲティ』その瞬間に、俺の脳裏には、トマトと麺が踊り狂ってる様が浮かんで、吹き出しそうになったんですけど、そこは「マズイ、ここはこらえろ、笑っちゃイカン!」と思っていたら、間髪入れずにもうひとりのオヤジが「じゃ、俺はこの『ペロロンチーノ』」って(笑)。フォロー(Follow)これはもう限界で、思わず厨房に帰って笑っちゃいましたよ。

相手の頭に映像が浮かぶように話そうおもしろい伝え方の公式、最後は伝える技術です。短い話なら、場の空気を読んで、「キンカンの法則」を使って話せば、ある程度の笑いはとれるでしょう。ですがやや長めの話、たとえば身の周りで起きたおもしろい出来事を人に話す時などは、伝えるテクニックも必要になってきます。とはいえ、難しいテクニックではありませんので安心してください。伝え方のコツもたったひとつだけ、それはずばり相手の頭の中に映像が浮かぶように話すことです。話を映像化すれば同じネタでも2倍、おもしろくなりますよ。

 

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