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第3章 命令するような教え方していませんか?

「教える」とは3つの手助け 教えるとは「学習」の手助けであり、大人が学ぶのを、横からそっと手助けするのが「教える」ということです。無理矢理、頭をこじ開けて「こうしなさい」と何かを詰め込むようなやり方ではありません。 では、大人が学ぶってどういうことなのでしょうか。知識や使える技術が増えること、考え方が変わること、色々ありそうです。仮に、「学習 = ○ ○」としたら、何が入るでしょうか。学習 =成長、経験、実践、苦痛などが考えられます。 この本では、大人相手に教える場合、学習 =「獲得」「参加」「変化」と定義します。成長や経験という言葉から「学習 =獲得」はイメージしやすいかもしれませんが、「参加」や「変化」は意外に思ったかもしれません。しかし、「参加」することで経験が積まれ、苦痛という「変化」を乗り越えて学習をしていると考えることもできます。 では、「獲得」「参加」「変化」について詳しく見ていきましょう。獲得する手助けをして知識と技術を教える まず、「獲得」という観点から見ていきましょう。「学習 =獲得」とはどういうことでしょうか。それは、教える相手が知識、技術、態度といったものを「獲得」できれば、学んだと評価されるということです。 一般的に、教えるというときにイメージされるのが、この「獲得」を手助けする教え方です。知識が少ない、技術が足りない、望ましい態度が不足している相手に、教えることで、その不足分の獲得を手助けするのです。 結果的に何かしら獲得しているのであれば、教える方法は問いません。例えば、この本を読んでいる皆さんは、「オトナ相手の教え方」に関する知識を獲得しようとしているのかもしれませんが、教えてくれるのは本であり人ではありません。本やネットが相手だったとしても、足りない分を獲得することが、学習という考え方です。 実際、英語圏では、知識の不足を補うために、手元にマニュアルを置いて作業をさせることを、 Job aids(ジョブ・エイド)と呼び、解決策の一つとしています。読んで字の如く、仕事( job)を手助けする、促進する( aid)という意味があり、不足部分を獲得するための行為だということが分かります。

新しい会社になじんでもらう 2つ目の「学習 =参加」というのは、聞き慣れない考え方かもしれません。何かに参加することが学習であるとは、どういうことなのでしょうか。 分かりやすいのは、中途採用者が新しく別の会社に入るときでしょうか。中途採用者が新しい会社に入ると、前の会社とは違う雰囲気ややり方に戸惑うことがあります。 例えば、私は一般家庭向けの訪問販売会社から、企業向けの営業会社に転職しました。同じ営業だからとそんなに心配していなかったのですが、 2社目で使われている言葉をすぐに使いこなすことができず、営業のやり方も異なる部分が多く、戸惑いを隠せませんでした。結果、しばらくは営業数字が全くつかない状態が続きました。 そんな中、中途採用としての試用期間が終わる 3ヶ月目に、先輩社員や役員から厳しい指摘を受け、「自分は前のやり方にこだわっていたんだ」ということに気づかされました。その後は必死で勉強し、 2社目のやり方に食らいついていこうとしました。周囲の先輩方の指導のお陰で何とか数字もつくようになり、ようやく 2社目の一員になれたかなと感じられたのは、入社して 1年ぐらいだったと思います。そこまで待ってくれた 2社目の皆さんには感謝しています。 このように、戸惑いを感じながらも、中途採用者が新しい会社でもがいているうちに、だんだんと新しい会社になじんでいくようになります。この「なじむ」というのが、ここで言う「参加」のイメージです。周囲からは「あいつも、やっとうちのやり方を学んだな」と評価されるような状態です。 逆に、中途採用者が、いつまでも前の会社のやり方にこだわり、新しい会社になじもうとしないのであれば、周囲からは「あいつは、うちのやり方を知らない」と評価されてしまいます。中途採用者が、新しい会社に徐々になじんでいく =参加していくこと、これが学習であるという考え方です。 もちろん、中途採用者だけでなく、新卒社員、アルバイト、パート、契約社員など、新しい環境に入っていく必要がある人たちには、この「参加」が求められます。よくあるのが「前のやり方にこだわる」「新しいやり方を受け入れようとしない」状態で、それがために周囲から浮いて、なかなかその場になじめない人たちもいます。いつまでも参加できずに周囲から浮いていると、会社の雰囲気が悪くなるだけではなく、新しい仕事も任せてもらえず、仕事もなかなかできるようになりません。 そういう人たちも含め、職場や会社に参加できるよう手助けすることも、教えることなのです。相手が変わってはじめて教えたことになる 3つ目の「学習 =変化」というのは、心理学の観点から見た学習の定義です。教わった人が、何らかの変化を起こせば、その人は「学んだ」と評価されるということです。では、どんな「変化」があるのでしょうか。 知識の量が増える、今までと違う技術が使える、気持ちや態度に変化が見られるなど、様々な変化があるでしょう。最後にさらっと書きましたが「変化が見られる」という一文からも分かるように、変化したかどうかが外から「見られる」ことがポイントになります。つまり、外から観察できる「行動」が変化すれば、学習したと言えるということなのです。 では、相手の行動の変化が外から見えるとは、どういう状態なのでしょうか。それは、相手の「言動」が変わるということです。私たちが教えたことで、相手の「言葉」や「表情」が変わる、「仕事のやり方」が変わるということです。一言で言えば「態度」が変わるといってもよいでしょう。 例えば、今まで態度が悪かった新人が、私たちの指導を通じて、その態度が変わり、朝一番に出社してくる、挨拶の声が大きくなった、周囲に積極的に話しかけている、といった言動を取るならば、その新人が学んだ、つまり言動変容が促進されたといえるでしょう。 教わったことで、その人が今までとは違った行動を取るようになったとすれば、それは皆さんが上手く教える

教えることができた、ということです。 私自身は、この「変化」を手助けすることが、大人相手に教えるときに一番難しいことだと思っています。 自分なりの考えを持ち、プライドもある大人の行動を変化させる、というのは口で言うほど簡単なことではないからです。では、どうすれば、大人の変化を促すことができるのでしょうか。「獲得」「参加」「変化」の具体的な教え方は、この後の章で見ていきましょう。

 

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