第2章展示会への参加
「日本人」ブランドを最大活用する
海外の展示会にいくと、我々が日本人だということだけでひとつのブランドだ、ということを肌で感じていただけると思います。どういうことか、ということを追って説明していきますね。
まず、日本は世界第3位の経済大国ということです。これはアメリカ、中国に次いで第三位です。しかも、上位二か国と日本は人口において大きな開きがあります。この人口比におけるマーケット規模は非常に魅力的だと言えます。
さらに人口自体も多く、約1億3000万人も潜在顧客がいるマーケットです。これは世界11位の数字です。これだけの巨大マーケットですから、誰もが日本市場と取引したいはずです。
また、日本人は金銭的な面で非常に信頼度が高い上に、人間的にも勤勉で、礼儀正しく、嘘をつかない。もちろん支払いも期日を守るし、もめごとを好まず、あまり交渉もしてこない。ですから日本人だといった瞬間に非常に喜ばれるのです。
また、日本製品への信頼も非常に高くメイド・イン・ジャパンといえば、欠陥品の少ない世界最高水準の品質の高級品というイメージが出来上がっています。
海外のバイヤーで日本製品をけなす人はいません。つまり、マーケットの魅力と人種的な魅力を兼ね備えているのです。「日本人」であるというブランド、これを使わないと損なのです。日本人というだけですでに有利な立場にあるのが現状ですから、ぜひとも外に出向いて行って欲しいのです。
日本は「一国だけで完結している孤独な文化圏」と言われています。それだけ国内に何でもあって恵まれた国だ、とも言えるのですが、その恵まれた環境のせいか、外国に出向くことをあまり好まない傾向にあります。
その証拠に、今現在の日本国民全体のパスポート所持率は約24%と世界的にも非常に低い水準にあるのです。この事実には驚くのではないでしょうか。島国ですので、大陸のように気軽に外国に行けない、という問題もあるでしょうし、言葉の問題もあるかもしれません。
日本で十分、とお思いになられている方も多いのではないでしょうか。ただ、世界にひとたび出ていくとまだまだビジネスチャンスに気づかされます。これを活かさない手はないのです。
私のミッションは「日本人の国際競争力、国際的価値を世界ナンバーワン」にすることです。この日本人への信用と日本人の低いパスポート所持率をチャンスと考え、社長様にはぜひとも海外に飛び出して行って欲しいと思っています。
海外展示会の実態を知ることから
国際的な展示会70%から80%は、ヨーロッパで毎年ほぼ同時期に定期的に開催されています。展示会は、一種の「展示会産業」と言われる分野を形作っているのです。そして、その数多くの展示会でも約80%は、ドイツで開かれています。まさに、ドイツは、King of Exibitionと言えます。
そのドイツでも、フランクフルトで開催される世界最大の消費財の展示会「アンビエンテ」は、敷地面積は、圧巻の592,127㎡。皇居がその敷地面積115,000㎡ですから、約5倍の面積を誇っています。
さながらひとつの街を形成していると言っても過言ではないのです。そしてその展示ホールだけでもなんと190,000㎡!東京ドームのグラウンドが13,000㎡ですので、ドームのグラウンドおおよそ15個分です。驚きですね。
出展社数は、世界80ヶ国内外から5000社、来場者は15万人と圧倒的な規模で開催されています。普通に回っても2~3日はかかります。1号館からじっくり見て回ろうと思えば、1週間でも終わらないでしょう。
ですから、まずは会場にある「ホール・プラン」という会場の見取り図をとりましょう。それを、見ながらどこのホールでなにが重点的に展示されているのかを確認して、興味がありそうなことろから見始めていくのがおすすめです。
「ホール・プラン」には、会場全体のレイアウト、各ホール(ビルディング)で出展されているおおまかな商品分野や商品群が記載されています。それを見て、おおまかな攻略法を考えてから、発掘にあたってください。
展示会を選ぶ基準は?
展示会に行くのが最も効率的だということは分かった、ただ実際行くためにはまず何をしたらいいの?とお思いでしょう。ここからは実際に展示会に参加する方法をお伝えしますね。
そもそも、展示会って専門業者しか参加できないんじゃないの?とお思いの社長様、ご安心ください。展示会は事前に登録しさえすれば、だれでも参加できてしまうのです。
登録自体も全く難しくありません。会社名等の必要事項を英語で記入し、入場料を支払うだけなのです。この時点であなたはバイヤー、という立場になることができます。
行きたいけど、一体どういう基準で展示会を選べばいいのか、とお思いでしょう。私としては最も規制が少なく、幅も広い一般生活消費財の展示会からスタートすることをおすすめしております。
展示会規模に関しては最初の場合、なるべく大きな展示会に参加しましょう。規模や感覚をつかんだ後、ご自身の専門分野や好きなことの展示会に参加していくのがいいでしょう。
こうした手順を踏めば行ったけど何も得られなかった、ということがなくなると思います。大きい展示会とは目安として2000社以上の出展者がいるものが該当するでしょう。
このあたりを目安に展示会選びをしてください。展示会の探し方としてはJETROが提供している「JMESSE」というサービスが便利です。
これは世界中あらゆる展示会を網羅しているサイトで、カテゴリーを選択するとそのジャンルの展示会が時系列順に表示されます。
ここには出展社数や来場者数などおおよその情報が載っているので非常に参考になります。その中から行きたい展示会を選び、リンクから飛べば申込みページにつきます。
簡単でしょう?ただ、アジアの展示会で稀にあるのですが、本業が物販等とあまりにもかけ離れている場合、主催者側が「何をしに来るのか?」「参加する展示会を間違えているんじゃないか?」と心配してメールを送ってくる場合があります。
これが来たからと言って参加できないということはないのですがやり取りが面倒な場合、基本的に参加する際は物販、もしくは輸入業というカテゴリーを選択し参加されることをおすすめします。
それ以上、聞かれることはないので先の説明で問題ないのですが、気になるとおっしゃられる方は別な屋号を持つか、もしくは輸入事業部などを表記し、別事業部での新規ビジネスという見せ方にするとすっきりされるかと思います。
参考までに、一般生活消費財の展示会としてはドイツ・フランクフルトで行われる8月の「tendence」、2月の「ambiente」。
フランス・パリで9月と1月に行われる「maisonetobjet」、香港で行われる4月の「ギフトアンドプレミアム」、「ハウスウェアショー」10月の「megashow」などが挙げられます。
その他の業界の展示会については先述した「Jmesse」をご活用ください。これで参加する展示会については問題ないかと思います。
英文の名刺を作ろう!
さらにもう一つ大変重要なアイテムがあります。それは英文の名刺です。英文の名刺なんて作ったことないよ、という社長様のために基本的な名刺の作り方をご説明します。まず、会社名や役職、個人名はもちろん必須ですね。
本業が全く別分野の場合、ホームページを載せてしまうとそれを閲覧された際、メーカー側に誤解や混乱を与えてしまう場合がありますので、基本的には記載しない方が無難でしょう。
もちろん、物販等ですでに何年、何十年と実績のある社長様に関しては大いに載せてそれを自身のアピールポイントにしましょう。
電話番号に関してはごくまれに緊急案件などで電話をしてくる場合があります。語学が堪能な社長様、もしくは社員様がいれば全く問題ありませんが語学に自信がない場合、記載しておかないという手があります。
そして、重要なのがサンプルや商品を送るための住所です。海外のメーカーは確認せずに記載している住所にサンプルを送ってきたりすることがあります。
たとえば、自宅がオフィスという場合には前もって届けてほしい住所を伝えるか、あらかじめ倉庫の住所を記載しておきましょう。これを記載しなければ一瞬で怪しい業者へ様変わりします。そして、最も大事なのがメールアドレスです。
これが記載していないと相手は名刺をもらったところでコンタクト先がわからず、そのまま機会を失ってしまうことにもなりかねません。必ず記載するようにしましょう。
この場合もヤフーやGmailなどのフリーメールではなく、独自ドメインの会社名が入ったものがマストです。なぜか?相手の立場に立ってみた場合にフリーメールが記載されていると明らかに個人レベル、もしくはそれに準ずるものに見えてしまいます。
つまり取引におけるもっとも重要な要素である信用に欠けてしまうからです。事実はそうでなかったとしても、第一印象でそう思われてしまっては若干の違和感をぬぐいきれなくなってしまいます。
せっかくの出会いも台無しになってしまう恐れがあります。こういった場合に大切なことは相手からどう見えているか、です。これを常に念頭に置きながら何事にもあたるのが大切になってきます。
まずはサンプルオーダーから始める
さて、展示会に参加する意義はお分かりいただけたと思います。では、行った先で何をすべきか?これも当然の疑問ですね。
それでは、まず展示会でいきなりやってはいけないことからお話ししましょう。展示会でやってはいけないこと、それは「いきなり注文をすること。」です。え、注文しないの?とお思いでしょう。そうなのです、いきなり注文するのは失敗のもとなのです。
ある商品を気に入って、ぜひ日本に輸入したいと思っても、それはあくまで主観であってその商品は現段階で日本市場に受け入れられるかどうか、わからないわけですね。
その状態でオーダーをしてしまうとそれが受け入れられなかった場合、それがすべて不良在庫となってしまいます。
こういったリスクは極力避けるべきなのです。このミスは輸入を始めたばかりの方が犯しがちなミスなのです。現に私も最初のころにやりました(笑)。
では、まず何をすべきなのか?それはサンプルオーダーです。まず、数個のサンプルを輸入し、テストマーケティングをすることです。この反応を見ていける、と踏んだ場合のみ本オーダーに踏み切るのです。これでリスクを最小限に抑えることが可能となるのです。
テストマーケティングについて詳しくは後述しますが、すでに販路をお持ちであればそのお客さんに見せるのが最も手っ取り早いです。
これであれば、即受注につながる可能性もあるのです。また、サンプルがあれば実際の品質や機能の確認ができ、それを手元に置いておくことで後々のオーダーの際の商品品質の照合にも役立つのです。
売る側も最初はサンプルオーダーが当然だと思っているので何の違和感もなく、商談が進むはずです。とはいえ、「商談は英語でしょう、英語に自信がないよ」とおっしゃる社長様。ご安心ください。最悪でも、やり取りはメールでできてしまうのです。
サンプルのオーダーをする、という注文行為さえしてしまえば相手はあなたをお客様として認識しますので、その後の詳細なやり取りについてはメールでやればいいのです。
オーダーをするとinvoice(インボイス)と呼ばれる請求書が届きます(巻末のサンプル参照)。極論を言ってしまえばそれを持って銀行に行き。海外送金をすればサンプルは届いてしまうのです。輸送の手続きはこちらでする場合もあるのでご注意ください。
また、海外送金については大きな支店などでしか取り扱っていない場合もあるので自社の取引銀行に事前に確認しておくのがいいでしょう。
そもそも、サンプルって何に使うの?とお思いになったかと思われます。サンプルは、お客様の声を聞くためのツールであり、テストマーケティングで利用するために利用します。
どんなにあなたが気に入っていても、誰も買ってくれなければ、その商品は不良在庫になってしまいます。本格的にオーダーを始める前に品質のチェックと市場性を確かめる双方の意味合いにプラスして、メーカー側にお客として認識してもらう方法でもあるのです。
これも極端に言ってしまえば、見本市に行って、輸入したいと思う商品を見つけたら、挨拶をして値段を聞き、サンプルを注文します。細かな交渉は日本に帰ってからメール、という形にしてしまえばいいのです。
取引相手との人間関係を最優先する!
展示会ですべきことはわかった、では実際どう回ればいいのか?という点にもお答えしていきましょう。一般生活消費財の見本市であればリビング、ダイニング、インテリア、エクステリア……など、大体のジャンルごとに区分けされています。
マップを見て興味のあるジャンルを選び、その建物を隅から隅までグルっと回ります。その中で興味のある商品やブースがあればブース番号を書き、リストアップしておきます。
一通り、見終えたところで実際にチェックしたブースに入っていきます。そこで聞くべきなのは「価格」や「納期」、「支払い条件」等です。
難しければ「価格」だけ確認できれば最悪でもOKです。ただ、このほかに最も確認すべきことがあります。それは、取引相手の印象です。これから長くパートナーシップを続けていく相手です。
人間性やコミュニケーションの齟齬があればビジネスも同様にうまくいかないものです。「価格」や「納期」などは交渉次第で何とかなる場合も多いですが、人間関係だけは何ともしがたいのです。
また、感じのいい相手というのは往々にしてオーナー、もしくは決裁権者であることが多いのです。ここと直接つながることでその後の商談もスムーズに進むのです。
この人間関係の部分を最優先にし、あとは交渉という形がベストです。人間関係さえできてしまえば、相手もむちゃくちゃなことはいってきません。人間同士ですからね。
ここをつかんでしまうことがビジネスの成功のコツの一つです。また、「急いては事をし損ずる」という言葉があるように結果をすぐに求めすぎないことも大事です。
展示会場では気分が高揚し、新鮮なモノを見続けているので気持ちが舞い上がってしまっています。その瞬間はいい!と思っても冷静に見る時間も必要です。
冷静になってみると日本にあった、類似品が他のブースにもあった、値段が合わなかった、ということはよくあるのです。そのため、いくつか候補を挙げておき、同時に商談しておく必要があるのです。
後述しますが、私は基本的に日本での「独占販売権」を取得する、という強力な方法をとっています。早くしないと誰かに取られてしまうのではないか、と思う気持ちもわかりますが、そこで焦るといい結果を生みません。
大枠で合意をとった上でテストマーケティングをし、いけると踏んだ場合のみ、本契約をするのです。そうすれば、お互いにリスクが少なく済むのです。
あなたの商品を真似されない技とは?
輸入ビジネスは時間差ビジネスという理論からすると、未来からの商品、つまり欧米からの商品は、機能やデザイン、コンセプトが独創的なので、ヒットすると真似される宿命にあります。
そういった前提に立って、発売前に対策を打っておきましょう。
1.独占販売権を取得する
これが最も強力な方法です。これがなければ、物真似どころか同じ商品がライバル社に販売される恐れがあります。可能な限りこの権利を獲得する交渉をしましょう。交渉のコツについては第5章で詳しく説明します。
2.特許権、商標権、意匠権などの知的財産権を登録する
海外のメーカーの持つ各権利を日本の特許庁へ出願、登録してほしい旨をメーカーに対し、依頼する方法があります。これによって類似商品の販売を禁止、防止できたり、もしくは出回るのを遅れさせることができます。
ただ、ここで注意していただきたいのは自分自身で出願しないことです。あくまで、こういった権利はメーカーのものであり、あなた自身の権利ではありません。
これを勝手に出願してしまうと後でもめる原因となりますので、あくまでメーカー主導で行ってもらうようにしましょう。あなたが海外から新商品を輸入する段階で事前に意匠権等を調べておくと・安全に商品の販売活動ができる。
- 商標権侵害・意匠権侵害と言われて、販売機会を逸することを回避できる。
- 第三者との無用・無益な争いやその心配を回避できる。
- 競合他社に先に商標権等登録をされることで生じる、販売差し止めを防ぐことができる。
上記のことなどが可能となります。
また、輸入前に事前調査しておくことで、こういった権利関係に関し、メーカーへ様々なアドバイスもすることが可能になります。こうした改良案等を助言することでメーカーとの信頼関係も築くことが可能となるのです。
相手に売るのは「信頼」と「価値」私は常々、「輸入ビジネスとは商品を介した人間関係の構築だ。」ということを皆さんにお伝えしています。BtoBで商品を選ぶ側、つまり小売店のバイヤーにとって最も大事なのはこれでなければならない理由なのです。
今の時代、それでなければならない理由、つまり他商品に対する差別的優位性がない商品というのは販売力が弱くなりがちです。これを探すことがビジネスのキモとなるのですが、その一つの解決策となり得る事柄、それが実は「人間関係」なのです。
「あなた」という人に魅力を感じてもらう、「あなた」のセンスに信頼を置いてもらう、というのが最も商品を売りやすくする方法なのです。
それさえできてしまえば商品そのものよりも「あなた」から商品が買いたい、という気持ちにさせることができるのです。すべてのお客様が求めているのは商品そのものではない、ということです。では何でしょうか?ズバリ、あなたとの「提携」なのです。
ということは、つまり、究極、商品は何でもいいということなのです。この部分は覚えておいて下さいね。差別的優位性を伝えられる商品を選ぶとはいえ、「商品力がないとその土俵にも立てないんじゃないか?」という社長様のために商品選びのヒントとなる考え方をお伝えしたいと思います。
品質がいい、価格が安い、というのは売りになりません。まず、いいものは売れるとお考えの方は多いかと思います。ただ、本当にそうでしょうか。日本の技術力は世界一だと言われています。
ですが、その高い技術力が見つけられないまま、潰れてしまっている町工場が非常に多いのはご存知でしょう。もはや品質がいいのは当たり前になっているのです。
ですから、そこよりもその商品にはどういう魅力があるのかということを伝えなければならないのです。先ほどもお伝えした「差別的優位性」、これをうまく伝えられる商品を選ぶことが重要なのです。質がいいかどうかは問題ではないのです。また、価格が安いというのも売りにはなりません。
価格が安い商品というのはたくさんあります、下を見れば見るほど無限にあるのです。そこと勝負しようとして、中途半端に価格を下げると価格の安さも中途半端、商品の魅力も中途半端なものになってしまいます。
さらには利益も減少、経営の圧迫と全くいいことがありません。高くても売れる、高いから欲しい、というような商品を選ぶことがコツと言えます。
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