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第2章フィードバックの基本モデル5ステップで実践するフィードバック

目次

第2章フィードバックの基本モデル5ステップで実践するフィードバック

フィードバックの基本的な進め方とは?>基本の5ステップ

「フィードバックって、要は厳しく言えばいいってこと?」「実際、フィードバックを始めるのは不安……」──そんな皆さんのために、第2章ではフィードバックの具体的なやり方についてお伝えしていくことにしましょう。

フィードバックする前から、フィードバックは始まっている!?フィードバックはパワフルな部下育成法ではありますが、そのやり方を間違ってしまうと、部下のパフォーマンスの向上にはつながりません。

フィードバックが成功するかしないかは、フィードバックの受け手の心理状態に強く依存することが知られていますが、今までそれに関する学術知見に基づく書籍は日本にはほとんど存在していませんでした*7。

効果的なフィードバックをするためには、次のステップを踏むことをおすすめします。

【事前準備】フィードバックをする前に情報収集を行う

【実践】フィードバックをする信頼感の確保~雑談等で、相手から信頼感を得る

事実通知~鏡のように情報を通知する

問題行動の腹落とし~対話を通して、現状と目標のギャップを明確にする

振り返り支援~真の原因を突き止め、未来の行動計画をつくる

期待通知~自己効力感を高める【事後フォロー】事後にフォローアップする

スタマイズしたり、省略していただいても結構です。

まとめ

・フィードバックを成功させるには5つのステップがある*

【事前準備編】フィードバック前の情報収集>SBI情報を集めなければ、的確なフィードバックはできない

的はずれなフィードバックをされれば、部下はまともに話を聞いてはくれません。フィードバックには、事前の情報収集が欠かせません。

「事前準備」なきフィードバックは、「的を絞らず銃を乱射」するようなものです。事前準備で把握したい情報は「SBI」のセットです。

SBI情報とは何か?効果的なフィードバックのためにまっさきに必要になることは、「フィードバックの前に情報収集を行う」ことです。

情報収集を「観察」という概念で表すならば、「良きフィードバックは、良き観察から始まる」とまとめることができます。

そして「良きリーダーシップもまた、良き観察から始まる」のです。

経験の浅いマネジャーの中には、フィードバックということになると、いきなり部下をひっつかまえて、フィードバックをしてしまう人がいますが、ほとんどの場合、失敗します。

なぜなら、部下に刺さるようなフィードバックをするためには、「できるだけ具体的に、部下の問題行動を指摘すること」が必要だからです。

フィードバックは思いつきではできません。また、フィードバックはなんとなくもできません。そのためには事前にしっかりとした「観察」や「情報収集」を行うことが必須です。

たとえば、あまり積極的に営業に向かわない部下に、「最近、主体性がないんじゃないか?」「もっと熱くなれよ!」などというフィードバックをする人がいますが、こんな曖昧模糊としたことをいくら言われても、相手の問題行動が良くなることはありません。

部下からすれば、「主体性がない」とか「熱くなっていない」とか曖昧なことを言われても、何を改善して良いかわからないのです。

自分のどの行動がどう問題なのかが具体的に見えず、何を改善すべきなのかがまったくわからないからです。かえって上司への反感が増すだけです。

部下に納得してもらうためには、問題のある行動を「具体的な行動」にかみ砕いて伝える必要があります。

そうしたときに参考になるのが「SBI情報」という考え方です。

SBI情報とは、「Situation(どのような状況で、どんなときに問題であったか)」「Behavior(どんな行動が問題であったか)」「Impact(問題行動がどんな影響をもたらしたのか)」に関する一揃いの部下についての情報のことで、SBIとはそれぞれの頭文字をとったものです。

シチュエーション、ビヘイビア、インパクトを集めるでは、より具体的に、どのような情報を集めれば良いのかを見ていきましょう。

先ほど述べたように、マネジャーが事前に部下に関して把握しておきたい情報は「SBI情報」です。

・シチュエーション(どのような状況で、どんな状況のときに)

・ビヘイビア(部下のどんな振る舞い・行動が)

・インパクト(どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか。何が良かったのか)

この3点の情報を集めて、具体的に伝えることではじめて、相手はあなたの言いたいことを理解してくれます。

たとえば、

  • A社のプロジェクトを担当してもらったけれども(=シチュエーション)
  • 君のスケジュール管理に不備があったことで(=ビヘイビア)
  • 納期が1週間も遅れてしまったようだね(=インパクト)といった具合です。

前述したような「やる気」や「熱さ」のことについて、フィードバックをするならば、

  • ここ半年の営業実績の件だけど(=シチュエーション)
  • 電話でのアポイント件数が1日平均10件に達していないようだね(=ビヘイビア)
  • 営業実績が前年比で4割下がってしまっているよ(=インパクト)

といった情報を集めておくことで、部下のどの行動が問題なのかを具体的に指摘することができます。

こう言えば、部下はどの行動を改善すべきなのかがわかるというわけです。

また、SBI情報の収集にはポジティブな情報もネガティブな情報も両方含まれます。ポジティブにフィードバックする場合は、以下の通りです。

  • この2カ月ほど君の営業の様子を見ていたけれども(=シチュエーション)
  • タイミング良くクロージングに持っていって成約を取りつけているね(=ビヘイビア)
  • このままいけば、今期の営業成績は130%くらいになりそうだね(=インパクト)

以上のような客観的データは、会社のデータベースを見れば収集できますが、それだけでは足りません。

日頃の行動を観察して、リアルな情報も集めておくと、話が単なる印象論ではなくなり、説得力が生まれます。

忙しい中、さらに手間が増えるかもしれませんが、時間を見つけて、部下の行動をそれとなく、徹底的に観察しましょう。

観察するときには、主観を入れない部下を観察し、SBI情報を集めるときに、大切なことが2つあります。

1つ目は、観察する段階では、上司の主観や解釈や評価をなるべく排して、行動の観察に徹することです。

この段階で、上司の主観や解釈や評価を入れてしまうと、事実に対する認識が曲がってしまいます。

すると、部下に伝えたときにも、その主観が入ってきてしまい、部下がなかなか事実を受け入れられません。

たとえば、先ほどのケースで言うと、「ここ半年の営業実績の件だけど、俺は残念だよ(=シチュエーション)。

電話でのアポイント件数が1日平均10件に達していないって、ありえないだろ(=ビヘイビア)。

営業実績が前年比で4割下がってしまっているよ、どうしてくれるんだ(=インパクト)」といった具合に、事実として提示しなければならない部分の合間に、上司の「主観」が入り込んできてしまうわけです。

すると、部下は、「ありえないってなんだよ」「どうしてくれるもこうもないよ」などと、主観の部分ばかりが気になってしまいます。

それを防ぐためにも、この段階では、なるべく主観を排して事実を収集することに徹していくと良いと思います。

2つ目は、なるべく多くのSBI情報を収集することです。一つのシチュエーションだけでなく、いくつかのシチュエーションについて、情報を集めておくということです。

このように、SBI情報はたくさん集めるほど、部下の問題行動について多角的に検証することができ、フィードバックをするときの説得力が増します。

マネジャーによっては、自分だけではなく、部下の周囲にいる第三者にヒアリングを重ねて、さまざまな人の視点からSBI情報を仕入れる人もいます。

多角的な情報収集のことを「トライアンギュレーション:Triangulation(三角測量)」と言いますが、これによってより精緻な情報を集めることができます。

一般に、SBI情報を集めるためには、日頃の観察の他、「1on1」と呼ばれる短時間の面談を週1回(もしくは隔週1回)程度行うことをおすすめします。

「1on1」のやり方については、第5章で詳しく解説します。

まとめ

  • いきなりフィードバックをせずに、情報収集からスタートする
  • 情報収集のポイントは「SBI情報」

なるべく具体的に、行動レベルの情報を集める・SBI情報はなるべく多く集め、客観的に見ることを忘れない

【実践編】ステップ1:スタートの数分間で成否は決まる>フィードバック開始前のルール

「どこで行えば良いか」「最初に何を話すべきか」……ついつい戸惑いがちなフィードバックの最初のステップについて、緊張しすぎないように予習しておきましょう。

フィードバックで重要なのは「誰に言われるか」

SBI情報を集めて、フィードバックをする内容がまとまったら、いよいよフィードバックを行います。フィードバックで最も重要なことの一つは、部下に信頼してもらうことです。

フィードバックがうまくいくかどうかは、「何を言うか」もさることながら、「誰に言われるか」が非常に重要です。

相手に対してリスペクトを持って接しなければ、信頼感を得られず、話に耳を傾けてもらえません。

フィードバックが成功するためには、たとえ耳の痛い話であっても受け入れることのできる「感情の安定性」が大切なのです*8。

仮に内心は部下に腹を立てていたとしても、相手の成長を願い、相手をリスペクトする態度で臨みましょう。

フィードバックは密閉性の高い空間で行うフィードバックを行う場所は、個室がベストです。

一般にフィードバックは、ポジティブなことに加えて、耳の痛いことを通知する場合がほとんどです。

厳しいことを言われているのを他の人に聞かれるのは誰でもイヤですから、他の人に話を聞かれない環境を選ぶのが鉄則です。そうすれば、部下も安心します。密閉性の高い空間に入ったら、席に部下を誘導しましょう。

席の座り方については、机を挟んで面と向かって座ることを好む方と、部下と斜めの位置関係で座ることを好む方がいます。

これは単なる好みの問題かと思いますが、後者の方がフレンドリーに話せる傾向はあるように思います。

もちろん、フレンドリーになると言っても、これから行われるのはフィードバックです。

しっかりと相手と向き合い、目を見て話をすることが求められるということは、心に留めておいてください。言いにくいことを話すときほど、相手の目を見て話しましょう。

雑談から始めて、緊張を解きほぐす上司に呼び出されれば、部下もなんとなく厳しい指摘を受けることを察知して、緊張します。

緊張感がないのも問題ですが、ありすぎると話が頭に入っていかないことがあります。ですから、最初は部下の趣味などの雑談をしたり、「最近どう?」といった近況報告を聞いたりすることから始めましょう。

こうすることで、部下の緊張を解きほぐすことができますし、「部下に対して関心を持っている」という印象も与えることができ、上司との心の距離を縮めることもできます。

まとめ

  • 相手をリスペクトする態度で臨む
  • 他の人に話を聞かれないよう、個室を用意する
  • フィードバックをする前に、相手の緊張を解きほぐす

ステップ2:鏡のように事実を伝える>上司の主観を交えるから、部下は素直に聞けなくなる

いよいよ、部下に問題行動を指摘します。反発されるのではないか、と不安になる人もいると思いますが、「回りくどい言い方をしない」「鏡のように伝える」を心がければ、聞き入れてもらいやすくなります。

回りくどい言い方をしないで、ストレートに目的を伝える部下の緊張がほぐれ、こちらに信頼感を感じてもらえたら、いよいよ本題に入っていきます。

たいていのフィードバック面談の冒頭は、「ところで今日、A君に来てもらったのは、君の普段の行動で改善してほしいと思っていることがあるからなんだ。これから少しそのことについて、一緒に話し合いたいと思う」

「ところで、今日は、B君の普段の行動で、僕が少し残念に思っていることを話したいと思っている。一緒に改善策を考えていこう」

といった切り出し方になるかと思います。ここで大切なことは、この面談の「目的」を、最初にストレートに述べてしまうことです。

「問題のある行動を指摘するので、一緒に話し合って、改善策を考えよう」といった趣旨のことを最初に言うのです。

相手を傷つけたくないからといって、目的をはっきり言わず、回りくどい言い方をする人がいますが、フィードバックでは「痛み」を避けることはできません。

むしろ、回りくどい言い方をした方が、「何が言いたいのかわからない。はっきり言ってくれ」と部下をイラつかせます。しっかりと部下に向き合い、この面談の目的を伝えましょう。

言いにくいことはストレートに言う、と同時に言いにくいときこそ言い方に気をつける。これが原則です。

鏡のように伝えれば、反発されにくい目的を伝えたら、次に、収集したSBI情報を元に、「どのような行動に問題があるのか」を伝えます。

ここで最も重要なのは、なるべく具体的に把握した相手の問題行動を、「鏡のように」伝えることです。

言うまでもなく、「鏡のように」とは、できるだけ主観や感情を排除し、起きている事実を起きている通りに伝えることです。

部下が反発するのは、上司の指摘に主観や感情が混じっているときです。そのような場合、部下は「それはあなたの勝手な思い込みじゃないか」と思ってしまいます。

そうならないためには、事実だと思われることはそのまま伝えることが必要です。鏡のように客観的に話すコツは、◯◯のように見える」というように話すことです。

たとえば、「私には、先日のあなたの行動は、こういうふうに見えるけど、どう思う?」といった具合です。

英語で言えば「Itseems……」(……のように見える)の感覚です。

こういう言い方だと冷静に聞こえるだけでなく、相手も、頭ごなしに言われたときと異なり、自分の言い分を主張する余地があるので、追い詰められることがなく、指摘を素直に受け止めてくれる可能性が高まります。

大切なのは決めつけないことです。しかし、ストレートに伝えてください。

余計なフォローは入れない

また、この段階では、無理に「ほめる」ことも、無駄に「ディスる(非難する)」必要もありません。

上司の中には、フォローのつもりなのか、フィードバック後に変にほめる人がいますが、これはたいがい逆効果となります。

言われた部下の中には、「白々しい」と思う人もいれば、ほめた方だけを覚えていて、一番大切な「耳の痛いフィードバック」をすっかり忘れてしまう人もいます。

ここでなすべきことは、あなたが事実だと思うことを、鏡のように話し、しっかりと相手の目の前に提示することです。

まとめ・回りくどい言い方をしないで、目的をストレートに伝える・主観を入れず、鏡のように伝える・余計なフォローはしない

ステップ3:相手に問題点を腹落ちさせる>対話をして、現状と目標のギャップを認識してもらう

きちんとフィードバックをしても、部下の心に届いているとは限りません。むしろ、ほとんどの場合「届いていない」と考えた方が良いでしょう。

上司の方は、情報通知を行えば、部下に届いたと思いたいものです。しかし、部下の方からすると、上司から突然通知された情報に対しては、解釈するにも時間がかかります。

部下に問題点を認識してもらうためには、しっかりと腹落としのための対話が必要です。

一方的に言われただけで、腹落ちする人はいない

ステップ2で、部下に問題のある行動を「鏡のように」指摘したわけですが、それだけで部下があなたの言うことを理解したとは限りません。

部下が苦渋の表情を浮かべたり、反省の表情に変わったりしているのを見ると、「今言ったことは聞いているに違いない」「聞いたことは腹落ちしているに違いない」と思うかもしれませんが、実際、部下は上司の言っていることを聞いていないし、腹落ちもしていないことがほとんどです。

どんなに部下に非があったとしても、部下には部下なりの言い訳や理由があります。こちらが思っていることを、額面通り、そのまま受け取る人はそういません。

ですから、本当に腹落ちさせるには、対話によって、部下がどのようなことを考えているかを探りながら、それを踏まえて、上司であるこちらのロジックや考え方を伝えていくことが必要です。

17世紀の大哲学者パスカルの言葉にこんな言葉があります。

人を有益にたしなめ、その人にまちがっていることを示してやるには、彼がその物事をどの方面から眺めているかに注意しなければならない。なぜなら、それは通常、その方面からは真なのであるから。

そしてそれが真であることを彼に認めてやり、そのかわり、それがそこからは誤っている他の方面を見せてやるのだ。彼はそれで満足する。(パスカル『パンセ』断章九)*9

上記の言葉のように、部下には部下の「物事の見方」というものが存在します。部下は、自分の物事の見方に従い、「真」を見ている気になっているものです。

このときに上司にできることは、いったん「部下の見方」を認めつつも、「別の見方」の存在を部下に発見させることです。そのためには、それなりに長い腹落としのための対話が必要になります。

具体的には、「私にはこのように見えているのだけれども、どう思う?」というように、まず部下の思いや考えを話してもらうことです。

そして、話し始めたら、話の腰を折ることなく、最後までじっくり聞きましょう。ここで大切なのは、相手の話を「聞ききること」です。

そうすることで、自分と部下との考え方の違いなどが見えてきます。そして、話を聞ききったら、「◯◯さんはこのように思っているようだけど、私はこう思うな」というふうに、「違い」を伝えていきましょう。

より具体的な例として、さまざまなタイプの部下との対話のパターンを第4章で取り上げたので、こちらも参考にしてみてください。

ステップ3は、場合によっては、1~2時間という長時間になるかもしれませんが、このステップを踏まなければ、フィードバックは何の意味も持たなくなってしまいます。心して部下と向き合いましょう。

現状とゴールのギャップを明らかにする対話によって、部下に問題点を認識させるときのポイントは、問題のある現在の状況と目標とのギャップを明らかにすることです。

それがかけ離れていることがわかれば、誰でも「今の自分には問題がある」ということがわかります。

営業の仕事のように、数字でギャップが見えやすい内容なら、「月100万円のノルマに、あと30万円足りない」など、直接数字で示せば良いでしょう。

カスタマーサポートや総務など、数字でギャップを示しにくい仕事の場合は、「本来ならば、その仕事の先にどんな光景が広がっているはずなのか」を問いかけてみましょう。

部下から明確な答えが返ってこなければ、こちらから言葉を継ぎ足してもかまいません。そうすれば、部下も現状と目標とのギャップを意識しやすくなるはずです。

そのうえで、部下が今後、何をしていくか「決めさせるプロセス」──すなわち「決定」に持ち込むことが重要です。

大切なことは、対話を通して「決定」に持ち込むことです。徐々に「対話」の量を減らし、決定=共通認識をつくりましょう。

まとめ

  • 一度言ったぐらいでは、部下は99%腹落ちしていない
  • 部下がどう思っているのかを聞きながら、考えのズレをなくしていく
  • 問題点を認識してもらうため、現状とゴールのギャップを知ってもらう
  • 対話の最後は「決定」に持ち込み、共通認識をつくる

ステップ4:部下の立て直しをサポートする>「これからどうするか」を本人に決めてもらう

フィードバックは「スパイシーに言えば良い」と思っている人がいますが、それだけでは不十分です。

今後どのように行動を変えるか、その立て直しのサポートをして、はじめてフィードバックと言えます。

自分の言葉で振り返ってもらうステップ3で、問題点が腹落ちしたと感じたら、次は「立て直し」に入ります。

過去と現在の状況をもう一度しっかり振り返ってもらい、現状とゴールとのギャップを埋めるために何をすべきか、未来の新たな行動計画や目標をつくり出していきます。今後、結局自分は「何をすべきか」を自己決定させるのです。

このような「立て直し」は、部下一人ではなかなかできません。上司がしっかりサポートしましょう。

立て直しを行うときのポイントは、部下自身に、自分の過去や現在の状況を再び言葉にしてもらうことです。上司が言葉にするだけでは、部下の記憶に残りません。

自分で言葉にすることで、客観的に見られるようになり、次の仕事に生かせる気づきを得ることができます。

自らが起こしたトラブルや問題行動に対して、部下自身が客観的に分析するのは、非常に難しいことです。

トラブルに直面しているときはパニックに陥って周りが見えていませんし、しばらく経っても自分の行動を正当化したいと考えて、主観的にその出来事を見てしまいがちです。

しかし、上司が適切な質問を投げかけていけば、狭くなっていた視野が広がり、起こった出来事を冷静に分析できるようになります。

ポイントは「What?」「Sowhat?」「Nowwhat?」では、どのような質問を投げかけていけば、部下は過去と現在の状況を振り返り、今後の行動計画にまでつなげることができるのでしょうか。

まずは、次の3つのポイントについて、話してもらうように導いていきましょう。それは「What?」「Sowhat?」「Nowwhat?」の3つです。一つひとつ説明していきましょう。

1.What?(何が起こったのか?)

「自分は、過去・現在にどのような状況で、どのような行動をとり、それがどんな問題を引き起こしたのか」を、部下に言葉にしてもらいましょう。

なるべく具体的に、問題発生のプロセスを再現させることが重要です。これが再現できないうちは、マネジャーの指摘が腹落ちしていないと考えて良いでしょう。

場合によっては、「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(何をした)」などについて、こちらから詳しく問うてみると、再現しやすくなります。

2.Sowhat?(それは、なぜなのか?)

次は、「Sowhat?」の出番です。「What?」の真の原因を探していきます。自分の行動や認識のうち、何が良くて、何が良くなかったのか。本当の原因が何であったのかを、部下に言語化してもらうのです。自分の力で原因を明らかにすることで、理解が深まり、問題行動の改善につながります。

なかなか言葉にできない部下もいるかもしれませんが、ヒントを与えながらも、部下が自力で言葉にできるまで、じっと待ちましょう。

3.Nowwhat?(これからどうするのか?)

今回の問題行動と原因が明らかになったら、「Nowwhat?」です。目指すべきゴールに向かって、どのように問題行動を改めるのかについて、部下自身に決めてもらいましょう。

「このように行動を変えなさい」と上司に押しつけられると、部下はモチベーションが上がりません。

この段階では、部下に新たな行動計画や目標を立ててもらい、上司と部下の間で達成することを約束してもらいます。

この後、すぐに問題行動が改善しなかったとしても、ここで約束した内容が、次回以降のフィードバックの素材になります。

  • もう一度、問題行動について、部下自身に振り返ってもらう
  • 再び言語化してもらうことで、真の原因への理解が深まる
  • 「これからどうするか」を自己決定させる

ステップ5:今後の期待をしっかりと述べる>部下の「やればできる」という気持ちを高める

フィードバックのラストは、部下に今後の期待を述べて、背中を押してあげましょう。何度も同じことを言われている部下に対しては、再発予防策をしっかり講じることも忘れずに。

サポートすると明言することで、部下の孤独感をなくす

「これからどのように行動を変えていくか」、部下と共通の認識を持つことができれば、フィードバックはほぼ完了です。最後は2つのポイントを伝えて、しっかりと今後の仕事に送り出してあげましょう。

第1のポイントは、「今後も期待している」としっかりと伝えることです。加えて、「困ったときには最大限のサポートをしていく」こともはっきりと伝えましょう。

そうすることで、フィードバックを受けた部下の孤独感が和らぎ、彼らが自らのあり方を立て直すときに大きな助けになります。また、「やればできる」という「自己効力感」をいかに高めるかも重要です。

フィードバックはともすれば自己効力感を薄めてしまう可能性がありますが、そのままにして返してしまうと、効果はあがりません*10。最後は部下に希望を持たせて、送り出しましょう。

再発予防策も立てておく

もう一つ重要なのは、「再発予防策」を立てることです。

問題を抱えた部下は、これまでにも自分の問題点について何度も指摘を受けてきた人が多いと思います。このような場合には、問題が再発することを前提にして、その「予防策」を事前に立ててもらいましょう。

具体的には、

1.今抱えている問題は、どのような場合に再発してしまうのか?

2.再発してしまいそうになったら、自分としては、どうするのか?

このような対策を部下と話し合って立てておくことが重要です。

まとめ

・「今後も期待している」「自分もサポートしていく」ことを伝える

・自己効力感を持たせるようなことを言う

・再発予防策を話し合っておく

【事後フォロー編】事後のフォローも忘れない>行動改善がうまくいったかチェックを繰り返す

フィードバックをした後、そのまま放っておいてはいけません。その後も行動改善ができているか、こまめにチェックすることが大切です。それを繰り返すことで、部下は徐々に行動を改善していくものです。

定期的にチェックする機会を持とう部下の行動を改善するために重要なのが、フィードバック後のフォローです。

行動改善ができているかどうか、こまめにチェックすることで、部下は自分が進歩しているかどうかを確認することができますし、改善の意識を持ち続けることができます。

年1回や半年に1回の面談のときだけチェックするのでは、期間が開きすぎています。ベストは週1回、最低でも隔週に1回ぐらいはチェックする機会をつくりましょう。

第5章で説明しますが、フィードバックを行うなら、定期的なミニ面談である「1on1」を取り入れて、そのときをチェックする機会にすると良いでしょう。

フィードバックは複数回必要だと考えた方が良いフィードバックをしたけれども、部下の行動が一向に改善されない……。そういった事態に陥ってしまうこともあるでしょう。

しかし、一度フィードバックをしただけで、行動が改善されることの方が稀だと私は思います。人間は、そんなに簡単には変わりません。

また、1回の面談だけで時間が不足してしまった場合には、2回目の面談が必要なこともあります。「フィードバックは、一度だけではなく、何度も行うものだ」と考えておいた方が良いかもしれません。

人を変えるためには、このように手間暇をかけ、かつ、あの手この手を尽くさなければなりません。しかし、私たちは、できる限りあきらめず、部下の変化を信じることこそが重要だと思います。

  • 行動改善には、事後のフォローが不可欠
  • 隔週1回はチェックする機会を持つ
  • フィードバックは一度では終わらないと心得よう

ポイント1:フィードバックは「即時」「移行期」にこそ行う>適切なタイミングが、効果を高める

日々の業務が忙しい中、フィードバックのタイミングに悩む方も多いはず。実は、フィードバックをするタイミングには鉄則があります。

それは「即時に行うこと」と「移行期に行うこと」です。

すぐに行わないと、忘れる&こじれる

フィードバックは、適切なタイミングで行うことも非常に重要です。理想的なのは、問題が起きたら「即」行うことです。

鉄は熱いうちに打て」という言葉がありますが、フィードバックが必要だと感じたら、できるだけすみやかに、その機会を設けることが大切です。これを「即時フィードバックの原則」と言います。

なぜなら、何か問題が起きた後、時間が経ってから指摘しても、部下はどのような行動が問題だったのか、その詳細を思い出せないからです。また、トラブルの場合は、時間が経てば経つほど、こじれて元に戻しにくくなります。

とは言え、ちゃんと事実確認をしないままフィードバックをすると、間違えてしまうこともあるので、急ぎすぎない方がいいですが、問題が起きてからなるべく早くフィードバックしたいものです。

役割が変わって間もない時期は、フィードバックチャンスもう一つ、意識すべきタイミングは「移行期」です。昇進や異動から間もない時期に行う方が、フィードバックは効きやすいということです。

フィードバックは、年齢が上がるほど効きにくくなりますが、それは長く同じ仕事や役割を担当している人にも同じことが言えます。

課長に昇進した人でも1年目は初々しいのに、3、4年経つと、もうフィードバックが効かなくなることがあります。

仕事における役割が変わった直後は精神的に不安定になる一方、外からの声を受け入れて変わりやすい時期でもあります。

カチンコチンにかたまってしまってから厳しいフィードバックで変化させるのは極めて大変なことです。

部下がフレッシュなうちに、フィードバックするようにしましょう。

  • 問題が起きたら、できるだけすみやかにフィードバックする
  • 昇進や異動から間もない時期を逃さず、フィードバックする

ポイント2:フィードバックの内容は記録する>備忘録程度で良いので、メモしておこう

「あれ、そういえばこの前の面談のとき、何言ったっけ?」こんな事態を防ぐためにも、フィードバック中は、メモをとることをおすすめします。

終わった後でもかまわないので、メモするフィードバックの最中には、部下からもさまざまな話があります。

場面にもよりますが、フィードバックで部下が話した内容、上司と部下間で合意した内容については、なるべくきちんと「記録」しておくことをおすすめします。

発言内容をフィードバックの最中、あるいは終わった後でも良いので、必ずメモしておきましょう。

すると、その後面談などをしたときに、「こんな行動をすると言っていたけど、その後どうなった?」などと確認できますし、言い訳や反論をされたときに、「論理のほころび」を探す材料になります。

部下に書いてもらう手もあるかつて私がお会いした管理職の方の中に、その日の面談で話した内容を、自分だけでなく部下にもまとめてもらい、提出してもらっているという方がいらっしゃいました。

そうすると、備忘録になるだけでなく、部下が面談での話をどのように受け取っているかが確認できるそうです。

「自分が熱心に伝えたつもりの肝心なことがぽっかり抜けている。もっと繰り返し言った方がいいな」「言ったつもりのないことが書かれている。何か勘違いしているのではないか?」などということがよくあり、日頃の指導に役立っているそうです。

いずれにしても、メモなどで記録してフィードバックを振り返ることは双方にとって非常に有効でしょう。

  • フィードバックの最中か直後に、会話の内容をメモする
  • 部下に議事録のようなものを書いてもらっても良い

ポイント3:オンラインでのフィードバックはアリか?>メールはNG。

テレビ電話ならOK

どの業界でも、ITが業務に深く入り込んでいる現代。フィードバックに関しても、メールやテレビ電話で行っても良いのでしょうか?メールでは確実に真意が伝わらない最近は、業務連絡の大半をオンライン上でやり取りしている職場も多いでしょう。

「仕事のじゃまをしないように」と直接会うことや電話を遠慮して、自分の都合に合わせて読めるメールを選ぶことも当たり前になっているようです。

その考えの延長線上から、耳の痛いフィードバックに関しても、直接会って話すのではなく、メールを使って行うマネジャーも出てきているようです。

しかし、メールでのフィードバックは百害あって一利なしだと私は思います。その理由は、メールでのフィードバックは、絶対に誤解が生じるからです。

メールは、相手の表情や声のトーンがわからず、無機質な文字でしか情報を伝えられないので、相手の考えがつかみにくいという弱点があります。これは、耳の痛いフィードバックをするときには致命的です。

ただでさえフィードバックはマネジャーの真意を伝えにくいのに、さらに伝わりにくくなることは確実だからです。

部下が深読みしすぎて、無駄に落ち込んだり、間違ったとらえ方をして激怒したりすれば、上司との人間関係は悪化するかもしれません。相手の反応を見たくないからこそ、メールで送っている人もいるでしょう。

しかし、目先のストレスの軽減を図った結果、のちにもっと大きなストレスを招く出来事が起きる可能性はかなり高くなると思われます。

テレビ電話なら、ほとんどリアルと同じただし、同じオンライン上のやり取りでも、接続環境の良いテレビ電話なら問題も起こりにくいかもしれません。

顔が見えるし、声のトーンもわかるので、リアルと同じようなフィードバックができます。テレビ電話でフィードバックをするときのポイントも、対面で行う普通のフィードバックと変わりません。

「部下としっかりと向き合って、SBI情報を元に、鏡のように事実を伝えること」「厳しい指摘をするだけでなく、立て直しを支援すること」などはまったく同じです。

強いて言えば、テレビ電話でのやり取りは、雑談のような余計なやり取りが少なくなる傾向があります。

そうしたやり取りから相手の感情が汲み取れることも少なくないので、たまには意識的に雑談をしても良いでしょう。

まとめ

  • メールでのフィードバックは、誤解が生じやすいのでやめるべき
  • テレビ電話でのフィードバックでは、意識して雑談を挟む
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