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第3章「おもしろい話」をどのように組み立てるか?

おもしろい話をするには正しい順序立てがある▼あなたの話の順序は正しい?ここでもう一度確認しておきましょう。「構成」とは次の2つの作業をすることでした。1:おもしろく伝えるために必要な要素をチョイスする2:チョイスした要素をよりおもしろく伝えるために順序立てる前章では、これを踏まえて、1の「おもしろく伝えるために必要な要素(=話のテーマ・話題)の選び方」について学びました。次は、構成力を高める第2段階。1でチョイスした要素(話題)をどうやっておもしろく伝えるか、です。そこで本章では、チョイスした要素の「順序立て」について考えてみたいと思います。みなさんは、話し終わった後、聞き手の反応が今ひとつで、「本当はもっとウケるはずなのに……」と歯がゆい思いをしたことはないでしょうか?また、友人とまったく同じ話をしたのに、自分のときは無反応で、友人のときは「おもしろい!」と言われてくやしい思いをしたことはないでしょうか?そうなってしまうのは、なぜか?それは、話の「順序立て」がうまくできていないからなのです。▼レーガン大統領の名スピーチでは、「順序立て」とは、どのようなものでしょうか?それについてお答えする前に、ここでアメリカのロナルド・レーガン大統領が語ったとされる有名なスピーチをご紹介します。レーガンさんは、1981年から1989年まで大統領を務めた人物で、映画俳優から大統領になったという、異色の経歴の持ち主です。彼は、アメリカ史上もっとも支持を集めた大統領のひとりとされていますが、その人気の秘密は、何といっても演説やスピーチのおもしろさにありました。ある日のこと。レーガン大統領は、テレビ演説で視聴者に向けてこう言いました。「私が大統領になれた理由は9つある!まず、ひとつめは、抜群の記憶力!私は人の話を聞いたら絶対に忘れることはない!そして2つめは……2つめは……えっと……何だっけ?」このスピーチに、テレビの前の視聴者はドッカーーーン!と笑い転げたと言います。アメリカの大統領が、テレビ演説で、自分が大統領になれた理由は9つあると言い、「そのひとつめは……」と切り出したのです。視聴者は「9つの理由って何だろう?」と、思わず身を乗り出したでしょう。ところが、いきなり2つめで「忘れた」というのです。しかも、最初に「抜群の記憶力」と言っておきながら……。▼話をおもしろくする仕掛け「フリオチ」とは?もちろんこれは、あらかじめレーガンさんが用意していたものですが、彼は時折こんなおもしろスピーチをすることで大衆の心をつかみ、人気を博しました。さて、なぜここでこのスピーチをご紹介したかというと、まさにこれが「おもしろさを伝える正しい順序」のお手本だからです。このスピーチには「おもしろさを伝える正しい順序」、すなわち「フリオチ」が使われています。「フリオチ」とは「フリ」と「オチ」の2つの単語が合わさった言葉です。お笑いにくわしい人は聞いたことがあるかもしれませんが、それでも「フリオチとは何か?」と問われたら、カンタンには答えられないのではないでしょうか。なんせ「フリオチ」という言葉は辞書にも載っていませんし、「フリオチ」を公式に定義したものなど存在しないからです。実際、テレビ番組の制作現場やお笑い芸人さんのネタ見せの場では、「フリオチが弱い」「フリオチが甘い」「フリオチがよく効いている」といった言葉が飛び交っていますが、誰もがきちんと理解して使っているわけではありません。

フリオチとはそれほどあいまいなものであり、番組の制作スタッフも芸人さんも、経験から学ぶ職人技のようなものと考えているところがあります。そもそも、「フリ」と「オチ」とは何でしょうか?「オチ」についてはよく耳にすることもあるので何となくわかるでしょう。辞書には「落語などで終わりを締めくくる部分」とか、「一般に、話の効果的な結末」という定義が書かれています。要するに、話の結論だと考えてください。では、「フリ」とは何でしょう?これは辞書には載っていません。あえて言うなら、「オチに持っていくまでの過程」「結論へ導くための状況説明」といったところでしょうか。……と言っても、わかりづらいですよね。では、もう少しわかりやすく説明しましょう。▼フリオチとは打ち上げ花火であるピンとこない人は、「打ち上げ花火」を思い浮かべてみてください。打ち上げ花火は導火線に火を点けると、火が線を伝って火薬に引火し、ドーンと花火が打ち上げられます。この「導火線」がフリ、火薬が「オチ」です。導火線(フリ)がしっかりしていれば、火が問題なく火薬(オチ)に引火し、花火(あなたの話)がドーンと打ち上げられ、花火を観ている人(聞き手)を魅了することができます。ところが、導火線(フリ)がしっかりしていないと、火が火薬(オチ)に引火せず、花火(あなたの話)がプスプスと不発状態になり、観客(聞き手)から「え、何それ?」「つまんなーい」という反応をされてしまう。恐怖の〝ドンズベり”状態です。このように、フリオチはおもしろい話をつくるうえで欠かせないもの。言い方を換えれば、おもしろい話は、必ずこの「フリ(導火線)→オチ(火薬)」という手順を踏むことで成り立っているのです。それでは、先ほどのレーガン大統領のスピーチで説明してみましょう。この話のフリは、・大統領になれた理由は9つある・ひとつめは抜群の記憶力そうフッておいて……・2つめで忘れるというオチになっています。「私が大統領になれた理由は9つある」「ひとつめは抜群の記憶力」というフリ(導火線)がしっかりしているからこそ、「2つめで忘れる」というオチ(火薬)に火が点き、ちゃんと花火が成功する。その結果、観客(聞き手)が「おもしろい」と感じるわけです。もし、この話にフリがなかったら、どうなるでしょうか。「私が大統領になれた理由をお話しします!まずは……えっと……何だっけ?」どうでしょう?おもしろさが半減するどころか、何だか忘れっぽい、ただのおバカな人みたいですよね。このように、おもしろく話すためには、「しっかりフッて」→「オチを効かせる」という正しいステップを踏まなければならないのです。▼安齋さんはなぜ七三分けになったのか?といっても、「たまたまレーガン大統領のスピーチがフリ→オチの順序だったんじゃないの?」と思う人がいるかもしれないので、もうひとつ例を挙げてみましょう。イラストレーターの安齋肇さんの話です。企業のキャラクターを描いたり、ミュージシャンのCDジャケットをデザインしたりと多方面で活躍する安齋さんですが、「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」のコーナーでタモリさんの隣に座っている人、と言ったほうがピンとくるかもしれません。安齋さんはマイペースな人で、見た目もそれほど気を遣わないのか、「タモリ倶楽部」にもずっとボサボサの長髪で出演していました。ところがある日、分け目がピッチリとした七三分けで登場したのです。あまりのギャップに驚いたタモリさんが「どうして、いきなりそんな髪型にしたの?」と尋ねました。そのときの安齋さんの答えがこちらです。「僕は(歌手の)プリンスの大ファンなんですけど、理容師さんに『プリンスみたいにしてください』って言ったんですよ。そしたらですね、理容師さんがプリンスを〝皇太子様〟と勘違いして、気づいたら七三分けになっていたんです」安齋さんの話に、タモリさんも大爆笑でした。この話もやはり、「フリ→オチ」という順序を踏んでいます。確認してみると、・理容師さんにプリンスみたいにしてほしいと頼んだそうフッておいて……・理容師さんがプリンスを皇太子様と勘違いして七三分けになったというオチがついています。もしも「理容師さんにプリンスみたいにしてほしいと頼んだ」というフリがないと、「理容師さんが何か勘違いして七三分けになっちゃったんですよ」というように、何でもない普通の話になってしまいますよね。「プリンスみたいにしてほしいと頼んだ」というフリ(導火線)がしっかり効いているからこそ、「皇太子様と間違えられて七三分けになった」というオチ(火薬)に引火して、打ち上げ花火が成功したわけです。私たち放送作家をはじめ、テレビ番組の制作に携わる人たちは、すべてこのフリオチに従って話を構成し、番組を制作しています。だから、デビューしたてのアイドルや、なりゆきで番組に参加することになった素人さんなど、必ずしも話が得意でないような人たちでも、それなりにおもしろく話せるのです。こういう話をすると、「つまりフリオチは専門的な知識ってことでしょう?だったら、それをマスターするなんて無理じゃない?」と思う人がいるかもしれません。安心してください。実は、ちょっとしたコツをつかめば、誰でも使いこなせるようになるのです。では、フリオチのつくり方をお教えしましょう。キーワードは「ネズミ捕り」と「なのに方程式」です。

フリオチをつくろう①「ネズミ捕り」方式▼話の中におけるフリオチの役割とは?話をおもしろくするには、「フリ→オチ」という順序を踏まなければならない。このことは、おわかりいただけたと思います。では、どうすれば「フリオチ」をつくれるのでしょう?フリオチをつくるには、まずこの2つが話の中でどんな役割を果たしているか、知らなければいけません。その手がかりが、キーワードのひとつめ、「ネズミ捕り」です。ネズミ捕りはご存じですよね?車のスピード違反を取り締まるために、植え込みに隠されているあの機械……ではなくて、本物のネズミを捕るための仕掛けのことです。ネズミ捕りには、ネズミを誘い出すために、チーズなどのエサを仕掛けておきます。すると、チーズのニオイに誘われてネズミがそれを取ろうとする。このときネズミは、「おおっ、チーズがある。今日はラッキーかも」と、喜びのあまり、油断しています。しかし、チーズに食いついた瞬間、いきなりワナが発動して捕獲されてしまう……。この「ネズミ捕り」でたとえれば、チーズがフリで、ワナはオチになります。一体、どういうことなのか。例を挙げて見ていきましょう。▼マツコ・デラックスの洋服次の話は、マツコ・デラックスさんが洋服を仕立ててもらったときのエピソードです。「パターンっていうのをつくるのよね、洋服つくるときって。でも、普通の方の洋服っていうのは、そんな2メートル四方の正方形みたいにはならないのよ、パターンが。でも私のは、ほぼ正方形だったみたいで……。(それを見た友人から)『斬新なこたつカバーね』って言われたのよ」「おしゃれイズム」よりこの話もきちんと「フリ→オチ」の順序になっています。それだけではなく、ネズミ捕りのように、フリはチーズ、オチはワナの役割を、それぞれ果たしています。どういうことかというと、この話のフリは、・普通、洋服のパターンは2メートル四方の正方形みたいにはならないというものですが、このフリを聞いた人は、「じゃあマツコさんは、あの体型だから、パターンが2メートル四方の正方形みたいになったのかな」と考えるでしょう。つまりフリは、聞き手に「話の流れからすると、次はこうなるだろう」と、展開を予測させる装置なのです。そう、まるでネズミを誘い出す「チーズ」のように……。一方、この話のオチは、・友人から「斬新なこたつカバーだ」と言われたというものです。「2メートル四方の正方形」どころか「斬新なこたつカバー」だと言われてしまう。オチは、まるでワナにかかったネズミが「やられた!」と思うように、聞き手の想定を裏切るものでした。

▼おもしろい話に不可欠なチーズとワナマツコさんの話のフリとオチが、たまたま「チーズ」と「ワナ」の役割を果たしていたわけではありません。先に挙げた例も、ちゃんと同じ仕掛けになっています。レーガン大統領の話のフリは、・私が大統領になれた理由は9つある!まずひとつめは、抜群の記憶力!でしたが、このフリで「大統領になれた理由は9つもあるのか」「ひとつめは記憶力。なるほど。じゃあ残りの8つは?」と聞き手に想定させておいて、・2つめは……えっと……何だっけ?というオチがつきます。これも、「残りの8つが語られると思いきや、いきなり2つめで忘れる」といった形で聞き手の想定を裏切っています。また、安齋肇さんの話のフリは、・理容師さんにプリンスみたいにしてほしいと頼んだでしたが、このフリで聞き手は、「あれ?髪型が全然違うぞ。ということは理容師さんはプリンスを知らなかったのかな?」と思うはず。このように想定させておいて、用意されているのが、・理容師さんがプリンスを皇太子様と勘違いして七三分けになったというオチでした。思わず「そんな間違いをするなんて!」とツッコミたくなるほど、聞き手の想定を見事に裏切っています。このように、フリオチには、・フリ→オチという順序で進む・フリ:聞き手に「この先、この話は当然こうなるんだろうな」という想定をさせる・オチ:その想定を裏切るような意外な結末を用意するというルールがあります。

こんなふうに言うと、あなたは「聞き手の想定を裏切るオチなんてつくれないよ」と思うかもしれませんが、その心配はいりません。誰でもカンタンにフリオチの効いた話をつくる方法があるのです。その秘密を解く鍵が、2つめのキーワード、「なのに方程式」です。

フリオチをつくろう②「なのに」方程式▼矛盾した内容を接続する「なのに」「」、。たとえば、「彼女は約束を破ったことなんて一度もなかった。なのに、電話してこなかったんだよ」とか、「彼ったら、『残業だから行けない』って言ってたのに、来てくれたの」というふうに使っていると思います。この例を見てもわかるように、「なのに」という言葉の前後では、矛盾した内容が述べられます。例で挙げたセリフで見てみると、前:彼女は約束を破ったことはなかった+(なのに)後:電話をしてこなかった前:彼は「残業だから行けない」と言っていた+(なのに)後:来てくれたということです。実はフリとオチは、この「なのに」を使うことでカンタンにつくり出すことができます。なぜなら、フリオチも「なのに」と同じ構造でできているからです。どういうことでしょうか?これまでに登場した例で説明すると、こうです。◎レーガン大統領の話【フリ】私が大統領になれた理由は9つある。ひとつめは、抜群の記憶力+(なのに)【オチ】2つめで忘れる◎安齋肇さんの話【フリ】理容師さんにプリンスみたいにしてほしいと頼んだ+(なのに)【オチ】理容師さんがプリンスを皇太子様と勘違いして七三分けになった◎マツコ・デラックスさんの話【フリ】普通、洋服のパターンは2メートル四方の正方形にはならない+(なのに)【オチ】(正方形どころか)斬新なこたつカバーみたいだと言われた「なのに」を軸にして、その前(フリ)と後(オチ)で矛盾した内容が述べられていることがよくわかります。では、どうして「フリオチが効いたおもしろい話」は、そういう構造になっているのでしょうか?その理由を考えるには、もう一度フリとオチの役割を思い出してください。聞き手に「この先、この話はこうなるだろう」と想定させるのがフリ、その想定を裏切る結末がオチでした。ということは、聞き手の想定を裏切るには、オチがフリとはまったく逆、つまり矛盾した内容になっていればいい。だからフリオチが効いた話は、矛盾した内容が「なのに」で接続されるという構造になっているのです。これが2つめのキーワード、「なのに方程式」です。フリオチが効いた話はすべてこの構造に当てはまっているのですから、「なのに方程式」を使えば、誰でもおもしろい話をつくれます。ただ、それには少しばかりトレーニングが必要です。

フリオチをつくろう③3ステップでおもしろい話をつくるこれまでの内容を踏まえて、3段階でフリオチのある話をつくってみましょう。▼ステップ①話したいことを見つけるまず「あなたが話したいこと」を思い浮かべてください。どんな話題をチョイスしたら聞き手が共感しやすく、おもしろく感じるかは第2章で学びましたね。思い浮かばない人のために、「ナサバナ法」を使って例を挙げておきましょう。《A》「目覚まし時計が鳴らなくて大事な会議に遅刻してしまった」《B》「彼女に送ろうとした〝愛してる〟というメールを部下に送ってしまった」《C》「先輩の悪口を話していたら本人が後ろにいた」トレーニングなので、あえて誰もが経験するような情けない話を挙げましたが、こんなベタな話でも、フリオチをつければ十分におもしろい話になります。▼ステップ②「なのに方程式」に当てはめる「なのに方程式」に当てはめるには、まずオチから考えます。では、例に挙げた話のオチは、どうなるでしょうか。《A》「目覚まし時計が鳴らなくて大事な会議に遅刻してしまった」《B》「彼女に送ろうとした〝愛してる〟というメールを部下に送ってしまった」《C》「先輩の悪口を話していたら本人が後ろにいた」あれ?そのままですね。そうなんです。人が「このネタを誰かに話そう」と思うとき、真っ先に思いつくのはオチなのです。これは、もちろん「情けない話」に限ったことではありません。「階段の上から転がってきたおばあさんを受け止めた」「怒りを抑えられなくて上司を殴ってしまった」「すごい美人に逆ナンされた」などなど……たいていの話はオチからスタートするのです。決してフリから思いつく人はいません。実際、あなたがステップ①で思い浮かべたのも、オチだったのではないでしょうか。そう考えると、聞き手に「それで?」というリアクションをされる人の何がいけないのか、わかりますよね?そう、フリをつくる前に、オチを話してしまうのです。誰かに話をするときには、先にオチを口にしてはいけません。では、次にフリをつくってみましょう。フリは「なのに方程式」に従って、オチと矛盾する内容にするのがポイントでした。たとえば、《A》【オチ(盾)】目覚まし時計が鳴らなくて大事な会議に遅刻してしまった↑↓【フリ(矛)】寝る前に目覚まし時計を10個用意しておいた《B》【オチ(盾)】彼女に送ろうとした〝愛してる〟というメールを部下に送ってしまった↑↓【フリ(矛)】自分は会社でいつも怒ってばかりいる《C》【オチ(盾)】先輩の悪口を話していたら本人が後ろにいた↑↓【フリ(矛)】先輩に「人の陰口を言う人は信用できません」と言ったことがある

となります。どの話もフリとオチがうまく矛盾していますね。このように、オチとは正反対のことをフリに持ってくればいいのです。ただし、ウソはいけません。これはあくまでも例なので、わかりやすいフリになっていますが、ウソのフリを認めてしまえば何でもアリになってしまいます。ウソにならない範囲で、オチとは真逆のことが言えないか、よく考えてみてください。たとえば、あなたが犬に噛まれたとしましょう。ならば、「自分は大の犬好きだ」「人に恨みを買うようなことはない」「日頃から部下にリスク管理の大事さを説いている」「人からよく用心深いと言われる」など、オチと矛盾するような要素をあなた自身から探し出し、それをいくらか膨らませてフリにすればいいのです。▼ステップ③フリ→オチの順に並べ替えるこうしてフリができたら、あとはフリ→オチの順に並べればいいだけです。並べ替えて、会話文にするとこんな感じになります。《A》「昨日、絶対に遅刻しないように、目覚まし時計を10個用意して寝たんだ。なのに、今朝、その目覚ましが全部鳴らなくて、大事な会議に遅刻しちゃったんだよ」《B》「オレ、会社ではいつも怒っているから、怖い人だと思われてるみたいなんだ。なのに、彼女に送るはずだった〝愛してる〟っていうメールを部下に送っちゃったんだよね」《C》「先輩に『人の陰口を言う人は信用できません」って言ったことがあるんだよ。なのに、昨日、その先輩の悪口を言っていたら、後ろに本人がいたんだ」どうでしょう?オチだけを話すよりも、ずっとおもしろい話になりましたね。このように、①:話したいことを見つける②:「なのに方程式」に当てはめる③:フリ→オチの順に並べ替えるという3つのステップを踏むだけで、あなたもフリオチが効いた話がつくれるようになるのです。慣れないうちは、紙に書いてフリオチを組み立ててみるといいかもしれません。そうしたトレーニングを繰り返すうちに、英語の上手な人がいちいち文法を意識せずに話せるようになるのと同じように、フリオチを意識することなく、おもしろい話ができるようになるはずです。

世界はすべて「フリオチ」でできている▼「おもしろさ」はフリオチで説明できるここまで、おもしろく話すために欠かせない「フリオチ」という考え方を学んできました。私は、読者のみなさんには、フリオチの効いた話ができるようになるだけでなく、フリオチという考え方そのものを理解してほしいと願っています。なぜなら、「フリオチ」の考え方が理解できれば、世界の見方が変わるからです。「話し方」に関する内容からは多少脱線することになりますが、この点について少しふれておきたいと思います。先ほど、おもしろい話は「フリオチ」が効いていると言いましたが、実は話だけでなく、世界中のおもしろいと思われるコンテンツは、すべて「フリオチ」で成り立っています。だから「フリオチ」を理解すれば世界の見方が一変するというわけです。……といっても、まだピンときませんよね。それでは、例を挙げて解説しましょう。たとえば、ドラマ「半沢直樹」をご存じでしょうか?堺雅人演じる銀行マン・半沢直樹が、銀行という巨大組織の不正に立ち向かうというストーリーで、視聴率40%超えの大ヒットを記録しました。さて、あなたはこのドラマをおもしろいと感じたでしょうか?おもしろいと感じたとしたら、それはどうしてでしょう?実はこの半沢直樹のおもしろさも「フリオチ」によって成り立っています。これまでと同じように、「フリオチ」の図式に当てはめてみると……【フリ(矛)】上司が部下である半沢直樹を徹底的にイジメる+(なのに)【オチ(盾)】半沢直樹が上司に倍返しするという構造になっているのがわかります。つまり、話し方において、フリがしっかり効いていれば効いているほど、オチがバシッと決まって話がおもしろくなるように、憎たらしい上司に半沢がコテンパンにイジメられればイジメられるほど(フリが効けば効くほど)、半沢が上司に倍返しするオチが決まって、おもしろく感じるわけです。これは全体の構成の話ですが、1つひとつのシーンにおいても、たとえば、【フリ(矛)】半沢が大阪支店の問題を解決し、東京本店に栄転する+(なのに)【オチ(盾)】本店で大和田常務にイジメられるというように、登場人物が悲劇に陥るシーン(オチ)の前には必ず幸せなシーン(フリ)が、登場人物が何かをやり遂げるシーン(オチ)の前には必ず苦労しているシーン(フリ)が組み込まれているのです。半沢直樹のみならず、すべてのドラマは、全体的なフリオチの構成と合わせて、細かいフリオチのシーンが連続することによって成り立っています。ドラマを観慣れている人なら、登場人物の幸せなシーンが出てくると、「ああ、この人物にはこのあと悲劇が待っているんだろうなあ」と予測できてしまうのではないでしょうか。ドラマだけが、特別にそうした構造になっているのではありません。すべての優れたエンターテインメント・コンテンツは、このフリオチの構造によって成り立っています。試しに、他のコンテンツにこの図式を当てはめてみましょう。●テレビ番組「ゴチバトル」(「ぐるぐるナインティナイン」の人気コーナー。芸能人が高級料理店で食事をし、その料金を予想して一番外した人が全員分の食事代を払う)【フリ(矛)】人気芸能人+(なのに)【オチ(盾)】ガチでおごる●イベント「AKB総選挙」(AKBのメンバーがファンの投票で順位づけされる、年に一度のイベント)【フリ(矛)】アイドルグループ+(なのに)

【オチ(盾)】ファンの投票によって順位づけされる●映画「レオン」(プロの殺し屋レオンと少女マチルダの物語)【フリ(矛)】非情なプロの殺し屋+(なのに)【オチ(盾)】少女マチルダに恋をする●マンガ(アニメ)「ドラえもん」(22世紀の未来からやってきたネコ型ロボット・ドラえもんと、さえない小学生・野比のび太の物語)【フリ(矛)】何をやってもダメなのび太が問題を引き起こす+(なのに)【オチ(盾)】ドラえもんが未来の道具で解決するというように、どれも「フリオチ」の構造によって成り立っているのがわかります。最近では、「ビジュアル系バンド」(フリ)なのに、「楽器を演奏しない」(オチ)ゴールデンボンバーのように、音楽にもフリオチが導入されるようになりました。あなたがおもしろいと思うコンテンツも、そのしくみをよくよく見てみると、実は「フリオチ」の構造が成立していることがわかると思います。それにしても、どうしておもしろいコンテンツはフリオチの構造になっているのでしょうか?それは、おもしろい話をつくるときと同様、フリオチはコンテンツをつくる際の基本構造であり、そこにおもしろさの〝本質〟があるからです。だから、フリオチが理解できれば、そのコンテンツがおもしろいかどうかという本質が見極められるようになります。私は、読者のみなさんに、フリオチの考え方を理解してコンテンツの本質を見極められる人になってほしいと願っています。今、世の中には、膨大な数のコンテンツがあふれ、それと同じくらい間違った批評があふれています。それに多くのユーザーが惑わされているために、本来、もっと評価されて然るべき優れたコンテンツがそれほど人気にならなかったり、人気を得るキッカケをつかめなかったりしています。こうした状況が続けば、今後、良質なコンテンツは生まれません。コンテンツがおもしろいかどうかを決定するのは、ユーザーです。ということは、本質を見極められるレベルの高いユーザーが増えれば増えるほど、レベルの高いコンテンツが生み出されていくことになります。近い将来、放送と通信(インターネット)の境界線は消失し、世界中でコンテンツの需要が高まっていきます。そうした時代に日本のコンテンツが世界と戦っていけるかどうか、その鍵を握るのは、日本のユーザーの質なのです。日本のコンテンツ・ビジネスの未来のために、私たち1人ひとりが、自分の目でコンテンツの本質を見極められるようになりましょう。

もっと話の組み立てがうまくなるテクニック①アバン法▼番組冒頭で見どころを伝えるアバンここまで「フリオチ」について学んできましたが、実はテレビ番組づくりのノウハウを話し方に応用できる例は他にもあります。そのひとつが「アバン」です。一般には耳なじみのない言葉でしょうが、テレビ制作に関わる人間なら誰でも知っているという、基本的な用語です。「アバン」とはフランス語と英語の造語「アバンタイトル」を略したものですが、これは番組が始まる直前に流れる、見どころVTRのことです。たとえば、「今日の◯◯は、なんと??が登場!さらに後半では△△も参戦で□□の真相を語ります!」こんなナレーションとともに、続きが観たくなるようなシーンがダイジェストで流れることがありますよね?あれです。テレビは、通常の番組で30分から1時間、情報番組や特別番組になると2~3時間と長時間に及びます。そこで、番組の中盤や後半にも観ていただきたい見せ場があるということを、本の目次のようにして冒頭で伝えるわけです。あなたの話が少し長くなりそうなときには、この「アバン」のテクニックが応用できるでしょう。話は音声によって伝達されます。ですから、フリから順に話をされると、聞き手は話し手がこれからどんな話をしようとしているのか、最後までわかりません。そこで、話の冒頭に「アバン」を入れて、あらかじめ聞き手の心をグッとつかんでおこうというわけです。▼「○○の話なんですけど法」で見出しをつくる話の冒頭にアバンを入れるときには、「◯◯の話なんですけど法」を使います。これは、「浪速のエビス顔芸人」の異名を持つ矢野・兵動の兵動大樹さんがよく用いる手法です。たとえば兵動さんは、話の本題に入る前に、「僕はダイエットしては太って、ダイエットしては太って、今、マックス太ってるんですけど……」「家に電話がかかってきて、受話器を取ったら、『おまえか、コラッ!』って言われたんですけど……」というように、これからどんな話をするのかを、「◯◯の話なんですけど……」という「見出し」にしてから話し始めます。聞き手としては、これによって話の概要が理解できますし、同時に、「ダイエットのリバウンドを繰り返してどうなったんだろう?」「いきなりそんな電話がかかってきたのは、なぜだろう?」と、その発言があとの展開にどう関係してくるのか、まるでドラマの伏線のように気になって、最後まで話を聞きたくなるわけです。このように、テレビ番組が冒頭のアバンで見どころを伝えるのと同じように、話の冒頭に少しヒネリを加えるだけで、聞き手に強い関心を持たせることができます。オチまでのフリがちょっと長くなりそうで心配なときは、このテクニックを使ってみてください。

もっと話の組み立てがうまくなるテクニック②Qカット法▼視聴者の関心をつなぎとめるQカット「Qカット」とは、番組がCMに入る前に、CMが明けた後の見どころを伝えるVTRのことです。「CMのあと、◯◯が登場!」とか「果たして、××はどうなるのか?」という、CM直前のVTRと言えば、みなさんも見覚えがあるでしょう。どうしてあのVTRのことをQカットというのかは定かではありません。おそらく「Cueシート(番組の開始から終了までの構成を秒単位で記載したもの)」のキューと、カメラが回り始めてから止まるまでに撮影された映像を意味するカットを合わせた業界用語だと言われています。Qカットの目的は、まだおもしろい内容が盛りだくさんであることを伝えて、CMが流れている間に視聴者が裏番組に移ってしまうのを防ぐことにあります。この手法は、結婚式のスピーチや会社の記念パーティーでのあいさつなどに取り入れると効果的です。結婚式やパーティーというのは、聞き手が目前の料理や隣の出席者とのおしゃべりなどに目移りしやすいため、話を聞いてもらうにはとても不利な状況です。そこで、テレビ番組と同じようにQカットの手法を取り入れて、少しでも話を聞いてもらおうというわけです。話の中にQカットの手法を取り入れるには、どうすればいいでしょうか?そこで使えるのが、「あの人の話法」です。▼聞き手の視線を集める「あの人の話法」たとえば結婚式のスピーチであれば、話の本題に入る前に、「ここで、壇上にいる新郎の○○君の意外な一面をお教えしましょう。実は……」と、新郎を直接名指ししてみる。あるいは、会社のパーティーであいさつするなら、出席者のひとりを示して、「あそこにいる営業部の◯◯君が、この間、こんなことを言っていました……」と、その場にいる人物に注目させてから、その人のネタを話し始める方法です。この方法には、3つの効果があります。まず、ひとつめは、登場人物の背景を説明する手間が省けるので、話をコンパクトにできるという点。2つめは、登場人物がすぐにわかるので、聞き手が話をイメージしやすくなる点。そして、3つめがもっとも重要で、話し手に「あの人」と明示された人が、話を聞いている最中、あるいは話が終わったあとにどんな表情をするのか、どんなリアクションをするのか気になるので、聞き手は「あの人」から目が離せなくなるという効果です。つまりQカットのように、聞き手が他に目移りするのを防ぐことができる。このように、話の登場人物がその場にいる場合、あらかじめその人を明示するという仕掛けを仕込んでおくことで、こちらの話にきちんと耳を傾けてもらうこ

とができます。聞き手が他に目移りしそうな場で話すときには、ぜひ試してみてください。

もっと話の組み立てがうまくなるテクニック③クエスチョン法▼問いかけることで注意をこちらに向けさせる「クエスチョン法」とは、話題にするテーマについて、まず視聴者(聞き手)に直接問いかける形でスタートすることです。人気番組「ホンマでっか!?TV」では、よくこの手法が使われます。たとえば通常の番組では、テーマを、「今週は洋服の選び方をテーマにお送りします」「今週は現代人の味覚障害をテーマにお送りします」「今週は家の材質をテーマにお送りします」と紹介するところを、「ホンマでっか!?TV」の場合はこのようになります。「そこのアナタ、洋服を買うとき、ちゃんと自分に合ったものを選んでいますか?」「そこのアナタ、昨日食べたお昼ご飯がどんな味だったか覚えていますか?」「そこのアナタ、長生きしたいですか?だとしたら家の材質が大事だって知ってました?」テーマを「質問」の形にして、最初に視聴者に問いかけてからスタートするのですが、こうすると普通の導入よりずっと引きがありますよね。クエスチョン法には、聞き手の注意をこちらに向けさせる効果があります。聞き手はそれまで他人事だと思っていた話題でも、一度問いかけられると「自分が考えなければいけないこと(=自分事)」だと認識して注意を向けるようになります。テレビはユーザーがモニターに集中しているインターネットと違って、視聴者が画面に集中しているとは限りません。多くの人がスマホをいじりながら、食事をしながら、誰かとしゃべりながら、いわゆる「ながら観」で番組に向き合っています。そこで、テレビ番組を制作する側は、視聴者に少しでもテレビ画面に目を向けてもらうために、さまざまな工夫をこらしているのです。▼質問は聞き手を引き込む最上の手段このテクニックは、会議で自分の意見を発表するときや、プレゼンをするときにも有効です。こういう場面では、話し手と聞き手が明確に役割分担されてしまうので、聞き手に回った側は、興味がわかないと真剣に話を聞きません。そこで要所要所に質問を挿入し、聞き手を話に引き込んでいくのです。たとえば、プレゼン資料に「おもしろい話には◯◯と◯◯が不可欠です」という一文を仕込んでおいて、「この◯○に何が入るか、わかりますでしょうか?」といった具合に質問を入れてみる。こうすることで、聞き手にとって「他人事」だった内容が「自分事」に変わるのです。私も何度か大学で講義をしたことがあるのですが、質問をクイズのように織り交ぜることで、聞き手に「参加している」という当事者意識を持たせることができました。もし、自分の話が長くなりそうだなと思ったら、事前に質問をいくつか用意しておくといいかもしれません。質問を活用して話に起伏とリズムをつくり、聞き手の関心を途切れさせないようにしましょう。***以上、この章では、テレビ番組制作における「構成」の考え方を「話の順序立て」に応用する方法を学びました。ここで紹介したテクニックを使えば、自分だけの「おもしろい話」をつくることができます。それを日頃からストックしておけば、日常会話や雑談、スピーチなどで大きな失敗をすることはないでしょう。さて、次章はいよいよ最終ステップです。ちょっとした工夫で、話し方に広がりを持たせる方法をマスターしてください。

第2章、第3章では、テレビ番組制作の現場で使われる「構成」という考え方を、話し方に応用するテクニックを紹介してきました。そして、そのキーワードが「共感」と「フリオチ」でした。これらは、話をおもしろくするための基本中の基本ですが、聞き手をひきつけるテクニックはこれだけではありません。これまでの話を〝料理〟でたとえると、第2章……より多くの人が共感するネタを選ぶ→素材選び第3章……選んだネタを正しい順序で伝える→調理と言えます。誰もが好きな素材を選んで、正しく調理すれば、それなりの料理はできるでしょう。でも、それでは誰がつくっても同じものにならないでしょうか。料理に独自性を出したいなら、ちょっとした「隠し味」を入れる必要があります。それは「話し方」でも同じこと。他の人と差をつけたければ、やはり「隠し味」が必要です。そこで本章では、話し方にアレンジを加える〝スパイス〟的なテクニックを集めてみました。挙げているテクニックは、テレビの世界で活躍している有名人、芸能人からヒントを得たものです。生き残るのが厳しい芸能界で一目置かれている人たちは、基本のネタ選び、フリオチはもちろんのこと、さまざまなテクニックを駆使して話をつくっています。私たちも、そんな彼・彼女らの技術を取り入れてみましょう。何となくつまらなさそうに聞いていた人も、思わず身を乗り出すかもしれません。

 

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